説明

超音波熟成装置

【課題】短い期間で浸出酒を完成させることができ、浸出酒の品質を向上させることができるようにする。
【解決手段】熟成材料を収容する熟成容器25と、超音波振動を発生させて熟成材料に伝達する超音波振動子35と、熟成材料を冷却する冷却部材と、熟成材料の温度を検出する温度検出部と、検出された温度に基づいて冷却部材を選択的に駆動する温度制御処理手段とを有する。熟成材料は冷却部材によって冷却されるので、熟成材料のアルコールが気化して消散することがない。したがって、短い期間で浸出酒を完成させることができ、浸出酒の品質を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波熟成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、果実酒、薬用酒等の浸出酒を製造する場合、熟成材料としての酒類の中に果実、薬草等を浸漬(せき)させ、3箇月から半年間程度熟成させる必要があり、浸出酒が完成するまでに長い期間がかかる。そこで、熟成タンク内に、酒類及び果実、薬草等を収容し、超音波振動子を投入し、該超音波振動子によって超音波振動を発生させることにより、短い期間で浸出酒を完成させるようにした超音波熟成装置が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−225081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の超音波熟成装置においては、超音波振動を発生させるのに伴って超音波振動子が発熱し、熟成タンク内の酒類のアルコールが気化して消散してしまう。したがって、浸出酒の品質が低下してしまう。
【0004】
本発明は、前記従来の超音波熟成装置の問題点を解決して、短い期間で浸出酒を完成させることができ、浸出酒の品質を向上させることができる超音波熟成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために、本発明の超音波熟成装置においては、熟成材料を収容する熟成容器と、超音波振動を発生させて前記熟成材料に伝達する超音波振動子と、前記熟成材料を冷却する冷却部材と、前記熟成材料の温度を検出する温度検出部と、検出された温度に基づいて冷却部材を選択的に駆動する温度制御処理手段とを有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、超音波熟成装置においては、熟成材料を収容する熟成容器と、超音波振動を発生させて前記熟成材料に伝達する超音波振動子と、前記熟成材料を冷却する冷却部材と、前記熟成材料の温度を検出する温度検出部と、検出された温度に基づいて冷却部材を選択的に駆動する温度制御処理手段とを有する。
【0007】
この場合、前記熟成材料は冷却部材によって冷却されるので、熟成材料のアルコールが気化して消散することがない。したがって、短い期間で浸出酒を完成させることができ、浸出酒の品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この場合、果実酒、薬用酒等の浸出酒を製造する場合について説明する。
【0009】
図1は本発明の実施の形態における超音波熟成装置の断面図、図2は本発明の実施の形態における超音波熟成装置の斜視図、図3は本発明の実施の形態における操作パネルを示す図、図4は本発明の実施の形態における超音波熟成装置の回路図である。
【0010】
図において、11は超音波熟成装置、12は有底の外側壁体、13は該外側壁体12内に収容され、断面が円形の形状を有する有底の内側壁体、15は前記外側壁体12及び内側壁体13の上端間に配設された頂壁であり、外側壁体12、内側壁体13及び頂壁15によって閉鎖空間16が形成される。また、前記内側壁体13内に上端が開口させられ、断面が円形の形状を有する媒体収容部23が形成され、該媒体収容部23内に、振動の伝達性及び熱伝導性が高い流動性を有する媒体、本実施の形態においては、水29が収容されるとともに、水29に浸漬させて熟成容器25が着脱自在に配設される。そして、該熟成容器25内に、上端が開口させられ、断面が円形の形状を有する熟成材料収容部30が形成され、該熟成材料収容部30内に熟成材料としての焼酎、日本酒等の酒類31、及び果実、薬草等の原料32が収容される。なお、58は閉鎖空間16内に配設された制御部、43は操作パネルである。
【0011】
前記外側壁体12は、側壁17及び底壁18を備え、樹脂等の材料によって形成され、前記内側壁体13は、側壁19及び底壁21を備え、ステンレス等の熱伝導性が良好な材料によって形成される。また、前記熟成容器25は、側壁26及び底壁27を備え、上端を開口させ、ガラス等の硬度の高い材料によって形成され、必要に応じて蓋(ふた)体28によって熟成材料収容部30を密閉することができる。
【0012】
ところで、前記熟成容器25内には、原料32が酒類31に浸漬させられた状態で収容され、酒類31及び原料32に超音波振動を加えると、原料32のエキスが酒類31のアルコールの中に抽出されるのが促進されるので、浸出酒の熟成期間を短くすることができる。例えば、酒類31として、アルコール分が25度以上の焼酎を使用し、原料32として果実を使用し、添加剤として砂糖を加えたものに超音波振動を加えると、酒類31に含まれるアルコールの分子が分裂して分散し、そのときのエネルギーによって、アルコールの分子が果実の細胞膜を通過し、果実の内部のエキスと置換される。したがって、短い期間で浸出酒を完成させることができる。本実施の形態においては、酒類31の温度を熟成させるのに最適な温度に維持することによって、熟成期間を、例えば、24時間にすることができる。
【0013】
そのために、前記閉鎖空間16内において底壁21の下面に超音波振動子35が取り付けられ、該超音波振動子35を駆動することによって超音波振動を発生させ、超音波振動を、内側壁体13に伝達し、更に水29を介して熟成容器25に伝達し、酒類31及び原料32に伝達することができる。この場合、水29は、超音波振動の第1の伝達媒体として機能する。なお、熟成容器25は図示されない第2の伝達媒体としての樹脂製のシートを介して底壁21上に載置される。また、超音波振動子35として、定格出力が40〜100〔W〕であり、振動周波数が20〜80〔kHz〕である圧電体が使用される。
【0014】
したがって、超音波振動子35によって発生させられた超音波振動は、前記水29及びシートを介して酒類31及び原料32に良好に伝達される。また、シートが熟成容器25と内側壁体13との間に配設されるので、熟成容器25が超音波振動によって内側壁体13上で微小に揺れて音を発生するのを防止することができる。
【0015】
なお、前記酒類31に原料32を加えることなく、酒類31を調整することができる。例えば、日本酒、ワイン等は、水及びアルコールの分子が混合したものであり、クラスターと呼ばれる水の分子とアルコールの分子との結合の仕方によって味に差が生じる。そこで、酒類31として日本酒、ワイン等を使用し、原料32を加えることなく、酒類31に超音波振動を加えると、前記クラスターが破壊して細胞化し、前記アルコールの分子を細かく包む。その結果、日本酒、ワイン等を飲用したときに舌に加わる刺激を抑え、まろやかでマイルドな味になる。
【0016】
ところで、超音波振動子35を駆動するのに伴って、超音波振動子35は発熱する。そこで、閉鎖空間16内に熱が溜(た)まるのを防止するために、底壁18に空気吸引装置としてのファン36が配設され、側壁17の上端の近傍に空気吐出口37が形成される。したがって、ファン36を駆動することによって、閉鎖空間16に空気が吸引され、吸引された空気は、超音波振動子35を冷却し、超音波振動子35を冷却することによって温度が上昇した空気は、空気吐出口37から排出される。
【0017】
なお、閉鎖空間16内に熱が溜まるのを防止するために、底壁18に空気吐出装置としてのファンを配設し、側壁17の上端の近傍に空気吸引口を形成することができる。したがって、ファンを駆動することによって、空気吸引口を介して閉鎖空間16に空気が吸引され、吸引された空気は、超音波振動子35を冷却し、超音波振動子35を冷却することによって温度が上昇した空気は、ファンによって吐出される。
【0018】
また、前記超音波振動子35の熱が内側壁体13及び熟成容器25を介して酒類31及び原料32に伝達されてしまう。その場合、酒類31及び原料32の温度が高くなるに従って、アルコールが気化し、浸出酒の品質が低下してしまう。そこで、前記酒類31及び原料32の温度が高くなるのを防止するために、前記閉鎖空間16内において側壁19の外周面に冷却部材としてのペルチエ素子38が取り付けられ、該ペルチエ素子38を駆動することによって内側壁体13、水29、熟成容器25等を介して酒類31及び原料32を冷却することができる。この場合、前記ペルチエ素子38は、12〔V〕の電圧で駆動され、一方の面に冷却部を、他方の面に加熱部を備え、ペルチエ素子38を冷却部材として使用する場合は、前記冷却部を被冷却要素、本実施の形態においては、内側壁体13に接触させる必要がある。そして、前記冷却部の機能を維持するために加熱部を冷却する必要があるので、該加熱部に放熱器39が取り付けられる。したがって、超音波振動子35を冷却した後の空気は、更に放熱器39を冷却した後、空気吐出口37から排出される。
【0019】
なお、前記ペルチエ素子38の冷温を切り換えて駆動すると、内側壁体13を介して酒類31及び原料32を加熱することができる。その場合、ペルチエ素子38を加熱部材として使用することになり、加熱部を被加熱要素である内側壁体13に接触させる必要がある。そして、前記加熱部の機能を維持するために冷却部を加熱する必要があるので、該冷却部に吸熱器が取り付けられる。したがって、超音波振動子35を冷却した後の空気は、吸熱器を加熱した後、空気吐出口37から排出される。
【0020】
このように、酒類31及び原料32をペルチエ素子38によって冷却することができるので、酒類31及び原料32の温度が高くなることがない。したがって、酒類31のアルコールが気化して消散することがなく、浸出酒の品質を向上させることができる。
【0021】
また、前記ペルチエ素子38を冷却部材及び加熱部材として選択的に使用することにより、酒類31及び原料32の温度を自由に変化させることができる。したがって、酒類31及び原料32を冷却した状態、又は加熱した状態で飲用することができる。
【0022】
次に、前記操作パネル43及び超音波熟成装置の回路について説明する。
【0023】
前記操作パネル43は、操作部AR1、AR3及び表示部AR2を備え、操作部AR1にコース選択用ボタン44、スタートボタン45及びストップボタン46が配設され、操作部AR3に温度調節ボタン47、48が配設される。また、表示部AR2は、時刻・時間及び温度を表示する表示盤51、設定された機能を表示するランプ52、表示盤51に表示された内容を表示するランプ53及び実行中の機能を表示するランプ54等を備える。
【0024】
また、図4において、58は制御部、61は商用の100〔V〕の電源であり、該電源61は、AC/DCコンバータ62を介して制御部58に、AC/DCコンバータ63を介して冷温切換スイッチ64に接続されるとともに、超音波発振器65及びファン36に接続される。前記電源61と超音波発振器65との間にオン・オフスイッチSW1が接続され、電源61とファン36及びAC/DCコンバータ63との間にオン・オフスイッチSW2が接続される。そして、冷温切換スイッチ64はペルチエ素子38と接続される。なお、前記超音波発振器65は、電源61から交流電流を受けて発振させられ、40〔kHz〕の周波数の電流を超音波振動子35に送る。
【0025】
そして、前記制御部58は、第1、第2の温度検出部としてのセンサ66、67と接続され、該センサ66、67は、酒類31の温度を検出し、センサ出力として制御部58に送る。また、制御部58は、コース選択用ボタン44、スタートボタン45、ストップボタン46、温度調節ボタン47、48、表示盤51、ランプ52〜54等と接続され、コース選択用ボタン44、スタートボタン45、ストップボタン46、温度調節ボタン47、48等を操作者が操作すると、所定の機能が設定され、かつ、実行されるとともに、表示盤51によって時刻・時間及び温度が、ランプ52によって設定された機能が、ランプ53によって表示盤51に表示された内容が、ランプ54によって実行中の機能がそれぞれ表示される。
【0026】
そして、前記制御部58にリレーR1〜R3が接続される。前記オン・オフスイッチSW1は、リレーR1がオンにされるのに伴って、オンにされ、超音波発振器65を駆動し、超音波振動子35を駆動して超音波振動を発生させ、リレーR1がオフにされるのに伴って、オフにされ、超音波発振器65を停止させ、超音波振動子35を停止させる。また、オン・オフスイッチSW2は、センサ66が高温側の設定温度を超えるとオフにされ、低温側の設定温度より低くなるとオンにされる。さらに、リレーR2、R3をオン・オフさせることによって冷温切換スイッチ64を切り換え、ペルチエ素子38を冷却部材として機能させたり、加熱部材として機能させたりすることができる。なお、センサ66をオン・オフさせる設定温度を変更することによって、酒類31の温度を10〜55〔℃〕の範囲で変化させることができる。
【0027】
次に、前記構成の超音波熟成装置の動作について説明する。
【0028】
まず、操作者が、操作パネル43のコース選択用ボタン44を1回押した後、スタートボタン45を押すと、制御部58の図示されない表示処理手段は、表示処理を行い、ランプ52の「即製」を点灯させる。また、スタートボタン45が押されるのに伴って、35〔℃〕で超音波振動による即製が開始される。そのために、制御部58の図示されない超音波発生処理手段は、超音波発生処理を行い、オン・オフスイッチSW1をオン・オフさせ、間欠的に超音波発振器65を駆動し、超音波振動子35を駆動して超音波振動を発生させ、該超音波振動が酒類31及び原料32に伝達される。なお、超音波発振器65及び超音波振動子35は、5分間オンにされた後、5分間オフにされてオン・オフが24時間繰り返される。
【0029】
超音波振動子35の熱は内側壁体13に伝達され、センサ66、67によって酒類31の温度が検出され、センサ出力として制御部58に送られる。そして、該制御部58の図示されない温度制御処理手段は、温度制御処理を行い、検出された酒類31の温度に基づいてオン・オフスイッチSW2をオン・オフさせ、ペルチエ素子38を選択的に駆動し、内側壁体13を冷却する。また、ファン36もオン・オフスイッチSW2がオンになるのに伴って駆動される。
【0030】
次に、操作者が、操作パネル43のコース選択用ボタン44を2回押した後、温度調節ボタン47、48を押すと、即製の温度を設定することができる。このとき、ランプ52の「温度設定」が点灯させられるとともに、表示盤51に温度が表示される。続いて、操作者が、操作パネル43のコース選択用ボタン44を1回押した後、スタートボタン45を押すと、前記表示処理手段は、ランプ52の「即製」を点灯させる。また、スタートボタン45が押されるのに伴って、設定された温度で超音波振動による即製が開始される。
【0031】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態における超音波熟成装置の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における超音波熟成装置の斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態における操作パネルを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における超音波熟成装置の回路図である。
【符号の説明】
【0033】
25 熟成容器
31 酒類
35 超音波振動子
38 ペルチエ素子
58 制御部
66、67 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)熟成材料を収容する熟成容器と、
(b)超音波振動を発生させて前記熟成材料に伝達する超音波振動子と、
(c)前記熟成材料を冷却する冷却部材と、
(d)前記熟成材料の温度を検出する温度検出部と、
(e)検出された温度に基づいて冷却部材を選択的に駆動する温度制御処理手段とを有することを特徴とする超音波熟成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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