説明

超音波診断装置及び超音波プローブの送信駆動電圧制御プログラム

【課題】超音波プローブを高感度で使用してその性能を十分発揮すること。
【解決手段】超音波プローブにおける超音波の送信条件に対応する無限時間後の第1の許容温度値と目標温度値とに基づいて超音波プローブに対するデファルト電圧を決定し、操作入力された診断時間に基づいて超音波プローブの診断時間内での第2の許容温度値を算出し、少なくともデファルト電圧と第2の許容温度値とに基づいて超音波プローブに印加する新たな送信駆動電圧を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波プローブを駆動して被検体を診断するときの診断時間に係わらず高感度で超音波プローブを動作させる超音波診断装置及び超音波プローブの送信駆動電圧制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置では、生体等の被検体に対する超音波診断を行う上での安全規格上、超音波プローブを動作させて無限時間経過後の表面温度に対する許容温度の上限が定められている。この安全規格を尊守するために、超音波診断装置は、超音波プローブを動作させた状態での無限時間経過後の超音波プローブの表面温度が許容温度の上限を超えないように、超音波プローブから送信する超音波の送信パワーを制御する必要がある。
【0003】
上記無限時間経過後の超音波プローブの表面温度は、例えば超音波プローブの種類、送信条件例えば送信波形、送信ウェイティング(weighting)、送信周波数、送信フォーカス(focus)等の条件、特に超音波プローブに印加する送信駆動電圧に依存している。
超音波プローブの送信パワーの制御方法は、超音波プローブに印加する送信駆動電圧を低下させ、無限時間経過後の超音波プローブの表面温度が許容温度の上限を超えないようにするのが一般的である。
【0004】
図10は超音波プローブの送信駆動電圧制御プログラムの流れ図を示す。超音波診断装置の駆動電圧算出ユニット1は、送信条件として例えば送信波形、送信weighing、送信周波数、送信フォーカス等を入力する。この駆動電圧算出ユニット1は、例えば図11に示すような送信電圧毎の許容電圧テーブル2を有する。この送信電圧毎の許容電圧テーブル2には、例えば送信波形、送信ウェイティング、送信周波数、送信フォーカス等の送信条件毎の超音波プローブの送信駆動電圧に対する無限時間経過後の相対飽和温度が記憶されている。
【0005】
この駆動電圧算出ユニット1は、目標温度値(相対温度上限値)4と許容電圧テーブル2に記憶されている無限時間経過後の相対飽和温度とを比較して超音波プローブの送信駆動電圧を求め、この送信駆動電圧を初期電圧(以下、デファルト(Default)電圧と称する)Vdとして決定し、このデファルト電圧Vdから超音波プローブに対する送信駆動電圧Vsを設定する。
超音波診断を行う上での安全規格を尊守する超音波診断装置の技術としては、例えば特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−70784公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記超音波プローブの送信駆動電圧制御プログラムは、目標温度値と無限時間経過後の相対飽和温度とを比較して送信駆動電圧Vsを設定しているので、この送信駆動電圧Vsでの超音波プローブの表面温度は、無限時間経過後の相対飽和温度に制限され、かつ送信パワーも当該無限時間経過後の相対飽和温度に対応する送信駆動電圧Vsにより制限される。
【0008】
超音波プローブは、表面温度が目標温度値の近傍になると、超音波送受信の感度が高くなり、その性能が十分に発揮される。しかしながら、上記の如く超音波プローブの表面温度は、無限時間経過後の相対飽和温度に制限されるので、表面温度が目標温度値に到達するのに時間が掛かる。
【0009】
超音波プローブを駆動して被検体の診断に使用するのは、超音波プローブを駆動開始してから直ぐであることが多く、超音波プローブの表面温度が目標温度値に到達する以前のかなり低い温度であることが多い。このため、超音波プローブを高感度で使用してその性能を十分発揮することができない。
【0010】
本発明の目的は、超音波プローブを高感度で使用してその性能を十分発揮できる超音波診断装置及び超音波プローブの送信駆動電圧制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主要な局面に係る超音波診断装置は、超音波プローブから超音波を送信するための送信駆動電圧を制御するもので、前記超音波プローブにおける前記超音波の送信条件に対応する無限時間後の第1の許容温度値と目標温度値とに基づいて前記超音波プローブに対する初期電圧を決定する初期電圧算出部と、前記超音波プローブを駆動させる診断時間を操作入力する診断時間入力部と、前記診断時間入力部から操作入力された前記診断時間に基づいて前記超音波プローブの前記診断時間内での第2の許容温度値を算出する診断時間温度算出部と、少なくとも前記初期電圧と前記第2の許容温度値とに基づいて前記超音波プローブに印加する前記送信駆動電圧を制御する送信電圧制御部とを具備する。
【0012】
本発明の主要な局面に係る超音波プローブの送信駆動電圧制御プログラムは、超音波診断装置に内蔵されたコンピュータに、超音波プローブにおける超音波の送信条件に対応する無限時間後の第1の許容温度値と目標温度値とに基づいて前記超音波プローブに対する初期電圧を算出させる算出機能と、操作入力された診断時間に基づいて前記超音波プローブの前記診断時間内での第2の許容温度値を算出させる算出機能と、少なくとも前記初期電圧と前記第2の許容温度値とに基づいて前記超音波プローブに印加する前記送信駆動電圧を設定させる設定機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、超音波プローブを高感度で使用してその性能を十分発揮できる超音波診断装置及び超音波プローブの送信駆動電圧制御プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の第1の実施の形態を示す構成図。
【図2】同装置における超音波プローブの送信駆動電圧制御プログラムを示す流れ図。
【図3】同装置における超音波プローブの送信駆動電圧制御フローチャート。
【図4】同装置における超音波プローブの表面温度の温度上昇を示す図。
【図5】本発明に係る超音波診断装置の第2の実施の形態を示す構成図。
【図6】同装置における超音波プローブの送信駆動電圧制御フローチャート。
【図7】同装置における超音波プローブの表面温度の温度変化を示す図。
【図8】本発明に係る超音波診断装置の第3の実施の形態における超音波プローブの送信駆動電圧制御フローチャート。
【図9】同装置における超音波プローブの表面温度の温度上昇を示す図。
【図10】従来の超音波プローブの送信駆動電圧制御プログラムを示す流れ図。
【図11】同方法に用いられる超音波プローブの送信駆動電圧に対する無限時間経過後の相対飽和温度を記憶する送信電圧毎の許容電圧テーブルを示す摸式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は超音波診断装置の構成図を示す。同図に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ10、装置本体11、送受信部12、Bモード処理部13、ドプラ処理部14、画像メモリ15、画像生成部16、画像合成部17、ディスプレイ18、制御プロセッサ2、内部記憶部19、入力部27、インタフェース部30を具備している。
【0016】
超音波プローブ10は、送受信ユニット12からの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブ10から被検体に超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ10に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分を依存して、周波数偏移を受ける。
【0017】
送受信部12は、送信系としてのパルス発生器、遅延回路およびパルサを有している。パルサでは、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。また、遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各レートパルスに与えられる。パルス発生器は、このレートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ10に駆動パルスを印加する。
【0018】
また、送受信部12は、受信系としてのプリアンプ、A/D変換器、受信遅延部、加算器2等を有している。プリアンプでは、超音波プローブ10を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。受信遅延部は、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0019】
Bモード処理部13は、検波器、対数圧縮器を有している。検波器は、送受信部12からエコー信号を受け取り、包絡線検波処理を実行する。対数圧縮器は、検波後のエコー信号に対して対数増幅を施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。
【0020】
ドプラ処理部14は、送受信部12から受け取ったエコー信号から速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。得られた血流情報は、所定の処理を受けた後、平均速度画像、分散画像、パワー画像、これらの組み合わせ画像としてカラー表示される。
【0021】
画像メモリ15は、フレーム毎の画像データを格納する記憶メモリから成る。この画像データは、例えば診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、静止画的に、あるいは複数枚を使って動画的に再生することが可能である。
【0022】
画像生成部16は、超音波スキャンの走査線信号列を、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換し、表示画像としての超音波診断画像を生成する。画像生成部16は、画像データを格納する記憶メモリを搭載しており、例えば診断の後に操作者が検査中に記録された画像を呼び出すことが可能となっている。なお、当該画像生成ユニット25に入る以前のデータは、「生データ」と呼ばれることがある。
【0023】
画像合成部17は、画像生成部16において生成された超音波画像を、所定のレイアウトに従って文字情報等と合成し、ビデオ信号をディスプレイ18に出力する。
【0024】
ディスプレイ18は、画像合成部17からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。
【0025】
入力部27は、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を本超音波診断装置本体にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボールの他、マウス、キーボード等を有している。さらに、入力部27は、診断時間入力部28を有している。この診断時間入力部28は、医師等のユーザのマニュアル操作を受けて超音波プローブ10を駆動させる診断時間を操作入力するものである。
インタフェース部30は、入力デバイス、記憶媒体、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインタフェースである。当該装置において得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インタフェース部30を介して、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0026】
内部記憶部19は、各種スキャンシーケンス、画像生成、表示処理を実行するための制御プログラムや、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件、その他のデータ群が保管されている。また必要に応じて、画像メモリ15中の画像の保管などにも使用される。内部記憶部19のデータは、インタフェース部30を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0027】
さらに、内部記憶部19は、許容温度テーブル23と、プログラムメモリ20と、データメモリ21と、発熱時定数テーブル26とを有している。
【0028】
許容温度テーブル23には、例えば送信波形、送信ウェイティング、送信周波数、送信フォーカス等の送信条件毎の超音波プローブ10の送信駆動電圧に対する無限時間経過後の相対飽和温度が記憶されている。
発熱時定数テーブル26には、例えば送信波形、送信ウェイティング、送信周波数、送信フォーカス等の送信条件毎の超音波プローブ10の発熱時定数Tのデータが記憶されている。
【0029】
プログラムメモリ20には、超音波プローブ10の送信駆動電圧を制御するためのプログラムが予め記憶されている。この送信駆動電圧制御プログラムは、超音波プローブ10における超音波の送信条件に対応する無限時間後の第1の許容温度値と目標温度値とに基づいて超音波プローブ10に対するデファルト電圧Vdを決定し、操作入力された診断時間に基づいて超音波プローブ10の診断時間内での第2の許容温度値を算出し、少なくともデファルト電圧Vdと第2の許容温度値とに基づいて超音波プローブ10に印加する新たな送信駆動電圧Vnを設定する。
【0030】
制御プロセッサ2は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する。また、制御プロセッサ2は、プログラムメモリ20に記憶されている送信駆動電圧制御プログラムを実行することにより、初期電圧決定部22と、診断時間入力部28と、診断時間温度算出部24と、送信電圧制御部25との各機能を有する。
初期電圧決定部22は、超音波プローブ10における超音波の送信条件に対応する無限時間後の第1の許容温度値と目標温度値とに基づいて超音波プローブ10に対するデファルト電圧Vdを決定する。
診断時間温度算出部24は、診断時間入力部28からマニュアル操作入力された診断時間に基づいて超音波プローブ10の診断時間内での第2の許容温度値を算出する。具体的に、診断時間温度算出部24は、目標温度値をST、診断時間をt1、超音波プローブ10の発熱時定数をTとすると、診断時間t1内での第2の許容温度値ST1を、
ST1=ST×(1−et1/T) …(1)
により算出する。
【0031】
送信電圧制御部25は、少なくともデファルト電圧Vdと第2の許容温度値ST1とに基づいて超音波プローブ10に印加する送信駆動電圧を制御するもので、デファルト電圧をVd、目標温度値をST、診断時間t1内での第2の許容温度値をST1とすると、超音波プローブ10に印加する新たな送信駆動電圧Vnを、
Vn=Vd×(ST/ST1)1/2 …(2)
により算出する。
【0032】
次に、上記の如く構成された装置における送信駆動電圧の制御方法について図2に示す超音波プローブの送信駆動電圧制御プログラムを示す流れ図及び図3に示す送信駆動電圧制御フローチャートを参照して説明する。
医師等のユーザのマニュアル操作を受けて診断時間入力部28は、ステップ#1において、超音波プローブ10を駆動させる診断時間t1を操作入力する。
【0033】
次に、駆動電圧算出ユニット1は、送信条件として例えば送信波形、送信ウェイティング、送信周波数、送信フォーカス等を入力する。この駆動電圧算出ユニット1は、上記同様に、目標温度値(相対温度上限値)STと上記図11に示す許容電圧テーブル3に記憶されている無限時間経過後の相対飽和温度とを比較して超音波プローブ10の送信駆動電圧を求め、この送信駆動電圧をデファルト電圧Vdとして決定する。
これと共に、駆動電圧算出ユニット1は、送信条件である例えば送信波形、送信ウェイティング、送信周波数、送信フォーカス等に対応する超音波プローブ10の発熱時定数Tのデータを発熱時定数テーブル26から読み出す。
【0034】
一方、診断時間温度算出部24は、ステップ#2において、診断時間入力部28からマニュアル操作入力された診断時間t1と、目標温度値STと、超音波プローブ10の発熱時定数Tとを用いて上記式(1)を演算し、診断時間t1内での第2の許容温度値ST1を算出する。
次に、送信電圧制御部25は、ステップ#3において、目標温度値STと、診断時間t1内での第2の許容温度値ST1とを上記式(2)により温度の比率算出を行い、かつこの温度の比率をデファルト電圧Vdに乗算して超音波プローブ10に印加する新たな送信駆動電圧Vnを算出する。
次に、駆動電圧算出ユニット1は、送信電圧制御部25により算出された新たな送信駆動電圧Vnを設定する。これにより、超音波プローブ10は、送受信部12からの新たな送信駆動電圧Vnを受けて超音波を送信すると共に、被検体Pからの反射波を受信することを開始するので、医師等のユーザは、当該超音波プローブ10を用いて例えば人体等の生体である被検体Pの診断が可能となる。
【0035】
この診断中、超音波プローブ10には、新たな送信駆動電圧Vnが時間の経過と共に印加されるので、超音波プローブ10の表面温度Tvnは、例えば図3に示すように診断時間t1時に目標温度値STに到達する。この超音波プローブ10の表面温度Tvnの温度上昇は、従来のように目標温度値と無限時間経過後の相対飽和温度とを比較して送信駆動電圧Vsを設定しての超音波プローブ10の表面温度Tvnの温度上昇よりも速く、かつ診断時間t1内において目標温度値STに到達する。これにより、超音波プローブ10は、表面温度Tvnが目標温度値STの近傍に速く到達でき、超音波送受信の感度を高い状態で駆動でき、その性能を十分に発揮して被検体の診断に使用できる。
【0036】
このように上記第1の実施の形態によれば、超音波プローブ10における超音波の送信条件に対応する無限時間後の第1の許容温度値と目標温度値とに基づいて超音波プローブ10に対するデファルト電圧Vdを決定し、操作入力された診断時間に基づいて超音波プローブ10の診断時間内での第2の許容温度値を算出し、少なくともデファルト電圧Vdと第2の許容温度値とに基づいて超音波プローブ10に印加する新たな送信駆動電圧Vnを設定するので、診断時間t1内で、超音波プローブ10の表面温度Tvnを目標温度値STの近傍に速く到達でき、超音波送受信の感度を高い状態で駆動でき、その性能を十分に発揮して被検体の診断に使用できる。
【0037】
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図1と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
図5は超音波診断装置の構成図を示す。インタフェース部30には、タイマ31と、報知部32とが接続されている。タイマ31は、超音波プローブ10の駆動時間すなわち超音波プローブ10を用いての被検体Pの診断時間を計測する。
報知部32は、制御プロセッサ2において実行される、タイマ31に計測により超音波プローブ10の駆動時間が診断時間入力部28からマニュアル操作入力された診断時間t1を越えるか否かの判断の結果に基づいてメッセージを報知する。すなわち、報知部32は、制御プロセッサ2において超音波プローブ10の駆動時間が診断時間t1を越えたと判断された場合には、超音波プローブ10の駆動時間が診断時間t1を越える旨のメッセージを報知する。この報知部32は、例えば液晶ディスプレイ又は警報器のいずれか一方又は両方であって、超音波プローブ10の駆動時間が診断時間t1を越える警告のメッセージを液晶ディスプレイに表示したり、警報器を動作させて警告音を発生する。又、報知部32は、超音波プローブ10の駆動時間が診断時間t1を越える所定時間前に、超音波プローブ10の駆動時間が診断時間t1を越える旨の予告のメッセージを液晶ディスプレイに表示してもよい。
【0038】
送信電圧制御部25は、タイマ31に計測により超音波プローブ10の駆動時間が診断時間t1を越えると、超音波プローブ10に印加する送信駆動電圧をデファルト電圧Vdに制御する。又、送信電圧制御部25は、超音波プローブ10の駆動時間が診断時間t1を越えると、超音波プローブ10への送信駆動電圧Vsを停止する。
【0039】
次に、上記の如く構成された装置における送信駆動電圧の制御方法について図6に示す送信駆動電圧制御フローチャートを参照して説明する。
上記同様に、医師等のユーザのマニュアル操作を受けて診断時間入力部28は、ステップ#1において、超音波プローブ10を駆動させる診断時間t1を操作入力する。
診断時間温度算出部24は、ステップ#2において、上記式(1)を演算し、診断時間t1内での第2の許容温度値ST1を算出する。
次に、送信電圧制御部25は、ステップ#3において、上記式(2)により温度の比率算出を行い、かつこの温度の比率をデファルト電圧Vdに乗算して超音波プローブ10に印加する新たな送信駆動電圧Vnを算出する。
次に、駆動電圧算出ユニット1は、送信電圧制御部25により算出された新たな送信駆動電圧Vnを設定する。これにより、医師等のユーザは、当該超音波プローブ10を用いて例えば人体等の生体である被検体Pの診断が可能となる。
【0040】
次に、タイマ31は、ステップ#4において、超音波プローブ10に対して新たな送信駆動電圧Vnが設定されて被検体Pの診断が可能となったときから超音波プローブ10の駆動時間すなわち超音波プローブ10を用いての被検体Pの診断時間の計測を開始する。
【0041】
次に、制御プロセッサ2は、ステップ#5において、タイマ31に計測により超音波プローブ10の駆動時間がマニュアル操作入力された診断時間t1を越えるか否かを判断する。この判断の結果、超音波プローブ10の駆動時間が診断時間t1を越えると、報知部32は、ステップ#6において、超音波プローブ10の駆動時間が診断時間t1を越える旨の警告のメッセージを例えば液晶ディスプレイに表示する。
【0042】
次に、送信電圧制御部25は、ステップ#7において、超音波プローブ10の駆動時間が診断時間t1を越えると、超音波プローブ10への送信駆動電圧Vsを停止、又は超音波プローブ10に印加する送信駆動電圧をデファルト電圧Vdに低下する。このように超音波プローブ10への送信駆動電圧Vsを停止又はデファルト電圧Vdに低下すると、超音波プローブ10の表面温度は、例えば図7に示すように送信駆動電圧Vsを停止又はデファルト電圧Vdに低下した時点から下降する。
【0043】
このように上記第2の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態に加え、タイマ31に計測により超音波プローブ10の駆動時間が診断時間t1を越えると、超音波プローブ10の駆動時間が診断時間t1を越える警告のメッセージを表示したり、又は超音波プローブ10の駆動時間が診断時間t1を越える所定時間前に予告のメッセージを表示するので、マニュアル操作入力した診断時間t1を越えて診断を行う場合であって、ユーザは、診断時間t1を越えて診断することを知ることができ、この時点で、自動的又はマニュアル操作によって超音波プローブ10に印加する送信駆動電圧をデファルト電圧Vdに制御又は停止できる。これにより、超音波プローブ10の表面温度は、目標温度値ST以上になることを防止でき、診断を継続して行うことができる。
【0044】
診断を継続して行う方法としては、超音波プローブ11に温度センサ32を内蔵し、この温度センサ32により検出された超音波プローブ11の表面温度等が予め設定された規定温度になると、送信電圧制御部25により超音波プローブ10に印加する送信駆動電圧をデファルト電圧Vdに制御又は停止してもよい。
【0045】
次に、本発明の第3の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、超音波診断装置の構成は、図5と同一であるので、相違する部分について説明する。
本装置は、超音波プローブ11を診断時間t1を越え、超音波プローブ10に印加する送信駆動電圧をデファルト電圧Vdに低下して診断を継続可能とする場合、超音波プローブ10の残熱によって当該超音波プローブ10の表面温度Tvnが目標温度値STを超えるのを防止する機能を有する。
【0046】
診断時間温度算出部24は、診断時間入力部28からマニュアル操作入力された診断時間t1を受けると、この診断時間t1に対して診断の延長時間(マージン時間)tmを自動的に追加し、当該マージン時間tmの追加された診断時間(t1+tm)に基づいて第2の許容温度値ST1を算出する。
【0047】
次に、上記の如く構成された装置における送信駆動電圧の制御方法について図8に示す送信駆動電圧制御フローチャートを参照して説明する。
上記同様に、医師等のユーザのマニュアル操作を受けて診断時間入力部28は、ステップ#1において、超音波プローブ10を駆動させる診断時間t1を操作入力する。
次に、診断時間温度算出部24は、ステップ#10において、診断時間入力部28からマニュアル操作入力された診断時間t1を受けると、この診断時間t1に対してマージン時間tmを自動的に追加する。
次に、診断時間温度算出部24は、ステップ#11において、マージン時間tmの追加された診断時間(t1+tm)に基づいて次式(3)を演算し、
ST1=ST×(1−e(t1+tm)/T) …(3)
診断時間(t1+tm)内での第2の許容温度値ST1を算出する。
【0048】
次に、送信電圧制御部25は、ステップ#12において、上記式(2)により温度の比率算出を行い、かつこの温度の比率をデファルト電圧Vdに乗算して超音波プローブ10に印加する新たな送信駆動電圧Vnを算出する。
次に、駆動電圧算出ユニット1は、送信電圧制御部25により算出された新たな送信駆動電圧Vnを設定する。これにより、医師等のユーザは、当該超音波プローブ10を用いて例えば人体等の生体である被検体Pの診断が可能となる。
【0049】
次に、タイマ31は、ステップ#4において、超音波プローブ10に対して新たな送信駆動電圧Vnが設定されて被検体Pの診断が可能となったときから超音波プローブ10の駆動時間の計測を開始する。
【0050】
次に、制御プロセッサ2は、ステップ#5において、タイマ31に計測により超音波プローブ10の駆動時間が診断時間(t1+tm)を越えるか否かを判断する。この判断の結果、超音波プローブ10の駆動時間が診断時間(t1+tm)を越えると、報知部32は、ステップ#6において、超音波プローブ10の駆動時間が診断時間(t1+tm)を越える旨の警告のメッセージを例えば液晶ディスプレイに表示する。
【0051】
次に、送信電圧制御部25は、ステップ#7において、超音波プローブ10の駆動時間が診断時間(t1+tm)を越えると、超音波プローブ10への送信駆動電圧Vsを停止、又は超音波プローブ10に印加する送信駆動電圧をデファルト電圧Vdに低下する。このように超音波プローブ10への送信駆動電圧Vsを停止又はデファルト電圧Vdに低下すると、超音波プローブ10の表面温度は、例えば図7に示すように送信駆動電圧Vsを停止又はデファルト電圧Vdに低下した時点から下降する。
【0052】
ここで、診断中、超音波プローブ10には、マージン時間tmを追加した診断時間(t1+tm)に基づく新たな送信駆動電圧Vnが時間の経過と共に印加されるので、超音波プローブ10の表面温度Tvnは、例えば図9に示すように診断時間(t1+tm)時に目標温度値STに到達する。これにより、超音波プローブ11を診断時間t1を越え、超音波プローブ10に印加する送信駆動電圧をデファルト電圧Vdに低下して診断を継続可能とする場合でも、超音波プローブ10の残熱によって当該超音波プローブ10の表面温度Tvnが目標温度値STを超えるのを防止できる。
【0053】
このように上記第3の実施の形態によれば、マニュアル操作入力された診断時間t1に対してマージン時間tmを自動的に追加し、このマージン時間tmの追加された診断時間(t1+tm)に基づいて診断時間(t1+tm)内での第2の許容温度値ST1を算出し、続いて超音波プローブ10に印加する新たな送信駆動電圧Vnを算出するで、超音波プローブ11を診断時間t1を越えて診断を継続可能とする場合でも、超音波プローブ10の残熱によって当該超音波プローブ10の表面温度Tvnが目標温度値STを超えるのを防止できる。
【0054】
なお、診断時間入力部28は、操作入力された診断時間T1の例えばデータメモリ21等の記憶装置に記憶して診断時間t1の履歴を作成し、この履歴に基づいて診断時間t1を設定するようにしてもよい。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1:駆動電圧算出ユニット、2:制御プロセッサ、10:超音波プローブ、11:装置本体、12:送受信部、13:Bモード処理部、14:ドプラ処理部、15:画像メモリ、16:画像生成部、17:画像合成部、18:ディスプレイ、19:内部記憶部、20:プログラムメモリ、21:データメモリ、26:発熱時定数テーブル、22:初期電圧決定部、23:許容温度テーブル、24:診断時間温度算出部、25:送信電圧制御部、27:入力部、28:診断時間入力部、30:インタフェース部、31:タイマ、32:報知部、P:被検体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブから超音波を送信するための送信駆動電圧を制御する超音波診断装置において、
前記超音波プローブにおける前記超音波の送信条件に対応する無限時間後の第1の許容温度値と目標温度値とに基づいて前記超音波プローブに対する初期電圧を決定する初期電圧決定部と、
前記超音波プローブを駆動させる診断時間を操作入力する診断時間入力部と、
前記診断時間入力部から操作入力された前記診断時間に基づいて前記超音波プローブの前記診断時間内での第2の許容温度値を算出する診断時間温度算出部と、
少なくとも前記初期電圧と前記第2の許容温度値とに基づいて前記超音波プローブに印加する前記送信駆動電圧を制御する送信電圧制御部と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記送信電圧制御部は、前記超音波プローブの温度を検出する温度センサにより検出される前記温度が予め設定された規定温度になった
場合には、前記超音波プローブに印加する前記送信駆動電圧を少なくとも低下させることを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記超音波プローブの駆動時間を計測するタイマと、
前記タイマの計測される前記超音波プローブの駆動時間が前記診断時間を越えるか否かを判断する判断部と、
前記判断部が前記超音波プローブの駆動時間が前記診断時間を越えると判断した場合には、少なくとも前記超音波プローブの駆動時間が前記診断時間を越える旨を報知する報知部と、
を有することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記超音波プローブの駆動時間を計測するタイマを有し、
前記送信電圧制御部は、前記タイマに計測により前記超音波プローブの駆動時間が前記診断時間を越えるか否かを判断し、前記超音波プローブの駆動時間が前記診断時間を越えると、前記超音波プローブに印加する前記送信駆動電圧を少なくとも前記初期電圧に制御する、
ことを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記送信電圧制御部は、前記超音波プローブの駆動時間が前記診断時間を越えると、前記送信駆動電圧の前記超音波プローブへの印加を停止することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記診断時間温度算出部は、前記診断時間に対して診断の延長時間を追加し、当該延長時間の追加された診断時間に基づいて前記第2の許容温度値を算出することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記診断時間温度算出部は、前記目標温度値をST、前記診断時間をt1、発熱時定数をTとすると、前記診断時間t1内での前記第2の許容温度値ST1を、
ST1=ST×(1−et1/T
により算出することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記送信電圧制御部は、前記初期電圧をVd、前記目標温度値をST、前記診断時間t1内での前記第2の許容温度値をST1とすると、前記超音波プローブに印加する前記送信駆動電圧Vnを、
Vn=Vd×(ST/ST1)1/2
により算出することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記診断時間入力部は、前記操作入力された前記診断時間の履歴に基づいて前記診断時間を入力することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項10】
超音波診断装置に内蔵されたコンピュータに、超音波プローブにおける超音波の送信条件に対応する無限時間後の第1の許容温度値と目標温度値とに基づいて前記超音波プローブに対する初期電圧を算出させる算出機能と、
操作入力された診断時間に基づいて前記超音波プローブの前記診断時間内での第2の許容温度値を算出させる算出機能と、
少なくとも前記初期電圧と前記第2の許容温度値とに基づいて前記超音波プローブに印加する前記送信駆動電圧を設定させる設定機能と、
を実現させることを特徴とする超音波プローブの送信駆動電圧制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−62359(P2011−62359A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216007(P2009−216007)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】