説明

超音波接合方法及びその装置

【課題】 均一な膜厚のシームレスなエンドレスベルトを簡単に製造することができる方法及び装置を提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂のシームレスなエンドレスベルトを製造する装置は、駆動ロール21及びそれを回転自在に支持する一対の第一の手段31,32と、被動ロール22及びそれを回転自在に支持する一対の第二の手段41,42とを有し、第一及び第二の手段31,32,41,42により駆動ロール21と被動ロール22との間隔は可変であり、かつ第一及び第二の手段の間隔もそれぞれ可変であり、円筒状成形体10を掛けた後駆動ロール21と被動ロール22の間隔を徐々に拡大して所望の直径のシームレスなエンドレスベルト1を形成した後、ロール21及び被動ロール22の一方の軸を開放し、エンドレスベルト1を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電複写機や静電プリンター等のカラー画像形成装置に用いる転写ベルトや搬送ベルト等に好適なシームレスなエンドレスベルトを製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー静電複写機やカラー静電プリンター等のように複数のトナー画像を積層転写することによりカラー画像を形成するカラー画像形成装置には、中間転写ベルト(感光体上に形成されたトナー像を紙等の転写材に転写する前に転写するベルト)や、転写搬送ベルト(紙等の転写材を静電的に吸着して搬送するとともに、感光体上に形成されたトナー像を直接転写するために用いるベルト)が用いられている。
【0003】
これらのベルトには、機械的強度、耐クリープ性、靱性、降伏伸度、屈曲性、寸法安定性、耐熱性、難燃性、低コスト等が要求されるとともに、シームレスである必要がある。そのため、フッ素樹脂、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリイミド等が使用されているが、いずれの樹脂を使用してもシームレスベルトに加工するのは容易ではない。
【0004】
このような事情下で、WO 2006/028043号(特許文献1)は、電子写真シームレスベルトの製造方法として、熱可塑性樹脂からなるほぼ円筒形のプリフォームを、円筒形状の金型キャビティに入れて延伸ブロー成形を行い、得られた成形体を切断する方法を提案している。しかしながら、ブロー成形法により転写ベルトや搬送ベルトに適する厚さに延伸すると、得られる膜厚の均一性が不十分であることが分った。特にカーボンブラック等の導電性フィラーを多量に含有する熱可塑性樹脂の場合、均一な膜厚のシームレスなエンドレスベルトを製造することは事実上不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 2006/028043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、カーボンブラック等の導電性フィラーを多量に含有する熱可塑性樹脂からでも、均一な膜厚のシームレスなエンドレスベルトを簡単に製造することができる方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、溶融熱可塑性樹脂を環状ダイより押し出して比較的薄肉の円筒状成形体を形成した後、一対のロールに掛け、熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度でロールを回転しながらロール間隔を徐々に拡大すると、所望の直径のシームレスなエンドレスベルトが得られることを発見し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、熱可塑性樹脂のシームレスなエンドレスベルトを製造する本発明の方法は、(1) 溶融熱可塑性樹脂を環状ダイより押し出して円筒状成形体を形成し、(2) 前記円筒状成形体を一対のロールに掛けた後、前記熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度でロールを回転しながら両ロール間隔を徐々に拡大し、もって所望の直径のシームレスなエンドレスベルトを得ることを特徴とする。
【0009】
前記円筒状成形体の延伸の際、一対のロールの一方に第三のロールを押圧し、エンドレスベルトの外面を平坦化するのが好ましい。
【0010】
熱可塑性樹脂のシームレスなエンドレスベルトを製造する本発明の装置は、駆動ロール及び被動ロールと、前記駆動ロールを回転自在に支持する一対の第一の手段と、前記被動ロールを回転自在に支持する一対の第二の手段とを有し、前記第一及び第二の手段の一方は前記駆動ロールと前記被動ロールとの間隔を変えるために可動であり、かつ前記第一の手段の間隔及び前記第二の手段の間隔は前記駆動ロール及び前記被動ロールの一方の軸を開放し得るように可変であり、前記駆動ロール及び前記被動ロールに熱可塑性樹脂の円筒状成形体を掛けた後、前記第一及び第二の手段の間隔を徐々に拡大して所望の直径のシームレスなエンドレスベルトを形成し、前記第一の手段の間隔及び前記第二の手段の間隔を拡大させて前記駆動ロール及び前記被動ロールの一方の軸を開放し、前記エンドレスベルトを回収することを特徴とする。
【0011】
本発明の好ましい一実施形態では、上記装置は、(a) 駆動ロール及び被動ロールと、(b) 前記駆動ロールの一方の軸を回転自在に支持する第一の固定手段と、(c) 前記駆動ロールの他方の軸を回転自在かつ脱着自在に支持する機構を有する第二の固定手段と、(d) 前記被動ロールの一方の軸を回転自在に支持する第一の可動手段と、(e) 前記被動ロールの他方の軸を回転自在かつ脱着自在に支持する第二の可動手段と、(f) 前記第一の可動手段が前記第一の固定手段に対して直線的に移動するのを可能にするための固定された第一のガイド手段と、(g) 前記第二の可動手段が前記第二の固定手段に対して直線的に移動するのを可能にするとともに、前記第一のガイド手段に対して平行を維持したまま移動可能な第二のガイド手段とを有し、前記駆動ロール及び前記被動ロールに熱可塑性樹脂の円筒状成形体を掛けた後、前記熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度条件で、前記第一及び第二の固定手段に対してそれぞれ前記第一及び第二の可動手段を同時に移動させることにより、前記駆動ロールと前記被動ロールとの間隔を徐々に拡大し、もって所望の直径のシームレスなエンドレスベルトを形成するとともに、前記第二のガイド手段を移動させて前記駆動ロールの他方の軸及び前記被動ロールの他方の軸をそれぞれ前記第二の固定手段及び前記第二の可動手段から脱着させ、もって前記エンドレスベルトを回収する。
【0012】
本発明の好ましい別の実施形態では、前記第一及び第二の固定手段の間隔と前記第一及び第二の可動手段の間隔とを同時に変えるために、前記第一及び第二の固定手段及び前記第一及び第二の可動手段にそれぞれ第三のガイド手段が設けられている。
【0013】
本発明の好ましいさらに別の実施形態では、前記駆動ロール及び前記被動ロールに掛けられた円筒状成形体を加熱するための手段を有し、前記加熱手段は、前記円筒状成形体の装着及び前記エンドレスベルトの脱着を可能にするために、前記駆動ロール及び前記被動ロールから遠ざかるように可動である。
【0014】
本発明の好ましいさらに別の実施形態では、延伸中の前記円筒状成形体を所定の温度に保持するために、前記駆動ロール及び前記被動ロールはそれぞれ加熱手段を内蔵しているのが好ましい。
【0015】
本発明の好ましいさらに別の実施形態では、前記第二の固定手段及び前記第二の可動手段にそれぞれ設けられたロール軸脱着手段は、少なくとも1つの平坦面を有する内面を有する開口部材と、前記開口部材を回転自在に支持するベアリングとを有し、各脱着手段に係合する前記駆動ロールの他方の軸及び前記被動ロールの他方の軸はそれぞれ少なくとも1つの平坦面を有するとともに先端部がテーパ状であり、もって前記他方の軸と前記開口部材の回転方向位置に関係なく、前記他方の軸は前記脱着手段の開口部材に確実に進入できるとともに、両者の少なくとも1つの平坦面の係合により空回りが阻止される。
【0016】
前記駆動ロール、前記被動ロール、前記固定手段及び前記可動手段はカバーに覆われており、もって前記円筒状成形体の延伸温度がほぼ一定に以上されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、シームレスなエンドレスベルトの製造を熱可塑性樹脂の円筒状成形体の押出成形とその円周方向延伸との二段で行うとともに、円筒状成形体の円周方向延伸を駆動ロールと被動ロールとの間隔を変えることにより行うので、軸線方向及び円周方向のいずれにおいても優れた均一性を有するシームレスなエンドレスベルトが得られる。また駆動ロールを押圧する鏡面ロールを使用すれば、鏡面状外面を有するシームレスなエンドレスベルトが得られる。本発明の方法は押出成形と延伸の組合せからなるので、低コストでシームレスなエンドレスベルトを量産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】シームレスなエンドレスベルトを示す斜視図である。
【図2】円筒状成形体を示す斜視図である。
【図3】本発明の原理を説明するために駆動ロール及び被動ロールに円筒状成形体を掛けた状態を示す概略図である。
【図4】円筒状成形体の内面に当接するまで被動ロールを移動した状態を示す概略図である。
【図5】駆動ロールを回転させながら被動ロールを移動することにより、軟化した円筒状成形体を円周方向に延伸する様子を示す概略図である。
【図6】円筒状成形体を所定の直径まで延伸した状態を示す概略図である。
【図7】本発明のシームレスなエンドレスベルトの製造装置を示す概略平面図である。
【図8】図7のA-A断面図である。
【図9】ガイド手段に沿って移動する第一及び第二の可動手段と、それに回転自在に支持された被動ロールとを示す平面図である。
【図10】図9のB-B断面図である。
【図11】第一及び第二の可動手段に支持されたガイドピンと、ガイドピンの車輪が係合するガイドレールとを示す平面図である。
【図12】ガイドピンの車輪及びガイドレールを示す部分拡大断面図である。
【図13】第一及び第二のガイド手段の間隔が最も狭いときの第一の駆動手段を示す部分拡大断面図である。
【図14】第一及び第二のガイド手段の間隔が最も広いときの第一の駆動手段を示す部分拡大断面図である。
【図15】本発明のシームレスなエンドレスベルトの製造工程を示す概略平面図である。
【図16(a)】ロール軸を脱着手段に係合する前の状態を示す図である。
【図16(b)】ロール軸の先端部を脱着手段に係合した状態を示す図である。
【図16(c)】ロール軸を脱着手段に完全に係合した状態を示す図である。
【図17】駆動ロール及び被動ロールに円筒状成形体を掛けた状態を示す部分拡大平面図である。
【図18】図17の状態における固定手段及び可動手段の位置を示す部分側面図である。
【図19】被動ロールを移動させて円筒状成形体を延伸している状態を示す部分拡大平面図である。
【図20】図19の状態における固定手段及び可動手段の位置を示す部分側面図である。
【図21】エンドレスベルトを作製した後被動ロール及び押えロールを元の位置に戻した状態を示す部分拡大平面図である。
【図22】図21の状態において駆動ロール及び被動ロールに掛かっているエンドレスベルトが垂れている状態を示す部分断面図である。
【図23】エンドレスベルトを取り出す様子を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[1] 原理
図1に示す通り、シームレスなエンドレスベルト1は、(a) 直径が軸線方向にわたって均一であり(両端の直径D1,D1’等しい)、(b) 厚さTが軸線方向及び円周方向のいずれにおいても均一であり、(c) 円周方向の引張り強度が高く、(d) 導電性フィラーを含有する場合、表面抵抗が均一であること等が要求される。このような要件を満たすエンドレスベルトは、環状ダイからの押出だけで製造することができない。
【0020】
本発明は、シームレスなエンドレスベルトを熱可塑性樹脂の押出成形と円周方向延伸との二段で製造することを特徴とする。まず、図2に示す円筒状押出成形体10を形成する。円筒状押出成形体10は、目的のエンドレスベルトの軸線方向長さより僅かに大きな長さL1と、エンドレスベルトの直径D1より十分に小さな直径D0と、エンドレスベルトの肉厚T1より十分に小さな肉厚T0とを有する。
【0021】
図3に示す例では、円筒状押出成形体10を円周方向延伸する装置は、直径d1を有する駆動ロール21と、直径d2を有する被動ロール22と、直径d3を有する押えロール23とを有する。押えロール23は駆動ロール21とのギャップを制御することにより圧延を行うこともできる。また押えロール23の表面を鏡面状にすることにより、得られるエンドレスベルト1の外面を鏡面状にすることができる。図3及び図4に示すように、円筒状成形体10を駆動ロール21及び被動ロール22に掛けた後、被動ロール22と駆動ロール21との間隔をG1まで拡大するとともに、押えロール23を円筒状成形体10に接触させる。熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度で円筒状成形体10は軟化し、駆動ロール21と被動ロール22との間隔は、円筒状成形体10の直径D0と駆動ロール21及び被動ロール22の直径とにより決まる距離G2になる(図5)。駆動ロール21を回転させながら被動ロール22を徐々に移動させることにより駆動ロール21と被動ロール22との間隔を拡大すると、円筒状成形体10は円周方向に延伸される。所望の直径D1に相当する間隔G3になったときに被動ロール22の移動を停止すると、正確に直径D1を有するシームレスなエンドレスベルト1が得られる(図6)。
【0022】
[2] 製造装置
本発明のシームレスなエンドレスベルトの製造装置の基本構成は、駆動ロール21に対して被動ロール22及び押えロール23を平行を維持したまま移動させる機構と、駆動ロール21を支持する一対の固定手段及び被動ロール22及び押えロール23をそれぞれ支持する一対の可動手段の間隔を拡大して、各ロールの一方の軸を開放し、もってエンドレスベルトを駆動ロール21及び被動ロール22から取り外す機構とを有する。
【0023】
図7及び図8に示す本発明の一実施形態によるシームレスなエンドレスベルトの製造装置は、(a) 駆動ロール21、被動ロール22及び押えロール23と、(b) 駆動ロール21の一方の軸を回転自在に支持する第一の固定手段31と、(c) 駆動ロール21の他方の軸を回転自在かつ脱着自在に支持する機構を有する第二の固定手段32と、(d) 被動ロール22の一方の軸を回転自在に支持する第一の可動手段41と、(e) 被動ロール22の他方の軸を回転自在かつ脱着自在に支持する第二の可動手段42と、(f) 押えロール23の一方の軸を回転自在に支持する第三の可動手段51と、(g) 押えロール23の他方の軸を回転自在かつ脱着自在に支持する第四の可動手段52と、(h) 第一の可動手段41及び第三の可動手段51がそれぞれ第一の固定手段31に対して直線的に移動するのを可能にするための固定された第一のガイド手段61と、(j) 第二の可動手段42及び第四の可動手段52がそれぞれ第二の固定手段32に対して直線的に移動するのを可能にするとともに、第一のガイド手段61に対して平行を維持したまま移動可能な第二のガイド手段62と、(k) 第一及び第二の可動手段41,42を同時に移動させるための第一の駆動手段71と、(m) 第三及び第四の可動手段51,52を同時に移動させるための第二の駆動手段72と、(n) 第二のガイド手段62を第一のガイド手段61に対して平行を維持したまま移動させるための第三の駆動手段73と、(p) 各ロール21〜23及び延伸中の円筒状成形体10を覆う上下一対の加熱手段81,82と、(q) 上記手段を覆うカバー90とを有する。
【0024】
本例では、第一及び第二の固定手段31,32はそれぞれ第一及び第二のガイド手段61,62に固定されている。加熱手段81,82は、円筒状成形体10の装着及びエンドレスベルト1の脱着を可能にするために、駆動ロール21及び被動ロール22から遠ざかるように可動である。
【0025】
カバー90の少なくとも上面は、内部を監視することができるようにガラスでできている。カバー90の底部には、エンドレスベルト1を取り出すためにヒンジ90aにより枢動自在な底蓋91が設けられている。延伸時の温度を制御するために、各ロール21〜23に加熱手段を内蔵するのが好ましい。また必要に応じて、装置の雰囲気温度を制御するためにカバー90内に加熱手段(図示せず)を設けても良い。
【0026】
第一の可動手段41と第三の可動手段51は基本的に同じ構造を有し、第二の可動手段42と第四の可動手段52は基本的に同じ構造を有する。そこで、図9〜図11に被動ロール22を有する第一及び第二の可動手段41,42を示す。第一の可動手段41は、被動ロール22の軸を回転自在に支持するベアリング41a,41aと、第一のガイド手段61のガイド溝61a、61aに沿って動く一対の車輪41b,41bと、ガイド溝61a、61aに平行なガイド棒61bが摺動自在に貫通する軸線方向穴41cと、一対の平行なガイドピン41d,41dを支持するフレーム41eとを有する。第二の可動手段42は、被動ロール22の軸を回転自在に支持するベアリング42a,42aと、第一のガイド手段61に平行な第二のガイド手段62のガイド溝62a、62aに沿って動く一対の車輪42b,42bと、ガイド溝62a、62aに平行なガイド棒62bが摺動自在に貫通する軸線方向穴42cと、一対の平行なガイドピン41d,41dを支持するフレーム42eとを有する。
【0027】
一対のガイドピン41d,41dは支持フレーム41eに固定されているが、支持フレーム42eの穴に摺動自在に支持されている。図12に詳細に示すように、各ガイドピン41d,41dの先端部に凹面を有する車輪41f,41fが取り付けられており、各車輪41fは第一及び第二のガイド手段61,62に平行な凸条ガイドレール41gに沿って移動できるようになっている。平行なガイド溝61a、62a及びガイド棒61b,62bは、被動ロール22及び押えロール23を駆動ロール21に対して常に平行に移動させる役割を有する。一対のガイドピン41d,41dは、第一及び第二の固定手段31,32、第一及び第二の可動手段41,42、及び第三及び第四の可動手段51,52がそれぞれ平行を維持したまま間隔を変えるのを可能にする役割を有する。
【0028】
第一及び第二の可動手段41,42を同時に移動させるための第一の駆動手段71と、第三及び第四の可動手段51,52を同時に移動させるための第二の駆動手段72とは基本的に同じ構成を有する。図13及び図14は第一の駆動手段71の詳細を示す。第一の駆動手段71は、エアシリンダ71aと、エアシリンダ71aのピストンに連結した軸71bと、軸71bに直角に固定された押圧板71cと、押圧板71cの一端部に直角に固定されるとともに、第一の可動手段41に固定された軸71dと、押圧板71cの他端部に形成された長穴71eに摺動自在に係合するとともに、第二の可動手段42に固定された軸71fとを有する。第二のガイド手段62が移動していない状態では、図13に示すように、軸71fは長穴71eの内端側(軸71bに最も近い側)に位置しているが、第二のガイド手段62が最も移動した状態では、図14に示すように、軸71fは長穴71eの外端側(軸71bから最も遠い側)に位置する。このような構造を有する駆動手段71,72により、第二のガイド手段62が移動しても第一及び第二の可動手段41,42及び第三及び第四の可動手段51,52をそれぞれ移動させることができる。
【0029】
第一〜第三の駆動手段71〜73のエアシリンダはいずれもカバー90の外に配置されているので、カバー90内の高温の影響を受けない。
【0030】
[3] 製造方法
図15は、本発明のシームレスなエンドレスベルトの製造工程を示す。円筒状成形体10を装着する前の工程(1) では、第二のガイド手段62は第一のガイド手段61から最も遠い位置にあり、各ロール21〜23の一方の軸は開放している。従って、駆動ロール21及び被動ロール22に円筒状成形体10を容易に掛けることができる[工程(2)]。
【0031】
第三の駆動手段73により第二のガイド手段62を第一のガイド手段61に近付けると[工程(3)]、各ロール21〜23の一方の軸は対応する第二の固定手段32及び可動手段42,52に設けられたロール軸脱着手段に係合する。いずれの脱着手段も基本的に同じであるので、代表として、駆動ロール21の一方の軸の先端部とそれが係合する脱着手段とを図16(a)〜図16(c) に示す。駆動ロール21の一方の軸21a及びそのテーパ状先端部21bは四角の断面形状を有する。第二の固定手段32に設けられたロール軸脱着手段33は、四角の内面を有する開口部材33aと、開口部材33aを回転自在に支持するベアリング33bとを有する。開口部材33aの内面は軸21aより僅かに大きい。図16(b) に示すように、軸21aの先端部21bは開口部材33aの内面より十分に小さいので、軸21aと開口部材33aの回転方向位置が異なっていても、テーパ状先端部21bが開口部材33aに進入すると、軸開口部材33aは回転する。その結果、開口部材33aの回転方向位置は軸21aと一致し、図16(c) に示すように軸21aは開口部材33a内に進入することができる。すなわち、この機構により、開口部材33aがいかなる回転方向位置にあっても軸21aとの係合を確実に行うことができる。
【0032】
図17及び図18は、図15の工程(3) における固定手段及び可動手段の配置を詳細に示す。各可動手段41,42及び51,52は固定手段31,32に対して最も近い位置にある。第一及び第二のガイド手段61,62を最も狭い間隔で固定したまま、上下一対の加熱手段81,82を円筒状成形体10を覆う位置まで移動し、駆動ロール21を回転させた状態で、円筒状成形体10を熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度に加熱する。目的とするエンドレスベルトは数十μm程度と薄いので、十分な温度制御のために、各ロール21〜23も内蔵した加熱手段により加熱するのが好ましい。円筒状成形体10は回転しながら加熱されるので、非常に均一に昇温される。
【0033】
この状態で、第一及び第二の各可動手段41,42を第一及び第二の固定手段31,32から遠ざけるとともに、第三及び第四の各可動手段51,52を第一及び第二の固定手段31,32に近付ける[工程(4)]。図19及び図20は工程(4) における固定手段及び可動手段の配置を詳細に示す。工程(4) では円筒状成形体10は円周方向に延伸されるとともに押えロール23に押圧されるので、延伸により得られるエンドレスベルトの外面は平坦化される。特に押えロール23のロール面が鏡面状であると、エンドレスベルトの外面が鏡面状となり好ましい。押えロール23の押圧力はエンドレスベルトの外面を鏡面状にするのに必要な大きさであれば良いが、延伸とともに圧延も行う場合には押圧力を大きくする。
【0034】
所望の直径D1に相当する間隔G3に達した後、上下一対の加熱手段81,82を遠ざけ、被動ロール22及び押えロール23を元の位置まで戻す[工程(5)]。得られたエンドレスベルト1は駆動ロール21及び被動ロール22に掛かったまま垂れる。加熱手段81,82を遠ざけると、エンドレスベルト1の温度は直ちに熱可塑性樹脂の軟化点未満に低下する。この状態で第二のガイド手段62を第一のガイド手段61から遠ざけ、各ロール21〜23の一方の軸を開放する[工程(6)]。図21及び図22は工程(6) における固定手段及び可動手段の配置と得られたエンドレスベルト1の状態を詳細に示す。
【0035】
最後に、駆動ロール21及び被動ロール22の間に設けられた押板部材100によりエンドレスベルト1を押して、駆動ロール21及び被動ロール22から脱着させる[工程(7)]。図23は工程(7) の詳細を示す。カバー90の枢動自在な底蓋91を開放し、脱着したエンドレスベルト1を取り出す。なおエンドレスベルト1を脱着するために、押板部材100の代わりに空気流を用いても良い。
【0036】
得られたシームレスなエンドレスベルト1の両端を所定の軸線方向長さL1(<L0)になるように切断する。
【0037】
[4] 熱可塑性樹脂
本発明に用いることができる熱可塑性樹脂は、上記要件を満たすシームレスなエンドレスベルトを作製できるものであれば特に限定されず、例えばフッ素樹脂、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエステル等である。特にポリアリレートを主体とする熱可塑性樹脂は強度及び耐熱性の観点から好ましい。ここで「ポリアリレートを主体とする」とは、ポリアリレートが樹脂分の50質量%以上であればよいことを意味し、ポリアリレート100%の樹脂でも良い。
【0038】
ポリアリレートは、2価のフェノール残基と2価の芳香族カルボン酸残基とから構成されているポリエステルである。2価のフェノール成分は、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン(ビスフェノールAP)等である。また2価の芳香族ジカルボン酸成分は、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、3-tert-ブチルイソフタル酸、ジフェン酸、4,4’-ジカルボン酸等である。ポリアリレートは、例えば特開2008-19312号に記載の界面重合法により製造することができる。
【0039】
導電性を有するシームレスなエンドレスベルトを製造する場合、熱可塑性樹脂に導電性フィラーとしてカーボンブラック及び/又はカーボンナノチューブを添加するのが好ましい。導電性フィラーの配合量はエンドレスベルトの所望の導電率に応じて決める。
【0040】
以上の通り、図面を参照して本発明のクッション部材を説明したが、本発明はそれに限定されず、その趣旨を変更しない限り種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0041】
1・・・シームレスなエンドレスベルト
10・・・熱可塑性樹脂の円筒状成形体
21・・・駆動ロール
22・・・被動ロール
23・・・押えロール
31,32・・・第一及び第二の固定手段
33・・・脱着手段
41,42・・・第一及び第二の可動手段
41a,42a・・・ベアリング
41b,42b・・・車輪
41c,42c・・・軸線方向穴
41d・・・第三のガイド手段(ガイドピン)
41e,42e・・・支持フレーム
41f・・・ガイドピンの車輪
41g・・・ガイドレール
51,52・・・第三及び第四の可動手段
61,62・・・第一及び第二のガイド手段
61a,62a・・・ガイド溝
61b,62b・・・ガイド棒
71,72,73・・・第一〜第三の駆動手段
71a・・・エアシリンダ
71b,71d,71f・・・軸
71c・・・押圧板
71e・・・長穴
81,82・・・第一及び第二の加熱手段
90・・・カバー
91・・・枢動自在な底蓋
100・・・押板部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂のシームレスなエンドレスベルトを製造する方法であって、(1) 溶融熱可塑性樹脂を環状ダイより押し出して円筒状成形体を形成し、(2) 前記円筒状成形体を一対のロールに掛けた後、前記熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度でロールを回転しながら両ロール間隔を徐々に拡大し、もって所望の直径のシームレスなエンドレスベルトを得ることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシームレスなエンドレスベルトの製造方法において、前記円筒状成形体の延伸の際、一対のロールの一方に第三のロールを押圧し、エンドレスベルトの外面を平坦化することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載のシームレスなエンドレスベルトの製造方法において、第三のロールが鏡面状のロール面を有することを特徴とする方法。
【請求項4】
熱可塑性樹脂のシームレスなエンドレスベルトを製造する装置であって、駆動ロール及び被動ロールと、前記駆動ロールを回転自在に支持する一対の第一の手段と、前記被動ロールを回転自在に支持する一対の第二の手段とを有し、前記第一及び第二の手段の一方は前記駆動ロールと前記被動ロールとの間隔を変えるために可動であり、かつ前記第一の手段の間隔及び前記第二の手段の間隔は前記駆動ロール及び前記被動ロールの一方の軸を開放し得るように可変であり、前記駆動ロール及び前記被動ロールに熱可塑性樹脂の円筒状成形体を掛けた後、前記第一及び第二の手段の間隔を徐々に拡大して所望の直径のシームレスなエンドレスベルトを形成し、前記第一の手段の間隔及び前記第二の手段の間隔を拡大させて前記駆動ロール及び前記被動ロールの一方の軸を開放し、前記エンドレスベルトを回収することを特徴とする装置。
【請求項5】
熱可塑性樹脂のシームレスなエンドレスベルトを製造する装置であって、(a) 駆動ロール及び被動ロールと、(b) 前記駆動ロールの一方の軸を回転自在に支持する第一の固定手段と、(c) 前記駆動ロールの他方の軸を回転自在かつ脱着自在に支持する機構を有する第二の固定手段と、(d) 前記被動ロールの一方の軸を回転自在に支持する第一の可動手段と、(e) 前記被動ロールの他方の軸を回転自在かつ脱着自在に支持する第二の可動手段と、(f) 前記第一の可動手段が前記第一の固定手段に対して直線的に移動するのを可能にするための固定された第一のガイド手段と、(g) 前記第二の可動手段が前記第二の固定手段に対して直線的に移動するのを可能にするとともに、前記第一のガイド手段に対して平行を維持したまま移動可能な第二のガイド手段とを有し、前記駆動ロール及び前記被動ロールに熱可塑性樹脂の円筒状成形体を掛けた後、前記熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度条件で、前記第一及び第二の固定手段に対してそれぞれ前記第一及び第二の可動手段を同時に移動させることにより、前記駆動ロールと前記被動ロールとの間隔を徐々に拡大し、もって所望の直径のシームレスなエンドレスベルトを形成するとともに、前記第二のガイド手段を移動させて前記駆動ロールの他方の軸及び前記被動ロールの他方の軸をそれぞれ前記第二の固定手段及び前記第二の可動手段から脱着させ、もって前記エンドレスベルトを回収する装置。
【請求項6】
請求項5に記載のシームレスなエンドレスベルトの製造装置において、前記第一及び第二の固定手段の間隔と前記第一及び第二の可動手段の間隔とを同時に変えるために、前記第一及び第二の固定手段及び前記第一及び第二の可動手段にそれぞれ第三のガイド手段が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のシームレスなエンドレスベルトの製造装置において、前記駆動ロール及び前記被動ロールに掛けられた円筒状成形体を加熱するための手段を有し、前記加熱手段は、前記円筒状成形体の装着及び前記エンドレスベルトの脱着を可能にするために、前記駆動ロール及び前記被動ロールから遠ざかるように可動であることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載のシームレスなエンドレスベルトの製造装置において、前記駆動ロール及び前記被動ロールがそれぞれ加熱手段を内蔵していることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載のシームレスなエンドレスベルトの製造装置において、前記第二の固定手段及び前記第二の可動手段にそれぞれ設けられたロール軸脱着手段は、少なくとも1つの平坦面を有する内面を有する開口部材と、前記開口部材を回転自在に支持するベアリングとを有し、各脱着手段に係合する前記駆動ロールの他方の軸及び前記被動ロールの他方の軸はそれぞれ少なくとも1つの平坦面を有するとともに先端部がテーパ状であり、もって前記他方の軸と前記開口部材の回転方向位置に関係なく、前記他方の軸は前記脱着手段の開口部材に確実に進入できるとともに、両者の少なくとも1つの平坦面の係合により空回りが阻止されることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれかに記載のシームレスなエンドレスベルトの製造装置において、前記駆動ロール、前記被動ロール、前記固定手段及び前記可動手段がカバーに覆われており、もって前記円筒状成形体の延伸温度がほぼ一定に以上されていることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16(a)】
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【図16(b)】
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【図16(c)】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−126027(P2011−126027A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284186(P2009−284186)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(592223739)コーポス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】