説明

超音波モータ

【課題】簡略な構成で、且つ、2つの出力軸を有する超音波モータを提供することができる。
【解決手段】中心軸に平行な方向における両端面に楕円振動が励起される積層圧電素子40を具備する超音波モータを次のように構成する。積層圧電素子40の一方端面に設けられた摩擦接触子41-1と、他方端面に設けられた摩擦接触子41-2と、摩擦接触子41-1に対して当接し、前記中心軸を回転軸として回転駆動される第1ロータ機構部10-1と、摩擦接触子41-2に対して当接し、前記中心軸を回転軸として回転駆動される第2ロータ機構部10-2と、前記中心軸に対して平行な方向への付勢力を有し、摩擦接触子41-1を介して第1ロータ機構部10-1と積層圧電素子40とを圧接させると共に、摩擦接触子41-2を介して第2ロータ機構部10-2と積層圧電素子40とを圧接させるバネ17と、を超音波モータに具備させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば圧電素子等の振動子の振動を利用する超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁型モータに代わる新しいモータとして、圧電素子等の振動子の振動を利用した超音波モータが注目されている。この超音波モータは、従来の電磁型モータと比較して、ギア無しで低速高推力が得られる点、保持力が高い点、ストロークが長く高分解能である点、静粛性に富む点、及び磁気的ノイズを発生させない点等の利点を有している。
【0003】
超音波モータでは、摩擦接触子を介して、相対運動部材である被駆動部材に超音波振動子を押し付ける(押圧する)ことで、前記摩擦接触子と前記被駆動部材との間に摩擦力を発生させ、この摩擦力によって前記被駆動部材を摺動する(摩擦駆動する)。
このような超音波モータとして、例えば縦振動と捻れ振動とを超音波振動子に同時に発生させることで、それらの振動が合成された楕円振動を当該超音波振動子に発生させ、該楕円振動を利用して前記被駆動部材を駆動する超音波モータが知られている。具体的には、例えば特許文献1に次のような技術が開示されている。
【0004】
すなわち、特許文献1には、棒状弾性体の側面において互いに対向して配置された2個の積層圧電素子の伸縮振動を利用して、前記棒状弾性体に縦振動と捻じれ振動とを同時に励起し、前記棒状弾性体の端面に設けられた摩擦接触子に楕円運動を励起させて、摩擦接触子によりロータを回転させる超音波モータが開示されている。
【0005】
この超音波モータでは、縦振動の周波数と、捻れ振動の周波数と、を略一致させる為に、前記棒状弾性体に溝部を設けている。そして、この溝部の位置を調整することで、縦振動の周波数と捻れ振動の周波数との共振周波数を略一致させている。
さらに、前記棒状弾性体の中央部には長さ方向に沿った貫通孔が設けられ、該貫通孔にシャフトが挿入されて固定されている。そして、このシャフトを基準にして支持されたロータを、上述した楕円振動から駆動力を得た前記摩擦接触子によって回転させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−117168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示されている超音波モータは、以下の理由により、組み立て容易性が良好であるとは言い難い。
すなわち、特許文献1に開示されている超音波モータでは、積層圧電素子と棒状弾性体とを接着固定しなければならない点、及び、縦振動の周波数と捻れ振動の周波数とを略一致させる為に棒状弾性体に溝部を形成しなくてはならない点、が組み立て容易性を低下させている。そして、このような組立性の不良が、当該超音波モータのモータ性能のばらつきや低下を招くことがある。
【0008】
さらに、特許文献1に開示されている超音波モータの構成は、積層圧電素子の長手方向における一端部位にのみ楕円振動が発生する構成である為、一軸の回転軸による一出力しか実現できない。従って、特許文献1に開示されている技術では、二軸二出力の超音波モータを構成することができない。
【0009】
本発明は、前記の事情に鑑みて為されたものであり、簡略な構成で、且つ、2つの出力軸を有する超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明の一態様による超音波モータは、
中心軸に垂直な断面が矩形状を呈し、該矩形状を構成する短辺と長辺との比率が所定の値に設定され、前記中心軸方向に伸縮する縦振動と、前記中心軸を捻れ軸とする捻れ振動とが同時に励起されることで、前記中心軸に平行な方向における両端面に楕円振動が励起される振動子と、
前記振動子のうち前記楕円振動が励起される一方端面に設けられた第1摩擦接触子と、
前記振動子のうち前記楕円振動が励起される他方端面に設けられた第2摩擦接触子と、
前記第1摩擦接触子に対して当接し、前記振動子の前記楕円振動を駆動源として、前記中心軸を回転軸として回転駆動される第1被駆動体と、
前記第2摩擦接触子に対して当接し、前記振動子の前記楕円振動を駆動源として、前記中心軸を回転軸として回転駆動される第2被駆動体と、
前記中心軸に対して平行な方向への付勢力を有し、前記第1摩擦接触子を介して前記第1被駆動体と前記振動子とを圧接させると共に、前記第2摩擦接触子を介して前記第2被駆動体と前記振動子とを圧接させる押圧部と、
前記第1被駆動体と前記第2被駆動体と前記押圧部と共に前記振動子を保持するフレームと、
を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡略な構成で、且つ、2つの出力軸を有する超音波モータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る超音波モータの一構成例を示す正面斜視図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態に係る超音波モータの一構成例を示す側面斜視図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態に係る超音波モータの第1のロータ機構部近傍の分解斜視図である。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態に係る超音波モータの第2のロータ機構部近傍の部材を除去し且つ積層圧電素子を取り外した状態の分解斜視図である。
【図5】図5は、本発明の第1実施形態に係る超音波モータの第2のロータ機構部近傍の部材を除去した状態の分解斜視図である。
【図6】図6は、本発明の第1実施形態に係る超音波モータの第2のロータ機構部近傍の分解斜視図である。
【図7A】図7Aは、縦1次振動モードにおける第1積層圧電素子及び第2積層圧電素子の振動状態を破線で示す斜視図である。
【図7B】図7Bは、捻れ2次振動モードにおける第1積層圧電素子及び第2積層圧電素子の振動状態を破線で示す斜視図である。
【図8A】図8Aは、積層圧電素子を構成する圧電シートの一構成例を示す図である。
【図8B】図8Bは、積層圧電素子の一積層構成例を示す図である。
【図9】図9は、積層圧電素子の各振動モードにおける共振周波数特性の一例を示す図である。
【図10A】図10Aは、第1積層圧電素子及び第2積層圧電素子の外形を示す図である。
【図10B】図10Bは、第1積層圧電素子及び第2積層圧電素子を、図10Aにおいて矢印A1で示す方向から観た図(側面図)である。
【図10C】図10Cは、第1積層圧電素子及び第2積層圧電素子を、図10Aにおいて矢印A2で示す方向から観た図(側面図)である。
【図11】図11は、本発明の第2実施形態に係る超音波モータの一構成例を示す斜視図である。
【図12】図12は、本発明の第2実施形態に係る超音波モータであって、第2ロータ機構部を除去した状態の上面図である。
【図13】図13は、本発明の第2実施形態に係る超音波モータの第2のロータ機構部を除去し且つ積層圧電素子を取り外した状態の上面斜視図である。
【図14】図14は、本発明の第2実施形態に係る超音波モータの第2のロータ機構部を除去し(出力部材のみ図示)且つ積層圧電素子を取り外した状態の分解斜視図である。
【図15】図15は、本発明の第3実施形態に係る超音波モータの一構成例を示す斜視図である。
【図16】図16は、本発明の第3実施形態に係る超音波モータであって、第1ロータ機構部及び積層圧電素子を取り外した状態の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る超音波モータについて、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る超音波モータの一構成例を示す正面斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る超音波モータの一構成例を示す側面斜視図である。図3は、本発明の第1実施形態に係る超音波モータの第1のロータ機構部近傍の分解斜視図である。図4は、本発明の第1実施形態に係る超音波モータの第2のロータ機構部近傍の部材を除去し且つ積層圧電素子を取り外した状態の分解斜視図である。図5は、本発明の第1実施形態に係る超音波モータの第2のロータ機構部近傍の部材を除去した状態の分解斜視図である。図6は、本発明の第1実施形態に係る超音波モータの第2のロータ機構部10−2近傍の分解斜視図である。
【0014】
図1に示すように、本第1実施形態に係る超音波モータは、ケース31と、第1ロータ機構部10−1と、第2ロータ機構部10−2と、積層圧電素子40と、固定板21と、固定板27と、を具備する。
前記ケース31は、第1ロータ機構部10−1と第2ロータ機構部10−2と積層圧電素子40とを収容するフレームであって、後述する略直方体形状の積層圧電素子40の長手方向(後述する各ロータ機構部10−1,10−2の回転軸と同軸方向)における両端部位、及び積層圧電素子40の一側面(主平面(面積が最大の2面)以外の側面のうちの一面)の対向部位は開口部位とされている。
【0015】
このケース31のうち積層圧電素子40の一側面側の開口部位(以降、側面開口部位と称する)は、積層圧電素子40に駆動信号を入力する為の給電部材(例えばリード線やFPC等)を配設する為の開口部位である。なお、当該超音波モータの組立後においては、給電部材を、ケース31に対して接着等により固定してもよい。
【0016】
詳細には、ケース31は、図3に示すように長手方向における両端面及び断面が略“コ”字状を呈するフレームであって、図4に示すように積層圧電素子40の主平面に対向する一対の側面を成す板状部材31F1,31F2と、これら板状部材31F1,31F2に対して垂直な一側面を成す板状部材31F3と、を備える。
【0017】
前記板状部材31F1,31F2には、積層圧電素子40の長手方向(各ロータ機構部10−1,10−2の回転軸方向)を長手方向とする長孔形状の溝部31F1s,31F2sが形成されている。この溝部31F1sには、積層圧電素子40の主平面に接着等により固定された回転規制部材40t1(詳細は後述)が挿入される。同様に、溝部31F2sには、積層圧電素子40の主平面に接着等により固定された回転規制部材40t2(詳細は後述)が挿入される。
【0018】
このように構成することで、当該超音波モータの駆動時に、積層圧電素子40に設けられた回転規制部材40t1と、板状部材31F1の溝部31F1sとが係合し、且つ、積層圧電素子40に設けられた回転規制部材40t2と、板状部材31F2の溝部31F2sとが係合する。これにより、当該超音波モータの駆動時に、積層圧電素子40が、第1ロータ機構部10−1及び第2ロータ機構部10−2と同じ方向(積層圧電素子40の捻れ振動の方向)に回転してしまうことを規制し、且つ、積層圧電素子40の厚み方向の動きを規制した状態で、当該積層圧電素子40を支持(保持)することができる。
【0019】
ここで、板状部材31F1のうち、積層圧電素子40の主平面に対向する部位には、積層圧電素子40に向かって凸の凸部31F1tが設けられている。同様に、板状部材31F2のうち、積層圧電素子40の主平面に対向する部位には、積層圧電素子40に向かって凸の凸部31F2tが設けられている。これら凸部31F1tと凸部31F2tとの間に積層圧電素子40は収容される。
【0020】
また、板状部材31F1及び板状部材31F2の長手方向における一方端面(後述する固定板21に対向する面)には、固定板21の主平面における周縁部位に形成された貫通孔21hに挿通されるピン部材31tが各々に設けられている。同様に、板状部材31F1及び板状部材31F2の長手方向における他方端面(後述する固定板27に対向する面)には、固定板27の主平面における周縁部位に形成された貫通孔27hに挿通されるピン部材31tが各々に設けられている。
【0021】
ところで、前記板状部材31F3の長手方向における両端面(固定板21に対向する面及び固定板27に対向する面)には、固定板21,27をそれぞれ当該板状部材31F3に対して螺子止めする為の螺子孔31shが各々に形成されている。
前記積層圧電素子40は、ケース31の板状部材31F1の凸部31F1tと、板状部材31F2の凸部31F2tとの間の空間において、当該積層圧電素子40の主平面が板状部材31F1と板状部材31F2とにそれぞれ対向するように配設されている。
【0022】
この積層圧電素子40のうち板状部材31F1に対向する主平面には、当該主平面の短辺を二等分する中心線上に、略棒状の回転規制部材40t1が、接着固定等により複数(本例では2個)設けられており、該回転規制部材40t1は上述した板状部材31F1の溝部31F1sに挿入されている。同様に、積層圧電素子40のうち板状部材31F2に対向する主平面には、当該主平面の短辺を二等分する中心線上に、略棒状の回転規制部材40t2が、接着固定等により複数(本例では2個)設けられており、該回転規制部材40t2は上述した板状部材31F2の溝部31F2sに挿入されている。
【0023】
詳細には、回転規制部材40t1,40t2は、積層圧電素子40の主平面のうち当該積層圧電素子40の捻り振動(第1ロータ機構部10−1及び第2ロータ機構部10−2の駆動に直接的に寄与する振動成分)を阻害しない位置(例えば捻り振動の節位置)に設けられている。本例のように、一つの主平面につきそれぞれ複数の回転規制部材を設けることで、積層圧電素子40の中心軸100c(図7A及び図7B参照)に対して、各ロータ機構部10−1,10−2の回転軸が傾かないように当該積層圧電素子40を保持することができる。
【0024】
さらに、積層圧電素子40の長手方向における一方端面(第1ロータ機構部10−1に対向する面)には、当該積層圧電素子40の振動を第1ロータ機構部10−1に伝達する為の摩擦接触子41−1が接着固定等により設けられている。同様に、積層圧電素子40の長手方向における他方端面(第2ロータ機構部10−2に対向する面)には、当該積層圧電素子40の振動を第2ロータ機構部10−2に伝達する為の摩擦接触子41−2が接着固定等により設けられている。
【0025】
詳細には、摩擦接触子41−1,41−2は、積層圧電素子40の縦振動及び捻り振動を阻害しない位置(最大振幅を得る為の位置)、すなわち積層圧電素子40の長手方向における両端面のうち長辺方向(積層圧電素子40の幅方向)の最外周部位近傍且つ短辺方向(積層圧電素子40の厚み方向)の中央部位近傍の位置に設けられている。
【0026】
ところで、前記第1ロータ機構部10−1は、図3に示すようにケース31の長手方向における一方端(下端)の開口部位(以降、下端側開口部位と称する)において、固定板21上に載置されて当該ケース31に組み付けられている。詳細には、第1ロータ機構部10−1は、軸受け12−1と、摺動板14−1と、出力部材15−1と、を備える。
【0027】
前記軸受け12−1は、後述する固定板21の第1円筒部21c1の内径(貫通孔21Hの径)と略同径の外径を有する凸部12c−1が設けられた軸受け部材である。この軸受け12−1の内径孔には、後述する出力部材15−1の出力軸15a−1と略同径であり、出力軸15a−1が挿通される。
【0028】
詳細には、この軸受け12−1は、内径面が回転可能に構成されたベアリング部材であり、上端面は出力部材15の出力基部15b−1(詳細は後述)の下端面に接触しており、凸部12c−1の外周面は固定板21の第1円筒部21c1の内周面に対して固定されている。
【0029】
前記摺動板14−1は、図1及び図3に示すように、その上端面が積層圧電素子40の下端面に設けられた摩擦接触子41−1に対して接触するよう配置され、下端面が出力部材15−1を構成する出力基部15b−1の上端面に対して例えば接着等により固定されている略円環形状の部材である。この摺動板14−1によって、積層圧電素子40の楕円振動が、摩擦接触子41−1を介して出力部材15−1に伝達される。換言すれば、摺動板14−1と出力部材15−1とが一体となって一つの被駆動体を構成している。
【0030】
前記出力部材15−1は、出力軸15a−1と、該出力軸15a−1の一方端面(下端面)に接続されている略円板形状の出力基部15b−1と、を備える。前記出力軸15a−1は、軸受け12−1の内径孔と固定板21の貫通孔21Hとに挿入されている。前記出力基部15b−1は、出力軸15a−1が設けられている面とは逆側の面(下端面)が摺動板14−1に対して接着等により固定されている。
【0031】
上述の構成を採ることで、前記第1ロータ機構部10−1からの出力は、出力部材15−1の出力軸15a−1を介して外部に伝達される(駆動力が取り出される)。
前記固定板21は、図3に示すように断面矩形で板状を呈する板部21bと、該板部21bの一方面(上面)に設けられた第1円筒部21c1と、他方面(下面)に設けられた第2円筒部21c2(前記第1円筒部21c1と同軸の円筒部)と、を備える。この固定板21には、その厚み方向に、第1円筒部21c1、板部21b及び第2円筒部21c2を貫通する貫通孔21Hが、軸受け12−1の凸部12c−1の外径と略同径の貫通孔として形成されている。
【0032】
上述したように、固定板21には、接着等により一体化された摺動板14−1と出力部材15−1とで構成される被駆動体が、軸受け12−1を介して回転自在に配設されている。
この板部21bの主平面における四隅のうちケース31の側面開口部位に対応する二隅には、上述した板状部材31F1,31F2のピン部材31tが挿通される貫通孔21hが、当該板部21bをその厚み方向に貫通して形成されている。また、この板部21bの主平面における四隅のうち残りの二隅(ケース31の螺子孔31shに対応する部位)には、図3に示すように貫通孔21shが形成されている。図1に示すように当該板部21bの貫通孔21hにケース31のピン部材31tを挿通し、且つ、図2に示すように当該板部21bの貫通孔21shとケース31の螺子孔31shとを利用して螺子srによってケース31と固定板21とを締結して両者を固定する。
【0033】
ところで、前記第2ロータ機構部10−2は、図6に示すようにケース31の長手方向における他方端側の開口部位(固定板21が組み付けられる側とは逆側の開口部位;上端側開口部位と称する)側から、積層圧電素子40上に載置され、且つ、固定板27と共にケース31に対して組み付けられる。詳細には、第2ロータ機構部10−2は、図1及び図6に示すように、軸受け12−2と、摺動板14−2と、出力部材15−2と、バネ17と、固定円板19と、を備える。
【0034】
前記軸受け12−2は、図6に示すように固定板27(詳細は後述)の円筒部27cの内径(貫通孔27Hの径)と略同径の外径の凸部12c−2が設けられたベアリング部材である。この軸受け12−2の内径孔は、後述する出力部材15−2の出力軸15a−2と略同径であり、出力軸15a−2が挿通される。
【0035】
詳細には、この軸受け12−2は、内径面が回転可能に構成されたベアリング部材であり、下端面は出力部材15−2の出力基部15b−2(詳細は後述)の上端面に接触しており、凸部12c−2の外周面は固定円板19の内周面に対して固定されている。
【0036】
前記摺動板14−2は、その下端面が積層圧電素子40の上端面に設けられた摩擦接触子41−2に対して接触するよう配置され、下端面が出力部材15−2を構成する出力基部15b−2の上端面に対して例えば接着等により固定されている略円環形状の部材である。この摺動板14−2によって、積層圧電素子40の振動が摩擦接触子41−2を介して駆動力として出力部材15−2に伝達される。換言すれば、摺動板14−2と出力部材15−2とが一つの被駆動体を構成している。
【0037】
前記出力部材15−2は、出力軸15a−2と、該出力軸15a−2の一方端面(下端面)に接続されている略円板形状の出力基部15b−2と、を備える。前記出力軸15a−2は、軸受け12−2の内径孔と固定板27の貫通孔27Hとに挿入されている。前記出力基部15b−2は、出力軸15a−2が設けられている面とは逆側の面(下端面)が摺動板14−2に接着等により固定されている。
【0038】
前記固定円板19は、固定板27の貫通孔27Hの内径より大きい凸部19cを備えている。一方、固定板27のうち固定円板19に対向する面(下端面)には、前記凸部19cの外径と略同径の凹み部(不図示)が形成されている。この固定板27の凹み部(不図示)と、固定円板19の凸部19cとで後述するコイルバネ17を挟み込む。
【0039】
前記バネ17は、出力部材15−2の出力軸15a−2が挿通された中空コイル状の押圧部材である。このバネ17は、固定板27と固定円板19とによって圧縮された状態で保持(挟持)されており、積層圧電素子40に設けられた各摩擦接触子41−1,41−2を、各ロータ機構部10−1,10−2に対して適正な押圧力で圧接させる為の押圧機構を成している。すなわち、撓んだ状態で保持されたバネ17の反発力により適切な押圧力を得ている。
【0040】
詳細には、本第1実施形態に係る超音波モータでは、各軸受け12−1,12−2を介して各ロータ機構部10−1,10−2と積層圧電素子40とを圧接させるように押圧機構を構成している。
なお、このような押圧機構は、第1ロータ機構部10−1及び第2ロータ機構部10−2のうち少なくとも何れか一方に設ければよい。
【0041】
上述の構成を採ることで、前記第2ロータ機構部10−2からの出力は、出力部材15−2の出力軸15a−2を介して外部に伝達される(駆動力が取り出される)。
前記固定板27は、板状を呈する板部27bと、該板部21bの一方端面(上端面)に設けられた円筒部27cと、を備える。この固定板27には、その厚み方向に、板部27b及び円筒部27cを貫通する貫通孔27Hが形成されており、上述した出力軸15a−2が挿通される。
【0042】
上述したように、第2ロータ機構部10−2においては、接着等により一体化された摺動板14−2と出力部材15−2とで一つの被駆動体が構成され、該被駆動体が軸受け12−2を介して回転自在にケース31に配設され、固定板27によって当該ケース31に組み付けられている。
【0043】
前記板部27bの主平面における四隅のうちケース31の側面開口部位に対応する二隅には、板状部材31F1,31F2のピン部材31tが挿通される貫通孔27hが、当該板部27bをその厚み方向に貫通して形成されている。また、この板部27bの主平面における四隅のうち残りの二隅(ケース31の螺子孔31shに対応する部位)には、貫通孔27shが形成されている。当該板部27bの貫通孔27hにケース31のピン部材31tを挿通し、且つ、当該板部27bの貫通孔27shとケース31の螺子孔31shとを利用して螺子srによってケース31と固定板27とを締結して両者を固定する。
【0044】
前記積層圧電素子40は、圧電シートが積層されて成る振動体であり、摩擦接触子41−1,41−2と、回転規制部材40t1,40t2とが設けられている。
前記回転規制部材40t1は、積層圧電素子40の一方主平面のうち捻り振動の節位置近傍に接着等により固定された突起部材であり、板状部材31F1の溝部31F1sに挿入され、後述する回転規制部材40t2と共に当該積層圧電素子40をその長手方向のみに移動可能に移動規制する。同様に、前記回転規制部材40t2は、積層圧電素子40の他方主平面のうち捻り振動の節位置近傍に接着等により固定された突起部材であり、板状部材31F2の溝部31F2sに挿入され、前記回転規制部材40t1と共に当該積層圧電素子40をその長手方向のみに移動可能に移動規制する。
【0045】
前記摩擦接触子41−1,41−2は、上述したように積層圧電素子40の縦振動及び捻り振動を阻害しない位置(最大振幅を得る為の位置)、すなわち積層圧電素子40の長手方向における両端面のうち長辺方向(積層圧電素子40の幅方向)の最外周部位近傍且つ短辺方向(積層圧電素子40の厚み方向)の中央部位近傍の位置に設けられている。そして、これら摩擦接触子41−1,41−2が、積層圧電素子40の振動を駆動源として摺動板14−1,14−2を摩擦摺動して各ロータ機構部10−1,10−2を回転させる。
【0046】
以下、本第1実施形態に係る超音波モータの組み立て工程について説明する。
まず、図3に示すように、ケース31の長手方向における下端側開口部位に第1ロータ機構部10−1と固定板21とを組み付ける。この際、上述したようにケース31のピン部材31tを固定板の貫通孔21hに挿入し、且つ、ケース31の螺子孔31shと固定板21の貫通孔21shとを利用して螺子srでケース31と固定板21とを締結することで、各部材間の位置決めが自動的に成される。
【0047】
続いて、図4及び図5に示すように、ケース31内に上端側開口部位から積層圧電素子40を配設する。この際、回転規制部材40t1を板状部材31F1の溝部31F1sに挿入し且つ回転規制部材40t2を板状部材31F2の溝部31F2sに挿入する。
【0048】
最後に、図6に示すように、ケース31の長手方向における上端側に第2ロータ機構部10−2と固定板27とを組み付ける。この際、上述したようにケース31のピン部材31tを固定板の貫通孔27shに挿入し、且つ、ケース31の螺子孔31shと固定板27の貫通孔27shとを利用して螺子srでケース31と固定板27とを締結する。以上説明した工程で組み立てることで、各部材間の位置決めが自動的に成された状態で組み上がる。
【0049】
なお、各ロータ機構部10−1,10−2は、各出力軸15a−1,15a−2によって各固定板21,27に対して位置決めされており、積層圧電素子40は上述の配設態様によりケース31に対する位置決めが成されているので、各固定板21,27を上述した態様でケース31に組み付けるだけで、それら部材同士の位置関係が必然的に最適化されて組み上がる。
【0050】
以下、積層圧電素子40の振動モードについて詳細に説明する。
図7Aは、縦1次振動モードにおける積層圧電素子40の振動状態を破線で示す斜視図である。図7Bは、捻れ2次振動モードにおける積層圧電素子40の振動状態を破線で示す斜視図である。図7A及び図7Bにおいては、振動前の積層圧電素子40の状態(形状)を実線で示し、各振動モードにおける振動時の積層圧電素子40の状態(形状)を破線で示している。
【0051】
ここで、図7A及び図7Bに示すように、略直方体形状の積層圧電素子40の中心軸100cに直交する断面を構成する短辺の長さをaとし、長辺の長さをbとし、中心軸100cに沿った高さをcとする。但し、短辺a、長辺b、高さcの大小関係は、
a<b<c
であるとする。以降の説明においては、高さc方向を、縦1次振動モードの振動の方向とし、且つ、捻れ振動の捻れの軸方向とする。
【0052】
本第1実施形態に係る超音波モータにおいては、積層圧電素子40のうち短辺a、長辺b、高さcの各寸法の値を適宜設定することで、縦1次振動モードの共振周波数と、捻れ2次振動モードまたは捻れ3次振動モードの共振周波数と、を略一致させる。
図7A及び図7Bにおいてp1,p2で示すのは捻れ振動の方向であり、qで示すのは縦振動の方向であり、Nで示すのは振動の節である。
【0053】
前記節Nは、図7Aに示す縦1次振動においては、積層圧電素子40の高さc方向の中心位置に1つ存在する。また、図7Bに示す捻れ2次振動においては、前記節Nは、高さc方向の2つの位置と中心軸(100c)の3ヶ所に存在する。
以下、積層圧電素子40を構成する圧電シートについて詳細に説明する。図8Aは、積層圧電素子40を構成する圧電シートの一構成例を示す図である。同図に示すように、積層圧電素子40は、3種類の圧電シート(第1の圧電シート401、第2の圧電シート402、第3の圧電シート403)から成る。
【0054】
これら第1の圧電シート401、第2の圧電シート402、及び第3の圧電シート403は、矩形のシート状の圧電素子であり、例えばハード系のチタン酸ジルコン酸鉛の圧電セラミックス素子(PZT)から成る。
詳細には、前記第1の圧電シート401の電極形成面上には、その長手方向における略中央位置に、+相の第1内部電極401aと+相の第2内部電極401cとが、中心線C(短辺を2等分する線)に対して対称に設けられている。
【0055】
同様に、前記第2の圧電シート402の電極形成面上には、その長手方向における略中央位置に、−相の第1内部電極402aと−相の第2内部電極402cとが、中心線C(短辺を2等分する線)に対して対称に設けられている。
ここで、前記+相の第1内部電極401aは、矩形形状を呈する第1の圧電シート401の一方長辺に向かって延びて露出する端部401aeを備えている。前記+相の第2内部電極401cは、矩形形状を呈する第1の圧電シート401の他方長辺に向かって延びて露出する端部401ceを備えている。
【0056】
同様に、前記−相の第1内部電極402aは、矩形形状を呈する第2の圧電シート402の一方長辺に向かって延びて露出する端部402aeを備えている。前記−相の第2内部電極402cは、矩形形状を呈する第2の圧電シート402の他方長辺に向かって延びて露出する端部402ceを備えている。
【0057】
ここで、上述の各内部電極401a,401c,402a,402cは、例えば厚さ4μmの銀パラジウム合金から成る。また、上述の各内部電極401a,401c,402a,402cが設けられている位置は、積層圧電素子40のうち捻り振動の応力が最大となる位置に対応する位置である。
【0058】
前記第3の圧電シート403は、第1の圧電シート401及び第2の圧電シート402と同形状であって、且つ、内部電極が設けられていないシート状の部材である。つまり、第3の圧電シート403は、絶縁層を成す圧電シートである。
図8Bは、積層圧電素子40の一積層構成例を示す図である。同図に示すように、第1積層部位411と、第2積層部位412と、第3積層部位413と、第4積層部位414と、第5積層部位415と、から成る。
【0059】
詳細には、これら各積層部位(第1積層部位411、第2積層部位412、第3積層部位413、第4積層部位414、第5積層部位415)の積層構成は、上述した各圧電シートが次のように積層されて成る部位である。
《第1積層部位411》
第1積層部位411は、少なくとも1枚の第3の圧電シート403から成る(複数枚の第3の圧電シート403から成る場合は、第3の圧電シート403がその厚み方向に積層されて成る)。
《第2積層部位412》
第2積層部位412は、第1積層部位411上に積層された部位であって、第1の圧電シート401と第2の圧電シート402とがその厚み方向に交互に積層されて成る。
《第3積層部位413》
第3積層部位413は、第2積層部位412上に積層された部位であって、少なくとも1枚の第3の圧電シート403から成る(複数枚の第3の圧電シート403から成る場合は、第3の圧電シート403がその厚み方向に積層されて成る)。
《第4積層部位414》
第4積層部位414は、第3積層部位413上に積層された部位であって、第1の圧電シート401と第2の圧電シート402とがその厚み方向に交互に積層されて成る。
《第5積層部位415》
第5積層部位415は、第4積層部位414上に積層された部位であって、少なくとも1枚の第3の圧電シート403から成る(複数枚の第3の圧電シート403から成る場合は、第3の圧電シート403がその厚み方向に積層されて成る)。
【0060】
上述の構成を採る積層圧電素子40の寸法は、積層圧電素子が有する下記の特性を利用して決定している。すなわち、積層圧電素子の高さcを一定として、(短辺の長さa/長辺の長さb)の値を横軸にとり、各振動モードにおける共振周波数の値を縦軸にとると、図9に示す特性を得ることができる。すなわち、
・縦1次振動モードにおける共振周波数の値は、(a/b)の値に依存せず、略一定の値をとる。
・捻れ1次振動モード、捻れ2次振動モード、及び捻れ3次振動モードにおける共振周波数の値は、(a/b)の値の増加に従って、増加していく。
・捻れ1次振動モードにおける共振周波数は、(a/b)の値がどのような値であっても、縦1次振動モードにおける共振周波数と一致することは無い。
・捻れ2次振動モードにおける共振周波数は、(a/b)の値が0.6となる近傍で、縦1次振動モードにおける共振周波数と一致する。
・捻れ3次振動モードにおける共振周波数は、(a/b)の値が0.3となる近傍で、縦1次振動モードにおける共振周波数と一致する。
【0061】
上述したような特性の為、本第1実施形態においては下記のように(a/b)の値を設定する。すなわち、
・縦1次振動モードと捻れ2次振動モードとを利用する場合、(a/b)の値が0.6〜0.7となるように、積層圧電素子40の短辺の長さa及び長辺の長さbを設定する。
【0062】
つまり本第1実施形態に係る超音波モータにおいては、積層圧電素子40の中心軸100c方向に伸縮する縦1次共振振動と、中心軸100cを捻れ軸とする捻れ2次共振振動と、の共振周波数が略一致するように、積層圧電素子40における短辺の長さaと長辺の長さbとの比(比率)を設定する。
【0063】
なお、縦1次振動モードと捻れ2次振動子モードとを利用して駆動する場合には、第1ロータ機構部10−1の回転方向と第2ロータ機構部10−2の回転方向とは同方向となる。他方、縦1次振動モードと捻れ3次振動子モードとを利用して駆動する場合には、第1ロータ機構部10−1の回転方向と第2ロータ機構部10−2の回転方向とは互いに逆方向となる。
【0064】
図10Aは、積層圧電素子40の外形を示す図である。図10Bは、積層圧電素子40を、図10Aにおいて矢印A1で示す方向から観た図(側面図)である。図10Cは、積層圧電素子40を、図10Aにおいて矢印A2で示す方向から観た図(側面図)である。
【0065】
図10Bに示すように、積層圧電素子40の一方側面には、第2積層部位において端部401ae同士,端部402ae同士をそれぞれ接続(短絡)する外部電極101B+,101B−と、第4積層部位において端部401ae同士,端部402ae同士をそれぞれ接続(短絡)する外部電極101A+,101A−が設けられている。外部電極101A+はA+相の外部電極を成し、外部電極101A−はA−相の外部電極を成し、外部電極101B+はB+相の外部電極を成し、外部電極101B−はB−相の外部電極を成している。
【0066】
また、図10Cに示すように、積層圧電素子40の他方側面には、第2積層部位において端部401ce同士,端部402ce同士をそれぞれ接続(短絡)する外部電極101D+,101D−と、第4積層部位において端部401ce同士,端部402ce同士をそれぞれ接続(短絡)する外部電極101C+,101C−が設けられている。外部電極101C+はC+相の外部電極を成し、外部電極101C−はC−相の外部電極を成し、外部電極101D+はD+相の外部電極を成し、外部電極101D−はD−相の外部電極を成している。
【0067】
なお、図示はしていないが、これらの各外部電極には例えばFPCが固着されており、該FPCを介して所定の電源から駆動電圧が印加される。
ここで、積層圧電素子40のうち、少なくとも、+相の第1内部電極401aと−相の第1内部電極402aとが互いに対向する部分、及び、+相の第2内部電極401cと−相の第2内部電極402cとが互いに対向する部分は、圧電的に活性化された圧電活性化領域である。
【0068】
詳細には、+相の第1内部電極401aと−相の第1内部電極402aとの間、及び、+相の第2内部電極401cと−相の第2内部電極402cとの間には高電圧が印加されて圧電的に活性化されている。
ところで、積層圧電素子40のC相とD相とについては、それぞれA相とB相と同様に駆動電圧を印加する。これにより、当該超音波モータの駆動力をより大きくすることができる。
【0069】
なお、積層圧電素子40のC相とD相とについては、各積層圧電素子の振動を検出する為の振動検出相として利用しても勿論よいし、何ら使用しなくても勿論よい。
以上説明したように、本第1実施形態に係る超音波モータによれば、簡略な構成で、且つ、2つの出力軸を有する超音波モータを提供することができる。具体的には、構成の簡略化によって組立容易性が向上することでモータ性能自体も向上し、且つ、組立工程数の削減及び製造コスト低減も実現する。更に、1個の振動体(積層圧電素子)を用いて2軸の出力軸を得ることが可能となり、従来にないアプリケーションの利用が見込まれる。更に、組立工程の削減に伴って、モータ性能のばらつきが低下し、モータ性能の安定性が向上する。
【0070】
なお、本第1実施形態に示す例のように、振動体として、内部電極が形成された板状の圧電シートを積層して成る積層圧電素子を用いることで、低電圧駆動が可能となる。
以上、第1実施形態に基づいて本発明を説明したが、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形及び応用が可能なことは勿論である。
【0071】
例えば、積層圧電素子40の側面において、A相の外部電極101AとD相の外部電極101Dとの同極同士を短絡し、且つ、B相の外部電極101BとC相の外部電極101Cとの同極同士を短絡することで、配線を削減することができる。なお、各圧電シート401,402においては、このような外部電極同士の短絡を可能とするパターンの内部電極を形成する。このように構成することで、通常は正極及び負極で8つの配線(ランド)が必要となるところ、4つの配線(ランド)で4つの駆動電極による駆動が可能となり、当該積層圧電素子40の一側面のみへの配線で4相の外部電極を全て使用することが可能となる。
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る超音波モータについて説明する。説明の重複を避ける為、上述した第1実施形態に係る超音波モータとの相違点について説明する。
【0072】
図11は、本発明の第2実施形態に係る超音波モータの一構成例を示す斜視図である。図12は、本発明の第2実施形態に係る超音波モータであって、第2ロータ機構部を除去した状態の上面図である。図13は、本発明の第2実施形態に係る超音波モータの第2のロータ機構部を除去し且つ積層圧電素子を取り外した状態の上面斜視図である。図14は、本発明の第2実施形態に係る超音波モータの第2のロータ機構部を除去し(出力部材のみ図示)且つ積層圧電素子を取り外した状態の分解斜視図である。
【0073】
本第2実施形態に係る超音波モータと上述の第1実施形態に係る超音波モータとの主な相違点の一つは、積層圧電素子40の保持及び位置決めの為の構成である。本第2実施形態に係る超音波モータでは、積層圧電素子40の下端面(第1ロータ機構部10−1対向する面)には接着等により位置決めピン43−1が固定され、且つ、積層圧電素子40の上端面(第2ロータ機構部10−2対向する面)には接着等により位置決めピン43−2が固定されている。
【0074】
詳細には、前記位置決めピン43−1は、積層圧電素子40の下端面のうち長辺方向且つ短辺方向の中心(第1ロータ機構部10−1の回転軸(中心軸))上に、当該下端面に対して垂直に凸となるように例えば接着等により固定されている。同様に、前記位置決めピン43−2は、積層圧電素子40の上端面のうち長辺方向且つ短辺方向の中心(第2ロータ機構部10−2の回転軸(中心軸))上に、当該上端面に対して垂直に凸となるように例えば接着等により固定されている。
【0075】
一方、第1ロータ機構部10−1の摺動板14−1には前記位置決めピン43−1が挿入されるピン挿入孔14h−1が形成され、且つ、第1ロータ機構部10−1の出力部材15−1には前記位置決めピン43−1が挿入されるピン挿入孔15h−1が形成されている。これらピン挿入孔14h−1,15h−1が形成される位置は、各部材のうち第1ロータ機構部10−1の回転軸に対応する位置である。
【0076】
同様に、第2ロータ機構部10−2の摺動板14−2には前記位置決めピン43−2が挿入されるピン挿入孔(不図示)が形成され、且つ、第2ロータ機構部10−2の出力部材15−2には前記位置決めピン43−2が挿入されるピン挿入孔15h−2が形成されている。これらピン挿入孔(不図示)が形成される位置は、各部材のうち第2ロータ機構部10−2の回転軸に対応する位置である。
【0077】
そして、上述の位置決めピン43−1,43−2を、それぞれ対応するピン挿入孔に挿入するように第1ロータ機構部10−1と第2ロータ機構部10−2と積層圧電素子40とを組み付けることで、第1ロータ機構部10−1の回転軸と、第2ロータ機構部10−2の回転軸と、積層圧電素子40の捻れ軸(捻れ振動の軸)とが一致する。
【0078】
ところで、本第2実施形態に係る超音波モータでは、駆動時に積層圧電素子40が各ロータ機構部10−1,10−2の回転方向と同方向に回転してしまわないように、ケース31自体で積層圧電素子40の回転規制を行う(第1実施形態に係る超音波モータにおける回転規制部材40t1,40t2を設けない)。
【0079】
具体的には、第1板状部材31F1の凸部31F1tと、第2板状部材31F2の凸部31F2tとの間の距離が、積層圧電素子40の厚みよりも僅かに長くなるように(積層圧電素子40の主平面と凸部31F1t,31F2tとが必要十分な(積層圧電素子40の振動を阻害しない程度の)隙間を保った状態となるように)、それら凸部31F1t’,31F2t’が設けられている。換言すれば、積層圧電素子40は、第1板状部材31F1の凸部31F1t’と、第2板状部材31F2の凸部31F2t’とによって挟み込まれた状態でケース31に保持されている。
【0080】
そして、第3板状部材31F3には、図12に示すように積層圧電素子40に向かって凸の凸部31F3tが設けられておる。この凸部31F3tに対して積層圧電素子40が突き当たることで(当て付けられることで)、積層圧電素子40の移動規制が成される。また、この凸部31F3tによって、各ロータ機構部10−1,10−2と当該第3板状部材31F3との間に、各ロータ機構部10−1,10−2が回転可能な程度の距離が保たれる。この凸部31F3tは、積層圧電素子40に対して、その捻り振動の節位置近傍で接触するように設けられている。
【0081】
以上説明したように、本第2実施形態によれば、第1実施形態に係る超音波モータと同様の効果を奏する超音波モータを提供することができる。
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態に係る超音波モータについて説明する。説明の重複を避ける為、上述した第1実施形態に係る超音波モータとの相違点について説明する。
【0082】
図15は、本発明の第3実施形態に係る超音波モータの一構成例を示す斜視図である。図16は、本発明の第3実施形態に係る超音波モータであって、第1ロータ機構部及び積層圧電素子を取り外した状態の分解斜視図である。
本第2実施形態に係る超音波モータと上述の第1実施形態に係る超音波モータとの主な相違点は、積層圧電素子40の保持及び位置決めの為の構成、並びに積層圧電素子40の配線構成である。
【0083】
本第3実施形態に係る超音波モータでは、駆動時に積層圧電素子40が各ロータ機構部10−1,10−2の回転方向と同方向に回転してしまわないように、ケース31自体で積層圧電素子40の回転規制を行う(第1実施形態に係る超音波モータにおける回転規制部材40t1,40t2を設けない)と共に、FPC(Flexible Print Circuits)を利用して給電並びに当該積層圧電素子40の回転規制及び位置決めを行う。
【0084】
具体的には、第1板状部材31F1の凸部31F1tと、第2板状部材31F2の凸部31F2tとの間の距離が、積層圧電素子40の厚みよりも僅かに長くなるように(積層圧電素子40の主平面と凸部31F1t’,31F2t’とが必要十分な(積層圧電素子40の振動を阻害しない程度の)隙間を保った状態となるように)、それら凸部31F1t’,31F2t’が設けられている。換言すれば、積層圧電素子40は、第1板状部材31F1の凸部31F1t’と、第2板状部材31F2t’とによって挟み込まれた状態でケース31に保持されている。
【0085】
そして、第3板状部材31F3には、図12に示すように積層圧電素子40に向かって凸の凸部31F3tが設けられている。この凸部31F3tに対して積層圧電素子40が突き当たることで(当て付けられることで)、積層圧電素子40の移動規制が成される。また、この凸部31F3tによって、各ロータ機構部10−1,10−2と当該第3板状部材31F3との間に、各ロータ機構部10−1,10−2が回転可能な程度の距離が保たれる。この凸部31F3tは、積層圧電素子40に対して、その捻り振動の節位置近傍で接触するように設けられている。
【0086】
ところで、FPC70は、所謂フレキシブルプリント基板であり、本第3実施形態に係る超音波モータでは積層圧電素子40に給電する為の配線を構成している。このFPC70には、その厚み方向に貫通している貫通孔70hが所定の位置に形成されている。この貫通孔70hは、積層圧電素子40の位置決め及びケース31への固定に利用される。
【0087】
すなわち、図16に示すように、FPC70の一端を積層圧電素子40の所定位置に対して固定した状態で、前記貫通孔70hに、第1板状部材31F1の凸部31F1t´に設けられた挿入突起部31htを挿入するように、積層圧電素子40をケース31の側面開口部位側から配設する。
【0088】
ここで、第1板状部材31F1の凸部31F1t´において挿入突起部31htが設けられる位置、及び前記FPC70において貫通孔70hが設けられる位置は、挿入突起部31htを貫通孔70hに挿入するように積層圧電素子40をケース31内に配設したときに、当該積層圧電素子40が予め定められた最適な位置に収まるような位置である。
【0089】
以上説明したように、本第3実施形態によれば、第1実施形態に係る超音波モータと同様の効果を奏する上に、次のような効果を奏する超音波モータを提供することができる。
FPC70を利用することで配線を簡略化し、且つ、当該FPC70を利用して、積層圧電素子40の位置規制(回転規制、すなわち各ロータ機構部10−1,10−2との接触面に対して平行な方向における規制)を行う。これにより、積層圧電素子40の位置決めの為に当該積層圧電素子40に接着固定する部材が不要となり、積層圧電素子40の振動阻害要因を減少させることができる。つまり、モータ性能が向上する。また、接着工程が不要となることで、組立工数も削減される。
【0090】
以上、第1実施形態乃至第3実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形及び応用が可能なことは勿論である。
さらに、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示した複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示す全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0091】
10−1…第1ロータ機構部、 10−2…第2ロータ機構部、 12c−1…凸部、 14−1,14−2…摺動板、 14h−1…ピン挿入孔、 15−1,15−2…出力部材、 15a−1,15a−2…出力軸、 15b−1,15b−2…出力基部、 15h−1…ピン挿入孔、 17…バネ、 19…固定円板、 19c…凸部、 21…固定板、 21h…貫通孔、 21、27…固定板、 21c1…第1円筒部、 21b…板部、 21c2…第2円筒部、 21sh…螺子孔、 27…固定板、 27h…貫通孔、 27c…円筒部、 27H…貫通孔、 27b…板部、 27sh…螺子孔、 31…ケース、 31F1,31F2,31F3…板状部材、 31F1s,31F2s…溝部、 31F1t,31F2t…凸部、 31t…ピン部材、 31sh…螺子孔、 31…フレーム、 31h…螺子孔、 31F3t…凸部、 31ht…挿入突起部、 40…積層圧電素子、 40t1,40t2…回転規制部材、 41−1,41−2…摩擦接触子、 43−1,43−2…ピン、 70…FPC、 70h…貫通孔、 100c…中心軸、 101A,101B,101C,101D…外部電極、 401a,401c,402a,402c…内部電極、 401ae,401ce,402ae,402ce…端部、 401…第1の圧電シート、 402…第2の圧電シート、 403…第3の圧電シート、 411…第1積層部位、 412…第2積層部位、 413…第3積層部位、 414…第4積層部位、 415…第5積層部位。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に垂直な断面が矩形状を呈し、該矩形状を構成する短辺と長辺との比率が所定の値に設定され、前記中心軸方向に伸縮する縦振動と、前記中心軸を捻れ軸とする捻れ振動とが同時に励起されることで、前記中心軸に平行な方向における両端面に楕円振動が励起される振動子と、
前記振動子のうち前記楕円振動が励起される一方端面に設けられた第1摩擦接触子と、
前記振動子のうち前記楕円振動が励起される他方端面に設けられた第2摩擦接触子と、
前記第1摩擦接触子に対して当接し、前記振動子の前記楕円振動を駆動源として、前記中心軸を回転軸として回転駆動される第1被駆動体と、
前記第2摩擦接触子に対して当接し、前記振動子の前記楕円振動を駆動源として、前記中心軸を回転軸として回転駆動される第2被駆動体と、
前記中心軸に対して平行な方向への付勢力を有し、前記第1摩擦接触子を介して前記第1被駆動体と前記振動子とを圧接させると共に、前記第2摩擦接触子を介して前記第2被駆動体と前記振動子とを圧接させる押圧部と、
前記第1被駆動体と前記第2被駆動体と前記押圧部と共に前記振動子を保持するフレームと、
を具備することを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記振動体が前記中心軸方向に垂直な面内で前記フレームに対して相対移動することを規制する為の回転規制部材と、
前記第1被駆動体と前記第2被駆動体とを前記フレームに対して位置決めする位置決め部材と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記第1被駆動体を、前記中心軸方向における前記フレームの一方端部に対して固定する第1固定部と、
前記第2被駆動体を、前記中心軸方向における前記フレームの他方端部に対して固定する第2固定部と、
を含み、
前記押圧部は、前記第1固定部と前記第2固定部との間に配設され、前記第2固定部と前記第2被駆動体とによって前記中心軸方向に圧縮された状態で挟持されて所定の付勢力を生じ、該付勢力によって、前記第2被駆動体を前記中心軸方向に沿って前記第1固定部に向かって押圧することで、前記第1摩擦接触子を介して前記第1被駆動体と前記振動子とを圧接させると共に、前記第2摩擦接触子を介して前記第2被駆動体と前記振動子とを圧接させる
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記第1被駆動体と前記第2被駆動体とは、同軸で回転駆動される
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記回転規制部材は、
前記押圧部による押圧方向を長手方向とする、前記フレームに形成された長孔形状のスリットと、
前記フレームの前記スリットに挿入され、前記スリットと係合することで、前記押圧方向に垂直な面内における前記振動子の移動を規制する、前記振動体に設けられた回転規制凸部と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の超音波モータ。
【請求項6】
前記回転規制凸部は、前記振動子のうち前記捻れ振動の節位置近傍に設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の超音波モータ。
【請求項7】
前記回転規制部材は、前記振動体のうち前記捻れ振動の節位置近傍に当て付けられた突起部であり、
前記位置決め部材は、
前記第1被駆動体のうち前記中心軸に対応する位置に前記中心軸方向に形成された第1孔部と、
前記第2被駆動体のうち前記中心軸に対応する位置に前記中心軸方向に形成された第2孔部と、
前記振動体のうち前記第1被駆動体に対向する面に設けられ、前記第1孔部に挿入される第1位置決め突起部と、
前記振動体のうち前記第2被駆動体に対向する面に設けられ、前記第2孔部に挿入される第2位置決め突起部と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の超音波モータ。
【請求項8】
前記振動体には、前記振動体に給電する為のフレキシブルプリント基板が固定されて設けられており、
前記フレームは、前記フレキシブルプリント基板を当該フレームに対して固定する為の係合部を備えており、
前記フレキシブルプリント基板は、前記振動体が前記フレーム内部における所定位置に位置したときに前記フレームの前記係合部と係合する被係合部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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