超音波流量計
【課題】 従来より精度良くノイズの有無を検知することができる超音波流量計を提供することである。
【解決手段】本発明の超音波流量計11は、超音波送波器21(22)から出力された超音波を超音波受波器22(21)に到達したと判断したとき受信波検知信号を出力する受信波検知部3と、ノイズ検知レベルを発生するノイズ検知レベル発生部41と受信波がノイズ検知レベルを超えたときノイズレベル超え信号を出力するレベル超え比較部42とをもつレベル超え検知部4と、ノイズレベル超え信号を出力した時を始点又は終点としてノイズ検知用時間を求めるノイズ検知用時間演算部6と、ノイズ検知用時間が正常な範囲をはずれているときにノイズ発生信号を出力するノイズ判定部5と、を有することを特徴とする。
【解決手段】本発明の超音波流量計11は、超音波送波器21(22)から出力された超音波を超音波受波器22(21)に到達したと判断したとき受信波検知信号を出力する受信波検知部3と、ノイズ検知レベルを発生するノイズ検知レベル発生部41と受信波がノイズ検知レベルを超えたときノイズレベル超え信号を出力するレベル超え比較部42とをもつレベル超え検知部4と、ノイズレベル超え信号を出力した時を始点又は終点としてノイズ検知用時間を求めるノイズ検知用時間演算部6と、ノイズ検知用時間が正常な範囲をはずれているときにノイズ発生信号を出力するノイズ判定部5と、を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波流量計に関し、特にノイズを検知可能な超音波流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波流量計は、流体が通過する流れの上流と下流とに間隔をあけて1組の超音波送受信波器を配置し、流体の流れと同じ順方向の超音波の伝播時間と、流体の流れと逆の逆方向の超音波の伝播時間とから流速を求め、この流速に流路断面積を乗じて流量を求めている。
【0003】
ところで、超音波流量計はオイルミストなどの汚物が付着した場合、受信波が減衰することや、超音波流量計に由来するノイズ(以下、「筐体ノイズ」と称する。)が発生することが知られている。また、超音波流量計の上流あるいは下流の近傍に、減圧弁や半開バルブなどの絞り機構が設置された場合、流量を計測するために配管内に発生させた超音波とは異なる超音波(以下、「配管ノイズ」と称する。)が発生し、受信波にノイズとして重畳することが知られている。
【0004】
超音波流量計は、ノイズが受信波に重畳した場合や受信波が減衰した場合であっても、受信波が検知できれば、流量を求めることができる。しかし、時間的に一致する位置にノイズが発生すると、受信波にノイズが重畳し、ノイズが重畳した受信波に基づいて流量を求めることになり、ノイズの程度によっては誤差が生じるおそれがある。また、受信波が検知できないほどのノイズが重畳し、受信波が減衰・増幅しすぎた場合は、超音波の伝播時間を計測できない(以下、「測定不能状態」という)。
【0005】
特許文献1には、あらかじめ設定された正常計測時における超音波の伝播時間と、実際に測定された伝播時間とを比較し、所定の大きさ以上の差があった場合、誤測定と判定する超音波流量計が開示されている。特許文献2には、受信波を検知するサンプリング期間以外に受信波を検知した場合に、ノイズが発生していると判定する流量計測装置が開示されている。特許文献3には、受信波を検知するために増幅した増幅率を記憶し、記憶した増幅率を解析することで、異常がいつ発生し始めたかを絞り込める装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−183195号公報
【特許文献2】特開2004−108831号公報
【特許文献3】特開2005−257445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2に開示されるような装置では、ノイズが発生しても検知できない場合が考えられる。また、ノイズが検知されたり計測不能状態になったりしても、装置が設置された状態では装置の内部をすぐには確認できず、ノイズの原因が筐体あるいは配管のノイズに係るのか、係らないのか、又は減衰しているのかが分からないため、早急な対処ができない。
【0008】
特許文献3に開示されている装置では、ある一定の期間経過後にノイズが発生していたのかどうかを判断するものであるため、ノイズ発生時にはノイズの発生を判断できない。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、従来のノイズ検知より精度が良くノイズの有無を検知することができる超音波流量計を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明の構成上の特徴は、流体が通過する通路の上流と下流とに対向配置された1組の超音波送受波器を配置し、それらの間の超音波の到達時間から流量を求める超音波流量計であって、
前記超音波送波器から出力された前記超音波を前記超音波受波器が受け取る受信波が前記超音波受波器に到達したと判断したとき、受信波検知信号を出力する受信波検知部と、
ノイズ検知レベルを発生するノイズ検知レベル発生部と前記受信波が前記ノイズ検知レベルを超えたときノイズレベル超え信号を出力するレベル超え比較部とをもつレベル越え検知部と、
前記ノイズレベル超え信号を出力した時を始点又は終点として、ノイズ検知用時間を求めるノイズ検知用時間演算部と、
前記ノイズ検知用時間が正常な範囲をはずれているときに、ノイズ発生信号を出力するノイズ判定部と、
を有することである。
【0011】
また請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記超音波の出力を複数回行う場合に、
前記ノイズ判定部が出力する前記ノイズ発生信号は、一つ前の測定で得られた前記ノイズ検知用時間の値であるノイズ種類判定時間と前記ノイズ検知用時間の値とが同じ場合に筐体ノイズを表す信号とし、
それ以外の場合に配管ノイズを表す信号とすることである。
【0012】
また請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2において、前記ノイズ検知用時間は、前記ノイズレベル超え信号を出力した時から前記受信波検知信号を出力した時までの時間であり、
前記正常な範囲をはずれていると判断されるのは、設定値よりも前記ノイズ検知用時間が長い場合であり、
前記設定値は、前記超音波送波器から出力された前記超音波が前記超音波受波器で検知され始めた時から前記受信波検知信号が出力された時までの時間であると想定される時間以上で設定されることである。
【0013】
ここで、超音波受波器で検知され始めた時及び受信波検知信号が出力された時とは、使用する受信波の検知方法によって異なる。
【0014】
また請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2において、前記ノイズ検知用時間は、前記ノイズレベル超え信号を出力した時から前記受信波検知信号を出力した時までの時間であり、
前記正常な範囲をはずれていると判断されるのは、前記ノイズ検知用時間が受信波の一周期の長さ以下又は二周期の長さ以上の場合であることである。
【0015】
また請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜4の何れか1項において、前記ノイズ検知用時間は、前記超音波送波器が前記超音波を出力した時から前記ノイズレベル超え信号を出力した時までの時間であり、
前記正常な範囲をはずれていると判断されるのは、設定値よりも前記ノイズ検知用時間が短い場合であり、
前記設定値は、前記超音波送波器から前記超音波が出力された時から前記超音波受波器で検知され始めた時であると想定される時間以内で設定されることである。
【0016】
また請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜5の何れか1項において、前記受信波の振幅の大きさに応じて前記受信波の実増幅率を適正に調整可能な増幅部と、
前記流体の温度を計測し、計測温度を出力する温度計測手段と、
前記流体の圧力を計測し、計測圧力を出力する圧力計測手段と、
前記ノイズ判定部は、前記流体の種類、前記計測温度、及び、前記計測圧力の組み合わせにより決定される適正な理論増幅率と前記実増幅率との差異が所定以上の場合、又は前記実増幅率から推測される前記流体の推測温度及び推測圧力と前記計測温度及び前記計測圧力との差異が所定値以上の場合にはノイズ発生信号を出力することである。
【0017】
その他に、上記課題を解決するための請求項7に係る発明の構成上の特徴は、流体が通過する通路の上流と下流とに対向配置された1組の超音波送受波器を配置し、前記受信波の振幅の大きさに応じて前記受信波の実増幅率を適正に調整可能な増幅部をもち、前記超音波送受波器間の超音波の到達時間から流量を求める超音波流量計であって、
前記超音波送波器から出力された前記超音波を前記超音波受波器が受け取る受信波が前記超音波受波器に到達したと判断したとき、受信波検知信号を出力する受信波検知部と、
前記流体の温度を計測し、計測温度を出力する温度計測手段と、
前記流体の圧力を計測し、計測圧力を出力する圧力計測手段と、
前記流体の種類、前記計測温度、及び、前記計測圧力の組み合わせにより決定される適正な理論増幅率と前記実増幅率との差異が所定以上の場合、又は前記実増幅率から推測される前記流体の推測温度及び推測圧力と、前記計測温度及び前記計測圧力との差異が所定値以上の場合にはノイズ発生信号を出力するノイズ判定部と、
を有することである。
【0018】
また請求項8に係る発明の構成上の特徴は、請求項6又は7において、前記理論増幅率は、前記流体の種類、前記流体の温度、及び、前記流体の圧力の組み合わせ毎にデータベースに記憶されており、
前記データベースは、前記超音波が出力される毎に、前記温度測定手段から前記流体の温度と前記圧力計測手段から前記流体の圧力とを受信し、記憶されている組み合わせの前記理論増幅率を出力することである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明においては、ノイズ検知レベル発生部がノイズ検知レベルを発生し、受信波がノイズ検知レベルを超えたとき、レベル超え比較部がノイズレベル超え信号を出力する。そして、ノイズ判定部が、ノイズレベル超え信号を出力した時間に基づき求められるノイズ検知用時間が、正常な範囲をはずれているときに、ノイズ発生信号を出力する。
【0020】
受信波は、その大きさが流体の種類、圧力、温度によって変化するものの、波の形状(各波同士の相対関係。図4参照。)は変わらないという特徴を有していること、流体があらかじめ分かっている場合であれば圧力や温度との組み合わせで受信波が検知される時間的範囲を導き出せることから正常な範囲を設定することができる。なお、超音波の到達時間を算出するための受信波検知信号を検知する方法は、どのような方法でも良い。また、本願において「信号を出力する」とは、電気信号や光信号など信号を検出できるものであればよい。電気信号を例とすると、低い電圧から高い電圧への変化、高い電圧から低い電圧の変化、出力されていたものが出力されなくなる等、それらの変化はステップ状でもパルス状でも緩やかな変化であっても検知することができるものであれば、「信号を出力する」とする。請求項1に係る発明によれば、ノイズ検知レベル値や正常な範囲の設定を適正に行うことで、従来検知できなかったノイズを精度良く検知することができる。
【0021】
請求項2に係る発明においては、ノイズ判定部が、ノイズ検知用時間とノイズ種類判定時間とを比較することで、発生しているノイズが筐体に係る筐体ノイズなのか配管に係る配管ノイズであるか判別することができる。ここで、筐体ノイズとは、超音波流量計に由来するノイズであり、配管ノイズとは超音波流量計に由来しないノイズであり、ノイズ種類判定時間は前回のノイズ検知用時間の値である。超音波流量計に由来する配管ノイズは、超音波送波器から出力された超音波が筐体(超音波流量計)を伝播することで生じるノイズであり、通常は発生しないように設計されているか発生しても除外できるように設計されている。しかし、汚れの付着などでそのバランスが崩れるとノイズが発生する。筐体ノイズは、何よりも早く筐体内を伝播し、一度発生したらほぼ毎回同じ時間で伝播する。そこで、超音波の出力を複数回行い流量を測定することを前提として、前の測定で得られたノイズ検知時間の値をノイズ種類判定時間として記憶しておくことで、次に検知されたノイズと1つ前に発生したノイズの発生時間とを比較することで、ノイズの種類を特定することができる。よって、ノイズ発生信号は、ノイズ検知用時間とノイズ種類判定時間とが等しい場合は筐体ノイズを表す信号とし、それ以外は配管ノイズを表す信号とする。なお、等しいとは必ずしも等号ではなく、いくらかの幅を持たせることができる。請求項2に係る発明によれば、発生しているノイズの種類や原因を特定することができる。
【0022】
請求項3に係る発明においては、ノイズ検知用時間がノイズレベル超え信号を出力した時から受信波検知信号を出力した時までの時間である。受信波はその大きさが流体の種類、圧力、温度によって変化するものの、波の形状(各波同士の相対関係。図4参照。)が変わらないという特徴を有していることから、超音波が検知され始める時から受信波検知信号が出力されるまでの時間が想定できる。そこで、正常な範囲をその想定される時間以上に設定することで、ノイズが発生している場合は、超音波が検知され始めるときよりも早くノイズレベル超え信号を出力するため、ノイズ検知用時間は設定される時間より長くなる。よって、ノイズ判定部は、ノイズ検知用時間が設定される時間よりも長い場合は、ノイズが発生していると判定する。なお、正常な範囲は、あらかじめ設定したり、受信波を正常に検知できた時の正常な測定値に基づき設定したりすることができる。請求項3に係る発明によれば、流体の種類を考慮することなく、受信波の波形の特性を用いることで、超音波流量計で使用される流体が不明な場合でもノイズを検知することができる。
【0023】
請求項4に係る発明においては、受信波の周期に基づいて正常な範囲を設定する。上記したように受信波の形状が変わらないという特徴を有していることから、受信波の大きさが分かれば受信波の一周期の長さを求めることができる。そこで、ノイズ検知用時間が、受信波の一周期の長さ以下又は二周期の長さ以上の場合に、正常な範囲をはずれていると判断する。請求項4に係る発明によれば、流体の種類を考慮することなく、受信波の波形の特性を用いることで、超音波流量計で使用される流体が不明な場合でもノイズを検知することができる。
【0024】
請求項5に係る発明においては、ノイズ検知用時間が超音波を出力した時からノイズレベル超え信号を受信した時までの時間である。超音波が検知され始める時間は、流体の種類及び流量を測定する環境から得られる状態(流体の温度や圧力)に基づき導き出すことができる。そこで、正常な範囲を検知され始める時間よりも短い時間、つまり検知され始めると想定される時間以内で設定することで、ノイズが発生している場合は、超音波が検知され始めるときよりも早くノイズレベル超え信号を出力するため、ノイズ検知用時間は設定される時間より短くなる。よって、ノイズ判定部は、ノイズ検知用時間が設定される時間よりも短い場合は、ノイズが発生していると判定する。請求項4に係る発明によれば、超音波流量計で使用される流体が既知の場合にノイズを検知することができる。
【0025】
請求項6に係る発明においては、ノイズ判定部が、流体の種類、温度、圧力とから決定する適正な理論増幅率と、増幅部が受信波を実際に調整した実増幅率と、を比較することで、ノイズの発生の有無を判定する。又は、実増幅率から推測される流体の温度及び圧力と計測手段により得られた温度及び圧力とを比較することで、ノイズの発生の有無を判定する。ここで、適正な理論増幅率とは、所定の振幅となるように調節するための率である。実増幅率が理論増幅率とあまりに大きく異なる、あるいは実際に増幅した実増幅率から推測される流体の温度及び圧力が実際に計測した温度及び圧力と大きくことなるということは、受信波になんらかのノイズが重畳されているか受信波が減衰する原因があると言える。理論増幅率の算出、実増幅率から流体の温度及び圧力の推測をおこなうためには、使用する流体があらかじめ分かっていることが望ましい。よって、請求項5に係る発明によれば、ノイズが時間的に同じ位置で重畳して受信波の大きさが見かけ上大きくなったとき、又は汚れなどにより受信波が減衰したときのような場合に、ノイズ検知用時間に基づいてノイズの発生を検知することができない場合でも、ノイズの検知をすることができる。
【0026】
請求項7に係る発明においては、ノイズ判定部が、流体の種類、温度、圧力とから決定する正確な理論増幅率と、増幅部が受信波を実際に調整した実増幅率と、を比較することで、ノイズの発生の有無を判定する。又は、実増幅率から推測される流体の温度及び圧力と計測手段により得られた温度及び圧力とを比較することで、ノイズの発生の有無を判定する。実増幅率が理論増幅率とあまりに大きく異なる、あるいは実際に増幅した実増幅率から推測される流体の温度及び圧力が実際に計測した温度及び圧力と大きくことなるということは、受信波になんらかのノイズが重畳されているか受信波が減衰する原因があると言える。理論増幅率の算出、実増幅率から流体の温度及び圧力の推測をおこなうためには、使用する流体があらかじめ分かっていることが望ましい。よって、ノイズが時間的に同じ位置で重畳して受信波の大きさが見かけ上大きくなったとき、又は汚れなどにより受信波が減衰したときのような場合に、ノイズ検知用時間に基づいてノイズの発生を検知することができない場合でも、ノイズの検知をすることができる。
【0027】
請求項8に係る発明においては、理論増幅率を流体の種類、温度、圧力の組み合わせ毎にデータベースに記憶することができる。データベースは、使用流体、測定された温度
及び圧力の組み合わせの理論増幅率をノイズ判定部に出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態1の超音波流量計11の構成図を示すブロック図である。
【図2】本実施形態1の超音波流量計11で用いられる受信波検知部3及びレベル超え検知部4の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態1の超音波流量計11が受信波を検知する方法を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】本実施形態1の超音波流量計11が受信する受信波の一例を示す波形図である。
【図5】本実施形態1の超音波流量計11がノイズの発生を検知する流れの一例を示したフローチャートである。
【図6】本実施形態1の超音波流量計11がノイズを検知する一例を示すタイミングチャートである。
【図7】本実施形態1の超音波流量計11がノイズを検知する一例を示すタイミングチャートである。
【図8】本実施形態2の超音波流量計がノイズの発生を検知する流れの一例を示したフローチャートである。
【図9】本実施形態2の超音波流量計がノイズを検知する一例を示すタイミングチャートである。
【図10】本実施形態2の超音波流量計がノイズを検知する一例を示すタイミングチャートである。
【図11】本実施形態3の超音波流量計13の構成図を示すブロック図である。
【図12】本実施形態3の超音波流量計13がノイズの発生を検知する流れの一例を示したフローチャートである。
【図13】本実施形態3の超音波流量計13がノイズを検知する一例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の代表的な実施形態を図1〜図13を参照して説明する。本発明の超音波流量計は、気体又は液体が流れるパイプライン(図示せず)の途中に取り付けられている。
【0030】
(実施形態1)
本実施形態1の超音波流量計11は、図1に示されるように、超音波送受波器21,22と、受信波検知部3と、レベル超え検知部4と、ノイズ判定部5と、ノイズ確認カウンタ(ノイズ検知用時間演算部)6とを有する。超音波流量計11は、更に、コントロール部23と、切替スイッチS1,S2と、送受器駆動部24と、カウンタ25と、増幅部26と、基準クロック発生部27と、ノイズ発生通知手段28とを有する。
【0031】
超音波送受波器21,22は、一対の超音波振動子で構成され、被計測流体の流れるパイプライン内の上流と下流とに対向配置され、どちらかの一方が上流側、他方が下流側に位置する。超音波送受波器21,22は、送信側としても受信側としても作動でき、切替スイッチS1,S2を介して送受器動部24か受信波検知部3(増幅部26を介して)かに接続され、流体中を上流から下流及び下流から上流へと超音波の送受を行う。超音波送受波器21,22は、切替スイッチS1とS2が図1に示される状態のときは、超音波送受波器21は送受器駆動部24に接続されて送波器として作動し、超音波送受波器22は(増幅部26を介して)受信波検知部3に接続されて受波器として作動する。
【0032】
受信波検知部3は、例えば送波器21が出力した超音波を受波器22が検知すると受信波検知信号を出力する。受信波信号を出力する(受信波の検知)方法は、後述する。
【0033】
コントロール部23は、一定時間間隔で超音波送受波器21,22の送受の切り替えを行い、切り替え毎にその後、スタート信号を出力する。送受の切り替えは、コントロール部23からの送受切替信号で切替スイッチS1,S2を切り替えることで行われる。コントロール部23は、受信波検知部3からの受信波検知信号が入力されると、後述するカウンタ25が測定した測定時間を読み取り、直前に行った反対向きでの測定時間とを用いて、超音波送受波器間の流速を算出し、算出した流速とパイプの断面積などから流量を求められる。
【0034】
送受器駆動部24は、コントロール部23が出力したスタート信号を受け取ると送信側の超音波送受波器21(22)を駆動する。
【0035】
カウンタ25は、スタート信号から受信波検知信号までの時間を測定する。その測定した時間は、コントロール部23が読み取る。当該実施形態では、スタート信号で測定時間がリセットされてから、時間を測定する。カウンタ25は、基準クロック発生部27からのクロックをカウントすることで時間を計測する。
【0036】
受信波検知部3は、図2に示されるように、基準レベル発生部31と、レベル選択部32と、比較部33と、ゼロクロス検知部34とを有する。
【0037】
基準レベル発生部31は、異なる電圧の複数の基準レベル、例えば5つの基準レベルVthj1〜Vthj5を出力して、レベル選択部32へ入力する。5つの基準レベルVthj1〜Vthj5は、例えば指数関数的に並ぶように電圧が定められる(図3参照)。レベル選択部32は、基準レベル発生部31が出力した複数の基準レベルの内、小さい方の所定数、この実施例では3個の基準レベルVthj1〜Vthj3を選択して比較部33へ出力する。レベル選択部32は送信側となった超音波送受波器の送信毎(発信毎)に小さい方から所定数、例えば3個の基準レベルを選択して比較部33へ出力する。受信波は、受波器22(21)で受信され、増幅部26で増幅された後、受信波検知部3の比較部33とゼロクロス検知部34とに入力される。そして、受信波は、選択された基準レベルVthj1〜Vthj3と比較部33で順次比較される。
【0038】
増幅後の受信波(波形)と基準レベルとが図3に示されるとき、第2波が点a1で最小の基準レベルVthj1を越えるが、2つの基準レベルVthj2とVthj3は越えない。比較部12は、Vthj1を超えたが2つのVthj2とVthj3を超えていない波を点a1で検知したことをゼロクロス検知部34に出力し、ゼロクロス検知部34は第2波のゼロクロス点c1を検知すると、ゼロクロス点c1をゼロクロス検知信号としてレベル選択部32へ出力する。比較部33は、点a1をレベル選択部32へ出力する。次に、第2波が越えた基準レベルVthj1に代えて、今まで選択されていなかった基準レベルVthj4〜Vthj5のうち最小の基準レベルがレベル選択部32によって選択されて、比較部32へ出力される。
【0039】
比較部33には、次の波が入力される前に、Vthj1を除いた残りの基準レベルVthj2〜Vthj5の中から小さい方の所定数(この場合3個) の基準レベルVthj2〜Vthj4が入力され、次の波を待ち受ける。そして、次にくる波のいずれかが基準レベルVthj2〜Vthj4を一気に超えると、比較部33はその波を検知したことをゼロクロス検知部34へ出力する。ゼロクロス検知部34は、その波が次にゼロクロスする点c2を検知し、その波のゼロクロス点であるとして、受信波検知信号を出力する。
【0040】
レベル超え検知部4は、図2に示されるように、ノイズ検知レベル発生部41と、レベル超え比較部42とを有する。ノイズ検知レベル発生部41は、受信波検知部3の基準レベル発生部31が出力する基準レベルのうち最小レベルより小さいノイズ検知レベルVthkを発生する。レベル超え比較部42は、受信波がノイズ検知レベルを超えたときノイズレベル超え信号を出力する。
【0041】
図1に戻って、ノイズ確認カウンタ6は、レベル超え検知部4からのノイズレベル超え信号を受信すると、ノイズレベル超え信号が出力されてから受信波検知信号が出力されるまでのノイズ検知用時間(T1)を演算する。T1を演算するにあたり、ノイズレベル超え信号の出力時及び受信波検知信号の出力時は、コントロール部23が出力したスタート信号を受け取るとリセットされ、基準クロック発生部27からのクロックをカウントすることで時間を計測する。そして、ノイズ確認カウンタ6は、演算したT1を後述するノイズ判定部5に出力する。
【0042】
ノイズ判定部5は、ノイズ確認カウンタ6から入力されたT1と、時間範囲(Tx)とを比較して、ノイズが発生している場合はノイズ発生信号をノイズ発生通知手段28に出力する。Txは、図4に示されるように、受信波形の1周期をT0とした場合、1×T0<Tx<2×T0とすることができる。つまり、Txは受信波の1周期から2周期に相当する大きさで設定される値であり、受信波検知信号が検知される正常な範囲である。受信波形の1周期は、振幅が常に同じになるように増幅率を設定したり、受信波の大きさが分かれば、算出することができる。
【0043】
ノイズ判定部5では、図5に示されるように、ノイズ確認カウンタ6から入力されたT1がTx以下であるか判定する。T1がTx以下の場合は、ノイズが発生していないため、正常と判定後、T1をノイズ種類判定時間T10と記録する。T10は、前回のT1の値である。T1がTxより大きい場合は、ノイズが発生しており、更にT1がT10と等しいか等しくないかを判定する。T1がT10と等しい場合、ノイズは筐体に係るノイズであるとして、ノイズ発生信号を出力する。T1がT10と等しくない場合は、ノイズは配管に係るノイズであるとして、ノイズ発生信号を出力する。なお、T1とT10との比較における等しいは、いくらかの幅を持たせることができる。また、T1とTxの比較において、下限を設定しても良い。
【0044】
筐体あるいは配管どちらかのノイズであるとノイズ発生信号を受信したノイズ発生通知手段28は、文字表示、音、あるいは点滅などによりノイズの種類も含めてノイズの発生を管理者に通知したり、監視装置に通知・記録したりする。ノイズの種類の区別は、表示される文字、音の発生の仕方や音の種類、ランプの点滅の仕方等により、通知可能である。
【0045】
ノイズ判定部5は、正常又はノイズが発生していると判断した後、判定終了信号をコントロール部23に出力する。判定終了信号を受け取ったコントロール部23は、流量測定の動作の完了を確認後、新たなスタート信号を発信する。
【0046】
次に、本実施形態1の超音波流量計11が、ノイズを検出する例を図6及び図7を用いて説明する。図6及び図7では、図の左から右に向かって時間の経過を示す。図6及び図7において、受信波は、第1波と記載されている以降の振幅の波形である。よって、図6及び図7に図示されている受信波より前に発生している振幅がノイズである。図6のノイズは基準レベルのVthj1より小さい振幅であり、図7のノイズは基準のレベルVthj1より大きい振幅である。
【0047】
本実施形態1の超音波流量計11では、図6のノイズが基準レベルVthj1より更に小さいノイズ検知レベルを点n1で超えるため、レベル超え検知部4がノイズレベル超え信号を出力する。受信波検知部3では、受信波の第2波が点a1で基準レベルVthj1を超えた、更に、第4波が基準レベルVthj2〜Vthj4を一気に超えた後のゼロクロス点c2で受信波検知信号を出力する。ノイズ確認カウンタ6では、点n1から受信波検知信号が出力された点c2までのノイズ検知用時間T1を演算する。図6において、T1は明らかにTx以下である。そのため、ノイズ判定部5は、ノイズが発生しているとして、ノイズ発生信号をノイズ発生通知手段28に出力する。ここで、T1がノイズ種類判定時間T10(前回のT1)と等しければノイズは筐体に係るノイズであり、T1がT10と等しくなければ配管に係るノイズであるとするノイズ発生信号を出力する。
【0048】
本実施形態1の超音波流量計11では、図7のノイズが基準レベルVthj1より更に小さいノイズ検知レベルを点n2で超えるため、レベル超え検知部4がノイズレベル超え信号が出力する。受信波検知部3では、ノイズ検知レベルを超えたのとは違う波が基準レベルVthj1を超えたのち、受信波の第4波が基準レベルVthj2〜Vthj4を一気に超え、ゼロクロス点c3で受信波検知信号を出力する。ノイズ確認カウンタ6では、点n2から受信波検知信号が出力された点c3までのノイズ検知用時間T1を演算する。図7において、T1は明らかにTxの範囲を超えている。そのため、ノイズ判定部5は、ノイズが発生しているとして、ノイズ発生信号をノイズ発生通知手段28に出力する。ここで、T1がT10と等しければノイズは筐体に係るノイズであり、T1がT10と等しくなければ配管に係るノイズであると出力する。
【0049】
図6に示されるノイズは、従来技術によると、ノイズが発生している状態にもかかわらず検知することができない。そして、ノイズが図7に示されるほど大きくなった時、初めてノイズが発生していることが検知されることとなる。また、図7に示されるようなノイズが発生している状態は、異常数値の流量値から検知できたとしても、筐体に係るノイズなのか配管に係るノイズなのかは検出できない。
【0050】
本実施形態1の超音波流量計11によれば、使用される流体が未知であっても受信波の波形(各波同士の相対関係)が変わらないという特性を用いることで、従来よりも精度良く、ノイズの有無を検知することができる。特に、本実施形態1において、ノイズ検知レベルが、受信波を検知するための基準レベルに基づき設定しており、ノイズを効果的に検知することができる。
【0051】
また、ノイズが筐体に係るノイズであるのか配管に係るノイズであるのかの判別もすることができるため、超音波流量計11自体の設置を取り外すことなく、ノイズの原因を知ることができる。つまり、計測不能状態の回避ができるだけでなく、装置を取り外すことなく交換部品や超音波流量計自体の調達を手配するなど、早急な対応が可能である。
【0052】
(実施形態2)
本実施形態2の超音波流量計は、実施形態1の超音波流量計11と基本的に同様の構成及び作用効果を有する。本実施形態2の超音波流量計は、ノイズ検知用時間及び時間範囲が実施形態1の超音波流量計11と異なる。以下では、異なる構成及び作用効果を中心に説明する。
【0053】
ノイズ確認カウンタ6は、レベル超え検知部4からのノイズレベル超え信号を受信すると、コントロール部23よりスタート信号が出力されてからレベル超え検知部4よりノイズレベル超え信号が出力されるまでのノイズ検知用時間T2を計測する。そして、T2をノイズ判定部5に出力する。
【0054】
ノイズ判定部5は、ノイズ確認カウンタ6から入力されたT2と、時間範囲Tsとを比較する。時間範囲Tsは、スタート信号が出力され送波器21(22)から超音波が出力された時から、受信波が受波器22(21)で検知され始めると想定される時間以内からそれ以降である。受信波が受波器22(21)で検知され始めると想定される時間は、超音波流量計の使用環境での最大温度・最大流速からあらかじめ算出できる使用流体の音速のうち、最大音速と超音波流量計の超音波送受波器21,22の距離とから算出することができる。よって、Tsは最短時間よりわずかに早い時間からそれ以降の時間である。つまり、Tsは、超音波送受波器21,22の間を、コントロール部23のスタート信号の出力時から、ノイズがないとした場合の超音波が伝播する最短時間より早い時間に設定している。よって、超音波の伝播される最短時間より早い時間より更に早い時間で受信波が検知された場合は、ノイズが発生していることになる。
【0055】
ノイズ判定部5では、図8に示されるように、ノイズ確認カウンタ6から入力されたT2とTsとを比較する。T2がTsの範囲内、つまりT2がTsより大きい場合は、ノイズが発生していないため、正常と判定。その後、T2をノイズ種類判定時間T20と記録する。T20は、前回のT2の値である。T2がTsより短い時間、つまりT2がTs以下の場合は、ノイズが発生しており、更にT2がT20と等しいか等しくないかを判定する。T2がT20と等しい場合、ノイズは筐体に係るノイズであるとして、ノイズ発生信号を出力する。T2がT20と等しくない場合は、ノイズは配管に係るノイズであるとして、ノイズ発生信号を出力する。なお、T2とT20との比較における等しいは、いくらかの幅を持たせることができる。
【0056】
ノイズ通知手段28は、実施形態1と同様に、ノイズ発生信号が入力されると、ノイズの発生を何らかの手段により通知する。
【0057】
実施形態2の超音波流量計が、ノイズを検出する例を図9及び図10を用いて説明する。図9及び図10では、図は左から右に向かって時間の経過を示す。図9及び図10において、受信波は、第1波と記載されている以降の振幅の波形である。よって、図9及び図10に図示されている受信波より前に発生している振幅がノイズである。図9のノイズは基準レベルのVthj1より小さい振幅であり、図10のノイズは基準レベルのVthj1より大きい振幅である。
【0058】
実施形態2の超音波流量計では、図9のノイズがノイズ検知レベルを点n3で超えるため、レベル超え検知部4がノイズレベル超え信号を出力する。ノイズ確認カウンタ6では、コントロール部23がスタート信号を出力してからレベル超え検知部4がノイズレベル超え信号を出力するまでのノイズ検知用時間T2を計測し、T2をノイズ判定部5へ出力する。図9において、T2は明らかにTsより小さい。よって、ノイズ判定部5は、T2がT20と等しいか等しくないかを判定後、ノイズが筐体に係るノイズ又は配管に係るノイズであるノイズ発生信号をノイズ発生通知手段28に出力する。
【0059】
次に、図10に示されるような場合、実施形態2の超音波流量計では、ノイズがノイズ検知レベルを点n4で超え、レベル超え検知部4がノイズレベル超え信号を出力する。ノイズ確認カウンタ6では、コントロール部23がスタート信号を出力してからレベル超え検知部4がノイズレベル超え信号を出力するまでのノイズ検知用時間T2を計測し、T2をノイズ判定部5へ出力する。図9において、T2は明らかにTsより小さい。よって、ノイズ判定部5は、T2がT20と等しいか等しくないか判定後、ノイズが筐体に係るノイズ又は配管に係るノイズであるかノイズ発生信号をノイズ発生通知手段28に出力する。
【0060】
本実施形態2の超音波流量計によれば、使用される流体が既知の場合に、流量を測定する環境から得られる状態に基づき、従来よりも精度良くノイズの有無を検知することができる。また、ノイズが筐体に係るノイズであるのか配管に係るノイズであるのかの判別もすることができる。つまり、計測不能状態の回避ができる上、設置を取り外すことなく、交換部品や超音波流量計自体の調達を手配するなど、早急な対応が可能である。
【0061】
(実施形態3)
本実施形態3の超音波流量計13は、図11に示されるように、超音波送受波器21,22と、増幅部26、受信波検知部3と、圧力計測手段71、温度計測手段72、データベース73と、ノイズ判定部7とを有する。超音波流量計11は、更に、コントロール部23と、切替スイッチS1,S2と、送受器駆動部24と、カウンタ25と、基準クロック発生部27と、ノイズ発生通知手段28とを有する。本実施形態3の超音波流量計13は、実施形態1の超音波流量計11及び実施形態2の超音波流量計が有するレベル超え検知部4、ノイズ確認カウンタ6を有していないが、同じ構成要素は基本的に同じ作用をする。以下、異なる部分を中心に説明する。
【0062】
圧力計測手段71は、使用している流体の圧力値を計測する。温度計測手段72は、使用している流体の温度値を計測する。データベース73は、使用する流体の種類毎の圧力値と温度値の組み合わせによって決定される複数の増幅率を記憶している。データベース73は、例えば、表1に示されるように、温度が20℃における大気圧での増幅率を1としたときに、温度・圧力条件で決定される増幅率である。そして、データベース73は、コントロール部23がスタート信号を出力する毎に圧力計測手段71と温度計測手段72とで計測された圧力値、温度値を受け取り、使用流体の種類、圧力値、及び温度値に一致する理論増幅率をノイズ判定部7へ出力する。
【0063】
【表1】
【0064】
ノイズ判定部7は、受信波検知部3からの受信波検知信号、増幅部26から実増幅率、データベース73から理論増幅率を受け取り、ノイズの発生の有無を判定する。具体的には、図12に示されるように、ノイズ判定部7は、まず実増幅率を受け取り、受信波信号を受け取ったかどうか判定する。受信波信号を受け取っていない場合は、実増幅率の変更の指令をコントロール部23に出力する。実増幅率の変更の指令が入力されたコントロール部23は、スタート信号を再度出力する。
【0065】
ノイズ判定部7が受信波信号を受け取っている場合は、理論増幅率を受け取り、実増幅率と理論増幅率とを比較する。実増幅率と理論増幅率とが等しい場合はノイズが発生しておらず、何も出力しないあるいはノイズが発生していないことをコントロール部23に出力する。実増幅率と理論増幅率とが等しくない場合は、ノイズ発生通知手段28にノイズ発生信号を出力する。ノイズ発生通知手段28は、文字、音、点滅などによりノイズの発生を通知する。なお、実増幅率と理論増幅率との比較は、実増幅率と理論増幅率との差の絶対値にいくらかの幅xがある(|実増幅率−理論増幅率|≦x)。
【0066】
本実施形態3の超音波流量計13が、ノイズを検出する例を図13を用いて説明する。図13に示されている破線で区切られている各波形が受信波を表している。図中の実増幅率及び理論増幅率として記載されているA,B,C,及びDは、A<B<C<Dの関係にある値とする。超音波流量計13の使用環境における圧力値と温度値との組み合わせからデータベース73が出力する理論増幅率がAの場合の状態が状態1、理論増幅率がBの状態が状態2とする。
【0067】
まず、図中一番左の受信波は、超音波流量計13の使用環境が状態1で理論増幅率がA、ノイズ判定部7は受信波検知信号を受け取る。増幅部26は、受信波を実増幅率としてAで増幅していることから、ノイズは発生していないと判定される。次の受信波は、使用環境が状態2で理論増幅率がB、ノイズ判定部7は受信波検知信号を受け取っていない。増幅部26は、受信波を実増幅率としてAで増幅していることから、実増幅率の変更指令が出力される。3つめの受信波は、使用環境が状態2で理論増幅率がB、ノイズ判定部7は受信波検知信号を受け取っていないため、実増幅率の変更指令が出力される。4つめの受信波は、使用環境が状態2で理論増幅率がB、ノイズ判定部7は受信波検知信号を受け取っていないため、実増幅率の変更指令が出力される。5つめの受信波は、4つめの受信波をBの実増幅率で増幅したのをCの実増幅率で増幅している。そのため、ノイズ判定部7は受信波信号を受け取ることができるが、理論増幅率がBであるため、実増幅率と異なる増幅率となり、ノイズが発生していると出力される。そして、実増幅率を使用流体や使用環境により想定される最大増幅率Dとしても受信波検知信号が検知されない場合は、計測不能状態となる。なお、計測不能状態の判定は、従来技術で対応することができるため、本明細書での記載は省略する。
【0068】
超音波流量計は、超音波送受波器にオイルミストなどの汚物が付着し、付着量が増大したり、経年劣化により受信波が小さくなったり、受信検知ができなくなる。しかし、3つめの受信波は、実増幅率が大きすぎたことによって、受信波の検知ができない。つまり、実増幅率を小さく調整する場合は、ノイズにより受信波が減衰しているわけではないため、実増幅率の調整をどちらにするかを判定することで、温度や圧力の変化による増幅率の徴税不足であることを検知することもできる。
【0069】
本実施形態3の超音波流量計13によれば、ノイズ検知用時間に基づいてノイズの発生を検知することができない場合でも、超音波送受波器への汚物付着により受信波が減衰していることを検知することができる。
【0070】
本実施形態3の超音波流量計13は、理論増幅率と実増幅率とを比較することでノイズの有無を判定しているが、実増幅率から推測される流体の温度及び圧力と計測手段により得られた温度及び圧力とを比較することでノイズの有無を判定する構成とすることもできる。
【0071】
(実施形態4)
実施形態4の超音波流量計は、実施形態1の超音波流量計11と実施形態3の超音波流量計13とを組み合わせたものである。実施形態1の超音波流量計11と実施形態3の超音波流量計13とを組み合わせることで、発生しているノイズが筐体ノイズ、配管ノイズ、又は超音波送受波器への汚物付着によることが原因であるかを知ることができる。
【0072】
(実施形態5)
実施形態5の超音波流量計は、実施形態2の超音波流量計と実施形態3の超音波流量計13とを組み合わせたものである。実施形態2の超音波流量計と実施敬体の超音波流量計13とを組み合わせることで、発生しているノイズが筐体ノイズ、配管ノイズ、又は超音波送受波器への汚物付着によることが原因であるかを知ることができる。
【0073】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態1の超音波流量計11と実施形態2の超音波流量計とを組み合わせた超音波流量計も考えられる。その場合、使用される流体は既知であることが望ましく、ノイズの判定を2種類で用いるため、どちらか一方でノイズ発生と判定された場合をノイズが発生しているとすることもできるし、両方がノイズ発生と判定された倍をノイズが発生しているとすることもできる。
【符号の説明】
【0074】
11,13:超音波流量計、
21,22:超音波送受波器、 23:コントロール部、
24:送受波駆動部、 25:カウンタ、
26:増幅部、 27:基準クロック発生部、
28:ノイズ発生通知手段、
3:受信波検知部、 31:基準レベル発生部、
32:レベル選択部、 33:比較部、
34:ゼロクロス検知部、
4:レベル超え検知部、 41:ノイズ検知レベル発生部、
42:レベル超え比較部、
5:ノイズ判定部、
6:ノイズ確認カウンタ(ノイズ検知用時間演算部)、
71:圧力計測手段、 72:温度計測手段、
73:データベース、
S1,S2:切替スイッチ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波流量計に関し、特にノイズを検知可能な超音波流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波流量計は、流体が通過する流れの上流と下流とに間隔をあけて1組の超音波送受信波器を配置し、流体の流れと同じ順方向の超音波の伝播時間と、流体の流れと逆の逆方向の超音波の伝播時間とから流速を求め、この流速に流路断面積を乗じて流量を求めている。
【0003】
ところで、超音波流量計はオイルミストなどの汚物が付着した場合、受信波が減衰することや、超音波流量計に由来するノイズ(以下、「筐体ノイズ」と称する。)が発生することが知られている。また、超音波流量計の上流あるいは下流の近傍に、減圧弁や半開バルブなどの絞り機構が設置された場合、流量を計測するために配管内に発生させた超音波とは異なる超音波(以下、「配管ノイズ」と称する。)が発生し、受信波にノイズとして重畳することが知られている。
【0004】
超音波流量計は、ノイズが受信波に重畳した場合や受信波が減衰した場合であっても、受信波が検知できれば、流量を求めることができる。しかし、時間的に一致する位置にノイズが発生すると、受信波にノイズが重畳し、ノイズが重畳した受信波に基づいて流量を求めることになり、ノイズの程度によっては誤差が生じるおそれがある。また、受信波が検知できないほどのノイズが重畳し、受信波が減衰・増幅しすぎた場合は、超音波の伝播時間を計測できない(以下、「測定不能状態」という)。
【0005】
特許文献1には、あらかじめ設定された正常計測時における超音波の伝播時間と、実際に測定された伝播時間とを比較し、所定の大きさ以上の差があった場合、誤測定と判定する超音波流量計が開示されている。特許文献2には、受信波を検知するサンプリング期間以外に受信波を検知した場合に、ノイズが発生していると判定する流量計測装置が開示されている。特許文献3には、受信波を検知するために増幅した増幅率を記憶し、記憶した増幅率を解析することで、異常がいつ発生し始めたかを絞り込める装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−183195号公報
【特許文献2】特開2004−108831号公報
【特許文献3】特開2005−257445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2に開示されるような装置では、ノイズが発生しても検知できない場合が考えられる。また、ノイズが検知されたり計測不能状態になったりしても、装置が設置された状態では装置の内部をすぐには確認できず、ノイズの原因が筐体あるいは配管のノイズに係るのか、係らないのか、又は減衰しているのかが分からないため、早急な対処ができない。
【0008】
特許文献3に開示されている装置では、ある一定の期間経過後にノイズが発生していたのかどうかを判断するものであるため、ノイズ発生時にはノイズの発生を判断できない。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、従来のノイズ検知より精度が良くノイズの有無を検知することができる超音波流量計を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明の構成上の特徴は、流体が通過する通路の上流と下流とに対向配置された1組の超音波送受波器を配置し、それらの間の超音波の到達時間から流量を求める超音波流量計であって、
前記超音波送波器から出力された前記超音波を前記超音波受波器が受け取る受信波が前記超音波受波器に到達したと判断したとき、受信波検知信号を出力する受信波検知部と、
ノイズ検知レベルを発生するノイズ検知レベル発生部と前記受信波が前記ノイズ検知レベルを超えたときノイズレベル超え信号を出力するレベル超え比較部とをもつレベル越え検知部と、
前記ノイズレベル超え信号を出力した時を始点又は終点として、ノイズ検知用時間を求めるノイズ検知用時間演算部と、
前記ノイズ検知用時間が正常な範囲をはずれているときに、ノイズ発生信号を出力するノイズ判定部と、
を有することである。
【0011】
また請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記超音波の出力を複数回行う場合に、
前記ノイズ判定部が出力する前記ノイズ発生信号は、一つ前の測定で得られた前記ノイズ検知用時間の値であるノイズ種類判定時間と前記ノイズ検知用時間の値とが同じ場合に筐体ノイズを表す信号とし、
それ以外の場合に配管ノイズを表す信号とすることである。
【0012】
また請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2において、前記ノイズ検知用時間は、前記ノイズレベル超え信号を出力した時から前記受信波検知信号を出力した時までの時間であり、
前記正常な範囲をはずれていると判断されるのは、設定値よりも前記ノイズ検知用時間が長い場合であり、
前記設定値は、前記超音波送波器から出力された前記超音波が前記超音波受波器で検知され始めた時から前記受信波検知信号が出力された時までの時間であると想定される時間以上で設定されることである。
【0013】
ここで、超音波受波器で検知され始めた時及び受信波検知信号が出力された時とは、使用する受信波の検知方法によって異なる。
【0014】
また請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2において、前記ノイズ検知用時間は、前記ノイズレベル超え信号を出力した時から前記受信波検知信号を出力した時までの時間であり、
前記正常な範囲をはずれていると判断されるのは、前記ノイズ検知用時間が受信波の一周期の長さ以下又は二周期の長さ以上の場合であることである。
【0015】
また請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜4の何れか1項において、前記ノイズ検知用時間は、前記超音波送波器が前記超音波を出力した時から前記ノイズレベル超え信号を出力した時までの時間であり、
前記正常な範囲をはずれていると判断されるのは、設定値よりも前記ノイズ検知用時間が短い場合であり、
前記設定値は、前記超音波送波器から前記超音波が出力された時から前記超音波受波器で検知され始めた時であると想定される時間以内で設定されることである。
【0016】
また請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜5の何れか1項において、前記受信波の振幅の大きさに応じて前記受信波の実増幅率を適正に調整可能な増幅部と、
前記流体の温度を計測し、計測温度を出力する温度計測手段と、
前記流体の圧力を計測し、計測圧力を出力する圧力計測手段と、
前記ノイズ判定部は、前記流体の種類、前記計測温度、及び、前記計測圧力の組み合わせにより決定される適正な理論増幅率と前記実増幅率との差異が所定以上の場合、又は前記実増幅率から推測される前記流体の推測温度及び推測圧力と前記計測温度及び前記計測圧力との差異が所定値以上の場合にはノイズ発生信号を出力することである。
【0017】
その他に、上記課題を解決するための請求項7に係る発明の構成上の特徴は、流体が通過する通路の上流と下流とに対向配置された1組の超音波送受波器を配置し、前記受信波の振幅の大きさに応じて前記受信波の実増幅率を適正に調整可能な増幅部をもち、前記超音波送受波器間の超音波の到達時間から流量を求める超音波流量計であって、
前記超音波送波器から出力された前記超音波を前記超音波受波器が受け取る受信波が前記超音波受波器に到達したと判断したとき、受信波検知信号を出力する受信波検知部と、
前記流体の温度を計測し、計測温度を出力する温度計測手段と、
前記流体の圧力を計測し、計測圧力を出力する圧力計測手段と、
前記流体の種類、前記計測温度、及び、前記計測圧力の組み合わせにより決定される適正な理論増幅率と前記実増幅率との差異が所定以上の場合、又は前記実増幅率から推測される前記流体の推測温度及び推測圧力と、前記計測温度及び前記計測圧力との差異が所定値以上の場合にはノイズ発生信号を出力するノイズ判定部と、
を有することである。
【0018】
また請求項8に係る発明の構成上の特徴は、請求項6又は7において、前記理論増幅率は、前記流体の種類、前記流体の温度、及び、前記流体の圧力の組み合わせ毎にデータベースに記憶されており、
前記データベースは、前記超音波が出力される毎に、前記温度測定手段から前記流体の温度と前記圧力計測手段から前記流体の圧力とを受信し、記憶されている組み合わせの前記理論増幅率を出力することである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明においては、ノイズ検知レベル発生部がノイズ検知レベルを発生し、受信波がノイズ検知レベルを超えたとき、レベル超え比較部がノイズレベル超え信号を出力する。そして、ノイズ判定部が、ノイズレベル超え信号を出力した時間に基づき求められるノイズ検知用時間が、正常な範囲をはずれているときに、ノイズ発生信号を出力する。
【0020】
受信波は、その大きさが流体の種類、圧力、温度によって変化するものの、波の形状(各波同士の相対関係。図4参照。)は変わらないという特徴を有していること、流体があらかじめ分かっている場合であれば圧力や温度との組み合わせで受信波が検知される時間的範囲を導き出せることから正常な範囲を設定することができる。なお、超音波の到達時間を算出するための受信波検知信号を検知する方法は、どのような方法でも良い。また、本願において「信号を出力する」とは、電気信号や光信号など信号を検出できるものであればよい。電気信号を例とすると、低い電圧から高い電圧への変化、高い電圧から低い電圧の変化、出力されていたものが出力されなくなる等、それらの変化はステップ状でもパルス状でも緩やかな変化であっても検知することができるものであれば、「信号を出力する」とする。請求項1に係る発明によれば、ノイズ検知レベル値や正常な範囲の設定を適正に行うことで、従来検知できなかったノイズを精度良く検知することができる。
【0021】
請求項2に係る発明においては、ノイズ判定部が、ノイズ検知用時間とノイズ種類判定時間とを比較することで、発生しているノイズが筐体に係る筐体ノイズなのか配管に係る配管ノイズであるか判別することができる。ここで、筐体ノイズとは、超音波流量計に由来するノイズであり、配管ノイズとは超音波流量計に由来しないノイズであり、ノイズ種類判定時間は前回のノイズ検知用時間の値である。超音波流量計に由来する配管ノイズは、超音波送波器から出力された超音波が筐体(超音波流量計)を伝播することで生じるノイズであり、通常は発生しないように設計されているか発生しても除外できるように設計されている。しかし、汚れの付着などでそのバランスが崩れるとノイズが発生する。筐体ノイズは、何よりも早く筐体内を伝播し、一度発生したらほぼ毎回同じ時間で伝播する。そこで、超音波の出力を複数回行い流量を測定することを前提として、前の測定で得られたノイズ検知時間の値をノイズ種類判定時間として記憶しておくことで、次に検知されたノイズと1つ前に発生したノイズの発生時間とを比較することで、ノイズの種類を特定することができる。よって、ノイズ発生信号は、ノイズ検知用時間とノイズ種類判定時間とが等しい場合は筐体ノイズを表す信号とし、それ以外は配管ノイズを表す信号とする。なお、等しいとは必ずしも等号ではなく、いくらかの幅を持たせることができる。請求項2に係る発明によれば、発生しているノイズの種類や原因を特定することができる。
【0022】
請求項3に係る発明においては、ノイズ検知用時間がノイズレベル超え信号を出力した時から受信波検知信号を出力した時までの時間である。受信波はその大きさが流体の種類、圧力、温度によって変化するものの、波の形状(各波同士の相対関係。図4参照。)が変わらないという特徴を有していることから、超音波が検知され始める時から受信波検知信号が出力されるまでの時間が想定できる。そこで、正常な範囲をその想定される時間以上に設定することで、ノイズが発生している場合は、超音波が検知され始めるときよりも早くノイズレベル超え信号を出力するため、ノイズ検知用時間は設定される時間より長くなる。よって、ノイズ判定部は、ノイズ検知用時間が設定される時間よりも長い場合は、ノイズが発生していると判定する。なお、正常な範囲は、あらかじめ設定したり、受信波を正常に検知できた時の正常な測定値に基づき設定したりすることができる。請求項3に係る発明によれば、流体の種類を考慮することなく、受信波の波形の特性を用いることで、超音波流量計で使用される流体が不明な場合でもノイズを検知することができる。
【0023】
請求項4に係る発明においては、受信波の周期に基づいて正常な範囲を設定する。上記したように受信波の形状が変わらないという特徴を有していることから、受信波の大きさが分かれば受信波の一周期の長さを求めることができる。そこで、ノイズ検知用時間が、受信波の一周期の長さ以下又は二周期の長さ以上の場合に、正常な範囲をはずれていると判断する。請求項4に係る発明によれば、流体の種類を考慮することなく、受信波の波形の特性を用いることで、超音波流量計で使用される流体が不明な場合でもノイズを検知することができる。
【0024】
請求項5に係る発明においては、ノイズ検知用時間が超音波を出力した時からノイズレベル超え信号を受信した時までの時間である。超音波が検知され始める時間は、流体の種類及び流量を測定する環境から得られる状態(流体の温度や圧力)に基づき導き出すことができる。そこで、正常な範囲を検知され始める時間よりも短い時間、つまり検知され始めると想定される時間以内で設定することで、ノイズが発生している場合は、超音波が検知され始めるときよりも早くノイズレベル超え信号を出力するため、ノイズ検知用時間は設定される時間より短くなる。よって、ノイズ判定部は、ノイズ検知用時間が設定される時間よりも短い場合は、ノイズが発生していると判定する。請求項4に係る発明によれば、超音波流量計で使用される流体が既知の場合にノイズを検知することができる。
【0025】
請求項6に係る発明においては、ノイズ判定部が、流体の種類、温度、圧力とから決定する適正な理論増幅率と、増幅部が受信波を実際に調整した実増幅率と、を比較することで、ノイズの発生の有無を判定する。又は、実増幅率から推測される流体の温度及び圧力と計測手段により得られた温度及び圧力とを比較することで、ノイズの発生の有無を判定する。ここで、適正な理論増幅率とは、所定の振幅となるように調節するための率である。実増幅率が理論増幅率とあまりに大きく異なる、あるいは実際に増幅した実増幅率から推測される流体の温度及び圧力が実際に計測した温度及び圧力と大きくことなるということは、受信波になんらかのノイズが重畳されているか受信波が減衰する原因があると言える。理論増幅率の算出、実増幅率から流体の温度及び圧力の推測をおこなうためには、使用する流体があらかじめ分かっていることが望ましい。よって、請求項5に係る発明によれば、ノイズが時間的に同じ位置で重畳して受信波の大きさが見かけ上大きくなったとき、又は汚れなどにより受信波が減衰したときのような場合に、ノイズ検知用時間に基づいてノイズの発生を検知することができない場合でも、ノイズの検知をすることができる。
【0026】
請求項7に係る発明においては、ノイズ判定部が、流体の種類、温度、圧力とから決定する正確な理論増幅率と、増幅部が受信波を実際に調整した実増幅率と、を比較することで、ノイズの発生の有無を判定する。又は、実増幅率から推測される流体の温度及び圧力と計測手段により得られた温度及び圧力とを比較することで、ノイズの発生の有無を判定する。実増幅率が理論増幅率とあまりに大きく異なる、あるいは実際に増幅した実増幅率から推測される流体の温度及び圧力が実際に計測した温度及び圧力と大きくことなるということは、受信波になんらかのノイズが重畳されているか受信波が減衰する原因があると言える。理論増幅率の算出、実増幅率から流体の温度及び圧力の推測をおこなうためには、使用する流体があらかじめ分かっていることが望ましい。よって、ノイズが時間的に同じ位置で重畳して受信波の大きさが見かけ上大きくなったとき、又は汚れなどにより受信波が減衰したときのような場合に、ノイズ検知用時間に基づいてノイズの発生を検知することができない場合でも、ノイズの検知をすることができる。
【0027】
請求項8に係る発明においては、理論増幅率を流体の種類、温度、圧力の組み合わせ毎にデータベースに記憶することができる。データベースは、使用流体、測定された温度
及び圧力の組み合わせの理論増幅率をノイズ判定部に出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態1の超音波流量計11の構成図を示すブロック図である。
【図2】本実施形態1の超音波流量計11で用いられる受信波検知部3及びレベル超え検知部4の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態1の超音波流量計11が受信波を検知する方法を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】本実施形態1の超音波流量計11が受信する受信波の一例を示す波形図である。
【図5】本実施形態1の超音波流量計11がノイズの発生を検知する流れの一例を示したフローチャートである。
【図6】本実施形態1の超音波流量計11がノイズを検知する一例を示すタイミングチャートである。
【図7】本実施形態1の超音波流量計11がノイズを検知する一例を示すタイミングチャートである。
【図8】本実施形態2の超音波流量計がノイズの発生を検知する流れの一例を示したフローチャートである。
【図9】本実施形態2の超音波流量計がノイズを検知する一例を示すタイミングチャートである。
【図10】本実施形態2の超音波流量計がノイズを検知する一例を示すタイミングチャートである。
【図11】本実施形態3の超音波流量計13の構成図を示すブロック図である。
【図12】本実施形態3の超音波流量計13がノイズの発生を検知する流れの一例を示したフローチャートである。
【図13】本実施形態3の超音波流量計13がノイズを検知する一例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の代表的な実施形態を図1〜図13を参照して説明する。本発明の超音波流量計は、気体又は液体が流れるパイプライン(図示せず)の途中に取り付けられている。
【0030】
(実施形態1)
本実施形態1の超音波流量計11は、図1に示されるように、超音波送受波器21,22と、受信波検知部3と、レベル超え検知部4と、ノイズ判定部5と、ノイズ確認カウンタ(ノイズ検知用時間演算部)6とを有する。超音波流量計11は、更に、コントロール部23と、切替スイッチS1,S2と、送受器駆動部24と、カウンタ25と、増幅部26と、基準クロック発生部27と、ノイズ発生通知手段28とを有する。
【0031】
超音波送受波器21,22は、一対の超音波振動子で構成され、被計測流体の流れるパイプライン内の上流と下流とに対向配置され、どちらかの一方が上流側、他方が下流側に位置する。超音波送受波器21,22は、送信側としても受信側としても作動でき、切替スイッチS1,S2を介して送受器動部24か受信波検知部3(増幅部26を介して)かに接続され、流体中を上流から下流及び下流から上流へと超音波の送受を行う。超音波送受波器21,22は、切替スイッチS1とS2が図1に示される状態のときは、超音波送受波器21は送受器駆動部24に接続されて送波器として作動し、超音波送受波器22は(増幅部26を介して)受信波検知部3に接続されて受波器として作動する。
【0032】
受信波検知部3は、例えば送波器21が出力した超音波を受波器22が検知すると受信波検知信号を出力する。受信波信号を出力する(受信波の検知)方法は、後述する。
【0033】
コントロール部23は、一定時間間隔で超音波送受波器21,22の送受の切り替えを行い、切り替え毎にその後、スタート信号を出力する。送受の切り替えは、コントロール部23からの送受切替信号で切替スイッチS1,S2を切り替えることで行われる。コントロール部23は、受信波検知部3からの受信波検知信号が入力されると、後述するカウンタ25が測定した測定時間を読み取り、直前に行った反対向きでの測定時間とを用いて、超音波送受波器間の流速を算出し、算出した流速とパイプの断面積などから流量を求められる。
【0034】
送受器駆動部24は、コントロール部23が出力したスタート信号を受け取ると送信側の超音波送受波器21(22)を駆動する。
【0035】
カウンタ25は、スタート信号から受信波検知信号までの時間を測定する。その測定した時間は、コントロール部23が読み取る。当該実施形態では、スタート信号で測定時間がリセットされてから、時間を測定する。カウンタ25は、基準クロック発生部27からのクロックをカウントすることで時間を計測する。
【0036】
受信波検知部3は、図2に示されるように、基準レベル発生部31と、レベル選択部32と、比較部33と、ゼロクロス検知部34とを有する。
【0037】
基準レベル発生部31は、異なる電圧の複数の基準レベル、例えば5つの基準レベルVthj1〜Vthj5を出力して、レベル選択部32へ入力する。5つの基準レベルVthj1〜Vthj5は、例えば指数関数的に並ぶように電圧が定められる(図3参照)。レベル選択部32は、基準レベル発生部31が出力した複数の基準レベルの内、小さい方の所定数、この実施例では3個の基準レベルVthj1〜Vthj3を選択して比較部33へ出力する。レベル選択部32は送信側となった超音波送受波器の送信毎(発信毎)に小さい方から所定数、例えば3個の基準レベルを選択して比較部33へ出力する。受信波は、受波器22(21)で受信され、増幅部26で増幅された後、受信波検知部3の比較部33とゼロクロス検知部34とに入力される。そして、受信波は、選択された基準レベルVthj1〜Vthj3と比較部33で順次比較される。
【0038】
増幅後の受信波(波形)と基準レベルとが図3に示されるとき、第2波が点a1で最小の基準レベルVthj1を越えるが、2つの基準レベルVthj2とVthj3は越えない。比較部12は、Vthj1を超えたが2つのVthj2とVthj3を超えていない波を点a1で検知したことをゼロクロス検知部34に出力し、ゼロクロス検知部34は第2波のゼロクロス点c1を検知すると、ゼロクロス点c1をゼロクロス検知信号としてレベル選択部32へ出力する。比較部33は、点a1をレベル選択部32へ出力する。次に、第2波が越えた基準レベルVthj1に代えて、今まで選択されていなかった基準レベルVthj4〜Vthj5のうち最小の基準レベルがレベル選択部32によって選択されて、比較部32へ出力される。
【0039】
比較部33には、次の波が入力される前に、Vthj1を除いた残りの基準レベルVthj2〜Vthj5の中から小さい方の所定数(この場合3個) の基準レベルVthj2〜Vthj4が入力され、次の波を待ち受ける。そして、次にくる波のいずれかが基準レベルVthj2〜Vthj4を一気に超えると、比較部33はその波を検知したことをゼロクロス検知部34へ出力する。ゼロクロス検知部34は、その波が次にゼロクロスする点c2を検知し、その波のゼロクロス点であるとして、受信波検知信号を出力する。
【0040】
レベル超え検知部4は、図2に示されるように、ノイズ検知レベル発生部41と、レベル超え比較部42とを有する。ノイズ検知レベル発生部41は、受信波検知部3の基準レベル発生部31が出力する基準レベルのうち最小レベルより小さいノイズ検知レベルVthkを発生する。レベル超え比較部42は、受信波がノイズ検知レベルを超えたときノイズレベル超え信号を出力する。
【0041】
図1に戻って、ノイズ確認カウンタ6は、レベル超え検知部4からのノイズレベル超え信号を受信すると、ノイズレベル超え信号が出力されてから受信波検知信号が出力されるまでのノイズ検知用時間(T1)を演算する。T1を演算するにあたり、ノイズレベル超え信号の出力時及び受信波検知信号の出力時は、コントロール部23が出力したスタート信号を受け取るとリセットされ、基準クロック発生部27からのクロックをカウントすることで時間を計測する。そして、ノイズ確認カウンタ6は、演算したT1を後述するノイズ判定部5に出力する。
【0042】
ノイズ判定部5は、ノイズ確認カウンタ6から入力されたT1と、時間範囲(Tx)とを比較して、ノイズが発生している場合はノイズ発生信号をノイズ発生通知手段28に出力する。Txは、図4に示されるように、受信波形の1周期をT0とした場合、1×T0<Tx<2×T0とすることができる。つまり、Txは受信波の1周期から2周期に相当する大きさで設定される値であり、受信波検知信号が検知される正常な範囲である。受信波形の1周期は、振幅が常に同じになるように増幅率を設定したり、受信波の大きさが分かれば、算出することができる。
【0043】
ノイズ判定部5では、図5に示されるように、ノイズ確認カウンタ6から入力されたT1がTx以下であるか判定する。T1がTx以下の場合は、ノイズが発生していないため、正常と判定後、T1をノイズ種類判定時間T10と記録する。T10は、前回のT1の値である。T1がTxより大きい場合は、ノイズが発生しており、更にT1がT10と等しいか等しくないかを判定する。T1がT10と等しい場合、ノイズは筐体に係るノイズであるとして、ノイズ発生信号を出力する。T1がT10と等しくない場合は、ノイズは配管に係るノイズであるとして、ノイズ発生信号を出力する。なお、T1とT10との比較における等しいは、いくらかの幅を持たせることができる。また、T1とTxの比較において、下限を設定しても良い。
【0044】
筐体あるいは配管どちらかのノイズであるとノイズ発生信号を受信したノイズ発生通知手段28は、文字表示、音、あるいは点滅などによりノイズの種類も含めてノイズの発生を管理者に通知したり、監視装置に通知・記録したりする。ノイズの種類の区別は、表示される文字、音の発生の仕方や音の種類、ランプの点滅の仕方等により、通知可能である。
【0045】
ノイズ判定部5は、正常又はノイズが発生していると判断した後、判定終了信号をコントロール部23に出力する。判定終了信号を受け取ったコントロール部23は、流量測定の動作の完了を確認後、新たなスタート信号を発信する。
【0046】
次に、本実施形態1の超音波流量計11が、ノイズを検出する例を図6及び図7を用いて説明する。図6及び図7では、図の左から右に向かって時間の経過を示す。図6及び図7において、受信波は、第1波と記載されている以降の振幅の波形である。よって、図6及び図7に図示されている受信波より前に発生している振幅がノイズである。図6のノイズは基準レベルのVthj1より小さい振幅であり、図7のノイズは基準のレベルVthj1より大きい振幅である。
【0047】
本実施形態1の超音波流量計11では、図6のノイズが基準レベルVthj1より更に小さいノイズ検知レベルを点n1で超えるため、レベル超え検知部4がノイズレベル超え信号を出力する。受信波検知部3では、受信波の第2波が点a1で基準レベルVthj1を超えた、更に、第4波が基準レベルVthj2〜Vthj4を一気に超えた後のゼロクロス点c2で受信波検知信号を出力する。ノイズ確認カウンタ6では、点n1から受信波検知信号が出力された点c2までのノイズ検知用時間T1を演算する。図6において、T1は明らかにTx以下である。そのため、ノイズ判定部5は、ノイズが発生しているとして、ノイズ発生信号をノイズ発生通知手段28に出力する。ここで、T1がノイズ種類判定時間T10(前回のT1)と等しければノイズは筐体に係るノイズであり、T1がT10と等しくなければ配管に係るノイズであるとするノイズ発生信号を出力する。
【0048】
本実施形態1の超音波流量計11では、図7のノイズが基準レベルVthj1より更に小さいノイズ検知レベルを点n2で超えるため、レベル超え検知部4がノイズレベル超え信号が出力する。受信波検知部3では、ノイズ検知レベルを超えたのとは違う波が基準レベルVthj1を超えたのち、受信波の第4波が基準レベルVthj2〜Vthj4を一気に超え、ゼロクロス点c3で受信波検知信号を出力する。ノイズ確認カウンタ6では、点n2から受信波検知信号が出力された点c3までのノイズ検知用時間T1を演算する。図7において、T1は明らかにTxの範囲を超えている。そのため、ノイズ判定部5は、ノイズが発生しているとして、ノイズ発生信号をノイズ発生通知手段28に出力する。ここで、T1がT10と等しければノイズは筐体に係るノイズであり、T1がT10と等しくなければ配管に係るノイズであると出力する。
【0049】
図6に示されるノイズは、従来技術によると、ノイズが発生している状態にもかかわらず検知することができない。そして、ノイズが図7に示されるほど大きくなった時、初めてノイズが発生していることが検知されることとなる。また、図7に示されるようなノイズが発生している状態は、異常数値の流量値から検知できたとしても、筐体に係るノイズなのか配管に係るノイズなのかは検出できない。
【0050】
本実施形態1の超音波流量計11によれば、使用される流体が未知であっても受信波の波形(各波同士の相対関係)が変わらないという特性を用いることで、従来よりも精度良く、ノイズの有無を検知することができる。特に、本実施形態1において、ノイズ検知レベルが、受信波を検知するための基準レベルに基づき設定しており、ノイズを効果的に検知することができる。
【0051】
また、ノイズが筐体に係るノイズであるのか配管に係るノイズであるのかの判別もすることができるため、超音波流量計11自体の設置を取り外すことなく、ノイズの原因を知ることができる。つまり、計測不能状態の回避ができるだけでなく、装置を取り外すことなく交換部品や超音波流量計自体の調達を手配するなど、早急な対応が可能である。
【0052】
(実施形態2)
本実施形態2の超音波流量計は、実施形態1の超音波流量計11と基本的に同様の構成及び作用効果を有する。本実施形態2の超音波流量計は、ノイズ検知用時間及び時間範囲が実施形態1の超音波流量計11と異なる。以下では、異なる構成及び作用効果を中心に説明する。
【0053】
ノイズ確認カウンタ6は、レベル超え検知部4からのノイズレベル超え信号を受信すると、コントロール部23よりスタート信号が出力されてからレベル超え検知部4よりノイズレベル超え信号が出力されるまでのノイズ検知用時間T2を計測する。そして、T2をノイズ判定部5に出力する。
【0054】
ノイズ判定部5は、ノイズ確認カウンタ6から入力されたT2と、時間範囲Tsとを比較する。時間範囲Tsは、スタート信号が出力され送波器21(22)から超音波が出力された時から、受信波が受波器22(21)で検知され始めると想定される時間以内からそれ以降である。受信波が受波器22(21)で検知され始めると想定される時間は、超音波流量計の使用環境での最大温度・最大流速からあらかじめ算出できる使用流体の音速のうち、最大音速と超音波流量計の超音波送受波器21,22の距離とから算出することができる。よって、Tsは最短時間よりわずかに早い時間からそれ以降の時間である。つまり、Tsは、超音波送受波器21,22の間を、コントロール部23のスタート信号の出力時から、ノイズがないとした場合の超音波が伝播する最短時間より早い時間に設定している。よって、超音波の伝播される最短時間より早い時間より更に早い時間で受信波が検知された場合は、ノイズが発生していることになる。
【0055】
ノイズ判定部5では、図8に示されるように、ノイズ確認カウンタ6から入力されたT2とTsとを比較する。T2がTsの範囲内、つまりT2がTsより大きい場合は、ノイズが発生していないため、正常と判定。その後、T2をノイズ種類判定時間T20と記録する。T20は、前回のT2の値である。T2がTsより短い時間、つまりT2がTs以下の場合は、ノイズが発生しており、更にT2がT20と等しいか等しくないかを判定する。T2がT20と等しい場合、ノイズは筐体に係るノイズであるとして、ノイズ発生信号を出力する。T2がT20と等しくない場合は、ノイズは配管に係るノイズであるとして、ノイズ発生信号を出力する。なお、T2とT20との比較における等しいは、いくらかの幅を持たせることができる。
【0056】
ノイズ通知手段28は、実施形態1と同様に、ノイズ発生信号が入力されると、ノイズの発生を何らかの手段により通知する。
【0057】
実施形態2の超音波流量計が、ノイズを検出する例を図9及び図10を用いて説明する。図9及び図10では、図は左から右に向かって時間の経過を示す。図9及び図10において、受信波は、第1波と記載されている以降の振幅の波形である。よって、図9及び図10に図示されている受信波より前に発生している振幅がノイズである。図9のノイズは基準レベルのVthj1より小さい振幅であり、図10のノイズは基準レベルのVthj1より大きい振幅である。
【0058】
実施形態2の超音波流量計では、図9のノイズがノイズ検知レベルを点n3で超えるため、レベル超え検知部4がノイズレベル超え信号を出力する。ノイズ確認カウンタ6では、コントロール部23がスタート信号を出力してからレベル超え検知部4がノイズレベル超え信号を出力するまでのノイズ検知用時間T2を計測し、T2をノイズ判定部5へ出力する。図9において、T2は明らかにTsより小さい。よって、ノイズ判定部5は、T2がT20と等しいか等しくないかを判定後、ノイズが筐体に係るノイズ又は配管に係るノイズであるノイズ発生信号をノイズ発生通知手段28に出力する。
【0059】
次に、図10に示されるような場合、実施形態2の超音波流量計では、ノイズがノイズ検知レベルを点n4で超え、レベル超え検知部4がノイズレベル超え信号を出力する。ノイズ確認カウンタ6では、コントロール部23がスタート信号を出力してからレベル超え検知部4がノイズレベル超え信号を出力するまでのノイズ検知用時間T2を計測し、T2をノイズ判定部5へ出力する。図9において、T2は明らかにTsより小さい。よって、ノイズ判定部5は、T2がT20と等しいか等しくないか判定後、ノイズが筐体に係るノイズ又は配管に係るノイズであるかノイズ発生信号をノイズ発生通知手段28に出力する。
【0060】
本実施形態2の超音波流量計によれば、使用される流体が既知の場合に、流量を測定する環境から得られる状態に基づき、従来よりも精度良くノイズの有無を検知することができる。また、ノイズが筐体に係るノイズであるのか配管に係るノイズであるのかの判別もすることができる。つまり、計測不能状態の回避ができる上、設置を取り外すことなく、交換部品や超音波流量計自体の調達を手配するなど、早急な対応が可能である。
【0061】
(実施形態3)
本実施形態3の超音波流量計13は、図11に示されるように、超音波送受波器21,22と、増幅部26、受信波検知部3と、圧力計測手段71、温度計測手段72、データベース73と、ノイズ判定部7とを有する。超音波流量計11は、更に、コントロール部23と、切替スイッチS1,S2と、送受器駆動部24と、カウンタ25と、基準クロック発生部27と、ノイズ発生通知手段28とを有する。本実施形態3の超音波流量計13は、実施形態1の超音波流量計11及び実施形態2の超音波流量計が有するレベル超え検知部4、ノイズ確認カウンタ6を有していないが、同じ構成要素は基本的に同じ作用をする。以下、異なる部分を中心に説明する。
【0062】
圧力計測手段71は、使用している流体の圧力値を計測する。温度計測手段72は、使用している流体の温度値を計測する。データベース73は、使用する流体の種類毎の圧力値と温度値の組み合わせによって決定される複数の増幅率を記憶している。データベース73は、例えば、表1に示されるように、温度が20℃における大気圧での増幅率を1としたときに、温度・圧力条件で決定される増幅率である。そして、データベース73は、コントロール部23がスタート信号を出力する毎に圧力計測手段71と温度計測手段72とで計測された圧力値、温度値を受け取り、使用流体の種類、圧力値、及び温度値に一致する理論増幅率をノイズ判定部7へ出力する。
【0063】
【表1】
【0064】
ノイズ判定部7は、受信波検知部3からの受信波検知信号、増幅部26から実増幅率、データベース73から理論増幅率を受け取り、ノイズの発生の有無を判定する。具体的には、図12に示されるように、ノイズ判定部7は、まず実増幅率を受け取り、受信波信号を受け取ったかどうか判定する。受信波信号を受け取っていない場合は、実増幅率の変更の指令をコントロール部23に出力する。実増幅率の変更の指令が入力されたコントロール部23は、スタート信号を再度出力する。
【0065】
ノイズ判定部7が受信波信号を受け取っている場合は、理論増幅率を受け取り、実増幅率と理論増幅率とを比較する。実増幅率と理論増幅率とが等しい場合はノイズが発生しておらず、何も出力しないあるいはノイズが発生していないことをコントロール部23に出力する。実増幅率と理論増幅率とが等しくない場合は、ノイズ発生通知手段28にノイズ発生信号を出力する。ノイズ発生通知手段28は、文字、音、点滅などによりノイズの発生を通知する。なお、実増幅率と理論増幅率との比較は、実増幅率と理論増幅率との差の絶対値にいくらかの幅xがある(|実増幅率−理論増幅率|≦x)。
【0066】
本実施形態3の超音波流量計13が、ノイズを検出する例を図13を用いて説明する。図13に示されている破線で区切られている各波形が受信波を表している。図中の実増幅率及び理論増幅率として記載されているA,B,C,及びDは、A<B<C<Dの関係にある値とする。超音波流量計13の使用環境における圧力値と温度値との組み合わせからデータベース73が出力する理論増幅率がAの場合の状態が状態1、理論増幅率がBの状態が状態2とする。
【0067】
まず、図中一番左の受信波は、超音波流量計13の使用環境が状態1で理論増幅率がA、ノイズ判定部7は受信波検知信号を受け取る。増幅部26は、受信波を実増幅率としてAで増幅していることから、ノイズは発生していないと判定される。次の受信波は、使用環境が状態2で理論増幅率がB、ノイズ判定部7は受信波検知信号を受け取っていない。増幅部26は、受信波を実増幅率としてAで増幅していることから、実増幅率の変更指令が出力される。3つめの受信波は、使用環境が状態2で理論増幅率がB、ノイズ判定部7は受信波検知信号を受け取っていないため、実増幅率の変更指令が出力される。4つめの受信波は、使用環境が状態2で理論増幅率がB、ノイズ判定部7は受信波検知信号を受け取っていないため、実増幅率の変更指令が出力される。5つめの受信波は、4つめの受信波をBの実増幅率で増幅したのをCの実増幅率で増幅している。そのため、ノイズ判定部7は受信波信号を受け取ることができるが、理論増幅率がBであるため、実増幅率と異なる増幅率となり、ノイズが発生していると出力される。そして、実増幅率を使用流体や使用環境により想定される最大増幅率Dとしても受信波検知信号が検知されない場合は、計測不能状態となる。なお、計測不能状態の判定は、従来技術で対応することができるため、本明細書での記載は省略する。
【0068】
超音波流量計は、超音波送受波器にオイルミストなどの汚物が付着し、付着量が増大したり、経年劣化により受信波が小さくなったり、受信検知ができなくなる。しかし、3つめの受信波は、実増幅率が大きすぎたことによって、受信波の検知ができない。つまり、実増幅率を小さく調整する場合は、ノイズにより受信波が減衰しているわけではないため、実増幅率の調整をどちらにするかを判定することで、温度や圧力の変化による増幅率の徴税不足であることを検知することもできる。
【0069】
本実施形態3の超音波流量計13によれば、ノイズ検知用時間に基づいてノイズの発生を検知することができない場合でも、超音波送受波器への汚物付着により受信波が減衰していることを検知することができる。
【0070】
本実施形態3の超音波流量計13は、理論増幅率と実増幅率とを比較することでノイズの有無を判定しているが、実増幅率から推測される流体の温度及び圧力と計測手段により得られた温度及び圧力とを比較することでノイズの有無を判定する構成とすることもできる。
【0071】
(実施形態4)
実施形態4の超音波流量計は、実施形態1の超音波流量計11と実施形態3の超音波流量計13とを組み合わせたものである。実施形態1の超音波流量計11と実施形態3の超音波流量計13とを組み合わせることで、発生しているノイズが筐体ノイズ、配管ノイズ、又は超音波送受波器への汚物付着によることが原因であるかを知ることができる。
【0072】
(実施形態5)
実施形態5の超音波流量計は、実施形態2の超音波流量計と実施形態3の超音波流量計13とを組み合わせたものである。実施形態2の超音波流量計と実施敬体の超音波流量計13とを組み合わせることで、発生しているノイズが筐体ノイズ、配管ノイズ、又は超音波送受波器への汚物付着によることが原因であるかを知ることができる。
【0073】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態1の超音波流量計11と実施形態2の超音波流量計とを組み合わせた超音波流量計も考えられる。その場合、使用される流体は既知であることが望ましく、ノイズの判定を2種類で用いるため、どちらか一方でノイズ発生と判定された場合をノイズが発生しているとすることもできるし、両方がノイズ発生と判定された倍をノイズが発生しているとすることもできる。
【符号の説明】
【0074】
11,13:超音波流量計、
21,22:超音波送受波器、 23:コントロール部、
24:送受波駆動部、 25:カウンタ、
26:増幅部、 27:基準クロック発生部、
28:ノイズ発生通知手段、
3:受信波検知部、 31:基準レベル発生部、
32:レベル選択部、 33:比較部、
34:ゼロクロス検知部、
4:レベル超え検知部、 41:ノイズ検知レベル発生部、
42:レベル超え比較部、
5:ノイズ判定部、
6:ノイズ確認カウンタ(ノイズ検知用時間演算部)、
71:圧力計測手段、 72:温度計測手段、
73:データベース、
S1,S2:切替スイッチ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が通過する通路の上流と下流とに対向配置された1組の超音波送受波器を配置し、それらの間の超音波の到達時間から流量を求める超音波流量計であって、
前記超音波送波器から出力された前記超音波を前記超音波受波器が受け取る受信波が前記超音波受波器に到達したと判断したとき、受信波検知信号を出力する受信波検知部と、
ノイズ検知レベルを発生するノイズ検知レベル発生部と前記受信波が前記ノイズ検知レベルを超えたときノイズレベル超え信号を出力するレベル超え比較部とをもつレベル越え検知部と、
前記ノイズレベル超え信号を出力した時を始点又は終点として、ノイズ検知用時間を求めるノイズ検知用時間演算部と、
前記ノイズ検知用時間が正常な範囲をはずれているときに、ノイズ発生信号を出力するノイズ判定部と、
を有することを特徴とする超音波流量計。
【請求項2】
前記超音波の出力を複数回行う場合に、
前記ノイズ判定部が出力する前記ノイズ発生信号は、一つ前の測定で得られた前記ノイズ検知用時間の値であるノイズ種類判定時間と前記ノイズ検知用時間の値とが同じ場合に筐体ノイズを表す信号とし、
それ以外の場合に配管ノイズを表す信号とする請求項1に記載の超音波流量計。
【請求項3】
前記ノイズ検知用時間は、前記ノイズレベル超え信号を出力した時から前記受信波検知信号を出力した時までの時間であり、
前記正常な範囲をはずれていると判断されるのは、設定値よりも前記ノイズ検知用時間が長い場合であり、
前記設定値は、前記超音波送波器から出力された前記超音波が前記超音波受波器で検知され始めた時から前記受信波検知信号が出力された時までの時間であると想定される時間以上で設定される請求項1又は2に記載の超音波流量計。
【請求項4】
前記ノイズ検知用時間は、前記ノイズレベル超え信号を出力した時から前記受信波検知信号を出力した時までの時間であり、
前記正常な範囲をはずれていると判断されるのは、前記ノイズ検知用時間が受信波の一周期の長さ以下又は二周期の長さ以上の場合である請求項1又は2に記載の超音波流量計。
【請求項5】
前記ノイズ検知用時間は、前記超音波送波器が前記超音波を出力した時から前記ノイズレベル超え信号を出力した時までの時間であり、
前記正常な範囲をはずれていると判断されるのは、設定値よりも前記ノイズ検知用時間が短い場合であり、
前記設定値は、前記超音波送波器から前記超音波が出力された時から前記超音波受波器で検知され始めた時であると想定される時間以内で設定される請求項1〜4の何れか1項に記載の超音波流量計。
【請求項6】
前記受信波の振幅の大きさに応じて前記受信波の実増幅率を適正に調整可能な増幅部と、
前記流体の温度を計測し、計測温度を出力する温度計測手段と、
前記流体の圧力を計測し、計測圧力を出力する圧力計測手段と、
前記ノイズ判定部は、前記流体の種類、前記計測温度、及び、前記計測圧力の組み合わせにより決定される適正な理論増幅率と前記実増幅率との差異が所定以上の場合、又は前記実増幅率から推測される前記流体の推測温度及び推測圧力と前記計測温度及び前記計測圧力との差異が所定値以上の場合にはノイズ発生信号を出力する請求項1〜5の何れか1項に記載の超音波流量計。
【請求項7】
流体が通過する通路の上流と下流とに対向配置された1組の超音波送受波器を配置し、前記受信波の振幅の大きさに応じて前記受信波の実増幅率を適正に調整可能な増幅部をもち、前記超音波送受波器間の超音波の到達時間から流量を求める超音波流量計であって、
前記超音波送波器から出力された前記超音波を前記超音波受波器が受け取る受信波が前記超音波受波器に到達したと判断したとき、受信波検知信号を出力する受信波検知部と、
前記流体の温度を計測し、計測温度を出力する温度計測手段と、
前記流体の圧力を計測し、計測圧力を出力する圧力計測手段と、
前記流体の種類、前記計測温度、及び、前記計測圧力の組み合わせにより決定される適正な理論増幅率と前記実増幅率との差異が所定以上の場合、又は前記実増幅率から推測される前記流体の推測温度及び推測圧力と、前記計測温度及び前記計測圧力との差異が所定値以上の場合にはノイズ発生信号を出力するノイズ判定部と、
を有することを特徴とする超音波流量計。
【請求項8】
前記理論増幅率は、前記流体の種類、前記流体の温度、及び、前記流体の圧力の組み合わせ毎にデータベースに記憶されており、
前記データベースは、前記超音波が出力される毎に、前記温度測定手段から前記流体の温度と前記圧力計測手段から前記流体の圧力とを受信し、記憶されている組み合わせの前記理論増幅率を前記ノイズ判定部に出力する請求項6又は7に記載の超音波流量計。
【請求項1】
流体が通過する通路の上流と下流とに対向配置された1組の超音波送受波器を配置し、それらの間の超音波の到達時間から流量を求める超音波流量計であって、
前記超音波送波器から出力された前記超音波を前記超音波受波器が受け取る受信波が前記超音波受波器に到達したと判断したとき、受信波検知信号を出力する受信波検知部と、
ノイズ検知レベルを発生するノイズ検知レベル発生部と前記受信波が前記ノイズ検知レベルを超えたときノイズレベル超え信号を出力するレベル超え比較部とをもつレベル越え検知部と、
前記ノイズレベル超え信号を出力した時を始点又は終点として、ノイズ検知用時間を求めるノイズ検知用時間演算部と、
前記ノイズ検知用時間が正常な範囲をはずれているときに、ノイズ発生信号を出力するノイズ判定部と、
を有することを特徴とする超音波流量計。
【請求項2】
前記超音波の出力を複数回行う場合に、
前記ノイズ判定部が出力する前記ノイズ発生信号は、一つ前の測定で得られた前記ノイズ検知用時間の値であるノイズ種類判定時間と前記ノイズ検知用時間の値とが同じ場合に筐体ノイズを表す信号とし、
それ以外の場合に配管ノイズを表す信号とする請求項1に記載の超音波流量計。
【請求項3】
前記ノイズ検知用時間は、前記ノイズレベル超え信号を出力した時から前記受信波検知信号を出力した時までの時間であり、
前記正常な範囲をはずれていると判断されるのは、設定値よりも前記ノイズ検知用時間が長い場合であり、
前記設定値は、前記超音波送波器から出力された前記超音波が前記超音波受波器で検知され始めた時から前記受信波検知信号が出力された時までの時間であると想定される時間以上で設定される請求項1又は2に記載の超音波流量計。
【請求項4】
前記ノイズ検知用時間は、前記ノイズレベル超え信号を出力した時から前記受信波検知信号を出力した時までの時間であり、
前記正常な範囲をはずれていると判断されるのは、前記ノイズ検知用時間が受信波の一周期の長さ以下又は二周期の長さ以上の場合である請求項1又は2に記載の超音波流量計。
【請求項5】
前記ノイズ検知用時間は、前記超音波送波器が前記超音波を出力した時から前記ノイズレベル超え信号を出力した時までの時間であり、
前記正常な範囲をはずれていると判断されるのは、設定値よりも前記ノイズ検知用時間が短い場合であり、
前記設定値は、前記超音波送波器から前記超音波が出力された時から前記超音波受波器で検知され始めた時であると想定される時間以内で設定される請求項1〜4の何れか1項に記載の超音波流量計。
【請求項6】
前記受信波の振幅の大きさに応じて前記受信波の実増幅率を適正に調整可能な増幅部と、
前記流体の温度を計測し、計測温度を出力する温度計測手段と、
前記流体の圧力を計測し、計測圧力を出力する圧力計測手段と、
前記ノイズ判定部は、前記流体の種類、前記計測温度、及び、前記計測圧力の組み合わせにより決定される適正な理論増幅率と前記実増幅率との差異が所定以上の場合、又は前記実増幅率から推測される前記流体の推測温度及び推測圧力と前記計測温度及び前記計測圧力との差異が所定値以上の場合にはノイズ発生信号を出力する請求項1〜5の何れか1項に記載の超音波流量計。
【請求項7】
流体が通過する通路の上流と下流とに対向配置された1組の超音波送受波器を配置し、前記受信波の振幅の大きさに応じて前記受信波の実増幅率を適正に調整可能な増幅部をもち、前記超音波送受波器間の超音波の到達時間から流量を求める超音波流量計であって、
前記超音波送波器から出力された前記超音波を前記超音波受波器が受け取る受信波が前記超音波受波器に到達したと判断したとき、受信波検知信号を出力する受信波検知部と、
前記流体の温度を計測し、計測温度を出力する温度計測手段と、
前記流体の圧力を計測し、計測圧力を出力する圧力計測手段と、
前記流体の種類、前記計測温度、及び、前記計測圧力の組み合わせにより決定される適正な理論増幅率と前記実増幅率との差異が所定以上の場合、又は前記実増幅率から推測される前記流体の推測温度及び推測圧力と、前記計測温度及び前記計測圧力との差異が所定値以上の場合にはノイズ発生信号を出力するノイズ判定部と、
を有することを特徴とする超音波流量計。
【請求項8】
前記理論増幅率は、前記流体の種類、前記流体の温度、及び、前記流体の圧力の組み合わせ毎にデータベースに記憶されており、
前記データベースは、前記超音波が出力される毎に、前記温度測定手段から前記流体の温度と前記圧力計測手段から前記流体の圧力とを受信し、記憶されている組み合わせの前記理論増幅率を前記ノイズ判定部に出力する請求項6又は7に記載の超音波流量計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−159379(P2012−159379A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18851(P2011−18851)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000116633)愛知時計電機株式会社 (126)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000116633)愛知時計電機株式会社 (126)
【Fターム(参考)】
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