説明

超音波診断装置及び多重検出プログラム

【課題】超音波画像に発生している多重アーティファクトの位置を容易に判別することができるように操作者を支援する。
【解決手段】送受信部11が、受信ビームの焦点の位置が被検体内の深さ方向に移動するように受信遅延時間の算出に用いられる設定音速を変えながら反射波データを収集する。また、信号処理部12が、反射波データから時系列的に複数の画像データを生成する。また、コントラスト算出部13が、画像データが生成されるごとに、その画像データを複数の区画に分割した後に区画ごとにコントラスト値を算出する。また、多重判定部14が、算出されたコントラスト値に基づいて、複数の画像データにおける同一区画ごとに設定音速とコントラスト値との相関度を示す指標値を算出する。そして、多重判定部14は、指標値と所定の閾値とを区画ごとに比較し、指標値が所定の閾値より小さい区画を多重アーティファクトが発生している区画として検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置及び多重検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波を利用して被検体内の画像を撮像する装置である(例えば、特許文献1参照)。この超音波診断装置は、複数の圧電振動子を有する超音波プローブにより被検体の診断部位に超音波信号を送信する。そして、超音波診断装置は、送信した超音波信号の反射波である反射波信号を超音波プローブにより受信し、その反射波信号に基づいて、診断部位の断層像である超音波画像を生成する。
【0003】
従来、かかる超音波診断装置によって生成される超音波画像には、各種のアーティファクトが発生することが知られている。例えば、超音波画像に発生するアーティファクトとして、超音波信号の多重反射により生じる多重アーティファクトがある。この多重アーティファクトには、生体とプローブとの間もしくは生体間で生じる多重反射によるものや、1つ前の送信レートから混入する残留多重によるものなどがある。
【0004】
図10は、従来の超音波診断装置により生成される超音波画像における多重アーティファクトを説明するための図である。例えば、図10に示すように、超音波プローブ101から送信された超音波信号102が、被検体内の血管103で反射した後に、超音波プローブの表面で反射して被検体内にもどり、血管103で再度反射する場合がある。この結果、超音波画像において、血管103の実際の位置よりも深い位置に血管103によるアーティファクト104が発生する。
【0005】
また、例えば、超音波プローブ101から送信された超音波信号105が、血管103よりも深い位置にある血管106で反射した後に、血管103で反射して血管106の側にもどり、血管106で再度反射する場合がある。この結果、超音波画像において、血管106の実際の位置よりも深い位置に血管106によるアーティファクト107が発生する。
【0006】
また、例えば、1つ前の送信レートで送信された超音波信号108が被検体内の構造物109で反射し、その反射による反射信号が次の送信レートで送信された超音波信号の反射波の中に混入する場合がある。この結果、超音波画像において、実際には構造物109が存在しない位置に構造物109によるアーティファクト107が発生する。
【0007】
このように、超音波画像に発生する多重アーティファクトには各種のものがある。そして、超音波画像に多重アーティファクトが発生した場合には、超音波診断装置の操作者は、多重アーティファクトが診断に支障がある位置に発生しているか否かを見極める必要がある。そのため、操作者は、超音波診断装置を操作して、被検体に送信される超音波信号の駆動周期を変えたり、超音波信号の走査方向を変えたりしながら、超音波画像に描出された各部の表示位置が変化するか否かを確認することで、多重アーティファクトが発生している位置を判別していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−264531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来の判別方法では、操作者は、前述した各種の多重アーティファクトの特徴を理解したうえで、超音波診断装置を操作する必要がある。このことから、操作者は、超音波画像に発生している多重アーティファクトの位置を容易に判別することができなかった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、超音波画像に発生している多重アーティファクトの位置を容易に判別することができるように操作者を支援することが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、超音波診断装置が、受信ビームの焦点の位置が被検体内の深さ方向に移動するように受信遅延時間の算出に用いられる設定音速を変えながら反射波データを収集する収集手段と、前記収集手段によって収集された反射波データから時系列的に複数の画像データを生成するデータ生成手段と、前記データ生成手段によって画像データが生成されるごとに、生成された画像データを複数の区画に分割した後に該区画ごとにコントラスト値を算出するコントラスト算出手段と、前記コントラスト算出手段によって算出されたコントラスト値に基づいて、前記複数の画像データにおける同一区画ごとに前記設定音速と前記コントラスト値との相関度を示す指標値を算出する指標値算出手段と、前記指標値算出手段によって算出された指標値と所定の閾値とを前記区画ごとに比較し、前記指標値が所定の閾値より小さい区画を超音波の多重反射による多重アーティファクトが発生している区画として検出する多重検出手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6記載の本発明は、多重検出プログラムが、受信ビームの焦点の位置が被検体内の深さ方向に移動するように受信遅延時間の算出に用いられる設定音速を変えながら反射波データを収集する収集手順と、前記収集手順によって収集された反射波データから時系列的に複数の画像データを生成するデータ生成手順と、前記データ生成手順によって画像データが生成されるごとに、生成された画像データを複数の区画に分割した後に該区画ごとにコントラスト値を算出するコントラスト算出手順と、前記コントラスト算出手順によって算出されたコントラスト値に基づいて、前記複数の画像データにおける同一区画ごとに前記設定音速と前記コントラスト値との相関度を示す指標値を算出する指標値算出手順と、前記指標値算出手順によって算出された指標値と所定の閾値とを前記区画ごとに比較し、前記指標値が所定の閾値より小さい区画を超音波の多重反射による多重アーティファクトが発生している区画として検出する多重検出手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1及び6記載の本発明によれば、超音波画像に発生している多重アーティファクトの位置を容易に判別することができるように操作者を支援することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例に係る超音波診断装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図2は、本実施例に係るコントラスト算出部による画像データの分割を説明するための図(1)である。
【図3】図3は、本実施例に係るコントラスト算出部による画像データの分割を説明するための図(2)である。
【図4】図4は、本実施例に係る多重判定部による多重アーティファクトの検出を説明するための図(1)である。
【図5】図5は、本実施例に係る多重判定部による多重アーティファクトの検出を説明するための図(2)である。
【図6】図6は、本実施例に係る多重判定部による多重アーティファクトの検出を説明するための図(3)である。
【図7】図7は、本実施例に係る表示処理部による画像表示を説明するための図である。
【図8】図8は、本実施例に係る超音波診断装置による多重検出の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、本実施例に係る画像表示の変形例を説明するための図である。
【図10】図10は、従来の超音波診断装置により生成される超音波画像における多重アーティファクトを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る超音波診断装置及び多重検出プログラムの好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下に示す実施例では、超音波信号の多重反射により生じるアーティファクトを多重アーティファクトと呼ぶ。
【実施例】
【0016】
まず、本実施例に係る超音波診断装置100の構成について説明する。図1は、実施例に係る超音波診断装置100の構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように、本実施例に係る超音波診断装置100は、超音波プローブ1と、入力部2と、表示部3と、装置本体10とを有する。
【0017】
超音波プローブ1は、一列に配置された電子走査型の複数の圧電振動子を有する。これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体10が有する送受信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生するとともに、被検体からの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層や、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。
【0018】
超音波プローブ1から被検体に超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体の体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子によって反射波信号として受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して周波数偏移を受ける。
【0019】
入力部2は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボールなどの入力デバイスを有する。そして、入力部2は、これらの入力デバイスを介して操作者から各種指示を受け付け、受け付けた各種指示を装置本体10に転送する。なお、本実施例では、入力部2は、多重アーティファクトの検出を開始する開始指示を操作者から受け付けるための多重検出ボタンを有する。
【0020】
表示部3は、超音波診断装置100の操作者が入力部2を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像を表示したりする。
【0021】
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波信号に基づいて超音波画像を生成する装置であり、図1に示すように、送受信部11、信号処理部12、コントラスト算出部13、多重判定部14、演算メモリ15、表示処理部16、画像メモリ17、及び制御部18を有する。
【0022】
送受信部11は、超音波プローブ1にて行なわれる超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。具体的には、送受信部11は、トリガ発生回路、遅延回路及びパルサ回路などを有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。遅延回路は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルサ回路が発生する各レートパルスに対し与える。トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波ビームを集束させたうえで、超音波ビームの送信方向を任意に調整する。
【0023】
また、送受信部11は、アンプ回路、A/D変換器、加算器などを有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、超音波プローブ1が受信した反射波信号をそれぞれ増幅するゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換する。加算器は、A/D変換器によってデジタル化された反射波信号の加算処理を行なうことで反射波データを生成する。
【0024】
ここで、A/D変換器は、反射信号をA/D変換する際には、超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子によって受信された反射波信号それぞれに対して、受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。そして、各反射波信号に与えられる遅延時間を反射波信号ごとにそれぞれ調整することによって、受信ビームの焦点の位置を被検体内の深さ方向に移動させることができる。
【0025】
例えば、超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子をTi(i=1,2,3・・・)とすると、超音波プローブ1の口径中心を原点とした場合に、圧電振動子Tiによって受信された反射信号に与えられる遅延時間Δtiは以下に示す式(1)で算出される。ここで、Xは、焦点の深さ方向の座標をX、圧電振動子Tiの配列方向の座標をYi、音速をCとすると、以下に示す式(1)で算出される。
【0026】
Δti={(X2+Yi21/2−X}/C ・・・(1)
【0027】
式(1)に示すように、遅延時間Δtiは、音速Cによって変化する。この音速Cには、診断対象である被検体の体内における伝播速度があらかじめ設定される。ここで、遅延時間Δtiの算出に用いられる音速Cを以下では設定音速と呼ぶ。つまり、遅延時間の算出に用いられる設定音速を圧電振動子ごとに変えることで、受信ビームの焦点の位置を被検体内の深さ方向に移動させることができる。なお、本実施例では、送受信部11は、後述する制御部18による制御のもと、設定音速を変えながら反射波データを収集する。
【0028】
なお、送受信部11は、後述する制御部18の制御により、遅延情報、送信周波数、送信駆動電圧、開口素子数などを瞬時に変更可能な機能を有している。また、送受信部11は、1フレームもしくはレートごとに異なる波形を送信して受信することも可能である。
【0029】
信号処理部12は、送受信部11からゲイン補正処理、A/D変換処理及び加算処理が行なわれた処理済み反射波信号である反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理などを行なうことで画像データを生成する。例えば、信号処理部12は、信号強度が輝度の明るさで表現されるBモードデータを生成する。また、信号処理部12は、送受信部11から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したドプラデータを生成する。なお、本実施例では、信号処理部12は、後述する制御部18による制御のもと、送受信部11によって収集された反射波データから時系列的に複数の画像データを生成する。
【0030】
コントラスト算出部13は、後述する制御部18による制御のもと、信号処理部12によって画像データが生成されるごとに、生成された画像データを複数の区画に分割した後に区画ごとにコントラスト値を算出する。
【0031】
図2及び3は、本実施例に係るコントラスト算出部13による画像データの分割を説明するための図である。図2に示すように、例えば、コントラスト算出部13は、超音波の走査方向Sにm列、被検体内の深さ方向Dにn列に分けることで、画像データ20をm×n個の区画に分割する。そして、コントラスト算出部13は、m×n個の区画それぞれについて、区画内に含まれる画素の輝度値に基づいてコントラスト値を算出する。また、例えば、コントラスト算出部13は、図3に示すように、所定の間隔dで格子状に区切ることで、画像データ30を複数の区画に分割してもよい。
【0032】
多重判定部14は、後述する制御部18による制御のもと、コントラスト算出部13によって算出されたコントラスト値に基づいて、信号処理部12によって生成された複数の画像データにおける同一区画ごとに設定音速とコントラスト値との相関度を示す指標値を算出する。そして、多重判定部14は、算出した指標値と所定の閾値とを区画ごとに比較し、指標値が所定の閾値より小さい区画を多重アーティファクトが発生している区画として検出する。
一般的に、多重アーティファクトは、受信ビームの焦点の位置とは異なる位置にある反射源によって発生するため、受信ビームの焦点の位置を変えても反射波信号の強度がほとんど変化しないことが知られている。このことから、受信ビームの焦点の位置を深さ方向に移動しながら反射波データを収集して時系列に画像データを生成した場合には、生成された複数の画像ごとに、多重反射が発生している区画ではコントラスト値がほとんど変化しないことになる。すなわち、多重反射が発生している区画では、多重反射が発生していない区画と比べて、設定音速とコントラスト値との相関度が低くなる。
【0033】
なお、超音波画像には、多重アーティファクとの他にも各種のアーティファクトが発生する。例えば、メインローブにより発生するものや、サイドローブにより発生するもの、グレーティングローブにより発生するものなどがある。ここで、メインローブとは、圧電振動子から走査線の方向に放射される超音波によって形成されるビームである。また、サイドローブとは、走査線とは所定の角度だけずれて放射される超音波によって形成されるビームである。またグレーティングローブとは、一列に配置された複数の圧電振動子から放射される超音波の波面が合成される際に、隣り合う圧電振動子との間で1波長ずれて合成されることで、目的の方向以外の向きに形成されるビームである。
【0034】
図4〜6は、本実施例に係る多重判定部14による多重アーティファクトの検出を説明するための図である。図4は、メインローブ又はグレーティングローブによるアーティファクトが発生していた場合のコントラスト値と設定音速との関係を示している。図5は、サイドローブによるアーティファクトが発生していた場合のコントラスト値と設定音速との関係を示している。図6は、多重アーティファクトが発生していた場合のコントラスト値と設定音速との関係を示している。
【0035】
メインローブやグレーティングローブ、サイドローブにより発生するアーティファクトは、被検体内に実際に存在する構造物が反射源となって発生するものであるため、受信ビームの焦点の位置が変わると、反射波信号の強度が大きく変化する。そのため、図4及び5に示すように、メインローブやグレーティングローブ、サイドローブにより発生していた場合のコントラスト値は、設定音速が変わると大きく変化する。
【0036】
これに対し、図6に示すように、多重アーティファクトが発生していた場合のコントラスト値は、設定音速が変わっても変化量が小さい。本実施例に係る多重判定部14は、このような多重反射の特徴を利用して、画像データに多重アーティファクトが発生しているか否かを検出する。
【0037】
なお、本実施例では、多重判定部14は、設定音速とコントラスト値との相関度を示す指標値として、設定音速ごとのコントラスト値の分散値を用いる。例えば、設定音速とコントラスト値との相関度が高ければ、設定音速ごとのコントラスト値の分散値は大きくなる。逆に、設定音速とコントラスト値との相関度が低ければ、設定音速ごとのコントラスト値の分散値は小さくなる。すなわち、多重反射が発生していない区画では、設定音速ごとのコントラスト値の分散値が小さくなる。
【0038】
具体的には、本実施例では、多重判定部14は、コントラスト算出部13によって算出されたコントラスト値に基づいて、信号処理部12によって生成された複数の画像データにおける同一区画ごとにコントラスト値の分散値を算出する。そして、多重判定部14は、算出した分散値が所定の閾値より小さい区画を多重アーティファクトが発生している区画として検出する。
【0039】
演算メモリ15は、コントラスト算出部13及び多重判定部14によって行われる処理に必要な各種データを保存する。
【0040】
表示処理部16は、信号処理部12によって生成された画像データから表示用の超音波画像を生成し、生成した超音波画像を表示部3に表示させる。例えば、表示処理部16は、信号処理部12によって生成されたBモードデータから、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像を生成する。また、表示処理部16は、信号処理部12によって生成されたドプラデータから、診断部位における血流などの移動体情報を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、又はこれらの画像を組み合わせたドプラ画像を生成する。
【0041】
なお、表示処理部16は、表示用の超音波画像を生成するたびに、生成した超音波画像を後述する画像メモリ17に保存する。そして、表示処理部16は、後述する制御部18による制御のもと、画像メモリ17から表示用の超音波画像を読み出し、読み出した超音波画像を表示部3に表示させる。
【0042】
また、本実施例では、表示処理部16は、後述する制御部18による制御のもと、信号処理部12によって生成された画像データに基づいて、多重判定部14によって多重アーティファクトが発生していると判定された区画の表示態様を変えた超音波画像を生成して表示部3に表示させる。
【0043】
図7は、本実施例に係る表示処理部16による画像表示を説明するための図である。図6に示すように、例えば、表示処理部16は、多重アーティファクトが発生していると判定された区画が占める領域71に所定の色(例えば、青色など)を付けた超音波画像72を生成し、その超音波画像72を表示部3に表示させる。
【0044】
画像メモリ17は、表示処理部16によって生成された超音波画像を記憶する。例えば、画像メモリ17は、Bモード画像やドプラ画像などを記憶する。
【0045】
制御部18は、超音波診断装置100が有する各機能部の動作を制御する。例えば、制御部18は、入力部2によって操作者から受け付けられた各種指示や、図示していない記憶部から読み出した各種制御プログラムに基づいて、送受信部11、信号処理部12、表示処理部16、コントラスト算出部13、及び多重判定部14を制御する。
【0046】
次に、本実施例に係る超音波診断装置100による多重検出の処理手順について説明する。図8は、本実施例に係る超音波診断装置100による多重検出の処理手順を示すフローチャートである。
【0047】
図8に示すように、本実施例では、操作者によって入力部2の多重検出開始ボタンが押下された場合に(ステップS101,Yes)、制御部18が、以下に示すように、受信ビームの焦点の位置が被検体内の深さ方向に移動するように受信遅延時間の算出に用いられる設定音速を変えながら反射波データを収集する動作を送受信部11に実行させる。
【0048】
まず、制御部18は、送受信部11を制御して、受信遅延時間の算出に用いられる設定音速を1400m/sに設定する(ステップS102)。その後、制御部18は、コントラスト算出部13を制御して、コントラスト値の算出を開始する(以下に示すステップS103〜S110)。
【0049】
コントラスト算出部13は、まず、信号処理部12によって生成された1フレーム分の画像データを演算メモリ15に格納する(ステップS103)。続いて、コントラスト算出部13は、演算メモリ15に格納された画像データを複数の区画に分割する(ステップS104)。続いて、コントラスト算出部13は、分割された区画ごとに、区画内における空間的な輝度の分散値及びコントラスト値を算出する(ステップS105)。
【0050】
その後、コントラスト算出部13は、各区画について、算出された輝度の分散値に基づいて、区画内に描出された部分が生体であるか否かを判定する(ステップS106)。例えば、コントラスト算出部13は、輝度の分散値が所定の範囲内に収まっている区画については、区画内に描出された部分が生体であると判定し、輝度の分散値が当該所定の範囲内に収まっていない区画については、区画内に描出された部分が生体でないと判定する。
【0051】
続いて、コントラスト算出部13は、区画内に描出された部分が生体でないと判定した区画については(ステップS106,No)、コントラスト値をゼロとし(ステップS107)、そのコントラスト値を演算メモリ15に保存する(ステップS108)。一方、区画内に描出された部分が生体であると判定した区画については(ステップS106,Yes)、コントラスト算出部13は、区画内に含まれる画素の輝度値に基づいて算出したコントラスト値を演算メモリ15に保存する(ステップS108)。
【0052】
そして、各区画のコントラスト値が演算メモリ15に保存されると、制御部18が、送受信部11により設定されている設定音速が1600m/sを超えているか否かを判定する(ステップS109)。ここで、設定音速が1600m/s以下であった場合には(ステップS109,No)、制御部18は、送受信部11に保持されている設定音速に20m/sを加算する(ステップS110)。
【0053】
設定音速に20m/sを加算した後に、制御部18は、コントラスト算出部13を制御して、信号処理部12によって生成された1フレーム分の画像データをさらに演算メモリ15に格納する(ステップS103にもどる)。そして、コントラスト算出部13は、上述したステップS104〜S108の処理を実行する。
【0054】
このように、設定音速が1600m/sを超えるまでの間は、コントラスト算出部13によってコントラスト値の算出を繰り返す。そして、設定音速が1600m/sを超えた場合には(ステップS109,Yes)、制御部18が、多重判定部14を制御して、多重アーティファクトの検出を開始させる(以下に示すステップS111〜S113)。
【0055】
具体的には、多重判定部14は、まず、演算メモリ15に保存されている全てのコントラスト値を読み出し、読み出したコントラスト値に基づいて、信号処理部12によって生成された複数の画像データにおける同一区画ごとにコントラスト値の分散値を算出する(ステップS111)。
【0056】
続いて、多重判定部14は、算出した分散値と所定の閾値とを区画ごとに比較する(ステップS112)。そして、分散値が所定の閾値より小さい区画があった場合には(ステップS112,Yes)、多重判定部14は、その区画を多重アーティファクトが発生している区画として検出する(ステップS113)。その後、制御部18が、多重判定部14によって検出された区画の表示態様を変えた超音波画像を生成して表示部3に表示させるよう表示処理部16を制御する(ステップS114)。
【0057】
一方、分散値が所定の閾値より小さい区画がなかった場合には(ステップS112,No)、多重判定部14は、多重アーティファクトが発生している区画を検出しない。この場合には、制御部18は、表示処理部16を制御して、信号処理部12によって生成された画像データから通常の超音波画像を生成して表示部3に表示させるよう表示処理部16を制御する(ステップS115)。
【0058】
なお、ここでは、設定音速を1400m/sから1600m/sの間で変える場合について説明したが、設定音速の範囲はこれに限られるものではなく、例えば、診断部位や超音波信号の強度などに応じて適宜に設定可能である。また、設定音速を加速させる単位も20m/sに限られるものではなく、例えば、要求される多重検出の精度に応じて適宜に設定可能である。
【0059】
上述したように、本実施例では、送受信部11が、受信ビームの焦点の位置が被検体内の深さ方向に移動するように受信遅延時間の算出に用いられる設定音速を変えながら反射波データを収集する。また、信号処理部12が、送受信部11によって収集された反射波データから時系列的に複数の画像データを生成する。また、コントラスト算出部13が、信号処理部12によって画像データが生成されるごとに、生成された画像データを複数の区画に分割した後に区画ごとにコントラスト値を算出する。また、多重判定部14が、コントラスト算出部13によって算出されたコントラスト値に基づいて、信号処理部12によって生成された複数の画像データにおける同一区画ごとに設定音速とコントラスト値との相関度を示す指標値を算出する。そして、多重判定部14は、算出した指標値と所定の閾値とを区画ごとに比較し、指標値が所定の閾値より小さい区画を多重アーティファクトが発生している区画として検出する。
【0060】
したがって、本実施例によれば、操作者が、各種の多重アーティファクトの特徴を完全に理解していない場合でも、多重アーティファクトが発生している位置を自動的に操作者に示すことができる。また、本実施例によれば、操作者が、多重アーティファクトの位置を判別するために超音波信号の駆動周期や走査方向を変えるなどの操作を行う必要がない。すなわち、本実施例によれば、超音波画像に発生している多重アーティファクトの位置を容易に判別することができるように操作者を支援することが可能になる。
【0061】
また、本実施例では、表示処理部16が、信号処理部12によって生成された画像データに基づいて、多重判定部14によって多重アーティファクトが発生していると判定された区画の表示態様を変えた超音波画像を生成して表示部3に表示させる。
【0062】
したがって、本実施例によれば、操作者が、表示部3に表示された超音波画像を見ただけで多重アーティファクトの位置を容易に確認することができる。これにより、超音波画像に発生している多重アーティファクトの位置をさらに容易に判別することができるように操作者を支援することが可能になる。
【0063】
また、本実施例では、入力部2が、多重アーティファクトの検出を開始する開始指示を操作者から受け付ける。また、送受信部11が、入力部2によって開始指示が受け付けられた場合に、設定音速を変えながら反射波データを収集する動作を実行する。
【0064】
したがって、本実施例によれば、操作者が所望する場合のみ多重アーティファクトの位置を示した超音波画像が表示されるので、超音波診断装置による従来の画像診断を妨げることなく操作者を支援することが可能になる。
【0065】
なお、上記実施例では、1つの閾値を基準にして、多重アーティファクトが発生しているか否かを判定する場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。例えば、段階的に設定された複数の閾値を基準にして、多重アーティファクが発生している確度を段階的に判定するようにしてもよい。
【0066】
この場合には、多重判定部14が、多重アーティファクトが発生している区画を検出する際に、段階的に設定された複数の閾値を用いて、多重アーティファクトが発生している確度を判定する。また、表示処理部16が、多重判定部14により検出された確度に応じて、多重アーティファクトが発生していると判定された区画の表示態様を段階的に変える。
【0067】
例えば、多重判定部14は、段階的に異なる値となるように複数の閾値を設定しておき、区画ごとに算出したコントラスト値の分散値と各閾値とを比較することで、区画ごとに多重アーティファクトが発生している確度のレベルを決定する。すなわち、多重アーティファクトの確度のレベルは、分散値が小さくなるほど高くなり、分散値が大きくなるほど低くなる。そして、表示処理部16は、多重アーティファクトが発生していると判定された区画を確度のレベルごとに異なる色で表示する。
【0068】
この変形例によれば、多重アーティファクトが発生している確度が提示されるので、操作者が、多重アーティファクトが発生している可能性が高い位置と、多重アーティファクトが発生している可能性が低い位置とを識別することができる。これにより、操作者が、多重アーティファクトによる画像診断への影響を容易に把握することができる。
【0069】
また、上記実施例では、図7に示したように、と、多重アーティファクトが発生していると判定された区画の表示態様を変えた超音波画像を表示部3に表示させる場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。例えば、多重アーティファクトが発生している区画を示した超音波画像を表示するとともに、通常の超音波画像を表示するようにしてもよい。
【0070】
図9は、本実施例に係る画像表示の変形例を説明するための図である。図9に示すように、この場合には、表示処理部16が、多重反射によるアーティファクトが発生していると判定された区画91の表示態様を変えた超音波画像92と、表示態様を変えない超音波画像93とをそれぞれ表示部3に表示させる。このとき、信号処理部12によって生成された画像データから従来と同様に超音波画像を生成し、その超音波画像を表示部3に表示させる。そして、表示処理部16は、例えば、図9に示すように、多重アーティファクトを示した画像と通常の超音波画像とを並べて表示部3に表示させる。
【0071】
この変形例によれば、多重アーティファクトが示された超音波画像と通常の超音波画像とがそれぞれ表示されるので、操作者が、それぞれの超音波画像を比較することで効率よく診断を行うことができる。
【0072】
なお、上記実施例で説明した超音波診断装置100の構成は、要旨を逸脱しない範囲で各種の形態に変更することができる。例えば、図1に示した送受信部11、信号処理部12、コントラスト算出部13、多重判定部14、表示処理部16、及び制御部18の全部又は一部の機能をソフトウェアで実装し、そのソフトウェアをコンピュータに実行させることで超音波診断装置100の機能を実現することもできる。
【0073】
このとき、ソフトウェアとして実装された多重検出プログラムは、コンピュータ装置にあらかじめインストールされていてもよいし、磁気ディスクや光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリなどのリムーバブルな記録媒体に記録され、あるいはネットワークを介して配布されて、コンピュータ装置に適宜インストールされてもよい。
【符号の説明】
【0074】
100 超音波診断装置
10 装置本体
11 送受信部
12 信号処理部
13 コントラスト算出部
14 多重判定部
16 表示処理部
18 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信ビームの焦点の位置が被検体内の深さ方向に移動するように受信遅延時間の算出に用いられる設定音速を変えながら反射波データを収集する収集手段と、
前記収集手段によって収集された反射波データから時系列的に複数の画像データを生成するデータ生成手段と、
前記データ生成手段によって画像データが生成されるごとに、生成された画像データを複数の区画に分割した後に該区画ごとにコントラスト値を算出するコントラスト算出手段と、
前記コントラスト算出手段によって算出されたコントラスト値に基づいて、前記複数の画像データにおける同一区画ごとに前記設定音速と前記コントラスト値との相関度を示す指標値を算出する指標値算出手段と、
前記指標値算出手段によって算出された指標値と所定の閾値とを前記区画ごとに比較し、前記指標値が所定の閾値より小さい区画を超音波の多重反射による多重アーティファクトが発生している区画として検出する多重検出手段と
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記データ生成手段によって生成された画像データに基づいて、前記多重検出手段によって前記多重アーティファクトが発生していると判定された区画の表示態様を変えた超音波画像を生成して表示部に表示させる表示処理手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記多重検出手段は、前記多重アーティファクトが発生している区画を検出する際に、段階的に設定された複数の閾値を用いて、当該多重アーティファクトが発生している確度を判定し、
前記表示処理手段は、前記多重検出手段により検出された確度に応じて、前記多重アーティファクトが発生していると判定された区画の表示態様を段階的に変えることを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記表示処理手段は、前記多重反射によるアーティファクトが発生していると判定された区画の表示態様を変えた超音波画像と当該表示態様を変えない超音波画像とをそれぞれ前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記多重アーティファクトの検出を開始する開始指示を操作者から受け付ける受付手段をさらに備え、
前記収集手段は、前記受付手段によって前記開始指示が受け付けられた場合に、前記設定音速を変えながら前記反射波データを収集する動作を実行することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
受信ビームの焦点の位置が被検体内の深さ方向に移動するように受信遅延時間の算出に用いられる設定音速を変えながら反射波データを収集する収集手順と、
前記収集手順によって収集された反射波データから時系列的に複数の画像データを生成するデータ生成手順と、
前記データ生成手順によって画像データが生成されるごとに、生成された画像データを複数の区画に分割した後に該区画ごとにコントラスト値を算出するコントラスト算出手順と、
前記コントラスト算出手順によって算出されたコントラスト値に基づいて、前記複数の画像データにおける同一区画ごとに前記設定音速と前記コントラスト値との相関度を示す指標値を算出する指標値算出手順と、
前記指標値算出手順によって算出された指標値と所定の閾値とを前記区画ごとに比較し、前記指標値が所定の閾値より小さい区画を超音波の多重反射による多重アーティファクトが発生している区画として検出する多重検出手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする多重検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−217826(P2011−217826A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87675(P2010−87675)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】