説明

超音波映像装置の映像作成方法

【課題】 従来の走査方式と同じサンプリングピッチおよび走査範囲の設定で、従来の走査方式では検出できなかった隠れた欠陥等を検出できる超音波映像装置の映像作成方法を提供する。
【解決手段】 この超音波映像装置の映像作成方法では、被検体13に超音波を発射しそのエコーを入射するプローブ11を、主走査方向、副走査方向に送って走査動作させる。この映像作成方法は、走査範囲とサンプリングピッチを指定する第1段階と、主走査方向の走査開始位置を、副走査方向の送り移動時に主走査方向のサンプリングピッチの+1/nの間隔でずらしながら走査を行う第2段階と、副走査方向の送り移動回数がn回になったところで、主走査方向の走査開始位置を、副走査方向の送り移動時に主走査方向のサンプリングピッチの−1/nの間隔でずらしながら走査を行う第3段階とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波映像装置の映像作成方法に関し、特に、従来の走査範囲の設定では隠れて検出できなかった欠陥等を同じサンプリングピッチや走査範囲で検出可能にした超音波映像装置の映像作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の機械走査式超音波映像装置では、一般的に図10に示すように、例えば平板形状の被検体101の上で、矩形の観察領域を形成するようにプローブ(超音波探触子)102が走査動作(二次元走査や円筒面的走査)を行うことにより、観察領域の映像を作成するためのデータを集める。プローブ102の先部からは超音波103が出射され、また被検体101の観察領域から反射されたエコー超音波がプローブ102の先部に入射される。図10で、104はプローブ102から出射された集束ビーム状態の超音波103の照射点の走査軌跡を示す。プローブ102は、図示しない走査機構によって走査動作を行う。プローブ102による走査動作は、走査軌跡104から明らかなように、方向Aで示す主走査方向の動き(主走査動作)と、方向Bで示す副走査方向の動き(副走査動作)とからなる。主走査方向Aの動きでは所定のサンプリングピッチでプローブ102を動かして一定の間隔で測定データを取得し(サンプリング動作)、副走査方向Bの動きでは予め設定された送りピッチでプローブ102を送る。かかる主走査方向Aの動きと副走査方向Bの動きが交互に行われることにより、例えばジグザグの走査軌跡104が形成され、全体として矩形の観察領域が形成される。
【0003】
上記の超音波映像装置による映像を作成するための方法として、本出願人は先に下記の特許文献1に記載された映像作成方法を提案した。この超音波映像装置の映像作成方法は、測定範囲におけるプローブの走査動作について、副走査方向の送りピッチの設定を容易化し、必要に応じて適切な高い精度の測定映像を得ることができ、さらに全体として映像作成時間を短縮できる方法である。
【特許文献1】特開平9−54070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の超音波映像装置の映像作成方法は、一般的に、試料表面における測定のための走査範囲の設定に関して、主走査方向において測定点(サンプリング点)を決めるためのサンプリングピッチを適当に設定し、副走査方向において送りピッチを適当に設定することにより実行される。この場合において、従来の映像作成方法の測定点の設定の仕方によれば、多数の主走査方向のそれぞれの走査開始位置は主走査方向の上で同じ位置であり、各測定点の主走査方向の上で同じ位置に設定されている。従ってこのような従来の走査範囲の設定では、上記サンプリングピッチをどのように適切に設定したとしても、線状の欠陥が副走査方向に平行な方向に生じかつ測定点の間に位置するときには、当該欠陥を検出することは不可能である。すなわち、従来の走査方式による映像作成方法では、設定された測定点に対して隠れた欠陥等が存在することになり、当該欠陥等を検出することができないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、従来の走査方式と同じサンプリングピッチおよび走査範囲の設定であっても、従来の走査方式では検出できなかった隠れた欠陥等を検出できる超音波映像装置の映像作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る超音波映像装置の映像作成方法は、上記の目的を達成するために、次のように構成される。
【0007】
第1の本発明(請求項1に対応)に係る超音波映像装置の映像作成方法は、被検体に対して超音波を発射し当該被検体からのエコー(反射された超音波)を入射するプローブを、主走査方向および副走査方向に交互に送って走査動作させ、エコーに係る信号に基づいて主走査方向での測定データを取得して映像を作成する方法であり、主走査方向の動作ではサンプリングピッチが設定され、このサンプリングピッチに基づいて上記測定データを得るためのサンプリング動作が行われ、副走査方向の動作では送りピッチが設定され、これにより副走査方向に送り動作が行われる。上記において、当該映像作成方法は、測定すべき走査範囲とサンプリングピッチを指定する第1段階と、主走査方向の走査開始位置を、副走査方向の送り移動時に主走査方向のサンプリングピッチの+1/nの間隔でずらしながら走査を行う第2段階と、副走査方向の送り移動回数がn回になったところで、主走査方向の走査開始位置を、副走査方向の送り移動時に主走査方向のサンプリングピッチの−1/nの間隔でずらしながら走査を行う第3段階と、指定された走査範囲の測定で第2段階と第3段階を繰り返す第4段階とを備える。
【0008】
上記第1の本発明では、主走査方向の走査開始位置を、副走査方向の送り移動時に主走査方向のサンプリングピッチの+1/nの間隔でずらしながら走査を行う第2段階と、副走査方向の送り移動回数がn回になったところで、主走査方向の走査開始位置を、副走査方向の送り移動時に主走査方向のサンプリングピッチの−1/nの間隔でずらしながら走査を行う第3段階を設けることにより、例えば測定点の間で線状の欠陥が副走査方向に平行な方向に生じていたとしても、当該欠陥を確実に検出することが可能となる。
【0009】
第2の本発明(請求項2に対応)に係る超音波映像装置の映像作成方法は、上記の第1の方法において、好ましくは、指定された走査範囲で生じた測定データ欠損部の測定データを補間演算処理で生成することを特徴とする。
【0010】
第3の本発明(請求項3に対応)に係る超音波映像装置の映像作成方法は、上記の第1の方法において、好ましくは、指定された走査範囲を基準にして、主走査方向の測定範囲を、走査開始位置側または走査終了位置側でサンプリングピッチの2倍の距離だけ拡張し、測定データ欠損部を生じさせないことを特徴とする。
【0011】
第3の本発明によって、測定範囲における主走査方向の走査開始位置側または走査終了位置側のデータ欠損部においても、測定データを得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、超音波映像装置の映像作成方法で、主走査方向の走査開始位置を、副走査方向の送り移動時に主走査方向のサンプリングピッチの+1/nの間隔でずらしながら走査を行い、また副走査方向の送り移動回数がn回になったところで、主走査方向の走査開始位置を、副走査方向の送り移動時に主走査方向のサンプリングピッチの−1/nの間隔でずらしながら走査を行うようにしたため、従来の走査方式と同じサンプリングピッチおよび走査範囲の設定であっても、従来の走査方式では検出できなかった隠れた欠陥等を検出できる。また本発明によれば、プローブ走査の仕方に関して、検出能力を上げるために不必要にサンプリングピッチを細かく設定する必要はなく、欠陥検出のための観察時間を短縮し、さらに少ないデータで効率よく欠陥を捕らえることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明による映像作成方法を実施する超音波映像装置のシステム構成を示す。プローブ(超音波探触子)11は走査機構12に取り付けられる。走査機構12は、XYZ移動機構を内蔵し、プローブ11を三次元的に動作させる働きを有する。プローブ11は、走査機構12によって被検体13の観察領域を二次元的に走査する。走査機構12は走査制御装置14により制御され、さらに走査制御装置14は画像処理装置15によって制御される。より詳しくは、後述されるように、画像処理装置15内のマイクロプロセッサ(MPU)18が、メモリ20に備えた平面走査プログラム、補間処理プログラムを読出して実行することにより、走査制御装置14、走査機構12を通して、プローブ11の動作に関して必要な制御が行われる。
【0015】
またプローブ11は、超音波探傷器16に電気的に関連付けられる。超音波探傷器16は、パルサ、レシーバ、ピーク値検出回路等を内蔵し、プローブ11に対して所定の測定周期でパルス信号を送る。プローブ11は、超音波探傷器16から与えられたパルス信号に基づいてパルス状の超音波ビームを発生し、これを被検体13に対して出射し、被検体13での反射で生じたエコー(超音波)を入射し、パルス信号に対応するエコー信号を生成し、超音波探傷器16に対し出力する。被検体13は、走査機構12に設けられた水槽内に設置される。超音波探傷器16は、出力したパルス信号に対応するエコー信号を受信し、それを増幅し、その中から必要なピーク値を検出して、A/D変換装置17に送出する。A/D変換装置17は、得られたピーク値のアナログ信号を高い周波数でサンプリングしてそのアナログ値を、例えば、8ビット、256段階でディジタル値に変換し、画像処理装置15のマイクロプロセッサ18が処理できる入力データ値にしてバス19に送出する。
【0016】
バス19には、マイクロプロセッサ18の他に、キーボード(図示せず)、各種プログラムやデータを記憶したメモリ20、画像メモリ21、操作装置22が接続される。メモリ20の内部には、平面走査プログラム23、補間処理プログラム24が格納され、さらにパラメータ記憶領域25が設けられる。画像メモリ21は、画像処理装置15の外部に設けられたディスプレイ26に接続され、内部に格納した画像データをディスプレイ26に供給して表示動作を行わせる。上記操作装置22は、視野、走査範囲、サンプリングピッチ、送りピッチ等の走査測定に必要なパラメータを、測定者が入力するためのインターフェースである。上記の平面走査プログラム23、補間処理プログラム24の各内容は、以下の動作説明の中で明らかにされる。
【0017】
図2と図6を参照して本発明に係る映像作成方法の第1の実施形態を説明する。この映像作成方法では、データ取得のための測定時のプローブの主走査方向における走査開始位置の設定の仕方に特徴がある。図2はプローブを走査動作させる際の制御の仕方のフローチャート(パド(Pad)図)を示し、図6は被検体13の表面上での走査範囲における走査動作を行うプローブの動き(移動軌跡)を示している。
【0018】
図2において、被検体13の或る領域を測定する場合、プローブ11は、その先端が当該領域に対向するように配置され、図10に示されるように上記領域を好ましくは矩形の形状にて平面走査する。プローブ11の平面走査は、上記の平面走査プログラム23を実行することによって行われる。プローブ11で被検体13を平面走査し超音波によって形状等の測定を行うにあたって、例えば測定者は、操作装置22を使用して、焦点合せ、矩形の走査範囲(測定視野)R1、主走査方向におけるサンプリングピッチSp、副走査方向における送りピッチなどの各種パラメータを入力し、それらの設定・指定を行う(ステップS11)。
【0019】
図6では、指定された走査範囲R1、主走査ライン番号1〜12,…で示される各主走査ライン、主走査方向におけるサンプリングピッチSp、プローブ11から出射された超音波ビームの入射スポット31が示されている。サンプリングピッチSpは例えば120μmであり、入射スポット31のスポット径は例えば60μmである。
【0020】
なお、主走査方向のサンプリングピッチSp(測定を行うための一定間隔)は、通常、マイクロプロセッサ18によって装置の仕様から決まる最も細かい値が自動的に設定される。また測定者が、当該サンプリングピッチSpを設定することもできる。こうして、平面走査プログラム23と、上記のごとく設定された各種パラメータを用いてプローブ11の走査動作が制御される。
【0021】
さらに、この第1の実施形態の走査方法では、図6に示された走査開始位置ずらし量Sが設定される(ステップS12)。「走査開始位置」は、図6に示した主走査ライン番号1〜12,…の各主走査方向における左端の最初の入射スポットの位置を意味している。「走査開始位置ずらし量S」とは、主走査ラインが番号1から番号2等に順に移行するにつれて、図6に示すごとく、所定量(S)だけ右側にずらすための当該ずらし量を意味している。走査開始位置ずらし量Sの大きさは、サンプリングピッチSpとの関係で決まり、0≦S<Spの条件を満たすように設定される。走査開始位置ずらし量Sは例えば30μmである。
【0022】
次には、ずらし回数Snが算出される(ステップS13)。ずらし回数Snは、Sn=Sp÷Sの式によって算出される。この実施形態の例ではSnは4となる。また反対に、走査開始位置ずらし量Sは、サンプリングピッチSpを、設定したずらし回数Snで割ることにより設定される。
【0023】
次に、ステップS14ではカウンタ(Cnt)が0にセットされ、ステップS15では主走査移動時の走査開始位置のずらし方向(Dir)が1にセットされ、さらにステップS16では主走査移動のための走査ライン番号(Ln)が1にセットされる。上記の変数Dirを1にセットすることは、各主走査方向の移動で走査開始位置のずらし方向を指定することを意味する。以上により、被検体13の表面で平面走査を行うための各種変数の初期条件が設定される。
【0024】
次のステップS17に基づき、マイクロプロセッサ18によって平面走査プログラム23を起動し、走査機構12を駆動して、被検体13の上でプローブ11を平面走査させ、走査範囲R1の測定を行う。この平面走査において、ステップS17では、走査ライン番号Lnが走査ライン数を超えたか否かが判定される。走査ライン番号Lnが走査ライン数を超えたときには、走査範囲R1についての平面走査が完了したものとして、平面走査プログラムは終了する。ステップS17で、走査ライン番号Lnが走査ライン数と一致するまでの間、走査範囲R1での平面走査および測定・表示が継続し、下記のステップS18〜S27が繰り返し実行される。
【0025】
ステップS18は、主走査方向の走査移動の回数をカウントするためのカウンタCntが前述したずらし回数Sn(この実施形態の場合では「4」)に到ったか否かを判定するためのステップである。
【0026】
ステップS18で、上記カウンタCntが4未満である場合、すなわちCntが0〜3である場合には、0〜3の各々においてステップS21〜S27が実行される。ステップS21では、走査ライン番号Lnが1であるか否かが判定される。走査ライン番号Lnが1のときにはステップS22で新しい走査開始位置Ssには初期設定時の走査開始位置が設定される。走査ライン番号Lnが1以外の場合にはステップS23で、新しい走査開始位置Ssは、「Ss=Ss+(S×Dir)」として算出され、ステップS24ではCntが1だけ増加される。ステップS25では、当該主走査ラインに関して主走査方向の走査がサンプリングピッチでSpで実行される。次のステップS26では走査ライン番号Lnが1だけ増加される。最後のステップS27では、走査・測定が完了した当該主走査ラインに関してのデータ表示がディスプレイ26において実行される。
【0027】
以上のごとくして、図6に示す走査ライン番号1〜5の各主走査方向に関して、図示されるごとき走査・測定が実行される。走査ライン番号1〜5の各主走査方向の走査移動では、その左側が走査を開始する位置として設定され、かつ左端に位置する走査開始位置が、走査開始位置ずらし量Sだけ右側ずれた状態で走査移動が行われている。
【0028】
図6に示すごとく主走査方向の走査で走査開始位置をずらし量Sだけ左側から右側にずらすことは、主走査方向の走査開始位置を、副走査方向の送り移動時に主走査方向のサンプリングピッチSpの+1/4の間隔(+S)でずらしながら走査を行うことを意味している。
【0029】
次にステップS18でカウンタCntが4になった場合には、YESと判定され、ステップS19,S20が実行される。ステップS19はカウンタCntを0にリセットするステップであり、ステップS20は変数Dirが、最初に設定された値「1」に対し「−1」を掛けることにより「−1」にセットされる。この後において、上記のステップS18,S21〜S27が実行される。
【0030】
ステップS19によって図6に示す次の走査ライン番号5〜9の主走査方向についての走査・測定が行われることになる。またステップS20によって、走査ライン番号5〜9の主走査方向の走査・測定で、図6に示すごとく走査開始位置が右側から左側に走査開始位置ずらし量Sだけずらされることになる。
【0031】
以上のごとくして、図6に示す走査ライン番号5〜9の各主走査方向に関して、図示されるごとき走査・測定が実行される。走査ライン番号5〜9の各主走査方向の走査移動では、その左側が走査を開始する位置として設定され、かつ左端に位置する走査開始位置が、走査開始位置ずらし量Sだけ左側ずれた状態で走査移動が行われている。
【0032】
図6に示すごとく主走査方向の走査で走査開始位置をずらし量Sだけ右側から左側にずらすことは、主走査方向の走査開始位置を、副走査方向の送り移動時に主走査方向のサンプリングピッチSpの−1/4の間隔(−S)でずらしながら走査を行うことを意味している。
【0033】
上記の第1実施形態に係る映像作成方法によれば、主走査方向におけるサンプリングピッチSpを一定に保持したまま走査開始位置をずらし量Sだけ順次にずらしていくため、被検体13の表面上で副走査方向に平行な方向にて線状の欠陥が生じていたとしても、当該欠陥を少なくとも4本の主走査方向のうちのいずれかの走査で検出することができる。これにより、従来では隠れていて検出できなかった欠陥を確実に検出することができる。
【0034】
次に、図3と図7を参照して本発明に係る映像作成方法の第2の実施形態を説明する。図3は前述の図2と同様な図であり、図7は前述の図6と同様な図である。図3と図7において、第1実施形態の図2と図6で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0035】
第2実施形態による映像作成方法では、第1実施形態の場合と同様に、データ取得のための測定時のプローブの主走査方向における走査開始位置の設定の仕方に特徴がある。さらに第2実施形態では、第1実施形態と比較して、各主走査方向の走査・測定における走査開始位置が、奇数の主走査ライン番号の主走査ラインでは左側になり、偶数の主走査ライン番号の主走査ラインでは左側になるという特徴を有している。
【0036】
図7に示されるごとく、主走査ライン番号1〜5については、主走査方向における走査での走査開始位置が、左側から右側へ走査開始位置ずらし量Sだけ順次にずらされる。ただし、走査開始位置は、奇数番号の主走査ラインと偶数番号の主走査ラインでは反対になり、走査方向が逆向きになるので、ジグザグの走査移動軌跡が形成される。同様に、次の主走査ライン番号5〜9については、主走査方向における走査での走査開始位置が、右側から左側へ走査開始位置ずらし量Sだけ順次にずらされる。この場合にも、走査開始位置は、奇数番号の主走査ラインと偶数番号の主走査ラインでは反対になり、走査方向が逆向きになって、ジグザグの走査移動軌跡が形成される。
【0037】
第2実施形態に係る映像作成方法における上記の走査移動を、図3のフローチャ−トとで見てみる。ステップS11〜S24,S26〜S27は第1実施形態における対応するステップと同じである。これらのステップの説明は第1実施形態での説明を援用することとする。またステップS31〜S35は、第2実施形態の係る映像作成方法の固有の処理ステップとして追加されたものである。
【0038】
ステップS31は、主走査移動時に走査開始位置のずらし方向に係る前述の変数Dirを1にセットすると共に、新たな変数Sdirを作り、当該変数Sdirを1にセットする。変数Sdirは走査開始位置を左端にするかまたは右端にするかを決める変数である。
【0039】
ステップS32では、各種走査方向での走査に関して、新しい走査終了位置Seを設定する。新しい走査終了位置Seは、Ss+(Sdir×主走査方向の走査幅)として設定される。さらに次のステップS33では、主走査方向に関して走査開始位置から走査終了位置までの1ライン分の走査が実行される。これにより1本の主走査方向の走査が実行される。
【0040】
ステップS34では、新しい走査開始位置Ssに新しい走査終了位置Seを設定することで次の主走査方向での走査における基準位置が変更される。
【0041】
さらに次のステップS35では、変数SdirについてSdir=Sdir×−1の演算が行われ、変数Sdirが1から−1または−1から1に変換される。
【0042】
上記のごとく新たなステップS31〜S35を追加することにより、図7に示すごとき走査方向が主走査ラインごとに逆向きになる走査が実行される。この場合の走査においても、第1実施形態の場合と同様に、走査ライン番号1〜5では各走査開始位置が順次に左側から右側へずらし量Sごとずらされ、走査ライン番号5〜9では各走査開始位置が順次に右側から左側にずらし量Sごとずらされる。
【0043】
上記の第2実施形態に係る映像作成方法によっても、主走査方向を交互に逆向きに変えながら、主走査方向におけるサンプリングピッチSpを一定に保持したまま走査開始位置をずらし量Sだけ順次にずらしていくため、被検体13の表面上で副走査方向に平行な方向にて線状の欠陥が生じていたとしても、当該欠陥を少なくとも4本の主走査方向のうちのいずれかの走査で検出することができる。これにより、従来では隠れていて検出できなかった欠陥を確実に検出することができる。
【0044】
次に、図4と図8を参照して本発明に係る映像作成方法の第3の実施形態を説明する。図4は前述の図2と同様な図であり、図8は前述の図6と同様な図である。図4と図8において、第1実施形態の図2と図6で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0045】
第3実施形態による映像作成方法では、第1実施形態の場合と同様に、データ取得のための測定時のプローブの主走査方向における走査開始位置の設定の仕方に特徴がある。さらに第3実施形態では、走査範囲R1で走査終了位置の領域側および非測定箇所での補間処理を行って映像化範囲を拡大するという特徴を有している。
【0046】
図8に示されるごとく、指定された走査範囲R1に関して、主走査ライン番号1〜5については、主走査方向における走査での走査開始位置が、左側から右側へ走査開始位置ずらし量Sだけ順次にずらされる。また次の主走査ライン番号5〜9については、主走査方向における走査での走査開始位置が、右側から左側へ走査開始位置ずらし量Sだけ順次にずらされる。これを繰り返して走査範囲R1について走査・測定を行う。
【0047】
さらに第3実施形態による映像作成方法では、走査・測定で得られた測定データに基づいて補間処理を行い、ディスプレイ26での測定画像の出力では映像化範囲R2で画像表示を行うようにした点に特徴がある。図8において、実線の円31は超音波ビームの入射スポットであり、超音波ビームを照射して測定を行う箇所を示す。破線の円32は補間処理でデータを取得する箇所を示している。
【0048】
第3実施形態に係る映像作成方法における上記の走査移動を、図4のフローチャートで見てみる。ステップS11〜S24は第1実施形態における対応するステップと全く同じである。これらのステップの説明は第1実施形態での説明を援用することとする。第3実施形態では、最後にステップS41が追加されている。このステップ41は測定データを用いて補間演算を行い、これによって得たデータと本来の測定データを用いて表示処理を行うステップである。この補間演算は、前述した補間処理プログラム24によって実行される。
【0049】
上記のごとく新たなステップS41を追加することにより、図8に示すごとき映像化範囲R2で画像を作成・表示することができる。この場合にも、走査範囲R1での走査動作では、第1実施形態の場合と同様に、走査ライン番号1〜5では各走査開始位置が順次に左側から右側へずらし量Sごとずらされ、走査ライン番号5〜9では各走査開始位置が順次に右側から左側にずらし量Sごとずらされる。
【0050】
上記の第3実施形態に係る映像作成方法によっても、主走査方向におけるサンプリングピッチSpを一定に保持したまま走査開始位置をずらし量Sだけ順次にずらしていくため、被検体13の表面上で副走査方向に平行な方向にて線状の欠陥が生じていたとしても、当該欠陥を少なくとも4本の主走査方向のうちのいずれかの走査で検出することができ、これにより従来では隠れていて検出できなかった欠陥を確実に検出することができる。さらに補間処理演算を組みわせることにより、さらに精度の高い測定画像を表示することができる。
【0051】
次に、図5と図9を参照して本発明に係る映像作成方法の第4の実施形態を説明する。図5は前述の図2と同様な図であり、図9は前述の図6と同様な図である。図5と図9において、第1実施形態の図2と図6で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0052】
第4実施形態による映像作成方法では、第1実施形態の場合と同様に、データ取得のための測定時のプローブの主走査方向における走査開始位置の設定の仕方に特徴がある。さらに第4実施形態では、走査範囲R1で走査開始位置側の領域を拡大し非測定箇所での補間処理を行いかつ画像範囲の切り出しを行って映像化範囲を拡大するという特徴を有している。
【0053】
図9に示されるごとく、指定された走査範囲R1に関して、主走査ライン番号1〜5については、主走査方向における走査での走査開始位置が、左側から右側へ走査開始位置ずらし量Sだけ順次にずらされる。また次の主走査ライン番号5〜9については、主走査方向における走査での走査開始位置が、右側から左側へ走査開始位置ずらし量Sだけ順次にずらされる。これを繰り返して走査範囲R1について走査・測定を行う。
【0054】
さらに第4実施形態による映像作成方法では、走査開始位置の領域側を拡大し走査・測定で得られた測定データに基づいて補間処理を行い、ディスプレイ26での測定画像の出力では拡大した走査範囲Saで画像表示を行うようにした点に特徴がある。図9において、実線の円31は超音波ビームの入射スポットであり、超音波ビームを照射して測定を行う箇所を示す。破線の円32は補間処理でデータを取得する箇所を示している。
【0055】
第4実施形態に係る映像作成方法における上記の走査移動を、図5のフローチャートで見てみる。ステップS11〜S24は第1実施形態における対応するステップと全く同じである。これらのステップの説明は第1実施形態での説明を援用することとする。第4実施形態では、ステップS16とステップS17の間にステップS51が設けられ、さらに最後にステップS52が追加されている。ステップS51は、主走査方向に関して新しい走査範囲Saを設定する。当該走査範囲Saは、Sa=走査範囲(R1)+サンプリングピッチで設定される。またステップ52は測定データを用いて補間演算を行い、これによって得たデータと本来の測定データを用いて走査範囲の切り出しを行い表示処理を行うステップである。この補間演算は前述した補間処理プログラム24によって実行される。
【0056】
上記のごとく新たなステップS51,S52を追加することにより、図9に示すごとき拡大した走査範囲Saに含まれる測定データ等で画像を作成・表示することができる。この場合にも、走査範囲Saでの走査動作では、第1実施形態の場合と同様に、走査ライン番号1〜5では各走査開始位置が順次に左側から右側へずらし量Sごとずらされ、走査ライン番号5〜9では各走査開始位置が順次に右側から左側にずらし量Sごとずらされる。
【0057】
上記の第4実施形態に係る映像作成方法によっても、主走査方向におけるサンプリングピッチSpを一定に保持したまま走査開始位置をずらし量Sだけ順次にずらしていくため、被検体13の表面上で副走査方向に平行な方向にて線状の欠陥が生じていたとしても、当該欠陥を少なくとも4本の主走査方向のうちのいずれかの走査で検出することができ、これにより従来では隠れていて検出できなかった欠陥を確実に検出することができる。さらに補間処理演算を組みわせることにより、さらに精度の高い測定画像を表示することができる。加えて、走査開始位置の領域側の測定を精密に行うことにより、より精度の高い画像を得ることができる。
【0058】
前述の各実施形態における走査・測定では、超音波ビームに関してその中心部と周縁部では、検出信号のレベルが異なる。従って、入射スポット31の間における検出できない欠陥等の検出では、通常、超音波ビームの入射スポットの大きさを考慮してサンプリングピッチやずらし量が決定される。また前述の各実施形態における走査・測定は、通常、粗い検査に利用され、このため、欠陥等の有り・無しの判断に使用できる程度でよい。
【0059】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ、材質、および配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、超音波映像装置による被検体の測定およびその映像作成で、従来の走査範囲の設定では隠れて検出できなかった欠陥等を同じサンプリングピッチや走査範囲で検出可能にすることに利用される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の映像作成方法が実施される超音波映像装置のシステム構成を示す構成図である。
【図2】本発明に係る映像作成方法の第1実施形態のプローブ走査の移動工程を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る映像作成方法の第2実施形態のプローブ走査の移動工程を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る映像作成方法の第3実施形態のプローブ走査の移動工程を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る映像作成方法の第4実施形態のプローブ走査の移動工程を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態による映像作成方法のプローブ走査に基づくプローブ測定点の移動軌跡を示す平面図である。
【図7】第2実施形態による映像作成方法のプローブ走査に基づくプローブ測定点の移動軌跡を示す平面図である。
【図8】第3実施形態による映像作成方法のプローブ走査に基づくプローブ測定点の移動軌跡を示す平面図である。
【図9】第4実施形態による映像作成方法のプローブ走査に基づくプローブ測定点の移動軌跡を示す平面図である。
【図10】従来の超音波映像装置で実施される試料表面での平面走査の状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
11 プローブ
12 走査機構
13 被検体
15 画像処理装置
16 超音波探傷器
18 マイクロプロセッサ(MPU)
20 メモリ
23 平面走査プログラム
24 補間処理プログラム
25 パラメータ記憶領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波を発射し前記被検体からのエコーを入射するプローブを主走査方向と副走査方向に交互に送って走査動作させ、前記主走査方向におけるサンプリング動作で得られた前記エコーに係る信号に基づいて前記主走査方向での測定データを取得して映像を作成する超音波映像装置の映像作成方法であり、
測定すべき走査範囲とサンプリングピッチを指定する第1段階と、
前記主走査方向の走査開始位置を、前記副走査方向の送り移動時に前記主走査方向の前記サンプリングピッチの+1/nの間隔でずらしながら走査を行う第2段階と、
前記副走査方向の送り移動回数がn回になったところで、前記主走査方向の走査開始位置を、前記副走査方向の送り移動時に前記主走査方向の前記サンプリングピッチの−1/nの間隔でずらしながら走査を行う第3段階と、
指定された前記走査範囲の測定で前記第2段階と前記第3段階を繰り返す第4段階と、
を備えることを特徴とする超音波映像装置の映像作成方法。
【請求項2】
指定された前記走査範囲で生じた測定データ欠損部の測定データを補間演算処理で生成することを特徴とする請求項1記載の超音波映像装置の映像作成方法。
【請求項3】
指定された前記走査範囲を基準にして、前記主走査方向の測定範囲を、走査開始位置側または走査終了位置側で前記サンプリングピッチの2倍の距離だけ拡張し、測定データ欠損部を生じさせないことを特徴とする請求項1記載の超音波映像装置の映像作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−101440(P2007−101440A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293621(P2005−293621)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(300007280)日立建機ファインテック株式会社 (52)
【Fターム(参考)】