説明

超音波流量計の検証システム及び検証方法

【課題】伝播時間差式超音波給水流量計による給水流量の計測精度に対する信頼性を高めることができ、それにより熱出力演算における見込誤差をより小さくすることができ、プラントの運転効率を向上することを可能とする超音波給水流量計の検証方法を提供する。
【解決手段】超音波流量計を設置する対象配管部分を3次元にメッシュで区分けし、流体解析を実施して超音波伝播経路部を含むメッシュ部分ごとの流速を求め、超音波伝播経路部での流体解析結果から求めた平均流速と、超音波伝播経路部での超音波の伝播時間差から求めた平均流速の差を求め、2つの平均流速の差を、超音波伝播誤差として解析許容誤差と比較し、解析許容誤差範囲以上であるときには、メッシュを細密化した上で、再度前記平均流速の差を求め、解析許容誤差範囲以内のときの超音波伝播誤差を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波流量計の検証システム及び検証方法に関わり、特に原子力等発電プラントの給水流量計に用いられる伝搬時間差式超音波流量計の検証システム及び検証方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントは、原子炉安全設計条件で定まる一定の原子炉熱出力(熱出力定格値)の下で運転される。この原子炉熱出力は、原子炉熱出力監視装置により計測、演算されるが、熱出力演算に誤差を含む。
【0003】
このため、原子力発電プラントを実運転するときの熱出力目標値としては、熱出力定格値に演算誤差に相当する余裕を見込んだ値とする必要がある。例えば、原子炉熱出力監視装置の演算誤差が2%であるなら、熱出力定格値を102%とし、出力目標値を100%とする。
【0004】
このことは、原子炉の熱出力としては102%を出力することが可能であるにもかかわらず、実際には100%で運転しなければならないことを意味している。また同時に、仮に原子炉熱出力監視装置の演算誤差を0.3%にできれば、101.7%で運転できることをも意味しており、原子力発電プラントの効率向上に貢献できる。
【0005】
係る原子炉熱出力監視装置における演算誤差は、給水流量の計測精度によるところが大きい。熱出力演算は、主蒸気エンタルピーと給水エンタルピーの差に給水流量を乗じる計算である。したがって、熱出力監視の信頼性において、エンタルピーに関与する主蒸気流量や主蒸気温度等の計測精度と比較して、給水流量の計測精度の寄与が大きい。つまり、給水流量を高精度に検出することが、原子力発電プラントの効率向上に直結する。
【0006】
図2を用いてこのことを説明する。図2のグラフは、流量計を使用した時の熱出力目標値(熱出力演算値)の確率分布を表しており、横軸は熱出力、縦軸は確率である。ここで、従来の給水流量計には、フローノズル(差圧式)流量計が用いられていた。このフローノズル流量計を利用した場合の確率分布201では、熱出力演算精度が小さいため標準偏差が大きく、幅広な確率分布となる。したがって、安全基準として例えば97.7%の確率を考えると、熱出力102%までが含まれるため、熱出力102%までの安全解析が実施される。
【0007】
これに対し、例えば熱出力演算精度が0.3%となる流量計を利用すれば、確率分布は図2の202のようになり、同じ安全基準を適用して97.7%の確率で熱出力が102%を超えないようにすると、熱出力目標値は101.7%になり、1.7%の増出力が可能となる。
【0008】
従って、給水流量の計測精度を向上し、熱出力演算における見込誤差を小さくすることができれば、安全を担保したまま、熱出力目標値を現状の100%から102%近くまで増強することができる。これは、プラント全体に変更を加えなくても、流量計を変えるだけで出力を向上し、プラントの運転効率を向上することができることを示している。
【0009】
上記要望を満たすことが可能な、流量計測精度が高い流量計として、超音波流量計がある。超音波流量計には、ドップラー式,伝搬時間差式,相関式等、種々あるが、中でも配管内に直接超音波センサを挿入した伝搬時間差式流量計は、複数の計測線における平均流速を同時に計測することができるため高い計測精度を持つことが知られている。
【0010】
原子炉給水流量計として超音波流量計を利用することで、計測精度を高め、それに応じて出力増強し、プラントの運転効率を向上する方法については、例えば非特許文献1で解説されている。
【0011】
また、原子炉給水流量計の精度向上対策として、例えば特許文献1には、フローノズル流量計の経年劣化による精度低下を補正して精度向上を図ることが記載されている。特許文献2には、フローノズル流量計とともに超音波流量計を利用することによって、計測精度状態を判定し、その判定結果に応じた熱出力目標値を選択することで、計測精度に対する信頼性を高め、プラントの運転効率向上を図ることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平1−221700号公報
【特許文献2】特開2006−16413号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】「原子炉出力向上に関する技術検討評価の結果について」原子力学会誌,vol.50 No.12 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上説明した特許文献、非特許文献によれば、超音波流量計の中でも、特に高精度な8測線伝播時間差式超音波流量計を給水流量計として利用することで計測精度を高めることができ、それに伴ってプラントの運転効率を向上できることが知られている。また構造上経年劣化や圧力損失を生じるフローノズル流量計の代わりに超音波流量計を利用するメリットも大きいことが分かっている。
【0015】
このような超音波流量計を利用する場合においても、原子炉熱出力の監視に際しては万全の安全確認が求められる。安全設計基準に対して十分な精度を保っているかを検証し、保証することが非常に重要である。然しながら、これらの特許文献、非特許文献には、超音波給水流量計の検証を行うための手法について記載されていない。
【0016】
以上のことから、本発明の目的は、伝播時間差式超音波給水流量計による給水流量の計測精度に対する信頼性を高めることができ、それにより熱出力演算における見込誤差をより小さくすることができ、プラントの運転効率を向上することを可能とする超音波給水流量計の検証方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の伝播時間差式超音波流量計の検証システムにおいては、数値解析による超音波流量計シミュレーションの許容誤差を設定する解析誤差設定手段と、超音波流量計スプール及びその前後配管内の3次元流れの数値計算メッシュを作成する数値計算メッシュ作成手段と、数値計算メッシュを利用して配管内の流速分布を計算する流体解析手段と、流体解析の誤差を計算する流体解析誤差計算手段と、流体解析の結果を数値計算メッシュの超音波流量計スプール部の各メッシュ要素に割り当てる流速ベクトル取得手段と、数値計算メッシュの超音波流量計スプール部と流速ベクトルを利用して各測線の超音波伝播経路上の平均流速を算出する積分平均流速計算手段と、数値計算メッシュの超音波流量計スプール部と流速ベクトルを利用して超音波伝播解析を行い、伝播時間差による各測線の線平均流速を算出する伝播時間差平均流速計算手段と、積分平均流速と伝播時間差平均流速の差を比較し、解析誤差設定手段で設定された許容値の範囲にあるかどうかを判定する超音波伝播解析誤差判定手段と、超音波伝播解析誤差判定の結果、許容値を超えていれば数値計算メッシュを修正する数値計算メッシュ修正手段と、伝播時間差平均流速から超音波流量計の流量計算結果を解析する流量計算手段と、流量計算結果及び流体解析誤差及び超音波伝播解析誤差を表示する解析結果表示手段とを備える。
【0018】
また、数値計算メッシュ作成手段は、超音波流量計スプール部の超音波伝播経路上のメッシュ幅がそれ以外の部位より細分化されるように設定する。
【0019】
また、数値計算メッシュ作成手段は、超音波流量計スプール部の超音波伝播経路上のメッシュが超音波伝播方向に対して直交するように設定する。
【0020】
また、流体解析誤差計算手段は、数値計算メッシュ超音波流量計スプール部の流速ベクトルを利用し、管軸に垂直な複数の断面における流量と入力流量の差から計算する。
【0021】
また、流速ベクトル取得手段は、積分平均流速計算手段及び伝播時間差平均流速計算手段に必要な各測線の超音波伝播経路上の流速ベクトルのみを取得する。
【0022】
また、伝播時間差平均流速計算手段は、主音線の伝播経路を計算するレイトレース法を数値計算メッシュの超音波伝播経路上の各要素に適用する。
【0023】
また、伝播時間差平均流速計算手段は、超音波の音の拡がりを模擬した複数の音線の伝播経路を計算するレイトレース法を数値計算メッシュの超音波伝播経路上の各要素に適用する。
【0024】
また、伝播時間差平均流速計算手段は、レイトレース法として微小時間毎の伝播経路を計算する。
【0025】
また、伝播時間差平均流速計算手段は、微小時間毎の伝播経路において、各要素または各節点の流速ベクトルから補間計算により求めた流速ベクトルを利用する。
【0026】
また、伝播時間差平均流速計算手段は、有限要素法または有限体積法を適用する。
【0027】
また、数値計算メッシュ修正手段は、超音波流量計スプール部の超音波伝播経路上のメッシュ幅がそれ以外の部位より細分化されるように設定する。
【0028】
また、数値計算メッシュ修正手段は、超音波流量計スプール部の超音波伝播経路上のメッシュが超音波伝播方向に対して直交するように設定する。
【0029】
上記目的を達成するために、本発明の伝播時間差式超音波流量計の検証方法では、数値解析による超音波流量計シミュレーションの許容誤差を設定する解析誤差設定工程と、超音波流量計スプール及びその前後配管内の3次元流れの数値計算メッシュを作成するメッシュ作成工程と、メッシュを利用して配管内の流速分布を計算する流体解析工程と、流体解析の結果を前記メッシュの超音波流量計スプール部の各要素に割り当てる流速ベクトル取得工程と、メッシュの超音波流量計スプール部と流速ベクトルを利用して各測線の超音波伝播経路上の平均流速を算出する積分平均流速計算工程と、メッシュの超音波流量計スプール部と流速ベクトルを利用して超音波伝播解析を行い、伝播時間差による各測線の線平均流速を算出する伝播時間差平均流速計算工程と、積分平均流速と伝播時間差平均流速の差を比較し、解析誤差設定手段で設定された許容値の範囲にあるかどうかを判定する解析誤差判定工程と、解析誤差判定の結果、許容値を超えていれば数値計算メッシュを修正するメッシュ修正工程と、伝播時間差平均流速から超音波流量計の流量計算結果を解析する流量計算工程と、流量計算結果及び解析誤差を表示する解析結果表示工程とを備えた。
【0030】
上記目的を達成するために、本発明の伝播時間差式超音波流量計の検証方法では、超音波流量計を設置する対象配管部分を3次元にメッシュで区分けし、流体解析を実施して超音波伝播経路部を含むメッシュ部分ごとの流速を求め、超音波伝播経路部での流体解析結果から求めた平均流速と、超音波伝播経路部での超音波の伝播時間差から求めた平均流速の差を求め、2つの平均流速の差を、超音波伝播誤差として解析許容誤差と比較し、解析許容誤差範囲以上であるときには、メッシュを細密化した上で、再度前記平均流速の差を求め、解析許容誤差範囲以内のときの超音波伝播誤差を評価する。
【発明の効果】
【0031】
本発明の超音波流量計の検証システムにより、伝播時間差式超音波流量計による流量の計測値を高精度で予測することができ、また伝播時間差式超音波流量計の数値解析による予測精度を明確に示すことができ、それにより伝播時間差式超音波流量計の精度保証を高い信頼性の下で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例による超音波流量計の検証システムの概略構成図。
【図2】流量計を使用した時の熱出力目標値(熱出力演算値)の確率分布を示す図。
【図3a】超音波流量計を設置した配管の流体の流れ方向断面を示す図。
【図3b】超音波流量計を設置した配管の管軸方向に垂直な断面を示す図。
【図4a】配管の流体流れ方向断面のメッシュ作成例を示す図。
【図4b】配管の管軸方向に垂直な断面のメッシュ作成例を示す図。
【図5a】配管の流体流れ方向断面の流体解析結果を示す図。
【図5b】配管の管軸方向に垂直な断面の流体解析結果を示す図。
【図6a】主音線の伝播経路を計算するレイトレース法を説明する図。
【図6b】微小時間毎の伝播経路を計算するレイトレース法を説明する図。
【図6c】超音波の拡がりを模擬した伝播経路を計算するレイトレース法を説明する図。
【図7】超音波流量計の検証システムの表示画面の一例を示す図。
【図8】本発明の実施例による超音波流量計の検証方法のフローチャート。
【図9】各部で行う処理、その結果を概念的かつ時系列的に表示記載した図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施例では、超音波流量計の中でも高い計測精度を持つことが知られている伝搬時間差式超音波流量計であって、原子力発電プラントの熱出力演算に用いる給水流量値の計測に採用される8計測線を有する超音波流量計を念頭においている。
【0034】
このため、まず8測線伝播時間差式超音波流量計の構造と計測原理について、図3を用いて説明する。図3aは、超音波流量計を設置した配管であるスプール300の横断面(流体の流れ方向断面)を示している。また、図3bは、同じくスプール300の管軸方向に垂直な断面を示している。
【0035】
図3bに特徴がよく現れているように、スプール300の周囲には、超音波センサ(正確には超音波センサを設置したセンサハウジング)を挿入する枝管(ボス)が16本溶接されている。実線で示す2a〜17aが枝管(ボス)であり、点線で示す2b〜17bが、枝管(ボス)の中に挿入された超音波センサである。なお、図示上、1つの枝管(ボス)に対して、あるいは1つの超音波センサに対して、2つの番号が付与されているのは、図3aの流体流れ方向の図示から明らかなように、図3bの手前と奥側にそれぞれこれらを設置したためである。
【0036】
図3aは、A−A面でのスプール300の横断面(流体の流れ方向断面)であり、各ボスは、挿入された超音波センサが管軸方向に45°の角度で向かい合うように配置される。例えば、ボス2aに挿入された超音波センサ2bは、ボス3aに挿入された超音波センサ3bと正対している。また、ボス4aに挿入された超音波センサ4bは、ボス5aに挿入された超音波センサ5bと正対している。図3bにおいて、手前と奥側と説明したのは、この場合には、ボス2b、5bが手前、3b、4bが奥側ということになる。図3aには、A−A面でのスプール300の横断面(流体の流れ方向断面)のみを示したが、A−A面に平行な他の設置断面においても図3aと同じ配置とされている。
【0037】
これらの正対した二つの超音波センサが1つの測線をなし、16個の超音波センサにより8対の測線を得る。そして、測線ごとにそれぞれ、流れに沿った方向(以下、下流方向と記す)と流れに逆らう方向(以下、上流方向と記す)の超音波伝播時間差を計測することにより超音波センサ間の線平均流速を算出する。
【0038】
図3aにおいて、例えば水の流れ方向が、配管スプール内流速分布301に示すように紙面左から右であり、かつ中央部分が流速大、周辺部分(配管スプールの壁面側)が流速少である。このときの、超音波センサ2bと3bの間の線平均流速を求める。これは、まず上流側の超音波センサ2bで発信し下流側の超音波センサ3bで受信したときの下流方向伝播時間Tdを計測し、次に下流側の超音波センサ3bで発信し上流側の超音波センサ2bで受信したときの上流方向伝播時間Tuを計測する。
【0039】
このとき、流れ方向の流速Vの影響により、超音波伝播経路方向の見かけの音速がV′=Vsin45だけ、下流方向では速く、上流方向では遅くなる。したがって、伝播時間差ΔTは、ΔT=Tu−Tdで計算され、この値とセンサ間距離及び音速から、センサ間の線平均流速Vが求まる。なお、係る計測は他の測線においても同様に実施される。
【0040】
図3bは、図3aで説明したように、超音波センサ2bと超音波センサ3bとが対となり、超音波センサ4bと超音波センサ5bが対となっている。また、超音波センサ6bと超音波センサ7bとが対となり、超音波センサ8bと超音波センサ9bが対となっている。また、超音波センサ10bと超音波センサ11bとが対となり、超音波センサ12bと超音波センサ13bが対となっている。また、超音波センサ14bと超音波センサ15bとが対となり、超音波センサ16bと超音波センサ17bが対となっている。このように、各超音波センサの対は、平行な4対と4対が直交するように配置されており、8測線型となっている。
【0041】
8測線伝播時間差式超音波流量計においては、8測線それぞれについて求められた線平均流速を用いて、配管スプール内の平均流量を計算する。これには有限の離散値から高精度に積分可能なガウス積分を利用する。ガウス積分では、線平均流速の計測位置が予め定められており、各位置の計測値に重みづけをして積算される。8測線型では、2−3,6−7,10−11,14−15の4測線と4−5,8−9,12−13,16−17の4測線それぞれでガウス積分を行い、その平均をとることで計測精度を高めている。
【実施例】
【0042】
本発明の実施例においては、上記のような8測線伝播時間差式超音波流量計を念頭において説明する。以下、本発明の一実施形態による超音波流量計の検証システムの内容について説明する。
【0043】
図1は、本発明の超音波流量計の検証システムの一実施形態における構成図である。
【0044】
図1のように、超音波流量計の検証システム100は、計算機で構成される演算部120と、モニタなどで構成される解析結果表示手段111と、演算部120の演算初期状態などを設定する入力部である解析許容誤差データ入力手段101から構成される。
【0045】
また、演算部120は、複数の演算手段とその結果を記憶するデータベースから構成される。図中、103乃至110が各演算手段であり、これら記号に「a」を付して示したのが、各演算結果を記憶するデータベースである。具体的には、各演算手段は、数値計算メッシュ作成手段102と、流体解析手段103と、流体解析誤差計算手段104と、流速ベクトル取得手段105と、積分平均流速計算手段106と、伝播時間差平均流速計算手段107と、超音波伝播解析誤差判定手段108と、数値計算メッシュ修正手段109と、流量計算手段110から構成される。
【0046】
またデータベースは、解析許容誤差データ記憶装置101aと数値計算メッシュデータ記憶装置102aと、流体解析結果データ記憶装置103aと、流体解析結果データ記憶装置104aと、流速ベクトルデータ記憶装置105aと、積分平均流速データ記憶装置106aと、伝播時間差平均流速データ記憶装置107aと、超音波伝播解析誤差データ記憶装置108aと、流量計算結果データ記憶装置110aから構成される。
【0047】
このシステム110の初期状態においては、少なくとも2つの初期状態を設定する。まず、解析許容誤差入力装置101を用いて、解析許容誤差データ記憶装置101aに解析許容誤差を入力する。ここで、解析許容誤差入力装置101や解析許容誤差データ記憶装置101aとは、例えばコンピュータに付随したキーボードや電子的記憶装置である。なお、解析許容誤差とは、対象とする超音波流量計の精度を決定する不確かさ解析から必要条件が設定され、さらに解析精度要求によって定められる値である。また、解析許容誤差は、解析全体として設定してもよいし、流体解析と超音波伝播解析それぞれに設定してもよい。
【0048】
また次に設定される初期状態は、数値計算メッシュであり、数値計算メッシュ作成手段102により作成され、数値計算メッシュデータ記憶装置102aに記憶される。数値計算メッシュデータ記憶装置102aは、解析許容誤差データ記憶装置101aで設定された流体解析の許容誤差以下の精度で流体解析が行われるようなメッシュの精度で作成される。
【0049】
具体的には、図3に示した流体の流れ方向断面及び、スプール300の管軸方向に垂直な断面をメッシュで区画分けする。このときに、スプール300の壁面近傍及び流速分布が急峻になる可能性のある部位のメッシュを微細化し、またメッシュのゆがみが大きくならないように設定される。また、超音波流量計スプール部の超音波伝播経路に当たる部分のメッシュは、超音波伝播解析にも利用されるため、超音波伝播経路部分をより精度の高いメッシュにすることも効果的である。超音波伝播経路部分を精度の高いメッシュにした例を図4を用いて説明する。
【0050】
図4は、本発明の実施例による超音波流量計の検証システムの数値計算メッシュの一例を示す概略図である。図4aに示されたメッシュ400は、図3aの流れ方向断面に対応しており、流量計スプール部300の超音波伝播経路を含む断面のメッシュを示している。メッシュ400の壁面近傍部(上下)は、流体解析精度を考慮して微細化されている。さらに、超音波伝播経路部401は、他の部分に比べて微細化され、超音波伝播方向(図中斜め45度方向)に対して直交するようになっている。これにより、流体解析結果を超音波伝播解析に利用する際に、誤差が小さくなり、超音波流量計シミュレーションの信頼性を向上させることができる。
【0051】
また、図4bに示されたメッシュ400は、図3bのスプール300の管軸方向に垂直な断面に対応しており、メッシュ400の壁面近傍部(上下左右)を、流体解析精度を考慮して微細化している。また、超音波伝播経路部401を、他の部分に比べて微細化している。
【0052】
図1の、数値計算メッシュデータ記憶装置102aには、数値計算メッシュ作成手段102により作成された例えば図4のようなメッシュデータが記憶されている。
【0053】
次に、超音波流量計の検証システム100は、数値計算メッシュデータ記憶装置102aを利用して、流体解析手段103により流体解析を行い、流体解析結果を流体解析結果データ記憶装置103aに記憶する。
【0054】
なお、流体解析は周知の手法により実現できるが、例えば解析対象の配管であるスプール300の形状などのデータを有し、またこの配管に流れる流体側の条件として配管入口流量、入口と出口の流体圧力、流速分布などが予め設定されている。ここでは、流体解析結果として、数値計算メッシュデータの各メッシュ要素に対応する部位での、流速ベクトルや圧力、密度、温度等の流体データを得る。
【0055】
図5は、流体解析結果の一例を示す概略図である。図5aは、超音波流量計を設置した配管であるスプール300の横断面(流体の流れ方向断面)を示している。また、図5bは、同じくスプール300の管軸方向に垂直な断面を示している。図5bの管軸に垂直な断面500aにおいて、点線で示した部分501a、502a、503a、504aが、測線の位置を示している。また図5aの管軸に平行な断面500bにおいて、点線で示した部分502b、505bが、測線の位置を示している。502aと502bは同じ測線を示している。図中の白線が数値計算メッシュに対応し、メッシュ内各要素の色の濃淡で示したのが管軸方向の流速である。
【0056】
この流体解析結果データから、スプール300の中央部分の流速が速く、周辺部分(管壁側の流速が遅いことが見て取れる。図1の、流体解析結果データ記憶装置103aには、流体解析手段103により作成された例えば図5のような流体解析結果データが記憶される。
【0057】
この流体解析結果データから、流体解析誤差計算手段104により、流体解析誤差が計算される。ここで、流体解析誤差計算手段104は、図5bの管軸に垂直な複数の断面における流量を、断面500a内の各メッシュ要素の面積と管軸方向流速の積の総和として算出する。また、他方において流体解析手段103での解析条件とした設定値としての入力流量の差をとる計算を実行する。この流量差は、本来生じないはずであり、この誤差が、流体解析誤差となる。このようにして算出された流体解析誤差は、流体解析誤差データ記憶装置104aに蓄積される。なお、この流体解析誤差は以後の演算においては使用せず、解析結果出力装置111に表示されるために使用される。
【0058】
流体解析手段103により求められ、流体解析結果データ記憶装置103aに記憶された流体解析結果データは、流速ベクトル取得手段105において、各側線部分における流速ベクトルデータを取得するために使用される。つまり、流速ベクトル取得手段105においては、流体解析結果データ記憶装置103aに記憶された流速ベクトルの中から、図5bの流体流れ方向断面における502bや505bで示される各測線の超音波伝播経路部分の流速ベクトルを抽出する。抽出された各測線の超音波伝播経路部分の流速ベクトルは、流速ベクトルデータ記憶装置105aに記憶される。
【0059】
なお、当該部分の流速ベクトルは、後述する積分平均流速計算手段106と、伝播時間差平均流速計算手段107で利用される。流速ベクトルデータを超音波伝播解析に先立って取得しておくことで、超音波伝播解析時間を短縮することができ、超音波伝播解析時に伝播経路の要素のみ順次取得すれば、計算機の記憶領域を節約することができる。
【0060】
積分平均流速計算手段106においては、数値計算メッシュデータ記憶装置102aに記憶されている数値計算メッシュデータ、及び流速ベクトルデータ記憶装置105aに記憶されている流速ベクトルデータを利用して、積分平均流速データを求める。ここで、積分平均流速とは、図5bの各側線の超音波伝播経路502b、505bの点線内の各メッシュ要素における超音波伝播経路長と管軸方向流速の積の総和をとり、これを測線長(超音波伝播経路長)で除する計算に相当する。この計算により、流体解析結果の流速分布を正としたときの各測線の線平均流速の基準値を求めることができる。つまり、図5bの各側線の超音波伝播経路502b、505bにおける領域内での流体流速の平均値を求めている。この結果は、積分平均流速データ記憶装置106aに記憶される。
【0061】
次に、伝播時間差平均流速計算手段107により、数値計算メッシュデータ記憶装置102aに記憶されている数値計算メッシュデータ、及び流速ベクトルデータ記憶装置105aに記憶されている流速ベクトルデータを利用して、伝播時間差による各測線の線平均流速を計算する。
【0062】
ここで、伝播時間差平均流速計算手段107においては、超音波伝播解析を行い、流体中の超音波伝播をシミュレートする。なお、超音波伝播解析は、有限要素法や有限体積法を用いて詳細に解析してもよいし、簡易なレイトレース法を用いても迅速かつ高精度に超音波伝播時間を計算することができる。
【0063】
図6を用いて、レイトレース法による伝播時間差平均流速計算の例について説明する。図6は、主音線の伝播経路を計算するレイトレース法を前記数値計算メッシュの超音波伝播経路上のメッシュ要素毎に適用した場合の超音波伝播解析方法を示す概略図である。図6(a)(b)(C)は、いずれも図5aのスプール300の長手方向の各側線の超音波伝播経路502b、505bにおける領域内を表している。具体的には、図の横方向に流体が流れる方向をとり、ここでは横4、縦3のメッシュによる領域600を構成している。
【0064】
図6(a)において、601aは超音波センサからの主音線であり、左下から右上に向けて45度の角度で照射されている。これに対し、流体流速605は、メッシュ要素毎に求められて流速ベクトルデータ記憶装置150aに記憶されており、図の例では左上部の流速が大きい。この結果、超音波の音速ベクトル601aと流速ベクトル605の和によりメッシュ要素毎の伝播方向及び伝播速度が設定され、送信されてから受信されるまでに通過する各メッシュ要素の通過時間の和が超音波伝播時間として計算される。これにより、流体解析結果に忠実な超音波伝播解析結果を得ることができる。
【0065】
図6(b)は、微小時間毎の伝播経路を計算するレイトレース法を前記数値計算メッシュの超音波伝播経路に適用した場合の超音波伝播解析方法を示す概略図である。この場合、微小な一定周期ごとの各時刻における主音線601bの位置602に対して、前記の各メッシュ要素または各節点の流速ベクトルから補間計算により求めた流速ベクトルを利用する。この方法では、時間ステップ幅を小さくすることにより、解析精度の向上を図ることができるが、補間による誤差も含まれる。
【0066】
図6(c)は、超音波の音の拡がりを模擬した複数の音線の伝播経路を計算するレイトレース法を前記数値計算メッシュの超音波伝播経路上の各要素毎に適用した場合の超音波伝播解析方法を示す概略図である。図6(a)と同様に、主音線601cを解析するのと同時に、超音波ビームの拡がりに対応する副音線603や604(さらに増やしてもよい)に対しても伝播解析を行う。このとき、超音波の音圧に対応した値を主音線及び副音線に設定することで、信号の強度を予測することができ、シミュレーションの信頼性を高めることができる。
【0067】
伝播時間差平均流速計算手段107では、上記した手法を利用して伝播時間差平均流速を求め、伝播時間差平均流速記憶装置107aに記憶する。
【0068】
次に、超音波伝播解析誤差判定手段108においては、積分平均流速データ記憶装置106aに記憶されている積分平均流速データ及び伝播時間差平均流速記憶装置107aに記憶されている伝播時間差平均流速データの差を、超音波伝播解析誤差データ記憶装置108aに記憶されている解析許容誤差データと比較し、超音波伝播解析誤差データを求める。
【0069】
ここで、積分平均流速データと伝播時間差平均流速データの差を求めることの意味について説明すると、いずれも図5bの配管長手方向の側線部分502b、505bでの平均流速である。ただし、積分平均流速データは、流体解析手段103における流体解析結果から求めた平均流速であり、伝播時間差平均流速データは、伝播時間差平均流速計算手段107における超音波の伝播時間差から求めた平均流速である。これらの平均流速は同一場所を異方式により計測したものであり、本来同一値となるべきである。
【0070】
これらに差異を生じる場合、この原因は図4の数値計算メッシュが粗いことにあると考えられる。メッシュが十分に細密であれば平均流速データの差は、超音波伝播解析誤差データ記憶装置108aに記憶されている解析許容誤差データ以下となるはずである。
【0071】
このことから、本発明においては、解析誤差が許容値を超えている場合には、数値計算メッシュ修正手段109により、数値計算メッシュデータを修正する。そのうえで、以上説明した、積分平均流速データと伝播時間差平均流速データの差を求める一連の処理を再度実行する。このとき、超音波流量計スプール部の超音波伝播経路に当たる部分のメッシュは、図4に示したような超音波伝播経路部分をより精度の高いメッシュにすることにより、超音波伝播解析誤差を小さくすることができる。
【0072】
再修正の結果、積分平均流速データと伝播時間差平均流速データの差が、解析許容誤差データの範囲内に収まったときには、この結果を超音波伝播解析誤差データ記憶装置108aに記憶させる。
【0073】
最後に、流量計算手段110により、超音波流量計の計測値を予測した流量計算結果データが流量計算結果データ記憶装置110aに記憶され、解析結果出力装置111により、流量計算結果データ及び解析許容誤差データ、流体解析誤差データ、超音波伝播解析誤差データが表示画面に表示される。
【0074】
図7は、解析結果出力装置111の表示画面の一例を示す概略図である。ここで、表示画面700は、装置の画面であってもよいし、性能保証書に添付する資料であってもよい。表示画面700は、流量計測値シミュレーション結果表示画面701及び解析誤差評価結果表示画面702からなる。
【0075】
流量計測値シミュレーション結果表示画面701には、入力流量及び実機条件流量出力値、流量補正係数のシミュレーション結果が表示される。また各測線の線平均流速結果や流速分布の結果を表示してもよい。また、流量に対する流量出力値や流量補正係数のグラフ等により、流量計の精度に対するシミュレーション結果を詳細に表示することにより流量計の精度保証を行うことができる。
【0076】
解析誤差評価結果表示画面702には、解析許容誤差設定値(解析許容誤差入力データ記憶装置101a)や流体解析誤差データ(流体解析誤差データ記憶装置104a)、超音波伝播解析誤差データ(超音波伝播解析誤差データ記憶装置108a)、流量計算誤差(流体計算結果データ記憶装置110a)等が表示される。特に、超音波伝播誤差については、側線ごとの超音波伝播誤差が表示される。これにより、解析による誤差を正確に把握することができ、流量計精度保証の信頼積を向上することができる。
【0077】
本発明の超音波流量計の検証システムにより、伝播時間差式超音波流量計による流量の計測値を高精度で予測することができ、また伝播時間差式超音波流量計の数値解析による予測精度を明確に示すことができ、それにより伝播時間差式超音波流量計の精度保証を高い信頼性の下で行うことが可能となる。
【0078】
図8は、本発明の実施例による超音波流量計の検証方法の検証手順を示すフローチャートである。
【0079】
超音波流量計の検証を開始すると、解析誤差設定ステップS101により数値解析による超音波流量計シミュレーションの許容誤差を設定する。次に、数値計算メッシュ作成ステップS102により、超音波流量計スプール及びその前後配管内の3次元流れの数値計算メッシュを作成する。配管内流体解析ステップS103により、数値計算メッシュを利用して配管内の流速分布を計算する。
【0080】
次に、流体解析誤差判定ステップS104において、流体解析の誤差が解析誤差設定ステップS101で定めた許容値より大きいか否かを判定する。許容値を超える場合には、数値計算メッシュ修正ステップS105により、数値計算メッシュを修正した後、再度配管内流体解析ステップS103を行う。
【0081】
流体解析誤差が許容値以下の場合には、流速ベクトル取得ステップS106により流体解析の結果を数値計算メッシュの超音波流量計スプール部の各メッシュ要素に割り当て、積分平均流速計算S107によりメッシュの超音波流量計スプール部と流速ベクトルを利用して各測線の超音波伝播経路上の平均流速を算出する。また、伝播時間差平均流速計算ステップS108によりメッシュの超音波流量計スプール部と流速ベクトルを利用して超音波伝播解析を行い、伝播時間差による各測線の線平均流速を算出する。
【0082】
超音波伝播解析誤差判定ステップS109では、積分平均流速と伝播時間差平均流速の差を比較し、解析誤差設定手段で設定された許容値の範囲にあるかどうかを判定する。超音波伝播解析誤差が許容値を超える場合には、数値計算メッシュ修正ステップS105により、数値計算メッシュを修正した後、再度配管内流体解析ステップS103を行う。
【0083】
超音波伝播解析誤差が許容値以下の場合には、流量計算ステップS110により伝播時間差平均流速から超音波流量計の流量計測値を計算する。最後に、解析結果表示ステップS110により前記流量計算結果及び前記解析誤差を表示する。
【0084】
図9は、図1のシステム構成、あるいは図8のフローチャートを実行するときに、各部で行う処理あるいはその結果を概念的かつ時系列的に表示記載したものである。
【0085】
この流れは、A―Gからなり、これを簡単に説明すると、最初にAでは対象配管部分をメッシュで区分けする。Bでは、メッシュ部分ごとの流体解析を実施して、流体の流速を求める。Cでは、超音波伝播経路部401の各メッシュ部分の流速ベクトルを求める。
【0086】
Dでは、2つの方式により平均流速を求める。D1の積分平均流速データは、流体解析結果から求めた平均流速であり、D2の伝播時間差平均流速データは、超音波の伝播時間差から求めた平均流速である。
【0087】
Eでは、これら2つの平均流速の誤差をFが与える解析許容誤差データと比較し、誤差の範囲内であれば解析終了とする。誤差範囲以上であるときには、Gにおいて、メッシュを細密化した上で、上記処理を再実行する。
【0088】
以上詳細に述べた本発明の検証方法により、伝播時間差式超音波流量計による流量の計測値を高精度で予測することができ、また伝播時間差式超音波流量計の数値解析による予測精度を明確に示すことができ、それにより伝播時間差式超音波流量計の計測精度の検証の信頼性をより高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、原子力分野以外での流量計測に広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0090】
101…解析許容誤差入力装置
102…数値計算メッシュ作成手段
103…流体解析手段
104…流体解析誤差計算手段
105…流速ベクトル取得手段
106…積分平均流速計算手段
107…伝播時間差平均流速計算手段
108…超音波伝播解析誤差判定手段
109…数値計算メッシュ修正手段
110…流量計算手段
111…解析結果表示手段
300…超音波流量計配管スプール
301…配管スプール内流速分布
302〜317…超音波センサ
400…数値計算メッシュ
500…流体解析結果
600…数値計算メッシュ内要素
700…検証結果表示画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝播時間差式超音波流量計の検証システムであって、
数値解析による超音波流量計シミュレーションの許容誤差を設定する解析誤差設定手段と、
超音波流量計スプール及びその前後配管内の3次元流れの数値計算メッシュを作成する数値計算メッシュ作成手段と、
前記数値計算メッシュを利用して配管内の流速分布を計算する流体解析手段と、
前記流体解析の誤差を計算する流体解析誤差計算手段と、
前記流体解析の結果を前記数値計算メッシュの超音波流量計スプール部の各メッシュ要素に割り当てる流速ベクトル取得手段と、
前記数値計算メッシュの超音波流量計スプール部と前記流速ベクトルを利用して各測線の超音波伝播経路上の平均流速を算出する積分平均流速計算手段と、
前記数値計算メッシュの超音波流量計スプール部と前記流速ベクトルを利用して超音波伝播解析を行い、伝播時間差による各測線の線平均流速を算出する伝播時間差平均流速計算手段と、
前記積分平均流速と前記伝播時間差平均流速の差を比較し、前記解析誤差設定手段で設定された許容値の範囲にあるかどうかを判定する超音波伝播解析誤差判定手段と、
前記超音波伝播解析誤差判定の結果、前記許容値を超えていれば前記数値計算メッシュを修正する数値計算メッシュ修正手段と、
前記伝播時間差平均流速から超音波流量計の流量計算結果を解析する流量計算手段と、
前記流量計算結果及び前記流体解析誤差及び前記超音波伝播解析誤差を表示する解析結果表示手段と、
を備えたことを特徴とする伝播時間差式超音波流量計の検証システム。
【請求項2】
請求項1記載の伝播時間差式超音波流量計の検証システムにおいて、
前記数値計算メッシュ作成手段は、前記超音波流量計スプール部の超音波伝播経路上のメッシュ幅がそれ以外の部位より細分化されるように設定することを特徴とする伝播時間差式超音波流量計の検証システム。
【請求項3】
請求項1記載の伝播時間差式超音波流量計の検証システムにおいて、
前記数値計算メッシュ作成手段は、前記超音波流量計スプール部の超音波伝播経路上のメッシュが超音波伝播方向に対して直交するように設定することを特徴とする伝播時間差式超音波流量計の検証システム。
【請求項4】
請求項1記載の伝播時間差式超音波流量計の検証システムにおいて、
前記流体解析誤差計算手段は、前記数値計算メッシュ超音波流量計スプール部の流速ベクトルを利用し、管軸に垂直な複数の断面における流量と入力流量の差から計算することを特徴とする伝播時間差式超音波流量計の検証システム。
【請求項5】
請求項1記載の伝播時間差式超音波流量計の検証システムにおいて、
前記流速ベクトル取得手段は、前記積分平均流速計算手段及び伝播時間差平均流速計算手段に必要な各測線の超音波伝播経路上の流速ベクトルのみを取得することを特徴とする伝播時間差式超音波流量計の検証システム。
【請求項6】
請求項1記載の伝播時間差式超音波流量計の検証システムにおいて、
前記伝播時間差平均流速計算手段は、主音線の伝播経路を計算するレイトレース法を前記数値計算メッシュの超音波伝播経路上の各要素毎に適用することを特徴とする伝播時間差式超音波流量計の検証システム。
【請求項7】
請求項1記載の伝播時間差式超音波流量計の検証システムにおいて、
前記伝播時間差平均流速計算手段は、超音波の音の拡がりを模擬した複数の音線の伝播経路を計算するレイトレース法を前記数値計算メッシュの超音波伝播経路上の各要素毎に適用することを特徴とする伝播時間差式超音波流量計の検証システム。
【請求項8】
請求項6または7記載の伝播時間差式超音波流量計の検証システムにおいて、
前記伝播時間差平均流速計算手段は、前記レイトレース法として微小時間毎の伝播経路を計算することを特徴とする伝播時間差式超音波流量計の検証システム。
【請求項9】
請求項8記載の伝播時間差式超音波流量計の検証システムにおいて、
前記伝播時間差平均流速計算手段は、前記微小時間毎の伝播経路において、前記各要素または各節点の流速ベクトルから補間計算により求めた流速ベクトルを利用することを特徴とする伝播時間差式超音波流量計の検証システム。
【請求項10】
請求項1記載の伝播時間差式超音波流量計の検証システムにおいて、
前記伝播時間差平均流速計算手段は、有限要素法または有限体積法を適用することを特徴とする伝播時間差式超音波流量計の検証システム。
【請求項11】
請求項1記載の伝播時間差式超音波流量計の検証システムにおいて、
前記数値計算メッシュ修正手段は、前記超音波流量計スプール部の超音波伝播経路上のメッシュ幅がそれ以外の部位より細分化されるように設定することを特徴とする伝播時間差式超音波流量計の検証システム。
【請求項12】
請求項1記載の伝播時間差式超音波流量計の検証システムにおいて、
前記数値計算メッシュ修正手段は、前記超音波流量計スプール部の超音波伝播経路上のメッシュが超音波伝播方向に対して直交するように設定することを特徴とする伝播時間差式超音波流量計の検証システム。
【請求項13】
伝播時間差式超音波流量計の検証方法であって、
数値解析による超音波流量計シミュレーションの許容誤差を設定する解析誤差設定工程と、
超音波流量計スプール及びその前後配管内の3次元流れの数値計算メッシュを作成するメッシュ作成工程と、
前記メッシュを利用して配管内の流速分布を計算する流体解析工程と、
前記流体解析の結果を前記メッシュの超音波流量計スプール部の各要素に割り当てる流速ベクトル取得工程と、
前記メッシュの超音波流量計スプール部と前記流速ベクトルを利用して各測線の超音波伝播経路上の平均流速を算出する積分平均流速計算工程と、
前記メッシュの超音波流量計スプール部と前記流速ベクトルを利用して超音波伝播解析を行い、伝播時間差による各測線の線平均流速を算出する伝播時間差平均流速計算工程と、
前記積分平均流速と前記伝播時間差平均流速の差を比較し、前記解析誤差設定手段で設定された許容値の範囲にあるかどうかを判定する解析誤差判定工程と、
前記解析誤差判定の結果、前記許容値を超えていれば前記数値計算メッシュを修正するメッシュ修正工程と、
前記伝播時間差平均流速から超音波流量計の流量計算結果を解析する流量計算工程と、
前記流量計算結果及び前記解析誤差を表示する解析結果表示工程と、
を備えたことを特徴とする超音波給水流量計の検証方法。
【請求項14】
伝播時間差式超音波流量計の検証方法であって、
超音波流量計を設置する対象配管部分を3次元にメッシュで区分けし、
流体解析を実施して超音波伝播経路部を含むメッシュ部分ごとの流速を求め、
前記超音波伝播経路部での流体解析結果から求めた平均流速と、前記超音波伝播経路部での超音波の伝播時間差から求めた平均流速の差を求め、
前記2つの平均流速の差を、超音波伝播誤差として解析許容誤差と比較し、解析許容誤差範囲以上であるときには、前記メッシュを細密化した上で、再度前記平均流速の差を求め、解析許容誤差範囲以内のときの超音波伝播誤差を評価することを特徴とする超音波給水流量計の検証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−132797(P2012−132797A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285524(P2010−285524)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】