説明

超音波診断装置及び超音波プローブ

【課題】圧電素子の分極特性の劣化に対して好適なタイミングで対処することが可能な超音波診断装置及び超音波プローブを提供することである。
【解決手段】実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブと、記憶部と、検出部と、出力部とを有する。超音波プローブは、圧電素子を含み、超音波を送信し被検体からの反射波を受信して受信信号を生成する。この超音波診断装置は、この受信信号に基づいて被検体内の画像を生成する。記憶部は、圧電素子の脱分極の程度に伴い変化する物理量の閾値をあらかじめ記憶する。検出部は、超音波プローブにおけるこの物理量を検出する。出力部は、この物理量の検出結果と、記憶部に記憶された閾値との比較結果に基づいて所定の情報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は超音波診断装置及び超音波プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブを用いて被検体内に超音波を送信してその反射波を受信することにより、被検体の生体情報を取得するものである。
【0003】
超音波プローブは、超音波を送信及び受信する複数の超音波振動子を有する。各超音波振動子は、圧電素子と、これを挟む一対の電極とを含んで構成される。これら電極の間に電圧を印加することで、超音波振動子は超音波を発生する。また、超音波振動子は、被検体内からの反射波を受信して、電気信号としての受信信号を出力する。超音波診断装置は、このようにして得られた受信信号に対して増幅処理、遅延加算処理、画像処理等を施すことにより、被検体内の形態や機能を表す画像を生成する。
【0004】
近年、超音波診断装置においては、診断モードの種類の増加や、画像の高精細化が進行している。これに伴い、様々な種類の超音波プローブが用いられるようになってきている。このような状況の下、次のような問題が指摘されている。
【0005】
すなわち、超音波プローブを長期間にわたり使用すると、圧電素子に脱分極が発生する。そうすると、超音波プローブの音響特性が悪化して画質が劣化する。また、装置の使用方法によっても脱分極の進行度合いは異なってくる。たとえばCWモード(Continuous Wave:連続波モード)を使用する場合や、振幅の大きい超音波を送受信する場合、あるいは被検体内の深度の深い位置にフォーカスを設定して超音波を送受信する場合には、そうでない場合と比較して脱分極が早く進行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−230033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、圧電素子の分極特性の劣化は、超音波診断装置の極めて重要な性能、つまり画質に悪影響を及ぼすものである。しかし、従来の技術では、超音波プローブ中の圧電素子の分極特性の劣化がどの程度進行しているか知ることができなかったため、この問題に対して好適なタイミングで対処することは困難であった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、圧電素子の分極特性の劣化に対して好適なタイミングで対処することを可能にする超音波診断装置及び超音波プローブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブと、記憶部と、検出部と、出力部とを有する。超音波プローブは、圧電素子を含み、超音波を送信し被検体からの反射波を受信して受信信号を生成する。この超音波診断装置は、この受信信号に基づいて被検体内の画像を生成する。記憶部は、圧電素子の脱分極の程度に伴い変化する物理量の閾値をあらかじめ記憶する。検出部は、超音波プローブにおけるこの物理量を検出する。出力部は、この物理量の検出結果と、記憶部に記憶された閾値との比較結果に基づいて所定の情報を出力する。
【0010】
実施形態に係る超音波プローブは、圧電素子を含み、超音波の送受信が可能である。更に、この超音波プローブは、圧電素子の脱分極の程度に伴い変化する物理量を検出可能な検出部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る超音波診断装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態に係る超音波診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図5】第2の実施形態に係る超音波診断装置の構成の一例を示す回路図である。
【図6】第2の実施形態に係る超音波診断装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】第3の実施形態に係る超音波診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図8】第3の実施形態に係る超音波診断装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図9】第4の実施形態に係る超音波診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図10】第4の実施形態に係る超音波診断装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図11】第5の実施形態に係る超音波診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図12】第5の実施形態に係る超音波診断装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図13】第6の実施形態に係る超音波診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図14】第6の実施形態に係る超音波診断装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〈第1の実施形態〉
第1の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。
【0013】
[構成]
この実施形態に係る超音波診断装置の構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、この超音波診断装置の全体構成の一例を表す。図2は、この超音波診断装置の制御系の構成の一例を表す。
【0014】
図1に示すように、この実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、送信部2と、受信部3と、信号処理部4と、画像生成部5と、表示制御部6と、表示部7と、制御部8と、入力部9と、記憶部10と、検出部11とを有する。また、図2に示すように、制御部8は、検出制御部81と、判定部82と、出力制御部83とを有する。更に、検出部11は、スイッチ111と、増幅回路112と、演算回路113とを有する。
【0015】
(超音波プローブ1)
超音波プローブ1には、複数の超音波振動子が走査方向に1列に配置された1次元アレイプローブ、又は、複数の超音波振動子が2次元的に配置された2次元アレイプローブが用いられる。また、走査方向に1列に配置された複数の超音波振動子を、走査方向に直交する揺動方向に揺動させる機械式1次元アレイプローブを用いてもよい。超音波プローブ1は被検体に超音波を送信し、被検体からの反射波をエコー信号として受信して電気信号(受信信号)を出力する。
【0016】
各超音波振動子は、圧電素子と電極対とを含んで構成される。電極対は、圧電素子を挟んで配置される。
【0017】
(送信部2)
送信部2は、超音波プローブ1に電気信号を供給して所定の焦点にビームフォームした(つまり送信ビームフォームした)超音波を送信させる。
【0018】
(受信部3)
受信部3は、超音波プローブ1から出力された受信信号を受信する。受信部3は、この信号に対して遅延処理を行うことにより、アナログの受信信号を整相された(つまり受信ビームフォームされた)デジタルのデータに変換する。
【0019】
受信部3は、例えば図示しないプリアンプ回路と、A/D変換器と、受信遅延回路と、加算器とを有する。プリアンプ回路は、超音波プローブ1の各超音波振動子から出力される受信信号を受信チャンネルごとに増幅する。A/D変換器は、増幅された受信信号をデジタル信号に変換する。受信遅延回路は、デジタル信号に変換された受信信号に、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、遅延時間が与えられた受信信号を加算する。その加算によって、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。受信部3から出力される受信信号は、信号処理部4に出力される。
【0020】
(信号処理部4)
信号処理部4は、受信信号に対して各種の信号処理を施す。信号処理の例としてはゲイン処理などがある。信号処理部4はBモード処理部を有する。Bモード処理部は受信信号を受信部3から受けて、受信信号の振幅情報の映像化を行う。具体的には、Bモード処理部は、受信信号に対してバンドパスフィルタ処理を行い、その後、出力信号の包絡線を検波し、検波されたデータに対して対数変換による圧縮処理を施す。
【0021】
信号処理部4はCFM(Color Flow Mapping)処理部を有していてもよい。CFM処理部は血流情報の映像化を行う。血流情報には、速度、分布、又はパワーなどの情報があり、血流情報は2値化情報として得られる。
【0022】
信号処理部4はドプラ処理部を有していてもよい。ドプラ処理部は受信信号を位相検波することによりドプラ偏移周波数成分を取り出し、FFT処理を施すことにより血流速度を表すドプラ周波数分布を生成する。
【0023】
信号処理部4は、信号処理が施された受信信号(超音波ラスタデータ)を画像生成部5に出力する。
【0024】
(画像生成部5)
画像生成部5は、信号処理部4から出力された信号処理後の受信信号(超音波ラスタデータ)に基づいて超音波画像データを生成する。画像生成部5は、例えばDSC(Digital Scan Converter:デジタルスキャンコンバータ)を有する。画像生成部5は、走査線の信号列で表される信号処理後の受信信号を、直交座標系で表される画像データに変換する(スキャンコンバージョン処理)。例えば、画像生成部5は、Bモード処理部によって信号処理が施された受信信号にスキャンコンバージョン処理を施すことにより、被検体の組織の形態を表すBモード画像データを生成する。画像生成部5は、超音波画像データを表示制御部6に出力する。
【0025】
(表示制御部6)
表示制御部6は、超音波画像データを画像生成部5から受けて、超音波画像データに基づく超音波画像を表示部7に表示させる。
【0026】
(表示部7)
表示部7は、CRTや液晶ディスプレイなどのモニタで構成されている。表示部7は、超音波画像を表示する。
【0027】
(制御部8)
制御部8は、超音波診断装置の各部の動作を制御する。例えば、制御部8は、送信部2及び受信部3による超音波の送受信を制御する。また、制御部8は、記憶部10に記憶された情報を読み出したり、記憶部10に情報を記憶させたりする。また、制御部8は、入力部9から入力される信号や情報に基づいて、更には所定のコンピュータプログラムに基づいて、各部の動作を制御する。
【0028】
検出制御部81は、検出部11を制御して後述の検出動作を実行させる。特に、検出制御部81は、検出部11のスイッチ111の開閉を切り換える。判定部82は、検出部11による検出結果と所定の閾値との大小関係を判定する。判定部82の動作については後述する。出力制御部83は、判定部82による判定結果に基づいて、所定の情報を表示部7に表示させる。出力制御部83の動作については後述する。なお、表示される情報は、たとえば記憶部10にあらかじめ記憶されている。
【0029】
(入力部9)
入力部9は、ユーザによる操作を受けて、この操作内容に応じた信号や情報を制御部8に入力する。また、入力部9は、ネットワークやメディアを介して信号や情報の入力を受ける機能を有していてもよい。
【0030】
(記憶部10)
記憶部10は、各種の情報やデータを記憶する。特に、記憶部10は、超音波プローブ1の圧電素子の脱分極の程度に伴い変化する物理量について、その閾値をあらかじめ記憶している。この物理量の例としては、超音波プローブ1から出力される受信信号の電圧値や電流値、超音波プローブ1の動作時における電極対の温度などがある。閾値として記憶される情報は、当該物理量のひとつの値であってもよいし、当該物理量の或る範囲を示すものであってもよい。
【0031】
受信信号の電圧値や電流値について説明する。同じ条件下での超音波の送受信において得られる受信信号の電圧値や電流値は、圧電素子の脱分極の進行に伴って小さくなる。同じ条件下での超音波の送受信としては、たとえば、所定の媒質(水、空気等)に対する超音波の送受信などがある。
【0032】
電極対の温度について説明する。超音波プローブ1を動作させると、圧電素子及びこれに隣接する電極対の温度は徐々に高くなっていき、或る温度(定常温度)で実質的に一定になる。この定常温度は、圧電素子の脱分極の進行に伴って高くなる。すなわち、圧電素子は、経時変化等により、そのQm値(機械的品質係数)が悪化し、共振振動をした際の振動エネルギーの損失分が熱エネルギーに変換されやすくなり、結果として圧電素子(及び電極対)の定常温度が上昇する。
【0033】
物理量の閾値は事前に設定される。その設定方法の一例を説明する。まず、未使用状態における超音波プローブ1について、その圧電素子の脱分極の程度に伴い変化する物理量を検出する。未使用状態とは、超音波プローブ1を未だ診断に使用していない状態をいう。ただし、圧電素子の脱分極の経時変化を鑑みて、その進行が無視できる程度の状態、つまり使用開始からそれほど時間が経っていない状態も実質的に未使用状態とみなすことができる。未使用状態での物理量の検出は、たとえば超音波プローブ1の製造時、出荷前の動作確認時、製品納入時、又は最初の診断時などに実施される。この物理量の検出は、検出部11を用いて行ってもよいし、検出部11と同等の機能を有する検出デバイスを用いて行ってもよい。
【0034】
未使用状態での検出で得られた物理量(初期物理量と呼ぶことがある)は、脱分極が実質的に発生していない状態の圧電素子に関するものである。閾値は、この初期物理量に基づいて設定される。物理量が電圧値や電流値である場合、初期物理量の所定割合(たとえば数十%程度)の値を閾値に設定することができる。また、物理量が温度である場合、初期物理量の所定倍(たとえば数倍程度)の値を閾値に設定することができる。この所定割合や所定倍の値は、たとえば、超音波プローブ1の圧電素子と同じ材質及びサイズの圧電素子を別途作成し、この圧電素子における物理量の経時変化を実験することによって設定される。なお、閾値の算出処理は、当該超音波診断装置自身(たとえば制御部8)で行ってもよいし、他の装置(コンピュータ等)で行ってもよい。また、圧電素子の材質等に基づいて理論的に閾値を算出するようにしてもよい。
【0035】
なお、この実施形態では受信信号の電圧値や電流値を考慮する場合について説明する。電極対の温度を考慮する場合については第2の実施形態で説明する。
【0036】
(検出部11)
検出部11は、超音波プローブ1における上記の物理量を検出する。この実施形態の検出部11は、超音波プローブ1が出力する受信信号の電圧値又は電流値を検出する。
【0037】
スイッチ111は、検出制御部81の制御を受けて、超音波プローブ1と後段の検出回路(増幅回路112、演算回路113)との間の信号の導通を開閉する。スイッチ111が閉じられると、超音波プローブ1からの受信信号が増幅回路112に入力される。増幅回路112は、超音波プローブ1からの受信信号を増幅する。この増幅された受信信号は、演算回路113に入力される。演算回路113は、この増幅された受信信号の電圧値又は電流値を求める。なお、スイッチ111、増幅回路112及び演算回路113としては、既知のものを適宜使用することができる。
【0038】
[動作]
この実施形態に係る超音波診断装置の動作について、図3を参照しつつ説明する。なお、記憶部10には、前述の閾値があらかじめ記憶されている。以下、受信信号の電圧値を検出する場合について説明するが、電流値を検出する場合も同様の動作が実施される。
【0039】
(S01:受信信号の電圧値の検出)
検出制御部81は、所定のタイミングでスイッチ111を閉じる。この状態で超音波プローブ1を駆動させると、超音波プローブ1からの受信信号が増幅回路112に入力される。増幅回路112は、この受信信号を増幅して後段の演算回路113に送る。演算回路113は、この増幅された受信信号の電圧値を求める。得られた電圧値の情報は、判定部82に入力される。
【0040】
なお、スイッチ111を閉じるタイミング、つまり上記検出処理を行うタイミングは任意である。一例として、ユーザが入力部9を操作して検出処理の実行を指示してもよい。また、あらかじめ設定されたタイミングで自動的に検出処理を実行するようにしてもよい(その具体例については別の実施例で後述する)。
【0041】
(S02:電圧値と閾値との比較)
判定部82は、検出部11から入力された電圧値と、記憶部10にあらかじめ記憶された閾値とを比較する。より具体的には、判定部82は、検出された電圧値が閾値以下であるか判定する。判定部82は、その判定結果を出力制御部83に送る。
【0042】
(S03:警告メッセージの表示)
「電圧値が閾値以下である」との判定結果が判定部82から入力された場合(S02:YES)、出力制御部83は、所定のメッセージ情報を表示部7に表示させる。このメッセージ情報は、圧電素子の劣化による超音波プローブ1の性能低下をユーザに報知するための警告メッセージである。この警告メッセージの例としては、「プローブを交換してください」、「メンテナンスサービスに連絡してください」などが考えられる。この場合の動作は以上で終了となる。
【0043】
(S04:異常ない旨の表示)
「電圧値が閾値を超える」との判定結果が判定部82から入力された場合(S02:NO)、出力制御部83は、所定のメッセージ情報を表示部7に表示させる。このメッセージ情報は、圧電素子の劣化が特に進んでおらず、超音波プローブ1が正常に機能する旨をユーザに報知するためのメッセージである。このメッセージの例としては、「プローブは正常です」などが考えられる。この場合の動作は以上で終了となる。
【0044】
[効果]
この実施形態に係る超音波診断装置の効果を説明する。
【0045】
この実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1から出力される受信信号の電圧値(又は電流値)を検出し、その検出された電圧値と閾値との比較結果に基づいてメッセージを表示するものである。特に、電圧値が閾値以下である場合には、警告メッセージが表示される。このような実施形態によれば、超音波プローブ1の交換やメンテナンスが必要なタイミングが到来したことを報知できるので、ユーザは、超音波プローブ1の圧電素子の分極特性の劣化に対して好適なタイミングで対処することができる。
【0046】
また、未だ異常が発生していない場合には、その旨を示すメッセージを表示される。それにより、ユーザは、圧電素子の分極特性の劣化に伴う異常が超音波プローブ1に発生してない旨を把握することができる。
【0047】
[変形例]
上記の動作例では、超音波プローブ1が正常に機能するか否かを報知しているが、報知される情報はこれには限定されない。たとえば、検出された電圧値(又は電流値)と閾値との差に基づく情報を報知することができる。このような情報の例として圧電素子の劣化度合いを示す情報がある。
【0048】
この変形例を適用する場合、記憶部10には、閾値とともに、電圧値と閾値との差と、圧電素子の劣化度合とを関連付ける情報(劣化度合情報と呼ぶ)があらかじめ記憶される。この劣化度合情報は、たとえば、横軸に当該差の値を取り、縦軸に劣化度合(性能の低下度合等)を取ったグラフである。また、劣化度合情報は、当該差の複数の範囲のそれぞれに対して劣化度合を対応付けたテーブル情報であってもよい。
【0049】
判定部82は、まず、検出された電圧値と閾値との差を算出する。次に、判定部82は、劣化度合情報を参照し、算出された差に対応する劣化度合を特定する。出力制御部83は、特定された劣化度合に対応するメッセージを表示部7に表示させる。表示されるメッセージとしては、劣化度合を示すメッセージや、交換等までの推定時間を示すメッセージなどが考えられる。この変形例は、以下の実施形態に対しても適用することが可能である。
【0050】
〈第2の実施形態〉
第2の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。この実施形態では、圧電素子の脱分極の程度に伴い変化する物理量として、超音波プローブの電極対の温度を考慮する場合について説明する。
【0051】
[構成]
この実施形態に係る超音波診断装置の構成について図4及び図5を参照して説明する。図4は、この超音波診断装置の制御系の構成の一例を表す。図5は、検出部11の具体例の一例を表す。
【0052】
図4に示すように、この実施形態に係る超音波診断装置は、検出部11を除いて第1の実施形態とほぼ同様の構成を有する。以下、第1の実施形態との相違部分に特に注目して説明を行う。検出部11には温度センサ114が設けられている。
【0053】
図5に示すように、超音波プローブ1の各超音波振動子は、圧電素子1aと、これを挟んで配置された電極対1b、1cとを含んで構成される。検出部11は、電極対1b、1cの温度を検出する。なお、圧電素子1aと電極対1b、1cとは接しているので、電極対1b、1cは、熱源である圧電素子1aとほぼ同じ温度となる。
【0054】
温度センサ114としては、図5に概略的に示した構成で配置されたサーミスタ115を用いることができる。なお、温度センサ114の構成はこれに限定されるものではない。たとえば、ダイオードの順電圧が温度に対して線形に変化する特性を利用して、ダイオードや、バイポーラトランジスタのベース−エミッタ間を温度センサ114として用いることが可能である。
【0055】
制御部8の検出制御部81は、温度センサ114の動作を制御する。なお、検出制御部81は、温度センサ114の動作自体を実行/停止させるものであってもよいし、温度センサ114から制御部81への信号の入力をオン/オフするものであってもよい。
【0056】
判定部82には、温度センサ114による温度の検出結果が入力される。判定部82は、温度センサ114により検出された温度が閾値以上であるか判定する。この閾値は、電極対の温度の閾値であり、第1の実施形態と同様にあらかじめ記憶部10に記憶される。
【0057】
出力制御部83は、判定部82による判定結果に基づいて、所定の情報を表示部7に表示させる。出力制御部83の動作については後述する。
【0058】
[動作]
この実施形態に係る超音波診断装置の動作について、図6を参照しつつ説明する。なお、記憶部10には、電極対の温度の閾値があらかじめ記憶されている。
【0059】
(S11:電極対の温度の検出)
温度センサ114を動作させつつ(つまり温度を監視しつつ)超音波プローブ1を使用する。温度センサ114により温度の検出は、少なくとも、検出される温度の経時変化が実質的に無くなるまで継続される。その間に得られる温度の情報は、逐次、判定部82に入力される。
【0060】
(S12:定常温度と閾値との比較)
判定部82は、検出部11から入力された定常温度の値と、記憶部10にあらかじめ記憶された閾値とを比較する。より具体的には、判定部82は、検出された定常温度が閾値以上であるか判定する。判定部82は、その判定結果を出力制御部83に送る。
【0061】
(S13:警告メッセージの表示)
「定常温度が閾値以上である」との判定結果が判定部82から入力された場合(S12:YES)、出力制御部83は、所定のメッセージ情報を表示部7に表示させる。このメッセージ情報は、第1の実施形態と同様の警告メッセージである。
【0062】
(S14:異常ない旨の表示)
「定常温度が閾値未満である」との判定結果が判定部82から入力された場合(S12:NO)、出力制御部83は、所定のメッセージ情報を表示部7に表示させる。このメッセージ情報は、第1の実施形態と同様の、超音波プローブ1が正常に機能する旨をユーザに報知するためのメッセージである。
【0063】
[効果]
この実施形態に係る超音波診断装置の効果を説明する。
【0064】
この実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1の電極対の温度を検出し、その検出された温度と閾値との比較結果に基づいてメッセージを表示するものである。特に、温度が閾値以上である場合には、警告メッセージが表示される。このような実施形態によれば、超音波プローブ1の交換やメンテナンスが必要なタイミングが到来したことを報知できるので、ユーザは、超音波プローブ1の圧電素子の分極特性の劣化に対して好適なタイミングで対処することができる。
【0065】
また、未だ異常が発生していない場合には、その旨を示すメッセージが表示される。それにより、ユーザは、圧電素子の分極特性の劣化に伴う異常が超音波プローブ1に発生してない旨を把握することができる。
【0066】
[変形例]
上記の動作例では、電極対の温度が実質的に一定になったときの温度(定常温度)を検出して、圧電素子の分極特性の劣化の程度を判断している。これに対し、電極対の温度の上昇速度を検出して、これを判断基準とすることも可能である。そのための構成の例として、温度センサ114は、定期的に(たとえば1秒おきに)電極対の温度を検出する。その検出結果は逐次に判定部82に入力される。判定部82は、横軸に時間を取り、縦軸に温度を取った座標系に対し、逐次に入力される温度をプロットする。所定時間に亘ってこの処理を継続した後、判定部82は、温度のプロット結果、つまり温度の経時変化から、電極対の温度の上昇速度を算出する。そして、判定部82は、この算出結果と閾値(当該上昇温度について事前に設定されたもの)とを比較する。出力制御部83は、その比較結果に基づいて所定の情報を出力する。
【0067】
これに類似の変形例として、電極対の温度の検出結果が、第1の温度から第2の温度(>第1の温度)まで上昇するまでの時間を判断基準としてもよい。
【0068】
〈第3の実施形態〉
第3の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。この実施形態では、圧電素子の脱分極の程度に伴い変化する物理量の検出結果に応じて、当該超音波診断装置以外の装置(外部装置)に対して所定の情報を出力する場合について説明する。この実施形態の適用例として、超音波診断装置の状態を遠隔監視する、いわゆるリモートメンテナンスがある。以下、リモートメンテナンスに適用した場合について説明するが、たとえば当該医療機関における管理用のサーバなど、任意の外部装置に対して情報を出力するケースに適用することも可能である。
【0069】
[構成]
この実施形態に係る超音波診断装置の構成について図7を参照しつつ説明する。図7に示す構成は、図2に示した第1の実施形態とほぼ同様のものである(記憶部10の図示は省略した)。以下、第1の実施形態との相違部分に特に注目して説明を行う。なお、第1の実施形態以外の実施形態に対しても、この実施形態の構成を適用することが可能である。
【0070】
制御部8には送信部84が設けられている。送信部84は、ネットワーク100を通じて情報を送信可能に構成されている。ネットワーク100は、たとえばインターネット、LAN、専用回線などを含んでいる。送信部84は、ネットワーク100の規格に準拠した、たとえばモデムやLANカード等の通信デバイスである。なお、送信される情報や、メンテナンス200のアドレスは、たとえば記憶部10にあらかじめ記憶されている。
【0071】
メンテナンスサーバ200は、ネットワーク100に接続されている。メンテナンスサーバ200は、たとえばリモートメンテナンスサービスを提供する企業内に設置されている。メンテナンスサーバ200は、サービス提供先の医療機関に設置された各種医療装置の状態を定期的に又は不定期的に取得してデータベース化することで、各医療装置の状態を監視する。
【0072】
[動作]
この実施形態に係る超音波診断装置の動作について、図8を参照しつつ説明する。
【0073】
(S21:受信信号の電圧値の検出)
検出制御部81は、第1の実施形態と同様に、検出部11を制御して、超音波プローブ1から出力される受信信号の電圧値を求めさせる。得られた電圧値の情報は、判定部82に入力される。
【0074】
(S22:電圧値と閾値との比較)
判定部82は、検出部11から入力された電圧値が、記憶部10にあらかじめ記憶された閾値以下であるか判定する。判定部82は、その判定結果を出力制御部83に送る。
【0075】
(S23:異常を示す通信情報の送信)
「電圧値が閾値以下である」との判定結果が判定部82から入力された場合(S22:YES)、出力制御部83は、送信部84を制御することで、所定の通信情報をネットワーク100を通じてメンテナンスサーバ200に向けて送信させる。このときに送信される通信情報は、圧電素子の劣化による超音波プローブ1の性能低下(つまり異常)を示すものである。また、通信情報には、当該超音波診断装置の識別情報や医療機関の識別情報などが含まれている。この場合における当該超音波診断装置の動作は以上で終了となる。
【0076】
なお、通信情報を受信したメンテナンスサーバ200は、通信情報の内容を受信日時とともに記憶する。更に、メンテナンスサーバ200は、当該超音波診断装置に異常が発生した旨を報知する。
【0077】
(S24:異常ない旨の通信情報の送信)
「電圧値が閾値を超える」との判定結果が判定部82から入力された場合(S22:NO)、出力制御部83は、送信部84を制御することで、所定の通信情報をネットワーク100を通じてメンテナンスサーバ200に向けて送信させる。このときに送信される通信情報は、圧電素子の劣化が特に進んでおらず、超音波プローブ1が正常に機能する旨を示すものである。なお、当該通信情報を送信する代わりに、特に何の処理も実行しないように構成したり、同じ主旨のメッセージ情報を表示部7に表示させるように構成したりできる。
【0078】
[効果]
この実施形態に係る超音波診断装置の効果を説明する。
【0079】
この実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1から出力される受信信号の電圧値を検出し、その検出された電圧値と閾値との比較結果に基づいて通信情報を送信する。通信情報の送信先は外部装置である。このような実施形態によれば、超音波プローブ1の交換やメンテナンスが必要なタイミングが到来したことを、外部装置側において認識することが可能である。したがって、超音波プローブ1の圧電素子の分極特性の劣化に対して好適なタイミングで対処することができる。
【0080】
〈第4の実施形態〉
第4の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。この実施形態では、圧電素子の脱分極が進行してしまっていることに対応して、圧電素子の再分極化処理を実行する場合について説明する。
【0081】
[構成]
この実施形態に係る超音波診断装置の構成について図9を参照しつつ説明する。図9に示す構成は、図2に示した第1の実施形態とほぼ同様のものである(記憶部10の図示は省略した)。以下、第1の実施形態との相違部分に特に注目して説明を行う。なお、第1の実施形態以外の実施形態に対しても、この実施形態の構成を適用することが可能である。
【0082】
この実施形態に係る超音波診断装置は、高電圧印加部12を有する。高電圧印加部12は、脱分極化してしまった超音波プローブ1の圧電素子を再分極化するための高電圧を電極対に印加する。
【0083】
[動作]
この実施形態に係る超音波診断装置の動作について、図10を参照しつつ説明する。
【0084】
(S31:受信信号の電圧値の検出)
検出制御部81は、第1の実施形態と同様に、検出部11を制御して、超音波プローブ1から出力される受信信号の電圧値を求めさせる。得られた電圧値の情報は、判定部82に入力される。
【0085】
(S32:電圧値と閾値との比較)
判定部82は、検出部11から入力された電圧値が、記憶部10にあらかじめ記憶された閾値以下であるか判定する。判定部82は、その判定結果を出力制御部83に送る。
【0086】
(S33:再分極化)
「電圧値が閾値以下である」との判定結果が判定部82から入力された場合(S32:YES)、出力制御部83は、高電圧印加部12を制御して、超音波プローブ1の電極対に対して高電圧を印加し、圧電素子の再分極化を実行する。
【0087】
(S34:異常ない旨の表示)
「電圧値が閾値を超える」との判定結果が判定部82から入力された場合(S32:NO)、出力制御部83は、第1の実施形態と同様に、異常がない旨のメッセージ情報を表示部7に表示させる。
【0088】
[効果]
この実施形態に係る超音波診断装置の効果を説明する。
【0089】
この実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1から出力される受信信号の電圧値を検出し、その検出された電圧値と閾値との比較結果に基づいて、圧電素子の再分極化処理を実行する。このような実施形態によれば、圧電素子の脱分極が進行して超音波プローブ1の性能が劣化したことに対応し、この不都合を解消するための脱分極化処理を実行できる。したがって、超音波プローブ1の圧電素子の分極特性の劣化に対して好適なタイミングで対処することができる。
【0090】
〈第5の実施形態〉
この実施形態に係る超音波診断装置の構成について図11を参照しつつ説明する。図11に示す構成は、図2に示した第1の実施形態とほぼ同様のものである。以下、第1の実施形態との相違部分に特に注目して説明を行う。なお、第1の実施形態以外の実施形態に対しても、この実施形態の構成を適用することが可能である。
【0091】
この実施形態に係る超音波診断装置の制御部8には、記録部85が設けられている。記録部85は、超音波プローブ1の累積使用時間を記録する。累積使用時間とは、超音波プローブ1の初回の使用時から現在までの各回の使用時における使用時間を加算した値である。記録部85は、たとえば、各回の使用時において、超音波プローブ1に超音波を送信させるために制御部8が送信部2を制御している時間を計時することで今回の使用時間を求め、この今回の使用時間を前回までの累積使用時間に加算する。それにより、今回の使用時までの累積使用時間が算出される。また、初回使用時からの暦上の期間をもって累積使用時間としてもよい。累積使用時間の情報は、検出制御部81に送られる。
【0092】
検出部11による検出タイミングは、1つだけ又は2つ以上設定することが可能である。検出タイミングは、たとえば3ヶ月や6ヶ月に設定される。複数の検出タイミングを設定する場合、累積使用時間の進行とともに、その間隔を短くしていくことが可能である。たとえば、圧電素子の予想寿命が1年である場合に、検出タイミングとして、3ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、10ヶ月及び11ヶ月を設定することが可能である。また、複数の検出タイミングを設定する場合、検出部11による物理量の検出結果に応じて将来の検出タイミングを変更するようにしてもよい。たとえば、前述のように圧電素子の分極特性の劣化の度合を検出する場合、劣化が進んでいる場合には次回の検出タイミングの時期を早めるように構成することができる。また、超音波プローブ1の使用モードや、送受信される超音波のパラメータなどに応じて検出タイミングを変更することも可能である。たとえばCWモードが多用されている場合や、あらかじめ設定された閾値以上の送信パワーでの超音波送信が多用されている場合、あるいは、あらかじめ設定された閾値より深い深度にフォーカスを設定しての超音波送信が多用されている場合には、次回の検出タイミングを早めるように構成することができる。
【0093】
検出制御部81は、記録部85から入力された累積使用時間を、検出タイミングとしての所定時間と比較する。この所定時間は、たとえば、超音波プローブ1の性能の劣化が始まると予想される累積使用時間である。この所定時間は、たとえば事前の実験や理論的な演算により求められて記憶部10に記憶される。検出制御部81は、記録部85から入力された累積使用時間が所定時間以上であるときに、スイッチ111を閉じる。それにより、検出部11による検出動作が開始される。なお、複数の検出タイミングが設定されている場合、検出制御部81は、各検出タイミングにおいて同様の処理を実行する。
【0094】
[動作]
この実施形態に係る超音波診断装置の動作について、図12を参照しつつ説明する。
【0095】
(S41:累積使用時間の算出)
記録部85は、所定のタイミングで累積使用時間を算出する。その算出タイミングとしては、たとえば、超音波プローブ1の使用が終了したときや、ユーザが入力部9を操作して指示したときなどがある。また、超音波プローブ1が使用されている間、累積使用時間を更新し続けるようにしてもよい。
【0096】
(S42:累積使用時間と所定時間との比較)
検出制御部81は、記録部85から入力された累積使用時間と所定時間とを比較する。より具体的には、検出制御部81は、入力された累積使用時間が所定時間以上であるか判定する。累積使用時間が所定時間未満である場合(S42:NO)、処理は終了となる。
【0097】
(S43:受信信号の電圧値の検出)
累積使用時間が所定時間(つまり上記検出タイミング)以上であると判定された場合、(S42:YES)、検出制御部81は、第1の実施形態と同様に、検出部11を制御して、超音波プローブ1から出力される受信信号の電圧値を求めさせる。得られた電圧値の情報は、判定部82に入力される。
【0098】
(S44:電圧値と閾値との比較)
判定部82は、検出部11から入力された電圧値が、記憶部10にあらかじめ記憶された閾値以下であるか判定する。判定部82は、その判定結果を出力制御部83に送る。
【0099】
(S45:警告メッセージの表示)
「電圧値が閾値以下である」との判定結果が判定部82から入力された場合(S44:YES)、出力制御部83は、所定のメッセージ情報を表示部7に表示させる。このメッセージ情報は、第1の実施形態と同様の警告メッセージである。
【0100】
(S46:異常ない旨の表示)
「電圧値が閾値を超える」との判定結果が判定部82から入力された場合(S44:NO)、出力制御部83は、所定のメッセージ情報を表示部7に表示させる。このメッセージ情報は、第1の実施形態と同様の、超音波プローブ1が正常に機能する旨をユーザに報知するためのメッセージである。
【0101】
[効果]
この実施形態に係る超音波診断装置の効果を説明する。
【0102】
この実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1の累積使用時間が所定の検出タイミングに達したことに対応して検出部11による物理量の検出を実行するものである。このような実施形態によれば、超音波プローブ1の累積使用時間に基づいて好適なタイミングで超音波プローブ1の圧電素子の劣化状態を検査することができる。したがって、超音波プローブ1の圧電素子の分極特性の劣化に対して好適なタイミングで対処することが可能である。
【0103】
〈第6の実施形態〉
この実施形態に係る超音波診断装置の構成について図13を参照しつつ説明する。図13に示す構成は、図2に示した第1の実施形態とほぼ同様のものである(記憶部10の図示は省略した)。以下、第1の実施形態との相違部分に特に注目して説明を行う。なお、第1の実施形態以外の実施形態に対しても、この実施形態の構成を適用することが可能である。
【0104】
この実施形態に係る超音波診断装置の制御部8には、受付部86及び検出履歴記録部87が設けられている。受付部86は、使用されている超音波プローブ1の識別情報を受け付ける。この識別情報は、超音波プローブごとに事前に割り当てられて、超音波プローブ内部の記憶部にあらかじめ記憶されている。この実施形態に係る超音波診断装置の本体のコネクタに超音波プローブ1のコネクタを接続すると、超音波プローブ1に記憶された識別情報が読み出されて受付部86に入力される。このような識別情報に関する機能は既知である。なお、この実施形態に係る超音波診断装置は、当該機能を有していなくてもよい。その場合、受付部86は不要である。
【0105】
検出履歴記録部87は、検出部11により物理量の検出がなされる度に、当該検出が行われたタイミングを示すタイミング情報と、当該検出結果とを対応付けて記録する。また、受付部86が設けられている場合、受付部86から超音波プローブ1の識別情報が検出履歴記録部87に入力される。この場合、検出履歴記録部87は、超音波プローブの識別情報ごとにタイミング情報及び検出結果を記録する。つまり、検出履歴記録部87は、超音波プローブの識別情報ごとに、タイミング情報と検出結果を含むログを管理している。
【0106】
なお、タイミング情報とは、たとえば、物理量の検出がなされた日時を示す情報である。また、検出結果には、検出部11による物理量の検出値に基づく任意の情報が含まれる。たとえば、検出結果は、検出値のみを含んでいてもよいし、検出値に加えて判定部82による判定結果を含んでいてもよいし、判定部82による判定結果のみを含んでいてもよい。
【0107】
[動作]
この実施形態に係る超音波診断装置の動作について、図14を参照しつつ説明する。
【0108】
(S51:プローブの識別情報の受け付け)
超音波プローブ1が装置本体に接続されると、受付部86は、超音波プローブ1の識別情報を受け付ける。
【0109】
(S52:受信信号の電圧値の検出)
検出制御部81は、第1の実施形態と同様に、検出部11を制御して、超音波プローブ1から出力される受信信号の電圧値を求めさせる。得られた電圧値の情報は、判定部82に入力される。
【0110】
(S53:電圧値と閾値との比較)
判定部82は、検出部11から入力された電圧値が、記憶部10にあらかじめ記憶された閾値以下であるか判定する。判定部82は、その判定結果を出力制御部83に送る。
【0111】
(S54:警告メッセージの表示)
「電圧値が閾値以下である」との判定結果が判定部82から入力された場合(S53:YES)、出力制御部83は、所定のメッセージ情報を表示部7に表示させる。このメッセージ情報は、第1の実施形態と同様の警告メッセージである。
【0112】
(S55:異常ない旨の表示)
「電圧値が閾値を超える」との判定結果が判定部82から入力された場合(S53:NO)、出力制御部83は、所定のメッセージ情報を表示部7に表示させる。このメッセージ情報は、第1の実施形態と同様の、超音波プローブ1が正常に機能する旨をユーザに報知するためのメッセージである。
【0113】
(S56:検出履歴の記録)
検出履歴記録部87は、受付部86から超音波プローブ1の識別情報を取得し、この識別情報に関連付けられて記録されている過去のログ(タイミング情報及び検査結果を含む)に、今回の検出で得られたタイミング情報及び検出結果を追加する。なお、S56の処理のタイミングは、S54やS55の前であってもよいし、これらと同時であってもよい
【0114】
[効果]
この実施形態に係る超音波診断装置の効果を説明する。
【0115】
この実施形態に係る超音波診断装置は、検出部11により物理量が検出される度に、当該検出のタイミング情報と当該検出結果とを対応付けて記録するものである。このような実施形態によれば、超音波プローブ1の圧電素子の分極特性の経時変化を把握することができる。したがって、超音波プローブ1の圧電素子の分極特性の劣化に対して好適なタイミングで対処することが可能である。
【0116】
また、この実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブの識別情報を受け付けて、この識別情報ごとにタイミング情報及び検出結果を記録することができる。このような実施形態によれば、使用される超音波プローブそれぞれについて、その圧電素子の分極特性の経時変化を把握できる。したがって、圧電素子の分極特性の劣化に対する対処を超音波プローブごとに適切なタイミングで行うことが可能である。
【0117】
〈超音波プローブの実施形態〉
第1の実施形態では、超音波プローブ1の外部に検出部11が設けられている。これに対し、超音波プローブの内部に検出部11を設けることも可能である。たとえば、増幅回路112や演算回路113を小型化することで、これらを超音波プローブの筐体内に収めることが可能である。また、第2の実施形態の検出部11は、超音波プローブ1の内部に設けられている。
【0118】
このように検出部11を超音波プローブ1に設けることで、超音波プローブ1内の圧電素子の分極特性の劣化の度合を検出することが可能となる。したがって、圧電素子の分極特性の劣化に対して好適なタイミングで対処することができる。
【0119】
(実施形態に共通の効果)
以上に述べた少なくともひとつの実施形態の超音波診断装置及び超音波プローブによれば、超音波プローブの圧電素子の脱分極の程度に伴い変化する物理量を検出し、この物理量の検出結果と、あらかじめ記憶された閾値との比較結果に基づいて所定の情報を出力することが可能である。それにより、圧電素子の分極特性の劣化に対して好適なタイミングで対処することが可能となる。
【0120】
また、以上で説明した実施形態や変形例を適宜に組み合わせた構成を適用することが可能である。それにより、組み合わされた実施形態や変形例の効果を奏する超音波診断装置や超音波プローブが得られる。
【0121】
この発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0122】
1 超音波プローブ
2 送信部
3 受信部
4 信号処理部
5 画像生成部
6 表示制御部
7 表示部
8 制御部
81 検出制御部
82 判定部
83 出力制御部
84 送信部
85 記録部
86 受付部
87 検出履歴記録部
9 入力部
10 記憶部
11 検出部
111 スイッチ
112 増幅回路
113 演算回路
114 温度センサ
12 高電圧印加部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を含み、超音波を送信し被検体からの反射波を受信して受信信号を生成する超音波プローブを有し、前記受信信号に基づいて被検体内の画像を生成する超音波診断装置であって、
前記圧電素子の脱分極の程度に伴い変化する物理量の閾値をあらかじめ記憶する記憶部と、
前記超音波プローブにおける前記物理量を検出する検出部と、
前記物理量の検出結果と前記閾値との比較結果に基づいて所定の情報を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記物理量は、前記受信信号の電圧値又は電流値であり、
前記検出部は、前記超音波プローブにより生成された前記受信信号の電圧値又は電流値を検出する検出回路を含み、
前記出力部は、前記検出回路により検出された電圧値又は電流値が前記閾値以下であるか判定する判定部を含み、前記判定部により前記閾値以下であると判定された場合に前記所定の情報を出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記超音波プローブは、前記圧電素子を挟んで配置された電極対を含み、
前記物理量は、前記電極対の温度であり、
前記検出部は、前記電極対の温度を検出する温度センサを含む、
前記出力部は、前記温度センサにより検出された温度が前記閾値以上であるか判定する判定部を含み、前記判定部により前記閾値以上であると判定された場合に前記所定の情報を出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記出力部は、表示部と、前記物理量の検出結果と前記閾値との比較結果に基づいて、前記所定の情報としてのメッセージ情報を前記表示部に表示させる制御部とを含む、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記出力部は、ネットワークを通じて情報を送信可能な送信部と、前記物理量の検出結果と前記閾値との比較結果に基づき前記送信部を制御することで、前記所定の情報としての通信情報を前記ネットワークを通じて送信させる制御部とを含む、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記圧電素子を再分極化するための高電圧を前記電極対に印加する高電圧印加部を更に備え、
前記出力部は、前記物理量の検出結果と前記閾値との比較結果に基づいて、前記所定の情報としての制御情報を前記高電圧印加部に送信することで、前記電極対に高電圧を印加させる制御部を含む、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記超音波プローブの累積使用時間を記録する記録部を更に有し、
前記検出部は、前記累積使用時間が所定時間に達したことに対応して前記物理量の検出を行う、
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記閾値は、未使用状態における前記超音波プローブについての前記物理量に基づき設定される、
ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記検出部により前記物理量が検出される度に、当該検出が行われたタイミングを示すタイミング情報と、当該検出結果とを対応付けて記録する検出履歴記録部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記超音波プローブの識別情報を受け付ける受付部を更に備え、
前記検出履歴記録部は、前記識別情報ごとに前記タイミング情報及び前記検出結果を記録する、
ことを特徴とする請求項9に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
圧電素子を含み、超音波を送受信可能な超音波プローブであって、
前記圧電素子の脱分極の程度に伴い変化する物理量を検出可能な検出部を備える、
ことを特徴とする超音波プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−139460(P2012−139460A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−917(P2011−917)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】