説明

超音波流量計

【課題】低消費電力で高精度な計測値を得ることができる超音波流量計を提供する。
【解決手段】超音波を発生させる駆動部5と、超音波の受信信号のゼロクロス点を受信ポイント信号として出力するゼロクロス検出部7と、一対の超音波振動子2,3間の超音波の伝搬時間を計測する計時部8と、計測された伝搬時間に基づいて流路における流量を算出する演算部9とを備え、計時部8は、超音波の送信により基準クロックのカウントを開始し、受信ポイント信号の出力により停止するカウンタ15と、受信ポイント信号が入力される遅延部13と、遅延部の各遅延素子から出力される信号を基準クロックに同期して記録し、受信ポイント信号が変化した付近の時系列データを保持するエンコーダ16とを備え、演算部9は、カウンタの内容をエンコーダに記録された時系列データで補正して伝搬時間を算出し、これに基づいて流路における流量を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用してガス等の流体の流量を計測する超音波流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスや水といった流体の流量を、超音波を用いて計測する超音波流量計が知られている。図20は従来の超音波流量計の構成を示すブロック図である。
【0003】
この超音波流量計は、流量計管路1の内部に配置された第1超音波振動子2及び第2超音波振動子3、切替部4、駆動部5、増幅部6、ゼロクロス検出部7、カウンタ80、演算部9、制御部10並びに基準クロック発振回路11から構成されている。
【0004】
第1超音波振動子2は、駆動部5から切替部4を介して送られてくる駆動信号により振動して超音波を発生する。第1超音波振動子2で発生された超音波は、第2超音波振動子3で受信され、受信信号は、切替部4を介して増幅部6に送られる。
【0005】
同様に、第2超音波振動子3は、駆動部5から切替部4を介して送られてくる駆動信号により振動して超音波を発生する。第2超音波振動子3で発生された超音波は、第1超音波振動子2で受信され、受信信号は、切替部4を介して増幅部6に送られる。
【0006】
切替部4は、第1超音波振動子2及び第2超音波振動子3の何れを送信側の超音波振動子又は受信側の超音波振動子として使用するかを切り替える。具体的には、切替部4は、制御部10からの指示に応答して、駆動部5からの駆動信号を第1超音波振動子2に送るか第2超音波振動子3に送るかを切り替えると共に、前者の場合は、第2超音波振動子3からの受信信号を増幅部6に送り、後者の場合は、第1超音波振動子2からの受信信号を増幅部6に送るように切り替える。
【0007】
駆動部5は、制御部10からの指示に応答して駆動信号を生成し、切替部4を介して、送信側の超音波振動子となる第1超音波振動子2又は第2超音波振動子3に送る。駆動信号は、基準クロック発振回路11で発生される基準クロックに同期して生成される。
【0008】
増幅部6は、受信側の超音波振動子となる第1超音波振動子2又は第2超音波振動子3から切替部4を経由して送られてくる受信信号を増幅する。この増幅部6で増幅された受信信号は、ゼロクロス検出部7に送られる。
【0009】
ゼロクロス検出部7は、増幅部6から送られてくる受信信号の特定番目のゼロクロス点を検出する。このゼロクロス検出部7で検出された特定番目のゼロクロス点を表す受信ポイント信号は、制御部10に送られる。
【0010】
カウンタ80は、基準クロック発振回路11からの基準クロックに同期してカウントアップする。このカウンタ8は、制御部10からのスタート(START)信号に応じてカウントアップを開始し、ストップ(STOP)信号に応じてカウントアップを停止する。これにより、送信側の超音波振動子から発生された超音波が受信側の超音波振動子に到達するまでの伝搬時間が計測される。このカウンタ80でカウントされた伝搬時間は、演算部9に送られる。
【0011】
演算部9は、制御部10からの指示に応答して、カウンタ80から超音波の伝搬時間を読み出し、この読み出した伝搬時間に基づいて流量及び流速を計算する。
【0012】
制御部10は、超音波流量計の全体を制御する。例えば、上述したように、切替部4に対する切替の指示、駆動部5に対する駆動信号生成の指示、カウンタ80のカウントアップ動作の開始及び停止の指示、演算部9に対する演算開始の指示等を行う。
【0013】
基準クロック発生回路11は、この超音波流量計で使用される基準クロックを生成する。この基準クロック発生回路11で発生された基準クロックは、図示は省略するが、駆動部5、カウンタ80及び制御部10に送られる。
【0014】
次に、このように構成される従来の超音波流量計の動作を説明する。まず、制御部10は、第1超音波振動子2を送信側の超音波振動子として設定するための指示を切替部4に送ると共に、駆動部5に駆動信号の生成を指示する。同時に、制御部10は、カウンタ80にスタート信号を送ってカウントアップを開始させる。
【0015】
駆動部5は、制御部10からの指示に応答して駆動信号を生成し、切替部4を介して第1超音波振動子2に送る。これにより、第1超音波振動子2が振動し、流量計管路1内の流体の流れ方向に超音波を発生する。第1超音波振動子2で発生された超音波は第2超音波振動子3で受信される。
【0016】
第2超音波振動子3は、第1超音波振動子2から受信した超音波に応じて振動することにより受信信号を生成し、切替部4を介して増幅部6に送る。増幅部6は、受け取った受信信号を増幅してゼロクロス検出部7に送る。ゼロクロス検出部7は、増幅部6から受け取った受信信号の特定番目のゼロクロス点(例えば3番目のゼロクロス点)を検出し、その旨を表す受信ポイント信号を生成して制御部10に送る。
【0017】
制御部10は、ゼロクロス検出部7から受信ポイント信号を受け取ると、再度、駆動部5に駆動信号の生成を指示する。以上の動作が所定回数繰り返される。制御部10は、ゼロクロス検出部7から所定回数目の受信ポイント信号を受け取ると、カウンタ80にストップ信号を送ってカウントアップ動作を停止させる。これにより、流体の流れ方向に対する超音波の伝搬時間がカウンタ80に残されて測定が終了する。
【0018】
次に、制御部10は、第2超音波振動子3を送信側の超音波振動子として設定するための指示を切替部4に送ると共に、駆動部5に駆動信号の生成を指示する。更に、制御部10は、カウンタ8にスタート信号を送ってカウントアップを開始させる。
【0019】
駆動部5は、制御部10からの指示に応答して駆動信号を生成し、切替部4を介して第2超音波振動子3に送る。これにより、第2超音波振動子3が振動し、流量計管路1内の流体の流れと逆方向に超音波を発生する。この第2超音波振動子3で発生された超音波は第1超音波振動子2で受信される。
【0020】
第1超音波振動子2は、第2超音波振動子3から受信した超音波に応じて振動することにより受信信号を生成し、切替部4を介して増幅部6に送る。増幅部6は、受け取った受信信号を増幅してゼロクロス検出部7に送る。ゼロクロス検出部7は、増幅部6から受け取った受信信号の特定のゼロクロス点(例えば3番目のゼロクロス点)を検出し、その旨を表す受信ポイント信号を生成して制御部10に送る。
【0021】
制御部10は、ゼロクロス検出部7から受信ポイント信号を受け取ると、再度、駆動部5に駆動信号の生成を指示する。以上の動作が所定回数繰り返される。制御部10は、ゼロクロス検出部7から所定回数目の受信ポイント信号を受け取ると、カウンタ80にストップ信号を送ってカウントアップ動作を停止させる。これにより、流体の流れと逆方向に対する超音波の伝搬時間がカウンタ80に残されて測定が終了する。
【0022】
次に、制御部10は、演算部9に演算開始を指示する。演算部9は、制御部10からの指示に応答して、上記のようにして得られた流体の流れ方向に対する超音波の伝搬時間と流体の流れと逆方向に対する超音波の伝搬時間とに基づいて、所定のアルゴリズムを用いて、流量計管路1の内部を流れる流量を算出する。
【0023】
なお、関連する技術として、特許文献1は、低消費電力で計測を行う流量計測装置を開示している。この流量計測装置は、流体管路に設けられ超音波信号を送受信する第1振動子及び第2振動子と、振動子の送受信の切換手段と、振動子間相互の超音波伝搬を複数回行う繰り返し手段と、繰り返し開始時に低周波発振器の信号をカウントする第1計時手段とが設けられている。さらに第1計時手段の設定時間後に高周波発振器の信号をカウントを開始し繰り返し終了時に停止する第2計時手段と、第1計時手段と第2計時手段から総時間を算出し、それぞれの総時間の差から流量を求める流量演算手段とが設けられている。これによって、必要なときのみ高周波数のカウントを行うので、高い分解能の計測値を低消費電力で行うことができる。
【0024】
また、特許文献2は、超音波の伝搬時間を計測する基準クロックの周波数をそれ程高くしないで伝搬時間の計測制度をあげるとともに、電池駆動を実現できる超音波流量計を開示している。この超音波流量計は、送信パルスから受信波の第3波のゼロクロスポイントaまでの伝搬時間を補間法で精度よく求める。ゼロクロスポイントaの直前の基準クロックnの時点、即ちb点での受信波のレベル−V1を求める。aの直後の基準クロックn+1の時点、即ち、c点での受信波のレベルV2を求める。nと−V1及びn+1とV2を用い、b点とc点を直線補間して、ゼロクロスポイントaまでの伝搬遅延時間tをマイコンで演算して算出する。算出した伝搬時間に基づいて流速や流量を求める。
【特許文献1】特開平9−304139号公報
【特許文献2】特開2001−289681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
上述した従来の超音波流量計においては、計測中はクロックとカウンタが常時作動しており、計測精度を上げるためには基準クロックを高速にするか、計測の繰り返し回数を増やす必要がある。従って、計測精度を上げようとすると消費電力が大きくなるという問題がある。
【0026】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたものであり、その目的は、低消費電力で高精度な計測値を得ることができる超音波流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題を達成するために、第1の発明は、流路の上流側と下流側とに配置され、送信側の超音波振動子及び受信側の超音波振動子として使用される一対の超音波振動子と、基準クロックを発生する基準クロック発信回路と、送信側の超音波振動子を駆動する駆動部と、駆動部で駆動された送信側の超音波振動子において発生された超音波を受信側の超音波振動子で受信することにより生成された受信信号のゼロクロス点を検出し、受信ポイント信号として出力するゼロクロス検出部と、送信側の超音波振動子と受信側の超音波振動子との間の超音波の伝搬時間をゼロクロス検出部から出力される受信ポイント信号に基づいて計測する計時部と、計時部で計測された伝搬時間に基づいて流路における流量を算出する演算部とを備えた超音波流量計であって、計時部は、送信側の超音波振動子が駆動されることにより基準クロックのカウントを開始し、ゼロクロス検出部から受信ポイント信号が出力されることによりカウントを停止するカウンタと、各々が基準クロックの周期より小さく且つ等しい遅延時間を有する遅延素子が、総遅延時間が基準クロック周期より長くなるように直列に接続されており、ゼロクロス検出部から出力される受信ポイント信号が入力される遅延部と、遅延部の各遅延素子から出力される信号を基準クロックに同期して記録し、受信ポイント信号が変化した付近の時系列データを保持する信号保持部とを備え、演算部は、カウンタの内容を信号保持部に記録された時系列データで補正することにより伝搬時間を算出し、算出された時間に基づいて流路における流量を計測することを特徴とする。
【0028】
また、第2の発明は、流路の上流側と下流側とに配置され、送信側の超音波振動子及び受信側の超音波振動子として使用される一対の超音波振動子と、基準クロックを発生する基準クロック発信回路と、送信側の超音波振動子を駆動する駆動部と、駆動部で駆動された送信側の超音波振動子において発生された超音波を受信側の超音波振動子で受信することにより生成された受信信号のゼロクロス点を検出し、受信ポイント信号として出力するゼロクロス検出部と、ゼロクロス検出部から受信ポイント信号が出力されてから次の受信ポイント信号が出力されるまでの測定期間の間、各基準クロックの境界における受信信号の大きさを測定する測定部と、測定部で測定された受信信号の大きさに基づき測定期間における受信信号の重心を計算する重心計算部と、重心計算部で計算された重心の位置に基づき超音波の伝搬時間を求める演算部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
第1の発明によれば、送信側の超音波振動子から発生された超音波が受信側の超音波振動子で受信されて受信ポイント信号が発生されるまでの間の基準クロックをカウンタで計数し、受信ポイント信号が発生された後は、受信ポイント信号が基準クロックより小さい遅延時間を有する遅延素子を複数直列に並べた遅延部により受信ポイント信号が変化した付近の時系列データを取得し、このデータを元に受信ポイント信号が変化した時刻を求め、カウンタの内容を補正する補正することにより、送信側の超音波振動子と受信側の超音波振動子との間の超音波の伝搬時間を測定するように構成したので、基準クロックより細かい時間分解能で伝搬時間を測定することができる。また、信号記録部に記録された時系列データに対してノイズ補正をかけることで、受信ポイント信号にノイズが乗っても正確な信号位置を検出することができる。従って、基準クロックの周波数を上げることなく伝搬時間の時間分解能を向上させることができる。また、基準クロックの周波数を上げる必要がないので、消費電力を低く抑えることができる。
【0030】
また、第2の発明によれば、受信ポイント信号が出力されてから次の受信ポイント信号が信号されるまでの測定期間の間、各基準クロックの境界における受信信号の大きさを測定し、測定された受信信号の大きさに基づき前記測定期間における受信信号の重心を計算し、計算された重心の位置に基づき超音波の伝搬時間を求めるように構成したので、クロック周波数を上げることなく、時間分解能を向上させることができる。また、測定部としてA/Dコンバータを用いた場合、A/Dコンバータは受信信号の半周期だけ動作させればよいので、計測全体からみれば消費電力を小さく抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、従来の超音波流量計と同一又は相当する構成部分には従来と同一の符号を付して説明する。また、以下で説明する各実施例において、同一又は相当する構成部分には同一の符号を付して説明する。
【実施例1】
【0032】
図1は本発明の実施例1に係る超音波流量計の構成を示すブロック図である。この超音波流量計は、流量計管路1の内部に配置された第1超音波振動子2及び第2超音波振動子3、切替部4、駆動部5、増幅部6、ゼロクロス検出部7、計時部8、演算部9、制御部10並びに基準クロック発振回路11から構成されている。
【0033】
第1超音波振動子2は、駆動部5から切替部4を介して送られてくる駆動信号により振動して超音波を発生する。第1超音波振動子2で発生された超音波は、第2超音波振動子3で受信され、受信信号は、切替部4を介して増幅部6に送られる。
【0034】
同様に、第2超音波振動子3は、駆動部5から切替部4を介して送られてくる駆動信号により振動して超音波を発生する。第2超音波振動子3で発生された超音波は、第1超音波振動子2で受信され、受信信号は、切替部4を介して増幅部6に送られる。
【0035】
切替部4は、第1超音波振動子2及び第2超音波振動子3の何れを送信側の超音波振動子又は受信側の超音波振動子として使用するかを切り替える。具体的には、切替部4は、制御部10からの指示に応答して、駆動部5からの駆動信号を第1超音波振動子2に送るか第2超音波振動子3に送るかを切り替えると共に、前者の場合は、第2超音波振動子3からの受信信号を増幅部6に送り、後者の場合は、第1超音波振動子2からの受信信号を増幅部6に送るように切り替える。
【0036】
駆動部5は、制御部10からの指示に応答して駆動信号を生成し、切替部4を介して、送信側の超音波振動子となる第1超音波振動子2又は第2超音波振動子3に送る。駆動信号は、基準クロック発振回路11で発生される基準クロックに同期して生成される。従って、第1超音波振動子2及び第2超音波振動子3は、基準クロックに同期して駆動されることになる。
【0037】
増幅部6は、受信側の超音波振動子となる第1超音波振動子2又は第2超音波振動子3から切替部4を経由して送られてくる受信信号を増幅する。この増幅部6で増幅された受信信号は、ゼロクロス検出部7に送られる。
【0038】
ゼロクロス検出部7は、増幅部6から送られてくる受信信号の特定番目のゼロクロス点を検出する。このゼロクロス検出部7で検出された特定番目のゼロクロス点を表す受信ポイント信号は、計時部8及び制御部10に送られる。
【0039】
計時部8は、送信側の超音波振動子から発生された超音波が受信側の超音波振動子に到達するまでの伝搬時間を計測する。この計時部8の詳細は後述する。この計時部8で計測された伝搬時間は、演算部9に送られる。
【0040】
演算部9は、制御部10からの指示に応答して、計時部8から超音波の伝搬時間を読み出し、この読み出した伝搬時間に基づいて流量及び流速を計算する。
【0041】
制御部10は、超音波流量計の全体を制御する。例えば、上述したように、切替部4に対する切替の指示、駆動部5に対する駆動信号生成の指示、計時部8の動作の開始及び停止許可の指示、演算部9に対する演算開始の指示等を行う。
【0042】
基準クロック発生回路11は、この超音波流量計で使用される基準クロックを生成する。この基準クロック発生回路11で発生された基準クロックは、図示は省略するが、駆動部5、計時部8及び制御部10に送られる。
【0043】
次に、計時部8の詳細を説明する。図2は計時部8の構成を示すブロック図である。計時部8は、遅延部13、データレジスタ14、カウンタ15及びエンコーダ16から構成されている。
【0044】
遅延部13は、n−1個(nは2以上の正の整数)の遅延素子DL1〜DLn−1が直列に接続されて構成されている。遅延素子DL1〜DLn−1の各々は、基準クロックの周期の1/nの遅延時間を有する。従って、全遅延素子DL1〜DLn−1による総遅延時間が基準クロックに等しくなっている。また、初段の遅延素子DL1には、ゼロクロス検出部7からの受信ポイント信号が入力される。
【0045】
初段の遅延素子DL1の入力信号(受信ポイント信号に等しい)及び各遅延素子DL1〜DLn−1の出力信号は、データD0〜Dn−1としてデータレジスタ14に送られる。
【0046】
データレジスタ14は、n個のDタイプのフリップフロップから成り、基準クロックに同期してデータD0〜Dn−1を記憶する。このデータレジスタ14の初段のフリップフロップの出力Q0は、ストップ信号(以下、「STOP信号」という)としてカウンタ15に送られる。また、2段目以降のフリップフロップの出力Q1〜Qn−1はエンコーダ16に送られる。
【0047】
カウンタ15は、制御部10からのスタート信号(以下、「START信号」という)により基準クロックに同期してカウントアップ動作を開始し、制御部10からストップ許可信号(以下、「STOP許可信号」という)が供給されており且つデータレジスタ14からSTOP信号が出力された場合にカウントアップ動作を停止する。このカウンタ15の内容は、上位データとして演算部9に送られる。
【0048】
エンコーダ16は、本発明の信号記録部に対応し、データレジスタ14の出力Q1〜Qn−1をエンコードし、受信ポイント信号が通過した遅延素子の段数を示す値を出力する。即ち、エンコーダ16は、各遅延素子から出力される信号を基準クロックに同期して記録し、受信ポイント信号が変化した付近の時系列データを保持する。このエンコーダ16の出力は、下位データとして演算部9に送られる。
【0049】
次に、本発明の実施例1に係る超音波流量計の動作を、図3に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0050】
まず、制御部10は、第1超音波振動子2を送信側の超音波振動子として設定するための指示を切替部4に送ると共に、駆動部5に駆動信号の生成を指示する。また、制御部10は、カウンタ15にSTART信号を送る。これにより、カウンタ15は、基準クロックが入力される毎にカウントアップが行われる状態になる。更に、制御部10は、STOP許可信号をディセイブルにする。これにより、STOP許可信号がイネーブルにされるまで、データレジスタ14からカウンタ15にSTOP信号が送られてきても、カウンタ15のカウントアップ動作は停止しない。
【0051】
駆動部5は、制御部10からの指示に応答して駆動信号を生成し、切替部4を介して第1超音波振動子2に送る。これにより、第1超音波振動子2が振動し、流量計管路1内の流体の流れ方向に超音波を発生する。この第1超音波振動子2で発生された超音波は第2超音波振動子3で受信される。
【0052】
第2超音波振動子3は、第1超音波振動子2から受信した超音波に応じて振動することにより受信信号を生成し、切替部4を介して増幅部6に送る。増幅部6は、受け取った受信信号を増幅してゼロクロス検出部7に送る。ゼロクロス検出部7は、増幅部6から受け取った受信信号の特定番目のゼロクロス点(例えば3番目のゼロクロス点)を検出すると、その旨を表す受信ポイント信号を計時部8及び制御部10に送る。
【0053】
計時部8は、受信ポイント信号に応じてSTOP信号を生成するが、STOP許可信号がディセイブルにされているため、カウンタ15のカウントアップ動作は停止されない。また、受信ポイント信号が遅延部13を通過することによりエンコーダ16から何らかの値が出力されるが、この値は使用されない。
【0054】
一方、制御部10は、ゼロクロス検出部7から受信ポイント信号を受け取ると、再度、駆動部5に駆動信号の生成を指示する。以上の動作が所定回数繰り返される。従って、この繰り返しの間は、カウンタ15の内容のカウントアップのみが行われる。
【0055】
制御部10は、ゼロクロス検出部7から所定回数目の受信ポイント信号を受け取ると、ストップ許可信号をイネーブルにする。そして、再度、駆動部5に駆動信号の生成を指示する。駆動部5は、上述したように、制御部10からの指示に応答して駆動信号を生成し、切替部4を介して第1超音波振動子2に送る。これにより、第1超音波振動子2が振動し、流量計管路1内の流体の流れ方向に超音波を発生する。この第1超音波振動子2で発生された超音波は第2超音波振動子3で受信される。
【0056】
第2超音波振動子3は、第1超音波振動子2から受信した超音波に応じて振動することにより受信信号を生成し、切替部4を介して増幅部6に送る。増幅部6は、受け取った受信信号を増幅してゼロクロス検出部7に送る。ゼロクロス検出部7は、増幅部6から受け取った受信信号の特定番目のゼロクロス点を検出しない場合は、図3(A)の基準クロック周期CK1に示すように、受信ポイント信号を生成しない。この場合、図3(B)に示すように、基準クロック周期CK1の終わりでカウンタ15の内容が基準クロックに同期してカウントアップされる。これにより、カウンタ15の内容は、カウント値N−2からカウント値N−1に変化する。
【0057】
一方、ゼロクロス検出部7は、増幅部6から受け取った受信信号の特定番目のゼロクロス点を検出した場合は、図3(A)の基準クロック周期CK2に示すように、受信ポイント信号を生成し、計時部8及び制御部10に送る。計時部8では、ゼロクロス検出部7からの受信ポイント信号が遅延部13に入力される。遅延部13は、図3(C)〜図3(F)に示すように、受信ポイント信号を順次遅延させたデータD1、D2、…、Di、Di+1、…を出力する。図3に示した例では、データD1〜Di(iは正の整数でi≦nである)が基準クロック周期CK2内で変化し、データDi+1以降が次の基準クロック周期CK3内で変化する状態を示している。
【0058】
基準クロック周期CK3になると、図3(B)に示すように、カウンタ15の内容がカウント値N−1からカウント値Nに変化すると共に、その先頭で、遅延部13から出力されるデータD0〜Dn−1がデータレジスタ14に取り込まれる。これにより、データレジスタ14の初段のフリップフロップの出力Q0がSTOP信号としてカウンタ15に供給される。この時点では、STOP許可信号がイネーブルであるため、STOP信号に応じてカウンタ15のカウントアップ動作は停止される。従って、図3(B)に示すように、基準クロック周期CK3以降は、カウンタ15はカウント値Nを維持し続ける。
【0059】
また、基準クロック周期CK3では、データレジスタ14の2段目以降のフリップフロップの出力Q1〜Qn−1がエンコーダ16に送られる。エンコーダ16は、図4に示すように、入力されるデータQ1〜Qn−1に対して0〜n−1の値を出力する。換言すれば、エンコーダ16は、受信ポイント信号が通過した遅延素子の段数を示す値を出力する。即ち、各遅延素子から出力される信号を基準クロックに同期して記録し、受信ポイント信号が変化した付近の時系列データを保持する。図3に示した例では、データD1〜Diが基準クロック周期CK2の期間内で変化している(遅延素子を通過した)ので、図3(G)に示すように、エンコーダ16は、下位データとして「i」を出力する。このエンコーダ16から出力される「i」は、演算部9に送られる。
【0060】
演算部9は、下記式(1)に従って、流体の流れ方向に対する超音波の伝搬時間Tpを算出し、内部に保持する。
【0061】
伝搬時間Tp={N−(i/n)}×T…(1)
ここで、Tは基準クロック周期である。
【0062】
次に、制御部10は、第2超音波振動子3を送信側の超音波振動子として設定するための指示を切替部4に送ると共に、駆動部5に駆動信号の生成を指示する。また、制御部10は、カウンタ15にSTART信号を送る。これにより、カウンタ15は、再び、基準クロックが入力される毎にカウントアップが行われる状態になる。更に、制御部10は、STOP許可信号をディセイブルにする。これにより、STOP許可信号がイネーブルにされるまで、データレジスタ14からカウンタ15にSTOP信号が送られてきても、カウンタ15のカウントアップ動作は停止しない。
【0063】
駆動部5は、制御部10からの指示に応答して駆動信号を生成し、切替部4を介して第2超音波振動子3に送る。これにより、第2超音波振動子3が振動し、流量計管路1内の流体の流れと逆方向に超音波を発生する。この第2超音波振動子3で発生された超音波は第1超音波振動子2で受信される。
【0064】
第1超音波振動子2は、第2超音波振動子3から受信した超音波に応じて振動することにより受信信号を生成し、切替部4を介して増幅部6に送る。増幅部6は、受け取った受信信号を増幅してゼロクロス検出部7に送る。ゼロクロス検出部7は、増幅部6から受け取った受信信号の特定番目のゼロクロス点(例えば3番目のゼロクロス点)を検出すると、その旨を表す受信ポイント信号を計時部8及び制御部10に送る。
【0065】
計時部8は、受信ポイント信号に応じてSTOP信号を生成するが、STOP許可信号がディセイブルにされているため、カウンタ15のカウントアップ動作は停止されない。また、受信ポイント信号が遅延部13を通過することによりエンコーダ16から何らかの値が出力されるが、この値は使用されない。
【0066】
一方、制御部10は、ゼロクロス検出部7から受信ポイント信号を受け取ると、再度、駆動部5に駆動信号の生成を指示する。以上の動作が所定回数繰り返される。従って、この繰り返しの間は、カウンタ15の内容のカウントアップのみが行われる。
【0067】
制御部10は、ゼロクロス検出部7から所定回数目の受信ポイント信号を受け取ると、ストップ許可信号をイネーブルにする。そして、再度、駆動部5に駆動信号の生成を指示する。駆動部5は、上述したように、制御部10からの指示に応答して駆動信号を生成し、切替部4を介して第2超音波振動子3に送る。これにより、第2超音波振動子3が振動し、流量計管路1内の流体の流れと逆方向に超音波を発生する。この第2超音波振動子3で発生された超音波は第1超音波振動子2で受信される。
【0068】
第1超音波振動子2は、第2超音波振動子3から受信した超音波に応じて振動することにより受信信号を生成し、切替部4を介して増幅部6に送る。増幅部6は、受け取った受信信号を増幅してゼロクロス検出部7に送る。以下、上述した流体の流れ方向の超音波の伝搬時間を算出する手順と同じ手順で、流体の流れと逆方向の超音波の伝搬時間が算出される。
【0069】
次に、演算部9は、上記のようにして得られた流体の流れ方向に対する超音波の伝搬時間と流体の流れと逆方向に対する超音波の伝搬時間とに基づいて、所定のアルゴリズムを用いて、流量計管路1の内部を流れる流量を算出する。
【0070】
以上説明したように、実施例1に係る超音波流量計によれば、送信側の超音波振動子から発生された超音波が受信側の超音波振動子で受信されて受信ポイント信号が発生されるまでの間の基準クロックをカウンタ15で計数し、受信ポイント信号が発生された後は、該受信ポイント信号が基準クロックより小さい遅延時間を有する遅延素子を複数直列に並べた遅延部13により受信ポイント信号が変化した付近の時系列データを取得し、このデータを元に受信ポイント信号が変化した時刻を求め、カウンタ15の内容をエンコーダ16の出力で補正することにより、送信側の超音波振動子と受信側の超音波振動子との間の超音波の伝搬時間を計測するように構成したので、基準クロックより細かい時間分解能で伝搬時間を測定することができる。従って、基準クロックの周波数を上げることなく、伝搬時間の時間分解能を向上させることができる。また、基準クロックの周波数を上げる必要がないので、消費電力を低く抑えることができる。
【実施例2】
【0071】
本発明の実施例2に係る超音波流量計は、伝搬時間を算出する毎に、1基準クロック周期の期間中に受信ポイント信号が何段の遅延素子を通ったかを測定し、遅延素子が有する遅延時間の変動を補正することを特徴とする。
【0072】
図5は本発明の実施例2に係る超音波流量計の計時部の構成を示すブロック図である。なお、超音波流量計の計時部以外の構成は、図1に示した実施例1の構成と同じであるのでその説明を省略する。
【0073】
本発明の実施例2に係る超音波流量計の計時部8aは、遅延部13a、データレジスタ14a、カウンタ15、エンコーダ16、データレジスタ17及び引算部18から構成されている。データレジスタ17は、本発明の記憶部に対応する。
【0074】
遅延部13aは、2m個(mは2以上の正の整数)の遅延素子DL1〜DL2mが直列に接続されて構成されている。遅延素子DL1〜DL2mの各々は、基準クロックの周期の1/m以上の遅延時間を有する。従って、全遅延素子DL1〜DL2mによる総遅延時間は基準クロックの2倍以上になっている。また、初段の遅延素子DL1には、ゼロクロス検出部7からの受信ポイント信号が入力される。
【0075】
初段の遅延素子DL1の入力信号(受信ポイント信号に等しい)及び各遅延素子DL1〜DL2mの出力信号は、データD0〜D2mとしてデータレジスタ14aに送られる。
【0076】
データレジスタ14aは、2m+1個のDタイプのフリップフロップから成り、基準クロックに同期してデータD0〜D2mを記憶する。このデータレジスタ14aの初段のフリップフロップの出力Q0は、STOP信号としてカウンタ15に送られる。また、2段目以降のフリップフロップの出力Q1〜Q2mはエンコーダ16に送られる。
【0077】
カウンタ15は、制御部10からのSTART信号により基準クロックに同期してカウントアップ動作を開始し、制御部10からSTOP許可信号が供給されており且つデータレジスタ14aからSTOP信号が出力された場合にカウントアップ動作を停止する。このカウンタ15の内容は、上位データとして演算部9に送られる。
【0078】
エンコーダ16は、データレジスタ14aの出力Q1〜Q2mをエンコードし、受信ポイント信号が通過した遅延素子の段数を示す値を出力する。即ち、各遅延素子から出力される信号を基準クロックに同期して記録し、受信ポイント信号が変化した付近の時系列データを保持する。このエンコーダ16の出力は、データレジスタ17及び引算部18に送られる。
【0079】
データレジスタ17は、複数(エンコーダ16から出力される値を記憶可能な数)のDタイプのフリップフロップから成り、基準クロックに同期してエンコーダ16の出力を記憶する。このデータレジスタ17の出力は、引算部18に送られると共に、下位データとして演算部9に送られる。
【0080】
引算部18は、エンコーダ16の出力からデータレジスタ17の出力を減算し、補正データとして演算部9に送る。補正データは、1基準クロック周期の間に受信ポイント信号が通過した遅延素子の段数を表している。
【0081】
次に、本発明の実施例2に係る超音波流量計の動作を、図6に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0082】
制御部10が、ゼロクロス検出部7から所定回数目の受信ポイント信号を受け取って第1超音波振動子2を駆動し、この駆動により第2超音波振動子3で生成された受信信号を増幅してゼロクロス検出部7に送るまでの動作は、上述した実施例1に係る超音波流量計の動作と同じである。
【0083】
ゼロクロス検出部7は、増幅部6から受け取った受信信号の特定番目のゼロクロス点を検出しない場合は、図6(A)の基準クロック周期CK1に示すように、受信ポイント信号を生成しない。この場合、図6(B)に示すように、基準クロック周期CK1の終わりでカウンタ15の内容が基準クロックに同期してカウントアップされる。これにより、カウンタ15の内容は、カウント値N−2からカウント値N−1に変化する。
【0084】
一方、ゼロクロス検出部7は、増幅部6から受け取った受信信号の特定番目のゼロクロス点を検出した場合は、図6(A)の基準クロック周期CK2に示すように、受信ポイント信号を生成し、計時部8a及び制御部10に送る。計時部8aでは、ゼロクロス検出部7からの受信ポイント信号が遅延部13aに入力される。遅延部13aは、図6(C)〜図6(H)に示すように、受信ポイント信号を順次遅延させたデータD1、D2、…、Di、Di+1、…、Di+n、Di+n+1、…(i及びnは正の整数でi、n≦mである)を出力する。図6に示した例では、データD1〜Diが基準クロック周期CK2内で変化し、データDi+1〜Di+nが次の基準クロック周期CK3内で変化し、データDi+n+1以降が更に次の基準クロック周期CK4内で変化する状態を示している。
【0085】
基準クロック周期CK3になると、図6(B)に示すように、カウンタ15の内容がカウント値N−1からカウント値Nに変化すると共に、その先頭で、遅延部13aから出力されるデータD0〜D2mがデータレジスタ14aに取り込まれる。これにより、データレジスタ14aの初段のフリップフロップの出力Q0がSTOP信号としてカウンタ15に供給される。この時点では、STOP許可信号がイネーブルであるため、STOP信号に応じてカウンタ15のカウントアップ動作は停止される。従って、図6(B)に示すように、基準クロック周期CK3以降は、カウンタ15はカウント値Nを維持し続ける。
【0086】
また、次の基準クロック周期CK3では、データレジスタ14aの2段目以降のフリップフロップの出力Q1〜Q2mがエンコーダ16に送られる。エンコーダ16は、受信ポイント信号が通過した遅延素子の段数を示す値を出力する。即ち、各遅延素子から出力される信号を基準クロックに同期して記録し、受信ポイント信号が変化した付近の時系列データを保持する。図6に示した例では、データD1〜Diが基準クロック周期CK2の期間内で変化している(遅延素子を通過した)ので、図6(K)に示すように、エンコーダ16は、「i」を出力する。このエンコーダ16から出力される「i」は、データレジスタ17及び引算部18に送られる。
【0087】
更に、次の基準クロック周期CK4の先頭では、図6(J)に示すように、エンコーダ16の出力「i」がデータレジスタ14aに取り込まれる。また、基準クロック周期CK4では、データレジスタ14aの2段目以降のフリップフロップの出力Q1〜Q2mがエンコーダ16に送られる。エンコーダ16は、受信ポイント信号が通過した遅延素子の段数を示す値を出力する。即ち、各遅延素子から出力される信号を基準クロックに同期して記録し、受信ポイント信号が変化した付近の時系列データを保持する。図6に示した例では、データD1〜Di+nが基準クロック周期CK2及びCK3の期間内で更に変化している(遅延素子を通過した)ので、図6(K)に示すように、エンコーダ16は、「j」(jは正の整数でi<j)を出力する。このエンコーダ16から出力される「j」は、データレジスタ17及び引算部18に送られる。
【0088】
引算部18は、エンコーダ16の出力である「j」からデータレジスタ17の出力である「i」を減算する。今、「n=j−i」とすると、nは1基準クロック周期CK3で受信ポイント信号が通過し遅延素子の段数を表しており、上述した実施例1におけるnに等しい。この引算部18で得られた「n=j−i」は、補正データとして演算部9に送られる。演算部9は、上述した式(1)に従って、流体の流れ方向に対する超音波の伝搬時間Tpを算出し、内部に保持する。
【0089】
次に、上述した実施例1と同様の手順で、流体の流れと逆方向に対する超音波の伝搬時間Tpを算出する。その後、演算部9は、上記のようにして得られた流体の流れ方向に対する超音波の伝搬時間と流体の流れと逆方向に対する超音波の伝搬時間とに基づいて、所定のアルゴリズムを用いて、流量計管路1の内部を流れる流量を算出する。
【0090】
以上説明したように、実施例2に係る超音波流量計によれば、伝搬時間を算出する都度、1基準クロック周期の期間中に受信ポイント信号が通過する遅延素子の段数が算出されるので、遅延部13aを構成する遅延素子の遅延時間が温度や電源電圧等の変動によって変動しても正確な伝搬時間を求めることができる。
【実施例3】
【0091】
本発明の実施例3に係る超音波流量計は、遅延部の最終段の遅延素子から出力される信号を反転させて遅延部の入力側へフィードバックさせることにより受信ポイント信号が遅延部を2回通るようにして、遅延素子の数を減らしたことを特徴とする。
【0092】
図7は本発明の実施例3に係る超音波流量計の計時部の構成を示すブロック図である。なお、超音波流量計の計時部以外の構成は、図1に示した実施例1の構成と同じであるので説明を省略する。
【0093】
本発明の実施例3に係る超音波流量計の計時部8bは、遅延部13、データレジスタ14、カウンタ15、エンコーダ16、データレジスタ17、引算部18及びフィードバック部19から構成されている。データレジスタ17は、本発明の記憶部に対応する。
【0094】
遅延部13は、m個(mは2以上の正の整数)の遅延素子DL1〜DLmが直列に接続されて構成されている。遅延素子DL1〜DLmの各々は、基準クロックの周期の1/mより大きい遅延時間を有する。従って、全遅延素子DL1〜DLmによる総遅延時間は基準クロックより大きくなっている。また、初段の遅延素子DL1には、フィードバック部19の出力が入力される。
【0095】
初段の遅延素子DL1の入力信号及び遅延素子DL1〜DLm−1の出力信号は、データD0〜Dm−1としてデータレジスタ14に送られる。また、最終段の遅延素子DLmの出力信号は、データDmとしフィードバック部19に送られる。
【0096】
データレジスタ14は、m個のDタイプのフリップフロップから成り、基準クロックに同期してデータD0〜Dm−1を記憶する。このデータレジスタ14の初段のフリップフロップの出力Q0は、STOP信号としてカウンタ15に送られる。また、2段目からm段目のフリップフロップの出力Q1〜Qm−1はエンコーダ16に送られる。
【0097】
カウンタ15は、制御部10からのSTART信号により基準クロックに同期してカウントアップ動作を開始し、制御部10からSTOP許可信号が供給されており且つデータレジスタ14からSTOP信号が出力された場合にカウントアップ動作を停止する。このカウンタ14の内容は、上位データとして演算部9に送られる。
【0098】
エンコーダ16は、データレジスタ14の出力Q1〜Q2mをエンコードし、受信ポイント信号が通過した遅延素子の段数を示す値を出力する。即ち、各遅延素子から出力される信号を基準クロックに同期して記録し、受信ポイント信号が変化した付近の時系列データを保持する。このエンコーダ16の出力は、データレジスタ17及び引算部18に送られる。データレジスタ17及び引算部18の構成は、実施例2のそれらと同じである。
【0099】
フィードバック部19は、インバータ19a及びANDゲート19bから構成されている。インバータ19aは、遅延部13の最終段の遅延素子DLmからの信号Dmを反転してANDゲート19bの一方の入力端子に送る。ANDゲート19bの他方の入力端子には、ゼロクロス検出部7からの受信ポイント信号が入力される。ANDゲート19bは、受信ポイント信号と遅延部13の最終段の遅延素子DLmからの信号Dmを反転した信号との論理積をとり、遅延部13の初段の遅延素子DL1に送る。
【0100】
次に、本発明の実施例3に係る超音波流量計の動作を、図8に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0101】
制御部10が、ゼロクロス検出部7から所定回数目の受信ポイント信号を受け取って第1超音波振動子2を駆動し、この駆動により第2超音波振動子3で生成された受信信号を増幅してゼロクロス検出部7に送るまでの動作は、上述した実施例1に係る超音波流量計の動作と同じである。
【0102】
ゼロクロス検出部7は、増幅部6から受け取った受信信号の特定番目のゼロクロス点を検出しない場合は、図8(A)の基準クロック周期CK1に示すように、受信ポイント信号を生成しない。この場合、図8(B)に示すように、基準クロック周期CK1の終わりでカウンタ15の内容が基準クロックに同期してカウントアップされる。これにより、カウンタ15の内容は、カウント値N−2からカウント値N−1に変化する。
【0103】
一方、ゼロクロス検出部7は、増幅部6から受け取った受信信号の特定番目のゼロクロス点を検出した場合は、図8(A)の基準クロック周期CK2に示すように、受信ポイント信号を生成し、計時部8b及び制御部10に送る。計時部8bでは、ゼロクロス検出部7からの受信ポイント信号がフィードバック部19に入力される。フィードバック部19は、遅延部13の最終段の遅延素子DLmからの信号Dmが出力されていない状態では、受信ポイント信号を通過させて遅延部13に送る。
【0104】
遅延部13は、図8(C)〜図8(H)に示すように、受信ポイント信号を順次遅延させたデータD1、D2、…、Di+n−m、Di+1+n−m、…、Di、Di+1、…(i及びnは正の整数でi、n≦mである)を出力する。図8に示した例では、データD1〜Diが基準クロック周期CK2内で変化し、データDi+1が次の基準クロック周期CK3内で「0」から「1」に変化する状態を示している。
【0105】
基準クロック周期CK3になると、図8(B)に示すように、カウンタ15の内容がカウント値N−1からカウント値Nに変化すると共に、その先頭で、遅延部13から出力されるデータD0〜Dm−1がデータレジスタ14に取り込まれる。これにより、データレジスタ14の初段のフリップフロップの出力Q0がSTOP信号としてカウンタ15に供給される。この時点では、STOP許可信号がイネーブルであるため、STOP信号に応じてカウンタ15のカウントアップ動作は停止される。従って、図8(B)に示すように、基準クロック周期CK3以降は、カウンタ15はカウント値Nを維持し続ける。
【0106】
また、次の基準クロック周期CK3では、データレジスタ14の2段目以降のフリップフロップの出力Q1〜Qm−1がエンコーダ16に送られる。エンコーダ16は、図9に示すように、入力されるデータQ1〜Qm−1に対して0〜i+mの値を出力する。換言すれば、受信ポイント信号が通過した遅延素子の段数を示す値を出力する。即ち、各遅延素子から出力される信号を基準クロックに同期して記録し、受信ポイント信号が変化した付近の時系列データを保持する。図8に示した例では、データD1〜Diが基準クロック周期CK2の期間内で「0」から「1」に変化している(遅延素子を通過した)ので、図8(K)に示すように、エンコーダ16は、データQ1〜Qm−1の中の「1」の数に対応する「i」を出力する。このエンコーダ16から出力される「i」は、データレジスタ17及び引算部18に送られる。
【0107】
また、受信ポイント信号が遅延部13を通過して最終段の遅延素子DLmから信号Dmが出力されると、フィードバック部19において受信ポイント信号の通過が阻止される。従って、以後は、図8(C)〜図8(H)に示すように、「1」から「0」に変化する受信ポイント信号を順次遅延させたデータD1、D2、…、Di+n−m、Di+1+n−m、…、Di、Di+1、…を出力する。
【0108】
更に、次の基準クロック周期CK4の先頭では、図8(J)に示すように、エンコーダ16の出力「i」がデータレジスタ14に取り込まれる。また、基準クロック周期CK4では、データレジスタ14の2段目以降のフリップフロップの出力Q1〜Qm−1がエンコーダ16に送られる。エンコーダ16は、エンコーダ16は、受信ポイント信号が通過した遅延素子の段数を示す値を出力する。即ち、各遅延素子から出力される信号を基準クロックに同期して記録し、受信ポイント信号が変化した付近の時系列データを保持する。図8に示した例では、データD1〜Di+n−1が基準クロック周期CK3の期間内で「1」から「0」に変化している(遅延素子を通過した)ので、図8(K)に示すように、エンコーダ16は、「j」(jは正の整数でi<j)を出力する。このエンコーダ16から出力される「j」は、データレジスタ17及び引算部18に送られる。
【0109】
引算部18は、エンコーダ16の出力である「j」からデータレジスタ17の出力である「i」を減算する。今、「n=j−i」とすると、nは1基準クロック周期CK3で受信ポイント信号が通過し遅延素子の段数を表しており、上述した実施例1におけるnに等しい。この引算部18で得られた「n=j−i」は、補正データとして演算部9に送られる。演算部9は、上述した式(1)に従って、流体の流れ方向に対する超音波の伝搬時間Tpを算出し、内部に保持する。
【0110】
次に、上述した実施例1と同様の手順で、流体の流れと逆方向に対する超音波の伝搬時間Tpを算出する。その後、演算部9は、上記のようにして得られた流体の流れ方向に対する超音波の伝搬時間と流体の流れと逆方向に対する超音波の伝搬時間とに基づいて、所定のアルゴリズムを用いて、流量計管路1の内部を流れる流量を算出する。
【0111】
以上説明したように、実施例3に係る超音波流量計によれば、上述した実施例2によって奏される効果に加え、遅延部13を通過した受信ポイント信号をフィードバック部19で反転させて再び遅延部13を通過させ、初回は受信ポイント信号が「0」から「1」に変化した数に基づいて、2回目は受信ポイント信号が「1」から「0」に変化した数に基づいて受信ポイント信号が通過した遅延素子の段数を求めるようにしたので、遅延部13を構成する遅延素子の数をほぼ半数にすることができる。
【実施例4】
【0112】
本発明の実施例4に係る超音波流量計は、受信ポイント信号及び遅延部からフィードバックされた信号が遅延部を何回通ったかをカウントすることで、遅延部を構成する遅延素子の数を減らすことを特徴とする。
【0113】
図10は本発明の実施例4に係る超音波流量計の計時部の構成を示すブロック図である。なお、超音波流量計の計時部以外の構成は、図1に示した実施例1の構成と同じであるので説明を省略する。
【0114】
本発明の実施例3に係る超音波流量計の計時部8cは、遅延部13c、データレジスタ14c、カウンタ15、エンコーダ16、データレジスタ17、引算部18、フィードバック部19、カウンタ20及びデータレジスタ21から構成されている。データレジスタ17は、本発明の第2記憶部に対応し、データレジスタ21は、本発明の第1記憶部に対応する。
【0115】
遅延部13cは、4個の遅延素子DL1〜DL4が直列に接続されて構成されている。遅延素子DL1〜DL4の各々は、基準クロックの周期より短い任意の遅延時間を有する。従って、初段の遅延素子DL1には、フィードバック部19の出力が入力される。
【0116】
初段の遅延素子DL1の入力信号及び遅延素子DL1〜DL3の出力信号は、データD0〜D3としてデータレジスタ14cに送られる。また、最終段の遅延素子DL4の出力信号は、フィードバック部19及びカウンタ20に送られる。
【0117】
データレジスタ14cは、4個のDタイプのフリップフロップから成り、基準クロックに同期してデータD0〜D3を記憶する。このデータレジスタ14cの初段のフリップフロップの出力Q0は、STOP信号としてカウンタ15に送られる。また、2段目から4段目のフリップフロップの出力Q1〜Q3はエンコーダ16に送られる。
【0118】
カウンタ15は、制御部10からのSTART信号により基準クロックに同期してカウントアップ動作を開始し、制御部10からSTOP許可信号が供給されており且つデータレジスタ14cからSTOP信号が出力された場合にカウントアップ動作を停止する。このカウンタ14cの内容は、上位データとして演算部9に送られる。
【0119】
カウンタ20は、遅延部13cの最終段の遅延素子DL4から出力される信号の変化をカウントする。従って、このカウンタ20の内容は、受信ポイント信号が遅延素子を4段通過する毎にカウントアップされる。このカウンタ20の出力は、データレジスタ21に送られる。
【0120】
データレジスタ21は、カウンタ20から送られてくるカウント値を基準クロックに同期して記憶する。従って、このデータレジスタ21は、複数(カウンタ20から出力される値を記憶可能な数)のDタイプのフリップフロップから構成されている。このデータレジスタ21の内容は、エンコーダ16に送られる。
【0121】
エンコーダ16は、データレジスタ14cの出力Q0〜Q3及びデータレジスタ21の出力をエンコードし、受信ポイント信号が通過した遅延素子の段数を示す値を出力する。即ち、各遅延素子から出力される信号を基準クロックに同期して記録し、受信ポイント信号が変化した付近の時系列データを保持する。このエンコーダ16の出力は、データレジスタ17及び引算部18に送られる。データレジスタ17、引算部18の構成は実施例2のそれらと同じである。
【0122】
フィードバック部19は、インバータ19a及びANDゲート19bから構成されている。インバータ19aは、遅延部13の最終段の遅延素子DL4からの信号を反転してANDゲート19bの一方の入力端子に送る。ANDゲート19bの他方の入力端子には、ゼロクロス検出部7からの受信ポイント信号が入力される。ANDゲート19bは、受信ポイント信号と遅延部13cの最終段の遅延素子DL4からの信号を反転した信号との論理積をとり、遅延部13cの初段の遅延素子DL1に送る。
【0123】
次に、本発明の実施例4に係る超音波流量計の動作は、カウンタ20で受信ポイント信号が遅延素子を通過した段数をカウントすることにより得られたカウント値とデータレジスタ14cからのデータD0〜D4とをエンコードして受信ポイント信号が遅延素子を通過した段数を求める点を除けば、実施例3に係る超音波流量計の動作と同じである。
【0124】
以上説明したように、この実施例4に係る超音波流量計によれば、上述した実施例3によって奏される効果に加え、遅延部13cを構成する遅延素子の数を実施例3に比べて更に少なくすることができる。なお、実施例4では、遅延素子の数を「4」とした例を説明したが、遅延素子の数は「4」に限定されず、任意である。
【実施例5】
【0125】
本発明の実施例5に係る超音波流量計は、ゼロクロス点から次のゼロクロス点までの期間中、各基準クロックの境界における受信信号の大きさを求め、求められた受信信号の大きさから、この期間における受信信号の重心位置を求め、重心位置を元に超音波の伝搬時間を求めることを特徴とする。
【0126】
図11は本発明の実施例5に係る超音波流量計の構成を示すブロック図である。この超音波流量計は、流量計管路1の内部に配置された第1超音波振動子2及び第2超音波振動子3、切替部4、駆動部5、増幅部6、ゼロクロス検出部7、計時部8、演算部9、制御部10、基準クロック発振回路11並びにA/Dコンバータ12から構成されている。A/Dコンバータ12は、本発明の測定部に対応する。
【0127】
この超音波流量計は、図1に示した構成にA/Dコンバータ12が追加され、演算部9の中に重心計算部22が設けられ、更に計時部8は、従来と同様のカウンタから構成されている点を除けば、実施例1に係る超音波流量計の構成と同じである。
【0128】
A/Dコンバータ12は、ゼロクロス検出部7が受信信号がゼロクロス点を検出してから、次のゼロクロス点を検出するまでの間、波形信号を取り込んでデジタル信号に変換し、演算部9に送る。この様子を図12に示す。
【0129】
演算部9内の重心計算部22は、図12に示すように、データ列の中央をゼロ番としてデータに番号を振り、測定時刻をT(−M)〜T(M)、電圧データをV(−M)〜V(M)とすると、重心を次の式で求める。
【数1】

【0130】
以上により、ΔVを小さくすることで時間分解能をあげることができることを理解できる。即ち、クロック周波数を上げることなく、時間分解能を向上させることができる。また、A/Dコンバータ12は受信信号の半周期だけ動作させればよいので、計測全体からみれば消費電力を小さく抑えることができる。
【実施例6】
【0131】
本発明の実施例6に係る超音波流量計は、各遅延素子からの信号にノイズがあっても該ノイズを除去して立ち上がり時刻を精度良く推定した受信ポイント信号を得ることを特徴とする。
【0132】
図13は本発明の実施例6に係る超音波流量計の計時部の構成を示すブロック図である。なお、超音波流量計の計時部のエンコーダ16a以外の構成は、図2に示した実施例1の構成と同じであるので説明を省略する。
【0133】
本発明の実施例6に係る超音波流量計の計時部8dは、遅延部13、データレジスタ14、カウンタ15、エンコーダ16aから構成されている。エンコーダ16aは、本発明の信号記録部に対応し、図17に示すように、データレジスタ14からの時系列データQ0〜Qn−1をパラレルでクロックに同期して入力して記録し、記録された時系列データQ1〜Qn−1をシリアルに出力するシフトレジスタ161と、シフトレジスタ161からシリアルに送られてくる時系列データが「1」の時のみカウントするカウンタ162とから構成されている。即ち、エンコーダ16aは、各遅延素子から出力される信号を基準クロックに同期して記録し、受信ポイント信号が変化した付近の時系列データを保持する。
【0134】
図14は本発明の実施例6に係る超音波流量計の動作を説明するためのタイミングチャートであり、図3に示すタイミングチャートと略同様であるのでその説明は省略する。図15は本発明の実施例6に係る超音波流量計の受信ポイント信号の時系列データを示す図である。図15(a)(b)では、図14に示すX点の直前の1クロック分のデータを表しおり、図15(a)では、1クロック内の信号の切り替わる部分にノイズがない場合の例を示しており、図15(b)では、1クロック内の信号の切り替わる部分にノイズがある場合の例を示している。
【0135】
実施例6のエンコーダ16aを用いた場合、図15(a)に示す例では、エンコーダ16aにおいて、シフトレジスタ161は、入力される時系列データQ1〜Qn−1をパラレル入力して記録する。ここで、時系列データQ1からQiまでの各々の値は「1」であり、時系列データQi+1からQn−1までの各々の値は「0」である。カウンタ162は、シフトレジスタ161からシリアルに送られてくる時系列データQ1〜Qn−1が「1」の時にカウントするので、カウント値が「i」となる。エンコーダ16aとしては、図16に示すような入出力関係を持つ。即ち、カウント値「i」により、信号の立ち上がりが時系列データQ0からi番目のデータにあることをディジタル値として出力することができる。
【0136】
また、図15(b)に示すように、信号の切り替わる部分にノイズがある場合の例では、時系列データQ1からQi−2までの各々の値は「1」、時系列データQi−1は「0」、時系列データQiは「1」、時系列データQi+1は「0」、時系列データQi+2は「1」、時系列データQi+3からQn−1までの各々の値は「0」である。カウンタ162は、シフトレジスタ161からシリアルに送られてくる時系列データQ1〜Qn−1が「1」の時にカウントするので、カウント値が「i」となる。即ち、ノイズ成分は平均化されて、図15(a)に示すものと同じように、カウント値「i」により、信号の立ち上がりが時系列データQ0からi番目のデータにあることをディジタル値として出力することができる。
【0137】
このように、図15(b)に示すように、信号の信号の切り替わる部分にノイズがある場合でも、エンコーダ16aにノイズ平均処理を付加することにより立ち上がり時刻を精度良く推定することができる。
【実施例7】
【0138】
本発明の実施例7に係る超音波流量計は、ノイズのためにカウンタのSTOP信号が実際の信号立ち上がりより早く出力されてしまうことがあっても、STOP信号が出力された後の時系列データも取得することができ、正しい立ち上がり時刻を推定することができることを特徴とする。
【0139】
図18は本発明の実施例7に係る超音波流量計の計時部の構成を示すブロック図である。本発明の実施例7に係る超音波流量計の計時部8eは、遅延部13d、データレジスタ14d、カウンタ15、エンコーダ16aから構成されている。
【0140】
遅延部13dは、m個の遅延素子DL−1〜DL−mとn個の遅延素子DL0〜DLn−1とが直列に接続されて構成されている。全遅延素子DL−m〜DLn−1による総遅延時間は基準クロック以上で基準クロックの2倍以下になっている。また、初段の遅延素子DL−mには、ゼロクロス検出部7からの受信ポイント信号が入力される。
【0141】
各遅延素子DL−m〜Dn−1の出力信号は、データータレジスタ14dに送られる。データレジスタ14dは、m+n+1個のDタイプのフリップフロップから成り、基準クロックに同期してデータD−m〜Dn−1を記憶する。このデータレジスタ14dの途中段のフリップフロップの出力Q0は、STOP信号としてカウンタ15に送られる。また、フリップフロップの出力Q−m〜Qn−1はエンコーダ16aに送られる。
【0142】
エンコーダ16aは、図17に示す構成と同一構成であり、データレジスタ14dの出力Q−m〜Qn−1を基準クロックに同期して記録し、受信ポイント信号が変化した付近の時系列データを保持する。
【0143】
次に、本発明の実施例7に係る超音波流量計の動作を、図19を参照しながら説明する。まず、図19に示すように、1クロックから次のクロックにかけて、ノイズがまたがる場合には、実施例6の構成であると、データQ0でSTOP信号が出力されてカウンタが停止してしまう。即ち、データQ0の時刻を立ち上がり時刻と判断してしまうため、正確に信号の立ち上がり時刻が求められない。
【0144】
実施例7では、m個の遅延素子DL−1〜DL−mとn個の遅延素子DL0〜DLn−1とを設け、カウンタのSTOP信号を遅延素子の途中段から出力するので、エンコーダ16aでは、シフトレジスタ161は、1クロックから次のクロックに跨った時系列データQ−m〜Q0〜Qn−1を入力して記録する。そして、カウンタ162が1クロックから次のクロックに跨った時系列データQ−m〜Q0〜Qn−1の内の「1」のみをカウントする。
【0145】
図19に示す例では、時系列データQ−mからQ−4までの各々の値は「1」、時系列データQ−3は「0」、時系列データQ−2は「1」、時系列データQ−1は「0」、時系列データQ0は「1」、時系列データQ1からQn−1までの各々の値は「0」である。カウント値は「m−1」となるので、データQ−2の時刻が信号の立ち上がり時刻となる。即ち、ノイズ成分は平均化されて、信号の立ち上がりが時系列データQ−mからm−1番目のデータにあることをディジタル値として出力することができる。
【0146】
このように、カウンタ15のSTOP信号を遅延素子の途中段から出力するようにすると、ノイズのためにカウンタ15のSTOP信号が実際の信号立ち上がりより早く出力されてしまうことがあっても、STOP信号が出力された後の時系列データも取得することができ、正しい立ち上がり時刻を推定することができる。
【0147】
なお、上述した実施例1〜4、実施例6〜7では、駆動部5は、基準クロックに同期して送信側の超音波振動子を駆動することにより超音波を発生させるように構成したが、基準クロックと非同期に送信側の超音波振動子を駆動して超音波を発生させるように構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明の超音波流量計は、ガスメータ、水道メータ等のメータに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本発明の実施例1に係る超音波流量計の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1に係る超音波流量計の計時部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1に係る超音波流量計の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】本発明の実施例1に係る超音波流量計のエンコーダの動作を説明するための図である。
【図5】本発明の実施例2に係る超音波流量計の計時部の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施例2に係る超音波流量計の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】本発明の実施例3に係る超音波流量計の計時部の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施例3に係る超音波流量計の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図9】本発明の実施例3に係る超音波流量計のエンコーダの動作を説明するための図である。
【図10】本発明の実施例4に係る超音波流量計の計時部の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施例5に係る超音波流量計の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施例5に係る超音波流量計の動作を説明するための図である。
【図13】本発明の実施例6に係る超音波流量計の計時部の構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の実施例6に係る超音波流量計の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図15】本発明の実施例6に係る超音波流量計の受信ポイント信号の時系列データを示す図である。
【図16】本発明の実施例6に係る超音波流量計のエンコーダの動作を説明するための図である。
【図17】本発明の実施例6に係る超音波流量計のエンコーダの詳細な構成を示すブロック図である。
【図18】本発明の実施例7に係る超音波流量計の計時部の構成を示すブロック図である。
【図19】本発明の実施例7に係る超音波流量計の受信ポイント信号の時系列データを示す図である。
【図20】従来の超音波流量計を説明するための図である。
【符号の説明】
【0150】
1 流量計管路
2 第1超音波振動子
3 第2超音波振動子
4 切替部4
5 駆動部
6 増幅部
7 ゼロクロス検出部
8 計時部
9 演算部
10 制御部
11 クロック発振回路
12 コンバータ
13 遅延部
14、17、21 データレジスタ
15、20、80 カウンタ
16 エンコーダ
18 引算部
19 フィードバック部
19a インバータ
19b ANDゲート
22 重心計算部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路の上流側と下流側とに配置され、送信側の超音波振動子及び受信側の超音波振動子として使用される一対の超音波振動子と、
基準クロックを発生する基準クロック発信回路と、
前記送信側の超音波振動子を駆動する駆動部と、
前記駆動部で駆動された前記送信側の超音波振動子において発生された超音波を前記受信側の超音波振動子で受信することにより生成された受信信号のゼロクロス点を検出し、受信ポイント信号として出力するゼロクロス検出部と、
前記送信側の超音波振動子と前記受信側の超音波振動子との間の超音波の伝搬時間を前記ゼロクロス検出部から出力される受信ポイント信号に基づいて計測する計時部と、
前記計時部で計測された伝搬時間に基づいて前記流路における流量を算出する演算部とを備えた超音波流量計であって、
前記計時部は、
前記送信側の超音波振動子が駆動されることにより前記基準クロックのカウントを開始し、前記ゼロクロス検出部から受信ポイント信号が出力されることによりカウントを停止するカウンタと、
各々が前記基準クロックの周期より小さく且つ等しい遅延時間を有する遅延素子が、総遅延時間が基準クロック周期より長くなるように直列に接続されており、前記ゼロクロス検出部から出力される受信ポイント信号が入力される遅延部と、
前記遅延部の各遅延素子から出力される信号を前記基準クロックに同期して記録し、前記受信ポイント信号が変化した付近の時系列データを保持する信号記録部とを備え、
前記演算部は、
前記カウンタの内容を前記信号記録部に記録された時系列データで補正することにより前記伝搬時間を算出し、算出された時間に基づいて前記流路における流量を計測することを特徴とする超音波流量計。
【請求項2】
前記演算部は、
前記カウンタの内容を前記信号記録部に記録された時系列データと前記遅延素子の数とで補正することにより前記伝搬時間を算出することを特徴とする請求項1記載の超音波流量計。
【請求項3】
前記計時部は、
前記基準クロックに同期して前記信号記録部に記録された時系列データを記憶する記憶部と、
前記信号記録部に記録された時系列データから前記記憶部の出力を引き算する引算部とを備え、
前記遅延部は、
総遅延時間が前記基準クロックの周期の2倍以上になる数の遅延素子から成り、
前記演算部は、
前記カウンタの内容を前記記憶部の出力と前記引算部の出力とで補正することにより前記伝搬時間を算出することを特徴とする請求項1記載の超音波流量計。
【請求項4】
前記計時部は、
前記基準クロックに同期して前記信号記録部に記録された時系列データを記憶する記憶部と、
前記信号記録部に記録された時系列データから前記記憶部の出力を引き算する引算部と、
前記遅延部の最終段の遅延素子から出力される信号を反転させて初段の遅延素子にフィードバックするフィードバック部とを備え、
前記演算部は、
前記カウンタの内容を前記記憶部の出力と前記引算部の出力とで補正することにより前記伝搬時間を算出することを特徴とする請求項1記載の超音波流量計。
【請求項5】
流路の上流側と下流側とに配置され、送信側の超音波振動子及び受信側の超音波振動子として使用される一対の超音波振動子と、
基準クロックを発生する基準クロック発信回路と、
前記送信側の超音波振動子を駆動する駆動部と、
前記駆動部で駆動された前記送信側の超音波振動子において発生された超音波を前記受信側の超音波振動子で受信することにより生成された受信信号のゼロクロス点を検出し、受信ポイント信号として出力するゼロクロス検出部と、
前記送信側の超音波振動子と前記受信側の超音波振動子との間の超音波の伝搬時間を前記ゼロクロス検出部から出力される受信ポイント信号に基づいて計測する計時部と、
前記計時部で計測された伝搬時間に基づいて前記流路における流量を算出する演算部とを備えた超音波流量計であって、
前記計時部は、
前記送信側の超音波振動子が駆動されることにより前記基準クロックのカウントを開始し、前記ゼロクロス検出部から受信ポイント信号が出力されることによりカウントを停止するカウンタと、
各々が前記基準クロックの周期より小さく且つ等しい遅延時間を有する遅延素子が、総遅延時間が基準クロック周期以下になるように直列に接続されており、前記ゼロクロス検出部から出力される受信ポイント信号が入力される遅延部と、
前記遅延部の各遅延素子から出力される信号を前記基準クロックに同期して記録し、前記受信ポイント信号が変化した付近の時系列データを保持する信号記録部とを備え、
前記演算部は、
前記カウンタの内容を前記信号記録部に記録された時系列データで補正することにより前記伝搬時間を算出し、算出された時間に基づいて前記流路における流量を計測し、
前記計時部は、
前記遅延部の最終段の遅延素子から出力される信号を反転させて初段の遅延素子にフィードバックするフィードバック部と、
前記遅延部の最終段の遅延素子から出力される信号をカウントすることにより得られたカウント値を前記基準クロックに同期して記憶する第1記憶部と、
前記基準クロックに同期して前記信号記録部に記録された時系列データを記憶する第2記憶部と、
前記信号記録部に記録された時系列データから前記第2記憶部の出力を引き算する引算部とを備え、
前記信号記録部は、
前記遅延部の各遅延素子から出力される信号及び前記第1記憶部に記憶されたデータを前記基準クロックに同期して記録し、前記受信ポイント信号が変化した付近の時系列データを保持し、
前記演算部は、
前記カウンタの内容を前記第2記憶部の出力と前記引算部の出力とで補正することにより前記伝搬時間を算出することを特徴とする超音波流量計。
【請求項6】
流路の上流側と下流側とに配置され、送信側の超音波振動子及び受信側の超音波振動子として使用される一対の超音波振動子と、
基準クロックを発生する基準クロック発信回路と、
前記送信側の超音波振動子を駆動する駆動部と、
前記駆動部で駆動された前記送信側の超音波振動子において発生された超音波を前記受信側の超音波振動子で受信することにより生成された受信信号のゼロクロス点を検出し、受信ポイント信号として出力するゼロクロス検出部と、
前記ゼロクロス検出部から受信ポイント信号が出力されてから次の受信ポイント信号が出力されるまでの測定期間の間、各基準クロックの境界における受信信号の大きさを測定する測定部と、
前記測定部で測定された受信信号の大きさに基づき前記測定期間における受信信号の重心を計算する重心計算部と、
前記重心計算部で計算された重心の位置に基づき超音波の伝搬時間を求める演算部と、
を備えたことを特徴とする超音波流量計。
【請求項7】
前記信号記録部は、
前記各遅延素子から出力される信号を前記基準クロックに同期して記録し、記録された信号をシリアルに出力するレジスタと、
前記レジスタからの信号が1の時のみカウントする第2カウンタと、
を有することを特徴とする請求項1記載の超音波流量計。
【請求項8】
前記遅延部は、
総遅延時間が前記基準クロックの周期の2倍以下になる数の遅延素子から成り、
前記カウンタは、前記複数の遅延素子の内の途中段の遅延素子から停止信号を入力した時にカウントを停止することを特徴とする請求項7記載の超音波流量計。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2006−3310(P2006−3310A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182770(P2004−182770)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(000116633)愛知時計電機株式会社 (126)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】