説明

超音波観測装置、超音波内視鏡装置、画像処理方法及び画像処理プログラム

【課題】患者の体内に挿入される穿刺針が強調して表示される超音波断層像を容易に精度良く得ることができる超音波観測装置を提供する。
【解決手段】この超音波観測装置は、超音波ビームが被検体及び穿刺針によって反射されて生じる超音波エコーに基づく受信信号を処理する受信回路と、受信信号に受信フォーカス処理を施すことにより音線信号を生成し、音線信号に基づいて画像信号を生成する画像信号生成手段と、穿刺針強調操作手段の操作に従って、各音線信号について反射点の深さに応じた利得制御を行うことにより、設定されたガイドライン領域からの超音波エコーに基づく音線信号のレベルを上昇させ、他の領域からの超音波エコーに基づく音線信号のレベルを低下させて、ガイドライン領域に沿って被検体に挿入される穿刺針が超音波画像において強調して表示されるようにする穿刺針強調処理手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療診断のために患者の体内に挿入される超音波内視鏡に接続して超音波断層像を得るための超音波観測装置、及び、そのような超音波観測装置と超音波内視鏡とによって構成される超音波内視鏡装置に関する。さらに、本発明は,そのような超音波観測装置において用いられる画像処理方法及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、超音波内視鏡を用いた穿刺処理は、患者の体内に挿入された超音波内視鏡の挿入部の先端から突出される穿刺針の突出状態を、超音波内視鏡の挿入部の先端に設けられた複数の超音波トランスデューサ(超音波振動子)を用いて撮影した超音波断層像においてリアルタイムで確認しながら行われている。しかしながら、超音波内視鏡を用いた穿刺処理は、非常に難易度が高く、高度な手法を必要とする。
【0003】
関連する技術として、特許文献1は、超音波(放射線)イメージ装置により、患者の体内に挿入されるカテーテルの画像を明瞭に得るエコー生成装置を開示している。このエコー生成装置によれば、マトリックス材料製のチューブ部分の上に配置される境界層の音響インピーダンスをマトリックス材料のそれと異なるようにしている。しかしながら、このようなエコー生成装置は、カテーテルの構成が従来のものとは異なるため、従来のカテーテルや穿刺針には適用できないという問題がある。
【0004】
さらに、特許文献2は、生体内における穿刺針を強調して表示する超音波診断装置を開示している。この超音波診断装置によれば、穿刺アダプタに設けられた角度検出器を用いて取得した穿刺針の刺入角度に関する情報と、超音波ビームの反射波の受信信号に基づいて取得した輝度信号とから生体内における穿刺針の位置を判断すると共に、穿刺針からの反射信号がモニタ上において強調して表示されるような処理を施している。しかしながら、このような超音波診断装置は、特殊なビーム走査が必要であるために制御が難しく、また、穿刺針の刺入角度を取得するための角度検出器が必要であるため、超音波内視鏡に採用するには必ずしも適していないという問題がある。
【特許文献1】特開平5−345015号公報(段落0004、図1)
【特許文献2】特開2004−208859号公報(段落0006、0017、0018、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、患者の体内に挿入される穿刺針が強調して表示される超音波断層像を容易に精度良く得ることができる超音波観測装置、超音波内視鏡装置、画像処理方法及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る超音波観測装置は、複数の超音波トランスデューサから送信された超音波ビームが被検体及び穿刺針によって反射されて生じる超音波エコーに基づいて得られる複数の受信信号を処理する受信回路と、受信回路によって処理された受信信号に受信フォーカス処理を施すことにより複数の音線信号を生成し、音線信号に基づいて超音波画像を表す画像信号を生成する画像信号生成手段と、穿刺針強調操作手段の操作に従って、各音線信号について反射点の深さに応じた利得制御を行うことにより、設定されたガイドライン領域からの超音波エコーに基づく音線信号のレベルを上昇させ、他の領域からの超音波エコーに基づく音線信号のレベルを低下させて、ガイドライン領域に沿って被検体に挿入される穿刺針が超音波画像において強調して表示されるようにする穿刺針強調処理手段とを具備する。
【0007】
また、本発明の1つの観点に係る超音波内視鏡装置は、本発明に係る超音波観測装置と、超音波観測装置に接続され、超音波を送受信するための複数の超音波トランスデューサを有し、穿刺針を突出させるための孔が形成された超音波内視鏡とを具備する。
【0008】
さらに、本発明の1つの観点に係る画像処理方法は、複数の超音波トランスデューサから送信された超音波ビームが被検体及び穿刺針によって反射されて生じる超音波エコーに基づいて得られる複数の受信信号を処理して超音波画像を表す画像信号を生成する画像処理方法であって、受信回路によって処理された受信信号に受信フォーカス処理を施すことにより複数の音線信号を生成するステップ(a)と、穿刺針強調操作手段の操作に従って、各音線信号について反射点の深さに応じた利得制御を行うことにより、設定されたガイドライン領域からの超音波エコーに基づく音線信号のレベルを上昇させ、他の領域からの超音波エコーに基づく音線信号のレベルを低下させるステップ(b)と、ステップ(b)においてレベルが調整された音線信号に基づいて超音波画像を表す画像信号を生成することにより、ガイドラインに沿って被検体に挿入される穿刺針が超音波画像において強調して表示されるようにするステップ(c)とを具備する。
【0009】
加えて、本発明の1つの観点に係る画像処理プログラムは、複数の超音波トランスデューサから送信された超音波ビームが被検体及び穿刺針によって反射されて生じる超音波エコーに基づいて得られる複数の受信信号を処理して超音波画像を表す画像信号を生成する画像処理プログラムであって、受信回路によって処理された受信信号に受信フォーカス処理を施すことにより複数の音線信号を生成する手順(a)と、穿刺針強調操作手段の操作に従って、各音線信号について反射点の深さに応じた利得制御を行うことにより、設定されたガイドライン領域からの超音波エコーに基づく音線信号のレベルを上昇させ、他の領域からの超音波エコーに基づく音線信号のレベルを低下させる手順(b)と、手順(b)においてレベルが調整された音線信号に基づいて超音波画像を表す画像信号を生成することにより、ガイドラインに沿って被検体に挿入される穿刺針が超音波画像において強調して表示されるようにする手順(c)とをCPUに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、オペレータによる穿刺針強調操作手段の操作に従って、各音線信号について反射点の深さに応じた利得制御を行うことにより、設定されたガイドライン領域からの超音波エコーに基づく音線信号のレベルを上昇させ、他の領域からの超音波エコーに基づく音線信号のレベルを低下させるので、ガイドライン領域に沿って患者の体内に挿入される穿刺針が強調して表示される超音波断層像を容易に精度良く得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には、同一の参照番号を付して説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波内視鏡装置の構成を示す図である。図1に示すように、この超音波内視鏡装置は、超音波内視鏡1と、超音波観測装置2と、表示装置3とを含んでいる。
【0012】
図2は、図1に示す超音波内視鏡の構成を示す図である。図2に示すように、超音波内視鏡1は、挿入部11と、操作部12と、接続コード13と、ユニバーサルコード14とを含んでいる。超音波内視鏡1の挿入部11は、患者の体内に挿入することができるように細長い可撓性の管状となっている。操作部12は、挿入部11の基端に設けられており、接続コード13を介して超音波観測装置2に接続されていると共に、ユニバーサルコード14を介して光源装置に接続されている。
【0013】
超音波内視鏡1の挿入部11には、照明窓及び観察窓が設けられている。照明窓には、光源装置からライトガイドを介して供給される照明光を出射させるための照明用レンズが装着されている。これらは、照明光学系を構成する。また、観察窓には、対物レンズが装着されており、この対物レンズの結像位置に、イメージガイドの入力端又はCCDカメラ等の固体撮像素子が配置されている。これらは、観察光学系を構成する。
【0014】
超音波内視鏡1の挿入部11の先端には、複数の超音波トランスデューサが配置されたコンベックス型の超音波トランスデューサ部11aが設けられている。超音波トランスデューサ部11aは、図1に示す超音波観測装置2の送信回路23から接続コード13を介して供給される複数の駆動信号に従って超音波ビームを送信すると共に、目的部位等から反射された超音波エコーを受信して、複数の受信信号を超音波観測装置2の受信回路24に接続コード13を介して出力する。また、超音波内視鏡1の挿入部11の先端には、操作部12に設けられた処置具挿入口12aから挿入される穿刺針11bが突出される孔が形成されている。
【0015】
再び図1を参照すると、超音波観測装置2は、操作卓21と、制御部22と、送信回路23と、受信回路24と、Bモード画像信号生成部25と、穿刺針強調処理部26と、ディジタル・スキャン・コンバータ(DSC)27と、画像メモリ28と、ディジタル/アナログ変換器(D/A変換器)29とを含んでいる。
【0016】
超音波観測装置2の操作卓21は、オペレータの操作に基づいて、超音波内視鏡1を用いた超音波撮像動作の開始/停止(フリーズ解除/フリーズ)を制御するための制御信号Aを制御部22に出力する。また、操作卓21には穿刺針強調ボタン21aが設けられており、オペレータが必要に応じて超音波画像における穿刺針を強調できるようになっている。オペレータが穿刺針強調ボタン21aを操作すると、超音波画像における穿刺針強調動作の開始/停止を指示するための穿刺針強調指示信号Bが制御部22に出力される。
【0017】
制御部22は、操作卓21から入力される制御信号Aに基づいて、送信動作を制御するための送信制御信号A1を送信回路23に出力すると共に、受信動作を制御するための受信制御信号A2を受信回路24に出力する。また、制御部22は、操作卓21から入力される穿刺針強調指示信号Bに基づいて、穿刺針強調動作を制御するための穿刺針強調制御信号B1をBモード画像信号生成部25及び穿刺針強調処理部26に出力する。
【0018】
送信回路23は、送信制御信号A1に基づいて複数の駆動信号を生成し、それらの駆動信号を超音波内視鏡1に出力する。それらの駆動信号に従って、超音波内視鏡1の超音波トランスデューサ部11a(図2)に含まれている複数の超音波トランスデューサから超音波ビームが送信され、被検体が走査される。一方、受信回路24は、超音波内視鏡1の超音波トランスデューサ部11aに含まれている複数の超音波トランスデューサから入力される複数の受信信号を所定の増幅度で増幅した後、アナログ/ディジタル変換(A/D変換)を行うことにより、増幅された受信信号をディジタルの受信信号に変換する。
【0019】
Bモード画像信号生成部25は、受信回路24によって処理された複数の受信信号に受信フォーカス処理を施すことにより複数の音線信号を生成し、音線信号に基づいて超音波画像(Bモード超音波断層像)を表すBモード画像信号を生成する。穿刺針強調処理部26は、オペレータによる穿刺針強調ボタン21aの操作に従って、各音線信号について反射点の深さに応じた利得制御を行うことにより、設定されたガイドライン領域からの超音波エコーに基づく音線信号のレベルを上昇させ、他の領域からの超音波エコーに基づく音線信号のレベルを低下させて、ガイドライン領域に沿って被検体に挿入される穿刺針が超音波画像において強調して表示されるようにする。
【0020】
図3は、図1に示すBモード画像信号生成部及び穿刺針強調処理部の具体的な構成例を示す図である。図3に示すように、Bモード画像信号生成部25は、位相整合部51と、音線メモリ52と、検波部53とを備えている。位相整合部51は、受信回路24から入力される受信信号に対して位相整合を行って受信フォーカス処理を施し、超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線信号(音線データ)を形成する。音線メモリ52は、位相整合部51によって形成された音線信号を格納する。検波部53は、音線メモリ52から読み出された音線信号、又は、穿刺針強調処理部26によってレベルが調整された音線信号に対して包絡線検波処理を施すことにより、Bモード画像信号を生成する。
【0021】
穿刺針強調処理部26は、相関値算出部61と、参照信号メモリ62と、利得制御部63と、可変利得増幅部64とを備えている。参照信号メモリ62は、穿刺針11bを予め撮像して得られた複数の参照信号(参照データ)を格納する。可変利得増幅部64は、各音線信号について可変利得で増幅を行う。
【0022】
図4は、参照信号の作成方法を説明するための図である。ここで、参照信号は、以下に説明するように、穿刺針11bを予め撮像して得られる。例えば、超音波内視鏡1において用いられる穿刺角と同じ角度で穿刺針11bを水中に突出させた後に、この穿刺針11bに向けて超音波ビームを送信して、超音波ビームが穿刺針11bによって反射されて生じるエコー信号が計測される。
【0023】
図4においては、穿刺針11bの複数の位置P1〜Pkに向けて、音線n+1〜音線n+kに沿って複数の超音波ビームが送信される。超音波ビームが穿刺針11bの複数の位置P1〜Pkにおいて反射されて生じるエコー信号に基づいて得られる複数の音線信号を、参照信号Ref1〜Refkとする。それらの参照信号Ref1〜Refkは、参照信号メモリ62(図3)に格納される。しかしながら、図4に示すように、位置Pkにおいて音線n+kの方向と異なる方向に反射される反射波が存在し、この反射波はアーティファクトの原因となる。
【0024】
図5は、複数の音線信号の波形を示す図である。図5においては、音線n+1〜音線n+kに沿って得られる音線信号の波形が示されており、横軸は、時間(反射点の深さに相当する)を表している。穿刺針が被検体に挿入される位置及び方向は予め設定されており、穿刺針が挿入される領域は、ガイドライン領域として超音波画像に表示される。従って、オペレータは、設定されたガイドライン領域に沿って、穿刺針を被検体に挿入すれば良い。図5においては、このガイドライン領域に相当する時間(反射点の深さ)が破線で示されている。音線n+1〜音線n+3に沿って得られる音線信号の波形において、ガイドライン領域内に存在する波形が、穿刺針を表す本来の波形であり、他の領域内に存在する波形は、アーティファクトの原因となる反射波の影響によるものである。
【0025】
再び図3を参照すると、相関値算出部61は、Bモード画像信号生成部25の位相整合部51によって生成される各音線信号によって表される波形と、参照信号メモリ62から読み出された対応する参照信号によって表される波形との相関値Cを算出する。なお、音線信号と参照信号との間の対応関係は、受信フォーカスの方向に基づいて判定しても良いし、後で説明するように、相関値Cの最大値に基づいて判定しても良い。
【0026】
相関値Cは、周知の様々な手法によって求めることが可能であり、本実施形態においては、0≦C≦1とする。利得制御部63は、相関値算出部61によって算出された相関値Cに基づいて、可変利得増幅部64における各音線信号についての利得Aを算出する。例えば、利得制御部63は、ガイドライン領域からの超音波エコーに基づく音線信号については、A=1+Cとすることにより、音線信号のレベルを上昇させ、他の領域からの超音波エコーに基づく音線信号については、A=1−Cとすることにより、音線信号のレベルを低下させる。可変利得増幅部64は、利得制御部63によって算出された利得Aで、それぞれの音線信号を増幅する。
【0027】
図6は、相関値算出部によって算出される相関値の変化を示す図である。また、図7は、利得制御部によって算出される利得の変化を示す図である。図6及び図7において、横軸は、時間(反射点の深さに相当する)を表している。図6に示す相関値Cは、アーティファクトの原因となる反射波の影響によって、ガイドライン領域以外においてもピークを有している。そこで、図7に示すように、図3に示す利得制御部63は、ガイドライン領域における利得Aを相関値Cに基づいて増加させ、他の領域における利得Aを相関値Cに基づいて減少させる。
【0028】
再び図3を参照すると、検波部53は、オペレータが穿刺針強調ボタン21aを操作して穿刺針強調動作を指示すると、制御部22(図1)から出力される穿刺針強調制御信号B1に従って、穿刺針強調処理部26によってレベルが調整された音線信号に対して包絡線検波処理を行うことにより、Bモード画像信号を生成する。あるいは、検波部53は、穿刺針強調処理部26によってレベルが調整された音線信号に基づいて、Bモード画像信号を構成する3つの色信号(例えば、R信号、G信号、及び、B信号)の内の少なくとも1つの色信号の振幅を大きくすることにより、穿刺針が超音波画像において強調して表示されるようにしても良い。この場合には、穿刺針が、赤色、緑色、青色等によって表示される。
【0029】
例えば、検波部53は、通常動作時においては、音線メモリ52から読み出された音線信号に基づいて得られるBモード画像信号の振幅を0〜255階調(8ビット)で表す。一方、検波部53は、穿刺針強調動作時においては、穿刺針11b(図4)を赤色で示すために、図8に示すように、音線メモリ52から読み出された音線信号に基づいて得られるG信号及びB信号の各々の振幅を0〜200階調で表すと共に、穿刺針強調処理部26から出力される音線信号に基づいて得られるR信号の振幅を最大で255階調まで大きくする。
【0030】
再び図1を参照すると、DSC27は、Bモード画像信号生成部25において生成されたBモード画像信号が通常のテレビジョン信号の走査方式と異なる走査方式によって得られたものであるため、Bモード画像信号生成部25から出力されるBモード画像信号を通常の画像信号に変換(ラスター変換)する。
【0031】
画像メモリ28は、DSC27から出力される画像信号を格納する。D/A変換器29は、画像メモリ28から読み出したディジタルの画像信号をアナログの画像信号に変換して表示装置3に出力する。これにより、表示装置3において、超音波内視鏡1によって撮影された超音波断層像が表示される。
【0032】
以上において、制御部22、及び、Bモード画像信号生成部25〜DSC27(但し、メモリを除く)は、CPU(中央演算装置)と、CPUに各種の処理を行わせるためのソフトウェア(画像処理プログラム)とによって構成されるが、これらをディジタル回路で構成しても良い。ソフトウェアを記録する記録媒体としては、ハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROM、又は、DVD−ROM等を用いることができる。
【0033】
次に、本実施形態に係る超音波内視鏡装置の動作について説明するが、通常動作は通常の超音波内視鏡装置と同様であるので、穿刺針強調動作についてのみ説明する。
図2に示す超音波内視鏡1を用いて超音波断層像を撮影する際に、オペレータは、ユニバーサルコード14の一端に接続された光源から光を発生させて、挿入部11の先端に設けられた照明窓から患者の体内に照明光を出射すると共に、観察窓から挿入状態を観察しながら、超音波内視鏡1の挿入部11を被検体である患者の体内に挿入して行く。超音波内視鏡1の挿入部11が目的位置に達すると、オペレータは、穿刺針11bを処置具挿入口12aから挿入して挿入部11の先端の孔から突出させる。
【0034】
その後、オペレータは、図1に示す操作卓21を操作することにより、超音波撮像動作を開始させる制御信号Aを操作卓21から制御部22に出力させる。また、オペレータは、操作卓21の穿刺針強調ボタン21aを押すことにより、穿刺針強調動作を開始させる穿刺針強調指示信号Bを操作卓21から制御部22に出力させる。
【0035】
制御部22は、制御信号Aに基づいて、送信回路23の動作の開始を指示する送信制御信号A1を送信回路23に出力すると共に、受信回路24の動作の開始を指示する受信制御信号A2を受信回路24に出力する。また、制御部22は、穿刺針強調指示信号Bに基づいて、穿刺針強調動作を開始させる穿刺針強調制御信号B1をBモード画像信号生成部25及び穿刺針強調処理部26に出力する。
【0036】
送信回路23は、超音波内視鏡1の超音波トランスデューサ部11a(図2)に含まれている複数の超音波トランスデューサから超音波ビームを送信するための複数の駆動信号を生成する。生成された駆動信号は、超音波トランスデューサ部11aに出力される。これにより、超音波ビームが、超音波トランスデューサ部11aから被検体及び穿刺針11bに向けて送信される。
【0037】
超音波ビームが被検体及び穿刺針11bによって反射されて生じた超音波エコーを超音波トランスデューサ部11aが受信することによって得られる複数の受信信号が、超音波内視鏡1から受信回路24に入力されて、ディジタルの受信信号に変換される。このディジタルの受信信号は、Bモード画像信号生成部25の位相整合部51(図3)に入力され、位相整合部51において受信フォーカス処理が施されて、複数の音線信号が形成される。位相整合部51において形成された音線信号は、音線メモリ52に格納されると共に、穿刺針強調処理部26の相関値算出部61(図3)に入力される。
【0038】
相関値算出部61において、位相整合部51から出力される各音線信号によって表される波形と、参照信号メモリ62から読み出された複数の参照信号Ref1〜Refkによって表される波形との相関値Cが算出される。
【0039】
ここで、穿刺針11bの第1の位置P1(図4参照)に向けて送信された超音波ビームのエコー信号に基づいて生成された音線信号については、第1の参照信号Ref1によって表される波形との相関値CRef1が最大となり、第2の参照信号Ref2によって表される波形との相関値CRef2、第3の参照信号Ref3によって表される波形との相関値CRef3、第4の参照信号Ref4によって表される波形との相関値CRef4の順番で小さくなる。
【0040】
これに対して、穿刺針11bの第2の位置P2(図4参照)に向けて送信された超音波ビームのエコー信号に基づいて生成された音線信号については、第2の参照信号Ref2によって表される波形との相関値CRef2が最大となり、穿刺針11bの第3の位置P3に向けて送信された超音波ビームのエコー信号に基づいて生成された音線信号については、第3の参照信号Ref3によって表される波形との相関値CRef3が最大となり、穿刺針11bの第4の位置P4に向けて送信された超音波ビームのエコー信号に基づいて生成された音線信号については、第4の参照信号Ref4によって表される波形との相関値CRef4が最大となる。
【0041】
従って、相関値算出部61は、それぞれの相関値の最大値に基づいて、音線信号と参照信号との対応関係を判定することができる。これにより、相関値算出部61は、Bモード画像信号生成部25の位相整合部51によって生成される各音線信号によって表される波形と、参照信号メモリ62から読み出された対応する参照信号によって表される波形との相関値Cを算出する。利得制御部63は、相関値算出部61によって算出された相関値Cに基づいて、可変利得増幅部64における各音線信号についての利得Aを算出し、可変利得増幅部64は、利得制御部63によって算出された利得Aで、それぞれの音線信号を増幅する。
【0042】
Bモード画像信号生成部25の検波部53は、音線メモリ52から読み出された音線信号の振幅に応じて、G信号及びB信号の各々の振幅を0〜200階調で表すと共に、可変利得増幅部64から出力される音線信号の振幅に応じて、R信号の振幅を0〜255階調で表す。その結果、DSC27によってラスター変換された画像信号に基づく超音波断層像において穿刺針11bが赤色で表示されるので、オペレータは、表示装置3に表示された超音波断層像において穿刺針11bの位置を容易に確認しながら、患者の患部の処理を行うことができる。
【0043】
以上においては、図1に示すように穿刺針強調ボタン21aが超音波観測装置2の操作卓21に設けられている場合について説明したが、例えば、穿刺針強調ボタン21aを超音波内視鏡1の操作部12(図2)に設けて、操作部12から超音波観測装置2の制御部22に穿刺針強調指示信号Bを出力するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、医療診断のために患者の体内に挿入される超音波内視鏡に接続して超音波断層像を得るための超音波観測装置等において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る超音波内視鏡装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す超音波内視鏡の構成を示す図である。
【図3】図1に示すBモード画像信号生成部及び穿刺針強調処理部の具体的な構成例を示す図である。
【図4】参照信号の作成方法を説明するための図である。
【図5】複数の音線信号の波形を示す図である。
【図6】相関値算出部によって算出される相関値の変化を示す図である。
【図7】利得制御部によって算出される利得の変化を示す図である。
【図8】図3に示す検波部によって生成されるRGB信号を説明するための図である。
【符号の説明】
【0046】
1 超音波内視鏡
2 超音波観測装置
3 表示装置
11 挿入部
11a 超音波トランスデューサ部
11b 穿刺針
12 操作部
12a 処置具挿入口
13 接続コード
14 ユニバーサルコード
21 操作卓
21a 穿刺針強調ボタン
22 制御部
23 送信回路
24 受信回路
25 Bモード画像信号生成部
26 穿刺針強調処理部
27 DSC
28 画像メモリ
29 D/A変換器
51 位相整合部
52 音線メモリ
53 検波部
61 相関値算出部
62 参照信号メモリ
63 利得制御部
64 可変利得増幅部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の超音波トランスデューサから送信された超音波ビームが被検体及び穿刺針によって反射されて生じる超音波エコーに基づいて得られる複数の受信信号を処理する受信回路と、
前記受信回路によって処理された受信信号に受信フォーカス処理を施すことにより複数の音線信号を生成し、音線信号に基づいて超音波画像を表す画像信号を生成する画像信号生成手段と、
穿刺針強調操作手段の操作に従って、各音線信号について反射点の深さに応じた利得制御を行うことにより、設定されたガイドライン領域からの超音波エコーに基づく音線信号のレベルを上昇させ、他の領域からの超音波エコーに基づく音線信号のレベルを低下させて、前記ガイドライン領域に沿って被検体に挿入される穿刺針が超音波画像において強調して表示されるようにする穿刺針強調処理手段と、
を具備する超音波観測装置。
【請求項2】
前記穿刺針強調処理手段が、
各音線信号について可変利得で増幅を行う可変利得増幅手段と、
穿刺針を予め撮像して得られた複数の参照信号を格納するための参照信号メモリと、
各音線信号によって表される波形と、対応する参照信号によって表される波形との間の相関値を算出する相関値算出手段と、
前記ガイドライン領域からの超音波エコーに基づく音線信号については、前記相関値算出手段によって算出された相関値に基づいてレベルを上昇させ、他の領域からの超音波エコーに基づく音線信号については、前記相関値算出手段によって算出された相関値に基づいてレベルを低下させるように前記可変利得増幅手段を制御する利得制御手段と、
を含む、請求項1記載の超音波観測装置。
【請求項3】
前記参照信号が、前記ガイドラインに沿って配置された穿刺針の複数の位置に向けて超音波ビームを送信することによって生じる超音波エコーを予め計測して得られたものである、請求項2記載の超音波観測装置。
【請求項4】
前記画像信号生成手段が、前記穿刺針強調処理手段によってレベルが調整された音線信号に基づいて、超音波画像を表示するために用いられる3つの色信号の内の少なくとも1つの色信号の振幅を大きくすることにより、穿刺針が超音波画像において強調して表示されるようにする、請求項1〜3のいずれか1項記載の超音波観測装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の超音波観測装置と、
前記超音波観測装置に接続され、超音波を送受信するための前記複数の超音波トランスデューサを有し、穿刺針を突出させるための孔が形成された超音波内視鏡と、
を具備する超音波内視鏡装置。
【請求項6】
超音波画像において穿刺針を強調して表示するために操作される前記穿刺針強調操作手段が、前記超音波内視鏡に設けられている、請求項5記載の超音波内視鏡装置。
【請求項7】
複数の超音波トランスデューサから送信された超音波ビームが被検体及び穿刺針によって反射されて生じる超音波エコーに基づいて得られる複数の受信信号を処理して超音波画像を表す画像信号を生成する画像処理方法であって、
受信回路によって処理された受信信号に受信フォーカス処理を施すことにより複数の音線信号を生成するステップ(a)と、
穿刺針強調操作手段の操作に従って、各音線信号について反射点の深さに応じた利得制御を行うことにより、設定されたガイドライン領域からの超音波エコーに基づく音線信号のレベルを上昇させ、他の領域からの超音波エコーに基づく音線信号のレベルを低下させるステップ(b)と、
ステップ(b)においてレベルが調整された音線信号に基づいて超音波画像を表す画像信号を生成することにより、前記ガイドラインに沿って被検体に挿入される穿刺針が超音波画像において強調して表示されるようにするステップ(c)と、
を具備する画像処理方法。
【請求項8】
ステップ(b)が、
各音線信号によって表される波形と、対応する参照信号によって表される波形との間の相関値を算出するステップ(b1)と、
前記ガイドライン領域からの超音波エコーに基づく音線信号については、ステップ(b1)において算出された相関値に基づいてレベルを上昇させ、他の領域からの超音波エコーに基づく音線信号については、ステップ(b1)において算出された相関値に基づいてレベルを低下させるステップ(b2)と、
を含む、請求項7記載の画像処理方法。
【請求項9】
ステップ(c)が、ステップ(b)においてレベルが調整された音線信号に基づいて、超音波画像を表示するために用いられる3つの色信号の内の少なくとも1つの色信号の振幅を大きくすることにより、穿刺針が超音波画像において強調して表示されるようにすることを含む、請求項7又は8記載の画像処理方法。
【請求項10】
複数の超音波トランスデューサから送信された超音波ビームが被検体及び穿刺針によって反射されて生じる超音波エコーに基づいて得られる複数の受信信号を処理して超音波画像を表す画像信号を生成する画像処理プログラムであって、
受信回路によって処理された受信信号に受信フォーカス処理を施すことにより複数の音線信号を生成する手順(a)と、
穿刺針強調操作手段の操作に従って、各音線信号について反射点の深さに応じた利得制御を行うことにより、設定されたガイドライン領域からの超音波エコーに基づく音線信号のレベルを上昇させ、他の領域からの超音波エコーに基づく音線信号のレベルを低下させる手順(b)と、
手順(b)においてレベルが調整された音線信号に基づいて超音波画像を表す画像信号を生成することにより、前記ガイドラインに沿って被検体に挿入される穿刺針が超音波画像において強調して表示されるようにする手順(c)と、
をCPUに実行させる画像処理プログラム。
【請求項11】
手順(b)が、
各音線信号によって表される波形と、対応する参照信号によって表される波形との間の相関値を算出する手順(b1)と、
前記ガイドライン領域からの超音波エコーに基づく音線信号については、手順(b1)において算出された相関値に基づいてレベルを上昇させ、他の領域からの超音波エコーに基づく音線信号については、手順(b1)において算出された相関値に基づいてレベルを低下させる手順(b2)と、
を含む、請求項10記載の画像処理プログラム。
【請求項12】
手順(d)が、手順(c)においてレベルが調整された音線信号に基づいて、超音波画像を表示するために用いられる3つの色信号の内の少なくとも1つの色信号の振幅を大きくすることにより、穿刺針が超音波画像において強調して表示されるようにすることを含む、請求項10又は11記載の画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−297346(P2009−297346A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156684(P2008−156684)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】