説明

超音波流量計

【課題】 測定精度が高くかつ安全性の高い超音波流量計を提供すること。
【解決手段】 本体部6の上部に10mm長さ、15mm幅で厚さが1.2mmの矩形状の複合圧電素子3a、3bを、エポキシ樹脂を用いて接合する。なお、複合圧電素子3a、3bと接合する本体部6の表面は、エポキシ樹脂による接着を強固にするために化学的処理をした。複合圧電素子3aが流れ方向に直交する方向に超音波を発信する。そして反射面Aにおいて90°方向を変え、反射面Bでさらに90°方向を変えて、複合圧電素子3bで受信する。次いで同じ経路を逆にして複合圧電素子3bから超音波を発信して複合圧電素子3aで受信する。また流体の流れる経路は、流れ方向に対して曲がり部で流れ方向が45度変わる。曲がりが小さいので曲がり部に気泡が留まる虞はない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の流体中に超音波を伝播させ、流路の上流方向と下流方向への伝播時間差から流体の流速や流量を測定する超音波流量針に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を測定対象の流路内の流体に伝搬させ、この超音波が流路の上流、下流双方向に伝搬する際の伝搬時間差を利用して流体の流速(流量)を測定する超音波流量計が用いられてきた。
【0003】
特許文献1は、従来の典型的な超音波流量計の構成を説明している。直線状の測定管路の両端に流体の流入部と流出部を取り付け、これら流入部と流出部のそれぞれの外側に超音波トランスジューサを対向させて取付ける。一対の超音波トランスジューサとの間を伝搬する超音波の伝搬所要時間から流速測定管路内を流れる流体の流速が測定される。
【0004】
PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電素子31で構成される円柱形状の超音波トランスジューサは、超音波帯域の周波数で厚み方向への伸縮を繰り返す。しかしながら、超音波トランスジューサの形状は、詳細に見ると、図8に示すように変化する。すなわち、非動作時の静止状態では、Aに示すように、円柱形状を呈する。厚み方向への縮小状態では、径方向に伸びて、Bに強調して示すように凹レンズの形状となる。また、厚み方向への伸長状態では、径方向に縮んで、Cに強調して示すように凸レンズのような形状となる。この結果、図7のDに示すように、円柱の中心に近づくほど厚み方向(円柱の軸方向)への移動量が増加し、往復動の速度Vも増加する。この結果、放射される超音波のエネルギーは、中心部ほど増加する。
【0005】
一般に、流速測定管路内を流れる流体の流速は、管路の断面内で一様でなく、管路の中心部分が大きく、管壁に近づくにつれて低下するという分布をする。一般に、低速の層流では図9のAに示すような放物形状の速度分布となり、高速の乱流では図9のBに示すような速度分布となる。従来、超音波の伝搬経路を流速測定管路の流路断面の中心部分に集中させることによってこの中心部分の流速を測定し、これを層流、乱流に応じた流速分布の補正係数を乗算することにより、流路の断面内の平均流速を算定していた。
【0006】
このように、流路の中心部分の流速を測定する方法では、図8を参照して説明したように、中心部分の振動速度が大きく、放射される超音波のエネルギーが中心部分ほど大きくなるような超音波トランスジューサを使用することが望まれていた。
【0007】
上記、流路の中心部分の流速を測定し、これに流速分布の補正係数を乗算して平均流速を算定する方法では、流速の分布が理論的なものとは必ずしも一致しない場合がある。また、層流か乱流かはレイノルズ数で判定されるが、境界付近ではこの判定に誤差が生じる場合もあり、測定精度の低下の原因となる。
【0008】
また、図8に示したように、超音波トランスジューサの超音波の端面が凹凸形状になるため、この端面の法線方向に放射される超音波が管路の軸線に対して平行とはならずに傾斜してしまう。この結果、図10に示すように、超音波トランスジューサから放射された超音波の一部が管路の内壁近傍を伝搬したり、内壁による反射を受けたりする。この結果、超音波が流路の中心付近を伝搬するという仮定のもとに行われる流速分布に対する補正の精度が低下する。
【0009】
さらに、図中の点線の矢印で示すように反射を受けた超音波の成分は伝播時間が長くなるため、図中の実線の矢印で示すように反射を受けずに直接受信される成分より遅れて受信される。この結果、受信波形が鈍ってしまい、受信時点の遅れを引き起こし、検出精度の低下を招くという問題がる。
【0010】
上記の課題を解決するため特許文献2の超音波流量計が提案された。特許文献2の超音波流量計は、直線状の流速測定管路の両端に流体の流入部と流出部を取り付け、これら流入部と流出部のそれぞれに超音波トランスジューサを対向させて取り付け、前記流速測定管路の内部の前記超音波トランスジューサ間を伝搬する超音波の伝搬所要時間から前記流速測定管路内を流れる流体の流速と流量を測定するように構成されている。そして、この超音波流量計は、各超音波トランスジューサが、流速測定管路の断面積よりも大きな断面形状を有するコンポジット振動子から構成されている。
【0011】
特許文献2の超音波流量計は、超音波トランスジューサを流速測定管路の断面形状よりも大きな断面形状を有するコンポジット振動子で構成されているので、流路の断面内にわたって一様なエネルギーの超音波が、流路の軸線方向にほぼ平行に伝搬する。この結果、流路断面内の流速分布に対する補正が不要で、高精度な流量計を実現できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−171478号公報
【特許文献2】特開2004−198339号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】塩嵜 忠、「新・圧電材料の製造と応用」、株式会社シーエムシー、1987年12月、p99−109
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献2の超音波流量計は、超音波トランスジューサを測定管路の断面形状よりも大きな断面形状を有するコンポジット振動子を用いるため、測定管路の管直径が大きい場合、例えば、30mmを超える場合、これより大きなコンポジット振動子を使用しなければならないため、製造コストが高くなってしまう。
【0015】
また、コンポジット振動子の直径が測定管路の管直径より大きい場合、測定管路にコンポジット振動子の超音波振動が伝搬するため、流体を伝搬する超音波振動が、測定管路を伝搬する超音波振動に影響されて、正確に受信できなくなるという問題点がある。
【0016】
さらに、コンポジット振動子が円盤状であるため、放射される超音波のエネルギーが中心部分ほど大きくなり、流路の断面内で超音波エネルギーが一様にならず、層流と乱流の境界で流量の測定精度に誤差が生じる。
【0017】
また、コンポジット振動子が円盤状であるため、コンポジット振動子を構成する圧電素子が矩形状で5個以上の場合、外周の圧電素子と内部の圧電素子の形状が異なるため、流体中を伝搬する波動に分布が生じ、この結果受信波形が鈍ってしまい、検出精度の低下を招くという問題がる。
【0018】
さらに、コンポジット振動子を用いても、超音波流量計の流路が図5に示すようにほぼ直角である角部を持つ場合は、角部に気泡が留まる虞が生じる。
【0019】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、測定管路の材質によらず高精度の流量の測定が可能であり、気泡の滞留の虞を無くし、そして安価な超音波流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、被測定流体を流す測定配管の流れ方向の上流と下流側とに一対の超音波トランスジューサを配置して、前記超音波トランスジューサ間の超音波の伝播所要時間から測定配管の内部を流れる被測定流体の流量または流速を測定する超音波流量計において、被測定流体を流す測定配管の断面を矩形状にして、そして超音波トランスジューサを複合圧電素子とするものである。
【0021】
本発明はまた、複合圧電素子の形状を矩形状にして、そして測定配管の内側断面より小さくするものである。
【0022】
本発明はまた、測定配管の曲がり部の曲がり角度を測定配管の直線部の中心軸に対して15度以上、75度以下とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の超音波流量計によれば、管路内に気泡が滞留することなく、しかも高精度に流体に流速または流量を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による超音波流量計の第1の実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線での断面を示す図である。
【図3】図1の本体部6の分解斜視図である。
【図4】図1の本体部6の組立斜視図である。
【図5】従来の超音波流量計の断面を示す図である。
【図6】円盤状複合圧電素子の形状を示す平面図である。
【図7】矩形状複合圧電素子の形状を示す平面図である。
【図8】従来の円盤状圧電素子の振動変位を説明する図である。
【図9】測定管路内の流速の分布の様子を説明するための概念図である。
【図10】超音波が管路の内壁近傍を伝搬したり、そこで反射されたりする様子を説明するための概念図である。
【図11】超音波流量計の流量を測定する回路を説明する図である。
【図12】本発明による超音波流量計の第2の実施形態を示す平面図である。
【図13】図12のB−B線での断面図である。
【図14】本発明による超音波流量計の第3の実施形態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第1の実施の形態である基本的な構成を図1、図2、図3、図4を用いて説明する。図1は超音波流量計1の平面図、図2は図1のA−A線での断面図である。図3は超音波流量計1の本体部6の分解斜視図である。図4は組み立てた本体部6を示す斜視図である。
【0026】
本発明のPFA(ポリテトラフルオロエチレン)製の超音波流量計1の作成方法について図3の分解斜視図を用いて説明する。PFA(ポリテトラフルオロエチレン)製のブロック44aをフライス加工することにより流路2となる溝を作成する。そして別のPFA(ポリテトラフルオロエチレン)製のブロック44bも用意する。次にこれらの2個のブロック44a、44bを溶接により接合する。このようにして図4の斜視図に示す本体部6を作成する。
【0027】
本体部6と接続する接続部品は、本体部6側が矩形状の断面であり、配管に接続する側は、円環状の断面である。一方の端面である矩形状の断面から他方の端面である円環状の端面にスムーズに変化させる。このことにより外部の配管から超音波流量計1へ、超音波流量計1から外部の配管への流体の流れをスムーズにする。
【0028】
図1の平面図、図1のA−A線での断面を示す図2を用いて説明する。作成した本体部6に上記に説明した接続部品を溶接により取り付ける。そして本体部6の上部に10mm長さ、15mm幅で厚さが1.2mmの矩形状の複合圧電素子3a、3bを、エポキシ樹脂を用いて接合する。なお、複合圧電素子3a、3bと接合する本体部6の表面は、エポキシ樹脂による接着を強固にするために化学的処理をした。このように流体と接触する材料をすべてPFAとすることで例えば強酸性の流体でも安全に取り扱うことができる。ここで超音波トランスジューサは、複合圧電素子3a、3bである。
【0029】
ここで、超音波の伝搬経路について図2の矢印を用いて説明する。まず、複合圧電素子3aが流れ方向に直交する方向に超音波を発信する。そして反射面Aにおいて90°方向を変え、反射面Bでさらに90°方向を変えて、複合圧電素子3bで受信する。次いで同じ経路を逆にして複合圧電素子3bから超音波を発信して複合圧電素子3aで受信する。
【0030】
また流体の流れる経路は、流れ方向に対して図2に示すように曲がり部で流れ方向が45度変わる。曲がりが小さいので曲がり部に気泡が留まる虞はない。このことにより気泡が従来の図5ように90度の曲がり部に留まることがない。
【0031】
流体が流れる流路の断面積の形状は、矩形状においても、2辺の長さが異なることが望ましい。1辺をaとし、他方の辺をbとすると1.5≦a/b≦5が望ましい。例えば半径Rの円と、a辺の長さR、b辺の長さ3.14Rの長方形は、ほぼ同じ面積である。半径Rの中心から円の縁に最も近い距離はRであり、a辺の長さR、b辺の長さ3.14Rの長方形の中心から長方形の縁に最も近い距離はR/2である。
【0032】
流体に及ぼす管内面の影響は、内面からの距離におおよそ半比例する。したがって長方形に比較して円の内面から中心への流体に及ぼす影響が小さい。つまり流速分布において、円の方が円の内面と中心の差が大きい。それゆえ、層流において、矩形状の断面を持ち、1辺をaとし、他方の辺をbとすると1.5≦a/bとすると、中心と縁の流速の差が小さくなる。しかし、あまりにもa/b比が大きくなると流量計が大きくなり、コストなどの問題が出てくるため、a/b≦5が望ましい。
【0033】
つまり流体が流れる配管を矩形状の管とすることで、層流と乱流の流速分布の差を小さくし、そして矩形状配管の断面の形状に近く、且つ少し小さい矩形状の複合圧電素子を用い、ほぼ矩形配管の断面全体に超音波を伝搬させることで層流−乱流境界域での補正式を用いる必要がなくなるか、もし必要があっても補正量を小さくできるので補正誤差を大幅に小さくできる。
【0034】
矩形状の複合圧電素子3a、3bは、長さ10mm、幅15mm、厚さ1.2mmであり、厚さ方向に分極されている。そして、複合圧電素子3を構成する個々の圧電素子7は1.0mm角で厚さ1.2mmであり、圧電素子7と圧電素子7を接合しているエポキシ樹脂8の幅は約0.5mmである。圧電素子7は、鉛系圧電セラミックであり、いわゆるLowQ材である。
【0035】
ここで一般的な複合圧電素子について説明する。複合圧電素子は、圧電セラミックなどの圧電体と樹脂が構造的に複合化され、圧電セラミックや圧電高分子にはない特徴を持つ材料である。非特許文献1に詳しく記載されているが、複合圧電振動子は圧電素子単体では、実現不可能な特性を得るために開発されたものであり、現在はその価格が高いこともあり医療用として主に使用されている。複合圧電振動子は、セラミックと高分子の複合体であり、セラミックと高分子の各々が何次元かの物理的(いくつの方向)に自己結合しているかにより分類される。すなわち、圧電活性な成分である圧電セラミックがその複合体の中で連なっている次元数mと圧電非活性な成分である高分子が連なっている次元数nでm−n複合体と表示する。複合圧電振動子の中でも、もっとも実用的な1−3複合体であり、本発明に用いた。
【0036】
ここで、矩形状複合圧電振動子32と円盤状複合圧電振動子31の形状を比較して矩形状複合圧電振動子32が優れていることを説明する。図6の平面図で示すように円盤状複合圧電振動子31の各圧電素子7は、外周部で矩形が欠けた形状になっている。例えば、図4には3種類の圧電素子7a、7b、7cの形状がある。この3種類の形状の圧電素子7a、7b、7cはそれぞれが異なる固有振動数を持つ。したがって、それぞれが異なった伝搬波形で流体中を伝搬する。この結果受信波形が鈍ってしまい、検出精度の低下を招くという問題がる。
【0037】
これに対して図7に示す矩形状複合圧電素子32は、圧電素子7がすべて同じ形状でありすべての圧電素子7が同じ固有振動数を持ち、同じ伝搬波形にて伝搬する。したがって、伝播時間の誤差はなく、正確な流量を測定できる。
【0038】
そこで測定流管2の形状で円管と矩形管を比較する。円管の内径の全面積に円盤状複合圧電振動子31を接合した超音波流量計と、矩形管の矩形の内側に矩形状複合圧電振動子32を接合した2種類があるが、円盤状複合圧電振動子31は先に説明したように個々の圧電素子7a、7b、7cが同一形状でないため、受信波形が鈍ってしまい、検出精度の低下を招く。
【0039】
他方、矩形状複合圧電振動子32を構成する個々の圧電素子7は形状が同一であるため受信波形がより同一の位相と成るため正確な測定ができる。
【0040】
以下に上記の構成の超音波流量計1の動作を、図2を用いて説明する。
【0041】
一対の超音波トランスジューサである一方の複合圧電素子3a上に設けたれた電極に電圧信号が印加されると、電圧信号に基づいて、その複合圧電素子3aが伸縮し、複合圧電素子3aの超音波送受波面から超音波が放射される。この超音波は、PFA面に伝搬し、超純水9に放射される。一方、超純水9を伝搬してきた超音波は、PFA面を介して複合圧電素子3bへ伝搬して、その電極間に電圧信号を発生させる。
【0042】
以上の動作を一対の超音波トランスジューサ3a、3bによる送受波を交互にスイッチしながら繰り返して実行することにより、同じ経路にそって逆方向に伝搬した超音波の伝搬時間の差が計測され、その計測値に基づいて流速を計算する。そして、測定された流速および配管の断面積から流量が求められる。
【0043】
以下、この超音波流量計の動作をより図11を用いて、より詳細に説明する。
【0044】
被測定流体として、超純水9が測定配管2の内部を流れる場合を考える。複合圧電素子3a、3bの駆動周波数を約1MHzとする。制御部15は、駆動回路11に送波開始信号を出力すると同時に、タイマ13の時間計測を開始させる。
【0045】
駆動回路11は送波開始信号を受けると、複合圧電素子3aを駆動し、超音波パルスを送波する。送波された超音波パルスは、測定配管2の内部の超純水9を伝搬して、複合圧電素子3bで受波される。受波された超音波パルスは複合圧電素子3bで電気信号に変換され、受波検知回路12に出力される。
【0046】
受波検知回路12では、受波信号の受波タイミングを決定し、タイマ13を停止させる。演算部14は、伝搬時間t1を演算する。
【0047】
次に、切替回路10により駆動回路11および受波検知回路12に接続する複合圧電素子3aおよび複合圧電素子3bを切り替える。そして、再び、制御部15は駆動回路11に送波開始信号を出力すると同時に、タイマ13の時間計測を開始させる。
【0048】
伝搬時間t1の測定と逆に、複合圧電素子3bで超音波パルスを送波し、複合圧電素子3aで受波し、演算部14で伝搬時間t2を演算する。
【0049】
伝搬時間t1、t2は、それぞれ測定によって求められる。距離Lは既知であるので時間t1とt2を測定すれば流速Vから流量を決定することができる。
【0050】
このような超音波流量計において、伝搬時間t1、t2は、ゼロクロス法と呼ばれる方法によって好適に測定される。
【0051】
以上述べたように本発明の超音波流量計は、矩形状の複合圧電素子の均一な振動により超音波が流体中を均一な波形で直進するので検出波形の位相のバラツキが小さいので精度の高い流量の測定ができる。また、測定配管を矩形状にすることで、流速分布によらず精度の高い流量の測定ができる。また流体の流れる経路は、曲がりが小さいので曲がり部に気泡が留まる虞はない。
【0052】
第2の実施の形態である基本的な構成を図12の平面図と図12のB−B線での断面図13を用いて説明する。本体部6の上部に10mm長さ、5mm幅で厚さが1.2mmの矩形状の複合圧電素子3a、3bを、エポキシ樹脂を用いて接合する。なお、複合圧電素子3a、3bと接合する本体部6の表面は、エポキシ樹脂による接着を強固にするために化学的処理をした。このように流体と接触する材料をすべてPFAとすることで例えば強酸性の流体でも安全に取り扱うことができる。ここで超音波トランスジューサは、複合圧電素子3a、3bである。
【0053】
ここで、超音波の伝搬経路について図13の矢印を用いて説明する。まず、複合圧電素子3aが流れ方向に直交する方向に超音波を発信する。そして反射面Aにおいて60°方向を変え、反射面Bで60°方向を変えて、さらに反射面Cで60°方向を変えて複合圧電素子3bで受信する。次いで同じ経路を逆にして複合圧電素子3bから超音波を発信して複合圧電素子3aで受信する。
【0054】
また流体の流れる経路は、流れ方向に対して図13に示すように曲がり部で流れ方向が30度変わる。曲がりが小さいので曲がり部に気泡が留まる虞はない。このことにより気泡が従来の図5ように90度の曲がり部に留まることがない。
【0055】
曲がり部での曲がり角度を15度より小さくすれば、曲がりが小さいので曲がり部でさらに気泡が留まる虞はない。しかし、超音波の反射回数が増加するため、反射角度誤差が蓄積して超音波信号の位相のバラツキそして超音波信号の大きさに問題が生じる虞がある。
【0056】
以上述べたように本発明の超音波流量計は、測定配管の曲がり角度を配管軸に対して、75度以下、15度以上にすることで、測定配管の曲がり部での気泡の滞留を無くすることができる。
【0057】
第3の実施の形態である基本的な構成を図14の分解斜視図を用いて説明する。PFA(ポリテトラフルオロエチレン)製のブロック44aをフライス加工することにより複数の流路2となる複数の溝を作成する。そして別のPFA(ポリテトラフルオロエチレン)製のブロック44bも用意する。次にこれらの2個のブロック44a、44bを熱圧着などにより接合する。なお、ブロック44a、44bには、センサ取付け窓45となる穴を設け、その中に図示しない矩形状の複合圧電素子を接着により配置する。
【0058】
上記のように1つのブロック44aより多数の流路を形成できるので製造コストにおいて特に有利である。
【0059】
以上述べたように本発明の超音波流量計は、測定配管2として有機材料であるPFAを用いた例について説明したが、測定配管2としてステンレスなどの金属材料でもよく、金属材料の場合は測定配管2を伝搬する超音波振動が大きいので本発明によれば、測定配管を伝搬する超音波振動を大幅に小さくできるので、さらに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 超音波流量計
2 流路
3 複合圧電素子
4 流入部
5 流出部
6 本体部
7 圧電素子
8 エポキシ樹脂
9 超純水
10 切替回路
11 駆動回路
12 受波検知回路
13 タイマ
14 演算部
15 制御部
31 円盤状複合圧電素子
32 矩形状複合圧電素子
33 円盤状圧電素子
44 ブロック
45 センサ取付け窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定流体を流す測定配管の流れ方向の上流と下流側とに一対の超音波トランスジューサを配置して、前記超音波トランスジューサ間の超音波の伝播所要時間から測定配管の内部を流れる被測定流体の流量または流速を測定する超音波流量計において、被測定流体を流す測定配管の断面を矩形状であること、および超音波トランスジューサを複合圧電素子とすることを特徴とする。
【請求項2】
複合圧電素子の形状が矩形状であり、測定配管の内側断面より小さいことを特徴とする請求項1に記載の超音波流量計。
【請求項3】
測定配管の曲がり部の曲がり角度が測定配管の直線部の中心軸に対して15度以上、75度以下であることを特徴とする請求項1に記載の超音波流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−36966(P2013−36966A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180949(P2011−180949)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(500222021)
【Fターム(参考)】