説明

超音波探触子

【目的】天然資源であるタングステンの無駄を排除し、音響インピーダンスを自在に制御できる音響整合層を有する超音波探触子を提供する。
【構成】樹脂母体に金属粉末を混入した音響整合層を圧電素子の放射面に設けてなる超音波探触子において、前記金属粉末はタングステンカーバイドを主成分とした超硬合金である構成とする。そして、これらは、耐摩耗や耐衝撃用の部品の廃材から形成する。したがって、音響インピーダンスを自在に制御できて、天然資源を無駄にすることなく有効利用ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音響整合層の樹脂母体に金属粉末を混入した超音波探触子を技術分野とし、特に金属粉末をタングステンカーバイドとした超音波探触子に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
超音波探触子は医用等における超音波診断装置の超音波の送受波部として適用され、生体内部からの反射波によって疾患部等を検出する。通常では、超音波探触子の送受波面には音響整合層を設けて超音波の伝播損失を防止する。このようなものの一つに、樹脂母体に金属粉末を混入した音響整合層がある。
【0003】
(従来技術の一例)
第1図は一従来例を説明する超音波探触子の短軸方向の断面図である。超音波探触子は例えばPZTからなる圧電素子1をバッキング材2上に固着し、送受波面側に音響整合層3を設けてなる。圧電素子1は両主面に駆動電極4(ab)を有して短冊状とし、幅方向を長軸方向に一致させて複数個が並べられ、所謂配列型とする。各圧電素子1間には充填材が埋設する。
【0004】
音響整合層3は例えば二層として、例えば一層目3a及び二層目3bともにエポキシ系の樹脂母体に金属粉末を混入し得なる。金属粉末は高比重として、一般にはタングステン(W)からなる。そして、金属粉末の含有量を異ならせ、一層目3aの音響インピーダンスを8〜9M Rayl、二層目3bを2〜3M Raylとし、圧電素子1から図示しない生体に向かって順次に小さくする。これにより、超音波の伝播損失を防止して感度を高める。
【0005】
なお、圧電素子1の、ここではPZTの音響インピーダンスは32M Rayl、生体は1.5M Raylである。そして、音響整合層3の一層目3a及び二層目3bともに超音波周波数のλ/4の厚みとする。通常では、音響整合層上2には短軸方向に曲率を有する図示しない音響レンズが設けられる。
【0006】
このようなものでは、音響整合層3の一層目3a、二層目3bは樹脂母体に金属粉末を混入して形成されるので、その音響インピーダンスを自在に制御できる。したがって、例えばガラスや樹脂等のみの場合に比較して、音響インピーダンスを最適値に設定できて、伝播効率を高められる。
【特許文献1】特開平11−113908号公報
【非特許文献1】北海道立工業試験技術情報 VOL.25 No.4 (廃超硬合金の有効利用技術)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(従来技術の問題点)
しかしながら、上記構成の超音波探触子では、音響整合層3を樹脂母体に金属粉末を混入して形成するため、比重の大きな金属粉末を要する。すなわち、樹脂母体自体の音響インピーダンスは例えば約2M Raylの値であるため、比重の大きな金属粉末を要する。
【0008】
特に、音響整合層3の一層目3aは圧電素子1の音響インピーダンスに接近させるため、その含有量を多くする。このことから、前述したように比重の大きなタングステンが選択されるが、これを含めて高比重の金属は高価であり、特にタングステンは枯渇化が懸念されている。
【0009】
(発明の目的)
本発明は天然資源であるタングステンの無駄を排除し、音響インピーダンスを自在に制御できる音響整合層を有する超音波探触子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(着目点)
本発明は非特許文献1に示される超硬合金の廃材の有効利用技術に着目した。すなわち、切削工具をはじめとする耐摩耗、耐衝撃用としての部品に使用される超硬合金のタングステンカーバイドに着目した。
【0011】
(解決手段)
特許請求の範囲(請求項1)に示したように、樹脂母体に金属粉末を混入した音響整合層を圧電素子の放射面に設けてなる超音波探触子において、前記金属粉末はタングステンカーバイドを主成分とした超硬合金である構成とする。
【発明の効果】
【0012】
このような構成であれば、タングステンカーバイドを主成分とした超硬合金は比重を約14.5とし、タングステン(19)とほぼ均等なので、高比重の金属粉末として十分に適用できる。そして、これらは、請求項2で明記するように、例えば耐摩耗や耐衝撃用の部品の廃材から形成するので、天然資源を無駄にすることなく有効利用ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を前述した第1図を参照して説明する。なお、前従来例と同一部分の説明は簡略又は省略する。
【0014】
超音波探触子は、前述のように駆動電極4(ab)を両主面に有する圧電素子1をバッキング材2に固着し、二層構造とした音響整合層を送受波面に形成する。ここでは、音響整合層の一層目3aはエポキシ系とした樹脂母体に超硬合金からなる金属粉末を混入してなる。超硬合金は例えば切削工具をはじめとした耐摩耗や耐衝撃用の部品としての廃材からなる。
【0015】
超硬合金はタングステンカーバイドを主成分としてコバルト等の添加物が加えられる。タングステンカーバイドは比重を16とし、そして、コバルトの添加により、超硬合金の比重は概ね14.5になる。
【0016】
これらは、例えば金属粉末を混入して攪拌分散した溶融樹脂を圧電素子1上に塗布して、λ/4の厚みに研磨される(所謂コーティング)。あるいは、予めシート状に形成して接着剤によって貼着する。音響整合層の二層目3bは、一層目よりも音響インピーダンスが小さい例えば樹脂を同様のコーティングや貼着によって形成する。
【0017】
このような構成であれば、タングステンカーバイドを主成分とした超硬合金を金属粉末とするので、タングステンを使用した場合と同様の高比重となる。したがって、樹脂母体に金属粉末を混入することによって音響インピーダンスを自在に制御できる。そして、超硬合金は耐摩耗や耐衝撃用の部品の廃材を利用できるので、天然資源を無駄にすることなく有効活用できる。
【0018】
(他の事項)
上記実施形態では音響整合層3の二層目3bを樹脂としたが、一層目3aと同様に樹脂母体に超硬合金を混入したものでもさらにはガラス等であってもよく任意に選択できる。また、音響整合層3は二層としたが、一層であっても三層以上であってもよい。これらの場合、音響整合層3を超硬合金による一層とした場合は、圧電素子1と生体との間の最適値に音響インピーダンスを選択できるので、層数を最小として伝播効率を高められる。
【0019】
また、例えば三層とした場合は、超硬合金による一層目3aを、特にガラスや樹脂等に比較して音響インピーダンスを大きくできるので、圧電素子1の音響インピーダンスに接近させることができる。したがって、これに二層目及び三層目を設ければ、伝播損失をさらに少なくできる。また、複数の圧電素子1を長軸方向に並べた配列型としたが、ドップラー型の分割板を含めたシングル型でも適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明及び一従来例を説明する超音波探触子の図で、同図(a)は正断面図、同図(b)は側断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 圧電素子、2 バッキング材、3 音響整合層、4 駆動電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂母体に金属粉末を混入した音響整合層を圧電素子の放射面に設けてなる超音波探触子において、前記金属粉末はタングステンカーバイドを主成分とした超硬合金であることを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
前記金属粉末は耐摩耗用や耐衝撃用の部品の廃材からなる請求項1の超音波探触子。

【図1】
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