説明

超音波振動子およびそれを用いる超音波診断装置

【課題】超音波振動子において、線数を削減する。
【解決手段】無機の送信用圧電層Tおよび有機の受信用圧電層Rを積層して成る超音波振動子1において、2層の間の中間電極Pを個別電極とするとともに、受信用圧電層Rに各圧電素子Aに個別の信号電極Qを、送信用圧電層Tに共通のGND電極Sを形成する。そして、2つの圧電層T,Rの側面に、光照射の有無に応答して導通状態と遮断状態とに切換わる感光層OP1,OP2を形成するとともに、光源L1,L2を設け、制御回路2がそれらの光源L1,L2を送受信に応答して相反動作させる。したがって、(a)で示すように光源L1を点灯、光源L2を消灯させると、送信用圧電層Tを使用した送信動作が可能になり、(b)で示すように光源L2を点灯、光源L1を消灯させると、受信用圧電層Rを使用した受信動作が可能になる。こうして、送受信で信号線を共用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に使用される超音波探触子(プローブ)における超音波振動子の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
前記超音波診断装置は、超音波パルス反射法により、体表から生体内の軟組織の断層像を無侵襲に得る医療用画像機器である。この超音波診断装置は、他の医療用画像機器に比べ、小型で安価、X線などの被爆がなく安全性が高い、ドップラー効果を応用して血流イメージングが可能等、多くの特長を有し、循環器系(心臓の冠動脈)、消化器系(胃腸)、内科系(肝臓、膵臓、脾臓)、泌尿科系(腎臓、膀胱)、および産婦人科系などで広く利用されている。
【0003】
このような医療用超音波診断装置に使用される超音波探触子は、高感度、高解像度の超音波の送受信を行うために、圧電振動子の圧電効果が一般的に利用される。さらに、画像の分解能や高精細さ、或いは、スペックルノイズの低減、アーチファクトの低減等には、前記圧電振動子の広帯域化が有用であり、そのような特性をもつ圧電振動子が望まれていた。そこで、広帯域な画像が得られるとして、特許文献1によるシリコンマイクロマシーニング技術を用いてシリコン半導体基板を加工した超音波トランスデューサ(Micromachined Ultrasonic Transducer(以下、cMUTと称する))が注目を集めている。しかしながら、この従来技術は、複雑なアレイ製作をMEMS(Micro Electro-Mechanical System :超小型電気・機械システム)技術で達成できるものの、送受信感度が低いという問題点があった。同様に、圧電振動子として、前記cMUTのようなセラミックに対して、ポリマーは受信帯域がさらに広いという特徴を有するものの、感度が低いという欠点を有しているので、この克服の技術が求められているが、良い方法が見つかっていなかった。
【0004】
一方、高調波信号を用いた組織ハーモニックイメージング(THI)診断は、従来のBモード診断では得られない鮮明な診断像が得られることから、標準的な診断モダリティとなりつつある。前記ハーモニックイメージングは、基本波に比較して、サイドローブレベルが小さいことで、S/Nが良く、コントラスト分解能が良くなること、周波数が高くなることでビーム幅が細くなり横方向分解能が良くなること、近距離では音圧が小さく、さらに音圧の変動が少ないので多重反射が起こらないこと、焦点以遠の減衰は基本波並みであり、高調波の超音波は基本波の超音波に比べ深速度を大きく取れること、という多くの利点を有している。
【0005】
そこで、前記ハーモニックイメージング用のアレイ型超音波探触子の具体的な構造として、アレイを構成する各振動子エレメントが広帯域一体型の圧電振動子が用いられている。その広帯域特性の低周波側の領域で基本波送信を行い、高周波側の領域で高調波受信を行う方法が一般的に利用されている。このような状況下において、ハーモニック感度の向上を図る技術として特許文献2に記載されたものが知られている。これは、微細な柱状のセラミック圧電素子をエポキシ樹脂のような有機化合物で固めた振動子を超音波送受信素子として使用し、各柱状セラミックを縦振動を行なわせることによって、前記ハーモニック感度の向上を図ったものである。
【0006】
また、他のハーモニックイメージング用アレイ型超音波探触子の具体的な構造として、特許文献3には、送信用圧電振動子と受信用圧電振動子とを別体配置とした送受信分離型探触子が提案されている。
【0007】
さらにまた、特許文献4では、基本波を送信し、高調波を含む超音波を受信するのに、第1の音響インピーダンスを有する配列された複数の第1の圧電素子から成る中心周波数f1の超音波の送受信を担う第1の圧電層に、第2の音響インピーダンスを有する配列された複数の第2の圧電素子から成り、前記第1の圧電層に重ねられた第2の圧電層を設けることが提案されている。すなわち、広い帯域を得る超音波送受信素子にするために、圧電セラミック素子を積層化し、見かけ上のインピーダンスを低下させて駆動回路との電気的な整合条件を良好にし、素子にかかる電界強度を大きくして大きな歪を発生させ、送信感度を向上させることが行われている。
【0008】
前記のような従来の超音波探触子は、使用中心周波数foが予め設定されてしまうので、その周波数によって生体の診断深さが決まってしまい、前記診断深さに自由度がなく、制限を受けるという問題がある。このため、1〜5MHzの低周波の探触子は深部を、6〜10MHzの周波数の探触子は中程度の深さを、11〜25MHzの高周波の探触子は生体の表面に近い部位を診断するという具合に、探触子を使い分けるのが定法となっていた。そこで、新規な取り組みとして、送信用にはPZTのようなセラミック圧電素子を低周波に使用し、受信用にPVDFのような広帯域の有機圧電素子を高周波に利用する方法が提案された(非特許文献1,2)。
【特許文献1】特開平10−85221号公報
【特許文献2】特開2000−300559号公報
【特許文献3】特開2006−192031号公報
【特許文献4】特開2003−305043号公報
【非特許文献1】The Journal of the Acoustic Society of America --May 1998 Volume103、Issue 5, p.3041 「Study of compund structured ultrasonic tranducer made of PZT/PVDF」 Moor Joon Kim et. al.
【非特許文献2】「PZT/PVDF多層構造の超音波複合圧電素子の研究」(中国南京大学音響学研究所の南京大学報:数学半年刊1999年5期頁636ー638)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献4から非特許文献1,2の積層構造では、送信用の圧電層と受信用の圧電層とにそれぞれ電極を形成しなければならず、たとえば中間をベタの共用電極、上下の面にそれぞれ個別の電極を形成することになり、素子数Nに対して、2N+1本の信号線が必要になる。したがって、線数が多くなるとともに、送信信号の受信信号へのクロストークが発生するという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、線数を削減することができるとともに、クロストークを防止することができる超音波振動子およびそれを用いる超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の超音波振動子は、複数の圧電素子を有し、各圧電素子は送信用圧電層と受信用圧電層とを積層して成る超音波振動子において、前記送信用圧電層と受信用圧電層との対向面間および離反面に形成される電極と、素子分離された各圧電素子の側部において、前記2つの圧電層の何れかをバイパスするように設けられ、光照射の有無に応答して導通状態と遮断状態とに切換わる感光層と、前記感光層にそれぞれ臨む光源と、送受信に応答して、前記光源を点滅動作させる制御手段とを含むことを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、複数の圧電素子を有し、各圧電素子は送信に適した送信用圧電層と受信に適した受信用圧電層とを積層して成る超音波振動子において、2層の間および2層の外表面にそれぞれ形成される電極に対して、素子分離された各圧電素子の側部において、前記2つの圧電層の何れかをバイパスするように、光照射の有無に応答して導通状態と遮断状態とに切換わる感光層を設けるとともに、その感光層に光照射を行う光源に、送受信に応答して、前記光源を点滅動作させる制御手段を設ける。
【0013】
したがって、2層積層の圧電素子において、2層のうちの少なくとも一方が感光層でバイパスされる場合が生じ、その際、前記送信用圧電層と受信用圧電層との間に設けられる電極が2つの離反面の電極の内のバイパスされた側と一体となる。これによって、その電極に接続されるべき信号線を送受信で共用して、線数を削減することができるとともに、送信信号の受信信号へのクロストークを防止し、S/Nを向上することができる。
【0014】
また、本発明の超音波振動子は、1次元配列された複数の圧電素子を有し、各圧電素子は送信用圧電層と受信用圧電層とを積層して成る超音波振動子において、前記送信用圧電層と受信用圧電層との対向面間に形成され、前記各圧電素子に個別の中間電極と、前記送信用圧電層と受信用圧電層との内の一方で、離反面に形成され、前記各圧電素子に個別の信号電極と、前記送信用圧電層と受信用圧電層との内の他方で、離反面に形成され、前記各圧電素子に共通のGND電極と、前記積層される2つの圧電層の一方の側面に形成され、前記複数の中間電極と信号電極とを個別に接続し、光照射の有無に応答して導通状態と遮断状態とに切換わる第1の感光層と、前記積層される2つの圧電層の他方の側面に形成され、前記中間電極とGND電極とを共通に接続し、光照射の有無に応答して導通状態と遮断状態とに切換わる第2の感光層と、前記第1および第2の感光層にそれぞれ臨む第1および第2の光源と、送受信に応答して、前記第1および第2の光源を相反動作させる制御手段とを含むことを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、1次元配列された複数の圧電素子を有し、各圧電素子は送信に適した送信用圧電層と受信に適した受信用圧電層とを積層して成る超音波振動子において、通常、そのような1次元配列で2層積層の圧電素子の場合、送信用圧電層と受信用圧電層との対向面間に形成され(挟み込まれ)る中間電極は、ベタのGND電極とされ、前記送信用圧電層と受信用圧電層との離反面にそれぞれ個別電極を形成し、送信電極および受信電極とされるところ、本願発明では、中間電極を個別電極とするとともに、前記送信用圧電層と受信用圧電層との内の一方の離反面に形成されるのは各圧電素子に個別の信号電極であるものの、他方に形成されるのを共通のGND電極とする。そして、光照射の有無に応答して導通状態と遮断状態とに切換わり、前記積層される2つの圧電層の一方の側面には前記複数の中間電極と信号電極とを個別に接続する第1の感光層を形成し、他方の側面には前記中間電極とGND電極とを共通に接続する第2の感光層を形成するとともに、それらの感光層にそれぞれ臨んで第1および第2の光源を設け、制御手段がそれら第1および第2の光源を送受信に応答して相反動作させる。
【0016】
したがって、2層積層の圧電素子において、送信の際は受信用圧電層が第1および第2の感光層の一方で短絡され、受信の際は送信用圧電層が第1および第2の感光層の他方で短絡され、その短絡された層の両面の電極が一体となる。これによって、前記信号電極に接続されるべき信号線を送受信で共用して、素子数Nに対して、N+1本に線数を削減することができるとともに(第1および第2の光源への電源線は、これらの光源が超音波振動子の外部に設けられるため、問題にはならない)、送信信号の受信信号へのクロストークを防止し、S/Nを向上することができる。また、超音波振動子の電極および配線はメッキなどで形成され、剥離し易いのに対して、有機感光体などから成る第1および第2の感光層は、強固な固着ができ、かつ確実なスイッチングも可能である。
【0017】
さらにまた、本発明の超音波振動子は、2次元配列された複数の圧電素子を有し、各圧電素子は送信用圧電層と受信用圧電層とを積層して成る超音波振動子において、前記送信用圧電層と受信用圧電層とは、相互に異なる面積に形成されており、前記送信用圧電層と受信用圧電層との対向面間に形成され、前記各圧電素子に共通の第1の中間電極と、前記送信用圧電層と受信用圧電層との対向面側で、前記異なる面積による大面積側において、小面積側が重ならない部分に形成され、前記各圧電素子に個別の第2の中間電極と、前記送信用圧電層と受信用圧電層との内の小面積側の離反面に形成され、前記各圧電素子に個別の信号電極と、前記送信用圧電層と受信用圧電層との内の大面積側の離反面に形成され、前記各圧電素子に共通のGND電極と、前記積層される2つの圧電層の内、前記小面積側の圧電層の側面に形成されて前記第2の中間電極と信号電極とを接続し、光照射の有無に応答して導通状態と遮断状態とに切換わる感光層と、前記感光層に臨む光源と、送受信に応答して、前記光源を点滅動作させる制御手段とを含むことを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、2次元配列された複数の圧電素子を有し、各圧電素子は送信に適した送信用圧電層と受信に適した受信用圧電層とを積層して成る超音波振動子において、前記送信用圧電層と受信用圧電層とを相互に異なる面積に形成しておき、それらの間に共通電極となる第1の中間電極を形成するとともに、はみ出た部分に個別電極となる第2の中間電極を形成し、さらに前記送信用圧電層と受信用圧電層との内の小面積側の離反面に各圧電素子に個別の信号電極を形成し、大面積側の離反面に共通のGND電極を形成する。そして、積層される2つの圧電層の内、前記小面積側の圧電層の側面(段差、隙間)に、前記第2の中間電極と信号電極とを接続し、光照射の有無に応答して導通状態と遮断状態とに切換わる感光層を形成するとともに、その感光層に臨んで光源を設け、制御手段がその光源を送受信に応答して点滅動作させる。
【0019】
したがって、2層積層の圧電素子において、送信または受信の一方の際は、信号電極とGND電極となる第1の中間電極との間の小面積の圧電層が使用され、他方の際は前記小面積の圧電層が感光層でバイパスされて、信号電極と第2の中間電極とが接続され、該第2の中間電極とGND電極との間の大面積の圧電層が使用される。これによって、前記信号電極に接続されるべき信号線を送受信で共用して、素子数Nに対して、N+2本に線数を削減することができるとともに(光源への電源線は、光源が超音波振動子の外部に設けられるため、問題にはならない)、送信信号の受信信号へのクロストークを防止し、S/Nを向上することができる。また、超音波振動子の電極および配線はメッキなどで形成され、剥離し易いのに対して、有機感光体などから成る第1および第2の感光層は、強固な固着ができ、かつ確実なスイッチングも可能である。
【0020】
また、本発明の超音波振動子では、前記のGND電極は、透明電極から成り、該透明電極側から、前記光源から感光層への光を導入することを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、GND電極を、ITOなどの透明電極で形成することで、多数が2次元配列される各圧電素子の感光層へ、光源からの光を確実に導入することができ、スイッチ動作を確実に行わせることができる。
【0022】
さらにまた、本発明の超音波振動子では、前記送信用圧電層は、下層(生体とは反対)側に設けられて狭帯域送信特性を持つ無機圧電層であり、前記受信用圧電層は、上層(生体)側に設けられて広帯域の受信特性を持つ有機圧電層であることを特徴とする。
【0023】
上記の構成によれば、送信用圧電層を大パワーの超音波を送信可能な送信に適したものとし、受信用圧電層を生体で生じた高調波まで受信可能な受信に適したものとすることができる。
【0024】
また、本発明の超音波振動子では、前記感光層は、電荷発生物質を含有し、前記電荷発生物質としては、フタロシアニン顔料またはペリレン顔料であることを特徴とする。
【0025】
上記の構成によれば、繰返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。
【0026】
さらにまた、本発明の超音波振動子は、前記感光層において、前記電荷発生物質の分散媒体として、ホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂またはフェノキシ樹脂を用いることを特徴とする。
【0027】
上記の構成によれば、前記電荷発生物質の感光層への分散媒体としてバインダーを用いるにあたって、これらの樹脂を用いることで、繰返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくすることができる。
【0028】
また、本発明の超音波診断装置は、前記の超音波振動子を超音波探触子に用いることを特徴とする。
【0029】
上記の構成によれば、超音波探触子の線数を削減することができるとともに、クロストークも防止することができる超音波診断装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の超音波振動子およびそれを用いる超音波診断装置は、以上のように、複数の圧電素子を有し、各圧電素子は送信に適した送信用圧電層と受信に適した受信用圧電層とを積層して成る超音波振動子において、2層の間および2層の外表面にそれぞれ形成される電極に対して、素子分離された各圧電素子の側部において、前記2つの圧電層の何れかをバイパスするように、光照射の有無に応答して導通状態と遮断状態とに切換わる感光層を設けるとともに、その感光層に光照射を行う光源に、送受信に応答して、前記光源を点滅動作させる制御手段を設ける。
【0031】
それゆえ、2層積層の圧電素子において、2層のうちの少なくとも一方が感光層でバイパスされる場合が生じ、その際、前記送信用圧電層と受信用圧電層との間に設けられる電極が2つの離反面の電極の内のバイパスされた側と一体となる。これによって、その電極に接続されるべき信号線を送受信で共用して、線数を削減することができるとともに、送信信号の受信信号へのクロストークも防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
[実施の形態1]
図1〜図4は、本発明の実施の一形態に係る超音波振動子1の斜視図であり、図1は完成状態、図2および図3は作成途中の状態を示し、図4は動作状態を示し、図1〜図3の(a)ならびに図4の(a)および(b)は一方の(正面)側から見た図であり、図1〜図3の(b)は他方の(裏面)側から見た図である。なお、図面の簡略化のために、接着層は省略してある。
【0033】
この超音波振動子1は、1次元配列された複数の圧電素子A1,A2,・・・(総称するときは、以下参照符号Aで示す)を有し、各圧電素子Aは送信用圧電層Tと受信用圧電層Rとを積層して成る。前記送信用圧電層Tは、下層(生体とは反対)側に設けられて狭帯域送信特性を持つ無機圧電層であり、前記受信用圧電層Rは、上層(生体)側に設けられて広帯域の受信特性を持つ有機圧電層である。こうして、送信用圧電層Tを大パワーの超音波を送信可能な送信に適したものとし、受信用圧電層Rを生体で生じた高調波まで受信可能な受信に適したものとしている。
【0034】
そして、送信用圧電層Tの下層には、不要反射によるアーティファクトを低減する目的でバッキング層Bが設けられており、また受信用圧電層Rの上層には、図示していないが、生体と圧電素子との音響インピーダンスの整合を行う音響整合層に、生体に等しい音響インピーダンスを有し、音響ビームを絞り込む音響レンズが設けられている。また、図面の簡略化のために電気配線は省略している。
【0035】
注目すべきは、この超音波振動子1では、前記送信用圧電層Tと受信用圧電層Rとの対向面間に、前記各圧電素子Aに個別の中間電極Pが形成され(挟み込まれ)、前記送信用圧電層Tと受信用圧電層Rとの内の一方で、離反面(図1〜4の例では受信用圧電層Rの上面側)に、前記各圧電素子Aに個別の信号電極Qが形成され、前記送信用圧電層Tと受信用圧電層Rとの内の他方で、離反面(図1〜4の例では送信用圧電層Tの下面側)に、前記各圧電素子Aに共通のGND電極Sが形成されるとともに、前記積層される2つの圧電層R,Tの一方の側面(図1〜4の例では上層側の受信用圧電層Rの一方の側面)に、複数の前記中間電極Pと信号電極Qとを個別に接続し、光照射の有無に応答して導通状態と遮断状態とに切換わる第1の感光層OP1が形成され、前記積層される2つの圧電層R,Tの他方の側面(図1〜4の例では下層側の送信用圧電層Tの他方の側面)に、前記中間電極PとGND電極Sとを共通に接続し、光照射の有無に応答して導通状態と遮断状態とに切換わる第2の感光層OP2が形成されることである。また、これに対応して、前記第1および第2の感光層OP1,OP2にそれぞれ臨む第1および第2の光源L1,L2と、送受信に応答して、前記第1および第2の光源OP1,OP2を相反動作させる制御回路2が設けられている。
【0036】
この超音波振動子1の作成手順は、先ず図2を参照して、担持材となるとともに、送信用圧電層Tから背面側へ放射された超音波の吸収特性を有するバッキング層B上から一方の側面側にかけて、GND電極Sとなる電極層が蒸着または塗布によって形成される。なお、このようにバッキング層Bの2面に共有電極層(GND電極S)を設けるのではなく、導電性バッキングを用いてもよい。
【0037】
次に、前記バッキング層B上の部分に無機の送信用圧電層Tが積層され、さらに前記中間電極Pとなる電極層が蒸着または塗布によって形成された後、バッキング層BにかからないようにY方向(図の左右方向)にダイシング加工され、前記送信用圧電層Tおよびその上に貼付けられた中間電極Pが、前記圧電素子A毎に個別に切出されて素子分離が行われる。
【0038】
続いて、ダイシングによって形成された溝内に、樹脂などの素子間充填材Vが埋込まれて各圧電素子A間の音響結合が遮断(クロストーク等の相互干渉が低減)された後、高誘電率薄層接着層を介して受信用圧電層Rが接着され、さらにその上に、前記信号電極Qがマスク形成されて図2の状態となる。前記素子間充填材Vとしては、ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等を用いることができる。
【0039】
さらに、印刷法などを用いて、前記送信用圧電層Tの側面に第2の感光層OP2および受信用圧電層Rの側面に第1の感光層OP1が塗布形成され、図3の状態となる。その後、圧電層R,Tの一方の側面(第1の感光層OP1側)に絶縁および透光のために透明樹脂M1が塗布され、他方の側面(第2の感光層OP2側)では、バッキング層Bから前記第2の感光層OP2までの部分には透明樹脂M2が塗布され、その上の受信用圧電層Rの部分には遮光樹脂Nが塗布され、図1の状態となる。
【0040】
前記第1および第2の感光層OP1,OP2は、電荷発生物質(CGM)を含有し、前記CGMとしては、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを用いることができる。これらの中で、繰返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCGMは、複数の分子間で安定な凝集構造をとり得る立体、電位構造を有するものであり、具体的には、特定の結晶構造を有するフタロシアニン顔料、ペリレン顔料のCGMが挙げられる。たとえば、Cu−Kα線に対するブラッグ角2θが27.2°にピークを有するベンズイミダゾールペリレン等のCGMは、繰返し使用に伴う劣化が殆どなく、残留電位増加を小さくすることができる。
【0041】
そして、このCGMの感光層への分散媒体としてバインダーを用いる場合、そのバインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としては、ホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂とCGMとの割合は、バインダー樹脂100質量部に対して、CGM20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることで、繰返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくすることができる。
【0042】
その後は、図示していないが、該超音波振動子1は、バッキング層B側が放熱性の良好な基板に搭載されるとともに、その何れか一方の側面にフレキシブルプリント基板が貼付けられて、そのパターンと各信号電極Qとの間がワイヤボンディングされる。また、前記透明樹脂M1,M2上に導光部材が貼付けられ、その端部に前記光源L1,L2が取付けられ、或いは、面発光する発光ダイオードなどが光源L1,L2として透明樹脂M1,M2上に貼付けられる。
【0043】
前記送信用圧電層Tには、前記無機圧電材料の中でも、電気エネルギーを超音波振動エネルギーに変換する変換効率の高いセラミック圧電材料が好ましく、しかも近年は鉛を含まないものが推奨され、いわゆるPZT、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、ニオブ酸タンタル酸カリウム(K(Ta,Nb)O)、チタン酸バリウム(BaTiO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)およびチタン酸ストロンチウム(SrTiO)等を好適に用いることができる。或いは、酸化ニオブ(Nb)と水酸化カリウム(KOH)とを用い、150〜200℃に加熱する水熱合成法によって、KNbOの高品質粉末を得る技術が提案されており(たとえば特開2004−284889号公報参照)、このような材料も採用可能である。この系統は、化学式で(K、Li、Na)(Nb、Ta)Oと表される。これらの音響インピーダンスは、20〜50(Mralys)の範囲にあり、比較的高い音響インピーダンスを持ち、好適である。
【0044】
一方、受信用圧電層Rには、セラミック材料も使用可能ではあるが、前記有機圧電材料が好適である。中でも、PVDFのような有機圧電素子が好適である。有機圧電素子は、音響インピーダンスが低いので、前記音響整合層を設けないでもよいという利点を有する。前記PVDFとしては、トリ弗化エチレンを25モル%、弗化ビニリデンを75モル%含有する共重合体が好ましく、有機の圧電素子として高い圧電特性が得られ、広帯域でもある。また、前記PVDFの代わりに、好ましい態様の1つとして、ポリ尿素を挙げることができる。ポリ尿素用のポリマーとして、一般式として(−NH−R−CO−)nの構造を示すことができるが、ここでRが任意の置換基で置換されてもよく、アルキレン基、フェニレン基、2価のヘテロ環基、ヘテロ環基を含んでいてもよい。ポリ尿素は尿素誘導体とその他のモノマーとの共重合体であってもよい。好ましいポリ尿素として、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)と、4.4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)を使用する芳香族ポリ尿素を挙げることができる。
【0045】
上述のように後述することで、図4(a)で示すように、制御回路2が光源L1を点灯させ、光源L2を消灯させると、第1の感光層OP1が導通して受信用圧電層Rのバイパス経路RBが形成され、第2の感光層OP2が遮断して、中間電極Pは信号電極Qと一体となり、該中間電極PとGND電極Sとの間に電圧を印加し、送信用圧電層Tを使用した送信動作が可能になる。
【0046】
これに対して、図4(b)で示すように、制御回路2が光源L2を点灯させ、光源L1を消灯させると、第2の感光層OP2が導通して送信用圧電層Tのバイパス経路TBが形成され、第1の感光層OP1が遮断して、中間電極PはGND電極Sと一体となり、該中間電極Pと信号電極Qとの間に発生した電圧を検知し、受信用圧電層Rを使用した受信動作が可能になる。
【0047】
ここで、1次元配列された複数の圧電素子Aを有し、各圧電素子Aは送信に適した送信用圧電層Tと受信に適した受信用圧電層Rとを積層して成る超音波振動子において、通常、そのような1次元配列で2層積層の圧電素子の場合、送信用圧電層と受信用圧電層との対向面間に形成され(挟み込まれ)る中間電極は、ベタのGND電極とされ、前記送信用圧電層と受信用圧電層との離反面にそれぞれ個別電極を形成し、送信電極および受信電極とされ、素子数Nに対して、線数は2N+1本になる。或いは、線数を削減しようとすると複雑な切換え装置を要し、製造に複雑な工程を要し、生産性とコストとの両面に問題があり、さらに上手く生産できたとしても、送受信線間やスイッチング信号線に、干渉によるS/N劣化が生じる可能性がある。さらにまた、超音波振動子の電極および配線はメッキなどで形成され、剥離し易い。
【0048】
これに対して、本実施の形態では、中間電極Pを個別電極とするとともに、前記受信用圧電層Rの離反面に形成されるのは各圧電素子Aに個別の信号電極Qであるものの、送信用圧電層Tの離反面に形成されるのを共通のGND電極Sとする。そして、光照射の有無に応答して導通状態と遮断状態とに切換わり、前記積層される2つの圧電層T,Rの一方の側面には前記複数の中間電極Pと信号電極Qとを個別に接続する第1の感光層OP1を形成し、他方の側面には前記中間電極PとGND電極Sとを共通に接続する第2の感光層OP2を形成するとともに、それらの感光層OP1,OP2にそれぞれ臨んで第1および第2の光源L1,L2を設け、制御回路2がそれら第1および第2の光源L1,L2を送受信に応答して相反動作させる。
【0049】
したがって、2層積層の圧電素子T,Rにおいて、送信の際は受信用圧電層Rが第1の感光層OP1で短絡され、受信の際は送信用圧電層Tが第2の感光層OP2で短絡され、その短絡された層の両面の電極が一体となる。すなわち、本実施の形態は、有機感光体(OPC)などによる光スイッチングを用いた送受信素子切換え構造を有する。これによって、前記信号電極Qに接続されるべき信号線を送受信で共用して、素子数Nに対して、N+1本に線数を削減することができるとともに、送信信号の受信信号へのクロストークを防止し、S/Nを向上することができる。なお、第1および第2の光源L1,L2への電源線は、これらの光源L1,L2が超音波振動子1の外部に設けられるため、問題にはならない。また、有機感光体(OPC)などから成る第1および第2の感光層OP1,OP2は、強固な固着ができ、かつ確実なスイッチングも可能である。さらにまた、このような超音波振動子1を超音波探触子に用いることで、超音波探触子の線数を削減することができるとともに、クロストークも防止することができる超音波診断装置を実現することができる。
【0050】
また、前記第1および第2の感光層OP1,OP2は、電荷発生物質(CGM)を含有する有機感光体から成り、前記電荷発生物質としては、フタロシアニン顔料またはペリレン顔料を用いるので、繰返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。さらにまた、前記第1および第2の感光層OP1,OP2において、前記電荷発生物質(CGM)の分散媒体として、ホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂またはフェノキシ樹脂を用いるので、前記電荷発生物質の感光層OP1,OP2への分散媒体としてバインダーを用いるにあたって、これらの樹脂を用いることで、繰返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくすることができる。
【0051】
[実施の形態2]
図5〜図9は、本発明の実施の他の形態に係る超音波振動子1aの斜視図であり、図5は完成状態、図6〜図8は作成途中の状態を示し、図9は動作状態を示す。注目すべきは、この超音波振動子1aは、複数の圧電素子A11,A12;A21,A22(総称するときは、以下参照符号Aaで示す)が2次元配列されていることで、前述の図1〜図4で示す超音波振動子1と同様の部分には、同じ参照符号に添字aを付して示す。
【0052】
したがって、前記2次元配列のために若干構造は複雑になっており、先ず図6(a)を参照して、Z方向に貫通する信号線Hを有し、担持材となるとともに、送信用圧電層Taから背面側へ放射された超音波の吸収特性を有するバッキング層Baが用意される。そのバッキング層Ba上に、図6(b)で示すように、個別の信号電極Qaとなる電極層が蒸着または塗布によって形成される。次に、図6(c)で示すように、前記個別電極Qa上に無機の送信用圧電層Taが積層され、さらに図6(d)で示すように、バッキング層BaにかかるようにY方向(図の前後方向)にダイシング加工され、前記送信用圧電層Taおよびその下層の個別電極Qaが、X方向に素子分離される。
【0053】
ここで、図7(a)で示すように、前記X方向に素子分離された送信用圧電層Taの片側に露出した信号電極Qaの電極面が樹脂Jなどで被服絶縁され、さらに前記ダイシングによって形成された溝内に、図7(b)で示すように、感光層OPaが埋込まれる。その後、図7(c)で示すように、バッキング層BaにかかるようにX方向(図の左右方向)にもダイシング加工され、前記送信用圧電層Taおよびその下層の個別電極Qaが、Y方向にも素子分離され、前記各圧電素子A11,A12;A21,A22となる。続いて、図7(d)で示すように、ダイシングによって形成された溝内に、樹脂などの素子間充填材Vaが埋込まれて各圧電素子Aa間の音響結合が遮断(クロストーク等の相互干渉が低減)される。
【0054】
続いて、図8(a)で示すように、送信用圧電層Taの共通のGND電極となり、Y方向に引回される第1の中間電極Pa1と、後に積層される受信用圧電層Raの個別電極となる第2の中間電極Pa2とが、マスク形成される。前記第2の中間電極Pa2は、ITOのような透明電極であることが好ましい。その後、必要に応じて、図8(b)で示すように、各中間電極Pa1,Pa2間に樹脂Wなどが埋込まれて平滑化および短絡の防止が図られた後、図8(c)で示すように、高誘電率薄層接着層を介して前記受信用圧電層Raが接着され、さらにその上に、前記受信用圧電層Raに共通のGND電極Saが形成されて図5の状態となる。
【0055】
その後は、図示していないが、該超音波振動子1aは、バッキング層Ba側が放熱性の良好な基板に搭載されて前記各信号線Hが接続されるとともに、その何れか一方の側面にフレキシブルプリント基板が貼付けられて、そのパターンとGNDとなる中間電極Pa1およびGND電極Qaが接続される。また、GND電極Sa上に導光部材が貼付けられ、その端部に前記光源Laが取付けられる。
【0056】
上述のように後述することで、図9(a)で示すように、制御回路2aが光源Laを消灯させると、感光層OPaが遮断して、第2の中間電極Pa2はフローティングとなり、信号線Hから信号電極Qaと第1の中間電極Pa1との間に電圧を印加し、送信用圧電層Taを使用した送信動作が可能になる。
【0057】
これに対して、図9(b)で示すように、制御回路2aが光源Laを点灯させると、感光層OPaが導通して信号電極Qaのバイパス経路QBが形成され、第2の中間電極Pa2は信号電極Qaと一体となり、該第2の中間電極Pa2とGND電極Saとの間に発生した電圧を検知し、受信用圧電層Raを使用した受信動作が可能になる。
【0058】
このように本実施の形態では、送信用圧電層Taと受信用圧電層Raとを相互に異なる面積に形成しておき、それらの間に共通電極となる第1の中間電極Pa1を形成するとともに、はみ出た部分に個別電極となる第2の中間電極Pa2を形成し、さらに前記送信用圧電層Taと受信用圧電層Raとの内の小面積側の送信用圧電層Taの離反面に各圧電素子Aaに個別の信号電極Qaを形成し、大面積側の受信用圧電層Raの離反面に共通のGND電極Saを形成する。そして、積層される2つの圧電層Ta,Raの内、前記小面積側の送信用圧電層Taの側面(段差、隙間)に、前記第2の中間電極Pa2と信号電極Qaとを接続し、光照射の有無に応答して導通状態と遮断状態とに切換わる感光層OPaを形成するとともに、その感光層OPaに臨んで光源Laを設け、制御回路2aがその光源Laを送受信に応答して点滅動作させる。
【0059】
したがって、2層積層の圧電素子Aaにおいて、送信の際は、信号電極QaとGND電極となる第1の中間電極Pa1との間の小面積の送信用圧電層Taが使用され、受信の際は前記小面積の送信用圧電層Taが感光層OPaでバイパスされて、信号電極Qaと第2の中間電極Pa2とが接続され、該第2の中間電極Pa2とGND電極Saとの間の大面積の受信用圧電層Raが使用される。これによって、前記信号電極Qaに接続されるべき信号線Hを送受信で共用して、素子数Nに対して、N+2本に線数を削減することができるとともに、送信信号の受信信号へのクロストークを防止し、S/Nを向上することができる。また、有機感光体(OPC)などから成る感光層OPaは、強固な固着ができ、かつ確実なスイッチングも可能である。さらにまた、2次元配列の圧電素子Aaでは、ビームをX,Yの2軸方向に振ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の一形態に係る超音波振動子の完成状態を示す斜視図である。
【図2】前記超音波振動子の作成途中の状態を示す斜視図である。
【図3】前記超音波振動子の作成途中の状態を示す斜視図である。
【図4】前記超音波振動子の動作状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の他の形態に係る超音波振動子の完成状態を示す斜視図である。
【図6】図5で示す超音波振動子の作成途中の状態を示す斜視図である。
【図7】図5で示す超音波振動子の作成途中の状態を示す斜視図である。
【図8】図5で示す超音波振動子の作成途中の状態を示す斜視図である。
【図9】図5で示す超音波振動子の動作状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
1,1a 超音波振動子
2,2a 制御回路
A1,A2,・・・圧電素子
A11,A12;A21,A22 圧電素子
B,Ba バッキング層
J,W 樹脂
L1 第1の光源
L2 第2の光源
La 光源
M1,M2 透明樹脂
N 遮光樹脂
OP1 第1の感光層
OP2 第2の感光層
OPa 感光層
P 中間電極
Pa1 第1の中間電極
Pa2 第2の中間電極
Q,Qa 信号電極
R,Ra 受信用圧電層
S,Sa GND電極
T,Ta 送信用圧電層
V,Va 素子間充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧電素子を有し、各圧電素子は送信用圧電層と受信用圧電層とを積層して成る超音波振動子において、
前記送信用圧電層と受信用圧電層との対向面間および離反面に形成される電極と、
素子分離された各圧電素子の側部において、前記2つの圧電層の何れかをバイパスするように設けられ、光照射の有無に応答して導通状態と遮断状態とに切換わる感光層と、
前記感光層にそれぞれ臨む光源と、
送受信に応答して、前記光源を点滅動作させる制御手段とを含むことを特徴とする超音波振動子。
【請求項2】
前記複数の圧電素子は1次元配列されており、
前記電極は、
前記送信用圧電層と受信用圧電層との対向面間に形成され、前記各圧電素子に個別の中間電極と、
前記送信用圧電層と受信用圧電層との内の一方で、離反面に形成され、前記各圧電素子に個別の信号電極と、
前記送信用圧電層と受信用圧電層との内の他方で、離反面に形成され、前記各圧電素子に共通のGND電極とを備えて構成され、
前記感光層は、
前記積層される2つの圧電層の一方の側面に形成され、前記複数の中間電極と信号電極とを個別に接続する第1の感光層と、
前記積層される2つの圧電層の他方の側面に形成され、前記中間電極とGND電極とを共通に接続する第2の感光層とを備えて構成され、
前記光源は、前記第1および第2の感光層にそれぞれ臨む第1および第2の光源から成り、
前記制御手段は、前記送受信に応答して、前記第1および第2の光源を相反動作させることを特徴とする請求項1記載の超音波振動子。
【請求項3】
前記複数の圧電素子は2次元配列され、前記送信用圧電層と受信用圧電層とは、相互に異なる面積に形成されており、
前記電極は、
前記送信用圧電層と受信用圧電層との対向面間に形成され、前記各圧電素子に共通の第1の中間電極と、
前記送信用圧電層と受信用圧電層との対向面側で、前記異なる面積による大面積側において、小面積側が重ならない部分に形成され、前記各圧電素子に個別の第2の中間電極と、
前記送信用圧電層と受信用圧電層との内の一方で、離反面に形成され、前記各圧電素子に個別の信号電極と、
前記送信用圧電層と受信用圧電層との内の他方で、離反面に形成され、前記各圧電素子に共通のGND電極とを備えて構成され、
前記感光層は、前記積層される2つの圧電層の内、前記異なる面積による小面積側の圧電層の側面に形成されて前記第2の中間電極と信号電極とを接続することを特徴とする請求項1記載の超音波振動子。
【請求項4】
前記のGND電極は、透明電極から成り、該透明電極側から、前記光源から感光層への光を導入することを特徴とする請求項3記載の超音波振動子。
【請求項5】
前記送信用圧電層は、下層側に設けられて狭帯域送信特性を持つ無機圧電層であり、前記受信用圧電層は、上層側に設けられて広帯域の受信特性を持つ有機圧電層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波振動子。
【請求項6】
前記感光層は、電荷発生物質を含有し、前記電荷発生物質としては、フタロシアニン顔料またはペリレン顔料であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の超音波振動子。
【請求項7】
前記感光層において、前記電荷発生物質の分散媒体として、ホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂またはフェノキシ樹脂を用いることを特徴とする請求項6記載の超音波振動子。
【請求項8】
前記請求項1〜7のいずれか1項に記載の超音波振動子を超音波探触子に用いることを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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