説明

超音波接合方法、超音波接合装置および超音波接合された接合管

【課題】 対象部材の形状によって接合部に一体的なホーンを配置できない場合でも、複数回に分ける事無く一度の加圧振動で接合可能とする超音波接合方法、超音波接合装置および超音波接合された接合管を提供する。
【解決手段】 管状部材110のフランジ部111を、ホーン11、12によって、相手側部材120に接合する超音波接合方法であって、ホーン11、12をフランジ部111の周方向に複数に分割しておくと共に、複数のホーン11、12のフランジ部111側に、所定ピッチaで配列される複数の突起部11a、12aを形成して、複数のホーン11、12を所定の隙間部13を設けてフランジ部111にセットした時に、隙間部13における突起部11a、12aのピッチbが所定ピッチa以下となるようにしておき、複数のホーン11、12を加圧振動させて接合を行う。加圧振動は同時に、更には同位相、同振幅で行うのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の第1部材を金属製の第2部材に対して加圧しながら振動させることにより、両者を接合する超音波接合方法、超音波接合装置および超音波接合された接合管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製の2つの部材同士を接合する方法として、例えば特許文献1に示されるような超音波接合方法が知られている。この超音波接合方法では、例えば一端側にフランジ部を有する配管(直管)を第1部材として、また、例えば熱交換器のヘッダタンク壁面を第2部材としている。そして、熱交換器をアンビルで固定した状態で、ホーンによって配管(フランジ部)を所定の加圧力で熱交換器(ヘッダタンク壁面)側に加圧しながら振動させることで摩擦を起させ、酸化皮膜を破壊し、両者の接触面に発生した摩擦熱、ならびに、両者の接触面間隔が極めて接近することによる原子間力の作用によって、フランジ部をヘッダタンク壁面に加圧接合させている。尚、ホーンは、フランジ部の外側面(反熱交換器側面)に当接して配管の外周面を覆うように円筒状に形成されており、配管(直管)の反フランジ部側からセットされるようになっている(特許文献1中の図5)。
【0003】
ここでは、フランジ部にヘッダタンク壁面側に向けて突出する突起部を設けることで、突起部の接触面圧を高く維持して、振動エネルギーを突起部に集中させることで、超音波接合により熱履歴の影響を最小限に抑えつつ、超音波接合の歩留まりを高めながら充分な接合強度、接合部の気密性を得るようにしている。
【特許文献1】特開2001−246479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記配管が曲管であったり、配管の反フランジ部側に張出し部等があると、上記のようなホーンを反フランジ部側からセットできなくなるので、ホーンとしては例えば半円状の凹部を有して配管の外周面側(側面側)から挿入可能となるものとして、複数回に分けて超音波接合を行う必要が生ずる。超音波接合を複数回に分けて行うと、例えば一回目の接合による加圧部の変形によって、未接合部側に担ぎが生じて一回目の接合に悪影響を与えてしまう。また、二回目の接合時における振動によって一回目の接合箇所がダメージを受ける等の問題が生ずる。
【0005】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、対象部材の形状によって接合部に一体的なホーンを配置できない場合でも、良好な接合部を実現できる超音波接合方法、超音波接合装置および超音波接合された接合管を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、気密性が良好な接合部を実現できる超音波接合方法、超音波接合装置および超音波接合された接合管を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、複数回に分ける事無く一度の加圧振動で接合可能とする超音波接合方法、超音波接合装置および超音波接合された接合管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0009】
請求項1に記載の発明では、管状部材(110)の一端側に形成されたフランジ部(111)を、ホーン(11、12)によって、相手側部材(120)の穴部の外周面(121)に加圧しながら振動させることにより接合する超音波接合方法であって、ホーン(11、12)をフランジ部(111)の周方向に複数に分割しておくと共に、複数のホーン(11、12)のフランジ部(111)側に、所定ピッチ(a)で配列される複数の突起部(11a、12a)を形成して、複数のホーン(11、12)を所定の隙間部(13)を設けてフランジ部(111)にセットした時に、隙間部(13)における突起部(11a、12a)のピッチ(b)が所定ピッチ(a)以下となるようにしておき、複数のホーン(11、12)を加圧振動させて接合を行うことを特徴としている。
【0010】
これにより、管状部材(110)が曲管であったり、また、管状部材(110)の反フランジ部側に張出し部等が有るような場合であっても、分割されたホーン(11、12)を用いるので、相手側部材(120)への超音波接合が可能となる。ここで、複数のホーン(11、12)間の隙間部(13)においては、各ホーン(11、12)の突起部(11a、12a)が所定ピッチ(a)で、あるいはそれより密になるように配列されるので、フランジ部(111)の全体に複数のホーン(11、12)による加圧振動を均等に付加でき、一回の超音波接合を行うのみで管状部材(110)と相手側部材(120)との接合を完了できる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、複数のホーン(11、12)を同時に加圧振動させて接合を行うことを特徴としている。
【0012】
これにより、複数のホーン(11、12)をあたかも一体物のごとく作動させることができるので、一回の超音波接合を行うのみで管状部材(110)と相手側部材(120)との接合を完了できる。
【0013】
上記複数のホーン(11、12)の同時加圧振動は、請求項3に記載の発明のように、同位相、同振幅の加圧振動とするのが良い。
【0014】
請求項4に記載の発明では、管状部材(110)の一端側に形成されたフランジ部(111)を、相手側部材(120)の穴部の外周面(121)に加圧しながら振動させることにより接合するホーン(11、12)を有する超音波接合装置であって、ホーン(11、12)は、フランジ部(111)の周方向に複数に分割されると共に、複数のホーン(11、12)のフランジ部(111)側には、所定ピッチ(a)で配列される複数の突起部(11a、12a)が形成されて、複数のホーン(11、12)を所定の隙間部(13)を設けてフランジ部(111)にセットした時に、隙間部(13)における突起部(11a、12a)のピッチ(b)が所定ピッチ(a)以下となるように設定されたことを特徴としている。
【0015】
これにより、請求項1に記載の超音波接合方法を可能とする装置とすることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、複数のホーン(11、12)は、同時に加圧振動されることを特徴としている。
【0017】
これにより、請求項2に記載の超音波接合方法を可能とする装置とすることができる。
【0018】
上記複数のホーン(11、12)の同時加圧振動は、請求項6に記載の発明のように、同位相、同振幅の加圧振動とするのが良い。
【0019】
請求項7に記載の発明では、管状部材(110)の一端側に形成されたフランジ部(111)が、フランジ部(111)の周方向に複数分割されたホーン(11、12)の加圧振動によって、相手側部材(120)の穴部の外周面(121)に超音波接合されて成る接合管であって、環状部材(110)は、曲管として形成されたもの、あるいは反フランジ部側に径方向に張出す張出し部を有するものであり、フランジ部(111)には、ホーン(11、12)側に形成された複数の突起部(11a、12a)の跡が、全体にほぼ均一に残っていることを特徴としている。
【0020】
これにより、管状部材(110)が曲管であったり、また、管状部材(110)の反フランジ部側に張出し部等が有るような場合であっても、一回の超音波接合によって接合される接合管(100)とすることができる。
【0021】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1実施形態)
本発明に係る第1実施形態について、図1〜図3を用いて説明する。尚、図1は2つのパイプ110、120を接合して接合パイプ100を形成するための超音波接合装置10を示す断面図、図2は図1のA−A部を示す断面図、図3(a)は、図2のB方向から見た矢視図、図3(b)は図3(a)のC方向から見た矢視図である。
【0023】
図1に示すように、第1パイプ110は、金属製のパイプであって、本発明における管状部材に対応するものであり、一端側の全周に円形の第1フランジ部111が形成されている。尚、図1中では省略しているが、第1パイプ110の他端側(反フランジ部側)は曲げ部を有し、曲管として形成されている。
【0024】
また、第2パイプ120は、上記第1パイプ110と同様に、金属製のパイプであって、本発明における相手側部材に対応するものであり、一端側の全周に円形の第2フランジ部121が形成されている。尚、第2フランジ部121は、本発明における穴部の外周面に対応する。
【0025】
超音波接合装置10は、上記の第1パイプ110を第2パイプ120側に加圧すると共に、更に第1フランジ部111の面が広がる方向に振動を付加するホーン10Aと、第2パイプ120を固定するアンビル10Bとを有している。そして、ホーン10Aは、図2に示すように、第1フランジ部111の円周方向に複数(ここでは2つ)に分割されており、この分割された側に半円形の凹部を有する第1ホーン11と第2ホーン12とから形成されるようにしている。尚、第1ホーン11および第2ホーン12は、図示しない2つの駆動部にそれぞれ接続されており、両者11、12間が開閉可能となると共に、後述するように、第1パイプ110に対する加圧作動、および振動作動が同位相、同振幅で行われるようになっている。
【0026】
各ホーン11、12のフランジ部111側には、図3に示すように、四角錘状を成して所定ピッチaで配列される複数の突起部11a、12aが形成されている。そして、両ホーン11、12間が閉じられて後述する隙間部13(δ)が形成された時に、この隙間部13(δ)における突起部11a、12aのピッチbが、所定ピッチa以下(a≧b)となるように設定されている。隙間部13(領域Y)における突起部11a、12aの先端角度については、一般部(領域X)における突起部11a、12aの先端角度と同等に設定するのが望ましい。
【0027】
尚、ここでは、所定ピッチaを0.8〜1.2mm、突起部11a、12a高さを0.35〜0.5mmとして設定している。
【0028】
次に、上記超音波接合装置10を用いた接合方法について説明する。まず、両ホーン11、12間を開いた状態にして、第2フランジ部121が上側を向くようにして第2パイプ120をアンビル10Bにセットする。更に、第2フランジ部121の上側面に第1フランジ部111を乗せるようにして第1パイプ110をセットする。そして、第1パイプ110を挟むようにして両ホーン11、12間を閉じる。この時、両ホーン11、12と第1パイプ110の外周面とが後述する振動によって接触しないように、両ホーン11、12間に隙間部13(図2中の寸法δ)が形成されるようにしている。尚、隙間部13の寸法δは、両ホーン11、12の振動振幅(例えば40μm)より大きくなる寸法としている。
【0029】
その後に、両ホーン11、12を第1フランジ部111に加圧接触させて(図1中の白矢印)、突起部11a、12a先端を第1フランジ部111の表面に食い込ませて、両ホーン11、12に対して同位相、同振幅で第1フランジ部111の面の広がる方向(図2中の白矢印方向)に振動を付加する。すると、第1フランジ部111は両ホーン11、12と共に振動し、摩擦熱によって両フランジ部111、121同士が接合されて、接合パイプ(本発明における接合パイプに対応)100が完成される。尚、完成された第1フランジ部111の表面全体には、両ホーン11、12の突起部11a、12aの食い込んだ跡が、ほぼ均一に残ることになる。
【0030】
以上のように本発明においては、ホーン10Aを周方向に複数に分割し(ホーン11、12)、各ホーン11、12の第1フランジ部111側には、所定ピッチaで配列される複数の突起部11a、12aを形成し、両ホーン11、12間に隙間部13を設けて第1フランジ部111にセットした時に、隙間部13における突起部11a、12aのピッチbが所定ピッチa以下となるように設定し、且つ、両ホーン11、12を同位相、同振幅で加圧振動するようにしている。
【0031】
よって、第1パイプ110が曲管として形成されているような場合であっても、分割されたホーン11、12を用いるので、第2パイプ120への超音波接合が可能となる。ここで、両ホーン11、12はあたかも一体物のごとく作動し、また、隙間部13(図3(b)中のY領域)においては、図3(b)中のX領域に対して各ホーン11、12の突起部11a、12aが所定ピッチaで、あるいはそれより密になるように配列されるので、第1フランジ部111の全体に両ホーン11、12による加圧振動を均等に付加でき、一回の超音波接合を行うのみで第1パイプ110と第2パイプ120との接合を完了できると共に、良好な接合ができる。両パイプ110、120の接合部は気密性に優れる。
【0032】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、相手側部材として、第1パイプ110と同様の第2パイプ120としたが、これに限らず、図4に示すように、端部側断面121Aが第2フランジ部121に相当する面積を有する厚肉の管部材120Aとしたり、図5に示すように、穴部の外周面121Bに第1フランジ部111が接合されるブロック状の部材120B等としても良い。
【0033】
また、両ホーン11、12間の隙間部13(δ)が加圧振動時の振幅より大きく、また、両ホーン11、12の突起部11a、12aのピッチbが、所定ピッチa以下(a≧b)となる設定であれば、突起部11a、12aの形状は四角錘状に限らず、他の円錐状等種々の形状での対応が可能である。
【0034】
また、第1パイプ110を曲管として形成されるものとして説明したが、これに限らず、第1パイプ110の反フランジ部側に接続部(ナットやフランジ部)等の径方向に張出す張出し部を有するものとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】2つのパイプを接合して接合パイプを形成するための超音波接合装置を示す断面図である。
【図2】図1のA−A部を示す断面図である。
【図3】(a)は、図2のB方向から見た矢視図、(b)は(a)のC方向から見た矢視図である。
【図4】その他の実施形態1における接合パイプを示す断面図である。
【図5】その他の実施形態2における接合パイプを示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 超音波接合装置
11 第1ホーン(ホーン)
11a 突起部
12 第2ホーン(ホーン)
12a 突起部
13 隙間部
100 接合パイプ(接合管)
110 第1パイプ(管状部材)
111 第1フランジ部(フランジ部)
120 第2パイプ(相手側部材)
121 第2フランジ部(穴部の外周面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状部材(110)の一端側に形成されたフランジ部(111)を、ホーン(11、12)によって、相手側部材(120)の穴部の外周面(121)に加圧しながら振動させることにより接合する超音波接合方法であって、
前記ホーン(11、12)を前記フランジ部(111)の周方向に複数に分割しておくと共に、
複数の前記ホーン(11、12)の前記フランジ部(111)側に、所定ピッチ(a)で配列される複数の突起部(11a、12a)を形成して、複数の前記ホーン(11、12)を所定の隙間部(13)を設けて前記フランジ部(111)にセットした時に、前記隙間部(13)における前記突起部(11a、12a)のピッチ(b)が前記所定ピッチ(a)以下となるようにしておき、
複数の前記ホーン(11、12)を加圧振動させて接合を行うことを特徴とする超音波接合方法。
【請求項2】
複数の前記ホーン(11、12)を同時に加圧振動させて接合を行うことを特徴とする請求項1に記載の超音波接合方法。
【請求項3】
複数の前記ホーン(11、12)の同時加圧振動は、同位相、同振幅の加圧振動であることを特徴とする請求項2に記載の超音波接合方法。
【請求項4】
管状部材(110)の一端側に形成されたフランジ部(111)を、相手側部材(120)の穴部の外周面(121)に加圧しながら振動させることにより接合するホーン(11、12)を有する超音波接合装置であって、
前記ホーン(11、12)は、前記フランジ部(111)の周方向に複数に分割されると共に、
複数の前記ホーン(11、12)の前記フランジ部(111)側には、所定ピッチ(a)で配列される複数の突起部(11a、12a)が形成されて、複数の前記ホーン(11、12)を所定の隙間部(13)を設けて前記フランジ部(111)にセットした時に、前記隙間部(13)における前記突起部(11a、12a)のピッチ(b)が前記所定ピッチ(a)以下となるように設定されたことを特徴とする超音波接合装置。
【請求項5】
複数の前記ホーン(11、12)は、同時に加圧振動されることを特徴とする請求項4に記載の超音波接合装置。
【請求項6】
複数の前記ホーン(11、12)の同時加圧振動は、同位相、同振幅の加圧振動であることを特徴とする請求項5に記載の超音波接合装置。
【請求項7】
管状部材(110)の一端側に形成されたフランジ部(111)が、前記フランジ部(111)の周方向に複数分割されたホーン(11、12)の加圧振動によって、相手側部材(120)の穴部の外周面(121)に超音波接合されて成る接合管であって、
前記環状部材(110)は、曲管として形成されたもの、あるいは反フランジ部側に径方向に張出す張出し部を有するものであり、
前記フランジ部(111)には、前記ホーン(11、12)側に形成された複数の突起部(11a、12a)の跡が、全体にほぼ均一に残っていることを特徴とする接合管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−272444(P2006−272444A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99329(P2005−99329)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】