説明

超音波診断装置および超音波画像生成方法

【課題】小さな被検体であっても、操作者が画像の表示方法を再設定する等の操作負担をおうことなく、精度よく被検体内を診断できる超音波診断装置および超音波画像生成方法を提供する。
【解決手段】体表検知部14により、Bモード画像の深さ方向において、超音波プローブ1と接する被検体の体表とは反対側の被検体の体表を検知し、検知された反対側の被検体の体表より浅い領域からの受信データのみを受信回路5で取得するとともに、体表検知部14により検知された反対側の体表までの深さがBモード画像の最大深さにほぼ対応するような画像を画像生成部17で生成し、表示部11に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波診断装置および超音波画像生成方法に係り、特に、超音波プローブの振動子アレイから超音波を送受信することにより生成された超音波画像に基づいて診断を行う超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、振動子アレイを内蔵した超音波プローブと、この超音波プローブに接続された装置本体とを有しており、超音波プローブから被検体に向けて超音波を送信し、被検体からの超音波エコーを超音波プローブで受信して、その受信信号を装置本体で電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
このような超音波診断装置では、被検体内の診断部位をより精度よく診断するために、画面に表示される超音波画像を最適化して表示することが行われている。
例えば、特許文献1には、画面全体に被検体内が表示されたBモード画像上のROI(Region Of Interest)の位置やサイズを変更した際、画面に変更後のROIの位置やサイズに応じた最適な画像を表示することが記載されている。具体的には、ROIの位置やサイズを変更した際、変更後のROIの最大深さに所定の空間を加えた深さが表示画面の最大深さとなるように調整された画像を画面に表示することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−116850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置は、被検体がイヌ及びネコ等のような小動物である時、被検体自体が画面内に全て含まれてしまうとともに被検体内の各部位が画面に小さく表示されてしまうため、各部位の詳細な診断が精度よくできないおそれがある。また、さらに、このような場合、操作者は、診断部位が画面に適切に表示されるように画像の表示方法を設定し直さなければならない。
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、被検体が小さな形態のものであっても、操作者が画像の表示方法の再設定を行う必要がなく、精度よく被検体内を診断できる超音波診断装置および超音波画像生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る超音波診断装置は、超音波プローブの振動子アレイから被検体へ向けて超音波ビームの送信をすると共に被検体による超音波エコーを受信した振動子アレイから出力された受信信号を受信回路で処理することで得られる受信データに基づいてBモード画像を画像生成部で生成する超音波診断装置であって、Bモード画像の深さ方向において、超音波プローブと接する被検体の体表とは反対側の体表を検知する体表検知部と、体表検知部により検知された反対側の体表より浅い領域からの受信データのみを取得するように受信回路を制御するとともに、体表検知部により検知された反対側の体表の深さがBモード画像の最大深さにほぼ対応するような画像を生成するように画像生成部を制御する制御手段とを備えたものである。
【0007】
体表検知部は、Bモード画像の深さ方向において、空気層を検出することにより、被検体の反対側の体表を検知することが好ましい。
制御手段は、前記Bモード画像が所定のコントラスト及び明るさを有するように、前記画像生成部により前記Bモード画像の濃度を補正する、および/または、前記受信回路に設定された音速値を補正することができる。
【0008】
この発明に係る超音波画像生成方法は、超音波プローブの振動子アレイから被検体へ向けて超音波ビームの送信をすると共に被検体による超音波エコーを受信した振動子アレイから出力された受信信号を受信回路で処理することで得られる受信データに基づいてBモード画像を生成する超音波診断方法であって、Bモード画像の深さ方向において、超音波プローブと接する被検体の体表とは反対側の被検体の体表を検知し、検知された反対側の被検体の体表より浅い領域からの受信データのみを取得するとともに、検知された反対側の体表の深さがBモード画像の最大深さにほぼ対応するような画像を生成する方法である。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、小さな被検体であっても、操作者は、画像の表示方法の再設定等の操作をすることなく、精度よく被検体内の各部位を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明における一実施の形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】体表検知部の動作の説明のために示されたBモード画像の一例を示す図である。
【図3】最大深さを被検体の反対側の体表に一致させたBモード画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、この発明の一実施の形態に係る超音波診断装置の構成を示す。超音波診断装置は、超音波プローブ1と、この超音波プローブ1に接続された診断装置本体2とを備えている。
超音波プローブ1は、複数の超音波トランスデューサが一次元配列された振動子アレイ3を有しており、この振動子アレイ3に送信回路4と受信回路5が接続され、これら送信回路4および受信回路5にプローブ制御部6が接続されている。
【0012】
診断装置本体2は、超音波プローブ1の受信回路5に接続された信号処理部7を有し、この信号処理部7にDSC(Digital Scan Converter)8、画像処理部9、表示制御部10および表示部11が順次接続され、画像処理部9に画像メモリ12が接続されるとともに体表検知部14が接続されている。そして、信号処理部7、DSC8、画像処理部9、表示制御部10および体表検知部14に本体制御部13が接続されている。さらに、本体制御部13には、操作部15および格納部16がそれぞれ接続されている。
また、超音波プローブ1のプローブ制御部6と診断装置本体2の本体制御部13が互いに接続されている。
【0013】
超音波プローブ1の振動子アレイ3は、一次元又は二次元に配列された複数の超音波トランスデューサを有している。これらの超音波トランスデューサは、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子、PMN−PT(マグネシウムニオブ酸・チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
そのような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0014】
送信回路4は、例えば、複数のパルサを含んでおり、プローブ制御部6からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、振動子アレイ3の複数の超音波トランスデューサから送信される超音波が超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号の遅延量を調節して複数の超音波トランスデューサに供給する。
受信回路5は、振動子アレイ3の各超音波トランスデューサから送信される受信信号を増幅してA/D変換した後、プローブ制御部6からの制御信号に応じて選択された受信遅延パターンに基づいて設定される音速または音速の分布に従い、各受信信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれた受信データ(音線信号)が生成される。
これら送信回路4および受信回路5により、この発明の送受信回路が構成されている。
【0015】
プローブ制御部6は、診断装置本体2の本体制御部13から送信される各種の制御信号に基づいて、超音波プローブ1の各部の制御を行う。
【0016】
診断装置本体2の信号処理部7は、超音波プローブ1の受信回路5で生成された受信データに対し、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施すことにより、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。
DSC8は、信号処理部7で生成されたBモード画像信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)する。
画像処理部9は、DSC8から入力されるBモード画像信号に階調処理等の各種の必要な画像処理を施した後、Bモード画像信号を表示制御部10に出力する、あるいは画像メモリ12に格納する。
これら信号処理部7、DSC8、画像処理部9および画像メモリ12により画像生成部17が形成されている。
【0017】
表示制御部10は、画像処理部9によって画像処理が施されたBモード画像信号に基づいて、表示部11に超音波診断画像を表示させる。
表示部11は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部10の制御の下で、超音波診断画像を表示する。
【0018】
体表検知部14は、画像処理部9によって画像処理が施されたBモード画像信号に基づいて、Bモード画像の深さ方向において、超音波プローブ1と接する被検体の体表とは反対側の体表を検知する。
【0019】
本体制御部13は、操作者により操作部15から入力された指令に基づいて超音波診断装置各部の制御を行う。また、本体制御部13は、画像生成部17を制御し、体表検知部14により検知された被検体の反対側の体表がBモード画像の最大深さの位置となるような画像を形成する。
【0020】
操作部15は、操作者が入力操作を行うためのもので、この発明の関心領域設定部を構成し、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネル等から形成することができる。
格納部16は、動作プログラム等を格納するもので、ハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROM、DVD−ROM等の記録媒体を用いることができる。
なお、信号処理部7、DSC8、画像処理部9、表示制御部10、本体制御部13および体表検知部14は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0021】
ここで、図2を参照して、体表検知部13が、Bモード画像の深さ方向において、超音波プローブ1と接する被検体の体表とは反対側の被検体の体表を検知する動作について説明する。
図2は、被検体として小動物を診察台の上に載せ、超音波プローブ1の振動子アレイ3を被検体へ向けて撮像したBモード画像であり、このBモード画像内には、被検体が小さいため被検体の体内を示す領域18とともに、超音波プローブ1と接する被検体の体表とは反対側の体表19と、被検体が配置される診察台20との間にできる空気層21が表示されている。
体表検知部13は、Bモード画像から空気層21を検出し、空気層21の浅部側輪郭を被検体の反対側の体表19として検出する。
【0022】
次に、この発明の一実施の形態の動作を説明する。
Bモード画像の表示は、まず、送信回路4から供給される駆動信号に従って振動子アレイ3の複数の超音波トランスデューサから超音波が送信され、被検体からの超音波エコーを受信した各超音波トランスデューサから受信信号が受信回路5に出力され、受信回路5で受信データが生成される。さらに、この受信データを入力した信号処理部7でBモード画像信号が生成され、DSC8でBモード画像信号がラスター変換されると共に画像処理部9でBモード画像信号に各種の画像処理が施された後、このBモード画像信号に基づいて表示制御部10によりBモード画像が表示部11に表示される。
【0023】
このようなBモード画像の生成において、図2に示されるような画像、すなわち、被検体の体内を示す領域18とともに、超音波プローブ1と接する被検体の体表とは反対側の体表19に沿った空気層21を含む画像が生成された場合、診断装置本体2の体表検知部14により空気層21が検出され、さらに空気層21の浅部側輪郭が被検体の反対側の体表19として検知される。本体制御部13は、超音波プローブ1から体表検知部14により検知された体表19までの深さD1を算出し、その値をプローブ制御部6へ出力する。深さD1が入力されたプローブ制御部6は、受信回路5を制御し、体表検知部14により検知された反対側の体表19より浅い領域からの受信データのみを取得する。
【0024】
この体表検知部14により検知された反対側の体表19より浅い領域から取得された受信データは、信号処理部7およびDSC8を介してBモード画像信号に変換され、画像処理部9へ送られる。このBモード画像信号は、画像処理部9で表示部11に表示されるBモード画像の最大深さと体表検知部14により検知された被検体の体表19とが一致するような画像処理が施された後、表示制御部10により、被検体の体内を示す領域18の深さD1が、図3に示されるように、Bモード画像の最大深さと同じ深さD2になるように拡大された超音波診断画像が表示部11に表示される。
【0025】
このように、体表検知部14により、Bモード画像の深さ方向において、超音波プローブ1と接する被検体の体表とは反対側の被検体の体表19を検知し、検知された反対側の被検体の体表19より浅い領域から受信データのみを受信回路5で取得するとともに、検知された反対側の被検体の体表19がBモード画像の最大深さD2と一致する画像を画像生成部17で生成し、表示部11に表示することができる。
このため、被検体がイヌ及びネコ等のような小動物のようなものであっても、操作者は、画面に小さく表示される被検体内の各診断部位を診断しやすい大きさの画像表示に設定し直すといった操作を行う必要がない。また、画面の最大深さD2に合わせて取得した受信データに基づく部位を拡大して表示することができるため、操作者は、拡大表示された診断部位に基づいて詳細な診断を行うことができる。
【0026】
なお、本体制御部13は、被検体の反対側の体表19がBモード画像の最大深さD2の位置となるような画像を形成するとともに、画像処理部9を介して、Bモード画像全体が所定のコントラスト及び明るさを有するように画像を補正することもできる。このようにすれば、被検体が小動物であっても、各部位をより精細に表示することができるため、さらに詳細な観察及び診断をすることができる。
【0027】
また、本体制御部13は、被検体の反対側の体表19がBモード画像の最大深さD2となるような画像を形成するとともに、Bモード画像のにじみや輪郭のぼけをなくすために、受信回路5に設定されている音速値を補正することもできる。このようにすれば、画像のぼけをなくし所定のコントラスト及び明るさを形成することができるため、非常に鮮明な画像を表示させることができる。
【0028】
上記実施の形態においては、体表検知部13が空気層21を検出することにより超音波プローブ1と接する被検体の体表とは反対側の体表19を検知したが、これに限定されることはなく、例えば、被検体の反対側の体表19そのものを検知するものであってもよい。
【0029】
上記実施の形態においては、本体制御部13が、体表検知部14により検知された反対側の体表の深さがBモード画像の最大深さと一致するような画像を生成するように画像生成部17を制御したが、これに限定されることはなく、体表検知部14により検知された被検体の反対側の体表19がBモード画像の最大深さとほぼ対応するような画像が生成されるように画像生成部17を制御してもよい。例えば、Bモード画像の最大深さが、被検体の体内を示す領域の深さの1.1倍の深さである画像、または、Bモード画像の最大深さが、被検体の体内を示す領域の深さにBモード画像の最大深さの10%にあたる長さを加えた深さである画像等を生成することができる。
このようにすれば、被検体の体内を示す領域の深さとBモード画像の最大深さとの間に所定のスペースをもった画像が表示部10に表示されるので、被検体が操作者にとって見えやすく、操作者は容易に被検体を把握することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 超音波プローブ、2 診断装置本体、3 振動子アレイ、4 送信回路、5 受信回路、6 プローブ制御部、7 信号処理部、8 DSC、9 画像処理部、10 表示制御部、11 表示部、12 画像メモリ、13 本体制御部、14 体表検知部、 15 操作部、16 格納部、17 画像生成部、18 被検体の体内、19 被検体の体表、20 診察台、21 空気層、D1、D2 深さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブの振動子アレイから被検体へ向けて超音波ビームの送信をすると共に前記被検体による超音波エコーを受信した前記振動子アレイから出力された受信信号を受信回路で処理することで得られる受信データに基づいてBモード画像を画像生成部で生成する超音波診断装置であって、
前記Bモード画像の深さ方向において、前記超音波プローブと接する前記被検体の体表とは反対側の体表を検知する体表検知部と、
前記体表検知部により検知された前記反対側の体表より浅い領域からの前記受信データのみを取得するように前記受信回路を制御するとともに、前記体表検知部により検知された前記反対側の体表の深さが前記Bモード画像の最大深さにほぼ対応するような画像を生成するように前記画像生成部を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記体表検知部は、前記Bモード画像の深さ方向において、空気層を検出することにより、前記被検体の反対側の体表を検知する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記Bモード画像が所定のコントラスト及び明るさを有するように、前記画像生成部により前記Bモード画像の濃度を補正する、および/または、前記受信回路に設定された音速値を補正する請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
超音波プローブの振動子アレイから被検体へ向けて超音波ビームの送信をすると共に前記被検体による超音波エコーを受信した前記振動子アレイから出力された受信信号を受信回路で処理することで得られる受信データに基づいてBモード画像を生成する超音波診断方法であって、
前記Bモード画像の深さ方向において、前記超音波プローブと接する前記被検体の体表とは反対側の前記被検体の体表を検知し、
検知された前記反対側の被検体の体表より浅い領域からの前記受信データのみを取得するとともに、前記検知された前記反対側の体表の深さが前記Bモード画像の最大深さにほぼ対応するような画像を生成する超音波画像生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−196413(P2012−196413A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64203(P2011−64203)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】