超音波治療装置
【課題】標的に応じた周波数の超音波を、減衰の周波数依存性を考慮して照射する。
【解決手段】入力部250から入力された操作者が指示する目標位置及び目標物に応じて、出力情報記憶部215に記憶してある周波数情報を用いて、搬送波及び変調波の周波数を決定し、それに関連する周波数f1及びf2を決定し、駆動指示部220に出力する。駆動指示部220は、第1の信号発生部232に周波数f1の、第2の信号発生部234に周波数f2の信号を出力するように指示する。第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234は、入力に基づいて信号を生成し、それを加算部236に出力する。加算部236は、入力された信号を加算し、超音波射出部110に出力する。超音波射出部110は、入力信号に基づき超音波を射出する。その結果、目標位置において周波数Δf=|f1−f2|の音波が自己復調される超音波が被験体内を伝播する。
【解決手段】入力部250から入力された操作者が指示する目標位置及び目標物に応じて、出力情報記憶部215に記憶してある周波数情報を用いて、搬送波及び変調波の周波数を決定し、それに関連する周波数f1及びf2を決定し、駆動指示部220に出力する。駆動指示部220は、第1の信号発生部232に周波数f1の、第2の信号発生部234に周波数f2の信号を出力するように指示する。第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234は、入力に基づいて信号を生成し、それを加算部236に出力する。加算部236は、入力された信号を加算し、超音波射出部110に出力する。超音波射出部110は、入力信号に基づき超音波を射出する。その結果、目標位置において周波数Δf=|f1−f2|の音波が自己復調される超音波が被験体内を伝播する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、治療手技の一つとして、超音波照射装置による目標組織への超音波照射によって、当該組織を構成する細胞を破壊したり、当該組織を発熱させて当該組織を凝固させたりする処置がある。この様な処置に用いられる超音波治療装置が、例えば特許文献1に開示されている。また、超音波の伝搬距離は、超音波の周波数に依存して異なることが知られている。例えば前記特許文献1にも、超音波を照射したい位置によって、超音波発生素子を交換し、照射する超音波の周波数を異ならせることが開示されている。
また、前記の様な超音波照射による処置において、超音波造影剤として用いられる様なマイクロバブルを超音波照射部に投与し、超音波照射によって当該マイクロバブルを振動または破裂させると、そのキャビテーションの効果により、当該処置の効率が上昇することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−113254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の様な超音波照射装置を、例えば内視鏡システムに組み込む等、小型化する必要がある場合、超音波の発生源を小型化せざるを得ない。しかし、超音波の発生源を小型化すると、それに伴い発生する超音波の周波数が高くなる。その結果、例えば前記マイクロバブルを破裂させる為にはマイクロバブルの共振周波数を照射するのが良いという様に、標的に応じて照射したい適切な超音波の周波数と、超音波素子の出力周波数が不一致になるという課題がある。また、標的に応じて超音波の周波数を設定することを優先させると、超音波の減衰の周波数依存性を考慮することができなくなるという課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、標的に応じた適切な周波数の超音波を標的に照射でき、且つ超音波の減衰の周波数依存性を考慮することができる超音波治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を果たすため、本発明の超音波治療装置の一態様は、超音波を放射する音源と、前記音源を駆動するための駆動信号を発生する駆動信号発生部と、前記音源に対する治療対象部の目標位置に応じて第1の信号周波数及び第2の信号周波数を設定する周波数設定部と、を具備し、前記駆動信号発生部は、前記音源に前記超音波として前記周波数設定部が設定した前記第1の信号周波数と第2の信号周波数とを含む有限振幅音波を放射させる駆動信号を発生することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に依れば、第1の信号周波数と第2の信号周波数とを含む有限振幅音波を放射することによって、標的に応じた適切な周波数の超音波を標的に照射でき、且つ超音波の減衰の周波数依存性を考慮することができる超音波治療装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る超音波治療装置の構成例を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る超音波射出部を構成するcMUTアレイの一例を示す平面図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る超音波射出部を構成するcMUTの一例を示す(a)断面図と(b)平面図。
【図4】本発明の第1の実施形態に超音波治療装置の出力の周波数特性を説明する為の図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る超音波射出部を構成するcMUTの一例を示す断面図。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る超音波射出部を構成するcMUTの一例を示す断面図。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る超音波射出部を構成するcMUTアレイの一例を示す平面図。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る出力情報記憶部が記憶する、目標位置の深さと出力周波数関係を表すテーブルの一例を示す図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置の構成例を示す図。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置の超音波制御ユニット及びその関連部の一実施形態の構成例を示すブロック図。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る超音波装置によって取得される画像を説明する為の図。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る超音波射出部を構成するcMUTアレイの一例を示す(a)平面図及び(b)断面図。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る超音波装置によって取得される画像を説明する為の図。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る超音波射出部によって出力する超音波の位相と焦点位置の関係を説明する為の図。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る先端部の構成の一例を示す図。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る超音波治療装置の構成例を示すブロック図。
【図17】本発明の第4の実施形態に係る超音波治療装置が発生する超音波の照射範囲と、それらが重畳された領域で発生する差音を説明するための図。
【図18】本発明の第4の実施形態に係る超音波治療装置の構成例を示すブロック図。
【図19】本発明の第4の実施形態に係る超音波治療装置が発生する超音波の照射範囲と、それらが重畳されて差音が発生する領域を説明する為の図。
【図20】本発明の第2の実施形態に係る超音波射出部を構成するcMUTアレイの一例を示す(a)平面図及び(b)断面図。
【図21】本発明の第4の実施形態に係る超音波治療装置が発生する超音波の照射範囲と、それらが重畳されて差音が発生する領域を説明するための図。
【図22】本発明の第4の実施形態に係る超音波治療装置が発生する超音波の照射範囲と、それらが重畳されて差音が発生する領域を説明するための図。
【図23】本発明の第5の実施形態に係る超音波射出部を構成する円弧形すだれ状電極トランスデューサの一例を示す(a)平面図と(b)断面図。
【図24】本発明の第5の実施形態に係る超音波治療装置が発生する超音波の焦点の位置を説明するための図。
【図25】本発明の第5の実施形態に係る超音波治療装置が発生するSAWの焦点の位置とBAWの焦点の位置を説明するための図。
【図26】本発明の第5の実施形態に係る超音波射出部を構成するすだれ状電極トランスデューサの一例を示す平面図。
【図27】本発明の第7の実施形態に係る超音波射出部を構成する円弧形すだれ状電極トランスデューサの一例を示す平面図。
【図28】本発明の第7の実施形態に係る超音波治療装置が発生する超音波の焦点の位置を説明するための図。
【図29】本発明の第7の実施形態に係る超音波射出部を構成する円弧形すだれ状電極トランスデューサの一例を示す平面図。
【図30】本発明の第8の実施形態に係る超音波射出部を構成する超音波素子の一例を示す断面図。
【図31】本発明の第8の実施形態に係る超音波射出部を構成する超音波素子の一例を示す断面図。
【図32】本発明の第10の実施形態に係る超音波射出部を構成する超音波素子の一例を示す(a)断面図と(b)平面図。
【図33】本発明の第10の実施形態に係る超音波射出部を構成する超音波素子の一例を示す(a)断面図と(b)平面図。
【図34】本発明の第10の実施形態に係る超音波射出部を構成する超音波素子の一例を示す(a)断面図と(b)平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る超音波治療装置は、例えば細胞を破壊すること、或いは組織を発熱させて当該組織を凝固させたりすることで治療を行う処置に用いるため、所望の周波数の超音波を、目的位置に照射する装置である。例えば、細胞を破壊するためには、細胞に直接超音波を照射してそのエネルギーにより細胞を破壊する等しても良いし、超音波造影剤等として用いられるマイクロバブルを超音波照射の対象部に投与し、当該マイクロバブルを超音波照射により破裂させ、その破裂の際に発生するキャビテーションのエネルギーにより細胞を破壊等しても良い。
【0010】
本実施形態に係る超音波治療装置の構成の概要を図1に示す。本超音波治療装置は、先端部100と、超音波治療装置制御部200と、入力部250とを有する。先端部100は、例えば円筒形状をしており、その円周面の一部には、当該超音波照射装置が射出する超音波の音源となる超音波射出部110が設置されている。超音波治療装置制御部200は、駆動変数設定部210と、出力情報記憶部215と、駆動指示部220と、第1の信号発生部232と、第2の信号発生部234と、加算部236とを有する。
【0011】
入力部250は、超音波を照射する目標位置や照射する超音波の強度等に関する操作者の指示を入力する。入力部250は、入力した操作者の指示を駆動変数設定部210に出力する。駆動変数設定部210は、入力部250から入力された情報に基づいて、出力情報記憶部215から周波数情報を読み出し、それに基づき第1の信号発生部232と、第2の信号発生部234によって発生され超音波射出部110から射出される超音波の周波数、振幅、及び初期位相を算出し決定する。駆動変数設定部210は、決定した超音波の周波数、振幅、及び初期位相を、駆動指示部220に出力する。
【0012】
出力情報記憶部215は、後述の周波数情報等を記憶しており、駆動変数設定部210の要求に応じて記憶している周波数情報を、駆動変数設定部210に出力する。駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力された超音波の周波数、振幅、及び初期位相に基づいて、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234に、超音波の周波数、振幅、及び初期位相に応じた信号の発生の指示を出力する。
【0013】
第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234はそれぞれ、駆動指示部220から入力された超音波発生の指示に基づいて、信号を生成し、それを加算部236に出力する。加算部236は、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234からの入力を加算し、その結果生成される加算信号である駆動信号を、超音波射出部110に出力する。加算部236としては、例えばOPアンプを用いた一般的な加算回路が挙げられる。これにより、異なる周波数の駆動信号を重畳することができ、その駆動信号により音源を駆動することができるようになる。
この様に、例えば超音波射出部110は、周波数設定部が設定した第1の信号周波数と第2の信号周波数とを含む有限振幅音波を放射する音源として機能し、例えば駆動変数設定部210は、音源に対する治療対象部の目標位置に応じて第1の信号周波数及び第2の信号周波数を設定する周波数設定部として機能し、例えば第1の信号発生部232、第2の信号発生部234及び加算部236は、音源を駆動するための駆動信号を発生する駆動信号発生部として機能し、例えば出力情報記憶部215は、目標位置と第1の信号周波数及び第2の信号周波数とを対応付けて記憶する周波数情報記憶部として機能し、例えば入力部250は、目標位置を入力する位置情報入力部として機能し、例えば第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234は、前記周波数設定部が設定した第1の信号周波数を含む第1の駆動信号と前記周波数設定部が設定した第2の信号周波数を含む第2の駆動信号とを発生する信号発生部として機能し、例えば加算部236は、第1の駆動信号と第2の駆動信号とを加算して加算駆動信号を作成する加算部として機能する。
【0014】
次に、本実施形態に係る超音波射出部110について説明する。本実施形態に係る超音波射出部110は、図2にその平面図を示す通り、複数の静電容量型振動子(capasitive Micromachined Ultrasonic Transducer;cMUT)310を並べたcMUTアレイ320である。
【0015】
一つのcMUT310は、例えば図3(a)に断面図、図3(b)に平面図を示す様な構造を有する。即ち、cMUT310は、例えばシリコンから成る下部基板311の上に形成されている。下部基板311の上には、例えばPt/Tiから成る下部電極312が形成されている。下部電極312の材質は、Pt/Tiに限定されず、Au/Cr、Mo、W、リン青銅、Al等でも良い。下部電極312の上には、例えばSrTiO3から成る誘電体膜313が形成されている。誘電体膜313は、SrTiO3に限定されずBaTiO3、チタン酸バリウム・ストロンチウム、五酸化タンタル、酸化ニオブ安定化五酸化タンタル、酸化アルミニウム、TiO2等の高誘電率を有する材料を用いても良い。この誘電体膜313は、後述する空隙314を挟んで、上部電極317と下部電極312の間の静電容量を増加させる働きをする。
【0016】
誘電体膜313の上には、円筒形の空隙314を有する様に、例えばSiNから成るメンブレン支持部315が存在する。そして、空隙314及びメンブレン支持部315を覆う様に、例えばSiNから成るメンブレン316が形成されている。メンブレン316の上には、下部電極312と同様に例えばPt/Tiから成る、上部電極317が形成されている。
【0017】
上部電極317の上には、空隙314よりも小さい径の凸型のヘッド部318が設けられている。ヘッド部318は、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)から構成されており、半導体プロセスによりメンブレン316と比較して厚膜となっている。ヘッド部318は、TEOSに限らず、SiN、SiO2、ポリイミド等、半導体プロセスによく用いられる他の材料でも良い。また、複数の材料で多層膜となっていてもよい。
【0018】
この様な構成を有するcMUT310は、上部電極317及び下部電極312に電圧を印加することで電極間に引力が働き、電圧の印加を停止すると元に戻る。周期的な電圧印加動作によってメンブレン316及びその上に形成されたヘッド部318が振動する。その結果、有限振幅の超音波が照射される。従って、上部電極317及び下部電極312に印加する電圧の周波数を様々に変えることで、様々な周波数の超音波を出力することができる。
【0019】
cMUT310は、空隙314を覆うように存するメンブレン316部分が軟らかく、上部電極317及びヘッド部318は比較的高い剛性を有している。従って、ヘッド部318は比較的硬く、その周囲は比較的軟らかい構造となっている。このため、下部電極312と上部電極317に電圧を印加した際のメンブレン316の振動変位の方向は、ヘッド部318の凸部の上部面の法線方向に統一される。即ち、ヘッド部318を有さないcMUTのメンブレンが屈曲振動を行うのに対して、ヘッド部318を有するcMUT310のメンブレン316は、擬似的に厚み縦振動のような一方向への振動となり、上部電極317部分及びその上のヘッド部318が、ピストン振動様に振動することが可能である。このため、射出される超音波の指向性が上昇し、目標位置で高い音圧効果が得られる。更に、この様な構成により、メンブレン316が屈曲しながら振動することで生じる高調波振動等、不要な振動を低減させることができる。
【0020】
前記の様な構成を有するcMUT310は、図4にその周波数特性を示す通り、一点鎖線で表した中心周波数を中心に、広い周波数範囲で安定した出力を有している。前記中心周波数は、例えば十数MHz〜数十MHzであり、その帯域は、例えば50〜100%である様に設計されている。また、cMUT310はその製造工程の安定性からデバイス間のばらつきが小さいという特徴も有する。
【0021】
尚、ヘッド部318の形状は、図5に示す通り、傾斜を設けた形状でも良い。この様に傾斜が存する場合、超音波の射出方向は、傾斜面の法線方向、つまり、下部基板311に対して斜め方向となる。
また、cMUT310は、図6に示す様に、空隙314の形状を変更しても良い。即ち、下部基板311の面と平行な面における断面積が、下部電極312側と上部電極317側とで異なる様にしても良い。この様な形状にすることによって、図3に示すcMUTの様に空隙314が円筒形状をしている場合に比べて、出力超音波の更なる広帯域化を実現できる。
【0022】
また、cMUT310の平面形状は、前記の様に四角形でなく、図7に示す様に例えば六角形等、その他多角形の形状でも良く、それを並べてcMUTアレイ320を形成しても良い。ヘッド部318の平面形状も円形に限らない。
cMUTアレイ320は、前記cMUT310を多数並べたものであり、各cMUT310の下部電極312は、互いに接続されている。同様に、上部電極317は、互いに接続されている。従って、全cMUT310は一斉に振動する。この様なcMUT310によって構成されるcMUTアレイ320を有する超音波射出部110は、加算部236から入力された加算信号によって超音波を出力する。
【0023】
ここで、本実施形態に係る超音波治療装置による目的部位への超音波照射について説明する。当該超音波治療装置の1つの使用用途は、例えば超音波照射によって細胞を破壊することである。例えば、細胞を破壊したい部分にマイクロバブルを投与し、超音波照射によってマイクロバブルを破裂させると、マイクロバブルの破裂により発生するキャビテーションのエネルギーで、効率良く周囲の細胞を破壊できることが知られている。この様にマイクロバブルを破裂させる場合には、照射する超音波の周波数は、マイクロバブルの共振周波数に近い値に設定すると効率的であり、市販の超音波造影剤などをマイクロバブルとして用いる場合には、1〜2MHz程度が適当である。
【0024】
また、一般に、物質内を伝播する超音波は、その周波数が高いほど減衰が大きい。前記の通りcMUT310を用いると、射出する超音波の周波数を変化させることができる。従って、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、最適な周波数を選択すれば、目標位置まで超音波を伝播させることができる。
【0025】
前記事実を鑑みて、本実施形態に係る超音波治療装置では、射出する超音波の周波数を以下の様に考える。例えば、第1の信号発生部232が発生する信号の周波数をf1、角周波数をω1、振幅をAとする。また、第2の信号発生部234が発生する信号の周波数をf2、角周波数をω2、振幅をAとする。ここで、f1とω1及びf2とω2には以下の関係がある。
ω1=2πf1
ω2=2πf2
加算部236は、第1の信号発生部232が発生する信号と第2の信号発生部234が発生する信号を入力し、それらを加算する。この例では、第1の信号発生部232が発生する信号と第2の信号発生部234が発生する信号の初期位相が一致していれば、加算部236で生成される加算信号x(t)は下記式(1)で表される。
【0026】
【数1】
ここで、x(t)=2Acos(((ω1+ω2)/2)t)を搬送波、x(t)=cos(((ω1−ω2)/2)t)を変調波と呼ぶ。式(1)で表される加算信号x(t)により超音波射出部110が発生する超音波を被験体に照射すると、搬送波の周波数の超音波によって変調波の周波数の超音波が伝搬されることになる。従って、前記の通り、マイクロバブルを破裂させるため1〜2MHzの超音波を目標位置に照射したい場合には、変調波の周波数Δf=|f1−f2|=(|ω1−ω2|)/2πが1〜2MHzとなる様に、f1及びf2を決定すれば良い。
【0027】
また、前記の通り、物質内を伝播する超音波は周波数が高いほど減衰が大きいので、目標位置が超音波の発生源である超音波射出部110から遠い(深い)場合には、搬送波の周波数(f1+f2)=(ω1+ω2)/2πが低くなる様に、一方、目標位置が超音波射出部110から近い(浅い)場合には、搬送波の周波数(f1+f2)=(ω1+ω2)/2πが高くなる様にf1及びf2を決定すれば良い。この決定の際、超音波射出部110から目標位置までの距離とその間に存在する物質の超音波吸収係数等に基づいて搬送波の周波数を決定することが望ましい。
【0028】
この様に、例えば式(1)で表される加算信号x(t)により超音波射出部110が発生する超音波を照射すると、音波を伝える媒質の非線形性のため、目標位置において、周波数Δf=|f1−f2|の変調波が発生するのと同等な効果が得られる。この様な効果を自己復調効果という。この自己復調効果が本実施形態において重要な点である。即ち、前記の変調波の周波数と搬送波の周波数を同時に満足するf1及びf2を決定することで、当該超音波治療装置は、目標位置の深さの違いに関わらず、目標周波数の超音波を目標位置に照射することができる。尚、本実施形態においてf1及びf2の値の決定は、駆動変数設定部210が行う。
【0029】
前記説明で用いた式(1)は一例であり、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234から出力される信号を用いることで、搬送波と変調波の積となる加算信号を生成するものであれば良い。そのため、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234が発生する信号の振幅は、それぞれA1及びA2であり、これらは異なっていても良い。また、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234が発生する信号の初期位相に差があっても良い。
【0030】
次に、本実施形態に係る超音波治療装置の動作を説明する。本超音波治療装置の使用に際しては、先端部100の超音波射出部110を、超音波を照射する対象である被験体(音響伝搬媒質)に、音響インピーダンスを整合するための音響整合層を挟んで或いは直接に接触させる。音響整合層は、例えば脱気水を入れた水袋や、超音波診断装置又は超音波治療装置で一般に用いられる樹脂やゼリー状の物質から成る音響整合材等である。
【0031】
そして、超音波射出部110を被験体に当てた状態で、入力部250から入力された操作者の指示に基づいて超音波を発生させる。入力部250によって、操作者は超音波を照射する目標位置を指定することができる。このとき、超音波治療装置制御部200の駆動変数設定部210は、入力部250から入力された操作者が指示する目標位置及び目標物に応じて、前記の通り、搬送波及び変調波の周波数を決定し、それを実現する第1の信号発生部232が発生する信号の周波数f1、振幅A1、及び初期位相θ1、並びに、第2の信号発生部234が発生する信号の周波数f2、振幅A2、及び初期位相θ2を決定する。この際、駆動変数設定部210は、出力情報記憶部215に記憶してある周波数情報を用いる。
【0032】
出力情報記憶部215は、例えば図8に模式的に示す様な、Δf=|f1−f2|毎に用意された目標位置の深さXに応じたf1及びf2の組み合わせの情報を含むテーブルを記憶している。駆動変数設定部210は、目標位置及び目標物に応じて、出力情報記憶部215から必要なテーブルを読み出し、それに基づいてf1及びf2の組み合わせを決定する。図8に示したテーブルは勿論一例であり、目標位置の深さXに応じたf1及びf2の組み合わせを表すテーブルならばどのようなものでも良い。また、X、f1、及びf2の関係の一部又は全部を関数で表すようにし、その関数に基づいて駆動変数設定部210が算出するように構成しても良い。
この様に出力情報記憶部215が目標位置の深さXに応じたf1及びf2の組み合わせを予め記憶しておくことによって、駆動変数設定部210は、速やかに目標位置及び目標物に応じてf1及びf2の組み合わせを決定することができる。
【0033】
また、出力情報記憶部215は、使用状況に応じた第1の信号発生部232が発生する超音波の振幅A1や初期位相θ1及び第2の信号発生部234が発生する超音波の振幅A2や初期位相θ2に関するテーブルも記憶しておく。
駆動変数設定部210は、決定したf1、f2、A1、A2、θ1、及びθ2を駆動指示部220に出力する。駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力された値に基づいて、第1の信号発生部232に周波数f1、振幅A1及び初期位相θ1の信号を出力するように、また、第2の信号発生部234に周波数f2、振幅A2及び初期位相θ2の信号を出力するように、それぞれ信号の発生を指示する。
【0034】
第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234はそれぞれ、駆動指示部220から入力された超音波発生の指示に基づいて信号を生成し、生成した信号を加算部236に出力する。加算部236は、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234からの入力を加算し、例えば式(1)で表される加算信号である駆動信号を、超音波射出部110に出力する。
【0035】
超音波射出部110のcMUTアレイ320を構成する各cMUT310は、加算部236から入力された駆動信号により、ヘッド部318を振動させて超音波を射出する。その結果、被験体内を、前記の通り目標位置において周波数Δf=|f1−f2|の超音波が自己復調されることになる超音波が伝播する。
【0036】
本実施形態に係る超音波治療装置に依れば、cMUTの特性と素子の小型化のため、出力する超音波の周波数が、例えば中心周波数は十数MHz〜数十MHzという様に、高周波数とならざるを得ない超音波射出部110を用いても、例えばマイクロバブルの共振周波数である1〜2MHz等の超音波を照射することができる。この様に、超音波射出部110の構成に関わらず、対象物に応じた周波数の超音波を照射することができる。また、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することにより、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。更に、高周波数の超音波を用いて伝播することで、ビームパターンが鋭くなるというメリットもある。
【0037】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。ここで本実施形態の説明では、前記第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。本実施形態は、第1の実施形態に係る超音波治療装置を有する内視鏡型超音波治療診断装置である。
【0038】
本実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置400は、図9に示す通り、第1の実施形態に係る超音波治療装置の先端部100を備えた細管状の超音波プローブ420を体腔内に挿入し、先端部100に設置された、図9には図示しない超音波射出部110から超音波を射出して、体腔内における所望の生体組織の超音波診断及び超音波治療を行うものである。超音波射出部110は、第1の実施形態で説明した通り、目標位置に超音波を照射し、そのエネルギーで当該目標位置の細胞を破壊する治療処置を行う機能を有する。それと共に、この治療処置動作の前後及び治療処置最中において、治療対象である目標位置近傍の生体組識の超音波診断を行う機能を備えている。
【0039】
即ち、本実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置400は、図9に示す様に超音波装置410と内視鏡装置460等によって主に構成されている。超音波装置410は、図9には図示しない超音波射出部110を先端部100に内蔵した細長形状のプローブ挿入管422を備えた超音波プローブ420を有する。
【0040】
超音波プローブ420は、プローブ接続ユニット430を介して、超音波制御ユニット440と接続している。超音波プローブ420とプローブ接続ユニット430の接続は、超音波プローブ420の基端部に設けられる接続部424とプローブ接続ユニット430の連結部432とで着脱自在に行われる。また、プローブ接続ユニット430と超音波制御ユニット440の接続は、プローブ接続ユニット430のコネクタ434によって行われる。超音波制御ユニット440は、第1の実施形態における超音波治療装置制御部200を含む、超音波プローブ420の制御を行う部分である。
【0041】
また、超音波装置410は、超音波制御ユニット440により取得・生成される映像信号を入力し、超音波断層画像を表示する超音波画像表示装置450を有する。また、超音波装置410は、操作者の入力を受け付ける入力部455を有する。
一方、前記内視鏡装置460は、撮像装置を内蔵した電子内視鏡470と、この電子内視鏡470に照明光束を供給する光源装置492と、電子内視鏡470の図示しない撮像素子を駆動させたり、当該撮像素子から伝送される電気信号を受信して各種の信号処理を行い、内視鏡観察画像を表示するための映像信号を生成したりするビデオプロセッサ494と、このビデオプロセッサ494により生成され出力される映像信号を受けて内視鏡観察画像を表示する内視鏡画像表示装置496とを有する。
【0042】
電子内視鏡470は、体腔内に挿入される細長形状の挿入部472と、この挿入部472の基端側に配置される操作部474と、この操作部474の側部から延出するユニバーサルコード477とによって主に構成されている。
前記ユニバーサルコード477の先端部には光源装置492に接続される内視鏡コネクタ478が設けられている。この内視鏡コネクタ478の側部には電気コネクタ479が設けられている。この電気コネクタ479にはビデオプロセッサ494から延出される映像ケーブル495が接続されている。
【0043】
挿入部472は、先端側に湾曲部480が設けられており、この湾曲部480のさらに先端側に硬質部482が設けられている。この硬質部482の先端面483には直視による内視鏡観察を行うための照明光窓484と観察窓485と鉗子出口486等が設けられている。
【0044】
前記操作部474には、前記挿入部472の湾曲部480を湾曲制御するアングルノブ475や、前記内視鏡画像表示装置496の表示画面上に表示させる表示画像を切り換えたりフリーズ操作やレリーズ操作等の各種の操作指示を行ったりする複数の操作スイッチ476や、体腔内に導入される処置具等の導入口であり前記鉗子出口486に連通する処置具挿入口481等が設けられている。
【0045】
次に、超音波制御ユニット440について説明する。本実施形態に係る超音波装置410は、内視鏡装置460と組み合わされることで、体腔内で、第1の実施形態で説明した通り、目標位置に超音波を照射する処置に用いることができる。また、超音波射出部110のcMUTアレイ320を用いて、超音波の射出と受信を行うことで、超音波画像診断装置としての機能も実現することができる。
【0046】
当該超音波装置410を制御する超音波制御ユニット440は、図10に示す通り、第1の実施形態で説明した超音波治療装置制御部200を有する。また、超音波制御ユニット440は、超音波制御ユニット440の全体を制御する超音波装置制御部441と、目標位置取得部442と、回転制御部443と、画像取得用信号制御部445と、受信部446と、画像取得部447とを有する。
【0047】
超音波装置410が、体腔内の様々な方向の画像取得及び超音波照射を行うために、先端部100は図示しない回転駆動部によって回転することができる。この回転のため、目標位置取得部442は、超音波装置制御部441から超音波を照射する方向を取得し、回転制御部443に出力する。回転制御部443は、目標位置取得部442から入力された超音波の照射方向に応じて、前記図示しない回転駆動部の動作を制御する。また、目標位置取得部442は、超音波治療のための超音波照射の目標位置を超音波装置制御部441から取得し、それを駆動変数設定部210に出力する。駆動変数設定部210は、目標位置取得部442から入力された目標位置に基づいて、第1の実施形態で説明した通り、照射する超音波の周波数を決定する。
【0048】
超音波画像診断は、一般に知られている方法で行う。このため、画像取得用信号制御部445は、画像診断に適切な超音波パルスの各種パラメータを決定し制御する。画像取得用信号制御部445は、決定した値を駆動指示部220に出力する。駆動指示部220は、純音の超音波を用いる場合には、第1の信号発生部232のみを用いる様に、第1の実施形態の場合と同様に信号発生の指示を出力する。
【0049】
超音波画像診断においては、超音波射出部110の各cMUT310が受信素子として働く。このcMUT310が受けた信号を受信部446が信号として取得する。受信部446は、取得した信号を画像取得部447に出力する。画像取得部447は、受信部446から入力された信号に基づいて、一般に知られている方法で超音波画像を構築する。画像取得部447は、構築した画像を、超音波装置制御部441に出力する。
【0050】
超音波装置制御部441は各種演算を行い、各部を制御する。また、入力部455からの入力を受け取る。また、画像取得部447から入力された超音波画像を超音波画像表示装置450に出力する。
この様に、例えば画像取得用信号制御部445は、画像取得用射出超音波信号を設定する画像取得信号設定部として機能する。
【0051】
次に、本実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置400の動作を説明する。内視鏡装置460は、一般に知られている内視鏡装置であり、本発明とは直接関係しないので、その説明は省略する。操作者は処置において挿入部472を被験者の体腔に挿入し、その先端を、診断及び治療を行いたい被験体の位置に到達させる。尚、処置に際しては、マイクロバブルを投与しておく。
【0052】
プローブ挿入管422は、内視鏡装置460の処置具挿入口481から挿入され、挿入部472内を通り、先端部100が鉗子出口486から延出する。診断及び治療を行いたい位置において、超音波装置制御部441は、超音波画像診断を行うために各部を指令する。
【0053】
即ち、超音波装置制御部441は、目標位置取得部442に画像取得を行いたい角度を出力する。目標位置取得部442は、超音波装置制御部441から入力された画像取得を行いたい角度を、回転制御部443に出力する。回転制御部443は、目標位置取得部442から入力された値に基づいて、図示しない回転駆動部を制御する。例えば、先端部100の全円周の画像の取得が求められている場合、回転制御部443は、画像取得に必要な時間を考慮して、例えば一定速度で連続的に先端部100を回転させるように回転駆動部を制御する。また、例えば先端部100の全円周ではなく、ある円周角度内の画像の取得が求められている場合は、回転制御部443は、先端部100を回転方向に繰り返し往復させても良い。
【0054】
前記の通り、先端部100を回転させながら、超音波装置410は、超音波画像を取得する。即ち、超音波装置制御部441の指令に基づいて、画像取得用信号制御部445は、超音波画像取得用の超音波出力を制御する。例えば、出力する超音波は、周波数が5〜20MHz程度であり、パルス幅が数μ秒程度の高周波パルス波等とする。これらの情報を画像取得用信号制御部445は、駆動指示部220に出力する。
【0055】
超音波画像取得時には、発生する超音波は純音であるので、信号発生には第1の信号発生部232のみを用いる。即ち、駆動指示部220は、画像取得用信号制御部445から入力された値に基づいて、第1の信号発生部232に、信号を発生させる様に指示を出力する。第1の信号発生部232は、駆動指示部220の指示に基づいて、信号を発生し、その信号を加算部236に出力する。加算部236に入力される信号は、第1の信号発生部232が発生した信号のみなので、加算部236は、第1の信号発生部232から入力された信号をそのまま超音波射出部110に出力することになる。超音波射出部110は、加算部236から入力された信号によって、そのcMUT310のヘッド部318を振動させ、超音波を射出する。
【0056】
超音波射出部110から射出した超音波は、被験体中を伝播する。伝播する超音波は、被験体の音響特性に応じて、反射される。超音波射出部110のcMUT310は、この反射波をヘッド部318で捕らえる。即ち、反射波によってcMUT310は振動し、電圧が発生する。この電気信号を受信部446に出力する。
【0057】
受信部446は、超音波射出部110から電気信号を取得し、それを画像取得部447に出力する。画像取得部447は、受信部446から入力された信号に基づいて、一般に知られている方法で、被験体の内部画像を構築する。構築される画像は、それを模式的に表せば例えば、図11の様に成る。即ち、図11の例では、先端部100の全円周方向の被験体の内部構造が観察される。ここで中心部810は先端部100が存在するため画像化できない。また、射出した超音波が到達し、その反射波を検出できる範囲に応じて、画像取得可能範囲820が存在する。この図において、例えば対象物830の位置は、先端部100の姿勢により定義される軸に基づき回転角度θと先端部100の中心からの距離rによって位置を表すことができる。
【0058】
画像取得部447は、取得した画像を、超音波装置制御部441に出力する。超音波装置制御部441は、画像取得部447から入力された画像を、超音波画像表示装置450に出力する。超音波画像表示装置450は、超音波装置制御部441から入力された、例えば図11の模式図の様な超音波画像を表示する。
【0059】
操作者は、超音波画像表示装置450に表示された画像を確認しながら、処置対象の目標位置を決定する。入力部455は、操作者が決定した処置対象の目標位置の入力を受ける。また、操作者は、処置対象によって、照射したい超音波の周波数を決定する。入力部455は、操作者が決定した処置対象に照射したい超音波の周波数を受ける。ここで、入力部455は、キーボード、マウス、ジョイスティック等、一般的な入力手段で良い。
【0060】
入力部455は、操作者の指示を、超音波装置制御部441に出力する。超音波装置制御部441は、入力部455から入力された操作者の指示に基づいて、超音波射出部110から処置用の超音波を射出する様に制御する。即ち、超音波装置制御部441は、超音波画像取得のための、超音波の射出を停止させるように、画像取得用信号制御部445に指示を出力する。一方、超音波装置制御部441は、目標位置取得部442に、操作者から入力された目標位置を出力する。
【0061】
目標位置取得部442は、超音波装置制御部441から入力された目標位置に応じて、超音波射出部110を目標位置の方向に向けるように、先端部100を目標位置に向けるための回転角度(図11におけるθに係る値)を、回転制御部443に出力する。回転制御部443は、目標位置取得部442からの入力に基づいて、回転駆動部を制御し、超音波射出部110を目標位置の方向に向けるように、先端部100を回転させる。
【0062】
また、目標位置取得部442は、目標位置の超音波射出部110からの距離(図11におけるr)を、駆動変数設定部210に出力する。また、超音波装置制御部441は、入力部455から入力された処置対象の特性に応じて照射したい超音波の周波数を、駆動変数設定部210に出力する。駆動変数設定部210は、目標位置取得部442から入力された目標位置と、超音波装置制御部441から入力された照射したい超音波の周波数に基づいて、前記第1の実施形態の説明の通り、出力する超音波の周波数を算出する。その後は、第1の実施形態の説明の通り、目標位置に設定した周波数の超音波が伝播されることで、目標位置に所望の超音波が照射される。
【0063】
尚、超音波が照射され変形した組織は、照射前の組織に比べて、超音波の伝播効率が悪くなる。そのため、超音波照射にあたっては、奥(超音波射出部110から遠い側)から手前(超音波射出部110に近い側)に順に超音波を照射することが望ましい。
また、前記奥から手前へといった超音波照射の手順を、操作者の指示によらず行える様に、内視鏡型超音波診断治療装置400を構成しても良い。つまり、操作者が指定した超音波照射希望範囲に、所定の手順で順に超音波を照射する様に制御しても良い。即ち、操作者が指定した範囲に応じて、駆動変数設定部210は、例えば、出力する超音波の搬送波の周波数を低いものから高いものに徐々に変化させる様に制御しても良い。
【0064】
本実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置400に依れば、超音波装置410により、被験体の内部画像を取得しつつ、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。この際、超音波を照射したい目標位置に応じて、先端部100の回転角度を制御することができる。また、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することで、様々な目標位置に設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。その結果、例えばマイクロバブルのキャビテーションによる破壊エネルギーにより低エネルギー超音波で細胞破壊を確実に行うことができる。
【0065】
また、本実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置400に依れば、超音波射出部110を第1の実施形態で説明したと同様に駆動するので、画像取得用の周波数である5〜20MHzの超音波と、例えばマイクロバブルの共振周波数である1〜2MHz等の超音波とを同一の超音波発生素子を用いて発生することができる。
【0066】
[第2の実施形態の第1の変形例]
次に、前記第2の実施形態の第1の変形例について説明する。ここで本変形例の説明では、第2の実施形態との相違点について説明し、第2の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。第2の実施形態に係る先端部100は、回転制御部443や図示しない回転駆動部等により、超音波射出部110が円周方向に回転するように構成されている。
【0067】
これに対して本変形例では、超音波射出部110は、物理的には回転せずに、超音波を照射する向きを変更できる様に構成されている。即ち、図12にcMUTアレイ320の一部の拡大図の平面図を(a)に、図12(a)中のb−bにおける断面図を(b)に示す通り、本cMUTアレイ320は、当該cMUTアレイ320中における位置によって各cMUT310のヘッド部318の傾きが異なっている。そして、ヘッド部318の傾きが同じ物毎にグループを形成し、グループ毎にcMUT310の電極が接続されている。このため、超音波を射出するcMUT310のグループを選択することで、超音波の射出方向を変更することができる。この様な超音波の射出方向の変更は、超音波画像取得用の超音波においても、処置用の超音波においても用いることができる。この様な構成を有する内視鏡型超音波診断治療装置400に依れば、図11に相当する、得られる超音波画像は図13の様になる。しかし第2の実施形態と本質的な違いはない。
以上の様に構成した内視鏡型超音波診断治療装置400に依っても、第2の実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置400と同様の効果を得ることができる。
【0068】
また、第2の実施形態の場合と同様に、ヘッド部318の傾きが全て同じ超音波射出部110を用いて、フェーズドアレイによって超音波を照射する向きを変化させても良い。即ち、図14に、中段にcMUTアレイ320、下段に各cMUT310から射出する超音波の位相、及び上段に射出される超音波の波面を模式図で示す様に、超音波を射出するcMUT310の、cMUTアレイ320における位置に応じて、射出する超音波の位相をずらすことで、超音波を特定の方向に射出することができる。そこで、加算部236において、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234から入力された信号を加算した後に、cMUTアレイ320の各cMUT310に出力する前に、cMUTアレイの位置に応じた位相差を付加してから、駆動信号をcMUT310に出力する。この様に、フェーズドアレイを用いても、射出する超音波の照射方向を変化させることができる。
【0069】
この様な構成に依っても第2の実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置400と同様の効果を得ることができる。
尚、本変形例に係る構成は、内視鏡型超音波診断治療装置400に組み込む場合に限らず、第1の実施形態で説明した、超音波治療装置単独に用いることができることは勿論である。
【0070】
[第2の実施形態の第2の変形例]
次に、前記第2の実施形態の第2の変形例について説明する。ここで本変形例の説明では、第2の実施形態との相違点について説明し、第2の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。第2の実施形態に係る先端部100は、円筒形状をしており、その円周面の一部に超音波射出部110が設置されている。これに対して、図15に示す様に、本変形例の先端部100は、円筒形状をしているが、その先端面に超音波射出部110が配設されている。
【0071】
この先端部100の形状の違いに伴い、回転制御部443や図示しない回転駆動部等に代わって、先端部100の中心軸方向に対する超音波の照射角度を振る為の公知の機構を設けても良い。例えば、cMUTアレイ320の超音波射出面の向きを物理的に振る機構を設けても良い。また、第2の実施形態の第1の変形例で説明した通り、cMUT310のヘッド部318の角度を異ならせるようにして超音波の照射方向を変えるようにしても良い。また、フェーズドアレイにより、cMUTアレイ320から射出する超音波の向きを変更するようにしても良い。何れの場合においても、第2の実施形態と本質的な違いはない。
【0072】
以上の様に構成した内視鏡型超音波診断治療装置400に依っても、第2の実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置400と同様の効果を得ることができる。
尚、第2の実施形態の説明においては内視鏡型超音波診断治療装置を例に挙げたが、超音波プローブ420や内視鏡装置460を変更することで、同様の構成で、腹腔鏡、術中型、体外型、及びその他の形態を構成することもできる。
【0073】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について図面を参照して説明する。ここで本実施形態の説明では、前記第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。第1の実施形態に係る超音波治療装置においては、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234が発生した信号を加算部236で加算することで、前記式(1)で表される様な信号を発生させている。これに対して、本実施形態においては、振幅変調によって第1の実施形態と同様の信号を発生させる。
【0074】
このため本実施形態に係る超音波治療装置は、図16に示す通り、超音波治療装置制御部200に、駆動変数設定部210と、出力情報記憶部215と、駆動指示部220と、搬送波信号発生部242と、変調部244とを有する。ここで駆動変数設定部210は、第1の実施形態の場合と同様に、入力部250からの入力に基づいて、出力情報記憶部215から周波数情報を読み出し、超音波射出部110から射出される超音波の各種パラメータを算出し決定し、駆動指示部220に出力する。駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力されたパラメータに基づいて、搬送波信号発生部242に信号発生の指示を出力し、変調部244に信号の変調の指示を出力する。搬送波信号発生部242は、駆動指示部220から入力された指示に基づき、搬送波信号を発生し、変調部244に出力する。変調部244は、搬送波信号発生部242から入力された搬送波信号を、駆動指示部220から入力された指示に基づいて変調し、生成された信号である駆動信号を超音波射出部110に出力する。尚、変調部244は一般的な変調回路である。この様に、例えば搬送波信号発生部242及び変調部244は、振幅変調により駆動信号を発生させる駆動信号発生部として機能する。
【0075】
次に、本実施形態に係る超音波治療装置の動作について説明する。出力情報記憶部215は、例えば超音波を照射する対象物と関係付けて変調波の周波数fmを記憶している。また、出力情報記憶部215は、超音波射出部110から超音波を照射する対象物間での距離(深さ)と関係付けて搬送波の周波数fcを記憶している。その他、出力情報記憶部215は、例えば超音波強度等、超音波射出部110が射出する超音波に関する情報を記憶している。
【0076】
入力部250からの入力に基づいて、駆動変数設定部210は、出力情報記憶部215に記憶されている情報を読み出し、読み出した情報に基づいて、超音波を照射する対象物や、対象物までの距離に応じて、変調部244が出力する信号x(t)、つまり超音波射出部110から超音波を射出させるための信号を決定する。変調部244が出力する信号x(t)は、例えば下記式(2)の様に表すことができる。
【0077】
【数2】
ここで、ωm=2πfm、ωc=2πfcである。尚、式(1)の場合と同様にこの例では、x(t)=Acos(ωct)が搬送波、x(t)=cos(ωmt)が変調波である。駆動変数設定部210は、決定した超音波射出部110から超音波を射出させるための信号、即ち変調部244が出力する信号x(t)の情報を、駆動指示部220に出力する。例えば、マイクロバブルを破裂させる目的のためには、fmは1〜2MHz程度とする等である。
【0078】
駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力された信号の情報に基づいて、搬送波信号発生部242に信号発生の指示を出力し、変調部244に信号の変調の指示を出力する。
搬送波信号発生部242は、駆動指示部220からの入力に基づいて、例えば前記式(2)においては、搬送波であるx(t)=Acos(ωct)の信号を生成する。搬送波信号発生部242は、生成した信号を変調部244に出力する。
【0079】
変調部244は、搬送波信号発生部242から搬送波を入力する。変調部244は、駆動指示部220からの入力に基づいて、例えば前記式(2)においては、変調波であるx(t)=cos(ωmt)の信号を生成し、この変調信号により、搬送波信号発生部242から入力した搬送波を変調する。その結果生成された駆動信号を、超音波射出部110に出力する。
【0080】
第1の実施形態の場合と同様に、本超音波治療装置の使用に際して、先端部100の超音波射出部110は、超音波を照射する対象である被験体(音響伝搬媒質)に、音響インピーダンスを整合するための音響整合層を挟んで或いは直接に接触させて用いる。超音波射出部110のcMUTアレイ320を構成する各cMUT310は、変調部244から入力された駆動信号により、ヘッド部318を振動させて、例えば式(2)で表される変調部244が出力する信号x(t)により超音波射出部110が発生する超音波を射出する。その結果、搬送波によって変調波の周波数を有する超音波が目標位置に伝搬されることと等しくなる。即ち、当該超音波照射により、目標位置において変調波の周波数の超音波が自己復調される。その結果、目標位置に変調波の周波数の超音波が照射される。
【0081】
本実施形態に係る超音波治療装置に依れば、第1の実施形態の場合と同様に、超音波射出部110の構成に関わらず、対象物に応じた周波数の超音波を照射することができる。また、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することにより、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。更に、高周波数の超音波を用いて伝播することで、ビームパターンが鋭くなるというメリットもある。
【0082】
[第3の実施形態の変形例]
第3の実施形態に係る超音波治療装置も、図12を参照して説明した第2の実施形態の第1の変形例と同様に、各cMUT310のヘッド部318の傾きを異なる様に構成しても良い。また、図14を参照して説明した第2の実施形態の第1の変形例と同様に、フェーズドアレイによって、超音波を射出する方向を変更できるように構成しても良い。また、第2の実施形態で説明した内視鏡型超音波診断治療装置400を、本実施形態又は前記変形例に係る超音波治療装置を用いて構成しても良い。以上の様な変形例によっても、それぞれ前記と同様の効果を得ることができる。
【0083】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について図面を参照して説明する。ここで本実施形態の説明では、前記第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。第1の実施形態に係る超音波治療装置においては、第1の信号発生部232が発生した周波数f1の信号と第2の信号発生部234が発生した周波数f2の信号を、加算部236で加算することで、前記式(1)で表される様な信号を発生させている。
【0084】
これに対して、本実施形態においては、超音波射出部110のcMUTアレイ320の超音波発生素子であるcMUT310を2つのグループに分ける。そして、図17に示す様に、第1のグループである第1のcMUTアレイ322からは周波数f1の超音波US1を発生させ、第2のグループである第2のcMUTアレイ324からは周波数f2の超音波US2を発生させる。その結果、両超音波が照射された空間において、第1のグループの超音波発生素子から射出された周波数f1の超音波US1と、第2のグループの超音波発生素子から射出された周波数f2の超音波US2とが重なり合う重畳空間P(図17における斜線で示した領域)において、音波を伝える媒質の非線形性によって、高調波や結合音が発生する。その結果、前記周波数f1の超音波US1と周波数f2の超音波US2の2つの超音波は重畳され、第1の実施形態において前記式(1)で表される加算信号x(t)により超音波射出部110が発生する超音波が照射された状態と実質的に同様の状態が発生する。即ち、Δf=|f1−f2|の周波数を有する超音波が、重畳空間Pにおいて生ずる。このような効果を、パラメトリック効果という。
【0085】
図18に、本実施形態に係る超音波治療装置の構成を示す。本超音波治療装置は、第1の実施形態と同様に、超音波治療装置制御部200は、駆動変数設定部210と、出力情報記憶部215と、駆動指示部220と、第1の信号発生部232と、第2の信号発生部234とを有する。各部の働きは、第1の実施形態と同様である。但し、本実施形態においては、第1の実施形態にはある加算部236が存在しない。本実施形態においては、第1の信号発生部232は、発生した周波数f1の信号を、超音波射出部110の第1のcMUTアレイ322に出力し、第2の信号発生部234は、発生した周波数f2の信号を超音波射出部110の第2のcMUTアレイ324に出力する。
【0086】
第1のcMUTアレイ322を構成する各cMUT310は、第1の信号発生部232から入力された駆動信号により、ヘッド部318を振動させて、周波数f1の超音波を射出する。一方、第2のcMUTアレイ324を構成する各cMUT310は、第2の信号発生部234から入力された駆動信号により、ヘッド部318を振動させて、周波数f2の超音波を射出する。尚、cMUTアレイ320のうち何れのcMUT310を第1のcMUTアレイ322として機能させ、何れのcMUT310を第2のcMUTアレイ324として機能させるかは任意である。この様に、例えば第1のcMUTアレイ322は、第1の駆動信号により駆動される第1の音源として機能し、例えば第2のcMUTアレイ324は、第2の駆動信号により駆動される第2の音源として機能する。
【0087】
前記の様な構成で動作させる結果、図19にその模式図を示す様に超音波が伝播されることになる。例えば、第1のcMUTアレイ322が射出する超音波US1の周波数f1を6MHzとし、第2のcMUTアレイ324が射出する超音波US2の周波数f2を5MHzとした場合、超音波の伝播領域が、図19(a)のようになるとする。このとき重畳空間Pにおいて生じる超音波の周波数Δfは1MHzである。一方、例えば、第1のcMUTアレイ322が射出する超音波US1’の周波数f1を21MHzとし、第2のcMUTアレイ324が射出する超音波US2’の周波数f2を20MHzとすると、前記の通り、周波数が高いほど減衰が大きく、超音波の到達距離が短くなるので、例えば超音波の伝播領域は図19(b)のようになる。この場合も重畳空間P’において生じる超音波の周波数Δfは1MHzとなる。この様に、いずれの場合にも重畳空間においてΔf=1MHzの超音波が生じる。一方、当該Δf=1MHzの超音波が生じる領域は、f1とf2の周波数によって異なる。
【0088】
この様に、本実施形態に係る超音波治療装置に依っても、第1の実施形態の場合と同様に、超音波射出部110の構成に関わらず、対象物に応じた周波数の超音波を照射することができる。また、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することにより、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。更に、高周波数の超音波を用いて伝播することで、ビームパターンが鋭くなるというメリットもある。
【0089】
[第4の実施形態の第1の変形例]
次に、前記第4の実施形態の第1の変形例について説明する。ここで本変形例の説明では、第4の実施形態との相違点について説明し、第4の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0090】
第4の実施形態について、図17を参照して説明した超音波射出部110は、超音波の射出面が平行であった。これに対して、本変形例の超音波射出部110の射出面は、図20(a)にその平面図、図20(b)に図20(a)におけるb−b部分の断面図を示す様に、超音波の射出面に傾きが設けられている。例えば、図20に示す通り、一点鎖線で示した中央線に対して、対象となる様に、各cMUT310のヘッド部318の傾きが異なるように設計されており、その傾きは、射出される超音波が収束する傾きとなっている。
【0091】
この様にcMUTアレイ320を設計すると、図21に模式図を示す通り、第1のグループの超音波発生素子から射出された周波数f1の超音波US1と、第2のグループの超音波発生素子から射出された周波数f2の超音波US2とが重なり合う重畳空間Pを、図21(a)に示す様な射出面が平行な場合と比較して、図21(b)の様に大きく取れる。このため、射出する超音波のエネルギーを効率よく用いることができる。
尚、何れのcMUT310を第1のcMUTアレイ322とし、何れのcMUT310を第2のcMUTアレイ324とするかは任意である。動作は、第4の実施形態に係る超音波治療装置と同じであり、同様の効果が得られる。
【0092】
[第4の実施形態の第2の変形例]
第4の実施形態に係る超音波治療装置も、図12を参照して説明した第2の実施形態の第1の変形例と同様に、各cMUT310のヘッド部318の傾きを異なる様に構成しても良い。この様に、各cMUT310のヘッド部318の傾きを異なる様に構成し、周波数f1の超音波US1を射出する第1のグループの超音波発生素子と、周波数f2の超音波US2を射出する第2のグループの超音波発生素子とを適切に選ぶことによって、様々な位置に超音波US1と超音波US2とが重なり合う重畳空間Pを形成することができる。
【0093】
例えば、図22に模式的に示す様に、「1」と記載したCMUT310から超音波US1を射出し、「4」と記載したCMUT310から超音波US4を射出すると、重畳空間P14において差音の超音波が生じる。一方、「3」と記載したCMUT310から超音波US3を射出し、「5」と記載したCMUT310から超音波US5を射出すると、重畳空間P35において差音の超音波が生じる。この様に、第1のグループの超音波発生素子と第2のグループの超音波発生素子との選択により、目標位置を変更することができる。
【0094】
また、図14を参照して説明した第2の実施形態の第1の変形例と同様に、フェーズドアレイによって、超音波を射出する方向を変更できるように構成しても良い。また、第2の実施形態で説明した内視鏡型超音波診断治療装置400を、本実施形態又はその各変形例に係る超音波治療装置を用いて構成しても良い。以上の様な変形例によっても、それぞれ前記と同様の効果を得ることができる。
【0095】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態について図面を参照して説明する。ここで本実施形態の説明では、前記第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
第1の実施形態に係る超音波治療装置においては、超音波射出部110に、cMUTアレイ320を用いている。これに対して本実施形態に係る超音波治療装置の超音波射出部110には、図23に示す様に、YカットZ伝搬のニオブ酸リチウム(LiNbO3)基板511上に、円弧形状のすだれ状電極512を形成した、円弧形すだれ状電極トランスデューサ(Focal−Interdigital Transducer;F−IDT)510を用いる。ここで、図23(a)はF−IDTの平面図、(b)はその断面図である。尚、IDTの動作原理については、「前沢、鎌倉、「弾性表面波素子を用いた励振モード切替による音響流の発生と攪拌への一応用」信学技報、Vol.109、No.17(2009)、PP.17−22」に説明されている。尚、本実施形態に係る超音波治療装置の構成は、超音波射出部110にF−IDTを用いていることを除くと、図1を参照して説明した第1の実施形態の構成と同様である。
【0096】
F−IDT510から成る超音波射出部110は、被験体(音響伝搬媒質)に接触させた状態で使用される。F−IDT510のすだれ状電極512に電圧を印加すると、すだれ状電極が振動し、ニオブ酸リチウム基板511の表面に表面弾性波(Surface Acoustic Wave;SAW)が発生する。SAWはニオブ酸リチウム基板511の表面に沿って伝搬し、次いで被験体へ放射される。尚、SAWの周波数は、数十MHz程度である。ここで、すだれ状電極512が図24に示す通り円弧形状をしているため、伝搬する超音波は、焦点Oを結ぶ。即ち、超音波のエネルギーを焦点Oに集中させることができる。ここで、ニオブ酸リチウム基板511のすだれ状電極512が形成されている面の法線に対して、超音波が放射される角度θSは、ニオブ酸リチウム基板511における超音波の伝搬速度と、被験体内における超音波の伝搬速度との比で決まる。この様に、すだれ状電極512の形状を扇形状と見なすと、超音波の進行方向は扇の要の方向となる。尚、噛み合わせている電極の対数を、例えば数対から数十対程度等、比較的少なくすることで出力周波数の帯域を広帯域化させることができる。
【0097】
ここで、本実施形態に係る超音波治療装置においても、射出する超音波の周波数が数十MHz程度と高いF−IDT510を用いても、マイクロバブルの共振周波数である1〜2MHz等の超音波を、目標とする位置(深さ)に照射するために、第1の実施形態と同様に、自己復調効果を利用する。そのため、前記F−IDT510を制御及び駆動するための超音波治療装置制御部200は、第1の実施形態に係る超音波治療装置制御部200と同じである。
【0098】
即ち、超音波治療装置制御部200は、駆動変数設定部210と、出力情報記憶部215と、駆動指示部220と、第1の信号発生部232と、第2の信号発生部234と、加算部236とを有する。
そして、超音波治療装置制御部200の駆動変数設定部210は、入力部250から入力された操作者の指示に基づいて、超音波を照射したい目標位置及び目標物に応じて、搬送波及び変調波の周波数を決定し、それを実現する第1の信号発生部232が発生する信号の周波数f1、振幅A1、及び初期位相θ1、並びに、第2の信号発生部234が発生する信号の周波数f2、振幅A2、及び初期位相θ2、を決定する。この際、駆動変数設定部210は、例えば図8に示す様な出力情報記憶部215に記憶してある周波数情報を用いる。駆動変数設定部210は、決定したf1、f2、A1、A2、θ1、及びθ2を駆動指示部220に出力する。
【0099】
駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力された値に基づいて、第1の信号発生部232に周波数f1、振幅A1及び初期位相θ1の信号を出力するように、また、第2の信号発生部234に周波数f2、振幅A2及び初期位相θ2の信号を出力するように信号の発生の指示を出力する。第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234はそれぞれ、駆動指示部220から入力された超音波発生の指示に基づいて、信号を生成し、それを加算部236に出力する。加算部236は、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234からの入力を加算し、例えば式(1)で表される加算信号である駆動信号を超音波射出部110に出力する。
【0100】
その結果、第1の実施形態で説明したのと同様の原理及び動作によって、図24に示す様に、目標周波数の超音波を目標位置に照射することができる。即ち、F−IDT510のすだれ状電極512に駆動信号が印加されると、すだれ状電極が振動し、ニオブ酸リチウム基板511の表面にSAWが発生する。SAWは、被験体へ放射される。放射された超音波は、焦点Oを結ぶ。この焦点の位置を目標位置としておくと、当該目標位置において、自己復調された超音波が生じることになる。
【0101】
また、F−IDT510は、SAWの中心周波数の約1.5〜2倍の周波数で駆動すると、強いバルク波(Bulk Acoustic Wave;BAW)を発生する。SAWは、基板表面に沿って伝搬し被験体に放射されるのに対して、BAWは、すだれ状電極512を形成している面から、ニオブ酸リチウム基板511の内部を伝搬し、すだれ状電極512を形成している面の裏面側で反射し、すだれ状電極512を形成している面に戻ってくる。その後、当該表面から被験体へと超音波が放射される。この際の、ニオブ酸リチウム基板511の法線に対して超音波が放射される角度θBは、SAWの場合の超音波が被験体内に放射される角度θSと異なる。
【0102】
従って、本実施形態に係る超音波治療装置では、駆動変数設定部210によりすだれ状電極512に入力する周波数を適切に選択することによって、SAWとBAWの発生を切り換えることができる。また、駆動周波数をSAWの中心周波数から上下にずらすことでもBAWを励起できる。これらを利用すると、図25に示す様に、被験体への超音波の放射角度、即ち焦点位置を変化させられる。従って、超音波を照射する目標位置を変更することも可能である。
【0103】
尚、ニオブ酸リチウム基板511は、YカットZ伝搬のニオブ酸リチウム(YZ−LiNbO3)に限らずとも、例えば、128°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム(128YX−LiNbO3)等を用いても良い。尚、YカットZ伝搬及び128°回転YカットX伝搬は、いずれも超音波の発生効率が良い切断面であることが知られている。また、SAW及び/又はBAWを発生することができれば、ニオブ酸リチウムに限らずPZTやZnOでも良い。
【0104】
本実施形態に係る超音波治療装置に依れば、第1の実施形態の場合と同様に、出力周波数が数十MHzと高いF−IDTを用いても、例えばマイクロバブルの共振周波数である1〜2MHz等の超音波を照射することができる。この様に、超音波射出部110の構成に関わらず、対象物に応じた周波数の超音波を照射することができる。また、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することにより、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。更に、高周波数の超音波を用いて伝播することで、ビームパターンが鋭くなるというメリットもある。
【0105】
[第5の実施形態の第1の変形例]
次に、第5の実施形態の第1の変形例について説明する。前記第5の実施形態に係る超音波射出部110は、ニオブ酸リチウム基板511上に円弧形状のすだれ状電極512を形成したF−IDT510により構成されている。これに対して、本実施形態に係る超音波射出部110のIDT520は、図26に示す様に、同様のニオブ酸リチウム基板521上に、位置により電極幅が異なるすだれ状電極522が形成されることで構成されている。この様な形状のすだれ状電極522を形成することによって、電極の幅に応じてIDT520の位置により発生するSAW及びBAWの周波数が異なる。即ち、すだれ状電極522が細い(図26における下方)程、発生する音波の周波数は高く、すだれ状電極522が太い(図26における上方)程、発生する音波の周波数は低くなる。
【0106】
この様な構成を有するIDT520を用いることで、超音波射出部110の広帯域化を図ることができる。ここで、噛み合わせている電極の対数を、例えば2対から10対程度等、比較的少なくすることで出力周波数の帯域を更に広帯域化させることができる。
【0107】
[第5の実施形態の第2の変形例]
第5の実施形態又はその第1の変形例に係る超音波治療装置を用いて、第2の実施形態で説明した内視鏡型超音波診断治療装置400を構成することができる。
第5の実施形態又はその第1の変形例に係る超音波治療装置を用いて内視鏡型超音波診断治療装置400を構築しても、第2の実施形態と同様に動作し、同様の効果を得ることができる。
【0108】
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。本実施形態に係る超音波治療装置は、超音波射出部110に、第5の実施形態の超音波射出部110と同じく、図23又は図26を参照して説明したF−IDT510又はIDT520を用いている。そして、本実施形態に係る超音波治療装置を制御及び駆動する超音波治療装置制御部200は、第3の実施形態の超音波治療装置制御部200と同じく、図16を参照して説明した構成により、振幅変調を用いた方法で、制御及び駆動する。
【0109】
即ち、出力情報記憶部215は、例えば超音波を照射する対象物と関係付けて変調波の周波数fmを記憶している。また、出力情報記憶部215は、超音波射出部110から超音波を照射する対象物間での距離(深さ)と関係付けて搬送波の周波数fcを記憶している。その他、出力情報記憶部215は、例えば超音波強度等、超音波射出部110が射出する超音波に関する情報を記憶している。そして、入力部250からの入力に基づいて、駆動変数設定部210は、出力情報記憶部215に記憶されている情報を読み出し、読み出した情報に基づいて、超音波を照射する対象物や、対象物までの距離に応じて、超音波射出部110から射出する超音波の信号を決定する。駆動変数設定部210は、決定した超音波射出部110から射出する超音波の信号の情報を、駆動指示部220に出力する。
【0110】
駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力された信号の情報に基づいて、搬送波信号発生部242に信号発生の指示を出力し、変調部244に信号の変調の指示を出力する。搬送波信号発生部242は、駆動指示部220からの入力に基づいて、搬送波の信号を生成する。搬送波信号発生部242は、生成した信号を変調部244に出力する。変調部244は、搬送波信号発生部242から搬送波を入力する。変調部244は、駆動指示部220からの入力に基づいて、変調波の信号を生成し、この変調信号により、搬送波信号発生部242から入力した搬送波を変調する。その結果生成された駆動信号を超音波射出部110に出力する。超音波射出部110を構成するF−IDT510又はIDT520は、変調部244から入力された駆動信号に基づく超音波を発生する。
【0111】
この様にして、例えば式(2)で表される様な変調部244が出力する信号x(t)により超音波射出部110が超音波を発生し射出する。その結果、搬送波に乗って超音波が目標位置に伝搬され、目標位置において、変調波の周波数の超音波が自己復調される。その結果、目標位置に変調波の周波数の超音波が照射される。
【0112】
以上の様に構成する本実施形態に係る超音波治療装置に依れば、第3の実施形態及び第5の実施形態と同様に、超音波射出部110の構成に関わらず、対象物に応じた周波数の超音波を照射することができる。また、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することにより、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。更に、高周波数の超音波を用いて伝播することで、ビームパターンが鋭くなるというメリットもある。
【0113】
また、第6の実施形態に係る超音波治療装置を用いて、第2の実施形態で説明した内視鏡型超音波診断治療装置400を構成することができる。
第6の実施形態に係る超音波治療装置を用いて内視鏡型超音波診断治療装置400を構築しても、第2の実施形態と同様に動作し、同様の効果を得ることができる。
【0114】
[第7の実施形態]
次に、本発明の第7の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る超音波治療装置は、超音波射出部110に、第5の実施形態の超音波射出部110と同様に、図22を参照して説明したIDTを用いている。そして、本実施形態に係る超音波治療装置を制御及び駆動する超音波治療装置制御部200は、第4の実施形態の超音波治療装置制御部200と同じく、図18を参照して説明した構成により、差音によるパラメトリック効果を利用した方法で、制御及び駆動する。
【0115】
本実施形態に係る超音波射出部110は、図27に示す様なF−IDT530を用いている。F−IDT530には、第5の実施形態で説明したF−IDT510のニオブ酸リチウム基板511と同様のニオブ酸リチウム基板531を用いている。ニオブ酸リチウム基板531上には、F−IDT510のすだれ状電極512と同様の円弧形状のすだれ状電極が2つ形成されている。即ち、ニオブ酸リチウム基板531上には、第1のすだれ状電極532及び第2のすだれ状電極533が、当該円弧の中心方向を対向させるように形成されている。この様な構成のF−IDT530の、第1のすだれ状電極532には、超音波治療装置制御部200の第1の信号発生部232を接続し、第2のすだれ状電極533には、第2の信号発生部234を接続している。この様に、例えば第1のすだれ状電極532は、第1の駆動信号により駆動される第1のすだれ状電極として機能し、例えば第2のすだれ状電極533は、第2の駆動信号により駆動される第2のすだれ状電極として機能する。
【0116】
次に、以上の様な構成を有する本実施形態に係る超音波治療装置の動作を説明する。超音波治療装置制御部200は、第4の実施形態の場合と同様に動作する。即ち、超音波治療装置制御部200の駆動変数設定部210は、入力部250から入力された操作者の指示に基づいて、超音波を照射したい目標位置及び目標物に応じて、搬送波及び変調波の周波数を決定し、それを実現する第1の信号発生部232が発生する信号の周波数f1、振幅A1、及び初期位相θ1、並びに、第2の信号発生部234が発生する信号の周波数f2、振幅A2、及び初期位相θ2を決定する。この際、駆動変数設定部210は、出力情報記憶部215に記憶してある周波数情報を用いる。駆動変数設定部210は、決定したf1、f2、A1、A2、θ1、及びθ2を駆動指示部220に出力する。
【0117】
駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力された値に基づいて、第1の信号発生部232に周波数f1、振幅A1及び初期位相θ1の信号を出力するように、また、第2の信号発生部234に周波数f2、振幅A2及び初期位相θ2の信号を出力するように信号の発生の指示を出力する。第1の信号発生部232は、発生した信号を第1のすだれ状電極532に出力する。同様に第2の信号発生部234は、発生した信号を第2のすだれ状電極533に出力する。
【0118】
その結果、F−IDT530からは、第1のすだれ状電極532及び第2のすだれ状電極533の振動によって、それぞれからSAW又はBAWが発生する。発生したSAW又はBAWは、図28の様に、被験体に射出され、焦点Oにおいて、第1のすだれ状電極532及び第2のすだれ状電極533から射出された超音波が重なり合う。以上の様にして、焦点Oにおいて、第4の実施形態と同様に、パラメトリック効果によって、差音であるΔf=|f1−f2|の周波数を有する超音波が発生する。
【0119】
本実施形態に係る超音波治療装置に依れば、第4の実施形態及び第5の実施形態と同様に、超音波射出部110の構成に関わらず、対象物に応じた周波数の超音波を照射することができる。また、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することにより、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。更に、高周波数の超音波を用いて伝播することで、ビームパターンが鋭くなるというメリットもある。
【0120】
尚、本実施形態に係るF−IDT530は、図29に示す様に、ニオブ酸リチウム基板531上に3つ以上のすだれ状電極534を形成するように構成しても良い。この様な構成のF−IDT530に依っても同様の効果を得ることができる。
また、第7の実施形態に係る超音波治療装置を用いて、第2の実施形態で説明した内視鏡型超音波診断治療装置400を構成することができる。
【0121】
第7の実施形態に係る超音波治療装置を用いて内視鏡型超音波診断治療装置400を構築しても、第2の実施形態と同様に動作し、同様の効果を得ることができる。
[第8の実施形態]
次に、本発明の第8の実施形態について図面を参照して説明する。ここで本実施形態の説明では、前記第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0122】
第1の実施形態に係る超音波治療装置においては、超音波射出部110に、cMUTアレイ320を用いている。これに対して本実施形態に係る超音波治療装置の超音波射出部110には、図30に示す様な、上面は凹面形状で下面は平面形状の、プラノコンケーブ形の圧電素子を用いる。
【0123】
即ち、超音波素子610は、プラノコンケーブ形の圧電素子611の上面に例えば接地用の電極612が形成され、圧電素子611の下面に例えば信号用の電極613が形成されている。圧電素子611は、中央部と周縁部で徐々に厚みが異なっているので、場所によって共振周波数が異なる。従って、印加する電圧の周波数に応じて、主たる振動箇所が変化する。例えば中心部に近い圧電素子611が薄い部分では、比較的高周波数の超音波を発生し、周縁部に近い圧電素子611が厚い部分では、比較的低周波数の超音波を発生する。即ち、出力周波数が広帯域となっている。
【0124】
超音波素子610の寸法は、例えば、外径φ12mm、最大厚み2mm、凹面中央部厚み1.2mm等である。
本実施形態に係る超音波治療装置を制御及び駆動する超音波治療装置制御部200は、第1の実施形態の超音波治療装置制御部200と同じく、図1を参照して説明した構成により、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234で発生した信号を、加算部236で加算する方法で、制御及び駆動する。
【0125】
即ち、超音波治療装置制御部200は、駆動変数設定部210と、出力情報記憶部215と、駆動指示部220と、第1の信号発生部232と、第2の信号発生部234と、加算部236とを有する。そして、超音波治療装置制御部200の駆動変数設定部210は、入力部250から入力された操作者の指示に基づいて、超音波を照射したい目標位置及び目標物に応じて、搬送波及び変調波の周波数を決定し、それを実現する第1の信号発生部232が発生する信号の周波数f1、振幅A1、及び初期位相θ1、並びに、第2の信号発生部234が発生する信号の周波数f2、振幅A2、及び初期位相θ2、を決定する。この際、駆動変数設定部210は、例えば図8に示す様な出力情報記憶部215に記憶してある周波数情報を用いる。駆動変数設定部210は、決定したf1、f2、A1、A2、θ1、及びθ2を駆動指示部220に出力する。
【0126】
駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力された値に基づいて、第1の信号発生部232に周波数f1、振幅A1及び初期位相θ1の信号を出力するように、また、第2の信号発生部234に周波数f2、振幅A2及び初期位相θ2の信号を出力するように信号の発生の指示を出力する。第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234はそれぞれ、駆動指示部220から入力された超音波発生の指示に基づいて、信号を生成し、それを加算部236に出力する。加算部236は、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234からの入力を加算し、例えば式(1)で表される加算信号を超音波射出部110に出力する。その結果、第1の実施形態で説明したのと同様の原理及び動作により、即ち自己復調効果を利用して、目標周波数の超音波を目標位置に照射することができる。
【0127】
以上の様な構成を有する本実施形態に係る超音波治療装置に依れば、第1の実施形態の場合と同様に、圧電素子の小型化のため、出力する超音波の周波数が高周波数とならざるを得ない超音波射出部110を用いても、例えばマイクロバブルの共振周波数である1〜2MHz等の超音波を照射することができる。この様に、超音波射出部110の構成に関わらず、対象物に応じた周波数の超音波を照射することができる。また、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することにより、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。更に、高周波数の超音波を用いて伝播することで、ビームパターンが鋭くなるというメリットもある。
【0128】
尚、超音波素子610の圧電素子611は場所によって厚みが異なれば良い。例えば、図31にその例を2つ示す様な形状でも良い。この場合も同様の効果が得られる。
また、第8の実施形態に係る超音波治療装置を用いて、第2の実施形態で説明した内視鏡型超音波診断治療装置400を構成することができる。
【0129】
第8の実施形態に係る超音波治療装置を用いて内視鏡型超音波診断治療装置400を構築しても、第2の実施形態と同様に動作し、同様の効果を得ることができる。
[第9の実施形態]
次に、本発明の第9の実施形態について説明する。本実施形態に係る超音波治療装置は、超音波射出部110に、第8の実施形態の超音波射出部110と同じく、図30又は図31を参照して説明した超音波素子610を用いている。そして、本実施形態に係る超音波治療装置を制御及び駆動する超音波治療装置制御部200は、第3の実施形態の超音波治療装置制御部200と同じく、図16を参照して説明した構成により、振幅変調を用いた方法で、制御及び駆動する。
【0130】
即ち、出力情報記憶部215は、例えば超音波を照射する対象物と関係付けて変調波の周波数fmを記憶している。また、出力情報記憶部215は、超音波射出部110から超音波を照射する対象物間での距離(深さ)と関係付けて搬送波の周波数fcを記憶している。その他、出力情報記憶部215は、例えば超音波強度等、超音波射出部110が射出する超音波に関する情報を記憶している。そして、入力部250からの入力に基づいて、駆動変数設定部210は、出力情報記憶部215に記憶されている情報を読み出し、読み出した情報に基づいて、超音波を照射する対象物や、対象物までの距離に応じて、超音波射出部110から射出する超音波の信号を決定する。駆動変数設定部210は、決定した超音波射出部110から射出する超音波の信号の情報を、駆動指示部220に出力する。
【0131】
駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力された信号の情報に基づいて、搬送波信号発生部242に信号発生の指示を出力し、変調部244に信号の変調の指示を出力する。搬送波信号発生部242は、駆動指示部220からの入力に基づいて、搬送波の信号を生成する。搬送波信号発生部242は、生成した信号を変調部244に出力する。変調部244は、搬送波信号発生部242から搬送波を入力する。変調部244は、駆動指示部220からの入力に基づいて、変調波の信号を生成し、この変調信号により、搬送波信号発生部242から入力した搬送波を変調する。その結果生成された駆動信号を超音波射出部110に出力する。超音波射出部110を構成する超音波素子610は、変調部244から入力された駆動信号に基づく超音波を発生する。
【0132】
この様にして、例えば前記式(2)で表される様な変調部244が出力する信号x(t)により超音波射出部110が発生する超音波を射出する。すると、搬送波に乗って超音波が目標位置に伝搬され、目標位置において、変調波の周波数の超音波が自己復調される。その結果、目標位置に変調波の周波数の超音波が照射される。
【0133】
以上の様に構成する本実施形態に係る超音波治療装置に依れば、第3の実施形態及び第8の実施形態と同様に、超音波射出部110の構成に関わらず、対象物に応じた周波数の超音波を照射することができる。また、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することにより、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。更に、高周波数の超音波を用いて伝播することで、ビームパターンが鋭くなるというメリットもある。
【0134】
尚、超音波素子610の圧電素子611は場所によって厚みが異なれば良いので、第8の実施形態と同様に、例えば、図31に示す様な形状でも良く、その場合も同様の効果が得られる。
また、第9の実施形態に係る超音波治療装置を用いて、第2の実施形態で説明した内視鏡型超音波診断治療装置400を構成することができる。
【0135】
第9の実施形態に係る超音波治療装置を用いて内視鏡型超音波診断治療装置400を構築しても、第2の実施形態と同様に動作し、同様の効果を得ることができる。
[第10の実施形態]
次に、本発明の第10の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る超音波治療装置は、超音波射出部110に、第8の実施形態の超音波射出部110と同様に、場所によって厚みが異なる圧電素子を用いている。そして、本実施形態に係る超音波治療装置を制御及び駆動する超音波治療装置制御部200は、第4の実施形態の超音波治療装置制御部200と同じく、図18を参照して説明した構成により、差音によるパラメトリック効果を用いた方法で、制御及び駆動する。
【0136】
本実施形態に係る超音波射出部110は、図32(a)にその断面図、図32(b)にその下面側の平面図を示す様に、上面は凹面形状で下面は平面形状の、プラノコンケーブ形の圧電素子を用いる。第8の実施形態に係る超音波素子610との違いは下面の電極の形状である。即ち、本実施形態に係る超音波素子620は、プラノコンケーブ形の圧電素子621の上面に例えば接地用の電極622が形成されている。そして、圧電素子621の下面に例えば信号用の第1の電極623及び第2の電極624が同心円状に形成されている。この様な構成の超音波素子620の、第1の電極623には、超音波治療装置制御部200の第1の信号発生部232を接続し、第2の電極624には、第2の信号発生部234を接続している。この様に、例えば第1の電極623は、第1の駆動信号が入力される第1の駆動電極として機能し、例えば第2の電極624は、第2の駆動信号が入力される第2の駆動電極として機能する。
例えば図32の様に超音波素子620が形成されている場合、第1の電極623に高周波数の信号を、第2の電極624に低周波数の信号を入力すると、超音波素子620の中心部は、第1の電極623に入力した周波数で振動し、周辺部は、第2の電極624に入力した周波数で振動する。
【0137】
超音波治療装置制御部200は、第4の実施形態の場合と同様に動作する。即ち、超音波治療装置制御部200の駆動変数設定部210は、入力部250から入力された操作者の指示に基づいて、超音波を照射したい目標位置及び目標物に応じて、搬送波及び変調波の周波数を決定し、それを実現する第1の信号発生部232が発生する信号の周波数f1、振幅A1、及び初期位相θ1、並びに、第2の信号発生部234が発生する信号の周波数f2、振幅A2、及び初期位相θ2を決定する。この際、駆動変数設定部210は、出力情報記憶部215に記憶してある周波数情報を用いる。駆動変数設定部210は、決定したf1、f2、A1、A2、θ1、及びθ2を駆動指示部220に出力する。
【0138】
駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力された値に基づいて、第1の信号発生部232に周波数f1、振幅A1及び初期位相θ1の信号を出力するように、また、第2の信号発生部234に周波数f2、振幅A2及び初期位相θ2の信号を出力するように信号の発生の指示を出力する。第1の信号発生部232は、発生した信号を第1の電極623に出力する。同様に第2の信号発生部234は、発生した信号を第2の電極624に出力する。
【0139】
すると、超音波素子620からは、圧電素子621の振動によって、超音波が発生する。発生した超音波は、被験体内に照射される。その結果、超音波を照射された被験体内において、第4の実施形態と同様に、パラメトリック効果によって、差音であるΔf=|f1−f2|の周波数を有する超音波が発生する。
【0140】
以上の様に構成する本実施形態に係る超音波治療装置に依れば、第4の実施形態及び第8の実施形態と同様に、超音波射出部110の構成に関わらず、対象物に応じた周波数の超音波を照射することができる。また、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することにより、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。更に、高周波数の超音波を用いて伝播することで、ビームパターンが鋭くなるというメリットもある。
【0141】
尚、超音波素子610の圧電素子611は場所によって厚みが異なれば良く、第1の電極623及び第2の電極624が別々に形成されていれば良い。従って、例えば、図33に示す様に、2分割して第1の電極623及び第2の電極624を形成しても良い。その場合も同様の効果が得られる。また、第8の実施形態と同様に、例えば、図34に示す様な形状でも良く、その場合も同様の効果が得られる。
【0142】
また、第10の実施形態に係る超音波治療装置を用いて、第2の実施形態で説明した内視鏡型超音波診断治療装置400を構成することができる。
第10の実施形態に係る超音波治療装置を用いて内視鏡型超音波診断治療装置400を構築しても、第2の実施形態と同様に動作し、同様の効果を得ることができる。
【0143】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても、発明が解決しようとする課題の欄で述べられた課題が解決でき、かつ、発明の効果が得られる場合には、この構成要素が削除された構成も発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0144】
100…先端部、110…超音波射出部、200…超音波治療装置制御部、210…駆動変数設定部、215…出力情報記憶部、220…駆動指示部、232…第1の信号発生部、234…第2の信号発生部、236…加算部、242…搬送波信号発生部、244…変調部、250…入力部、310…静電容量型振動子(cMUT)、311…下部基板、312…下部電極、313…誘電体膜、314…空隙、315…メンブレン支持部、316…メンブレン、317…上部電極、318…ヘッド部、320…cMUTアレイ、322…cMUTアレイ、324…cMUTアレイ、400…内視鏡型超音波診断治療装置、410…超音波装置、420…超音波プローブ、422…プローブ挿入管、424…接続部、430…プローブ接続ユニット、432…連結部、434…コネクタ、440…超音波制御ユニット、441…超音波装置制御部、442…目標位置取得部、443…回転制御部、445…画像取得用信号制御部、446…受信部、447…画像取得部、450…超音波画像表示装置、455…入力部、460…内視鏡装置、470…電子内視鏡、472…挿入部、474…操作部、475…アングルノブ、476…操作スイッチ、477…ユニバーサルコード、478…内視鏡コネクタ、479…電気コネクタ、480…湾曲部、481…処置具挿入口、482…硬質部、483…先端面、484…照明光窓、485…観察窓、486…鉗子出口、492…光源装置、494…ビデオプロセッサ、495…映像ケーブル、496…内視鏡画像表示装置、510…円弧形すだれ状電極トランスデューサ(F−IDT)、512…すだれ状電極、520…IDT、521…ニオブ酸リチウム基板、522…すだれ状電極、530…F−IDT、531…ニオブ酸リチウム基板、532…すだれ状電極、533…すだれ状電極、534…すだれ状電極、610…超音波素子、611…圧電素子、612…電極、613…電極、620…超音波素子、621…圧電素子、622…電極、623…第1の電極、624…第2の電極、810…中心部、820…画像取得可能範囲、830…対象物。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、治療手技の一つとして、超音波照射装置による目標組織への超音波照射によって、当該組織を構成する細胞を破壊したり、当該組織を発熱させて当該組織を凝固させたりする処置がある。この様な処置に用いられる超音波治療装置が、例えば特許文献1に開示されている。また、超音波の伝搬距離は、超音波の周波数に依存して異なることが知られている。例えば前記特許文献1にも、超音波を照射したい位置によって、超音波発生素子を交換し、照射する超音波の周波数を異ならせることが開示されている。
また、前記の様な超音波照射による処置において、超音波造影剤として用いられる様なマイクロバブルを超音波照射部に投与し、超音波照射によって当該マイクロバブルを振動または破裂させると、そのキャビテーションの効果により、当該処置の効率が上昇することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−113254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の様な超音波照射装置を、例えば内視鏡システムに組み込む等、小型化する必要がある場合、超音波の発生源を小型化せざるを得ない。しかし、超音波の発生源を小型化すると、それに伴い発生する超音波の周波数が高くなる。その結果、例えば前記マイクロバブルを破裂させる為にはマイクロバブルの共振周波数を照射するのが良いという様に、標的に応じて照射したい適切な超音波の周波数と、超音波素子の出力周波数が不一致になるという課題がある。また、標的に応じて超音波の周波数を設定することを優先させると、超音波の減衰の周波数依存性を考慮することができなくなるという課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、標的に応じた適切な周波数の超音波を標的に照射でき、且つ超音波の減衰の周波数依存性を考慮することができる超音波治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を果たすため、本発明の超音波治療装置の一態様は、超音波を放射する音源と、前記音源を駆動するための駆動信号を発生する駆動信号発生部と、前記音源に対する治療対象部の目標位置に応じて第1の信号周波数及び第2の信号周波数を設定する周波数設定部と、を具備し、前記駆動信号発生部は、前記音源に前記超音波として前記周波数設定部が設定した前記第1の信号周波数と第2の信号周波数とを含む有限振幅音波を放射させる駆動信号を発生することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に依れば、第1の信号周波数と第2の信号周波数とを含む有限振幅音波を放射することによって、標的に応じた適切な周波数の超音波を標的に照射でき、且つ超音波の減衰の周波数依存性を考慮することができる超音波治療装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る超音波治療装置の構成例を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る超音波射出部を構成するcMUTアレイの一例を示す平面図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る超音波射出部を構成するcMUTの一例を示す(a)断面図と(b)平面図。
【図4】本発明の第1の実施形態に超音波治療装置の出力の周波数特性を説明する為の図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る超音波射出部を構成するcMUTの一例を示す断面図。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る超音波射出部を構成するcMUTの一例を示す断面図。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る超音波射出部を構成するcMUTアレイの一例を示す平面図。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る出力情報記憶部が記憶する、目標位置の深さと出力周波数関係を表すテーブルの一例を示す図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置の構成例を示す図。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置の超音波制御ユニット及びその関連部の一実施形態の構成例を示すブロック図。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る超音波装置によって取得される画像を説明する為の図。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る超音波射出部を構成するcMUTアレイの一例を示す(a)平面図及び(b)断面図。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る超音波装置によって取得される画像を説明する為の図。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る超音波射出部によって出力する超音波の位相と焦点位置の関係を説明する為の図。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る先端部の構成の一例を示す図。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る超音波治療装置の構成例を示すブロック図。
【図17】本発明の第4の実施形態に係る超音波治療装置が発生する超音波の照射範囲と、それらが重畳された領域で発生する差音を説明するための図。
【図18】本発明の第4の実施形態に係る超音波治療装置の構成例を示すブロック図。
【図19】本発明の第4の実施形態に係る超音波治療装置が発生する超音波の照射範囲と、それらが重畳されて差音が発生する領域を説明する為の図。
【図20】本発明の第2の実施形態に係る超音波射出部を構成するcMUTアレイの一例を示す(a)平面図及び(b)断面図。
【図21】本発明の第4の実施形態に係る超音波治療装置が発生する超音波の照射範囲と、それらが重畳されて差音が発生する領域を説明するための図。
【図22】本発明の第4の実施形態に係る超音波治療装置が発生する超音波の照射範囲と、それらが重畳されて差音が発生する領域を説明するための図。
【図23】本発明の第5の実施形態に係る超音波射出部を構成する円弧形すだれ状電極トランスデューサの一例を示す(a)平面図と(b)断面図。
【図24】本発明の第5の実施形態に係る超音波治療装置が発生する超音波の焦点の位置を説明するための図。
【図25】本発明の第5の実施形態に係る超音波治療装置が発生するSAWの焦点の位置とBAWの焦点の位置を説明するための図。
【図26】本発明の第5の実施形態に係る超音波射出部を構成するすだれ状電極トランスデューサの一例を示す平面図。
【図27】本発明の第7の実施形態に係る超音波射出部を構成する円弧形すだれ状電極トランスデューサの一例を示す平面図。
【図28】本発明の第7の実施形態に係る超音波治療装置が発生する超音波の焦点の位置を説明するための図。
【図29】本発明の第7の実施形態に係る超音波射出部を構成する円弧形すだれ状電極トランスデューサの一例を示す平面図。
【図30】本発明の第8の実施形態に係る超音波射出部を構成する超音波素子の一例を示す断面図。
【図31】本発明の第8の実施形態に係る超音波射出部を構成する超音波素子の一例を示す断面図。
【図32】本発明の第10の実施形態に係る超音波射出部を構成する超音波素子の一例を示す(a)断面図と(b)平面図。
【図33】本発明の第10の実施形態に係る超音波射出部を構成する超音波素子の一例を示す(a)断面図と(b)平面図。
【図34】本発明の第10の実施形態に係る超音波射出部を構成する超音波素子の一例を示す(a)断面図と(b)平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る超音波治療装置は、例えば細胞を破壊すること、或いは組織を発熱させて当該組織を凝固させたりすることで治療を行う処置に用いるため、所望の周波数の超音波を、目的位置に照射する装置である。例えば、細胞を破壊するためには、細胞に直接超音波を照射してそのエネルギーにより細胞を破壊する等しても良いし、超音波造影剤等として用いられるマイクロバブルを超音波照射の対象部に投与し、当該マイクロバブルを超音波照射により破裂させ、その破裂の際に発生するキャビテーションのエネルギーにより細胞を破壊等しても良い。
【0010】
本実施形態に係る超音波治療装置の構成の概要を図1に示す。本超音波治療装置は、先端部100と、超音波治療装置制御部200と、入力部250とを有する。先端部100は、例えば円筒形状をしており、その円周面の一部には、当該超音波照射装置が射出する超音波の音源となる超音波射出部110が設置されている。超音波治療装置制御部200は、駆動変数設定部210と、出力情報記憶部215と、駆動指示部220と、第1の信号発生部232と、第2の信号発生部234と、加算部236とを有する。
【0011】
入力部250は、超音波を照射する目標位置や照射する超音波の強度等に関する操作者の指示を入力する。入力部250は、入力した操作者の指示を駆動変数設定部210に出力する。駆動変数設定部210は、入力部250から入力された情報に基づいて、出力情報記憶部215から周波数情報を読み出し、それに基づき第1の信号発生部232と、第2の信号発生部234によって発生され超音波射出部110から射出される超音波の周波数、振幅、及び初期位相を算出し決定する。駆動変数設定部210は、決定した超音波の周波数、振幅、及び初期位相を、駆動指示部220に出力する。
【0012】
出力情報記憶部215は、後述の周波数情報等を記憶しており、駆動変数設定部210の要求に応じて記憶している周波数情報を、駆動変数設定部210に出力する。駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力された超音波の周波数、振幅、及び初期位相に基づいて、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234に、超音波の周波数、振幅、及び初期位相に応じた信号の発生の指示を出力する。
【0013】
第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234はそれぞれ、駆動指示部220から入力された超音波発生の指示に基づいて、信号を生成し、それを加算部236に出力する。加算部236は、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234からの入力を加算し、その結果生成される加算信号である駆動信号を、超音波射出部110に出力する。加算部236としては、例えばOPアンプを用いた一般的な加算回路が挙げられる。これにより、異なる周波数の駆動信号を重畳することができ、その駆動信号により音源を駆動することができるようになる。
この様に、例えば超音波射出部110は、周波数設定部が設定した第1の信号周波数と第2の信号周波数とを含む有限振幅音波を放射する音源として機能し、例えば駆動変数設定部210は、音源に対する治療対象部の目標位置に応じて第1の信号周波数及び第2の信号周波数を設定する周波数設定部として機能し、例えば第1の信号発生部232、第2の信号発生部234及び加算部236は、音源を駆動するための駆動信号を発生する駆動信号発生部として機能し、例えば出力情報記憶部215は、目標位置と第1の信号周波数及び第2の信号周波数とを対応付けて記憶する周波数情報記憶部として機能し、例えば入力部250は、目標位置を入力する位置情報入力部として機能し、例えば第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234は、前記周波数設定部が設定した第1の信号周波数を含む第1の駆動信号と前記周波数設定部が設定した第2の信号周波数を含む第2の駆動信号とを発生する信号発生部として機能し、例えば加算部236は、第1の駆動信号と第2の駆動信号とを加算して加算駆動信号を作成する加算部として機能する。
【0014】
次に、本実施形態に係る超音波射出部110について説明する。本実施形態に係る超音波射出部110は、図2にその平面図を示す通り、複数の静電容量型振動子(capasitive Micromachined Ultrasonic Transducer;cMUT)310を並べたcMUTアレイ320である。
【0015】
一つのcMUT310は、例えば図3(a)に断面図、図3(b)に平面図を示す様な構造を有する。即ち、cMUT310は、例えばシリコンから成る下部基板311の上に形成されている。下部基板311の上には、例えばPt/Tiから成る下部電極312が形成されている。下部電極312の材質は、Pt/Tiに限定されず、Au/Cr、Mo、W、リン青銅、Al等でも良い。下部電極312の上には、例えばSrTiO3から成る誘電体膜313が形成されている。誘電体膜313は、SrTiO3に限定されずBaTiO3、チタン酸バリウム・ストロンチウム、五酸化タンタル、酸化ニオブ安定化五酸化タンタル、酸化アルミニウム、TiO2等の高誘電率を有する材料を用いても良い。この誘電体膜313は、後述する空隙314を挟んで、上部電極317と下部電極312の間の静電容量を増加させる働きをする。
【0016】
誘電体膜313の上には、円筒形の空隙314を有する様に、例えばSiNから成るメンブレン支持部315が存在する。そして、空隙314及びメンブレン支持部315を覆う様に、例えばSiNから成るメンブレン316が形成されている。メンブレン316の上には、下部電極312と同様に例えばPt/Tiから成る、上部電極317が形成されている。
【0017】
上部電極317の上には、空隙314よりも小さい径の凸型のヘッド部318が設けられている。ヘッド部318は、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)から構成されており、半導体プロセスによりメンブレン316と比較して厚膜となっている。ヘッド部318は、TEOSに限らず、SiN、SiO2、ポリイミド等、半導体プロセスによく用いられる他の材料でも良い。また、複数の材料で多層膜となっていてもよい。
【0018】
この様な構成を有するcMUT310は、上部電極317及び下部電極312に電圧を印加することで電極間に引力が働き、電圧の印加を停止すると元に戻る。周期的な電圧印加動作によってメンブレン316及びその上に形成されたヘッド部318が振動する。その結果、有限振幅の超音波が照射される。従って、上部電極317及び下部電極312に印加する電圧の周波数を様々に変えることで、様々な周波数の超音波を出力することができる。
【0019】
cMUT310は、空隙314を覆うように存するメンブレン316部分が軟らかく、上部電極317及びヘッド部318は比較的高い剛性を有している。従って、ヘッド部318は比較的硬く、その周囲は比較的軟らかい構造となっている。このため、下部電極312と上部電極317に電圧を印加した際のメンブレン316の振動変位の方向は、ヘッド部318の凸部の上部面の法線方向に統一される。即ち、ヘッド部318を有さないcMUTのメンブレンが屈曲振動を行うのに対して、ヘッド部318を有するcMUT310のメンブレン316は、擬似的に厚み縦振動のような一方向への振動となり、上部電極317部分及びその上のヘッド部318が、ピストン振動様に振動することが可能である。このため、射出される超音波の指向性が上昇し、目標位置で高い音圧効果が得られる。更に、この様な構成により、メンブレン316が屈曲しながら振動することで生じる高調波振動等、不要な振動を低減させることができる。
【0020】
前記の様な構成を有するcMUT310は、図4にその周波数特性を示す通り、一点鎖線で表した中心周波数を中心に、広い周波数範囲で安定した出力を有している。前記中心周波数は、例えば十数MHz〜数十MHzであり、その帯域は、例えば50〜100%である様に設計されている。また、cMUT310はその製造工程の安定性からデバイス間のばらつきが小さいという特徴も有する。
【0021】
尚、ヘッド部318の形状は、図5に示す通り、傾斜を設けた形状でも良い。この様に傾斜が存する場合、超音波の射出方向は、傾斜面の法線方向、つまり、下部基板311に対して斜め方向となる。
また、cMUT310は、図6に示す様に、空隙314の形状を変更しても良い。即ち、下部基板311の面と平行な面における断面積が、下部電極312側と上部電極317側とで異なる様にしても良い。この様な形状にすることによって、図3に示すcMUTの様に空隙314が円筒形状をしている場合に比べて、出力超音波の更なる広帯域化を実現できる。
【0022】
また、cMUT310の平面形状は、前記の様に四角形でなく、図7に示す様に例えば六角形等、その他多角形の形状でも良く、それを並べてcMUTアレイ320を形成しても良い。ヘッド部318の平面形状も円形に限らない。
cMUTアレイ320は、前記cMUT310を多数並べたものであり、各cMUT310の下部電極312は、互いに接続されている。同様に、上部電極317は、互いに接続されている。従って、全cMUT310は一斉に振動する。この様なcMUT310によって構成されるcMUTアレイ320を有する超音波射出部110は、加算部236から入力された加算信号によって超音波を出力する。
【0023】
ここで、本実施形態に係る超音波治療装置による目的部位への超音波照射について説明する。当該超音波治療装置の1つの使用用途は、例えば超音波照射によって細胞を破壊することである。例えば、細胞を破壊したい部分にマイクロバブルを投与し、超音波照射によってマイクロバブルを破裂させると、マイクロバブルの破裂により発生するキャビテーションのエネルギーで、効率良く周囲の細胞を破壊できることが知られている。この様にマイクロバブルを破裂させる場合には、照射する超音波の周波数は、マイクロバブルの共振周波数に近い値に設定すると効率的であり、市販の超音波造影剤などをマイクロバブルとして用いる場合には、1〜2MHz程度が適当である。
【0024】
また、一般に、物質内を伝播する超音波は、その周波数が高いほど減衰が大きい。前記の通りcMUT310を用いると、射出する超音波の周波数を変化させることができる。従って、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、最適な周波数を選択すれば、目標位置まで超音波を伝播させることができる。
【0025】
前記事実を鑑みて、本実施形態に係る超音波治療装置では、射出する超音波の周波数を以下の様に考える。例えば、第1の信号発生部232が発生する信号の周波数をf1、角周波数をω1、振幅をAとする。また、第2の信号発生部234が発生する信号の周波数をf2、角周波数をω2、振幅をAとする。ここで、f1とω1及びf2とω2には以下の関係がある。
ω1=2πf1
ω2=2πf2
加算部236は、第1の信号発生部232が発生する信号と第2の信号発生部234が発生する信号を入力し、それらを加算する。この例では、第1の信号発生部232が発生する信号と第2の信号発生部234が発生する信号の初期位相が一致していれば、加算部236で生成される加算信号x(t)は下記式(1)で表される。
【0026】
【数1】
ここで、x(t)=2Acos(((ω1+ω2)/2)t)を搬送波、x(t)=cos(((ω1−ω2)/2)t)を変調波と呼ぶ。式(1)で表される加算信号x(t)により超音波射出部110が発生する超音波を被験体に照射すると、搬送波の周波数の超音波によって変調波の周波数の超音波が伝搬されることになる。従って、前記の通り、マイクロバブルを破裂させるため1〜2MHzの超音波を目標位置に照射したい場合には、変調波の周波数Δf=|f1−f2|=(|ω1−ω2|)/2πが1〜2MHzとなる様に、f1及びf2を決定すれば良い。
【0027】
また、前記の通り、物質内を伝播する超音波は周波数が高いほど減衰が大きいので、目標位置が超音波の発生源である超音波射出部110から遠い(深い)場合には、搬送波の周波数(f1+f2)=(ω1+ω2)/2πが低くなる様に、一方、目標位置が超音波射出部110から近い(浅い)場合には、搬送波の周波数(f1+f2)=(ω1+ω2)/2πが高くなる様にf1及びf2を決定すれば良い。この決定の際、超音波射出部110から目標位置までの距離とその間に存在する物質の超音波吸収係数等に基づいて搬送波の周波数を決定することが望ましい。
【0028】
この様に、例えば式(1)で表される加算信号x(t)により超音波射出部110が発生する超音波を照射すると、音波を伝える媒質の非線形性のため、目標位置において、周波数Δf=|f1−f2|の変調波が発生するのと同等な効果が得られる。この様な効果を自己復調効果という。この自己復調効果が本実施形態において重要な点である。即ち、前記の変調波の周波数と搬送波の周波数を同時に満足するf1及びf2を決定することで、当該超音波治療装置は、目標位置の深さの違いに関わらず、目標周波数の超音波を目標位置に照射することができる。尚、本実施形態においてf1及びf2の値の決定は、駆動変数設定部210が行う。
【0029】
前記説明で用いた式(1)は一例であり、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234から出力される信号を用いることで、搬送波と変調波の積となる加算信号を生成するものであれば良い。そのため、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234が発生する信号の振幅は、それぞれA1及びA2であり、これらは異なっていても良い。また、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234が発生する信号の初期位相に差があっても良い。
【0030】
次に、本実施形態に係る超音波治療装置の動作を説明する。本超音波治療装置の使用に際しては、先端部100の超音波射出部110を、超音波を照射する対象である被験体(音響伝搬媒質)に、音響インピーダンスを整合するための音響整合層を挟んで或いは直接に接触させる。音響整合層は、例えば脱気水を入れた水袋や、超音波診断装置又は超音波治療装置で一般に用いられる樹脂やゼリー状の物質から成る音響整合材等である。
【0031】
そして、超音波射出部110を被験体に当てた状態で、入力部250から入力された操作者の指示に基づいて超音波を発生させる。入力部250によって、操作者は超音波を照射する目標位置を指定することができる。このとき、超音波治療装置制御部200の駆動変数設定部210は、入力部250から入力された操作者が指示する目標位置及び目標物に応じて、前記の通り、搬送波及び変調波の周波数を決定し、それを実現する第1の信号発生部232が発生する信号の周波数f1、振幅A1、及び初期位相θ1、並びに、第2の信号発生部234が発生する信号の周波数f2、振幅A2、及び初期位相θ2を決定する。この際、駆動変数設定部210は、出力情報記憶部215に記憶してある周波数情報を用いる。
【0032】
出力情報記憶部215は、例えば図8に模式的に示す様な、Δf=|f1−f2|毎に用意された目標位置の深さXに応じたf1及びf2の組み合わせの情報を含むテーブルを記憶している。駆動変数設定部210は、目標位置及び目標物に応じて、出力情報記憶部215から必要なテーブルを読み出し、それに基づいてf1及びf2の組み合わせを決定する。図8に示したテーブルは勿論一例であり、目標位置の深さXに応じたf1及びf2の組み合わせを表すテーブルならばどのようなものでも良い。また、X、f1、及びf2の関係の一部又は全部を関数で表すようにし、その関数に基づいて駆動変数設定部210が算出するように構成しても良い。
この様に出力情報記憶部215が目標位置の深さXに応じたf1及びf2の組み合わせを予め記憶しておくことによって、駆動変数設定部210は、速やかに目標位置及び目標物に応じてf1及びf2の組み合わせを決定することができる。
【0033】
また、出力情報記憶部215は、使用状況に応じた第1の信号発生部232が発生する超音波の振幅A1や初期位相θ1及び第2の信号発生部234が発生する超音波の振幅A2や初期位相θ2に関するテーブルも記憶しておく。
駆動変数設定部210は、決定したf1、f2、A1、A2、θ1、及びθ2を駆動指示部220に出力する。駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力された値に基づいて、第1の信号発生部232に周波数f1、振幅A1及び初期位相θ1の信号を出力するように、また、第2の信号発生部234に周波数f2、振幅A2及び初期位相θ2の信号を出力するように、それぞれ信号の発生を指示する。
【0034】
第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234はそれぞれ、駆動指示部220から入力された超音波発生の指示に基づいて信号を生成し、生成した信号を加算部236に出力する。加算部236は、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234からの入力を加算し、例えば式(1)で表される加算信号である駆動信号を、超音波射出部110に出力する。
【0035】
超音波射出部110のcMUTアレイ320を構成する各cMUT310は、加算部236から入力された駆動信号により、ヘッド部318を振動させて超音波を射出する。その結果、被験体内を、前記の通り目標位置において周波数Δf=|f1−f2|の超音波が自己復調されることになる超音波が伝播する。
【0036】
本実施形態に係る超音波治療装置に依れば、cMUTの特性と素子の小型化のため、出力する超音波の周波数が、例えば中心周波数は十数MHz〜数十MHzという様に、高周波数とならざるを得ない超音波射出部110を用いても、例えばマイクロバブルの共振周波数である1〜2MHz等の超音波を照射することができる。この様に、超音波射出部110の構成に関わらず、対象物に応じた周波数の超音波を照射することができる。また、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することにより、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。更に、高周波数の超音波を用いて伝播することで、ビームパターンが鋭くなるというメリットもある。
【0037】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。ここで本実施形態の説明では、前記第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。本実施形態は、第1の実施形態に係る超音波治療装置を有する内視鏡型超音波治療診断装置である。
【0038】
本実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置400は、図9に示す通り、第1の実施形態に係る超音波治療装置の先端部100を備えた細管状の超音波プローブ420を体腔内に挿入し、先端部100に設置された、図9には図示しない超音波射出部110から超音波を射出して、体腔内における所望の生体組織の超音波診断及び超音波治療を行うものである。超音波射出部110は、第1の実施形態で説明した通り、目標位置に超音波を照射し、そのエネルギーで当該目標位置の細胞を破壊する治療処置を行う機能を有する。それと共に、この治療処置動作の前後及び治療処置最中において、治療対象である目標位置近傍の生体組識の超音波診断を行う機能を備えている。
【0039】
即ち、本実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置400は、図9に示す様に超音波装置410と内視鏡装置460等によって主に構成されている。超音波装置410は、図9には図示しない超音波射出部110を先端部100に内蔵した細長形状のプローブ挿入管422を備えた超音波プローブ420を有する。
【0040】
超音波プローブ420は、プローブ接続ユニット430を介して、超音波制御ユニット440と接続している。超音波プローブ420とプローブ接続ユニット430の接続は、超音波プローブ420の基端部に設けられる接続部424とプローブ接続ユニット430の連結部432とで着脱自在に行われる。また、プローブ接続ユニット430と超音波制御ユニット440の接続は、プローブ接続ユニット430のコネクタ434によって行われる。超音波制御ユニット440は、第1の実施形態における超音波治療装置制御部200を含む、超音波プローブ420の制御を行う部分である。
【0041】
また、超音波装置410は、超音波制御ユニット440により取得・生成される映像信号を入力し、超音波断層画像を表示する超音波画像表示装置450を有する。また、超音波装置410は、操作者の入力を受け付ける入力部455を有する。
一方、前記内視鏡装置460は、撮像装置を内蔵した電子内視鏡470と、この電子内視鏡470に照明光束を供給する光源装置492と、電子内視鏡470の図示しない撮像素子を駆動させたり、当該撮像素子から伝送される電気信号を受信して各種の信号処理を行い、内視鏡観察画像を表示するための映像信号を生成したりするビデオプロセッサ494と、このビデオプロセッサ494により生成され出力される映像信号を受けて内視鏡観察画像を表示する内視鏡画像表示装置496とを有する。
【0042】
電子内視鏡470は、体腔内に挿入される細長形状の挿入部472と、この挿入部472の基端側に配置される操作部474と、この操作部474の側部から延出するユニバーサルコード477とによって主に構成されている。
前記ユニバーサルコード477の先端部には光源装置492に接続される内視鏡コネクタ478が設けられている。この内視鏡コネクタ478の側部には電気コネクタ479が設けられている。この電気コネクタ479にはビデオプロセッサ494から延出される映像ケーブル495が接続されている。
【0043】
挿入部472は、先端側に湾曲部480が設けられており、この湾曲部480のさらに先端側に硬質部482が設けられている。この硬質部482の先端面483には直視による内視鏡観察を行うための照明光窓484と観察窓485と鉗子出口486等が設けられている。
【0044】
前記操作部474には、前記挿入部472の湾曲部480を湾曲制御するアングルノブ475や、前記内視鏡画像表示装置496の表示画面上に表示させる表示画像を切り換えたりフリーズ操作やレリーズ操作等の各種の操作指示を行ったりする複数の操作スイッチ476や、体腔内に導入される処置具等の導入口であり前記鉗子出口486に連通する処置具挿入口481等が設けられている。
【0045】
次に、超音波制御ユニット440について説明する。本実施形態に係る超音波装置410は、内視鏡装置460と組み合わされることで、体腔内で、第1の実施形態で説明した通り、目標位置に超音波を照射する処置に用いることができる。また、超音波射出部110のcMUTアレイ320を用いて、超音波の射出と受信を行うことで、超音波画像診断装置としての機能も実現することができる。
【0046】
当該超音波装置410を制御する超音波制御ユニット440は、図10に示す通り、第1の実施形態で説明した超音波治療装置制御部200を有する。また、超音波制御ユニット440は、超音波制御ユニット440の全体を制御する超音波装置制御部441と、目標位置取得部442と、回転制御部443と、画像取得用信号制御部445と、受信部446と、画像取得部447とを有する。
【0047】
超音波装置410が、体腔内の様々な方向の画像取得及び超音波照射を行うために、先端部100は図示しない回転駆動部によって回転することができる。この回転のため、目標位置取得部442は、超音波装置制御部441から超音波を照射する方向を取得し、回転制御部443に出力する。回転制御部443は、目標位置取得部442から入力された超音波の照射方向に応じて、前記図示しない回転駆動部の動作を制御する。また、目標位置取得部442は、超音波治療のための超音波照射の目標位置を超音波装置制御部441から取得し、それを駆動変数設定部210に出力する。駆動変数設定部210は、目標位置取得部442から入力された目標位置に基づいて、第1の実施形態で説明した通り、照射する超音波の周波数を決定する。
【0048】
超音波画像診断は、一般に知られている方法で行う。このため、画像取得用信号制御部445は、画像診断に適切な超音波パルスの各種パラメータを決定し制御する。画像取得用信号制御部445は、決定した値を駆動指示部220に出力する。駆動指示部220は、純音の超音波を用いる場合には、第1の信号発生部232のみを用いる様に、第1の実施形態の場合と同様に信号発生の指示を出力する。
【0049】
超音波画像診断においては、超音波射出部110の各cMUT310が受信素子として働く。このcMUT310が受けた信号を受信部446が信号として取得する。受信部446は、取得した信号を画像取得部447に出力する。画像取得部447は、受信部446から入力された信号に基づいて、一般に知られている方法で超音波画像を構築する。画像取得部447は、構築した画像を、超音波装置制御部441に出力する。
【0050】
超音波装置制御部441は各種演算を行い、各部を制御する。また、入力部455からの入力を受け取る。また、画像取得部447から入力された超音波画像を超音波画像表示装置450に出力する。
この様に、例えば画像取得用信号制御部445は、画像取得用射出超音波信号を設定する画像取得信号設定部として機能する。
【0051】
次に、本実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置400の動作を説明する。内視鏡装置460は、一般に知られている内視鏡装置であり、本発明とは直接関係しないので、その説明は省略する。操作者は処置において挿入部472を被験者の体腔に挿入し、その先端を、診断及び治療を行いたい被験体の位置に到達させる。尚、処置に際しては、マイクロバブルを投与しておく。
【0052】
プローブ挿入管422は、内視鏡装置460の処置具挿入口481から挿入され、挿入部472内を通り、先端部100が鉗子出口486から延出する。診断及び治療を行いたい位置において、超音波装置制御部441は、超音波画像診断を行うために各部を指令する。
【0053】
即ち、超音波装置制御部441は、目標位置取得部442に画像取得を行いたい角度を出力する。目標位置取得部442は、超音波装置制御部441から入力された画像取得を行いたい角度を、回転制御部443に出力する。回転制御部443は、目標位置取得部442から入力された値に基づいて、図示しない回転駆動部を制御する。例えば、先端部100の全円周の画像の取得が求められている場合、回転制御部443は、画像取得に必要な時間を考慮して、例えば一定速度で連続的に先端部100を回転させるように回転駆動部を制御する。また、例えば先端部100の全円周ではなく、ある円周角度内の画像の取得が求められている場合は、回転制御部443は、先端部100を回転方向に繰り返し往復させても良い。
【0054】
前記の通り、先端部100を回転させながら、超音波装置410は、超音波画像を取得する。即ち、超音波装置制御部441の指令に基づいて、画像取得用信号制御部445は、超音波画像取得用の超音波出力を制御する。例えば、出力する超音波は、周波数が5〜20MHz程度であり、パルス幅が数μ秒程度の高周波パルス波等とする。これらの情報を画像取得用信号制御部445は、駆動指示部220に出力する。
【0055】
超音波画像取得時には、発生する超音波は純音であるので、信号発生には第1の信号発生部232のみを用いる。即ち、駆動指示部220は、画像取得用信号制御部445から入力された値に基づいて、第1の信号発生部232に、信号を発生させる様に指示を出力する。第1の信号発生部232は、駆動指示部220の指示に基づいて、信号を発生し、その信号を加算部236に出力する。加算部236に入力される信号は、第1の信号発生部232が発生した信号のみなので、加算部236は、第1の信号発生部232から入力された信号をそのまま超音波射出部110に出力することになる。超音波射出部110は、加算部236から入力された信号によって、そのcMUT310のヘッド部318を振動させ、超音波を射出する。
【0056】
超音波射出部110から射出した超音波は、被験体中を伝播する。伝播する超音波は、被験体の音響特性に応じて、反射される。超音波射出部110のcMUT310は、この反射波をヘッド部318で捕らえる。即ち、反射波によってcMUT310は振動し、電圧が発生する。この電気信号を受信部446に出力する。
【0057】
受信部446は、超音波射出部110から電気信号を取得し、それを画像取得部447に出力する。画像取得部447は、受信部446から入力された信号に基づいて、一般に知られている方法で、被験体の内部画像を構築する。構築される画像は、それを模式的に表せば例えば、図11の様に成る。即ち、図11の例では、先端部100の全円周方向の被験体の内部構造が観察される。ここで中心部810は先端部100が存在するため画像化できない。また、射出した超音波が到達し、その反射波を検出できる範囲に応じて、画像取得可能範囲820が存在する。この図において、例えば対象物830の位置は、先端部100の姿勢により定義される軸に基づき回転角度θと先端部100の中心からの距離rによって位置を表すことができる。
【0058】
画像取得部447は、取得した画像を、超音波装置制御部441に出力する。超音波装置制御部441は、画像取得部447から入力された画像を、超音波画像表示装置450に出力する。超音波画像表示装置450は、超音波装置制御部441から入力された、例えば図11の模式図の様な超音波画像を表示する。
【0059】
操作者は、超音波画像表示装置450に表示された画像を確認しながら、処置対象の目標位置を決定する。入力部455は、操作者が決定した処置対象の目標位置の入力を受ける。また、操作者は、処置対象によって、照射したい超音波の周波数を決定する。入力部455は、操作者が決定した処置対象に照射したい超音波の周波数を受ける。ここで、入力部455は、キーボード、マウス、ジョイスティック等、一般的な入力手段で良い。
【0060】
入力部455は、操作者の指示を、超音波装置制御部441に出力する。超音波装置制御部441は、入力部455から入力された操作者の指示に基づいて、超音波射出部110から処置用の超音波を射出する様に制御する。即ち、超音波装置制御部441は、超音波画像取得のための、超音波の射出を停止させるように、画像取得用信号制御部445に指示を出力する。一方、超音波装置制御部441は、目標位置取得部442に、操作者から入力された目標位置を出力する。
【0061】
目標位置取得部442は、超音波装置制御部441から入力された目標位置に応じて、超音波射出部110を目標位置の方向に向けるように、先端部100を目標位置に向けるための回転角度(図11におけるθに係る値)を、回転制御部443に出力する。回転制御部443は、目標位置取得部442からの入力に基づいて、回転駆動部を制御し、超音波射出部110を目標位置の方向に向けるように、先端部100を回転させる。
【0062】
また、目標位置取得部442は、目標位置の超音波射出部110からの距離(図11におけるr)を、駆動変数設定部210に出力する。また、超音波装置制御部441は、入力部455から入力された処置対象の特性に応じて照射したい超音波の周波数を、駆動変数設定部210に出力する。駆動変数設定部210は、目標位置取得部442から入力された目標位置と、超音波装置制御部441から入力された照射したい超音波の周波数に基づいて、前記第1の実施形態の説明の通り、出力する超音波の周波数を算出する。その後は、第1の実施形態の説明の通り、目標位置に設定した周波数の超音波が伝播されることで、目標位置に所望の超音波が照射される。
【0063】
尚、超音波が照射され変形した組織は、照射前の組織に比べて、超音波の伝播効率が悪くなる。そのため、超音波照射にあたっては、奥(超音波射出部110から遠い側)から手前(超音波射出部110に近い側)に順に超音波を照射することが望ましい。
また、前記奥から手前へといった超音波照射の手順を、操作者の指示によらず行える様に、内視鏡型超音波診断治療装置400を構成しても良い。つまり、操作者が指定した超音波照射希望範囲に、所定の手順で順に超音波を照射する様に制御しても良い。即ち、操作者が指定した範囲に応じて、駆動変数設定部210は、例えば、出力する超音波の搬送波の周波数を低いものから高いものに徐々に変化させる様に制御しても良い。
【0064】
本実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置400に依れば、超音波装置410により、被験体の内部画像を取得しつつ、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。この際、超音波を照射したい目標位置に応じて、先端部100の回転角度を制御することができる。また、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することで、様々な目標位置に設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。その結果、例えばマイクロバブルのキャビテーションによる破壊エネルギーにより低エネルギー超音波で細胞破壊を確実に行うことができる。
【0065】
また、本実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置400に依れば、超音波射出部110を第1の実施形態で説明したと同様に駆動するので、画像取得用の周波数である5〜20MHzの超音波と、例えばマイクロバブルの共振周波数である1〜2MHz等の超音波とを同一の超音波発生素子を用いて発生することができる。
【0066】
[第2の実施形態の第1の変形例]
次に、前記第2の実施形態の第1の変形例について説明する。ここで本変形例の説明では、第2の実施形態との相違点について説明し、第2の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。第2の実施形態に係る先端部100は、回転制御部443や図示しない回転駆動部等により、超音波射出部110が円周方向に回転するように構成されている。
【0067】
これに対して本変形例では、超音波射出部110は、物理的には回転せずに、超音波を照射する向きを変更できる様に構成されている。即ち、図12にcMUTアレイ320の一部の拡大図の平面図を(a)に、図12(a)中のb−bにおける断面図を(b)に示す通り、本cMUTアレイ320は、当該cMUTアレイ320中における位置によって各cMUT310のヘッド部318の傾きが異なっている。そして、ヘッド部318の傾きが同じ物毎にグループを形成し、グループ毎にcMUT310の電極が接続されている。このため、超音波を射出するcMUT310のグループを選択することで、超音波の射出方向を変更することができる。この様な超音波の射出方向の変更は、超音波画像取得用の超音波においても、処置用の超音波においても用いることができる。この様な構成を有する内視鏡型超音波診断治療装置400に依れば、図11に相当する、得られる超音波画像は図13の様になる。しかし第2の実施形態と本質的な違いはない。
以上の様に構成した内視鏡型超音波診断治療装置400に依っても、第2の実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置400と同様の効果を得ることができる。
【0068】
また、第2の実施形態の場合と同様に、ヘッド部318の傾きが全て同じ超音波射出部110を用いて、フェーズドアレイによって超音波を照射する向きを変化させても良い。即ち、図14に、中段にcMUTアレイ320、下段に各cMUT310から射出する超音波の位相、及び上段に射出される超音波の波面を模式図で示す様に、超音波を射出するcMUT310の、cMUTアレイ320における位置に応じて、射出する超音波の位相をずらすことで、超音波を特定の方向に射出することができる。そこで、加算部236において、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234から入力された信号を加算した後に、cMUTアレイ320の各cMUT310に出力する前に、cMUTアレイの位置に応じた位相差を付加してから、駆動信号をcMUT310に出力する。この様に、フェーズドアレイを用いても、射出する超音波の照射方向を変化させることができる。
【0069】
この様な構成に依っても第2の実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置400と同様の効果を得ることができる。
尚、本変形例に係る構成は、内視鏡型超音波診断治療装置400に組み込む場合に限らず、第1の実施形態で説明した、超音波治療装置単独に用いることができることは勿論である。
【0070】
[第2の実施形態の第2の変形例]
次に、前記第2の実施形態の第2の変形例について説明する。ここで本変形例の説明では、第2の実施形態との相違点について説明し、第2の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。第2の実施形態に係る先端部100は、円筒形状をしており、その円周面の一部に超音波射出部110が設置されている。これに対して、図15に示す様に、本変形例の先端部100は、円筒形状をしているが、その先端面に超音波射出部110が配設されている。
【0071】
この先端部100の形状の違いに伴い、回転制御部443や図示しない回転駆動部等に代わって、先端部100の中心軸方向に対する超音波の照射角度を振る為の公知の機構を設けても良い。例えば、cMUTアレイ320の超音波射出面の向きを物理的に振る機構を設けても良い。また、第2の実施形態の第1の変形例で説明した通り、cMUT310のヘッド部318の角度を異ならせるようにして超音波の照射方向を変えるようにしても良い。また、フェーズドアレイにより、cMUTアレイ320から射出する超音波の向きを変更するようにしても良い。何れの場合においても、第2の実施形態と本質的な違いはない。
【0072】
以上の様に構成した内視鏡型超音波診断治療装置400に依っても、第2の実施形態に係る内視鏡型超音波診断治療装置400と同様の効果を得ることができる。
尚、第2の実施形態の説明においては内視鏡型超音波診断治療装置を例に挙げたが、超音波プローブ420や内視鏡装置460を変更することで、同様の構成で、腹腔鏡、術中型、体外型、及びその他の形態を構成することもできる。
【0073】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について図面を参照して説明する。ここで本実施形態の説明では、前記第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。第1の実施形態に係る超音波治療装置においては、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234が発生した信号を加算部236で加算することで、前記式(1)で表される様な信号を発生させている。これに対して、本実施形態においては、振幅変調によって第1の実施形態と同様の信号を発生させる。
【0074】
このため本実施形態に係る超音波治療装置は、図16に示す通り、超音波治療装置制御部200に、駆動変数設定部210と、出力情報記憶部215と、駆動指示部220と、搬送波信号発生部242と、変調部244とを有する。ここで駆動変数設定部210は、第1の実施形態の場合と同様に、入力部250からの入力に基づいて、出力情報記憶部215から周波数情報を読み出し、超音波射出部110から射出される超音波の各種パラメータを算出し決定し、駆動指示部220に出力する。駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力されたパラメータに基づいて、搬送波信号発生部242に信号発生の指示を出力し、変調部244に信号の変調の指示を出力する。搬送波信号発生部242は、駆動指示部220から入力された指示に基づき、搬送波信号を発生し、変調部244に出力する。変調部244は、搬送波信号発生部242から入力された搬送波信号を、駆動指示部220から入力された指示に基づいて変調し、生成された信号である駆動信号を超音波射出部110に出力する。尚、変調部244は一般的な変調回路である。この様に、例えば搬送波信号発生部242及び変調部244は、振幅変調により駆動信号を発生させる駆動信号発生部として機能する。
【0075】
次に、本実施形態に係る超音波治療装置の動作について説明する。出力情報記憶部215は、例えば超音波を照射する対象物と関係付けて変調波の周波数fmを記憶している。また、出力情報記憶部215は、超音波射出部110から超音波を照射する対象物間での距離(深さ)と関係付けて搬送波の周波数fcを記憶している。その他、出力情報記憶部215は、例えば超音波強度等、超音波射出部110が射出する超音波に関する情報を記憶している。
【0076】
入力部250からの入力に基づいて、駆動変数設定部210は、出力情報記憶部215に記憶されている情報を読み出し、読み出した情報に基づいて、超音波を照射する対象物や、対象物までの距離に応じて、変調部244が出力する信号x(t)、つまり超音波射出部110から超音波を射出させるための信号を決定する。変調部244が出力する信号x(t)は、例えば下記式(2)の様に表すことができる。
【0077】
【数2】
ここで、ωm=2πfm、ωc=2πfcである。尚、式(1)の場合と同様にこの例では、x(t)=Acos(ωct)が搬送波、x(t)=cos(ωmt)が変調波である。駆動変数設定部210は、決定した超音波射出部110から超音波を射出させるための信号、即ち変調部244が出力する信号x(t)の情報を、駆動指示部220に出力する。例えば、マイクロバブルを破裂させる目的のためには、fmは1〜2MHz程度とする等である。
【0078】
駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力された信号の情報に基づいて、搬送波信号発生部242に信号発生の指示を出力し、変調部244に信号の変調の指示を出力する。
搬送波信号発生部242は、駆動指示部220からの入力に基づいて、例えば前記式(2)においては、搬送波であるx(t)=Acos(ωct)の信号を生成する。搬送波信号発生部242は、生成した信号を変調部244に出力する。
【0079】
変調部244は、搬送波信号発生部242から搬送波を入力する。変調部244は、駆動指示部220からの入力に基づいて、例えば前記式(2)においては、変調波であるx(t)=cos(ωmt)の信号を生成し、この変調信号により、搬送波信号発生部242から入力した搬送波を変調する。その結果生成された駆動信号を、超音波射出部110に出力する。
【0080】
第1の実施形態の場合と同様に、本超音波治療装置の使用に際して、先端部100の超音波射出部110は、超音波を照射する対象である被験体(音響伝搬媒質)に、音響インピーダンスを整合するための音響整合層を挟んで或いは直接に接触させて用いる。超音波射出部110のcMUTアレイ320を構成する各cMUT310は、変調部244から入力された駆動信号により、ヘッド部318を振動させて、例えば式(2)で表される変調部244が出力する信号x(t)により超音波射出部110が発生する超音波を射出する。その結果、搬送波によって変調波の周波数を有する超音波が目標位置に伝搬されることと等しくなる。即ち、当該超音波照射により、目標位置において変調波の周波数の超音波が自己復調される。その結果、目標位置に変調波の周波数の超音波が照射される。
【0081】
本実施形態に係る超音波治療装置に依れば、第1の実施形態の場合と同様に、超音波射出部110の構成に関わらず、対象物に応じた周波数の超音波を照射することができる。また、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することにより、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。更に、高周波数の超音波を用いて伝播することで、ビームパターンが鋭くなるというメリットもある。
【0082】
[第3の実施形態の変形例]
第3の実施形態に係る超音波治療装置も、図12を参照して説明した第2の実施形態の第1の変形例と同様に、各cMUT310のヘッド部318の傾きを異なる様に構成しても良い。また、図14を参照して説明した第2の実施形態の第1の変形例と同様に、フェーズドアレイによって、超音波を射出する方向を変更できるように構成しても良い。また、第2の実施形態で説明した内視鏡型超音波診断治療装置400を、本実施形態又は前記変形例に係る超音波治療装置を用いて構成しても良い。以上の様な変形例によっても、それぞれ前記と同様の効果を得ることができる。
【0083】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について図面を参照して説明する。ここで本実施形態の説明では、前記第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。第1の実施形態に係る超音波治療装置においては、第1の信号発生部232が発生した周波数f1の信号と第2の信号発生部234が発生した周波数f2の信号を、加算部236で加算することで、前記式(1)で表される様な信号を発生させている。
【0084】
これに対して、本実施形態においては、超音波射出部110のcMUTアレイ320の超音波発生素子であるcMUT310を2つのグループに分ける。そして、図17に示す様に、第1のグループである第1のcMUTアレイ322からは周波数f1の超音波US1を発生させ、第2のグループである第2のcMUTアレイ324からは周波数f2の超音波US2を発生させる。その結果、両超音波が照射された空間において、第1のグループの超音波発生素子から射出された周波数f1の超音波US1と、第2のグループの超音波発生素子から射出された周波数f2の超音波US2とが重なり合う重畳空間P(図17における斜線で示した領域)において、音波を伝える媒質の非線形性によって、高調波や結合音が発生する。その結果、前記周波数f1の超音波US1と周波数f2の超音波US2の2つの超音波は重畳され、第1の実施形態において前記式(1)で表される加算信号x(t)により超音波射出部110が発生する超音波が照射された状態と実質的に同様の状態が発生する。即ち、Δf=|f1−f2|の周波数を有する超音波が、重畳空間Pにおいて生ずる。このような効果を、パラメトリック効果という。
【0085】
図18に、本実施形態に係る超音波治療装置の構成を示す。本超音波治療装置は、第1の実施形態と同様に、超音波治療装置制御部200は、駆動変数設定部210と、出力情報記憶部215と、駆動指示部220と、第1の信号発生部232と、第2の信号発生部234とを有する。各部の働きは、第1の実施形態と同様である。但し、本実施形態においては、第1の実施形態にはある加算部236が存在しない。本実施形態においては、第1の信号発生部232は、発生した周波数f1の信号を、超音波射出部110の第1のcMUTアレイ322に出力し、第2の信号発生部234は、発生した周波数f2の信号を超音波射出部110の第2のcMUTアレイ324に出力する。
【0086】
第1のcMUTアレイ322を構成する各cMUT310は、第1の信号発生部232から入力された駆動信号により、ヘッド部318を振動させて、周波数f1の超音波を射出する。一方、第2のcMUTアレイ324を構成する各cMUT310は、第2の信号発生部234から入力された駆動信号により、ヘッド部318を振動させて、周波数f2の超音波を射出する。尚、cMUTアレイ320のうち何れのcMUT310を第1のcMUTアレイ322として機能させ、何れのcMUT310を第2のcMUTアレイ324として機能させるかは任意である。この様に、例えば第1のcMUTアレイ322は、第1の駆動信号により駆動される第1の音源として機能し、例えば第2のcMUTアレイ324は、第2の駆動信号により駆動される第2の音源として機能する。
【0087】
前記の様な構成で動作させる結果、図19にその模式図を示す様に超音波が伝播されることになる。例えば、第1のcMUTアレイ322が射出する超音波US1の周波数f1を6MHzとし、第2のcMUTアレイ324が射出する超音波US2の周波数f2を5MHzとした場合、超音波の伝播領域が、図19(a)のようになるとする。このとき重畳空間Pにおいて生じる超音波の周波数Δfは1MHzである。一方、例えば、第1のcMUTアレイ322が射出する超音波US1’の周波数f1を21MHzとし、第2のcMUTアレイ324が射出する超音波US2’の周波数f2を20MHzとすると、前記の通り、周波数が高いほど減衰が大きく、超音波の到達距離が短くなるので、例えば超音波の伝播領域は図19(b)のようになる。この場合も重畳空間P’において生じる超音波の周波数Δfは1MHzとなる。この様に、いずれの場合にも重畳空間においてΔf=1MHzの超音波が生じる。一方、当該Δf=1MHzの超音波が生じる領域は、f1とf2の周波数によって異なる。
【0088】
この様に、本実施形態に係る超音波治療装置に依っても、第1の実施形態の場合と同様に、超音波射出部110の構成に関わらず、対象物に応じた周波数の超音波を照射することができる。また、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することにより、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。更に、高周波数の超音波を用いて伝播することで、ビームパターンが鋭くなるというメリットもある。
【0089】
[第4の実施形態の第1の変形例]
次に、前記第4の実施形態の第1の変形例について説明する。ここで本変形例の説明では、第4の実施形態との相違点について説明し、第4の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0090】
第4の実施形態について、図17を参照して説明した超音波射出部110は、超音波の射出面が平行であった。これに対して、本変形例の超音波射出部110の射出面は、図20(a)にその平面図、図20(b)に図20(a)におけるb−b部分の断面図を示す様に、超音波の射出面に傾きが設けられている。例えば、図20に示す通り、一点鎖線で示した中央線に対して、対象となる様に、各cMUT310のヘッド部318の傾きが異なるように設計されており、その傾きは、射出される超音波が収束する傾きとなっている。
【0091】
この様にcMUTアレイ320を設計すると、図21に模式図を示す通り、第1のグループの超音波発生素子から射出された周波数f1の超音波US1と、第2のグループの超音波発生素子から射出された周波数f2の超音波US2とが重なり合う重畳空間Pを、図21(a)に示す様な射出面が平行な場合と比較して、図21(b)の様に大きく取れる。このため、射出する超音波のエネルギーを効率よく用いることができる。
尚、何れのcMUT310を第1のcMUTアレイ322とし、何れのcMUT310を第2のcMUTアレイ324とするかは任意である。動作は、第4の実施形態に係る超音波治療装置と同じであり、同様の効果が得られる。
【0092】
[第4の実施形態の第2の変形例]
第4の実施形態に係る超音波治療装置も、図12を参照して説明した第2の実施形態の第1の変形例と同様に、各cMUT310のヘッド部318の傾きを異なる様に構成しても良い。この様に、各cMUT310のヘッド部318の傾きを異なる様に構成し、周波数f1の超音波US1を射出する第1のグループの超音波発生素子と、周波数f2の超音波US2を射出する第2のグループの超音波発生素子とを適切に選ぶことによって、様々な位置に超音波US1と超音波US2とが重なり合う重畳空間Pを形成することができる。
【0093】
例えば、図22に模式的に示す様に、「1」と記載したCMUT310から超音波US1を射出し、「4」と記載したCMUT310から超音波US4を射出すると、重畳空間P14において差音の超音波が生じる。一方、「3」と記載したCMUT310から超音波US3を射出し、「5」と記載したCMUT310から超音波US5を射出すると、重畳空間P35において差音の超音波が生じる。この様に、第1のグループの超音波発生素子と第2のグループの超音波発生素子との選択により、目標位置を変更することができる。
【0094】
また、図14を参照して説明した第2の実施形態の第1の変形例と同様に、フェーズドアレイによって、超音波を射出する方向を変更できるように構成しても良い。また、第2の実施形態で説明した内視鏡型超音波診断治療装置400を、本実施形態又はその各変形例に係る超音波治療装置を用いて構成しても良い。以上の様な変形例によっても、それぞれ前記と同様の効果を得ることができる。
【0095】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態について図面を参照して説明する。ここで本実施形態の説明では、前記第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
第1の実施形態に係る超音波治療装置においては、超音波射出部110に、cMUTアレイ320を用いている。これに対して本実施形態に係る超音波治療装置の超音波射出部110には、図23に示す様に、YカットZ伝搬のニオブ酸リチウム(LiNbO3)基板511上に、円弧形状のすだれ状電極512を形成した、円弧形すだれ状電極トランスデューサ(Focal−Interdigital Transducer;F−IDT)510を用いる。ここで、図23(a)はF−IDTの平面図、(b)はその断面図である。尚、IDTの動作原理については、「前沢、鎌倉、「弾性表面波素子を用いた励振モード切替による音響流の発生と攪拌への一応用」信学技報、Vol.109、No.17(2009)、PP.17−22」に説明されている。尚、本実施形態に係る超音波治療装置の構成は、超音波射出部110にF−IDTを用いていることを除くと、図1を参照して説明した第1の実施形態の構成と同様である。
【0096】
F−IDT510から成る超音波射出部110は、被験体(音響伝搬媒質)に接触させた状態で使用される。F−IDT510のすだれ状電極512に電圧を印加すると、すだれ状電極が振動し、ニオブ酸リチウム基板511の表面に表面弾性波(Surface Acoustic Wave;SAW)が発生する。SAWはニオブ酸リチウム基板511の表面に沿って伝搬し、次いで被験体へ放射される。尚、SAWの周波数は、数十MHz程度である。ここで、すだれ状電極512が図24に示す通り円弧形状をしているため、伝搬する超音波は、焦点Oを結ぶ。即ち、超音波のエネルギーを焦点Oに集中させることができる。ここで、ニオブ酸リチウム基板511のすだれ状電極512が形成されている面の法線に対して、超音波が放射される角度θSは、ニオブ酸リチウム基板511における超音波の伝搬速度と、被験体内における超音波の伝搬速度との比で決まる。この様に、すだれ状電極512の形状を扇形状と見なすと、超音波の進行方向は扇の要の方向となる。尚、噛み合わせている電極の対数を、例えば数対から数十対程度等、比較的少なくすることで出力周波数の帯域を広帯域化させることができる。
【0097】
ここで、本実施形態に係る超音波治療装置においても、射出する超音波の周波数が数十MHz程度と高いF−IDT510を用いても、マイクロバブルの共振周波数である1〜2MHz等の超音波を、目標とする位置(深さ)に照射するために、第1の実施形態と同様に、自己復調効果を利用する。そのため、前記F−IDT510を制御及び駆動するための超音波治療装置制御部200は、第1の実施形態に係る超音波治療装置制御部200と同じである。
【0098】
即ち、超音波治療装置制御部200は、駆動変数設定部210と、出力情報記憶部215と、駆動指示部220と、第1の信号発生部232と、第2の信号発生部234と、加算部236とを有する。
そして、超音波治療装置制御部200の駆動変数設定部210は、入力部250から入力された操作者の指示に基づいて、超音波を照射したい目標位置及び目標物に応じて、搬送波及び変調波の周波数を決定し、それを実現する第1の信号発生部232が発生する信号の周波数f1、振幅A1、及び初期位相θ1、並びに、第2の信号発生部234が発生する信号の周波数f2、振幅A2、及び初期位相θ2、を決定する。この際、駆動変数設定部210は、例えば図8に示す様な出力情報記憶部215に記憶してある周波数情報を用いる。駆動変数設定部210は、決定したf1、f2、A1、A2、θ1、及びθ2を駆動指示部220に出力する。
【0099】
駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力された値に基づいて、第1の信号発生部232に周波数f1、振幅A1及び初期位相θ1の信号を出力するように、また、第2の信号発生部234に周波数f2、振幅A2及び初期位相θ2の信号を出力するように信号の発生の指示を出力する。第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234はそれぞれ、駆動指示部220から入力された超音波発生の指示に基づいて、信号を生成し、それを加算部236に出力する。加算部236は、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234からの入力を加算し、例えば式(1)で表される加算信号である駆動信号を超音波射出部110に出力する。
【0100】
その結果、第1の実施形態で説明したのと同様の原理及び動作によって、図24に示す様に、目標周波数の超音波を目標位置に照射することができる。即ち、F−IDT510のすだれ状電極512に駆動信号が印加されると、すだれ状電極が振動し、ニオブ酸リチウム基板511の表面にSAWが発生する。SAWは、被験体へ放射される。放射された超音波は、焦点Oを結ぶ。この焦点の位置を目標位置としておくと、当該目標位置において、自己復調された超音波が生じることになる。
【0101】
また、F−IDT510は、SAWの中心周波数の約1.5〜2倍の周波数で駆動すると、強いバルク波(Bulk Acoustic Wave;BAW)を発生する。SAWは、基板表面に沿って伝搬し被験体に放射されるのに対して、BAWは、すだれ状電極512を形成している面から、ニオブ酸リチウム基板511の内部を伝搬し、すだれ状電極512を形成している面の裏面側で反射し、すだれ状電極512を形成している面に戻ってくる。その後、当該表面から被験体へと超音波が放射される。この際の、ニオブ酸リチウム基板511の法線に対して超音波が放射される角度θBは、SAWの場合の超音波が被験体内に放射される角度θSと異なる。
【0102】
従って、本実施形態に係る超音波治療装置では、駆動変数設定部210によりすだれ状電極512に入力する周波数を適切に選択することによって、SAWとBAWの発生を切り換えることができる。また、駆動周波数をSAWの中心周波数から上下にずらすことでもBAWを励起できる。これらを利用すると、図25に示す様に、被験体への超音波の放射角度、即ち焦点位置を変化させられる。従って、超音波を照射する目標位置を変更することも可能である。
【0103】
尚、ニオブ酸リチウム基板511は、YカットZ伝搬のニオブ酸リチウム(YZ−LiNbO3)に限らずとも、例えば、128°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム(128YX−LiNbO3)等を用いても良い。尚、YカットZ伝搬及び128°回転YカットX伝搬は、いずれも超音波の発生効率が良い切断面であることが知られている。また、SAW及び/又はBAWを発生することができれば、ニオブ酸リチウムに限らずPZTやZnOでも良い。
【0104】
本実施形態に係る超音波治療装置に依れば、第1の実施形態の場合と同様に、出力周波数が数十MHzと高いF−IDTを用いても、例えばマイクロバブルの共振周波数である1〜2MHz等の超音波を照射することができる。この様に、超音波射出部110の構成に関わらず、対象物に応じた周波数の超音波を照射することができる。また、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することにより、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。更に、高周波数の超音波を用いて伝播することで、ビームパターンが鋭くなるというメリットもある。
【0105】
[第5の実施形態の第1の変形例]
次に、第5の実施形態の第1の変形例について説明する。前記第5の実施形態に係る超音波射出部110は、ニオブ酸リチウム基板511上に円弧形状のすだれ状電極512を形成したF−IDT510により構成されている。これに対して、本実施形態に係る超音波射出部110のIDT520は、図26に示す様に、同様のニオブ酸リチウム基板521上に、位置により電極幅が異なるすだれ状電極522が形成されることで構成されている。この様な形状のすだれ状電極522を形成することによって、電極の幅に応じてIDT520の位置により発生するSAW及びBAWの周波数が異なる。即ち、すだれ状電極522が細い(図26における下方)程、発生する音波の周波数は高く、すだれ状電極522が太い(図26における上方)程、発生する音波の周波数は低くなる。
【0106】
この様な構成を有するIDT520を用いることで、超音波射出部110の広帯域化を図ることができる。ここで、噛み合わせている電極の対数を、例えば2対から10対程度等、比較的少なくすることで出力周波数の帯域を更に広帯域化させることができる。
【0107】
[第5の実施形態の第2の変形例]
第5の実施形態又はその第1の変形例に係る超音波治療装置を用いて、第2の実施形態で説明した内視鏡型超音波診断治療装置400を構成することができる。
第5の実施形態又はその第1の変形例に係る超音波治療装置を用いて内視鏡型超音波診断治療装置400を構築しても、第2の実施形態と同様に動作し、同様の効果を得ることができる。
【0108】
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。本実施形態に係る超音波治療装置は、超音波射出部110に、第5の実施形態の超音波射出部110と同じく、図23又は図26を参照して説明したF−IDT510又はIDT520を用いている。そして、本実施形態に係る超音波治療装置を制御及び駆動する超音波治療装置制御部200は、第3の実施形態の超音波治療装置制御部200と同じく、図16を参照して説明した構成により、振幅変調を用いた方法で、制御及び駆動する。
【0109】
即ち、出力情報記憶部215は、例えば超音波を照射する対象物と関係付けて変調波の周波数fmを記憶している。また、出力情報記憶部215は、超音波射出部110から超音波を照射する対象物間での距離(深さ)と関係付けて搬送波の周波数fcを記憶している。その他、出力情報記憶部215は、例えば超音波強度等、超音波射出部110が射出する超音波に関する情報を記憶している。そして、入力部250からの入力に基づいて、駆動変数設定部210は、出力情報記憶部215に記憶されている情報を読み出し、読み出した情報に基づいて、超音波を照射する対象物や、対象物までの距離に応じて、超音波射出部110から射出する超音波の信号を決定する。駆動変数設定部210は、決定した超音波射出部110から射出する超音波の信号の情報を、駆動指示部220に出力する。
【0110】
駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力された信号の情報に基づいて、搬送波信号発生部242に信号発生の指示を出力し、変調部244に信号の変調の指示を出力する。搬送波信号発生部242は、駆動指示部220からの入力に基づいて、搬送波の信号を生成する。搬送波信号発生部242は、生成した信号を変調部244に出力する。変調部244は、搬送波信号発生部242から搬送波を入力する。変調部244は、駆動指示部220からの入力に基づいて、変調波の信号を生成し、この変調信号により、搬送波信号発生部242から入力した搬送波を変調する。その結果生成された駆動信号を超音波射出部110に出力する。超音波射出部110を構成するF−IDT510又はIDT520は、変調部244から入力された駆動信号に基づく超音波を発生する。
【0111】
この様にして、例えば式(2)で表される様な変調部244が出力する信号x(t)により超音波射出部110が超音波を発生し射出する。その結果、搬送波に乗って超音波が目標位置に伝搬され、目標位置において、変調波の周波数の超音波が自己復調される。その結果、目標位置に変調波の周波数の超音波が照射される。
【0112】
以上の様に構成する本実施形態に係る超音波治療装置に依れば、第3の実施形態及び第5の実施形態と同様に、超音波射出部110の構成に関わらず、対象物に応じた周波数の超音波を照射することができる。また、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することにより、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。更に、高周波数の超音波を用いて伝播することで、ビームパターンが鋭くなるというメリットもある。
【0113】
また、第6の実施形態に係る超音波治療装置を用いて、第2の実施形態で説明した内視鏡型超音波診断治療装置400を構成することができる。
第6の実施形態に係る超音波治療装置を用いて内視鏡型超音波診断治療装置400を構築しても、第2の実施形態と同様に動作し、同様の効果を得ることができる。
【0114】
[第7の実施形態]
次に、本発明の第7の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る超音波治療装置は、超音波射出部110に、第5の実施形態の超音波射出部110と同様に、図22を参照して説明したIDTを用いている。そして、本実施形態に係る超音波治療装置を制御及び駆動する超音波治療装置制御部200は、第4の実施形態の超音波治療装置制御部200と同じく、図18を参照して説明した構成により、差音によるパラメトリック効果を利用した方法で、制御及び駆動する。
【0115】
本実施形態に係る超音波射出部110は、図27に示す様なF−IDT530を用いている。F−IDT530には、第5の実施形態で説明したF−IDT510のニオブ酸リチウム基板511と同様のニオブ酸リチウム基板531を用いている。ニオブ酸リチウム基板531上には、F−IDT510のすだれ状電極512と同様の円弧形状のすだれ状電極が2つ形成されている。即ち、ニオブ酸リチウム基板531上には、第1のすだれ状電極532及び第2のすだれ状電極533が、当該円弧の中心方向を対向させるように形成されている。この様な構成のF−IDT530の、第1のすだれ状電極532には、超音波治療装置制御部200の第1の信号発生部232を接続し、第2のすだれ状電極533には、第2の信号発生部234を接続している。この様に、例えば第1のすだれ状電極532は、第1の駆動信号により駆動される第1のすだれ状電極として機能し、例えば第2のすだれ状電極533は、第2の駆動信号により駆動される第2のすだれ状電極として機能する。
【0116】
次に、以上の様な構成を有する本実施形態に係る超音波治療装置の動作を説明する。超音波治療装置制御部200は、第4の実施形態の場合と同様に動作する。即ち、超音波治療装置制御部200の駆動変数設定部210は、入力部250から入力された操作者の指示に基づいて、超音波を照射したい目標位置及び目標物に応じて、搬送波及び変調波の周波数を決定し、それを実現する第1の信号発生部232が発生する信号の周波数f1、振幅A1、及び初期位相θ1、並びに、第2の信号発生部234が発生する信号の周波数f2、振幅A2、及び初期位相θ2を決定する。この際、駆動変数設定部210は、出力情報記憶部215に記憶してある周波数情報を用いる。駆動変数設定部210は、決定したf1、f2、A1、A2、θ1、及びθ2を駆動指示部220に出力する。
【0117】
駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力された値に基づいて、第1の信号発生部232に周波数f1、振幅A1及び初期位相θ1の信号を出力するように、また、第2の信号発生部234に周波数f2、振幅A2及び初期位相θ2の信号を出力するように信号の発生の指示を出力する。第1の信号発生部232は、発生した信号を第1のすだれ状電極532に出力する。同様に第2の信号発生部234は、発生した信号を第2のすだれ状電極533に出力する。
【0118】
その結果、F−IDT530からは、第1のすだれ状電極532及び第2のすだれ状電極533の振動によって、それぞれからSAW又はBAWが発生する。発生したSAW又はBAWは、図28の様に、被験体に射出され、焦点Oにおいて、第1のすだれ状電極532及び第2のすだれ状電極533から射出された超音波が重なり合う。以上の様にして、焦点Oにおいて、第4の実施形態と同様に、パラメトリック効果によって、差音であるΔf=|f1−f2|の周波数を有する超音波が発生する。
【0119】
本実施形態に係る超音波治療装置に依れば、第4の実施形態及び第5の実施形態と同様に、超音波射出部110の構成に関わらず、対象物に応じた周波数の超音波を照射することができる。また、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することにより、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。更に、高周波数の超音波を用いて伝播することで、ビームパターンが鋭くなるというメリットもある。
【0120】
尚、本実施形態に係るF−IDT530は、図29に示す様に、ニオブ酸リチウム基板531上に3つ以上のすだれ状電極534を形成するように構成しても良い。この様な構成のF−IDT530に依っても同様の効果を得ることができる。
また、第7の実施形態に係る超音波治療装置を用いて、第2の実施形態で説明した内視鏡型超音波診断治療装置400を構成することができる。
【0121】
第7の実施形態に係る超音波治療装置を用いて内視鏡型超音波診断治療装置400を構築しても、第2の実施形態と同様に動作し、同様の効果を得ることができる。
[第8の実施形態]
次に、本発明の第8の実施形態について図面を参照して説明する。ここで本実施形態の説明では、前記第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0122】
第1の実施形態に係る超音波治療装置においては、超音波射出部110に、cMUTアレイ320を用いている。これに対して本実施形態に係る超音波治療装置の超音波射出部110には、図30に示す様な、上面は凹面形状で下面は平面形状の、プラノコンケーブ形の圧電素子を用いる。
【0123】
即ち、超音波素子610は、プラノコンケーブ形の圧電素子611の上面に例えば接地用の電極612が形成され、圧電素子611の下面に例えば信号用の電極613が形成されている。圧電素子611は、中央部と周縁部で徐々に厚みが異なっているので、場所によって共振周波数が異なる。従って、印加する電圧の周波数に応じて、主たる振動箇所が変化する。例えば中心部に近い圧電素子611が薄い部分では、比較的高周波数の超音波を発生し、周縁部に近い圧電素子611が厚い部分では、比較的低周波数の超音波を発生する。即ち、出力周波数が広帯域となっている。
【0124】
超音波素子610の寸法は、例えば、外径φ12mm、最大厚み2mm、凹面中央部厚み1.2mm等である。
本実施形態に係る超音波治療装置を制御及び駆動する超音波治療装置制御部200は、第1の実施形態の超音波治療装置制御部200と同じく、図1を参照して説明した構成により、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234で発生した信号を、加算部236で加算する方法で、制御及び駆動する。
【0125】
即ち、超音波治療装置制御部200は、駆動変数設定部210と、出力情報記憶部215と、駆動指示部220と、第1の信号発生部232と、第2の信号発生部234と、加算部236とを有する。そして、超音波治療装置制御部200の駆動変数設定部210は、入力部250から入力された操作者の指示に基づいて、超音波を照射したい目標位置及び目標物に応じて、搬送波及び変調波の周波数を決定し、それを実現する第1の信号発生部232が発生する信号の周波数f1、振幅A1、及び初期位相θ1、並びに、第2の信号発生部234が発生する信号の周波数f2、振幅A2、及び初期位相θ2、を決定する。この際、駆動変数設定部210は、例えば図8に示す様な出力情報記憶部215に記憶してある周波数情報を用いる。駆動変数設定部210は、決定したf1、f2、A1、A2、θ1、及びθ2を駆動指示部220に出力する。
【0126】
駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力された値に基づいて、第1の信号発生部232に周波数f1、振幅A1及び初期位相θ1の信号を出力するように、また、第2の信号発生部234に周波数f2、振幅A2及び初期位相θ2の信号を出力するように信号の発生の指示を出力する。第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234はそれぞれ、駆動指示部220から入力された超音波発生の指示に基づいて、信号を生成し、それを加算部236に出力する。加算部236は、第1の信号発生部232及び第2の信号発生部234からの入力を加算し、例えば式(1)で表される加算信号を超音波射出部110に出力する。その結果、第1の実施形態で説明したのと同様の原理及び動作により、即ち自己復調効果を利用して、目標周波数の超音波を目標位置に照射することができる。
【0127】
以上の様な構成を有する本実施形態に係る超音波治療装置に依れば、第1の実施形態の場合と同様に、圧電素子の小型化のため、出力する超音波の周波数が高周波数とならざるを得ない超音波射出部110を用いても、例えばマイクロバブルの共振周波数である1〜2MHz等の超音波を照射することができる。この様に、超音波射出部110の構成に関わらず、対象物に応じた周波数の超音波を照射することができる。また、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することにより、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。更に、高周波数の超音波を用いて伝播することで、ビームパターンが鋭くなるというメリットもある。
【0128】
尚、超音波素子610の圧電素子611は場所によって厚みが異なれば良い。例えば、図31にその例を2つ示す様な形状でも良い。この場合も同様の効果が得られる。
また、第8の実施形態に係る超音波治療装置を用いて、第2の実施形態で説明した内視鏡型超音波診断治療装置400を構成することができる。
【0129】
第8の実施形態に係る超音波治療装置を用いて内視鏡型超音波診断治療装置400を構築しても、第2の実施形態と同様に動作し、同様の効果を得ることができる。
[第9の実施形態]
次に、本発明の第9の実施形態について説明する。本実施形態に係る超音波治療装置は、超音波射出部110に、第8の実施形態の超音波射出部110と同じく、図30又は図31を参照して説明した超音波素子610を用いている。そして、本実施形態に係る超音波治療装置を制御及び駆動する超音波治療装置制御部200は、第3の実施形態の超音波治療装置制御部200と同じく、図16を参照して説明した構成により、振幅変調を用いた方法で、制御及び駆動する。
【0130】
即ち、出力情報記憶部215は、例えば超音波を照射する対象物と関係付けて変調波の周波数fmを記憶している。また、出力情報記憶部215は、超音波射出部110から超音波を照射する対象物間での距離(深さ)と関係付けて搬送波の周波数fcを記憶している。その他、出力情報記憶部215は、例えば超音波強度等、超音波射出部110が射出する超音波に関する情報を記憶している。そして、入力部250からの入力に基づいて、駆動変数設定部210は、出力情報記憶部215に記憶されている情報を読み出し、読み出した情報に基づいて、超音波を照射する対象物や、対象物までの距離に応じて、超音波射出部110から射出する超音波の信号を決定する。駆動変数設定部210は、決定した超音波射出部110から射出する超音波の信号の情報を、駆動指示部220に出力する。
【0131】
駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力された信号の情報に基づいて、搬送波信号発生部242に信号発生の指示を出力し、変調部244に信号の変調の指示を出力する。搬送波信号発生部242は、駆動指示部220からの入力に基づいて、搬送波の信号を生成する。搬送波信号発生部242は、生成した信号を変調部244に出力する。変調部244は、搬送波信号発生部242から搬送波を入力する。変調部244は、駆動指示部220からの入力に基づいて、変調波の信号を生成し、この変調信号により、搬送波信号発生部242から入力した搬送波を変調する。その結果生成された駆動信号を超音波射出部110に出力する。超音波射出部110を構成する超音波素子610は、変調部244から入力された駆動信号に基づく超音波を発生する。
【0132】
この様にして、例えば前記式(2)で表される様な変調部244が出力する信号x(t)により超音波射出部110が発生する超音波を射出する。すると、搬送波に乗って超音波が目標位置に伝搬され、目標位置において、変調波の周波数の超音波が自己復調される。その結果、目標位置に変調波の周波数の超音波が照射される。
【0133】
以上の様に構成する本実施形態に係る超音波治療装置に依れば、第3の実施形態及び第8の実施形態と同様に、超音波射出部110の構成に関わらず、対象物に応じた周波数の超音波を照射することができる。また、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することにより、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。更に、高周波数の超音波を用いて伝播することで、ビームパターンが鋭くなるというメリットもある。
【0134】
尚、超音波素子610の圧電素子611は場所によって厚みが異なれば良いので、第8の実施形態と同様に、例えば、図31に示す様な形状でも良く、その場合も同様の効果が得られる。
また、第9の実施形態に係る超音波治療装置を用いて、第2の実施形態で説明した内視鏡型超音波診断治療装置400を構成することができる。
【0135】
第9の実施形態に係る超音波治療装置を用いて内視鏡型超音波診断治療装置400を構築しても、第2の実施形態と同様に動作し、同様の効果を得ることができる。
[第10の実施形態]
次に、本発明の第10の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る超音波治療装置は、超音波射出部110に、第8の実施形態の超音波射出部110と同様に、場所によって厚みが異なる圧電素子を用いている。そして、本実施形態に係る超音波治療装置を制御及び駆動する超音波治療装置制御部200は、第4の実施形態の超音波治療装置制御部200と同じく、図18を参照して説明した構成により、差音によるパラメトリック効果を用いた方法で、制御及び駆動する。
【0136】
本実施形態に係る超音波射出部110は、図32(a)にその断面図、図32(b)にその下面側の平面図を示す様に、上面は凹面形状で下面は平面形状の、プラノコンケーブ形の圧電素子を用いる。第8の実施形態に係る超音波素子610との違いは下面の電極の形状である。即ち、本実施形態に係る超音波素子620は、プラノコンケーブ形の圧電素子621の上面に例えば接地用の電極622が形成されている。そして、圧電素子621の下面に例えば信号用の第1の電極623及び第2の電極624が同心円状に形成されている。この様な構成の超音波素子620の、第1の電極623には、超音波治療装置制御部200の第1の信号発生部232を接続し、第2の電極624には、第2の信号発生部234を接続している。この様に、例えば第1の電極623は、第1の駆動信号が入力される第1の駆動電極として機能し、例えば第2の電極624は、第2の駆動信号が入力される第2の駆動電極として機能する。
例えば図32の様に超音波素子620が形成されている場合、第1の電極623に高周波数の信号を、第2の電極624に低周波数の信号を入力すると、超音波素子620の中心部は、第1の電極623に入力した周波数で振動し、周辺部は、第2の電極624に入力した周波数で振動する。
【0137】
超音波治療装置制御部200は、第4の実施形態の場合と同様に動作する。即ち、超音波治療装置制御部200の駆動変数設定部210は、入力部250から入力された操作者の指示に基づいて、超音波を照射したい目標位置及び目標物に応じて、搬送波及び変調波の周波数を決定し、それを実現する第1の信号発生部232が発生する信号の周波数f1、振幅A1、及び初期位相θ1、並びに、第2の信号発生部234が発生する信号の周波数f2、振幅A2、及び初期位相θ2を決定する。この際、駆動変数設定部210は、出力情報記憶部215に記憶してある周波数情報を用いる。駆動変数設定部210は、決定したf1、f2、A1、A2、θ1、及びθ2を駆動指示部220に出力する。
【0138】
駆動指示部220は、駆動変数設定部210から入力された値に基づいて、第1の信号発生部232に周波数f1、振幅A1及び初期位相θ1の信号を出力するように、また、第2の信号発生部234に周波数f2、振幅A2及び初期位相θ2の信号を出力するように信号の発生の指示を出力する。第1の信号発生部232は、発生した信号を第1の電極623に出力する。同様に第2の信号発生部234は、発生した信号を第2の電極624に出力する。
【0139】
すると、超音波素子620からは、圧電素子621の振動によって、超音波が発生する。発生した超音波は、被験体内に照射される。その結果、超音波を照射された被験体内において、第4の実施形態と同様に、パラメトリック効果によって、差音であるΔf=|f1−f2|の周波数を有する超音波が発生する。
【0140】
以上の様に構成する本実施形態に係る超音波治療装置に依れば、第4の実施形態及び第8の実施形態と同様に、超音波射出部110の構成に関わらず、対象物に応じた周波数の超音波を照射することができる。また、超音波を照射したい目標位置の深さに応じて、超音波の減衰を考慮して搬送波の周波数を適切に選択することにより、様々な目標位置に、設定した変調波の周波数の超音波を確実に照射することができる。更に、高周波数の超音波を用いて伝播することで、ビームパターンが鋭くなるというメリットもある。
【0141】
尚、超音波素子610の圧電素子611は場所によって厚みが異なれば良く、第1の電極623及び第2の電極624が別々に形成されていれば良い。従って、例えば、図33に示す様に、2分割して第1の電極623及び第2の電極624を形成しても良い。その場合も同様の効果が得られる。また、第8の実施形態と同様に、例えば、図34に示す様な形状でも良く、その場合も同様の効果が得られる。
【0142】
また、第10の実施形態に係る超音波治療装置を用いて、第2の実施形態で説明した内視鏡型超音波診断治療装置400を構成することができる。
第10の実施形態に係る超音波治療装置を用いて内視鏡型超音波診断治療装置400を構築しても、第2の実施形態と同様に動作し、同様の効果を得ることができる。
【0143】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても、発明が解決しようとする課題の欄で述べられた課題が解決でき、かつ、発明の効果が得られる場合には、この構成要素が削除された構成も発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0144】
100…先端部、110…超音波射出部、200…超音波治療装置制御部、210…駆動変数設定部、215…出力情報記憶部、220…駆動指示部、232…第1の信号発生部、234…第2の信号発生部、236…加算部、242…搬送波信号発生部、244…変調部、250…入力部、310…静電容量型振動子(cMUT)、311…下部基板、312…下部電極、313…誘電体膜、314…空隙、315…メンブレン支持部、316…メンブレン、317…上部電極、318…ヘッド部、320…cMUTアレイ、322…cMUTアレイ、324…cMUTアレイ、400…内視鏡型超音波診断治療装置、410…超音波装置、420…超音波プローブ、422…プローブ挿入管、424…接続部、430…プローブ接続ユニット、432…連結部、434…コネクタ、440…超音波制御ユニット、441…超音波装置制御部、442…目標位置取得部、443…回転制御部、445…画像取得用信号制御部、446…受信部、447…画像取得部、450…超音波画像表示装置、455…入力部、460…内視鏡装置、470…電子内視鏡、472…挿入部、474…操作部、475…アングルノブ、476…操作スイッチ、477…ユニバーサルコード、478…内視鏡コネクタ、479…電気コネクタ、480…湾曲部、481…処置具挿入口、482…硬質部、483…先端面、484…照明光窓、485…観察窓、486…鉗子出口、492…光源装置、494…ビデオプロセッサ、495…映像ケーブル、496…内視鏡画像表示装置、510…円弧形すだれ状電極トランスデューサ(F−IDT)、512…すだれ状電極、520…IDT、521…ニオブ酸リチウム基板、522…すだれ状電極、530…F−IDT、531…ニオブ酸リチウム基板、532…すだれ状電極、533…すだれ状電極、534…すだれ状電極、610…超音波素子、611…圧電素子、612…電極、613…電極、620…超音波素子、621…圧電素子、622…電極、623…第1の電極、624…第2の電極、810…中心部、820…画像取得可能範囲、830…対象物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を放射する音源と、
前記音源を駆動するための駆動信号を発生する駆動信号発生部と、
前記音源に対する治療対象部の目標位置に応じて第1の信号周波数及び第2の信号周波数を設定する周波数設定部と、
を具備し、
前記駆動信号発生部は、前記音源に前記超音波として前記周波数設定部が設定した前記第1の信号周波数と第2の信号周波数とを含む有限振幅音波を放射させる駆動信号を発生する、
ことを特徴とする超音波治療装置。
【請求項2】
前記目標位置と前記第1の信号周波数及び第2の信号周波数とを対応付けて記憶する周波数情報記憶部を更に具備し、
前記周波数設定部は、前記周波数情報記憶部に記憶されている情報に基づいて前記第1の信号周波数及び第2の信号周波数を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波治療装置。
【請求項3】
前記目標位置を入力する位置情報入力部を更に具備することを特徴とする請求項1及び請求項2のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項4】
前記音源は静電容量型振動子であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項5】
前記静電容量型振動子の振動膜上に、振動方向を単一方向に揃えるヘッド部を備えた請求項4に記載の超音波治療装置。
【請求項6】
前記静電容量型振動子から成る音源は複数あり、
前記ヘッド部が傾斜部を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の超音波治療装置。
【請求項7】
前記複数ある音源のうち、前記目標位置に応じて、前記傾斜部の傾きに基づき、前記駆動信号を入力する前記音源を選択することを特徴とする請求項6に記載の超音波治療装置。
【請求項8】
前記駆動信号発生部は、
前記周波数設定部が設定した第1の信号周波数を含む第1の駆動信号と前記周波数設定部が設定した第2の信号周波数を含む第2の駆動信号とを発生する信号発生部と、
前記第1の駆動信号と前記第2の駆動信号とを加算して加算駆動信号を作成する加算部と、
を更に具備し、
前記音源は、前記加算駆動信号により駆動される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項9】
前記駆動信号発生部は、振幅変調により前記駆動信号を発生することを特徴とする請求項1乃至請求項7のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項10】
前記音源は複数あり、
前記駆動信号発生部は、前記周波数設定部が設定した第1の信号周波数を含む第1の駆動信号と前記周波数設定部が設定した第2の信号周波数を含む第2の駆動信号とを発生し、
複数ある前記音源のうち少なくとも1つは、前記第1の駆動信号により駆動される第1の音源であり、前記第1の音源以外の音源のうち少なくとも1つは前記第2の駆動信号により駆動される第2の音源である、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項11】
前記音源は圧電基板にすだれ状電極が形成されたすだれ状電極変換器であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項12】
前記すだれ状電極は、前記すだれ状電極変換器によって発生する超音波の進行方向を扇の要の方向とする扇形状に形成されていることを特徴とする請求項11に記載の超音波治療装置。
【請求項13】
前記すだれ状電極は、電極幅が連続的に変化している形状であることを特徴とする請求項11に記載の超音波治療装置。
【請求項14】
前記圧電基板は、YカットZ伝搬ニオブ酸リチウムであることを特徴とする請求項11乃至請求項13のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項15】
前記有限振幅音波の周波数は、前記すだれ状電極変換器が発生する弾性表面波又はバルク波の周波数帯域に含まれることを特徴とする請求項11乃至請求項14のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項16】
前記すだれ状電極変換器は、複数組の前記すだれ状電極を有し、
複数の前記すだれ状電極は、それぞれのすだれ状電極から発生する超音波の進行方向が交差するように配置されている、
ことを特徴とする請求項11乃至請求項15のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項17】
前記駆動信号発生部は、
前記周波数設定部が設定した第1の信号周波数を含む第1の駆動信号と前記周波数設定部が設定した第2の信号周波数を含む第2の駆動信号とを発生する信号発生部と、
前記第1の駆動信号と前記第2の駆動信号とを加算して加算駆動信号を作成する加算部と、
を更に具備し、
前記音源は、前記加算駆動信号により駆動される、
ことを特徴とする請求項11乃至請求項16のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項18】
前記駆動信号発生部は、振幅変調により前記駆動信号を発生することを特徴とする請求項11乃至請求項16のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項19】
前記駆動信号発生部は、前記周波数設定部が設定した第1の信号周波数を含む第1の駆動信号と前記周波数設定部が設定した第2の信号周波数を含む第2の駆動信号とを発生し、
複数ある前記すだれ状電極のうち少なくとも1つは、前記第1の駆動信号により駆動される第1のすだれ状電極であり、前記第1のすだれ状電極以外のすだれ状電極のうち少なくとも1つは前記第2のすだれ状電極により駆動される第2のすだれ状電極である、
ことを特徴とする請求項16に記載の超音波治療装置。
【請求項20】
前記音源は、厚みが異なる部分を備えた圧電素子であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項21】
前記圧電素子は、プラノコンケーブ形素子であることを特徴とする請求項20に記載の超音波治療装置。
【請求項22】
前記圧電素子は、
一方の全面に形成された共通電極と、
前記共通電極が形成された面と反対側の面に形成された前記駆動信号が供給される複数の駆動電極と、
を具備することを特徴とする請求項20乃至請求項21のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項23】
前記駆動電極は、同心円状に配置されていることを特徴とする請求項22に記載の超音波治療装置。
【請求項24】
前記駆動電極の数は2つであることを特徴とする請求項22に記載の超音波治療装置。
【請求項25】
前記駆動信号発生部は、
前記周波数設定部が設定した第1の信号周波数を含む第1の駆動信号と前記周波数設定部が設定した第2の信号周波数を含む第2の駆動信号とを発生する信号発生部と、
前記第1の駆動信号と前記第2の駆動信号とを加算して加算駆動信号を作成する加算部と、
を更に具備し、
前記音源は、前記加算駆動信号により駆動される、
ことを特徴とする請求項20乃至請求項24のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項26】
前記駆動信号発生部は、振幅変調により前記駆動信号を発生することを特徴とする請求項20乃至請求項24のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項27】
前記駆動信号発生部は、前記周波数設定部が設定した第1の信号周波数を有する第1の駆動信号と前記周波数設定部が設定した第2の信号周波数を有する第2の駆動信号とを発生し、
複数ある前記駆動電極のうち少なくとも1つは、前記第1の駆動信号が入力される第1の駆動電極であり、前記第1の駆動電極以外の前記駆動電極のうち少なくとも1つは前記第2の駆動信号が入力される第2の駆動電極である、
ことを特徴とする請求項22乃至請求項24のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項28】
超音波を射出しその反射波を受信して画像取得を行う超音波画像取得のための、画像取得用射出超音波信号を設定する画像取得信号設定部を更に具備し、
前記駆動信号発生部は、前記超音波画像取得の際は、
前記音源に前記超音波として前記周波数設定部が設定した前記第1の信号周波数と第2の信号周波数とを含む有限振幅音波を放射させる駆動信号に代えて、
前記音源に前記超音波として前記画像取得信号設定部が設定した前記画像取得用射出超音波信号の周波数の有限振幅音波を放射させる駆動信号を発生する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項27のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項1】
超音波を放射する音源と、
前記音源を駆動するための駆動信号を発生する駆動信号発生部と、
前記音源に対する治療対象部の目標位置に応じて第1の信号周波数及び第2の信号周波数を設定する周波数設定部と、
を具備し、
前記駆動信号発生部は、前記音源に前記超音波として前記周波数設定部が設定した前記第1の信号周波数と第2の信号周波数とを含む有限振幅音波を放射させる駆動信号を発生する、
ことを特徴とする超音波治療装置。
【請求項2】
前記目標位置と前記第1の信号周波数及び第2の信号周波数とを対応付けて記憶する周波数情報記憶部を更に具備し、
前記周波数設定部は、前記周波数情報記憶部に記憶されている情報に基づいて前記第1の信号周波数及び第2の信号周波数を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波治療装置。
【請求項3】
前記目標位置を入力する位置情報入力部を更に具備することを特徴とする請求項1及び請求項2のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項4】
前記音源は静電容量型振動子であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項5】
前記静電容量型振動子の振動膜上に、振動方向を単一方向に揃えるヘッド部を備えた請求項4に記載の超音波治療装置。
【請求項6】
前記静電容量型振動子から成る音源は複数あり、
前記ヘッド部が傾斜部を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の超音波治療装置。
【請求項7】
前記複数ある音源のうち、前記目標位置に応じて、前記傾斜部の傾きに基づき、前記駆動信号を入力する前記音源を選択することを特徴とする請求項6に記載の超音波治療装置。
【請求項8】
前記駆動信号発生部は、
前記周波数設定部が設定した第1の信号周波数を含む第1の駆動信号と前記周波数設定部が設定した第2の信号周波数を含む第2の駆動信号とを発生する信号発生部と、
前記第1の駆動信号と前記第2の駆動信号とを加算して加算駆動信号を作成する加算部と、
を更に具備し、
前記音源は、前記加算駆動信号により駆動される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項9】
前記駆動信号発生部は、振幅変調により前記駆動信号を発生することを特徴とする請求項1乃至請求項7のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項10】
前記音源は複数あり、
前記駆動信号発生部は、前記周波数設定部が設定した第1の信号周波数を含む第1の駆動信号と前記周波数設定部が設定した第2の信号周波数を含む第2の駆動信号とを発生し、
複数ある前記音源のうち少なくとも1つは、前記第1の駆動信号により駆動される第1の音源であり、前記第1の音源以外の音源のうち少なくとも1つは前記第2の駆動信号により駆動される第2の音源である、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項11】
前記音源は圧電基板にすだれ状電極が形成されたすだれ状電極変換器であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項12】
前記すだれ状電極は、前記すだれ状電極変換器によって発生する超音波の進行方向を扇の要の方向とする扇形状に形成されていることを特徴とする請求項11に記載の超音波治療装置。
【請求項13】
前記すだれ状電極は、電極幅が連続的に変化している形状であることを特徴とする請求項11に記載の超音波治療装置。
【請求項14】
前記圧電基板は、YカットZ伝搬ニオブ酸リチウムであることを特徴とする請求項11乃至請求項13のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項15】
前記有限振幅音波の周波数は、前記すだれ状電極変換器が発生する弾性表面波又はバルク波の周波数帯域に含まれることを特徴とする請求項11乃至請求項14のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項16】
前記すだれ状電極変換器は、複数組の前記すだれ状電極を有し、
複数の前記すだれ状電極は、それぞれのすだれ状電極から発生する超音波の進行方向が交差するように配置されている、
ことを特徴とする請求項11乃至請求項15のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項17】
前記駆動信号発生部は、
前記周波数設定部が設定した第1の信号周波数を含む第1の駆動信号と前記周波数設定部が設定した第2の信号周波数を含む第2の駆動信号とを発生する信号発生部と、
前記第1の駆動信号と前記第2の駆動信号とを加算して加算駆動信号を作成する加算部と、
を更に具備し、
前記音源は、前記加算駆動信号により駆動される、
ことを特徴とする請求項11乃至請求項16のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項18】
前記駆動信号発生部は、振幅変調により前記駆動信号を発生することを特徴とする請求項11乃至請求項16のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項19】
前記駆動信号発生部は、前記周波数設定部が設定した第1の信号周波数を含む第1の駆動信号と前記周波数設定部が設定した第2の信号周波数を含む第2の駆動信号とを発生し、
複数ある前記すだれ状電極のうち少なくとも1つは、前記第1の駆動信号により駆動される第1のすだれ状電極であり、前記第1のすだれ状電極以外のすだれ状電極のうち少なくとも1つは前記第2のすだれ状電極により駆動される第2のすだれ状電極である、
ことを特徴とする請求項16に記載の超音波治療装置。
【請求項20】
前記音源は、厚みが異なる部分を備えた圧電素子であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項21】
前記圧電素子は、プラノコンケーブ形素子であることを特徴とする請求項20に記載の超音波治療装置。
【請求項22】
前記圧電素子は、
一方の全面に形成された共通電極と、
前記共通電極が形成された面と反対側の面に形成された前記駆動信号が供給される複数の駆動電極と、
を具備することを特徴とする請求項20乃至請求項21のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項23】
前記駆動電極は、同心円状に配置されていることを特徴とする請求項22に記載の超音波治療装置。
【請求項24】
前記駆動電極の数は2つであることを特徴とする請求項22に記載の超音波治療装置。
【請求項25】
前記駆動信号発生部は、
前記周波数設定部が設定した第1の信号周波数を含む第1の駆動信号と前記周波数設定部が設定した第2の信号周波数を含む第2の駆動信号とを発生する信号発生部と、
前記第1の駆動信号と前記第2の駆動信号とを加算して加算駆動信号を作成する加算部と、
を更に具備し、
前記音源は、前記加算駆動信号により駆動される、
ことを特徴とする請求項20乃至請求項24のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項26】
前記駆動信号発生部は、振幅変調により前記駆動信号を発生することを特徴とする請求項20乃至請求項24のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項27】
前記駆動信号発生部は、前記周波数設定部が設定した第1の信号周波数を有する第1の駆動信号と前記周波数設定部が設定した第2の信号周波数を有する第2の駆動信号とを発生し、
複数ある前記駆動電極のうち少なくとも1つは、前記第1の駆動信号が入力される第1の駆動電極であり、前記第1の駆動電極以外の前記駆動電極のうち少なくとも1つは前記第2の駆動信号が入力される第2の駆動電極である、
ことを特徴とする請求項22乃至請求項24のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【請求項28】
超音波を射出しその反射波を受信して画像取得を行う超音波画像取得のための、画像取得用射出超音波信号を設定する画像取得信号設定部を更に具備し、
前記駆動信号発生部は、前記超音波画像取得の際は、
前記音源に前記超音波として前記周波数設定部が設定した前記第1の信号周波数と第2の信号周波数とを含む有限振幅音波を放射させる駆動信号に代えて、
前記音源に前記超音波として前記画像取得信号設定部が設定した前記画像取得用射出超音波信号の周波数の有限振幅音波を放射させる駆動信号を発生する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項27のうち何れか1項に記載の超音波治療装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図16】
【図17】
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【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公開番号】特開2011−177240(P2011−177240A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42570(P2010−42570)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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