説明

超音波モータ及び超音波モータを備えた駆動装置

【課題】摺動部材に付着した磨耗粉を完全に除去することができ、駆動効率及び駆動性能の低下並びに短寿命化を防止する
【解決手段】超音波モータは、振動を励起する振動子11と、振動子11に設けられた駆動子12a、12bと、振動子11を保持するホルダ13と、ホルダ13に設けられた研削用砥石14とを備え、研削用砥石14が配置調整可能に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータ及び超音波モータを備えた駆動装置に関し、特に、精密加工装置、半導体製造装置、顕微鏡ステージ等に用いられる、超音波モータ及び超音波モータを備えた駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡を利用して微細構造を観察する際、観察対象の任意位置を顕微鏡観察下に位置づけるためにXYステージが利用されている。このとき、XYステージには、観察対象となる微細構造と同等の送り分解能や静止時の安定性が求められている。
【0003】
このようなニーズに対応するアクチュエータの一つとして超音波モータが注目されている。超音波モータは、ローレンツ力を利用した従来型のモータと比べて、高精度に位置決めができ、静止時には無通電で大きな保持力を持つ、という特徴を有する。
【0004】
超音波モータは、超音波領域の振動を発生させる圧電素子と、圧電素子の振動に伴って振動する駆動子とを備え、駆動子を被駆動体に設けられた摺動部材に押圧することにより駆動力を発生させる。しかしながら、駆動子と摺動部材との摩擦により駆動力を得ているため、次第に駆動子と摺動部材が摩耗する。そして、その摩耗により生じた磨耗粉が摺動部材に付着すると、動作不良を招く虞があると共に、駆動子と摺動部材の摩耗を更に促進させて超音波モータを短寿命化させる虞もある、という問題があった。そこで、一定期間毎に、駆動子と摺動部材もしくは超音波モータ自体を交換する必要があった。
【0005】
このような問題を解決するため、例えば特許文献1には、摩擦部材と駆動力伝達部材との摺動によって発生した摩耗粉の帯電とは異なる極性にブラシを帯電させておき、機械的な掻き取りだけでなく、静電気力によってブラシに摩耗紛を吸着させることができるようにした超音波モータ駆動装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−236389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、駆動子が特に樹脂を母材とした材料によって形成されている場合、磨耗粉が摺動部材に付着した状態で駆動子が摺動することによって磨耗粉が摺動部材に塗り付けられてしまう場合がある。このような場合、摺動部材に塗り付けられた摩耗粉は粘着力が強く掻きとるだけでは除去することができない。そのため、特許文献1に提案されているようなブラシを使った方法では摩耗粉を完全に除去することができず、更にブラシが摩耗粉を摺動部材に押し付けることによって磨耗粉を摺動部材に塗り付けてしまう虞もある。そこで、より硬い材質のブラシを用いて磨耗粉を除去するという方法も考えられる。しかしながら、この方法では、摺動部材の摺動面に傷が付き、動作効率を低下させる虞がある。ブラシの代わりに摩耗粉除去手段としてローラやフェルトを用いた場合も同様の虞がある。或いは、摩耗粉除去手段としてスクレイパーや剥離爪等を用いて摺動部材ごと摩耗粉を削り落とすという方法も考えられる。しかしながら、この方法では、摺動部材の面精度を維持することが難しく、駆動効率や駆動性能を低下させたり駆動動作を行うことができなくなったりする虞がある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑み、摺動部材に付着した磨耗粉を完全に除去することができ、駆動効率及び駆動性能の低下並びに短寿命化を防止することができる、超音波モータ及び超音波モータを備えた駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る超音波モータは、振動を励起する振動子と、前記振動子に設けられた駆動子と、前記振動子を保持する保持手段と、前記保持手段に設けられた研削用砥石と、を備え、前記研削用砥石が配置調整可能に構成される、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様に係る超音波モータは、上記第1の態様において、固定部に対して移動可能に支持された被駆動体に設けられた摺動部材に前記駆動子が当接、押圧されるように前記保持手段が前記固定部に固定されたときに、前記研削用砥石が前記摺動部材の摺動面に対して垂直方向に配置調整可能に構成される、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の態様に係る超音波モータは、上記第2の態様において、前記研削用砥石が前記摺動部材に当接されるように又は当接、押圧されるように配置されたときに、前記研削用砥石は前記摺動部材と面で接触する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の態様に係る超音波モータは、上記第1乃至3の何れか一つの態様において、前記研削用砥石は、前記振動子の両側に設けられる、ことを特徴とする。
本発明の第5の態様に係る超音波モータは、上記第4の態様において、前記振動子の両側に設けられる前記研削用砥石において、一方の片側に設けられる前記研削用砥石は粒子が粗く、他方の片側に設けられる前記研削用砥石は粒子が細かい、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の第6の態様に係る超音波モータは、上記第5の態様において、粒子が粗い前記研削用砥石が前記摺動部材に当接、押圧されるように配置されている状態で前記被駆動体が駆動しているときは、粒子の細かい前記研削用砥石は前記摺動部材に当接されないように配置され、粒子が細かい前記研削用砥石が前記摺動部材に当接、押圧されるように配置されている状態で前記被駆動体が駆動しているときは、粒子の粗い前記研削用砥石は前記摺動部材に当接されないように配置される、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第7の態様に係る超音波モータは、上記第6の態様において、粒子が粗い前記研削用砥石が前記摺動部材に当接、押圧されるときの押圧力と、粒子が細かい前記研削用砥石が前記摺動部材に当接、押圧されるときの押圧力は、異なる、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の第8の態様に係る超音波モータは、上記第1乃至7の何れか一つの態様において、前記研削用砥石は、ネジの作用によって配置調整可能に構成される、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の第9の態様に係る超音波モータは、上記第1乃至7の何れか一つの態様において、前記研削用砥石は、単軸ピエゾ素子の作用によって配置調整可能に構成される、ことを特徴とする。
【0017】
本発明の第10の態様に係る駆動装置は、ベース部と、前記ベース部に対して移動可能に支持されたテーブルと、前記テーブルに設けられた摺動部材と、前記ベース部に設けられた上記第1乃至9の何れか一つの態様に係る超音波モータと、を備え、前記超音波モータの保持手段は、前記テーブルに設けられた摺動部材に前記超音波モータの駆動子が当接、押圧されるように、前記ベース部に固定され、前記研削用砥石は、前記摺動部材の摺動面に対して垂直方向に配置調整可能に構成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、超音波モータ及び超音波モータを備えた駆動装置において、摺動部材に付着した磨耗粉を完全に除去することができ、駆動効率及び駆動性能の低下並びに短寿命化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1に係る超音波モータの構成例を模式的に示す図である。
【図2】穴と、砥石座を介して研削用砥石と一体に構成されたネジとを、振動子の両側に設けるようにした場合の構成例を模式的に示す図である。
【図3】実施例2に係る超音波モータの構成例を模式的に示す図である。
【図4】実施例3に係る駆動装置の上面を模式的に示す図である。
【図5】実施例3に係る駆動装置のA−A´断面(図4参照)を模式的に示す図である。
【図6】超音波モータ側から見た実施例3に係る駆動装置の側面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1に係る超音波モータは、固定部に対して移動可能に支持された被駆動体を駆動する超音波モータであって、例えば顕微鏡ステージ、精密加工装置、半導体製造装置等で使用されるアクチュエータとして適用可能である。
【0022】
図1は、本実施例に係る超音波モータの構成例を模式的に示す図である。
なお、同図は、本実施例に係る超音波モータの上面を模式的に示すものであるが、説明の便宜のため、一部を断面として示している。
【0023】
同図に示したように、本実施例に係る超音波モータは、振動を励起する振動子11と、振動子11に設けられた駆動子12a、12bと、振動子11を保持する保持手段としてのホルダ13と、ホルダ13に設けられた研削用砥石14とを備え、詳しくは後述するように、研削用砥石14が配置調整可能に構成されている。
【0024】
駆動子12a、12bは、振動子11の図示しない被駆動体側の側面に固定されており、例えば、強化繊維を含むポリアセタールやセラミック等の、摩擦係数の比較的小さな樹脂を母材とした材料によって形成されている。
【0025】
振動子11は、図示しない屈曲振動用電極と縦振動用電極とを有する積層型圧電体(ピエゾ素子)からなり、図示しない制御装置から所定の駆動信号が与えられることによって屈曲振動と縦振動を励起し、それらの振動を利用して駆動子12a、12bに楕円運動を生じさせる。これにより、被駆動体に設けられた摺動部材に駆動子12a、12bが当接、押圧されるようにホルダ13が固定部に固定されたときには、その楕円運動をする駆動子12a、12bと摺動部材との摩擦によって、被駆動体を駆動することができる。
【0026】
ホルダ13は、一部に設けられた切り欠き穴13aによって形成された板ばね部13bを有する。板ばね部13bは、一部にばねとして作用しない厚肉部を含み、その厚肉部に振動子11が固定されている。また、ホルダ13には、メネジを含む穴13cが形成されている。この穴13cの中には、砥石座15を介して研削用砥石14と一体に構成されたネジ16が挿入されており、そのネジ16のねじ込み量を調整することによって、研削用砥石14が配置調整可能に構成されている。また、被駆動体に設けられた摺動部材に駆動子12a、12bが当接、押圧されるようにホルダ13が固定部に固定されたときには、そのネジ16のねじ込み量を調整することによって、研削用砥石14が摺動部材の摺動面に対して垂直方向に配置調整可能に構成されている。さらに、研削用砥石14が摺動部材に当接されるように又は当接、押圧されるように配置されたときには、研削用砥石14が摺動部材に面で接触するように構成されている。また、このときには、その面の大きさは、後述の通常駆動時に駆動子12a、12bが摺動部材を摺動する範囲を含む範囲を後述のクリーニング駆動時に研削用砥石14が摺動(研削)可能になるような大きさで構成されている。このような構成により、研削用砥石14を摺動部材に当接、押圧させたり摺動部材から離したりすることは勿論のこと、研削用砥石14を摺動部材に押圧させる際の押圧力を調整することもできる。
【0027】
このような構成を有する本実施例に係る超音波モータは、被駆動体に設けられた摺動部材に駆動子12a、12bが当接、押圧されるようにホルダ13が固定部に固定されたときに、被駆動体を所望の位置へ駆動させる通常駆動と、摺動部材に付着した磨耗粉を除去するために被駆動体を駆動させるクリーニング駆動とを行うことができる。
【0028】
通常駆動は、摺動部材に研削用砥石14が接触しないようにネジ16のねじ込み量が調整された状態で被駆動体の駆動を行うようにしたものである。一方、クリーニング駆動は、摺動部材に研削用砥石14が当接、押圧されるようにネジ16のねじ込み量が調整された状態で被駆動体の往復駆動を行うようにしたものである。
【0029】
本実施例に係る超音波モータでは、通常駆動を繰り返し行っていくと、次第に摺動部材と駆動子12a、12bが摩耗し、その摩耗により生じた磨耗粉が徐々に摺動部材に付着することになるが、その摺動部材に付着した磨耗粉を、クリーニング駆動を行うことによって除去することができる。
【0030】
クリーニング駆動を行うと、研削用砥石14は被駆動体に設けられた摺動部材を微小に研削するため、摺動部材に付着した摩耗粉(摺動部材に塗り付けられたような磨耗粉も含む)を完全に除去することができる。また、研削用砥石14は摺動部材に面で接触するため、硬い材質のブラシを使ったときのような局所的な傷が摺動部材に生じる虞もなく、超音波モータの駆動特性を良好に維持することができる。
【0031】
このようなクリーニング駆動は、被駆動体の駆動距離や駆動時間に応じて、或いは、目視で摺動部材に磨耗粉が付着していることが確認された時など、定期的又は必要な時に、行うことが望ましい。また、クリーニング駆動時に被駆動体を往復駆動させる回数は、摺動部材に付着した磨耗粉を除去することができる程度が望ましい。また、クリーニング駆動時に被駆動体を往復駆動させる範囲は、研削用砥石14が摺動部材を研削する範囲が、少なくとも、通常駆動時に駆動子12a、12bが摺動部材を摺動する範囲を含むような範囲とすることが望ましい。例えば、クリーニング駆動時に被駆動体を往復駆動させる範囲は、摺動部材の全範囲や、通常駆動時に駆動子12a、12bが摺動部材を摺動する範囲よりも少し広い範囲とすることができる。また、例えば、クリーニング駆動として、通常駆動時の被駆動体の駆動距離1km毎に摺動部材の全範囲を20往復させるように被駆動体の駆動を行うようにすることもできる。
【0032】
以上、本実施例に係る超音波モータによれば、研削用砥石14によって摺動部材自体を研削することによって摺動部材に付着した摩耗粉(摺動部材に塗り付けられたような磨耗粉も含む)を完全に除去することができる。また、駆動子12a、12bが摩耗粉を噛み込むことによって生じる駆動効率及び駆動性能の低下や超音波モータの短寿命化を防止することができる。
【0033】
なお、本実施例に係る超音波モータは、次のように変形することも可能である。
例えば、本実施例に係る超音波モータにおいて、ネジ16が当てつくまでねじ込まれた状態の時に研削用砥石14による摺動部材への好適な押圧力が得られるように、穴13c、研削用砥石14、砥石座15、及びネジ16を予め設計しておくように構成することも可能である。
【0034】
また、例えば、本実施例に係る超音波モータでは、穴13cと、砥石座15を介して研削用砥石14と一体に構成されたネジ16とが、図1に示したホルダ13の右側部分に設けられる構成であったが、これをホルダ13の左側部分に設けるように構成することも可能であり、その位置は図1に示した位置に限定されるものではない。
【0035】
また、例えば、本実施例に係る超音波モータでは、穴13cと、砥石座15を介して研削用砥石14と一体に構成されたネジ16とが、振動子11の片側に設けられる構成であったが、これを振動子11の両側に設けるように構成することも可能である。
【0036】
図2は、穴13cと、砥石座15を介して研削用砥石14と一体に構成されたネジ16とを、振動子11の両側に設けられるようにした場合の構成例を模式的に示す図である。なお、同図も、本構成例に係る超音波モータの上面を模式的に示すものであるが、説明の便宜のため、一部を断面として示している。
【0037】
本構成例では、同図に示すホルダ13の右側部分と同様に、その左側部分にも、メネジを含む穴13cが形成され、この穴13cの中に、砥石座15を介して研削用砥石14と一体に構成されたネジ16が挿入されている。
【0038】
そして、実施例1と同様に、通常駆動では、図示しない被駆動体に設けられた摺動部材に左右2つの研削用砥石14が接触しないように左右2つのネジ16のねじ込み量が調整された状態で被駆動体の駆動が行われ、クリーニング駆動では、摺動部材に左右2つの研削用砥石14が左右対称に当接、押圧されるように左右2つのネジ16のねじ込み量が調整された状態で被駆動体の往復駆動が行われる。
【0039】
本構成例では、摺動部材を研削する研削用砥石の数が増えるため、クリーニング駆動時における被駆動体の往復駆動の回数をより少なくしても、摺動部材に付着した摩耗粉(摺動部材に塗り付けられたような磨耗粉も含む)を完全に除去することができる。
【0040】
このように、本構成例によれば、より少ない回数の往復駆動によるクリーニング駆動によって、摺動部材に付着した摩耗粉(摺動部材に塗り付けられたような磨耗粉も含む)を完全に除去することができる。また、研削用砥石14による摺動部材への押圧力が左右対称になるように左右2つのネジ16のねじ込み量を調整することにより、摺動部材に接触する左右2つの研削用砥石14の面精度を確保することができる。さらに、駆動子12a、12bが摩耗粉を噛み込むことによって生じる駆動効率及び駆動性能の低下や超音波モータの短寿命化を防止することができる。
【0041】
なお、図2に示した構成例は、更に、次のように変形することも可能である。
例えば、左右2つのネジ16が当てつくまでねじ込まれた状態の時に左右2つの研削用砥石14による摺動部材への好適な押圧力が左右対称に得られるように、左右各々の穴13c、研削用砥石14、砥石座15、及びネジ16を予め設計しておくように構成することも可能である。
【0042】
また、例えば、一方の研削用砥石14を粒子の粗い砥石とし、他方の研削用砥石14を粒子の細かい砥石として構成することも可能である。このように構成した場合には、クリーニング駆動を、例えば次のようにして行うこともできる。まず始めに、粒子の粗い方の研削用砥石14が摺動部材に当接、押圧されるようにネジ16のねじ込み量が調整されると共に、粒子の細かい方の研削用砥石14が摺動部材に当接されないようにネジ16のねじ込み量が調整された状態で被駆動体の往復駆動を行う。次に、粒子の細かい方の研削用砥石14が摺動部材に当接、押圧されるようにネジ16のねじ込み量が調整されると共に、粒子の粗い方の研削用砥石14が摺動部材に当接されないようにネジ16のねじ込み量が調整された状態で被駆動体の往復駆動を行う。このようなクリーニング駆動を行うことにより、磨耗粉が付着した摺動部材に対し、始めは粗い研削が行われ、次に細かい研削が行われるようになる。また、このようなクリーニング駆動を行うときに、粒子の粗い方の研削用砥石14が摺動部材に当接、押圧されたときの押圧力が、粒子の細かい方の研削用砥石14が摺動部材に当接、押圧されたときの押圧力よりも小さくなるように、ネジ16の調整を行うことも可能である。或いは、ネジ16が当てつくまでねじ込まれた状態の時に、このような左右の研削用砥石14による押圧力が異なるように、左右各々の穴13c、研削用砥石14、砥石座15、及びネジ16を予め設計しておくことも可能である。
【実施例2】
【0043】
本発明の実施例2に係る超音波モータは、上述の実施例1に係る超音波モータと同様に、固定部に対して移動可能に支持された被駆動体を駆動する超音波モータであって、実施例1に係る超音波モータがネジの作用によって研削用砥石を配置調整可能な構成であったのに対し、そのネジの代わりに単軸ピエゾ素子の作用によって研削用砥石を配置調整可能に構成したものである。本実施例に係る超音波モータも、例えば顕微鏡ステージ、精密加工装置、半導体製造装置等で使用されるアクチュエータとして適用可能である。
【0044】
図3は、本実施例に係る超音波モータの構成例を模式的に示す図である。
同図に示したように、本実施例に係る超音波モータは、ホルダ13の図示しない被駆動体側の側面に砥石座21が固定され、その砥石座21の被駆動体側の側面に研削用砥石14が固定されている。
【0045】
砥石座21は、図示しない電極を有する単軸ピエゾ素子からなり、図示しない制御装置から与えられる電気信号に応じて、その電気信号に応じた伸長量で単軸方向(同図の上下方向)に伸長する。従って、砥石座21に与える電気信号を調整することによって、その電気信号に応じた伸長量で単軸方向に伸長した砥石座21を介して、研削用砥石14を配置調整可能である。また、被駆動体に設けられた摺動部材に駆動子12a、12bが当接、押圧されるようにホルダ13が図示しない固定部に固定されたときには、砥石座21に与える電気信号を調整することによって、研削用砥石14が摺動部材の摺動面に対して垂直方向に配置調整可能に構成されている。さらに、研削用砥石14が摺動部材に当接されるように又は当接、押圧されるように配置されたときには、研削用砥石14が摺動部材に面で接触するように構成されている。また、このときには、その面の大きさは、後述の通常駆動時に駆動子12a、12bが摺動部材を摺動する範囲を含む範囲を後述のクリーニング駆動時に研削用砥石14が摺動(研削)可能になるような大きさで構成されている。このような構成により、研削用砥石14を摺動部材に当接、押圧させたり摺動部材から離したりすることは勿論のこと、研削用砥石14を摺動部材に押圧させる際の押圧力を調整することもできる。
【0046】
その他の構成については、実施例1に係る超音波モータと同様である。
本実施例に係る超音波モータにおいても、実施例1に係る超音波モータと同様に、通常駆動とクリーニング駆動とを行うことが可能である。但し、本実施例に係る超音波モータの通常駆動では、摺動部材に研削用砥石14が接触しないように砥石座21に与えられる電気信号が調整された状態(或いは砥石座21に電気信号を与えない状態)で被駆動体の駆動が行われる。また、クリーニング駆動では、摺動部材に研削用砥石14が当接、押圧されるように砥石座21に与えられる電気信号が調整された状態で被駆動体の往復駆動が行われる。なお、クリーニング駆動を行うタイミングや、クリーニング駆動時に被駆動体を往復駆動させる回数や、クリーニング駆動時に被駆動体を往復駆動させる範囲については、実施例1で説明したタイミング、回数、及び範囲と同様にして行うことができる。
【0047】
以上、本実施例に係る超音波モータによれば、実施例1に係る超音波モータと同様の効果が得られると共に、更に、砥石座21に与える電気信号を調整することによって研削用砥石14を配置調整可能であるので、力量による微調整を行う必要はなくクリーニング駆動の自動化が可能になり、ユーザの負担を軽減することができる。
【0048】
なお、本実施例に係る超音波モータにおいも、実施例1に係る超音波モータと同様の変形が可能である。
【実施例3】
【0049】
本発明の実施例3に係る駆動装置は、実施例1に係る超音波モータを備えた駆動装置であって、例えば顕微鏡ステージ、精密加工装置、半導体製造装置等で使用される駆動装置として適用可能である。
【0050】
図4は、本実施例に係る駆動装置の上面を模式的に示す図である。但し、同図では、説明の便宜のため、一部を断面として示している。図5は、本実施例に係る駆動装置のA−A´断面(図4参照)を模式的に示す図である。図6は、超音波モータ側から見た本実施例に係る駆動装置の側面を模式的に示す図である。
【0051】
図4乃至6に示したように、本実施例に係る駆動装置において、固定台であるベース部31と、被駆動体であるテーブル32との間には、例えばリニアガイドのような案内部材33a、33bが配置されている。案内部材33a、33bは、いずれも、片方がベース部31に固定され、もう一方がテーブル32に固定されている。これによって、ベース部31に対してテーブル32が単軸方向に平行移動できるように支持される。テーブル32の側面には、摺動部材34とスケール35が固定されている。
【0052】
超音波モータ36は、図1を用いて説明した実施例1に係る超音波モータであって、テーブル32の側面に設けられた摺動部材34に駆動子12a、12bが当接、押圧されるようにホルダ13がベース部31の上面に固定されている。このとき、ホルダ13の穴13cに挿入されているネジ16のねじ込み量を調整することによって、研削用砥石14が摺動部材34の摺動面に対して垂直方向に配置調整可能に構成されている。さらに、研削用砥石14が摺動部材34に当接されるように又は当接、押圧されるように配置されたときには、研削用砥石14が摺動部材34に面で接触するように構成されている。また、このときに、その面の大きさは、後述の通常駆動時に駆動子12a、12bが摺動部材34を摺動する範囲を含む範囲を後述のクリーニング駆動時に研削用砥石14が摺動(研削)可能になるような大きさで構成されている。このような構成により、研削用砥石14を摺動部材34に当接、押圧させたり摺動部材34から離したりすることは勿論のこと、研削用砥石14を摺動部材34に押圧させる際の押圧力を調整することもできる。
【0053】
超音波モータ36によるテーブル32の駆動は、実施例1で説明したものと同様に、図示しない制御装置から所定の駆動信号を振動子11に与えて駆動子12a、12bに楕円運動を生じさせることによって、その楕円運動をする駆動子12a、12bと摺動部材34との摩擦によって行われる。
【0054】
ベース部31の上面に固定されたエンコーダホルダ37には、スケール35と対面するようにエンコーダ38が固定されており、スケール35とエンコーダ38によってテーブル32の位置を検出できるようになっている。なお、エンコーダ38には図示しない制御装置が電気的に接続されている。また、エンコーダ38はLED光源と光検出器からなり、スケール35には格子パターンがプリントされている。エンコーダ38は、LED光源により光をスケール35に照射し、その反射光を光検出器により検出してスケール35の格子パターンを検出することにより、テーブル32の駆動距離を計測することが可能である。また、スケール34は、原点を示すパターンがプリントされていてもよい。
【0055】
超音波モータ、スケール35、エンコーダ38、及び制御装置を用いてクローズドループ制御を行うことによって、テーブル32の正確な位置決めや速度制御を行うことができる。
【0056】
このような構成を有する本実施例に係る駆動装置は、実施例1で説明したものと同様に、テーブル32を所望の位置へ駆動させる通常駆動と、摺動部材34に付着した磨耗粉を除去するためにテーブル32を駆動させるクリーニング駆動とを行うことができる。
【0057】
通常駆動は、摺動部材34に研削用砥石14が接触しないようにネジ16のねじ込み量が調整された状態でテーブル32の駆動を行うようにしたものである。一方、クリーニング駆動は、摺動部材34に研削用砥石14が当接、押圧されるようにネジ16のねじ込み量が調整された状態でテーブル32の往復駆動を行うようにしたものである。
【0058】
本実施例に係る駆動装置では、通常駆動を繰り返し行っていくと、次第に摺動部材34と駆動子12a、12bが摩耗し、その摩耗により生じた磨耗粉が徐々に摺動部材34に付着することになるが、その摺動部材34に付着した磨耗粉を、クリーニング駆動を行うことによって除去することができる。なお、除去された磨耗粉は、そのまま落下することになるが、その後にテーブル32の駆動に影響を与えるものではない。
【0059】
クリーニング駆動を行うと、研削用砥石14は摺動部材34を微小に研削するため、摺動部材34に付着した摩耗粉(摺動部材34に塗り付けられたような磨耗粉も含む)を完全に除去することができる。また、研削用砥石14は摺動部材34に面で接触するため、硬い材質のブラシを使ったときのような局所的な傷が摺動部材34に生じる虞もなく、超音波モータ36の駆動特性を良好に維持することができる。
【0060】
なお、クリーニング駆動を行うタイミングや、クリーニング駆動時にテーブル32を往復駆動させる回数や、クリーニング駆動時にテーブル32を往復駆動させる範囲については、実施例1で説明したタイミング、回数、及び範囲と同様にして行うことができる。
【0061】
以上、本実施例に係る駆動装置によれば、研削用砥石14によって摺動部材34自体を研削することによって摺動部材34に付着した摩耗粉(摺動部材34に塗り付けられたような磨耗粉も含む)を完全に除去することができる。また、駆動子12a、12bが摩耗粉を噛み込むことによって生じる駆動効率及び駆動性能の低下や超音波モータ36の短寿命化を防止することができる。
【0062】
なお、本実施例に係る駆動装置は、次のように変形することも可能である。
例えば、本実施例では、超音波モータ36として実施例1に係る超音波モータを適用したが、実施例1に係る超音波モータを変形したもの(例えば図2に示した超音波モータ等)や、図3に示した実施例2に係る超音波モータや、実施例2に係る超音波モータを変形したものを適用することも可能である。
【0063】
また、例えば、本実施例に係る駆動装置において、摺動部材34と対面するようにLED光源及び光検出器を摩耗粉検出器としてエンコーダホルダ37に固定すると共に、それが図示しない制御装置に電気的に接続されるように構成することも可能である。この場合、摩耗粉検出器は、LED光源により光を摺動部材34に照射し、その反射光を光検出器により検出することにより、摩耗粉の堆積量を検出することが可能である。これは、摺動部材33に堆積した摩耗粉の量が増えると反射光が徐々に弱くなることを利用したものである。また、この場合に、超音波モータ36として実施例2に係る超音波モータを組み合わせるように構成することも可能である。この場合は、摩耗粉検出器により所定堆積量の摩耗粉が検出されたときに、単軸ピエゾ素子からなる砥石座21に与える電気信号を制御して研削用砥石14を摺動部材34に当接、押圧させた上でテーブル32を駆動させることによって、クリーニング駆動を自動で行わせることも可能である。
【0064】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、上述した各実施例に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良・変更が可能である。例えば、上述の各実施例において、他の実施例に係る構成を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0065】
11 振動子
12a、12b 駆動子
13 ホルダ
13a 切り欠き穴
13b 板ばね部
13c 穴
14 研削用砥石
15 砥石座
16 ネジ
21 砥石座
31 ベース部
32 テーブル
33a、33b 案内部材
34 摺動部材
35 スケール
36 超音波モータ
37 エンコーダホルダ
38 エンコーダ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動を励起する振動子と、
前記振動子に設けられた駆動子と、
前記振動子を保持する保持手段と、
前記保持手段に設けられた研削用砥石と、
を備え、
前記研削用砥石が配置調整可能に構成される、
ことを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
固定部に対して移動可能に支持された被駆動体に設けられた摺動部材に前記駆動子が当接、押圧されるように前記保持手段が前記固定部に固定されたときに、前記研削用砥石が前記摺動部材の摺動面に対して垂直方向に配置調整可能に構成される、
ことを特徴とする請求項1記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記研削用砥石が前記摺動部材に当接されるように又は当接、押圧されるように配置されたときに、前記研削用砥石は前記摺動部材と面で接触する、
ことを特徴とする請求項2記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記研削用砥石は、前記振動子の両側に設けられる、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記振動子の両側に設けられる前記研削用砥石において、一方の片側に設けられる前記研削用砥石は粒子が粗く、他方の片側に設けられる前記研削用砥石は粒子が細かい、
ことを特徴とする請求項4記載の超音波モータ。
【請求項6】
粒子が粗い前記研削用砥石が前記摺動部材に当接、押圧されるように配置されている状態で前記被駆動体が駆動しているときは、粒子の細かい前記研削用砥石は前記摺動部材に当接されないように配置され、
粒子が細かい前記研削用砥石が前記摺動部材に当接、押圧されるように配置されている状態で前記被駆動体が駆動しているときは、粒子の粗い前記研削用砥石は前記摺動部材に当接されないように配置される、
ことを特徴とする請求項5記載の超音波モータ。
【請求項7】
粒子が粗い前記研削用砥石が前記摺動部材に当接、押圧されるときの押圧力と、粒子が細かい前記研削用砥石が前記摺動部材に当接、押圧されるときの押圧力は、異なる、
ことを特徴とする請求項6記載の超音波モータ。
【請求項8】
前記研削用砥石は、ネジの作用によって配置調整可能に構成される、
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の超音波モータ。
【請求項9】
前記研削用砥石は、単軸ピエゾ素子の作用によって配置調整可能に構成される、
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の超音波モータ。
【請求項10】
ベース部と、
前記ベース部に対して移動可能に支持されたテーブルと、
前記テーブルに設けられた摺動部材と、
前記ベース部に設けられた請求項1乃至9の何れか一項に記載の超音波モータと、
を備え、
前記超音波モータの保持手段は、前記テーブルに設けられた摺動部材に前記超音波モータの駆動子が当接、押圧されるように、前記ベース部に固定され、
前記研削用砥石は、前記摺動部材の摺動面に対して垂直方向に配置調整可能に構成される、
ことを特徴とする駆動装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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