説明

超音波診断装置及び信号処理プログラム

【課題】メカニカルラジアル走査方式の体腔内観察用超音波プローブを用いる超音波診断装置において、フレキシブルシャフトの回転ムラの影響を低減することにより、設定されるROIやゲート位置に対して安定したドプラモード画像を生成する。
【解決手段】超音波診断装置は、超音波トランスデューサから出力される受信信号に対して直交検波処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成する信号処理手段と、複数のラインに沿って受信される超音波エコーに基づいて生成される少なくとも2フレーム分の複素ベースバンド信号を格納するメモリと、複素ベースバンド信号に基づいて、複数のラインの内からフレーム毎に1つのラインを選択するライン選択手段と、ライン選択手段によって選択されるラインを基準として、複素ベースバンド信号に基づいて血流に関する情報を表す画像信号を生成する画像信号生成手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メカニカルラジアル走査方式の体腔内観察用超音波プローブを用いる超音波診断装置、及び、そのような超音波診断装置において用いられる信号処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、被検体の内部を観察して診断を行うために、様々な撮像技術が開発されている。特に、超音波を送受信することによって被検体の内部情報を取得する超音波撮像は、リアルタイムで画像観察を行うことができる上に、X線写真やRI(radio isotope)シンチレーションカメラ等の他の医用画像技術と異なり、放射線による被曝がない。そのため、超音波撮像は、安全性の高い撮像技術として、産科領域における胎児診断の他、婦人科系、循環器系、消化器系等を含む幅広い領域において利用されている。
【0003】
超音波撮像の原理は、次のようなものである。超音波は、被検体内における構造物の境界のように、音響インピーダンスが異なる領域の境界において反射される。そこで、超音波ビームを人体等の被検体内に送信し、被検体内において生じた超音波エコーを受信して、超音波エコーが生じた反射位置や反射強度を求めることにより、被検体内に存在する構造物(例えば、内臓や病変組織等)の輪郭を抽出することができる。
【0004】
また、体腔内において超音波を用いた走査を行うことにより超音波診断画像を得る超音波内視鏡が、従来から提案されている。超音波内視鏡においては、従来のメカニカル走査方式に対して、近年では電子走査方式が提案されている。電子走査方式は、メカニカル走査方式と比較して、自由度の高い走査を行うことができるので、B(ブライトネス)モード以外に、ドプラモード(CF(カラーフロー)モード、及び、PW(パルスウエイブ)モードを含む)が実現可能であり、主流となりつつある。
【0005】
ここで、Bモードとは、超音波エコーの振幅を輝度に変換して2次元断層画像を表示するモードのことである。また、CFモードとは、平均血流速度、フロー変動、フロー信号の強さ、又は、フローパワー等を様々な色にマッピングしてBモード画像に重ねて表示するモードのことであり、PWモードとは、パルス波の送受信に基づいて検出される超音波エコー源の速度を表示するモードのことである。
【0006】
さらに、超音波内視鏡に類似した機器として、内視鏡の鉗子孔に挿入される超音波プローブがあるが、この超音波プローブは径が細いので、メカニカルラジアル走査方式のみが実現されている。メカニカルラジアル走査方式においては、超音波トランスデューサを回転させるフレキシブルシャフトの回転ムラ(ジッタ)に起因して、表示画像が回転してしまうことがしばしば起こる。特に、ドプラモードにおいては、設定されるROI(関心領域)やゲート位置に対して表示画像(被写体)が回転し、本来観察したい領域が視野から外れてしまうという問題があった。
【0007】
関連する技術として、特許文献1には、低コストかつ短時間(リアルタイム)に心臓血管(冠状血管)内の定量的な画像診断を行うことができる装置が開示されている。この装置は、血管内に挿入したカテーテルに設置した超音波プローブから照射される超音波ビームの反射波(超音波エコー)に基づいて血管断面画像を得る装置であって、(1)超音波プローブを回転させながら血管壁全周に超音波ビームを照射し、血管壁からの超音波エコーを観測し、照射超音波ビームの周波数と超音波エコーの周波数の差すなわちドプラ効果によって生じる偏移変化量であるドプラ偏移周波数を解析する手段と、(2)ドプラ偏移周波数の内、拍動の影響によるカテーテル中心の移動に依拠するドプラ偏移周波数を取り除くために、ある照射方向のドプラ偏移周波数ならびにそれと180度の方向から観測されたドプラ偏移周波数を足し合わすことによって、カテーテル中心の移動の影響を除去し、血管壁からのドプラ偏移周波数のみを取り扱う手段と、(3)血管壁によるドプラ偏移周波数を基に血管の断面画像を計算するために、超音波周波数をA/D変換によりディジタル化してコンピュータ画像情報処理装置で解析を行い、血管壁の構造を画像表示する手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
即ち、特許文献1には、ドプラモードにおいて、ドプラ偏移量を観察する際に、超音波プローブ中心位置の変動をキャンセルする手法が提案されているが、この手法は、観察領域が回転してしまう場合に対応することができない。
【0009】
また、特許文献2には、超音波断層像の視野を狭めることなく、また画像ずれが生じても画像が回転してしまうことなく画像データを得ることができ、これによって構築される3次元画像を歪みの生じない正確な画像とすることができる超音波画像診断装置が開示されている。この超音波画像診断装置は、連続した複数の超音波断層像からなる3次元画像データを得る超音波プローブを有する超音波画像診断装置であって、上記複数の超音波断層像の内、第1の超音波断層像に回転処理を施す回転手段と、この回転手段により回転処理が施された上記第1の超音波断層像と上記複数の超音波断層像の内の第2の超音波断層像との相関演算を行って相関値を出力する相関演算手段とを設け、上記回転手段が、上記相関演算手段によって演算された相関値の最も高い角度で上記第1の超音波断層像に対して再び回転処理を施すことを特徴とする。
【0010】
特許文献2の超音波画像診断装置は、Bモード画像の3次元表示において、連続する複数の画像を表す画像データの相関値から回転量を求め、角度ずれを補正する極座標変換を行うことにより補正された3次元画像を得るものであるが、リアルタイム性が要求されるドプラモードについては全く考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−270149号公報(第4頁、図8)
【特許文献2】特開平10−248844号公報(第3頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、内視鏡の鉗子孔に挿入される超音波プローブのようなメカニカルラジアル走査方式の体腔内観察用超音波プローブを用いる超音波診断装置において、フレキシブルシャフトの回転ムラ(ジッタ)の影響を低減することにより、設定されるROIやゲート位置に対して安定したドプラモード画像を生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る超音波診断装置は、超音波を送受信する超音波トランスデューサを含むメカニカルラジアル走査方式の体腔内観察用超音波プローブを用いる超音波診断装置であって、超音波トランスデューサから出力される受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成する信号処理手段と、超音波トランスデューサが回転する際に複数のラインに沿って受信される超音波エコーに基づいて生成される少なくとも2フレーム分の複素ベースバンド信号を格納するメモリと、メモリに格納されている複素ベースバンド信号に基づいて、複数のラインの内からフレーム毎に1つのラインを選択するライン選択手段と、ライン選択手段によってフレーム毎に選択されるラインを基準として、複素ベースバンド信号に基づいて血流に関する情報を表す画像信号を生成する画像信号生成手段とを具備する。
【0014】
また、本発明の1つの観点に係る信号処理プログラムは、超音波を送受信する超音波トランスデューサを含むメカニカルラジアル走査方式の体腔内観察用超音波プローブを用いる超音波診断装置において、超音波トランスデューサから出力される受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより生成される複素ベースバンド信号を処理するための信号処理プログラムであって、超音波トランスデューサが回転する際に複数のラインに沿って受信される超音波エコーに基づいて生成される少なくとも2フレーム分の複素ベースバンド信号に基づいて、第1のフレームにおいて、あるラインを選択した場合に、第1のフレームに続く第2のフレームにおいて、第1のフレームにおいて選択されたラインに対応する複素ベースバンド信号と最も相関が高い複素ベースバンド信号に対応するラインを選択する手順(a)と、手順(a)においてフレーム毎に選択されるラインを基準として、複素ベースバンド信号に基づいて血流に関する情報を表す画像信号を生成する手順(b)とをCPUに実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の1つの観点によれば、メモリに格納されている複素ベースバンド信号に基づいてフレーム毎に選択される1つのラインを基準として、複素ベースバンド信号に基づいて血流に関する情報を表す画像信号を生成することにより、フレキシブルシャフトの回転ムラ(ジッタ)の影響を低減して、設定されるROIやゲート位置に対して安定したドプラモード画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す超音波診断装置の信号処理手段の第1の構成例を示す図である。
【図3A】図2に示すADCによるサンプリングとサンプリング部によるサンプリングとを比較して示す波形図である。
【図3B】図2に示すADCによるサンプリングとサンプリング部によるサンプリングとを比較して示す波形図である。
【図4】図1に示す超音波診断装置の信号処理手段の第2の構成例を示す図である。
【図5】図4に示す直交サンプリング部の動作を説明するための波形図である。
【図6】図1に示す超音波診断装置のBモードにおける動作を示すタイミングチャートである。
【図7】図1に示す超音波診断装置のライン選択部の動作を説明するための図である。
【図8】図1に示す超音波診断装置のライン選択部の動作を示すフローチャートである。
【図9】CFモードにおけるROIの設定を説明するための図である。
【図10】図1に示す超音波診断画像におけるジッタの低減を説明するための図である。
【図11】図1に示す超音波診断装置のCFモード画像信号生成部の動作を説明するための図である。
【図12】図1に示す超音波診断装置のCFモード画像信号生成部の動作を示すフローチャートである。
【図13】PWモードにおけるROIの設定を説明するための図である。
【図14】図1に示す超音波診断装置のPWモードにおける動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、この超音波診断装置は、超音波プローブ1と、超音波診断装置本体2と、表示部3と、操作卓4とによって構成される。
【0018】
超音波プローブ1は、メカニカルラジアル走査方式の体腔内観察用超音波プローブであり、本実施形態においては、内視鏡の鉗子孔に挿入される超音波プローブを例として説明する。図1に示すように、超音波プローブ1は、超音波トランスデューサ10と、回転伝達ケーブル11と、保護カバー12と、支持部13と、駆動モータ14と、コネクタ部15とを含んでいる。
【0019】
超音波トランスデューサ10は、印加される駆動信号に従って超音波を送信すると共に、伝搬する超音波エコーを受信して受信信号を出力する。超音波トランスデューサ10は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb(lead) zirconate titanate)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン:polyvinylidene difluoride)に代表される高分子圧電素子等の圧電性を有する材料(圧電体)の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
【0020】
そのような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮する。この伸縮により、振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生する。また、振動子は、伝搬する超音波を受信することによって伸縮し、電気信号を発生する。その電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0021】
回転伝達ケーブル11は、フレキシブルシャフトを含み、駆動モータ14によって発生する回転力を超音波トランスデューサ10に伝達する。また、回転伝達ケーブル11は、超音波診断装置本体2において生成される駆動信号を超音波トランスデューサ10に伝送し、超音波トランスデューサ10から出力される受信信号を超音波診断装置本体2に伝送する。超音波トランスデューサ10及び回転伝達ケーブル11をカバーして保護する保護カバー12の一端は、支持部13によって支持されており、他端は、内視鏡の鉗子孔に挿入される。
【0022】
駆動モータ14は、回転速度及び停止位置が制御可能なモータであり、超音波診断装置本体2から供給される制御信号に従って超音波トランスデューサ10を回転させ、1回転に付き1つのパルス(Z相信号)を出力する。コネクタ部15は、超音波プローブ1を超音波診断装置本体2に取り付けるために使用される。
【0023】
超音波診断装置本体2は、送信部20と、受信部21と、直交検波処理部22と、IQメモリ23と、ライン選択部24と、画像信号生成部25と、DSC部26と、制御部27と、格納部28と、モータ制御部29とを含んでいる。送信部20は、例えば、パルサによって構成されており、高圧パルスの駆動信号を生成し、生成された駆動信号を超音波トランスデューサ10に供給する。
【0024】
受信部21は、プリアンプを含み、超音波トランスデューサ10から出力される受信信号(RF信号)を増幅する。直交検波処理部22は、受信部21から出力される受信信号に対して直交検波処理等を施すことにより、複素ベースバンド信号(I信号及びQ信号)を生成する。ここで、受信部21及び直交検波処理部22は、超音波トランスデューサ10から出力される受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成する信号処理手段に該当する。
【0025】
図2は、図1に示す超音波診断装置の信号処理手段の第1の構成例を示す図である。図2に示すように、信号処理手段は、受信部21と、ローパスフィルタ(LPF)22aと、アナログ/ディジタル変換器(ADC)22bと、ミキサ(掛算器)22c及び22dと、ローパスフィルタ(LPF)22e及び22fと、サンプリング部22g及び22hとを含んでいる。
【0026】
LPF22aは、受信部21から出力される受信信号の帯域を制限することにより、A/D変換におけるエリアジングを防止する。ADC22bは、LPF22aから出力されるアナログの受信信号をディジタルの受信信号に変換する。ADC22bによって生成されるディジタルの受信信号は、ミキサ22c及び22dに入力される。
【0027】
ミキサ22cが、ADC22bによってディジタル信号に変換された受信信号に局部発振信号cosωtを掛け合わせて、LPF22eが、ミキサ22cから出力される信号にローパスフィルタ処理を施すことにより、実数成分を表すI信号が生成される。一方、ミキサ22dが、ADC22bによってディジタル信号に変換された受信信号に位相をπ/2だけ回転させた局部発振信号sinωtを掛け合わせて、LPF22fが、ミキサ22dから出力される信号にローパスフィルタ処理を施すことにより、虚数成分を表すQ信号が生成される。
【0028】
サンプリング部22g及び22hは、I信号及びQ信号をそれぞれサンプリング(再サンプリング)する。サンプリングされたI信号及びQ信号は、IQメモリ23に供給される。本実施形態においては、受信信号に対して直交検波処理等を施して受信信号の周波数帯域をベースバンド周波数帯域に落としてからIQメモリ23に格納することにより、メモリ容量を低減させている。
【0029】
図3A及び図3Bは、図2に示すADCによるサンプリングとサンプリング部によるサンプリングとを比較して示す波形図である。図3Aは、3つのチャンネルCh.1〜Ch.3について、ADC22bによるサンプリングを示しており、図3Bは、3つのチャンネルCh.1〜Ch.3について、サンプリング部22gによるサンプリングを示している。図3Aに示すようにRF信号をサンプリングしてサンプルデータを伝送する場合と比較して、図3Bに示すようにベースバンド信号をサンプリングすることにより、データ量を大幅に低減することができる。
【0030】
図4は、図1に示す超音波診断装置の信号処理手段の第2の構成例を示す図である。図4に示す第2の構成例においては、図2に示す第1の構成例におけるミキサ22c及び22dの替わりに直交サンプリング部22iが設けられ、サンプリング部22g及び22hの替わりに時分割サンプリング部22jが設けられている。
【0031】
図5は、図4に示す直交サンプリング部の動作を説明するための波形図である。直交サンプリング部22iは、ADC22bによってディジタル信号に変換された受信信号をcosωtの位相に同期してサンプリングして第1の信号系列を生成すると共に、受信信号をsinωtの位相に同期してサンプリングして第2の信号系列を生成する。
【0032】
再び図4を参照すると、LPF22eが、直交サンプリング部22iから出力される第1の信号系列にローパスフィルタ処理を施すことにより、実数成分を表すI信号が生成され、LPF22fが、直交サンプリング部22iから出力される第2の信号系列にローパスフィルタ処理を施すことにより、虚数成分を表すQ信号が生成される。これにより、図2に示すミキサ22c及び22dを省略することができる。
【0033】
時分割サンプリング部22jは、I信号及びQ信号を交互に時分割でサンプリング(再サンプリング)する。例えば、時分割サンプリング部22jは、I信号をcosωtの位相に同期してサンプリングし、Q信号をsinωtの位相に同期してサンプリングする。サンプリングされたI信号及びQ信号は、IQメモリ23に供給される。
【0034】
以上において、ミキサ22c及び22d、LPF22e及び22f、サンプリング部22g及び22h、直交サンプリング部22i、及び、時分割サンプリング部22jは、ディジタル回路によって構成しても良いし、中央演算装置(CPU)と、CPUに各種の処理を行わせるためのソフトウェア(プログラム)とによって構成しても良い。あるいは、ミキサ22c及び22d、及び、LPF22e及び22fをアナログ回路によって構成することにより、ADC22bを省略しても良い。その場合には、サンプリング部22g及び22h、又は、時分割サンプリング部22jによって、複素ベースバンド信号のA/D変換が行われる。
【0035】
再び図1を参照すると、IQメモリ23は、超音波トランスデューサ10が回転する際に複数のラインに沿って受信される超音波エコーに基づいて連続的に生成される複素ベースバンド信号(I信号及びQ信号)を、ライン番号に対応付けて、少なくとも2フレーム単位で順次格納する。ライン選択部24は、IQメモリ23に格納されている複素ベースバンド信号に基づいて、複数のラインの内からフレーム毎に1つのラインを選択する。
【0036】
画像信号生成部25は、Bモード画像信号生成部25aと、CFモード画像信号生成部25bと、PWモード画像信号生成部25cとを含んでいる。Bモード画像信号生成部25aは、ライン選択部24によってフレーム毎に選択されるラインを基準として、IQメモリ23から読み出された複数のラインに対応する複素ベースバンド信号に対して対数圧縮や振幅演算等の処理を施すことにより、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像を表す画像信号を生成する。
【0037】
CFモード画像信号生成部25bは、ライン選択部24によってフレーム毎に選択されるラインを基準として、IQメモリ23から読み出された複数のラインに対応する複素ベースバンド信号に対して自己相関処理を施すことにより、血流に関する情報を表す画像信号を生成し、これをBモード画像信号生成部25aによって生成されるBモード画像信号に重畳することにより、血流に関する情報をカラー画像としてBモード画像に重ねて表示するCFモード画像を表す画像信号を生成する。
【0038】
PWモード画像信号生成部25cは、ライン選択部24によってフレーム毎に選択されるラインを基準として、IQメモリ23から読み出された当該ラインに対応する複素ベースバンド信号に対してFFT(高速フーリエ変換)処理を施すことにより、パルス波の送受信に基づいて検出される血流の速度を表示するPWモード画像を表す画像信号を生成する。なお、CFモード及びPWモードの各々は、ドプラ現象を利用して血流に関する情報(移動状態や移動速度等)を得るドプラモードの一形態である。
【0039】
DSC部26は、画像信号生成部25によって生成された画像信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に座標変換(ラスター変換)し、補間処理等の必要な画像処理やD/A変換を施すことにより、表示用の画像信号を生成する。表示部3は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、DSC部26によって生成された表示用の画像信号に基づいて超音波診断画像を表示する。
【0040】
制御部27は、操作卓4を用いたオペレータの操作に従って、超音波診断装置本体2の各部を制御する。また、制御部27は、超音波トランスデューサ10の回転速度を指定するスピード指定信号、超音波トランスデューサ10の停止位置を指定する停止位置指定信号、及び、ライブモードとフリーズモードとを切り換えるライブ/フリーズ信号を、モータ制御部29に供給する。ここで、ライブモードとは、超音波の送受信を行うことによって順次得られる受信信号に基づいて動画像を表示するモードのことであり、フリーズモードとは、メモリ等に格納されている複素ベースバンド信号又は画像信号に基づいて静止画像を表示するモードのことである。
【0041】
モータ制御部29は、制御部27の制御の下で制御信号を駆動モータ14に供給することにより、超音波トランスデューサ10の回転速度及び停止位置を制御する。また、モータ制御部29は、撮像動作の開始を表すスタート信号を送信部20や受信部21等に供給する。
【0042】
本実施形態においては、ライン選択部24、画像信号生成部25、DSC部26、制御部27、及び、モータ制御部29が、中央演算装置(CPU)と、CPUに各種の処理を行わせるためのソフトウェア(プログラム)とによって構成されるが、それらをディジタル回路で構成しても良い。上記のソフトウェア(プログラム)は、格納部28に格納される。格納部28における記録媒体としては、内蔵のハードディスクの他に、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROM、又は、DVD−ROM等を用いることができる。
【0043】
次に、本発明の一実施形態に係る超音波診断装置の動作について説明する。
図6は、図1に示す超音波診断装置のBモードにおける動作を示すタイミングチャートである。制御部27は、操作卓4を用いたオペレータの操作に従って、ライブ/フリーズ信号をハイレベルに活性化することによりライブモードを設定する。その後、所定の回転ロック期間が経過した後に、モータ制御部29は、スタート信号をハイレベルに活性化すると共に、駆動モータ14に回転運動を開始させる。
【0044】
駆動モータ14は、回転運動を開始すると、Z相信号として、1回転に1つのパルスを発生する。送信部20が、Z相信号のパルス周期を等間隔に分割して得られるタイミングで駆動信号を発生することにより、超音波トランスデューサ10が、回転しながら複数のラインに沿って複数の送信パルスを被検体に順次送信する。また、超音波トランスデューサ10は、被検体において反射された超音波エコーを複数のラインに沿って順次受信して、受信信号を出力する。
【0045】
直交検波処理部22は、受信信号に基づいて複素ベースバンド信号を生成し、Bモード画像信号生成部25aは、複素ベースバンド信号に基づいて、各フレームにおいて複数のラインL1、L2、・・・、LNを含むBモード画像信号を生成する。DSC部26は、Bモード画像信号に基づいて、複数のフレームF1、F2、・・・を含む表示用の画像信号を生成し、表示用の画像信号をD/A変換してアナログ信号として出力する。
【0046】
図7は、図1に示す超音波診断装置のライン選択部の動作を説明するための図である。図7に示すように、超音波トランスデューサ10は、回転しながら複数のラインに沿って複数の送信パルスを順次発生し、被検体において反射された超音波エコーを複数のラインに沿って順次受信する。ここで、ライン選択部24は、α本のラインの内から1つのラインを選択する(αは、2以上の整数)。
【0047】
図8は、図1に示す超音波診断装置のライン選択部の動作を示すフローチャートである。本実施形態においては、格納部28に格納されている信号処理プログラムが、以下のステップ(手順)をCPUに実行させる。最初に、IQメモリ23には、少なくともフレームF1及びF2の複素ベースバンド信号が格納されているものとする。
【0048】
図8に示すステップS11において、Nの値が1に初期設定される。ステップS12において、ライン選択部24が、フレームFNにおいて、オペレータによって設定されたROI(関心領域)のほぼ中心に位置するラインθ1を選択する。
【0049】
ステップS13において、ライン選択部24が、フレームF(N+1)におけるα本のラインの内から、フレームFNのラインθ1と最も相関の高いラインを選択し、これを新たなラインθ1とする。即ち、ライン選択部24は、フレームFNにおいて選択されたラインθ1に対応する複素ベースバンド信号と最も相関が高い複素ベースバンド信号に対応するラインを、フレームF(N+1)において選択する。
【0050】
ここで、2つのライン間における複素ベースバンド信号の相関を求める方法としては、次のような方法が挙げられる。例えば、2つのライン間でI信号の相関係数CIを求めると共に、2つのライン間でQ信号の相関係数CQを求めて、相関係数CIと相関係数CQとの平均値C=(CI+CQ)/2が最大となるライン同士が最も高い相関を有すると判定する。あるいは、2つのライン間でI信号の誤差EI1、EI2、・・・を求めると共に、2つのライン間でQ信号の誤差EQ1、EQ2、・・・を求めて、誤差の自乗の総和E=EI1+EI2+・・・+EQ1+EQ2+・・・が最小となるライン同士が最も高い相関を有すると判定する。
【0051】
ステップS14において、ライン選択部24は、フレームF(N+1)において選択されたラインのライン番号を記憶し、そのラインに対応する複素ベースバンド信号を画像信号生成部25に供給する。画像信号生成部25は、フレーム毎に選択されるラインに対応する複素ベースバンド信号に基づいて、血流に関する情報を表す画像信号を生成する。
【0052】
ステップS15において、ライン選択部24が、新たなフレームの複素ベースバンド信号がIQメモリ23に格納されたか否かを判定する。新たなフレームの複素ベースバンド信号がIQメモリ23に格納された場合には、処理がステップS16に移行し、そうでない場合には、処理がステップS17に移行する。
【0053】
ステップS16において、Nの値が1だけインクリメントされて、処理がステップS13に戻る。これにより、ステップS13及びS14の処理が繰り返される。一方、ステップS17において、フリーズモードが設定されているか否かが判定される。フリーズモードが設定されていない場合には、処理がステップS15に戻り、フリーズモードが設定されている場合には、処理が終了する。
【0054】
あるいは、ステップS13において、ライン選択部24が、超音波トランスデューサ10が回転する際に被検体内の所定の深さから複数のラインに沿って受信される超音波エコーに基づいてそれぞれ生成される複数の複素ベースバンド信号における位相情報を比較することにより、フレームF(N+1)におけるα本のラインの内から、フレームFNのラインθ1と最も位相の近いラインを選択し、これを新たなラインθ1とするようにしても良い。即ち、ライン選択部24は、フレームFNにおいて選択されたラインθ1に対応する複素ベースバンド信号と最も位相が近い複素ベースバンド信号に対応するラインを、フレームF(N+1)において選択する。
【0055】
ここで、複素ベースバンド信号の振幅をAとし、位相をθとすると、I信号及びQ信号は、次のように表される。
I=Acosθ
Q=Asinθ
これらより、振幅Aが、次のように求められる。
A=(I+Q1/2
また、位相θが、次のように求められる。
Q/I=tanθ
θ=atan(Q/I)
【0056】
以上においては、1つのラインに注目したが、1つのラインの替わりに1つのエリアに関する情報を用いて相関値又は位相を求めるようにしても良い。その場合には、フレキシブルシャフトの回転ムラの影響をより精度良く補正することができる。
【0057】
図9は、CFモードにおけるROIの設定を説明するための図である。図1に示す超音波診断装置の操作卓4には、図9に示すROI設定用インタフェース41が設けられている。ROI設定用インタフェース41には、ROIの半径r方向のサイズを設定するためのROI半径サイズ設定ボタン41aと、ROIの角度θ方向のサイズを設定するためのROI角度サイズ設定ボタン41bと、ROIの位置を設定するためのROI位置設定ボタン41cと、トラックボール41dとが設けられている。オペレータがそれらを操作することにより、表示部3に表示される超音波診断画像においてROI31が設定される。
【0058】
図10は、図1に示す超音波診断画像におけるジッタの低減を説明するための図である。図10に示すように、第1のフレームにおけるラインθ1が、フレキシブルシャフトの回転ムラ(ジッタ)の影響を受けて、第1のフレームに続く第2のフレームにおいては、ラインθ1'又はθ1''の位置に移動してしまうことがある。そのままで画像信号の生成を行うと、ROI31aが、ROI31b又は31cの位置に移動してしまう。そこで、本実施形態においては、ライン選択部24が、第2のフレームにおいて、第1のフレームにおけるラインθ1と最も相関が高いラインを選択し、画像信号生成部25が、ライン選択部24によって選択されたラインを基準として画像信号の生成を行うことにより、ジッタに起因する画像の回転を防止することができる。
【0059】
図11は、図1に示す超音波診断装置のCFモード画像信号生成部の動作を説明するための図である。図11に示すように、超音波トランスデューサ10は、回転しながら複数のラインに沿って複数の送信パルスを順次発生し、被検体において反射された超音波エコーを複数のラインに沿って順次受信する。CFモードにおいては、超音波トランスデューサ10の回転がBモードにおけるよりも遅くなるように、制御部27がスピード指定信号を生成する。これにより、CFモード画像信号生成部25bは、n=1〜3のラインにおいて得られる超音波エコーを同一方向からの超音波エコーをみなして、それらの超音波エコーに基づいて得られる複素ベースバンド信号の自己相関を求める。
【0060】
図12は、図1に示す超音波診断装置のCFモード画像信号生成部の動作を示すフローチャートである。図12に示すステップS21において、nの値が1に初期設定される。ステップS22において、CFモード画像信号生成部25bが、n、(n+1)、(n+2)番目のラインの複素ベースバンド信号に基づいて、自己相関法によりCFラインデータを生成する。
【0061】
ステップS23において、CFモード画像信号生成部25bは、生成されたCFラインデータを、Bモード画像信号生成部25aによって生成されるBモード画像信号における(n+1)番目のラインにマッピングする。
【0062】
ステップS24において、CFモード画像信号生成部25bは、nの値が(N−2)に等しいか否かを判定する。nの値が(N−2)に等しくない場合には、処理がステップS25に移行する。ステップS25において、nの値が1だけインクリメントされて、処理がステップS22に戻る。これにより、ステップS22及びS23の処理が繰り返される。nの値が(N−2)に等しくなったら、処理が終了する。
【0063】
図13は、PWモードにおけるROIの設定を説明するための図である。図1に示す超音波診断装置の操作卓4には、図13に示すゲート設定用インタフェース42が設けられている。ゲート設定用インタフェース42には、ゲートの位置を設定するためのゲート位置設定ボタン42aと、ゲートのサイズ(距離d)を設定するためのゲートサイズ設定ボタン42bと、ゲートの角度を設定するためのゲート角度設定ボタン42cと、トラックボール42dとが設けられている。オペレータがそれらを操作することにより、表示部3に表示される超音波診断画像においてゲート32が設定される。
【0064】
図14は、図1に示す超音波診断装置のPWモードにおける動作を示すタイミングチャートである。この例においては、Bモード撮像とPWモード撮像とが交互に行われる。制御部27は、操作卓4を用いたオペレータの操作に従って、ライブ/フリーズ信号をハイレベルに活性化することによりライブモードを設定する。その後、所定の回転ロック期間が経過した後に、モータ制御部29は、スタート信号をハイレベルに活性化すると共に、駆動モータ14に回転運動を開始させる。
【0065】
駆動モータ14は、回転運動を開始すると、Z相信号として、1回転に1つのパルスを発生する。送信部20が、Z相信号のパルス周期を等間隔に分割して得られるタイミングで駆動信号を発生することにより、超音波トランスデューサ10が、回転しながら複数のラインに沿って複数の送信パルスを被検体に順次送信する。また、超音波トランスデューサ10は、被検体において反射された超音波エコーを複数のラインに沿って順次受信して、受信信号を出力する。この受信信号に基づいて複素ベースバンド信号が生成され、Bモード画像信号生成部25aが、複素ベースバンド信号に基づいてBモード画像信号を生成する。以上により、フレームF1におけるBモード画像信号が生成される。
【0066】
次に、制御部27が、停止位置指定信号として1つのパルスをモータ制御部29に出力することにより、モータ制御部29が、指定された角度で駆動モータ14に回転運動を停止させる。ここで、指定された角度は、Z相信号のパルスからの時間によって判定される。これにより、超音波トランスデューサ10が、指定された角度(即ち、ライン)θ1(図13参照)で停止して、1つのラインに沿って複数の送信パルスを被検体に順次送信する。また、超音波トランスデューサ10は、被検体において反射された超音波エコーを1つのラインに沿って順次受信して、受信信号を出力する。この受信信号に基づいて複素ベースバンド信号が生成され、PWモード画像信号生成部25cが、複素ベースバンド信号に基づいてPWモード画像信号を生成する。以上により、フレームF1におけるPWモード画像信号が生成される。
【0067】
フレームF1におけるPWモード撮像の終了時に、制御部27が、停止位置指定信号として1つのパルスをモータ制御部29に出力することにより、モータ制御部29が、駆動モータ14に回転運動を再び開始させる。駆動モータ14は、回転運動を開始すると、Z相信号として、1回転に1つのパルスを発生する。送信部20が、Z相信号のパルス周期を等間隔に分割して得られるタイミングで駆動信号を発生することにより、超音波トランスデューサ10が、回転しながら複数のラインに沿って複数の送信パルスを被検体に順次送信する。また、超音波トランスデューサ10は、被検体において反射された超音波エコーを複数のラインに沿って順次受信して、受信信号を出力する。この受信信号に基づいて複素ベースバンド信号が生成され、Bモード画像信号生成部25aが、複素ベースバンド信号に基づいてBモード画像信号を生成する。以上により、フレームF2におけるBモード画像信号が生成される。
【0068】
また、ライン選択部24は、フレームF2におけるα本のラインの内から、フレームF1のラインθ1と最も相関の高いラインを選択し、これを新たなラインθ1とする。即ち、ライン選択部24は、フレームF1において選択されたラインθ1に対応する複素ベースバンド信号と最も相関が高い複素ベースバンド信号に対応するラインを、フレームF2において選択し、そのライン番号を記憶する。これにより、超音波プローブ1に対して被検体が回転したとしても、被検体の関心領域を追跡することができる。
【0069】
あるいは、ライン選択部24は、超音波トランスデューサ10が回転する際に被検体内の所定の深さから複数のラインに沿って受信される超音波エコーに基づいてそれぞれ生成される複数の複素ベースバンド信号における位相情報を比較することにより、フレームF2におけるα本のラインの内から、フレームF1のラインθ1と最も位相の近いラインを選択し、これを新たなラインθ1とするようにしても良い。即ち、ライン選択部24は、フレームF1において選択されたラインθ1に対応する複素ベースバンド信号と最も位相が近い複素ベースバンド信号に対応するラインを、フレームF2において選択し、そのライン番号を記憶する。
【0070】
次に、制御部27が、停止位置指定信号として1つのパルスをモータ制御部29に出力することにより、モータ制御部29が、指定された角度で駆動モータ14に回転運動を停止させる。ここで、指定された角度は、ライン選択部24がフレームF2において選択したラインに対応するものである。これにより、超音波トランスデューサ10が、指定された角度で停止して、1つのラインに沿って複数の送信パルスを被検体に順次送信する。また、超音波トランスデューサ10は、被検体において反射された超音波エコーを1つのラインに沿って順次受信して、受信信号を出力する。この受信信号に基づいて複素ベースバンド信号が生成され、PWモード画像信号生成部25cが、複素ベースバンド信号に基づいてPWモード画像信号を生成する。以上により、フレームF2におけるPWモード画像信号が生成される。
【0071】
このような動作を繰り返すことにより、Bモード画像信号を生成しながらPWモード画像信号を生成することができる。なお、Bモード画像信号を生成せずに、ライン選択部24が選択したラインに対応する角度で超音波トランスデューサ10を停止させて、PWモード画像信号のみを生成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、メカニカルラジアル走査方式の体腔内観察用超音波プローブを用いる超音波診断装置において利用することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 超音波プローブ
2 超音波診断装置本体
3 表示部
4 操作卓
10 超音波トランスデューサ
11 回転伝達ケーブル
12 保護カバー
13 支持部
14 駆動モータ
15 コネクタ部
20 送信部
21 受信部
22 直交検波処理部
22a、22e、22f LPF
22b ADC
22c、22d ミキサ
22g、22h サンプリング部
22i 直交サンプリング部
22j 時分割サンプリング部
23 IQメモリ
24 ライン選択部
25 画像信号生成部
25a Bモード画像信号生成部
25b CFモード画像信号生成部
25c PWモード画像信号生成部
26 DSC部
27 制御部
28 格納部
29 モータ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信する超音波トランスデューサを含むメカニカルラジアル走査方式の体腔内観察用超音波プローブを用いる超音波診断装置であって、
前記超音波トランスデューサから出力される受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成する信号処理手段と、
前記超音波トランスデューサが回転する際に複数のラインに沿って受信される超音波エコーに基づいて生成される少なくとも2フレーム分の複素ベースバンド信号を格納するメモリと、
前記メモリに格納されている複素ベースバンド信号に基づいて、複数のラインの内からフレーム毎に1つのラインを選択するライン選択手段と、
前記ライン選択手段によってフレーム毎に選択されるラインを基準として、複素ベースバンド信号に基づいて血流に関する情報を表す画像信号を生成する画像信号生成手段と、
を具備する超音波診断装置。
【請求項2】
前記超音波トランスデューサを回転させるモータを制御することにより、前記超音波トランスデューサの回転速度及び停止位置を制御するモータ制御手段をさらに具備する、請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記画像信号生成手段が、前記メモリに格納されている複素ベースバンド信号に基づいて被検体内の組織に関する断層画像情報であるB(ブライトネス)モード画像を表す画像信号を生成すると共に、血流に関する情報をカラー画像としてBモード画像に重ねて表示するCF(カラーフロー)モード画像を表す画像信号を生成する、請求項1又は2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記画像信号生成手段が、パルス波の送受信に基づいて検出される血流の速度を表示するPW(パルスウエイブ)モード画像を表す画像信号を生成する、請求項1〜3のいずれか1項記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記ライン選択手段が、あるラインを選択した場合に、第1のフレームに続く第2のフレームにおいて、第1のフレームにおいて選択されたラインに対応する複素ベースバンド信号と最も相関が高い複素ベースバンド信号に対応するラインを選択する、請求項1〜4のいずれか1項記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記ライン選択手段が、前記超音波トランスデューサが回転する際に被検体内の所定の深さから複数のラインに沿って受信される超音波エコーに基づいてそれぞれ生成される複数の複素ベースバンド信号における位相情報を比較することにより、第1のフレームにおいて、あるラインを選択した場合に、第1のフレームに続く第2のフレームにおいて、第1のフレームにおいて選択されたラインに対応する複素ベースバンド信号と最も位相が近い複素ベースバンド信号に対応するラインを選択する、請求項1〜4のいずれか1項記載の超音波診断装置。
【請求項7】
超音波を送受信する超音波トランスデューサを含むメカニカルラジアル走査方式の体腔内観察用超音波プローブを用いる超音波診断装置において、前記超音波トランスデューサから出力される受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより生成される複素ベースバンド信号を処理するための信号処理プログラムであって、
前記超音波トランスデューサが回転する際に複数のラインに沿って受信される超音波エコーに基づいて生成される少なくとも2フレーム分の複素ベースバンド信号に基づいて、第1のフレームにおいて、あるラインを選択した場合に、第1のフレームに続く第2のフレームにおいて、第1のフレームにおいて選択されたラインに対応する複素ベースバンド信号と最も相関が高い複素ベースバンド信号に対応するラインを選択する手順(a)と、
手順(a)においてフレーム毎に選択されるラインを基準として、複素ベースバンド信号に基づいて血流に関する情報を表す画像信号を生成する手順(b)と、
をCPUに実行させる信号処理プログラム。
【請求項8】
超音波を送受信する超音波トランスデューサを含むメカニカルラジアル走査方式の体腔内観察用超音波プローブを用いる超音波診断装置において、前記超音波トランスデューサから出力される受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより生成される複素ベースバンド信号を処理するための信号処理プログラムであって、
前記超音波トランスデューサが回転する際に被検体内の所定の深さから複数のラインに沿って受信される超音波エコーに基づいてそれぞれ生成される複数の複素ベースバンド信号における位相情報を比較することにより、第1のフレームにおいて、あるラインを選択した場合に、第1のフレームに続く第2のフレームにおいて、第1のフレームにおいて選択されたラインに対応する複素ベースバンド信号と最も位相が近い複素ベースバンド信号に対応するラインを選択する手順(a)と、
手順(a)においてフレーム毎に選択されるラインを基準として、複素ベースバンド信号に基づいて血流に関する情報を表す画像信号を生成する手順(b)と、
をCPUに実行させる信号処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−279506(P2010−279506A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134458(P2009−134458)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】