説明

超音波診断装置、超音波画像処理装置、及び超音波画像処理プログラム

【課題】特定の組織の運動情報をリアルタイムに提供することが可能な超音波診断装置を提供することを目的とする。
【解決手段】輪郭検出部11は所定の心時相に取得された断層像データに基づいて、心臓の内膜(外膜)の輪郭を検出する。輪郭追跡部12は、各心時相に取得された断層像データにおける内膜(外膜)を構成する各点の位置を時相ごとにパターンマッチングによって求める。演算部20は、各心時相の輪郭を構成する各点の位置に基づいて、各心時相における内膜(外膜)の運動状態を表す運動情報を求める。表示制御部7は、各心時相に取得された断層像データに基づく断層像を時相ごとに表示部81に表示させ、さらに、各心時相における運動情報を時相ごとにその都度、表示部81に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波によって被検体の超音波画像を取得し、その超音波画像を利用して被検体の運動状態を解析する超音波診断装置に関する。また、超音波画像を利用して被検体の運動状態を解析する超音波画像処理装置、及び超音波画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓の心筋などの生体組織について、その機能を客観的かつ定量的に評価することは、その生体組織の診断にとって非常に重要である。例えば、超音波診断装置によって心臓の画像データを取得し、その画像データに基づく定量的な評価方法が提案されている。
【0003】
例えば、画像のスペックルパターンを追跡することで、組織の変位や歪みなどの運動情報を求める手法が提案されている(例えば特許文献1)。この手法は、画像のスペックルパターンを用いてパターンマッチングを行っており、スペックルトラッキング(Speckle Tracking:ST)と称されている。以下、ST法と称する場合がある。
【0004】
具体例として心臓の心筋の機能を評価する場合、心臓に対して超音波を送信することで、取得された時間が連続する複数の断層像データを取得する。そして、ST法によって心臓の内膜のパターンマッチングを行うことで、内膜の変位や歪みなどの壁運動情報を求めることができる。
【0005】
また、画像の輝度情報に基づいて組織領域と血液領域との境界を検出し、リアルタイムにその境界の位置を検出する手法が提案されている(例えば非特許文献1)。この手法は、Acustic Quantification(AQ)法と称されている。以下、AQ法と称する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−175041号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ultrasonic Imaging 5,300−307(1983)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1に記載の手法は、組織領域の輪郭を検出しているだけであり、例えば内膜上の各点の動きを追跡していないため、内膜上の各点の動きを表すベクトル情報は得られない。そのため、心筋の壁運動を解析することができない。
【0009】
また、ST法によれば、例えば内膜上の各点の動きを表すベクトル情報を取得することができるため、心筋の壁運動を解析することが可能である。しかしながら、所定の時相において、追跡対象となる関心領域の境界位置を操作者が指定する必要があるため、リアルタイムに関心領域の運動を解析することが困難であった。例えば、内膜の輪郭を追跡する場合、所定の時相に取得された断層像(静止画)を表示装置に表示し、操作者はその断層像を観察して内膜の境界位置を指定する必要があった。そのため、内膜の壁運動をリアルタイムに解析することが困難であった。
【0010】
また、特許文献1に記載の手法においても、ST法を用いて関心領域の運動情報をリアルタイムに表示するための具体的な手法については開示されていない。
【0011】
以上のように、従来技術によると、ベクトル情報を用いて関心領域の運動をリアルタイムに解析して表示することが困難であった。
【0012】
この発明は上記の問題点を解決するものであり、特定の組織の運動情報をリアルタイムに提供することが可能な超音波診断装置、超音波画像処理装置、及び超音波画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、被検体を超音波で走査することで、時相ごとに超音波画像データを取得する画像取得手段と、所定時相に取得された超音波画像データに基づく超音波画像に対する特定の組織の輪郭の指定を受け付け、各時相に取得された前記超音波画像データにおける前記指定された輪郭を構成する各点の位置を時相ごとにパターンマッチングによって求める輪郭追跡手段と、前記各時相の輪郭を構成する各点の位置に基づいて、前記各時相における前記特定の組織の運動状態を表す運動情報を求める演算手段と、前記各時相に取得された超音波画像データに基づく超音波画像を時相ごとに表示手段に表示させ、さらに、前記演算手段によって求められた各時相における運動情報を時相ごとにその都度、前記表示手段に表示させる表示制御手段と、を有することを特徴とする超音波診断装置である。
また、請求項8に記載の発明は、被検体を超音波で走査することで時相ごとに取得された超音波画像データを受け付け、所定時相に取得された超音波画像データに基づく超音波画像に対する特定の組織の輪郭の指定を受け付け、各時相に取得された前記超音波画像データにおける前記指定された輪郭を構成する各点の位置を時相ごとにパターンマッチングによって求める輪郭追跡手段と、前記各時相の輪郭を構成する各点の位置に基づいて、前記各時相における前記特定の組織の運動状態を表す運動情報を求める演算手段と、前記各時相に取得された超音波画像データに基づく超音波画像を時相ごとに表示手段に表示させ、さらに、前記演算手段によって求められた各時相における運動情報を時相ごとにその都度、前記表示手段に表示させる表示制御手段と、を有することを特徴とする超音波画像処理装置である。
また、請求項9に記載の発明は、コンピュータに、被検体を超音波で走査することで時相ごとに取得された超音波画像データを受け付け、所定時相に取得された超音波画像データに基づく超音波画像に対する特定の組織の輪郭の指定を受け付け、各時相に取得された前記超音波画像データにおける前記指定された輪郭を構成する各点の位置を時相ごとにパターンマッチングによって求める輪郭追跡機能と、前記各時相の輪郭を構成する各点の位置に基づいて、前記各時相における前記特定の組織の運動状態を表す運動情報を求める演算機能と、前記各時相に取得された超音波画像データに基づく超音波画像を時相ごとに表示装置に表示させ、さらに、前記演算機能によって求められた各時相における運動情報を時相ごとにその都度、前記表示装置に表示させる表示制御機能と、を実行させることを特徴とする超音波画像処理プログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の第1実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る超音波診断装置で取得された画像と、心機能評価の結果を示す図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る超音波診断装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【図4】この発明の第1実施形態に係る超音波診断装置の変形例によって取得された画像を示す図である。
【図5】この発明の第2実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
【図6】この発明の第2実施形態に係る超音波診断装置で取得された画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
(構成)
この発明の第1実施形態に係る超音波診断装置の構成について、図1を参照して説明する。図1は、この発明の第1実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
【0016】
超音波プローブ2には、複数の超音波振動子が所定方向(走査方向)に1列に配列された1次元アレイプローブ、又は、複数の超音波振動子が2次元的に配置された2次元アレイプローブが用いられる。また、超音波振動子が所定方向(走査方向)に配列され、超音波振動子を走査方向に直交する方向(揺動方向)に機械的に揺動可能な1次元アレイプローブを用いても良い。
【0017】
送受信部3は送信部と受信部とを備え、超音波プローブ2に電気信号を供給して超音波を発生させ、超音波プローブ2が受信したエコー信号を受信する。
【0018】
送受信部3の送信部は、図示しないクロック発生回路、送信遅延回路、及びパルサ回路を備えている。クロック発生回路は、超音波信号の送信タイミングや送信周波数を決めるクロック信号を発生する回路である。送信遅延回路は、超音波の送信時に遅延を掛けて送信フォーカスを実施する回路である。パルサ回路は、各超音波振動子に対応した個別経路(チャンネル)の数分のパルサを内蔵し、遅延が掛けられた送信タイミングで駆動パルスを発生し、超音波プローブ2の各超音波振動子に供給するようになっている。
【0019】
送受信部3の受信部は、プリアンプ回路、A/D変換回路、及び受信遅延・加算回路を備えている。プリアンプ回路は、超音波プローブ2の各超音波振動子から出力されるエコー信号を受信チャンネルごとに増幅する。A/D変換回路は、増幅されたエコー信号をA/D変換する。受信遅延・加算回路は、A/D変換後のエコー信号に対して受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、加算する。その加算により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。なお、この送受信部3によって加算処理された信号を「RFデータ(生データ)」と称する場合がある。送受信部3は、RFデータを信号処理部4に出力する。
【0020】
なお、超音波プローブ2と送受信部3がこの発明の「画像取得手段」の1例に相当する。
【0021】
信号処理部4は、Bモード処理部やCFM処理部などを備えて構成されている。Bモード処理部は、エコーの振幅情報の映像化を行う。具体的には、Bモード処理部は送受信部3から出力された受信信号に対してバンドパスフィルタ処理を行い、その後、出力信号の包絡線を検波し、検波されたデータに対して対数変換による圧縮処理を施す。また、CFM処理部は、動いている血流情報の映像化を行う。血流情報には、速度、分散、パワー等の情報があり、血流情報は2値化情報として得られる。
【0022】
画像生成部5は、走査線信号列で表される信号処理後のデータを、空間座標に基づいた座標系のデータに変換する(デジタルスキャンコンバージョン)。例えば、画像生成部5は、Bモード処理部から出力された信号処理後のデータに対してスキャンコンバージョン処理を施すことで、被検体の組織形状を表すBモード画像データ(以下、「断層像データ」と称する場合がある)を生成する。そして、画像生成部5は、断層像データなどの超音波画像データを記憶部6に出力する。
【0023】
また、ボリュームスキャンが行なわれている場合、画像生成部5は、信号処理部4からボリュームデータを受け、そのボリュームデータにボリュームレンダリングを行うことで3次元画像データを生成するようにしても良い。さらに、画像生成部5は、ボリュームデータにMPR処理(Multi Plannar Reconstruction)を施すことにより、MPR画像データ(任意断面の画像データ)を生成するようにしても良い。そして、画像生成部5は、3次元画像データやMPR画像データなどの超音波画像データを記憶部6に出力する。
【0024】
画像生成部5によって生成された断層像データや3次元画像データなどの超音波画像データは、記憶部6に記憶される。また、被検体のECG信号が取得されている場合、制御部9は、ECG信号(心電波形)を超音波診断装置1の外部から受け付け、超音波画像データにその超音波画像データが生成されたタイミングで受け付けた心時相を対応付けて記憶部6に記憶させる。
【0025】
第1実施形態に係る超音波診断装置1は、被検体の心臓を超音波で走査することで、心臓を表す断層像データを心時相ごとに取得する。すなわち、超音波診断装置1は、心臓の動画像データを取得する。例えば、1心周期以上に亘って被検体の心臓を超音波で走査することで、1心周期以上に亘って複数の断層像データ(心臓の動画像データ)を取得する。また、ECG信号が取得されている場合、制御部9は、各断層像データにその断層像データが生成されたタイミングで受け付けた心時相を対応付けて記憶部6に記憶させる。これにより、複数の断層像データのそれぞれに、断層像データが生成された心時相が対応付けられて記憶部6に記憶される。
【0026】
表示制御部7は、記憶部6から断層像データを読み込み、その断層像データに基づく断層像を表示部81に表示させる。例えば、操作者が操作部82を用いて任意の時相を指定すると、表示制御部7は指定された時相が対応付けられた断層像データを記憶部6から読み込み、その断層像データに基づく断層像を表示部81に表示させる。
【0027】
画像処理部10は、輪郭検出部11、輪郭追跡部12、マーカ生成部13、及び補正部14を備えている。画像処理部10は、心臓を表す断層像に基づいて心臓の内膜の輪郭を検出し、取得された心時相が異なる2つの断層像間のパターンマッチングによって、各心時相における内膜の輪郭の位置を求める。
【0028】
輪郭検出部11は記憶部6から断層像データを読み込み、その断層像データを構成する各画素の輝度値に基づいて、組織領域と血液領域の境界を検出する。第1実施形態では1例として、輪郭検出部11は、断層像データに基づき、上述したAQ法を用いて心臓の内膜の2次元的な輪郭を検出する。輪郭検出部11は、予め設定された心時相にて取得された断層像データを記憶部6から読み込み、その断層像データの輝度分布に基づいて内膜の2次元的な輪郭を検出する。この予め設定された心時相は、操作者によって任意の心時相に変更することが可能である。例えば、輪郭検出部11は、拡張末期(R波が検出された心時相)に取得された断層像データ、又は、収縮末期(R波が検出された心時相から所定時間経過後の心時相)に取得された断層像データを記憶部6から読み込み、内膜の2次元的な輪郭を検出する。断層像データには、その断層像データが生成された心時相が対応付けられて記憶部6に記憶されているため、輪郭検出部11は、拡張末期や収縮末期などの心時相に取得された断層像データを記憶部6から読み込んで、その心時相における内膜の2次元的な輪郭を検出する。そして、輪郭検出部11は、検出した内膜の輪郭の座標情報を輪郭追跡部12に出力する。輪郭検出部11にて検出された内膜の2次元的な輪郭が、輪郭追跡部12において追跡対象となる内膜の初期輪郭に設定される。例えば、R波が検出された心時相における内膜の2次元的な輪郭が初期輪郭に設定される。
【0029】
さらに、輪郭検出部11は、検出した内膜の各位置における法線ベクトルを求め、内膜の位置からその法線ベクトル方向へ一定距離外側の位置を、心臓の外膜の2次元的な輪郭と定義しても良い。例えば、輪郭検出部11は、内膜の位置から8mm外側の位置を外膜の輪郭と定義する。この一定距離は、操作者によって任意の値に変えることが可能である。このように外膜の2次元的な輪郭が検出されると、輪郭検出部11は、内膜の輪郭の座標情報と、外膜の輪郭の座標情報を輪郭追跡部12に出力する。輪郭検出部11にて検出された外膜の2次元的な輪郭が、輪郭追跡部12において追跡対象となる外膜の初期輪郭に設定される。例えば、R波が検出された心時相における外膜の輪郭が初期輪郭に設定される。
【0030】
また、輪郭検出部11は、AQ法に代えて、ASM法(Active Shape Model)を用いて内膜の2次元的な輪郭や外膜の2次元的な輪郭を検出しても良い。ASM法による輪郭検出の方法については、例えば、「Cooles et al,“Active shape models Their training and application” Comput.Vis.Image Undestand.,vol.61,no.1,pp.38−59,Jan.1995」に記載されている。ASM法においては、所望の組織の一般的な形状を予め形状辞書に登録しておき、輪郭検出部11は、断層像データの輝度情報と、その形状辞書に登録されている形状とに基づいて、所望の組織の輪郭を検出する。例えば、心臓の内膜や外膜の一般的な形状を形状辞書に予め登録しておき、輪郭検出部11は、断層像データの輝度情報と、内膜(外膜)の一般的な形状とに基づいて、内膜(外膜)の輪郭を検出する。
【0031】
AQ法では、処理が比較的容易であるという利点があるが、輪郭検出のゲイン設定依存が大きく、検出結果がゲインの影響を受けやすい。また、AQ法では、心臓の内膜だけでなく、乳頭筋や腱索などの組織の位置を内膜の輪郭位置として検出してしまうおそれがある。一方、ASM法によると、AQ法よりも処理が複雑になるが、AQ法よりもゲイン設定の影響を受けにくく、また、乳頭筋や腱索を除外して内膜の輪郭を検出することができるという利点がある。第1実施形態においては、AQ法とASM法のうちいずれかの方法を用いて輪郭を検出すれば良い。
【0032】
以上のように、輪郭検出部11によって所定の心時相における内膜の2次元的な輪郭(内膜の初期輪郭)が検出されると、輪郭追跡部12は、スペックルパターンを用いた2画像間のパターンマッチングによって、各心時相で生成された断層像データごとに、初期輪郭に設定された内膜の2次元的な輪郭を構成する各点の位置を求める。そして、輪郭追跡部12は、内膜の2次元的な輪郭を構成する各点を時間的に追跡(トラッキング)する。この実施形態では1例として、輪郭追跡部12は、上述したST法を用いて内膜の2次元的な輪郭を構成する各点を時間的に追跡する。
【0033】
例えば、輪郭追跡部12は、初期輪郭に設定された内膜の輪郭を構成する各点の座標情報を受け、さらに、その初期輪郭が検出された断層像データ(以下、「断層像データA」と称する場合がある)の次の心時相に生成された断層像データ(以下、「断層像データB」と称する場合がある)を記憶部6から読み込む。そして、輪郭追跡部12は、スペックルパターンを用いた時間的に連続する2つの断層像間(断層像Aと次の断層像B)のパターンマッチングを行うことにより、初期輪郭に設定された内膜の輪郭を構成する各点の移動ベクトルを求める。この移動ベクトルは、輪郭を構成する各点の変位と、各点が変位した移動方向を表している。つまり、輪郭追跡部12は、2つの断層像間のパターンマッチングを行い、スペックルの移動量を算出することで、輪郭を構成する各点の移動ベクトルを求める。このように輪郭を構成する各点の移動ベクトルを求めることで、初期輪郭が設定された断層像データAの次の断層像データBが生成された心時相における内膜の輪郭を構成する各点の位置が求められる。
【0034】
さらに輪郭追跡部12は、断層像データBの次の心時相に生成された断層像データ(以下、「断層像データC」と称する場合がある)を記憶部6から読み込み、スペックルパターンを用いた時間的に連続する2つの断層像間(断層像Bと断層像C)のパターンマッチングによって、内膜の輪郭を構成する各点の移動ベクトルを求める。これにより、断層像データCが生成された心時相における内膜の輪郭を構成する各点の位置が求められる。
【0035】
以上のようにして、輪郭追跡部12は、スペックルパターンを用いたパターンマッチングによって、初期輪郭に設定された内膜の輪郭を構成する各点における移動ベクトルを各断層像データが生成された心時相ごとに求め、内膜の輪郭を構成する各点における移動ベクトルを時間的に追跡する。その結果、内膜の2次元的な輪郭を構成する各点を時間的に追跡することが可能となる。例えば、輪郭追跡部12は、1心周期に亘って取得された全ての断層像データについて、各心時相における内膜の2次元的な輪郭を構成する各点の位置を求める。これにより、1心周期に亘って、各心時相における内膜の2次元的な輪郭を構成する各点の位置が求められる。
【0036】
また、輪郭検出部11によって所定の心時相における外膜の2次元的な輪郭(外膜の初期輪郭)が検出されると、輪郭追跡部12は、内膜の追跡と同様に、スペックルパターンを用いた2画像間のパターンマッチングによって、各心時相で生成された断層像データごとに、外膜の2次元的な輪郭を構成する各点の位置を求める。そして、輪郭追跡部12は、外膜の2次元的な輪郭を構成する各点を時間的に追跡する。
【0037】
以上のように、各心時相の内膜の2次元的な輪郭を構成する各点が追跡されると、演算部20は、輪郭検出部11及び輪郭追跡部12から各心時相の内膜の2次元的な輪郭を構成する各点の座標情報を受けて、内膜の壁運動情報を求める。例えば演算部20は、各心時相における内膜の2次元的な輪郭を構成する各点の座標情報に基づいて、各心時相における内膜の円周方向(輪郭の接線方向)の歪み(変位の変化率)を求める。例えば、演算部20は、R波が検出された心時相を基準時相とし、その基準時相における内膜の2次元的な輪郭と、その他の心時相における内膜の2次元的な輪郭とを比べて、各心時相における歪みを求める。そして、演算部20は、心拍の経過に伴って、解析対象となっている心拍のR波の心時相を新たな基準時相に設定して、各心時相における歪みを求める。
【0038】
例えば、輪郭検出部11は、R波が検出された心時相における内膜の2次元的な輪郭(初期輪郭)を検出し、その内膜の2次元的な輪郭の座標情報を演算部20に出力する。また、輪郭追跡部12は、各心時相における内膜の2次元的な輪郭を構成する各点の座標情報を演算部20に出力する。演算部20は、輪郭検出部11からR波が検出された心時相における内膜の2次元的な輪郭(初期輪郭)の座標情報を受け、さらに、輪郭追跡部12から各心時相における内膜の2次元的な輪郭を構成する各点の座標情報を受けて、R波が検出された心時相を基準時相として、各心時相における内膜の円周方向の歪みを求める。
【0039】
また、輪郭検出部11及び輪郭追跡部12によって各心時相における外膜の2次元的な輪郭が求められている場合は、演算部20は、各心時相における内膜の2次元的な輪郭を構成する各点の座標情報と外膜の2次元的な輪郭を構成する各点の座標情報とに基づいて、各心時相における壁厚方向の歪み(内膜と外膜との間の厚さ方向の歪み)を求めても良い。
【0040】
そして、演算部20は、内膜の歪みなどの壁運動情報を表示制御部7に出力する。表示制御部7は演算部20から壁運動情報を受けて、その壁運動情報をその都度、表示部81に表示させる。演算部20によって各心時相における壁運動情報が求められると、表示制御部7は、各心時相の壁運動情報を時相ごとにその都度、表示部81に表示させる。また、心拍間での結果の安定性を向上させるために、演算部20は、現在の心拍の演算結果を含む過去の数心拍の演算結果を重み付け平均し、表示制御部7はその平均値を表示部81に表示させても良い。
【0041】
また、演算部20は、歪み以外にも、内膜(外膜)の変位や回転角を求めても良い。さらに、演算部20は、歪み、変位、又は回転角などの時間微分を行い、内膜(外膜)の歪み率、速度、又は回転率などの運動情報を求めても良い。例えば、演算部20は、各心時相における歪み、変位、又は回転角の差分を求めることで、歪み率、速度、又は回転率などを求める。そして、演算部20は、歪み率などを表示制御部7に出力する。表示制御部7は、演算部20から各心時相における歪み率などの壁運動情報を受けて、各心時相の壁運動情報を時相ごとにその都度、表示部81に表示させる。
【0042】
補正部14は、複数の心拍の経過に伴うST法による追跡誤差が蓄積されるのを軽減するため、追跡対象となる内膜の輪郭の位置を所定のタイミングで補正する。例えば、(1)補正部14は、内膜の輪郭の位置を定期的に補正する。例えば、補正部14は、N心拍ごと(Nは整数)に内膜の輪郭の位置を補正する。N=1の場合、補正部14は、毎心拍、輪郭の位置を補正することになる。すなわち、補正部14は、1心拍以上の時間の間隔で内膜の輪郭の位置を補正する。また、(2)補正部14は、操作者が操作部82によって指示を与えたタイミングで、内膜の輪郭の位置を補正しても良い。
【0043】
(1)定期的に内膜の輪郭の位置を補正する場合、補正を行うタイミングを制御部9に予め設定しておく。制御部9は、設定されたタイミングで補正の指示を画像処理部10に与える。補正部14はその指示に従って、内膜の輪郭の位置を補正する。例えば、制御部9が所定数のR波を受信するたびに、補正の指示を画像処理部10に与える。また、(2)操作者が操作部82を用いて補正の指示を与えると、その指示が制御部9に出力され、制御部9は、補正の指示を画像処理部10に与える。例えば、操作部82に補正実行ボタンなどの入力装置を設けておき、操作者がそのボタンを押下すると、その押下に応じた信号が制御部9に出力される。制御部9はその信号を受けると、補正の指示を画像処理部10に与える。
【0044】
制御部9によって補正の指示が与えられると、まず、輪郭検出部11がAQ法を実行することにより、内膜の2次元的な輪郭を検出する。輪郭検出部11によって検出された2次元的な輪郭の位置(座標)を、位置Paqとする。そして、その時点において、輪郭追跡部12がST法によって求めた内膜の2次元的な輪郭を構成する各点の位置(座標)を、位置Pstとする。補正部14は、輪郭検出部11から位置Paqの座標情報を受け、さらに、輪郭追跡部12から位置Pstの座標情報を受けて、位置Paqと位置Pstに基づいて、輪郭追跡部12に設定する内膜の新たな初期輪郭の位置を求める。例えば、補正部14は、以下の式(1)に従って、輪郭追跡部12に新たに設定する内膜の初期輪郭の位置Pを求める。
(式1)
初期輪郭の位置P=α×Paq+(1−α)×Pst
(但し、0≦α≦1)
【0045】
上記式(1)に示すように、補正部14は、輪郭検出部11によって検出された位置Paqと、輪郭追跡部12によって求められた位置Pstについて、重み付け加算を行うことで、輪郭追跡部12に新たに設定する初期輪郭の位置Pを求める。例えば、α=1とすることで、輪郭追跡部12に新たに設定する位置Pを、輪郭検出部11が新たに検出した位置Pstに置き換えることになる。
【0046】
補正部14は、式(1)に従って求めた内膜の初期輪郭の位置Pを輪郭追跡部12に出力する。輪郭追跡部12は、新たに求められた初期輪郭の位置Pに従って、ST法を実行することで、内膜の2次元的な輪郭を追跡する。また、補正部14は、外膜の初期輪郭の位置についても、内膜と同様の処理によって補正しても良い。
【0047】
以上のように、補正部14によって、定期的に又は任意のタイミングで、追跡対象となる内膜(外膜)の初期輪郭の位置を補正することで、操作者による追跡対象の再設定の手間が省け、壁運動情報をリアルタイムかつ高精度に求めることが可能となる。
【0048】
また、内膜の2次元的な輪郭(及び外膜の2次元的な輪郭)を表すマーカを表示部81に表示しても良い。マーカ生成部13は、輪郭検出部11から内膜の初期輪郭の座標情報を受けると、その初期輪郭を表すマーカを生成する。そして、表示制御部7は、輪郭検出部11にて初期輪郭が求められた断層像データに基づく断層像を表示部81に表示させ、さらに、その断層像に初期輪郭を表すマーカを重ねて表示部81に表示させる。
【0049】
また、マーカ生成部13は、輪郭追跡部12から各心時相における内膜の2次元的な輪郭を構成する各点の座標情報を受けると、各心時相における内膜の2次元的な輪郭を表すマーカを生成する。そして、表示制御部7は、各心時相に生成された断層像データに基づく断層像を心時相ごとに、順次、表示部81に表示させる。さらに、表示制御部7は、各心時相における内膜の輪郭を表すマーカを、各心時相に生成された断層像に重ねて、順次、表示部81に表示させる。そして、表示制御部7は、順次、断層像とマーカを更新して表示部81に表示させる。
【0050】
また、輪郭検出部11によって外膜の2次元的な輪郭が検出され、輪郭追跡部12によって各心時相の外膜の2次元的な輪郭が求められている場合、マーカ生成部13は、内膜の2次元的な輪郭を表すマーカと同様に、外膜の2次元的な輪郭を表すマーカを生成する。そして、表示制御部7は、内膜の輪郭を表すマーカと外膜の輪郭を表すマーカを、断層像に重ねて表示部81に表示させる。
【0051】
以上のようにして求められた内膜(外膜)の輪郭、運動情報、及び断層像の1例を図2に示す。図2は、この発明の第1実施形態に係る超音波診断装置によって取得された画像と、壁運動情報を示す図である。
【0052】
表示制御部7は、記憶部6から断層像データを読み込んでその断層像データに基づく断層像100を表示部81に表示させる。図2に示す例では、断層像100は心臓の短軸像を表している。そして、表示制御部7は、その断層像データが生成された心時相に対応する内膜の輪郭を表すマーカ101を断層像100に重ねて表示部81に表示させる。さらに、外膜の輪郭が追跡されて輪郭のマーカが生成されている場合は、表示制御部7は、外膜の輪郭を表すマーカ102をマーカ101とともに断層像100に重ねて表示部81に表示させる。そして、表示制御部7は、各心時相に取得された断層像100、内膜の輪郭を表すマーカ101、及び外膜の輪郭を表すマーカ102を、時相ごとに順次更新して表示部81に表示させる。なお、外膜の輪郭が追跡されていない場合は、表示制御部7は、内膜の輪郭を表すマーカ101のみを断層像100に重ねて表示部81に表示させても良い。
【0053】
さらに、表示制御部7は、演算部20によって求められた各心時相の壁運動情報を心時相ごとに表示部81に表示させる。例えば演算部20が、各心時相における壁厚方向(内膜と外膜との間の厚さ方向)の歪みを局所的に求め、図2に示すように、表示制御部7は、その局所的な歪みの大きさに応じた色を内膜(マーカ101)と外膜(マーカ102)の間の領域に割り当てて、断層像100に重ねて表示部81に表示させる。すなわち、演算部20は、予め設定された所定箇所における壁厚方向の歪みを求め、表示制御部7は、その所定箇所における歪みの大きさに応じた色をマーカ101とマーカ102との間の領域に割り当てて、表示部81に表示させる。そして、表示制御部7は、各心時相に取得された断層像100、内膜の輪郭を表すマーカ101、外膜の輪郭を表すマーカ102、及び壁運動情報を、時相ごとに順次更新して表示部81に表示させる。
【0054】
また、図2に示すように、演算部20は、心臓の短軸像に重心位置を設定し、その重心位置から放射状に直線を引くことにより、ASE(米国心エコー図学会)が推奨する領域ごとに短軸像を6分割しても良い。この場合、演算部20は、各領域に含まれる複数箇所の歪みを求め、それら複数箇所における歪みの平均値を求めることで、領域ごとに歪みの平均値を求める。図2に示す例では、演算部20は、短軸像に相当する断層像100を、int(下壁):D1、pst(後壁):D2、lat(側壁):D3、ant(前壁):D4、asp(前壁中隔):D5、sp(後壁中隔):D6の6つの領域に分割している。そして、演算部20は、D1〜D6の領域ごとに、壁厚方向(内膜と外膜との間の厚さ方向)の歪みの大きさの平均値を求める。
【0055】
例えば、演算部20は、1心拍中における歪みのピーク値(図2中のMax1)や、基準時相であるR波が検出された心時相からそのピーク値が得られる心時相までの時間(図2中のMax1T)を領域ごとに求め、それらの値を表示制御部7に出力する。表示制御部7は、歪みのピーク値(Max1)とピーク値が得られる時間(Max1T)を表示部81に表示させる。
【0056】
また、演算部20は、各領域における歪みの平均値の時間変化をグラフで表しても良い。表示制御部7は演算部20から歪みの平均値の時間変化を表すグラフデータを受けて、そのグラフを表示部81に表示させる。例えば図2に示すように、表示制御部7は、演算部20によって作成された、各領域における歪みの平均値の時間変化を表すグラフ104を表示部81に表示させる。図2中のグラフ104において、横軸は時間[ms]を示し、縦軸が歪み(Radial Strain)を示している。
【0057】
また、演算部20は、全領域の歪みの平均値や、その平均値の時間変化を表すグラフデータを生成しても良い。表示制御部7は、全領域の歪みの平均値やグラフを表示部81に表示させる。例えば図2中のglobalが、全領域の歪みの平均値を表している。
【0058】
さらに、表示制御部7は、ECG波形を表示部81に表示させ、表示部81に表示している断層像データが取得された心時相を表すバー103を、そのECG波形上に重ねて表示部81に表示させても良い。そして、表示制御部7は、バー103をECG波形上で移動させて表示させ、バー103が示す心時相における断層像100、マーカ101、102、グラフ104を表示部81に表示させる。このように、心時相に応じて断層像100やグラフ104を更新して表示部81に表示させる。
【0059】
ユーザインターフェース(UI)8は表示部81と操作部82を備えて構成されている。表示部81は、CRTや液晶ディスプレイなどのモニタで構成されており、画面上に断層像や3次元画像などが表示される。操作部82は、キーボード、マウス、トラックボール、又はTCS(Touch Command Screen)などで構成されており、操作者の操作によって各種の指示が与えられる。例えば、内膜(外膜)の初期輪郭の補正のタイミングが操作部82によって行われる。
【0060】
制御部9は、超音波診断装置1の各部に接続されて、各部の動作を制御する。
【0061】
また、画像処理部10は、CPUと、ROM、RAM、HDDなどの記憶部(図示しない)を備えて構成されている。記憶部には、画像処理部10の各部の機能を実行するための画像処理プログラムが記憶されている。その画像処理プログラムには、輪郭検出部11の機能を実行するための輪郭検出プログラム、輪郭追跡部12の機能を実行するための輪郭追跡プログラム、マーカ生成部13の機能を実行するためのマーカ生成プログラム、及び補正部14の機能を実行するための補正プログラムが含まれている。そして、CPUが、輪郭検出プログラムを実行することにより、断層像データから心臓の内膜(外膜)の輪郭を検出する。また、CPUが、輪郭追跡プログラムを実行することにより、各心時相における内膜(外膜)の輪郭を求める。また、CPUが、マーカ生成プログラムを実行することにより、内膜(外膜)の輪郭を表すマーカを生成する。また、CPUが、補正プログラムを実行することにより、予め設定されたタイミング、又は操作者からの指示を受けたタイミングに、内膜(外膜)の輪郭の位置を補正する。
【0062】
また、演算部20は、CPUと、ROM、RAM、HDDなどの記憶部(図示しない)を備えて構成されている。記憶部には、演算部20の機能を実行するための演算プログラムが記憶されている。そして、CPUがその演算プログラムを実行することにより、内膜(外膜)の歪みや変位などの壁運動情報を求める。
【0063】
また、表示制御部7は、CPUと、ROM、RAM、HDDなどの記憶部(図示しない)を備えて構成されている。記憶部には、表示制御部7の機能を実行するための表示制御プログラムが記憶されている。そして、CPUがその表示制御プログラムを実行することにより、断層像、マーカ、及び壁運動情報を表示部81に表示させる。
【0064】
なお、この実施形態における画像処理プログラム、演算プログラム、及び表示制御プログラムが、この発明の「超音波画像処理プログラム」の1例に相当する。
【0065】
以上のように、内膜(外膜)の初期輪郭を検出し、パターンマッチングによって内膜(外膜)の輪郭を時間的に追跡することで、輪郭を追跡するための初期輪郭の設定が自動化されて、内膜(外膜)の壁運動情報をリアルタイムに求めて表示することが可能となる。
【0066】
(超音波画像処理装置)
また、内膜(外膜)の輪郭を追跡して壁運動情報を求める超音波画像処理装置を、超音波診断装置の外部に設けても良い。この超音波画像処理装置は、上述した記憶部6、表示制御部7、ユーザインターフェース8、画像処理部10、及び演算部20を備えている。そして、超音波画像処理装置は、取得された時間が連続する複数の断層像データを外部の超音波診断装置から取得し、それら複数の断層像データに基づいて、内膜(外膜)の輪郭を追跡して壁運動情報を求める。
【0067】
超音波画像処理装置の外部に設置された超音波診断装置によって心臓を超音波で走査することで、心時相ごとに断層像データを取得する。そして、超音波画像処理装置は、超音波診断装置によって取得された複数の断層像データを受け付けて、それら複数の断層像データを記憶部6に記憶させる。そして、超音波画像処理装置の画像処理部10は、例えばAQ法によって内膜(外膜)の2次元的な輪郭を検出し、さらに、ST法によって各心時相における内膜(外膜)の2次元的な輪郭を構成する各点の位置を求めることで、内膜(外膜)の輪郭を追跡する。そして、超音波画像処理装置の演算部20は、画像処理部10によって追跡された内膜(外膜)の2次元的な輪郭を構成する各点の位置に基づいて、内膜(外膜)の歪みや変位などの壁運動情報を求める。
【0068】
以上のように、超音波診断装置の外部に設けられた超音波画像処理装置によって各心時相における内膜(外膜)の輪郭を検出して追跡することで、上述した超音波診断装置1と同様に、内膜(外膜)の壁運動情報をリアルタイムに求めて表示することが可能となる。
【0069】
(動作)
次に、この発明の第1実施形態に係る超音波診断装置の動作について、図3を参照して説明する。図3は、この発明の第1実施形態に係る超音波診断装置による一連の動作を説明するためのフローチャートである。この実施形態では、心臓を診断部位として、取得された時間が連続する複数の断層像データ(動画像データ)を取得し、その断層像データに基づいて、心機能の評価に供される心臓の内膜と外膜の2次元的な輪郭を検出する。
【0070】
(ステップS01)
まず、超音波プローブ2を被検体に当てて、心臓に対して超音波を送信し、画像生成部5によって、各心時相の断層像データ(心臓の動画像データ)を生成する。制御部9は、超音波診断装置1の外部からECG信号を受け付けて、生成された断層像データにその断層像データが生成された心時相を対応付けて記憶部6に記憶させる。
【0071】
(ステップS02)
輪郭検出部11は、予め設定された心時相(例えばR波が検出された心時相)に取得された断層像データを記憶部6から読み込み、その断層像データの輝度分布に基づいて心臓の内膜と外膜の2次元的な輪郭を検出する。輪郭検出部11にて検出された内膜と外膜の2次元的な輪郭が、輪郭追跡部12において内膜と外膜の初期輪郭に設定される。
【0072】
(ステップS03)
輪郭追跡部12は、初期輪郭が求められた断層像データの次の心時相にて取得された断層像データを記憶部6から読み込み、スペックルパターンを用いた2画像間のパターンマッチングによって、その心時相における内膜と外膜の2次元的な輪郭を構成する各点の位置を求める。
【0073】
(ステップS04)
演算部20は、その心時相における内膜と外膜の2次元的な輪郭を構成する各点の座標情報を受けて、その心時相における歪みや変位などの壁運動情報を求める。
【0074】
(ステップS05)
マーク生成部13は、その心時相における内膜と外膜の2次元的な輪郭を構成する各点の座標情報を受けて、内膜と外膜の輪郭を表すマーカを生成する。
【0075】
(ステップS06)
表示制御部7は、その心時相に生成された断層像データに基づく断層像を表示部81に表示させ、内膜と外膜の2次元的な輪郭を表すマーカをその断層像に重ねて表示部81に表示させる。さらに、表示制御部7は、演算部20によって求められた壁運動情報を表示部81に表示させる。
【0076】
(ステップS07、S08)
そして、初期輪郭の位置を補正するタイミングになると(ステップS07、Yes)、制御部9は、画像処理部10に補正の指示を与える。例えば、初期輪郭の位置を補正するタイミングを制御部9に設定しておき、制御部9は、そのタイミングで補正の指示を画像処理部10に与える。また、操作者が操作部82を用いて、補正の指示を与えても良い。補正部14は、上述した式(1)に従って、内膜と外膜の新たな初期輪郭の位置を求める(ステップS08)。補正部14によって求められた初期輪郭は、輪郭追跡部12に設定され、輪郭追跡部12は、その初期輪郭が示す輪郭を追跡する。そして、ステップS01、及びステップS03〜ステップS06の処理を繰り返すことで、内膜と外膜の2次元的な輪郭を追跡し、各心時相における壁運動情報を求める。
【0077】
一方、初期輪郭の位置を補正するタイミングにならない場合(ステップS07、No)、ステップS01、及びステップS03〜ステップS06の処理を繰り返すことで、内膜と外膜の2次元的な輪郭を追跡し、各心時相における壁運動情報を求める。
【0078】
(変形例)
次に、上述した第1実施形態の変形例について図4を参照して説明する。図4は、この発明の第1実施形態に係る超音波診断装置の変形例によって取得された画像を示す図である。上述した第1実施形態においては、輪郭検出部11が断層像データに基づいて内膜(外膜)の初期輪郭を検出する。この変形例においては、内膜(外膜)の初期輪郭を操作者が指定する。すなわち、輪郭追跡部12は、所定の心時相に取得された断層像に対する内膜(外膜)の2次元的な輪郭の指定を受け付け、各心時相における内膜(外膜)の2次元的な輪郭を構成する各点の位置を心時相ごとにパターンマッチングによって求める。
【0079】
変形例においては、表示制御部7は、初期輪郭を設定するための断層像と、運動情報を表示するための断層像とを並べて表示部81に表示させる。例えば図4に示すように、表示制御部7は、予め設定された心時相に取得された断層像データを記憶部6から読み込んで、その断層像データに基づく断層像200を表示部81に表示させる。図4に示す例では、断層像200は心臓の短軸像を表している。例えば、表示制御部7は、拡張末期(R波が検出された心時相)に取得された断層像データ、又は、収縮末期に取得された断層像データを記憶部6から読み込み、その断層像データに基づく断層像を表示部81に表示させる。さらに、表示制御部7は、予め設定された周期で、断層像200を更新して表示部81に表示させる。例えば、表示制御部7は、1心拍以上の時間の間隔をおいて、断層像200を更新して表示部81に表示させる。1例として、表示制御部7は、R波が検出された心時相に取得された断層像データを毎心拍ごとに記憶部6から読み込み、断層像200を更新して表示部81に表示させる。この断層像200は、内膜(外膜)の初期輪郭を設定するために用いられる画像であり、この発明の「初期輪郭設定用の断層像」の1例に相当する。
【0080】
操作者は、断層像200を観察し、内膜(外膜)の初期輪郭を指定する。例えば、操作者は操作部82を用いて、断層像200に表されている内膜(外膜)の2次元的な輪郭をなぞることで、内膜(外膜)の初期輪郭を指定する。このように内膜(外膜)の2次元的な輪郭が指定されると、ユーザインターフェース(UI)8から内膜(外膜)の2次元的な輪郭の座標情報が制御部9を介して画像処理部10に出力される。マーカ生成部13は、操作者によって指定された内膜(外膜)の2次元的な輪郭の座標情報に基づいて、内膜(外膜)の初期輪郭を表すマーカを生成する。表示制御部7は、その初期輪郭を表すマーカを受けると、断層像200にそのマーカを重ねて表示部81に表示させる。図4に示す例では、表示制御部7は、内膜の初期輪郭を表すマーカ201と、外膜の初期輪郭を表すマーカ202を断層像200に重ねて表示部81に表示させる。このように、操作者によって指定された内膜(外膜)の輪郭が、内膜(外膜)の初期輪郭として、輪郭追跡部12に設定される。
【0081】
また、表示制御部7は、初期輪郭を設定するための輪郭設定用マーカを断層像200に重ねて表示部81に表示させても良い。例えば、表示制御部7は、予め設定された大きさの円形状のマーカや、楕円形状のマーカを断層像200に重ねて表示部81に表示させる。そして、操作者が操作部82を用いて輪郭設定用マーカを画面上で所望の位置に移動させることで、内膜(外膜)の初期輪郭を指定する。例えば、輪郭設定用マーカの形状とほぼ合致する位置に輪郭設定用マーカを移動させて、内膜(外膜)の初期輪郭を指定する。
【0082】
また、心臓の心尖像を取得して表示部81に表示している場合、操作者が操作部82を用いて心尖の位置と両弁輪の位置を指定し、輪郭追跡部12は、指定された3点に基づいて、内膜(外膜)の2次元的な輪郭の位置を推定しても良い。そして、輪郭追跡部12は、推定した内膜(外膜)の輪郭をパターンマッチングによって時間的に追跡する。さらに、弁輪の形状を予め形状辞書に登録しておき、パターンマッチングを用いた自己探索型の処理によって、内膜(外膜)の2次元的な輪郭を推定しても良い。この場合、操作者は心尖の位置のみを指定すれば良いため、操作者の負担を軽減することができる。
【0083】
以上のように操作者によって内膜(外膜)の初期輪郭が指定されると、輪郭追跡部12は、上述した第1実施形態と同様に、ST法を用いて、内膜(外膜)の2次元的な輪郭を追跡する。そして、マーカ生成部13は、各心時相における内膜(外膜)の2次元的な輪郭を表すマーカを生成する。表示制御部7は、各心時相に取得された断層像データを記憶部6から読み込み、各心時相の断層像データに基づく断層像を心時相ごとに順次、表示部81に表示させる。さらに、表示制御部7は、各心時相における内膜(外膜)の2次元的な輪郭を表すマーカをマーカ生成部13から受けて、各心時相のマーカを心時相ごとに順次、断層像に重ねて表示部81に表示させる。例えば、図4に示すように、表示制御部7は、各心時相の断層像210を心時相ごとに順次、表示部81に表示させ、さらに、各心時相の内膜の輪郭を表すマーカ211を心時相ごとに順次、断層像210に重ねて表示部81に表示させる。図4に示す例では、表示制御部7は、初期輪郭を設定するための断層像200を予め設定された周期で表示部81に表示させ、更に、断層像200と並べて、断層像210を心時相ごとに順次、表示部81に表示させる。
【0084】
さらに、表示制御部7は、ECG波形を表示部81に表示させ、表示部81に表示している断層像データが取得された心時相を表すバー213を、そのECG波形上に重ねて表示部81に表示させても良い。そして、表示制御部7は、バー213をECG波形上で移動させて表示させ、バー213が示す心時相における断層像210、マーカ211、212を表示部81に表示させる。
【0085】
また、演算部20は、上述した第1実施形態と同様に、各心時相における内膜(外膜)の2次元的な輪郭を構成する各点の座標情報に基づいて、各心時相における歪みや変位などの壁運動情報を求め、表示制御部7は各心時相の壁運動情報を心時相ごとに表示部81に表示させる。
【0086】
さらに、任意の時に、内膜(外膜)の初期輪郭を再度設定しても良い。上述した初期輪郭の指定方法と同様に、任意の時に、操作者は操作部82を用いて、表示部81に表示されている初期輪郭設定用の断層像200上で内膜(外膜)の輪郭を指定する。このように再度、内膜(外膜)の初期輪郭が指定されると、ユーザインターフェース(UI)8から新たに指定された初期輪郭の座標情報が画像処理部10に出力される。そして、輪郭追跡部12は、新たに指定された内膜(外膜)の輪郭を追跡する。
【0087】
また、初期輪郭を再設定する場合においても、表示制御部7は、内膜と外膜の初期輪郭を指定するための輪郭設定用マーカを断層像200に重ねて表示部81に表示させても良い。このとき、表示制御部7は、輪郭追跡部12によって求められた所定の心時相における内膜(外膜)の輪郭を表すマーカを輪郭設定用マーカとして、断層像200に重ねて表示部81に表示させても良い。この輪郭設定用マーカは、マーカ生成部13によって生成される。このように、ST法によって求められた内膜(外膜)の輪郭に基づいて輪郭設定用マーカを生成することで、輪郭設定用マーカの形状を実際の心筋の位置や輪郭形状により適合させることが可能となる。
【0088】
また、表示制御部7は、初期輪郭設定用の断層像200を常時、表示部81に表示させても良いし、初期輪郭を設定する時のみ、断層像200を表示部81に表示させても良い。例えば、操作者が操作部82を用いて初期輪郭の設定指示を与えると、表示制御部7は、予め設定された心時相(例えばR波が検出された心時相)に取得された断層像データを記憶部6から読み込み、その断層像データに基づく断層像200を初期輪郭設定用の断層像として表示部81に表示させる。そして、操作者によって初期輪郭が指定されると、表示制御部7は、壁運動情報を表示するための断層像210のみを表示部81に表示させる。
【0089】
また、表示制御部7は、各心時相における断層像210を心時相ごとに表示部81に表示させ、所定のタイミングで、その断層像210に代えて、予め設定された心時相に取得された初期輪郭設定用の断層像200を、1心拍以上の時間の間隔で更新して表示部81に表示させても良い。そして、操作者は操作部82を用いて、表示部81に表示されている初期輪郭設定用の断層像200上で内膜(外膜)の輪郭を指定する。操作者によって初期輪郭が指定されると、表示制御部7は、断層像200に代えて、各心時相における断層像210を心時相ごとに表示部81に表示させる。
【0090】
なお、この変形例においては、操作者が内膜(外膜)の初期輪郭を指定するため、画像処理部10に輪郭検出部11を設けなくても良い。
【0091】
また、上述した第1実施形態と同様に、内膜(外膜)の初期輪郭の指定を受け付け、内膜(外膜)の輪郭を追跡して壁運動情報を求める超音波画像処理装置を、超音波診断装置の外部に設けても良い。
【0092】
[第2の実施の形態]
次に、この発明の第2実施形態に係る超音波診断装置について図5及び図6を参照して説明する。図5は、この発明の第2実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。図6は、この発明の第2実施形態に係る超音波診断装置で取得された画像を示す図である。
【0093】
上述した第1実施形態においては、2次元画像としての断層像データに基づいて、2次元平面上における内膜(外膜)の輪郭を追跡し、壁運動情報を求めている。第2実施形態においては、3次元画像としてのボリュームデータに基づいて、内膜(外膜)の3次元的な輪郭を追跡し、壁運動情報を求める。
【0094】
第2実施形態に係る超音波診断装置1Aは、第1実施形態に係る超音波診断装置1の画像処理部10の代わりに、画像処理部10Aを備えている。画像処理部10Aは、輪郭検出部11A、輪郭追跡部12、マーカ生成部13、及び補正部14を備えている。
【0095】
第2実施形態においては、超音波プローブ2に2次元アレイプローブを用いてボリュームスキャンを実行することで、心時相ごとにボリュームデータを取得する。そして、画像生成部5は、予め設定された心時相(例えばR波が検出された心時相)に取得されたボリュームデータにMPR処理を施すことで、任意断面におけるMPR画像データを生成する。例えば、画像生成部5は、ボリュームデータにMPR処理を施すことで、複数の異なる断面に沿ったMPR画像データをそれぞれの断面ごとに求める。1例として、画像生成部5は、互いに直交する断面に沿った2つのMPR画像データを生成する。例えば図6(a)に示すように、画像生成部5は、心臓の長軸方向に沿った心尖四腔像(4C)300と、心尖二腔像(2C)310を生成する。断面は予め画像生成部5に設定されていても良いし、操作者が操作部82を用いることで指定しても良い。画像生成部5によって生成されたMPR画像データは記憶部6に記憶される。また、表示制御部7は、記憶部6に記憶されているMPR画像データを読み込んで、そのMPR画像データに基づくMPR画像を表示部81に表示させても良い。例えば、表示制御部7は、心尖四腔像(4C)300と、心尖二腔像(2C)310を表示部81に表示させても良い。
【0096】
輪郭検出部11Aは、2次元輪郭検出部15と補間部16を備えている。2次元輪郭検出部15は、予め設定された心時相(例えばR波が検出された心時相)に取得された複数のMPR画像データを記憶部6から読み込み、AQ法又はASM法を用いて、各MPR画像データから内膜(外膜)の2次元的な輪郭を検出する。図6(a)に示す例では、2次元輪郭検出部15は、心尖四腔像(4C)300から内膜の2次元的な輪郭301と外膜の2次元的な輪郭302を検出する。また、2次元輪郭検出部15は、心尖二腔像(2C)310から内膜の2次元的な輪郭311と外膜の2次元的な輪郭312を検出する。このように、第2実施形態においては1例として、心臓の長軸方向に沿ったMPR画像データに基づいて、長軸方向における内膜(外膜)の2次元的な輪郭を検出する。そして、輪郭検出部11は、内膜(外膜)の2次元的な輪郭の座標情報を補間部16に出力する。
【0097】
補間部16は、心尖四腔像(4C)300に基づいて求められた内膜の2次元的な輪郭301と、心尖二腔像(2C)310に基づいて求められた内膜の2次元的な輪郭311とに基づいて、スプライン関数などを用いて空間的に内膜の輪郭を補間することで、内膜の3次元的な輪郭の位置を求める。また、補間部16は、心尖四腔像(4C)300に基づいて求められた外膜の2次元的な輪郭302と、心尖二腔像(2C)310に基づいて求められた外膜の2次元的な輪郭312とに基づいて、スプライン関数などを用いて空間的に外膜の輪郭を補間することで、外膜の3次元的な輪郭の位置を求める。すなわち、補間部16は、長軸方向に直交する方向(短軸方向)に沿った各断面(各C面)における内膜(外膜)の輪郭の位置を求めることで、内膜(外膜)の3次元的な輪郭の位置を求める。
【0098】
以上のように、補間部16は、長軸方向に沿った断面で定義された輪郭301、302、311、312に基づいて、長軸方向の各深さにおける内膜(外膜)の輪郭の位置を求めることで、内膜(外膜)の3次元的な輪郭の位置を求める。補間部16によって求められた内膜(外膜)の3次元的な輪郭の座標情報は輪郭追跡部12に出力され、輪郭追跡部12に内膜(外膜)の初期輪郭として設定される。
【0099】
また、画像生成部5は、長軸方向に沿った断面のMPR画像データを生成し、さらに、長軸方向に直交する方向(短軸方向)に沿った断面(C面)のMPR画像データを生成しても良い。例えば図6(a)に示すように、画像生成部5は、心臓の長軸方向に沿った心尖四腔像(4C)300と、心尖二腔像(2C)310を生成する。さらに、図6(b)に示すように、画像生成部5は、長軸方向の所定深さにおけるラインA、ラインM、及びラインBに沿った断面におけるMPR画像320、330、340を生成する。画像生成部5によって生成されたMPR画像データは記憶部6に記憶される。ラインA、ラインM、及びラインBによって指定される断面は、予め画像生成部5に設定されていても良いし、操作者が操作部82を用いて断面を指定しても良い。
【0100】
2次元輪郭検出部15は、予め設定された心時相(例えばR波が検出された心時相)に取得された各断面のMPR画像データを記憶部6から読み込んで、各断面における内膜(外膜)の2次元的な輪郭を検出する。例えば、2次元輪郭検出部15は、長軸方向に沿った心尖四腔像(4C)300に基づいて、内膜の2次元的な輪郭301と、外膜の2次元的な輪郭302を検出する。また、2次元輪郭検出部15は、長軸方向に沿った心尖二腔像(2C)310に基づいて、内膜の2次元的な輪郭311と、外膜の2次元的な輪郭312を検出する。さらに、2次元輪郭検出部15は、ラインAに沿った断面のMPR画像320に基づいて、内膜の2次元的な輪郭321と、外膜の2次元的な輪郭322を検出する。また、2次元輪郭検出部15は、ラインMに沿った断面のMPR画像330に基づいて、内膜の2次元的な輪郭331と、外膜の2次元的な輪郭332を検出する。さらに、2次元輪郭検出部15は、ラインBに沿った断面のMPR画像340に基づいて、内膜の2次元的な輪郭341と、外膜の2次元的な輪郭342を検出する。2次元輪郭検出部15は、各断面に沿ったMPR画像から検出した内膜(外膜)の2次元的な輪郭の座標情報を補間部16に出力する。
【0101】
補間部16は、2次元輪郭検出部15によって検出された複数の2次元的な輪郭の座標情報に基づいて、スプライン関数などを用いて空間的に内膜(外膜)の輪郭を補間することで、内膜(外膜)の3次元的な輪郭の位置を求める。上述の例では、補間部16は、心尖四腔像(4C)300、心尖二腔像(2C)310、MPR画像320、330、及び340から検出された内膜(外膜)の2次元的な輪郭に基づいて、スプライン関数などを用いて空間的に内膜(外膜)の輪郭を補間することで、内膜(外膜)の3次元的な輪郭の位置を求める。補間部16によって求められた内膜(外膜)の3次元的な輪郭の座標情報は輪郭追跡部12に出力され、輪郭追跡部12に内膜(外膜)の初期輪郭として設定される。
【0102】
輪郭追跡部12は、補間部16によって求められた内膜(外膜)の初期輪郭に基づき、ST法を用いて、各心時相において取得されたボリュームデータ間のパターンマッチングを行うことで、各心時相における内膜(外膜)の3次元的な輪郭を構成する各点の位置を求める。そして、輪郭追跡部12は、内膜(外膜)の3次元的な輪郭を追跡する。
【0103】
演算部20は、第1実施形態と同様に、各心時相における内膜(外膜)の3次元的な輪郭を構成する各点の座標情報に基づいて、各心時相における歪みや変位などの壁運動情報を求める。そして、表示制御部7は、各心時相における壁運動情報を心時相ごとに表示部81に表示させる。
【0104】
以上のように、各心時相における内膜(外膜)の3次元的な輪郭を検出して追跡することで、上述した第1実施形態と同様に、内膜(外膜)の壁運動情報をリアルタイムに求めて表示することが可能となる。
【0105】
また、表示制御部7は、各心時相におけるMPR画像を心時相ごとに表示部81に表示させても良い。例えば図6(a)に示すように、表示制御部7は、各心時相における心尖四腔像(4C)300と心尖二腔像(2C)310を心時相ごとに表示部81に表示させる。また、図6(b)に示すように、表示制御部7は、短軸方向の断面に沿ったMPR画像320、330、340を心時相ごとに表示部81に表示させても良い。
【0106】
また、輪郭追跡部12は、各MPR画像上で設定された内膜(外膜)の輪郭を追跡しても良い。そして、マーカ生成部13は、各心時相における内膜(外膜)の輪郭を表すマーカを生成する。表示制御部7は、各心時相におけるMPR画像を心時相ごとに表示部81に表示させ、さらに、各心時相における内膜(外膜)の輪郭を表すマーカを、各心時相に生成されたMPR画像に重ねて、順次、表示部81に表示させても良い。
【0107】
例えば、輪郭追跡部12は、図6(b)に示すMPR画像320上で設定された内膜(外膜)の2次元的な輪郭を追跡し、マーカ生成部13は、各心時相における内膜(外膜)の2次元的な輪郭を表すマーカを生成する。そして、表示制御部7は、各心時相におけるMPR画像320を心時相ごとに表示部81に表示させ、さらに、表示制御部7は、各心時相における内膜のマーカと外膜のマーカを、MPR画像320に重ねて表示部81に表示させる。ここでは、MPR画像320を例にして説明したが、他の断面に沿ったMPR画像とマーカを重ねて表示部81に表示させても良い。
【0108】
さらに、表示制御部7は、上述した第1実施形態と同様に、演算部20によって求められた歪みの大きさに応じた色を内膜と外膜の間の領域に割り当てて、MPR画像に重ねて表示部81に表示させても良い。
【0109】
また、演算部20は、第1実施形態と同様に、ASEが推奨する領域ごとに歪みなどの壁運動情報を求めても良い。そして、演算部20は、各領域の壁運動情報のピーク値や、壁運動情報をグラフ化して表示部81に表示させても良い。
【0110】
また、第1実施形態と同様に、複数の心拍の経過に伴うST法による追跡誤差が蓄積されるのを軽減するため、追跡対象となる内膜(外膜)の3次元的な輪郭の位置を所定のタイミングで補正しても良い。例えば、補正部14は、N心拍(Nは整数)ごとに内膜(外膜)の3次元的な輪郭の位置を補正する。また、補正部14は、操作者によって補正の指示が与えられたタイミングで、内膜(外膜)の3次元的な輪郭の位置を補正しても良い。例えば、制御部9が所定数のR波を受信するたびに、補正の指示を画像処理部10Aに与える。また、操作者が操作部82を用いて補正の指示を与えると、その指示が制御部9に出力され、制御部9は、補正の指示を画像処理部10Aに与える。
【0111】
制御部9によって補正の指示が与えられると、2次元輪郭検出部15がAQ法を実行することにより、MPR画像データに基づいて内膜(外膜)の2次元的な輪郭を検出する。例えば、2次元輪郭検出部15は、心尖四腔像(4C)300から内膜(外膜)の2次元的な輪郭を検出し、さらに、心尖二腔像(2C)310から内膜(外膜)の2次元的な輪郭を検出する。補間部16は、2つのMPR画像から求められた内膜(外膜)の2次元的な輪郭に基づいて、スプライン関数を用いることで、内膜(外膜)の3次元的な輪郭の位置Paqを求める。そして、その時点において、輪郭追跡部12がST法によって求めた内膜(外膜)の3次元的な輪郭の位置を、位置Pstとする。そして、補正部14は、上述した式(1)に従って、輪郭追跡部12に新たに設定する内膜(外膜)の初期輪郭の位置Pを求める。そして、輪郭追跡部12は、式(1)に従って求められた内膜(外膜)の初期輪郭を追跡する。
【0112】
また、第1実施形態の変形例と同様に、操作者が内膜(外膜)の初期輪郭を指定し、補間部16は、指定された初期輪郭に基づいて、3次元空間における内膜と外膜の輪郭を補間して求めても良い。例えば、表示制御部7は、予め設定された心時相に取得された心尖四腔像(4C)300と心尖二腔像(2C)310を表示部81に表示させる。例えば、表示制御部7は、拡張末期(R波が検出された心時相)に取得された心尖四腔像(4C)300と心尖二腔像(2C)310を表示部81に表示させる。そして、表示制御部7は、1心拍以上の時間の間隔をおいて、心尖四腔像(4C)300と心尖二腔像(2C)310を更新して表示部81に表示させる。心尖四腔像(4C)300と心尖二腔像(2C)310は、初期輪郭を設定するための画像であり、この発明の「初期輪郭設定用の断層像」の1例に相当する。
【0113】
操作者は操作部82を用いて、心尖四腔像(4C)300と心尖二腔像(2C)310上に内膜(外膜)の2次元的な輪郭を指定する。ユーザインターフェース8から内膜(外膜)の輪郭の座標情報が画像処理部10Aに出力される。補間部16は、指定された内膜(外膜)の輪郭の座標情報に基づいて、スプライン関数などを用いることで、3次元空間における内膜(外膜)の初期輪郭を求める。このように操作者によって内膜(外膜)の初期輪郭が指定されると、輪郭追跡部12は、ST法を用いて、内膜(外膜)の3次元的な輪郭を追跡する。演算部20は、各心時相における内膜(外膜)の3次元的な輪郭に基づいて、各心時相における歪みや変位などの壁運動情報を求め、表示制御部7は各心時相の壁運動情報を心時相ごとに表示部81に表示させる。
【0114】
また、表示制御部7は、各心時相のMPR画像320を心時相ごとに表示部81に表示させ、さらに、MPR画像320と並べて、初期輪郭設定用のMPR画像を表示部81に表示させても良い。このとき、表示制御部7は、初期輪郭設定用のMPR画像を1心拍以上の時間の間隔で更新して表示部81に表示させる。また、表示制御部7は、初期輪郭設定用のMPR画像を常時、表示部81に表示させても良いし、初期輪郭を設定する時のみ、初期輪郭設定用のMPR画像を表示部81に表示させても良い。ここでは、MPR画像320を例にして説明したが、他の断面に沿ったMPR画像を初期輪郭設定用のMPR画像と並べて表示部81に表示させても良い。
【0115】
また、表示制御部7は、各心時相のMPR画像320を心時相ごとに表示部81に表示させ、所定のタイミングで、そのMPR画像320に代えて、予め設定された心時相に取得された初期輪郭設定用のMPR画像を表示部81に表示させても良い。そして、操作者は操作部82を用いて、表示部81に表示されている初期輪郭設定用のMPR画像上で内膜(外膜)の輪郭を指定する。操作者によって初期輪郭が指定されると、表示制御部7は、初期輪郭設定用のMPR画像に代えて、各心時相におけるMPR画像320を心時相ごとに表示部81に表示させる。
【0116】
なお、操作者が内膜(外膜)の初期輪郭を指定する場合は、輪郭検出部11Aに2次元輪郭検出部15を設けなくても良い。
【0117】
また、内膜(外膜)の3次元的な輪郭を追跡して壁運動情報を求める超音波画像処理装置を、超音波診断装置の外部に設けても良い。この超音波画像処理装置は、上述した記憶部6、表示制御部7、ユーザインターフェース8、画像処理部10A、及び演算部20を備えている。そして、超音波画像処理装置は、取得された時間が連続する複数のボリュームデータを外部の超音波診断装置から取得し、それら複数のボリュームデータに基づいて、内膜(外膜)の3次元的な輪郭を追跡して壁運動情報を求める。
【0118】
なお、画像処理部10Aは、CPUと、ROM、RAM、HDDなどの記憶部(図示しない)を備えて構成されている。記憶部には、画像処理部10Aの各部の機能を実行するための画像処理プログラムが記憶されている。その画像処理プログラムには、2次元輪郭検出部15の機能を実行するための輪郭検出プログラム、補間部16の機能を実行するための補間プログラム、輪郭追跡部12の機能を実行するための輪郭追跡プログラム、マーカ生成部13の機能を実行するためのマーカ生成プログラム、及び補正部14の機能を実行するための補正プログラムが含まれている。この実施形態における画像処理プログラム、演算部20の機能を実行するための演算プログラム、及び表示制御部7の機能を実行するための表示制御プログラムが、この発明の「超音波画像処理プログラム」の1例に相当する。
【符号の説明】
【0119】
1、1A 超音波診断装置
2 超音波プローブ
3 送受信部
4 信号処理部
5 画像生成部
6 記憶部
7 表示制御部
8 ユーザインターフェース
9 制御部
10、10A 画像処理部
11、11A 輪郭検出部
12 輪郭追跡部
13 マーカ生成部
14 補正部
15 2次元輪郭検出部
16 補間部
20 演算部
81 表示部
82 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を超音波で走査することで、時相ごとに超音波画像データを取得する画像取得手段と、
所定時相に取得された超音波画像データに基づく超音波画像に対する特定の組織の輪郭の指定を受け付け、各時相に取得された前記超音波画像データにおける前記指定された輪郭を構成する各点の位置を時相ごとにパターンマッチングによって求める輪郭追跡手段と、
前記各時相の輪郭を構成する各点の位置に基づいて、前記各時相における前記特定の組織の運動状態を表す運動情報を求める演算手段と、
前記各時相に取得された超音波画像データに基づく超音波画像を時相ごとに表示手段に表示させ、さらに、前記演算手段によって求められた各時相における運動情報を時相ごとにその都度、前記表示手段に表示させる表示制御手段と、
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記画像取得手段は、前記被検体を超音波で走査することで、前記超音波画像データとして、時相ごとに断層像データを取得し、
前記輪郭追跡手段は、前記所定時相に取得された断層像データに基づく断層像に対する前記特定の組織の2次元的な輪郭の指定を受け付け、前記各時相に取得された前記断層像データにおける前記指定された2次元的な輪郭を構成する各点の位置を時相ごとにパターンマッチングによって求め、
前記演算手段は、前記各時相の2次元的な輪郭を構成する各点の位置に基づいて、前記各時相における前記特定の組織の運動状態を表す運動情報を求めることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記被検体の心拍情報を受けて、前記所定時相に取得された断層像データに基づく初期輪郭設定用の断層像を、1心拍以上の時間の間隔で更新して前記表示手段に表示させ、
前記初期輪郭設定用の断層像上で前記特定の組織の2次元的な輪郭が指定されると、前記輪郭追跡手段は、その指定を受け付け、前記各時相に取得された前記断層像データにおける前記指定された2次元的な輪郭を構成する各点の位置を時相ごとにパターンマッチングによって求めることを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
画像生成手段と補間手段を更に有し、
前記画像取得手段は、前記被検体を超音波で走査することで、前記超音波画像データとして、時相ごとにボリュームデータを取得し、
前記画像生成手段は、前記所定時相に取得されたボリュームデータに基づいて、複数の異なる断面に沿った断層像データをそれぞれの断面ごとに求め、
前記補間手段は、前記所定時相における複数の断層像データに基づく断層像のそれぞれに対する前記特定の組織の2次元的な輪郭の指定を受け付け、各断面における2次元的な輪郭の位置の間を補間することで、前記組織の3次元的な輪郭を求め、
前記輪郭追跡手段は、前記各時相に取得された前記ボリュームデータにおける前記補間によって求められた3次元的な輪郭を構成する各点の位置を時相ごとにパターンマッチングによって求め、
前記演算手段は、前記各時相の3次元的な輪郭を構成する各点の位置に基づいて、前記各時相における前記特定の組織の運動状態を表す運動情報を求めることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記被検体の心拍情報を受けて、前記所定時相に取得された断層像データに基づく初期輪郭設定用の断層像を、1心拍以上の時間の間隔で更新して前記表示手段に表示させ、
前記更新された複数の初期輪郭設定用の断層像上で前記特定の組織の2次元的な輪郭が指定されると、前記補間手段は、その指定を受け付け、前記各断面における2次元的な輪郭の位置の間を補間することで、前記組織の3次元的な輪郭を求めることを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は、前記各時相に取得された断層像データに基づく断層像を時相ごとに前記表示手段に表示させ、さらにその断層像と並べて、前記所定時相に取得された断層像データに基づく初期輪郭設定用の断層像を、前記1心拍以上の時間の間隔で更新して前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項3又は請求項5のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記表示制御手段は、前記各時相に取得された断層像データに基づく断層像を時相ごとに前記表示手段に表示させ、所定のタイミングで、その断層像に代えて、前記所定時相に取得された断層像データに基づく初期輪郭設定用の断層像を、前記1心拍以上の時間の間隔で更新して前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項3又は請求項5のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項8】
被検体を超音波で走査することで時相ごとに取得された超音波画像データを受け付け、所定時相に取得された超音波画像データに基づく超音波画像に対する特定の組織の輪郭の指定を受け付け、各時相に取得された前記超音波画像データにおける前記指定された輪郭を構成する各点の位置を時相ごとにパターンマッチングによって求める輪郭追跡手段と、
前記各時相の輪郭を構成する各点の位置に基づいて、前記各時相における前記特定の組織の運動状態を表す運動情報を求める演算手段と、
前記各時相に取得された超音波画像データに基づく超音波画像を時相ごとに表示手段に表示させ、さらに、前記演算手段によって求められた各時相における運動情報を時相ごとにその都度、前記表示手段に表示させる表示制御手段と、
を有することを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項9】
コンピュータに、
被検体を超音波で走査することで時相ごとに取得された超音波画像データを受け付け、所定時相に取得された超音波画像データに基づく超音波画像に対する特定の組織の輪郭の指定を受け付け、各時相に取得された前記超音波画像データにおける前記指定された輪郭を構成する各点の位置を時相ごとにパターンマッチングによって求める輪郭追跡機能と、
前記各時相の輪郭を構成する各点の位置に基づいて、前記各時相における前記特定の組織の運動状態を表す運動情報を求める演算機能と、
前記各時相に取得された超音波画像データに基づく超音波画像を時相ごとに表示装置に表示させ、さらに、前記演算機能によって求められた各時相における運動情報を時相ごとにその都度、前記表示装置に表示させる表示制御機能と、
を実行させることを特徴とする超音波画像処理プログラム。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−152601(P2012−152601A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−115193(P2012−115193)
【出願日】平成24年5月21日(2012.5.21)
【分割の表示】特願2007−149996(P2007−149996)の分割
【原出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】