説明

超音波診断装置及び超音波診断装置の制御プログラム

【課題】簡易な操作で整形外科の分野における診断を行うことが可能な超音波診断装置を提供することである。
【解決手段】超音波診断装置は、画像収集手段及び領域調整手段を備えている。画像収集手段は、被検体に超音波を送信することによって収集した超音波信号に基づいて前記被検体の骨又は関節が描出された超音波断層画像データを含む超音波画像データを生成する。領域調整手段は、前記超音波断層画像データに対する画像処理によって前記骨又は関節を構成する骨領域を抽出し、抽出された前記骨領域に応じて前記超音波信号の収集領域を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置及び超音波診断装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置には、収集対象となる診断画像の種類に応じた複数の撮影モードが準備されている。例えば、Bモードは、被検体の形態画像を収集して輝度表示する撮影モードである。また、カラードプラモードは、被検体の血管内を流れる血流を描出する撮影モードである。
【0003】
カラードプラモードで撮影されたカラードプラ像は、血流の方向や勢いを視覚的に確認できるように色や陰影を用いて表示される。このため、カラードプラ像は、腹部、循環器及び血管等の検査において収集される。そして、収集されたカラードプラ像は、疾患の程度や傷害の程度を判断するための指標として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−80106号公報-
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超音波診断装置は、超音波プローブを接触させるだけで簡易に診断画像を収集することが可能な装置である。また、近年、放射線診断による身体への悪影響を回避する観点から超音波診断装置や磁気共鳴イメージング(MRI: Magnetic Resonance Imaging)装置による診断が望まれるようになってきている。
【0006】
このため、様々な医学分野において超音波診断装置を活用することが望ましい。しかしながら、整形外科の分野においては、超音波診断装置の活用が進んでいない。一方、整形外科の分野では、病院外において素早く安全に使用できる検査機器が求められている。
【0007】
このような観点から、病院外での使用が可能な超音波診断装置は整形外科の分野における診断に適していると言える。しかしながら、従来の超音波診断装置は腹部や循環器等の検査手順に合わせて操作性の最適化が進んでいる。換言すれば、従来の超音波診断装置には、整形外科での検査手順や診断部位に対応する操作モードや機能が備えられていない。このため、簡易な操作で整形外科の分野における診断を行うことが可能な超音波診断装置の開発が重要である。
【0008】
本発明は、簡易な操作で整形外科の分野における診断を行うことが可能な超音波診断装置及び超音波診断装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る超音波診断装置は、画像収集手段及び領域調整手段を備えている。画像収集手段は、被検体に超音波を送信することによって収集した超音波信号に基づいて前記被検体の骨又は関節が描出された超音波断層画像データを含む超音波画像データを生成する。領域調整手段は、前記超音波断層画像データに対する画像処理によって前記骨又は関節を構成する骨領域を抽出し、抽出された前記骨領域に応じて前記超音波信号の収集領域を調整する。
【0010】
また、本発明の実施形態に係る超音波診断装置は、画像収集手段及び評価情報作成手段を備えている。画像収集手段は、被検体に超音波を送信することによって収集した超音波信号に基づいて前記被検体の関節が描出された超音波断層画像データを含む超音波画像データを生成する。評価情報作成手段は、前記超音波画像データに基づいて、指標値を用いた複数の関節の評価結果を示す評価情報を生成する。
【0011】
また、本発明の実施形態に係る超音波診断装置の制御プログラムは、超音波診断装置を画像収集手段及び記領域調整手段として機能させる。画像収集手段は、被検体に超音波を送信することによって収集した超音波信号に基づいて前記被検体の骨又は関節が描出された超音波断層画像データを含む超音波画像データを生成する。領域調整手段は、前記超音波断層画像データに対する画像処理によって前記骨又は関節を構成する骨領域を抽出し、抽出された前記骨領域に応じて前記超音波信号の収集領域を調整する。
【0012】
また、本発明の実施形態に係る超音波診断装置の制御プログラムは、超音波診断装置を画像収集手段及び評価情報作成手段として機能させる。画像収集手段は、被検体に超音波を送信することによって収集した超音波信号に基づいて前記被検体の関節が描出された超音波断層画像データを含む超音波画像データを生成する。評価情報作成手段は、前記超音波画像データに基づいて、指標値を用いた複数の関節の評価結果を示す評価情報を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る超音波診断装置の構成図。
【図2】図1に示す超音波診断装置により被検体の関節を検査する際の流れの一例を示すフローチャート。
【図3】図1に示す超音波プローブのタイプに応じた超音波信号の収集領域を示す図。
【図4】図1に示すデータ収集領域調整部により超音波ドプラ画像データのデータ収集領域を調整した例を示す図。
【図5】図1に示すデータ収集領域調整部により超音波断層画像データ及び超音波ドプラ画像データの双方のデータ収集領域を調整した例を示す図。
【図6】図1に示す評価情報作成部において生成された複数の関節の評価画像データを表示させた例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る超音波診断装置及び超音波診断装置の制御プログラムについて添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係る超音波診断装置の構成図である。
【0016】
超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信部3、デジタルスキャンコンバータ(DSC: Digital Scan Converter)4、表示装置5、操作パネル6及び制御装置7を備えている。超音波プローブ2は送受信部3を介して制御装置7と、表示装置5はデジタルスキャンコンバータ4を介して制御装置7と、操作パネル6は制御装置7と、それぞれケーブルで接続される。
【0017】
超音波プローブ2は、被検体Oに接触させて超音波信号の送受信を行う機能を有する。そのために、超音波プローブ2は、複数の超音波振動子を備えている。そして、超音波プローブ2は、送受信部3から送信された電気信号を超音波振動子により超音波送信信号に変換して被検体Oの内部に送信する機能と、被検体Oの内部における超音波送信信号の反射によって生じた超音波エコー信号を超音波振動子により電気信号である受信信号に変換して送受信部3に出力する機能とを有している。
【0018】
送受信部3は、制御装置7による制御下において超音波プローブ2を駆動させる機能を有する。すなわち、送受信部3は、制御装置7からの制御信号に従って超音波プローブ2に電気信号を与えることによって超音波プローブ2を駆動する一方、超音波プローブ2において受信された超音波エコー信号を制御装置7に出力する機能を有する。
【0019】
制御装置7は、コンピュータに超音波診断装置1の制御プログラムを読み込ませて構築することができる。但し、制御装置7を構成するために回路を用いてもよい。そして、制御装置7は、送受信部3に制御信号を出力することによってスキャンを制御する機能と、送受信部3から取得した超音波エコー信号に対するデータ処理を実行することにより、超音波診断画像データを生成する機能とを有する。
【0020】
具体的には、制御装置7は、スキャン制御部8、データ処理部9、データ収集領域調整部10、評価情報作成部11、評価結果データベース12及び人体モデルデータベース13を有する。
【0021】
スキャン制御部8は、撮像モード及び撮像モードごとのデータ収集領域を設定して送受信部3を制御する機能を有する。特に、スキャン制御部8は、データ収集領域調整部10において調整された被検体Oの関節を含むデータ収集領域に超音波を送信することによって、データ収集領域から超音波信号が収集されるように送受信部3を制御する機能を備えている。
【0022】
データ処理部9は、送受信部3から取得した超音波エコー信号に対するデータ処理によって被検体Oの超音波画像データを生成する機能と、生成した超音波画像データをデジタルスキャンコンバータ4を通じて表示装置5に表示させる機能とを有する。撮像モードがBモードであれば、関節の形態が描出された超音波断層画像データを生成するための超音波反射信号が送受信部3からデータ処理部9に出力される。一方、撮像モードがカラードプラモードであれば、血流等の流体や動きのある物体が速度、分散及びパワー等の動態に応じたカラーで描出された超音波ドプラ画像データを生成するための超音波ドプラ信号が送受信部3からデータ処理部9に出力される。
【0023】
従って、データ処理部9は、Bモード処理及びカラードプラ処理を実行する機能を備えている。すなわち、データ処理部9は、超音波反射信号に基づいてBモード用の画像化領域における超音波断層画像データを生成する機能と、超音波ドプラ信号に基づいてカラードプラモード用の画像化領域における超音波ドプラ画像データを生成する機能とを有している。
【0024】
そして、スキャン制御部8による超音波診断装置1に備えられるハードウェアの制御及びデータ処理部9における超音波受信信号の処理によって、被検体Oに超音波を送信することによって収集した超音波信号に基づいて被検体Oの関節が描出された超音波断層画像データを含む超音波画像データを生成する画像収集手段としての機能を超音波診断装置1に具備することができる。
【0025】
データ収集領域調整部10は、操作パネル6からの指示情報に従って、データ処理部9から取得した超音波断層画像データに対する画像処理によって関節を構成する骨領域を抽出する機能と、操作パネル6からの指示情報に従って、抽出された骨領域に応じて超音波信号の収集領域を適切な領域に調整する機能とを有する。骨領域の抽出のための画像処理は、二値化処理やエッジ抽出処理等の公知の処理の組合せとすることができる。
【0026】
一例として、超音波信号の収集領域は、骨頭間の距離に基づいて設定することができる。この場合、データ収集領域調整部10には、抽出された骨領域に基づいて骨頭間の距離を計測する機能が備えられる。
【0027】
超音波信号の収集領域は、Bモードにおいて超音波反射信号を収集する場合と、カラードプラモードにおいて超音波ドプラ信号を収集する場合とで互いに独立して設定することができる。従って、データ収集領域調整部10には、関節を構成する骨領域に応じてBモード用の超音波反射信号の収集領域を調整する機能と、関節を構成する骨領域に応じて超音波ドプラ信号の収集領域を調整する機能が備えられる。
【0028】
評価情報作成部11は、データ処理部9において生成された超音波断層画像データや超音波ドプラ画像データ等の超音波画像データに基づいて、関節における疾患の度合いを表す指標値を用いた評価結果情報を関節ごとに作成する機能、作成した関節ごとの評価結果情報を評価結果データベース12に記録する機能、評価結果データベース12に記録された関節ごとの評価結果情報と人体モデルデータベース13から読み込んだ人体モデルの各関節位置とのマッチングによって複数の関節の評価結果を指標値を用いて表す評価情報を生成する機能、生成した複数の関節の評価情報をデジタルスキャンコンバータ4を通じて表示装置5に表示させる機能及び複数の関節の評価情報を被検体Oごとに評価結果データベース12に記録する機能を有する。また、評価情報作成部11は、必要に応じて関節ごとの評価結果情報の生成に必要な情報を操作パネル6から取得できるように構成されている。
【0029】
評価結果データベース12には、評価情報作成部11において生成された関節ごとの評価結果情報及び被検体Oごとの複数の関節の評価情報を書き込んで保存することができる。
【0030】
人体モデルデータベース13には、人体の手足の各関節を識別して模式的に表示させることが可能な人体モデルが保存される。
【0031】
デジタルスキャンコンバータ4は、制御装置7のデータ処理部9において生成された超音波プローブ2の走査方式の超音波画像データをテレビ走査方式の超音波画像データに変換する座標変換デバイスである。
【0032】
表示装置5は、制御装置7において生成された超音波画像データや評価画像データをテレビ走査方式の画像として表示させるためのモニタである。
【0033】
操作パネル6は、制御装置7に必要な情報を入力することによって、超音波診断装置1を操作するための入力装置である。
【0034】
次に超音波診断装置1の動作および作用について説明する。
【0035】
図2は、図1に示す超音波診断装置1により被検体Oの関節を検査する際の流れの一例を示すフローチャートである。
【0036】
まずステップS1において、操作パネル6の操作によって撮像モードとしてカラードプラモードの選択情報が制御装置7のスキャン制御部8に入力される。これにより、スキャン制御部8は、超音波断層画像上に超音波ドプラ画像を重畳表示させるカラードプラモードを撮像モードとして設定する。
【0037】
次にステップS2において、スキャン制御部8による制御下において超音波診断装置1が動作し、表示装置5に超音波断層画像として被検体Oの関節部位における形態画像が描出される。更に、関節部位における流体及び動きのある物体が速度等の指標に応じたカラーで超音波ドプラ画像として関節部位の形態画像に重畳表示される。
【0038】
具体的には、スキャン制御部8において、超音波断層画像データ用のデータ収集領域及び超音波ドプラ画像データ用のデータ収集領域がそれぞれデフォルト領域として設定される。そして、ユーザは超音波プローブ2を被検体Oの関節部位近傍に接触させる。
【0039】
一方、スキャン制御部8は、デフォルト領域として設定された超音波断層画像データ用のデータ収集領域からBモード撮像用の超音波反射信号が収集されるように制御信号を送受信部3に出力する。これにより、送受信部3が超音波プローブ2に電気信号を与え、超音波プローブ2が駆動する。すなわち、データ収集領域内のスキャンレンジ方向及び深さ方向の各点に収束する超音波送信信号が超音波プローブ2から順次送信されるように、送受信部3から超音波プローブ2の各超音波振動子に時間遅延を伴う電気信号が印加される。このため、超音波プローブ2の各超音波振動子は、時間遅延を伴う電気信号を超音波送信信号に変換して被検体Oの骨を含む関節部位に送信する。
【0040】
この結果、関節部位を含むデータ収集領域内の各データ収集位置に超音波送信信号が収束する。そして、超音波送信信号の反射によって順次超音波反射信号が生じる。超音波反射信号は超音波プローブ2の各超音波振動子により受信され、位相の異なる電気信号に変換されて各超音波振動子から送受信部3に出力される。送受信部3では、各超音波振動子から出力された超音波反射信号の整相加算処理を含む信号処理が実行され、信号処理後の各データ収集位置に対応する超音波反射信号は送受信部3から制御装置7のデータ処理部9に順次出力される。
【0041】
この結果、データ処理部9は、Bモード撮像用のデータ収集領域内の全てのデータ収集位置からの超音波反射信号を取得する。そうすると、データ処理部9は、超音波反射信号を用いたBモード処理を実行することにより、データ収集領域に対応する超音波断層画像データを生成する。
【0042】
更に、スキャン制御部8は、デフォルト領域として設定された超音波ドプラ画像データ用のデータ収集領域からカラードプラモード撮像用の超音波ドプラ信号が収集されるように制御信号を送受信部3に出力する。そして、Bモード撮像用の超音波反射信号と同様な流れで、データ処理部9に超音波ドプラ信号が収集される。そうすると、データ処理部9は、超音波ドプラ信号を用いたカラードプラ処理を実行することにより、データ収集領域に対応する超音波ドプラ画像データを生成する。
【0043】
図3は、図1に示す超音波プローブ2のタイプに応じた超音波信号の収集領域を示す図である。
【0044】
超音波信号の収集領域内における各データ収集位置は、スキャンレンジ方向の位置及び深さによって特定することができる。スキャンレンジ方向及び深さ方向は互いに直交するが、超音波プローブ2のタイプによってスキャンレンジ方向及び深さ方向が異なる。
【0045】
図3(A)は超音波プローブ2がリニアタイプである場合におけるスキャンレンジ方向及び深さを、図3(B)は超音波プローブ2がコンベックスタイプである場合におけるスキャンレンジ方向及び深さを、図3(C)は超音波プローブ2がセクタタイプである場合におけるスキャンレンジ方向及び深さを、それぞれ示している。図3の(A), (B)及び(C)に示すように超音波プローブ2のタイプに応じた形状を有するBモード撮像用のデータ収集領域Rbと、カラードプラモード撮像用のデータ収集領域Rcとを、それぞれ独立に設定することができる。
【0046】
尚、図3は、2次元(2D: two dimensional)の走査を行う超音波プローブの例を示しているが、3次元(3D: three dimensional)の走査を行う超音波プローブであれば、スキャンレンジ方向が2つの軸で表される。
【0047】
そして、このように設定されたBモード撮像用のデータ収集領域Rbに対応する超音波断層画像データと、カラードプラモード撮像用のデータ収集領域Rcに対応する超音波ドプラ画像データが、データ処理部9からデジタルスキャンコンバータ4に出力される。
【0048】
そうすると、デジタルスキャンコンバータ4は、超音波プローブ2のタイプに応じた走査方式の超音波断層画像データ及び超音波ドプラ画像データをそれぞれテレビ走査方式の超音波断層画像データ及び超音波ドプラ画像データに変換する。変化後のテレビ走査方式の超音波断層画像データ及び超音波ドプラ画像データは、互いに合成されて表示装置5に出力される。
【0049】
この結果、表示装置5には、被検体Oの関節部位における形態が描出された超音波断層画像と関節部位における流体及び動きのある物体がカラーで示された超音波ドプラ画像とが重畳表示される。関節を構成する骨領域からは、超音波反射信号が生じるため、超音波断層画像は、関節部位の骨領域が高輝度で白く描出された画像となる。
【0050】
関節部位が正常であれば、関節を構成する骨頭間には血流や関節液等の流体の循環が生じない。従って、正常な関節部位では、白く描出された骨頭間が低輝度で黒く表示される。
【0051】
一方、リウマチ等の疾病が関節部位に生じている場合には、本来は存在しない血流や関節液の循環が骨頭間に発生する。血流の循環が存在すると、超音波ドプラ画像として速度等の動態指標に応じたカラーで表示される。また、通常関節液からは十分な強度を有する超音波信号が反射しないが、異常な関節部位では、関節液の流れが超音波ドプラ画像としてカラー表示される場合がある。
【0052】
この他、異常な部位では、リンパの流れが超音波ドプラ画像としてカラー表示される可能性がある。また、異常な関節の機能保全等を目的としてヒアルロン酸が注入されている場合には、ヒアルロン酸の流れが超音波ドプラ画像としてカラー表示される。更に、関節を構成する骨が剥離している場合には、薄い骨が所定の速度で動く場合がある。従って、骨の動きの速度が、カラードプラモード撮像における検出範囲にあれば、骨の動きが超音波ドプラ画像としてカラー表示される。
【0053】
従って、整形外科分野における診断では、超音波ドプラ画像としてカラー表示される骨領域近傍の領域を検査することが重要となる。特にリウマチの診断では、骨頭間における超音波ドプラ画像の観察が効果的である。しかしながら、関節部位から生じる超音波ドプラ信号の強度は微弱であり、関節内における血流を捕捉するためには動画として表示される超音波ドプラ画像の十分なフレームレートが必要である。
【0054】
一般的にカラードプラモード撮像では、超音波断層画像データと超音波ドプラ画像データの双方をリアルタイムに生成するために、超音波反射信号の収集と超音波ドプラ信号の収集とがそれぞれ断続的かつ交互に繰り返される。従って、超音波ドプラ信号のデータ収集領域を関節部位に最適化して縮小できれば、超音波ドプラ信号の収集間隔を短くできるため、超音波ドプラ画像のフレームレートを向上させることができる。
【0055】
一方、整形外科分野の診断において、超音波ドプラ画像の観察のみならず超音波断層画像の観察が重要な場合もある。例えば、関節部位における骨折や腱の断裂を診断する場合には、検査部位で起きている軟骨の剥離や骨折の形状などをより詳細に観察することが重要である。
【0056】
そこで、データ収集領域調整部10により、検査対象となっている関節部位の形状に合わせて超音波断層画像データ及び超音波ドプラ信号の各データ収集領域を適切な位置及び大きさに調整することができる。
【0057】
そのために、ステップS3において、操作パネル6の操作によってデータ収集領域調整部10に骨領域の抽出指示情報が入力される。そうすると、データ収集領域調整部10は、データ処理部9から超音波断層画像データを取得し、取得した超音波断層画像データに対するエッジ抽出処理等の公知の画像処理によって関節を構成する骨領域を抽出する。
【0058】
次に、ステップS4において、データ収集領域調整部10は、デフォルト領域としてそれぞれ設定されている超音波断層画像データ及び超音波ドプラ信号の各データ収集領域が適切であるか否かを、抽出した骨領域に基づいて判定する。超音波断層画像データ及び超音波ドプラ信号の各データ収集領域が適切であるか否かの判定方法及び判定基準は、予め任意に決定しておくことができる。
【0059】
図2は、骨頭間の距離及び超音波ドプラ画像データのデータ収集領域として設定された関心領域(ROI: region of interest)の幅に対してそれぞれ閾値を設定し、骨頭間の距離の距離及びROIの幅に対する閾値処理によって超音波断層画像データ及び超音波ドプラ信号の各データ収集領域が適切であるか否かを判定する場合の例を示している。
【0060】
骨頭間の距離は、画像処理によって抽出された骨領域間の距離として幾何学的に求めることができる。また、骨領域の極大値や極小値を検出することによって骨頭領域の水平方向及び鉛直方向の幅を求めることもできる。
【0061】
より詳細には、超音波断層画像データのデータ収集領域が適切か否かは、例えば、超音波断層画像データのデータ収集領域の幅の、骨頭間の距離に対する比が、閾値で定まる範囲内であれば適切と判定することができる。或いは、超音波断層画像データのデータ収集領域の幅と骨頭間の距離との差で定義されるマージン距離が閾値で定められた範囲内であれば超音波断層画像データのデータ収集領域が適切と判定することができる。
【0062】
また、骨頭間の距離との比較対象を超音波断層画像データのデータ収集領域の幅に代えて隣接するデータ収集点間における距離としてもよい。逆に、骨頭間の距離に代えて各骨頭領域の水平方向及び鉛直方向の幅を、それぞれ超音波断層画像データのデータ収集領域の水平方向及び鉛直方向の幅と比較して適切なマージンで各骨頭が描出されるか否かを判定する閾値処理を実行するようにしてもよい。
【0063】
一方、超音波ドプラ画像データのデータ収集領域が適切か否かは、例えば、超音波ドプラ画像の描出用のROIの水平方向及び鉛直方向の幅と、各骨頭領域の水平方向及び鉛直方向の幅とを比較することによって、超音波断層画像データのデータ収集領域が適切か否かの判定と同様に判定することができる。この場合、例えば、各骨頭領域の鉛直方向における双方の幅を含む距離と超音波ドプラ画像データのデータ収集領域の鉛直方向の幅との比又は差に対する第1の閾値処理並びに2つの骨頭が含まれる水平方向の距離と超音波ドプラ画像データのデータ収集領域の水平方向の幅との比又は差に対する第2の閾値処理を実行すればよい。
【0064】
もちろん、超音波ドプラ画像データのデータ収集点間における距離や骨頭間の距離を用いて超音波ドプラ画像データのデータ収集領域が適切か否かを判定する閾値処理を行うようにしてもよい。或いは、骨頭間方向に対応する超音波ドプラ画像データのデータ収集領域の幅を骨頭間の距離と比較判定する一方、他方の超音波ドプラ画像データのデータ収集領域の幅を骨頭領域の幅と比較判定するようにしてもよい。
【0065】
ステップS4の判定において、データ収集領域調整部10が骨頭間の距離及び超音波ドプラ画像用のROIの幅の少なくとも一方が適切でないと判定した場合には、すなわち、超音波断層画像データ及び超音波ドプラ画像データの各データ収集領域の少なくとも一方が適切でないと判定した場合には、ステップS5において、データ収集領域調整部10が超音波断層画像データ及び超音波ドプラ画像データの各データ収集領域の一方又は双方が適切となるように骨領域に応じて調整する。
【0066】
このデータ収集領域の調整は、操作パネル6からデータ収集領域調整部10にデータ収集領域の調整指示が入力された場合に開始されるようにすることができる。但し、骨領域の抽出からデータ収集領域の調整までの動作が自動的に実行されるように一括して操作パネル6からデータ収集領域調整部10に指示情報を入力できるようにしてもよい。
【0067】
図4は、図1に示すデータ収集領域調整部10により超音波ドプラ画像データのデータ収集領域を調整した例を示す図である。
【0068】
図4(A)は、超音波ドプラ画像データのデータ収集領域の調整前において表示装置5に重畳表示される関節部位の超音波断層画像及び超音波ドプラ画像の例を示している。また、図4(B)は、超音波ドプラ画像データのデータ収集領域の調整後において表示装置5に重畳表示される関節部位の超音波断層画像及び超音波ドプラ画像の例を示している。
【0069】
図4(A)に示すように表示装置5には、超音波断層画像データのデータ収集領域Rbに対応する関節部位を含む領域の形態画像が超音波断層画像として表示される。超音波断層画像には、関節部位における骨領域が白く描出される。このため、画像処理によって関節を構成する2つの骨頭間における距離D1及び2つの骨頭領域をカバーする鉛直方向の距離D2をそれぞれ求めることができる。
【0070】
一方、超音波ドプラ画像データのデータ収集領域Rc内に流体又は動きのある領域があると、カラー領域Icとして表示される。また、超音波ドプラ画像データのデータ収集領域Rcは、超音波ドプラ画像用のROIとして矩形枠で表示させることができる。
【0071】
しかしながら、超音波ドプラ画像用のROIが大きすぎると、収集対象となる超音波ドプラ画像データのデータ量が増加し、超音波ドプラ画像のフレームレートが低下する。
【0072】
そこで、図4(B)に示すように、超音波ドプラ画像データのデータ収集領域Rcの水平方向及び鉛直方向の各幅を、例えば骨頭間の距離D1及び2つの骨頭領域をカバーする鉛直方向の距離D2に応じてそれぞれ適切な幅に調整することができる。調整方法の具体例としては、骨頭間の距離D1及び2つの骨頭領域をカバーする鉛直方向の距離D2にそれぞれ予め決定したマージン距離を加えた距離を加えた距離を、調整後の超音波ドプラ画像データのデータ収集領域Rcの水平方向及び鉛直方向における各幅とする方法が挙げられる。
【0073】
但し、上述した調整方法に限らず、骨領域に基づいて任意の方法で超音波ドプラ画像データのデータ収集領域Rcの幅を適切な幅に調整することができる。
【0074】
超音波ドプラ画像データのデータ収集領域Rcの調整は、より具体的には次のような動作によって実行することができる。すなわち、データ収集領域調整部10において超音波ドプラ画像データのデータ収集領域Rcの水平方向及び鉛直方向における適切な幅がそれぞれ決定されると、カラードプラモード撮像におけるスキャンレンジ及び深さの制御値としてデータ収集領域調整部10からスキャン制御部8に通知される。
【0075】
そうすると、スキャン制御部8は、データ収集領域調整部10から通知されたスキャンレンジ及び深さの制御値をカラードプラモード撮像における新たなデータ収集領域として設定する。そして、スキャン制御部8は、新たに設定されたデータ収集領域から超音波ドプラ信号が収集されるように送受信部3を制御する。このため、送受信部3からの電気信号の印加によって超音波プローブ2が動作し、データ処理部9において骨領域に対応する適切なデータ収集領域からの超音波ドプラ信号が取得される。更に、データ処理部9におけるデータ処理によって生成された超音波ドプラ画像データがデジタルスキャンコンバータ4を通じて表示装置5に出力される。
【0076】
この結果、図4に示すように調整後におけるデータ収集領域Rc内の流体及び動きを有する部位がカラー領域Icとして表示される。すなわち、カラードプラモード撮像用のROIを自動的に骨頭間に絞り込んで縮小することができる。
【0077】
これにより、超音波断層画像データのデータ量を変えることなく超音波ドプラ画像データのデータ量を低減させることができる。従って、関節の形態が描出された超音波断層画像の画質劣化及びフレームレートの低下を抑制しつつ超音波ドプラ画像のフレームレートを向上させることができる。このため、ユーザは関節部位において検出すべき血流等の流体の有無を容易に検知し、検知した流体を良好なフレームレートで観察することが可能となる。
【0078】
尚、デフォルトとして設定された調整前における超音波ドプラ画像データのデータ収集領域Rcが、関節を含む領域に対して相対的に小さすぎた場合やシフトしている場合には、データ収集領域Rcが拡大又は移動によって調整されることとなる。この場合には、より適切な範囲において検出すべき血流等の流体を観察することができる。
【0079】
一方、超音波ドプラ画像データのデータ収集領域Rcのみならず、超音波断層画像データのデータ収集領域Rbも骨領域に基づいて調整することができる。
【0080】
図5は、図1に示すデータ収集領域調整部10により超音波断層画像データ及び超音波ドプラ画像データの双方のデータ収集領域を調整した例を示す図である。
【0081】
図5(A)は、超音波断層画像データ及び超音波ドプラ画像データの各データ収集領域の調整前において表示装置5に重畳表示される関節部位の超音波断層画像及び超音波ドプラ画像の例を示している。また、図5(B)は、超音波断層画像データ及び超音波ドプラ画像データの各データ収集領域の調整後において表示装置5に重畳表示される関節部位の超音波断層画像及び超音波ドプラ画像の例を示している。
【0082】
図4(A)と同様に図5(A)に示すように表示装置5には、データ収集領域Rbから収集された超音波断層画像データ及びデータ収集領域Rcから収集された超音波ドプラ画像データに基づいて、骨領域が白く描出された超音波断層画像と流体又は動きのある領域がカラー領域Icとして描出された超音波ドプラ画像が重畳表示される。また、画像処理によって骨頭間における距離D1及び2つの骨頭領域をカバーする鉛直方向の距離D2をそれぞれ求めることができる。
【0083】
そして、図5(B)に示すように、超音波断層画像データ及び超音波ドプラ画像データの各データ収集領域Rb、Rcのそれぞれの水平方向及び鉛直方向の各幅を、例えば骨頭間の距離D1及び2つの骨頭領域をカバーする鉛直方向の距離D2に応じてそれぞれ適切な幅に調整することができる。
【0084】
調整方法の具体例としては、骨頭間の距離D1及び2つの骨頭領域をカバーする鉛直方向の距離D2にそれぞれ予め決定した超音波断層画像用のマージン距離を加えた距離を加えた距離を、調整後の超音波断層画像データのデータ収集領域Rbの水平方向及び鉛直方向における各幅とする方法が挙げられる。超音波ドプラ画像データのデータ収集領域Rcについても超音波ドプラ画像用のマージン距離を設定して超音波断層画像データのデータ収集領域Rbと独立して調整することができる。
【0085】
但し、上述した調整方法に限らず、骨領域に基づいて任意の方法で超音波断層画像データ及び超音波ドプラ画像データの各データ収集領域Rb、Rcのそれぞれの幅を適切な幅に調整することができる。
【0086】
また、超音波断層画像データのデータ収集領域Rbの調整のための詳細な動作は、超音波ドプラ画像データのデータ収集領域Rcの調整用の動作と同様である。換言すれば、スキャンレンジ及び深さを骨領域に応じて自動調整することによって超音波断層画像データのデータ収集領域Rbを拡大、縮小又は移動させることができる。尚、超音波断層画像データのスキャンレンジ及び深さの双方を小さくすることによる超音波断層画像の拡大動作はZOOMと、ZOOMの対象となるデータ収集領域Rbの移動動作はPANと、それぞれ称されることもある。
【0087】
このように、超音波ドプラ画像データのデータ収集領域Rcのみならず、超音波断層画像データのデータ収集領域Rbも調整すれば、形態画像の描出範囲を関節近傍に絞り込んで拡大することができる。この結果、関節部位における超音波断層画像及び超音波ドプラ画像の双方を精度よく目視することが可能となり、より詳細な関節部位の形状の確認による診断能の向上に繋がる。
【0088】
超音波断層画像データ及び超音波ドプラ画像データの各データ収集領域の調整が完了した場合並びにステップS4の判定において超音波断層画像データ及び超音波ドプラ画像データの各データ収集領域が適切であると判定された場合には、ステップS6において、血管領域と非血管領域との面積比が記録される。
【0089】
すなわち、前述のように血流が生じている血管領域は、関節内における炎症領域と考えることができる。従って、血管領域と非血管領域との面積比を、関節における炎症の度合いを示す指標値とすることができる。血管領域の面積は、超音波ドプラ画像データに対する公知の処理によって自動的に評価情報作成部11において行うことができる。
【0090】
例えば、超音波ドプラ画像データに対して画素値に対する閾値を用いた閾値処理及び2値化処理を実行することによって血流からの信号値の存在範囲を抽出することができる。そして、抽出された範囲の面積を血管領域の面積として計算することができる。また、ROIの面積から血管領域の面積を減じれば、血管が存在しない領域である非血管領域の面積を算出することができる。
【0091】
一方、ユーザが、超音波断層画像及び超音波ドプラ画像の目視の結果、炎症部位として確認された領域を操作パネル6の操作によって評価情報作成部11に入力することもできる。この場合には、入力された炎症部位を表す領域の面積を評価情報作成部11において計算することができる。従って、血管領域と非血管領域との面積比に代えて、炎症領域と正常領域との面積比を、関節における炎症の度合いを示す指標値として計算するようにしてもよい。正常領域の面積は、非血管領域の面積と同様に、ROIの面積から炎症領域の面積比を減じることによって計算することができる。
【0092】
この他、一般的な超音波診断装置に備えられている面積や距離等の基本的な計測機能に加え、複数の基本的な計測機能を併用して得られる計測値を、病状の種類に応じて検査部位における疾患の度合いを客観的に判断するための指標値とすることができる。
【0093】
そして、評価情報作成部11において算出された指標値は、診断部位を特定するための情報と関連付けて関節ごとの評価結果情報として評価結果データベース12に記録される。この関節ごとの評価結果情報には、必要に応じてユーザが操作パネル6を操作することによって任意の数値や文字列を付加することができる。
【0094】
これにより、超音波断層画像及び超音波ドプラ画像に基づく関節ごとの評価結果情報を、後日確認することが可能となる。また、指標値を含む評価結果情報を記録することによって、単に超音波画像情報を記録する場合に比べて、より正確に患者の状態を記録することができる。
【0095】
関節ごとの評価結果情報の記録が完了すると、ステップS7において、評価情報作成部11は全ての関節部位の検査が完了しているか否かを判定する。すなわち、検査対象となる全ての関節について評価結果情報が記録されたか否かが評価情報作成部11により判定される。例えば、操作パネル6から検査対象となる関節の検査の完了情報が評価情報作成部11に入力された場合に、評価情報作成部11が全ての関節部位の検査が完了していると判定するようにすることができる。
【0096】
全ての関節部位の検査が完了していない場合には、次の検査対象となる被検体Oの関節部位近傍にユーザが超音波プローブ2を接触させる。そして再びステップS2からステップS6までの超音波診断装置1の動作によって、次の検査対象となる関節についての超音波断層画像及び超音波ドプラ画像に基づく指標値を用いた評価結果情報が評価結果データベース12に記録される。
【0097】
このような関節ごとの超音波断層画像及び超音波ドプラ画像の収集並びに評価結果情報の記録が、ステップS7において全ての関節部位の検査が完了していると判定されるまで繰り返される。この結果、評価結果データベース12には、検査対象となる全ての関節についての指標値を用いた評価結果情報が記録される。
【0098】
ステップS7の判定においてYESと判定されると、ステップS8において、評価情報作成部11は、指標値を用いて複数の関節の評価結果を表す評価情報を生成する。複数の関節の評価情報は、評価結果データベース12に記録された関節ごとの評価結果情報と人体モデルデータベース13から読み込んだ人体モデルの各関節位置とのマッチングによって模式的な評価画像データとして作成することができる。
【0099】
そして、作成された複数の関節の評価情報は、評価情報作成部11からデジタルスキャンコンバータ4を通じて表示装置5に表示される。
【0100】
図6は、図1に示す評価情報作成部11において生成された複数の関節の評価画像データを表示させた例を示す図である。
【0101】
図6に示すように複数の関節Ijを識別することが可能な人体モデルを評価画像の一部として表示装置5に表示させることができる。図6は、左手の人体モデルを表示させた例を示している。
【0102】
そして、疾患の度合いを表す指標値の値に応じた色や輝度で各関節Ijを表示することができる。例えば、より評価が悪い関節Ijを赤とする一方、より評価が良い関節Ijを青とするカラースケールを用いて各関節Ijをマッピングすれば、疾患の部位、程度及び分布を視覚的かつ客観的に確認することが容易な評価画像を表示させることができる。
【0103】
更に、各関節Ijにカーソルを重ねると、対応する関節Ijの指標値がポップアップ表示されるように評価情報を作成してもよい。
【0104】
このように検査対象となる複数の関節における疾患の程度を、色分けなどによって評価画像として同時に表示させることができる。このため、例えば、血管領域と非血管領域との面積比を評価値として表示されたリウマチの進行具合を広範囲に亘って目視することが可能となる。これにより、ユーザは、関節内における炎症等の評価や病状の把握を容易に行うことができる。
【0105】
複数の関節の評価情報は、評価結果データベース12に記録することができる。このため、被検体Oごとに複数の関節の評価情報を記録して管理することができる。
【0106】
つまり以上のような、超音波診断装置1は、関節を構成する骨領域に応じた適切な超音波信号のデータ収集領域を自動的に設定できるようにしたものである。更に、超音波診断装置1は、超音波画像に基づく関節部位ごとの診断の評価結果情報を記録しておき、複数の関節を含む広範囲な評価情報を作成して表示できるようにしたものである。
【0107】
尚、上述した例では、関節部位の診断を行う場合について説明したが、関節に限らず整形外科分野の様々な診断に超音波診断装置1を適応させることができる。例えば、骨折等の骨の異常部位や腱の断裂等の診断に超音波診断装置1を適応させることができる。
【0108】
骨折の診断の場合には、骨頭間の距離の代わりに断裂した骨の間における距離や断裂した骨の端部における形状に基づいて、適切な超音波信号のデータ収集領域を自動設定することができる。すなわち、断裂した骨領域間において生じていると考えられる血流や炎症の有無の確認を、骨領域に応じて適切に調整されたROI内における超音波ドプラ画像の観察により容易に行うことができる。更に、断裂した骨の距離に応じてBモード撮像用のデータ収集領域を自動調整することができる。このため、骨折部分の画像を拡大して詳細な形状を確認することができる。
【0109】
この他、Bモード撮像用のデータ収集領域を骨領域に応じて調整すれば、腱の断裂部分における画像を拡大したり、軟骨や関節液の存在領域を拡大表示させることができる。
【0110】
このため、超音波診断装置1によれば、整形外科分野における診断のために簡便に利用することができる。すなわち、整形外科分野における検査部位に対応して、適切に超音波診断装置1を動作させることができる。この結果、関節や骨近傍における疾患や障害を、より少ない操作で容易に描出することができる。
【0111】
超音波診断装置1は、特にリウマチ等の四肢の末端における検査が必要な疾患に対して有効である。すなわち、カラードプラモード撮像によって収集された関節の超音波ドプラ画像に基づいてリウマチの進行度の評価を行うことができる。
【0112】
また、超音波診断装置1には、一旦得られた関節ごとの評価情報を関節と関連付けて記録しておくことができる。このため、複数の関節の評価情報を生成して確認することができる。これにより、治療方針の的確な決定や検査精度の向上を図ることができる。
【0113】
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【0114】
例えば、ワークステーション等の近年の医用画像処理装置には、超音波画像データを取り込んで、超音波診断装置の動作を模擬する機能が備えられている。従って、収集された超音波画像データに対して画像処理を施すことによって、上述した超音波診断装置1と同様な機能を医用画像処理装置に設けることができる。
【0115】
すなわち、超音波ドプラ画像データに対する画像処理によって骨領域を抽出し、抽出した骨領域に基づいて適切な範囲及びサイズで超音波断層画像及び超音波ドプラ画像を表示させる機能を医用画像処理装置に設けることができる。同様に、関節ごとの指標値を用いた評価結果情報を蓄積し、複数の関節の評価情報を表示させる機能を医用画像処理装置に設けることもできる。そのために、これらの機能を実行するための医用画像処理プログラムを作成してコンピュータで利用することもできる。
【符号の説明】
【0116】
1 超音波診断装置
2 超音波プローブ
3 送受信部
4 デジタルスキャンコンバータ
5 表示装置
6 操作パネル
7 制御装置
8 スキャン制御部
9 データ処理部
10 データ収集領域調整部
11 評価情報作成部
12 評価結果データベース
13 人体モデルデータベース
O 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に超音波を送信することによって収集した超音波信号に基づいて前記被検体の骨又は関節が描出された超音波断層画像データを含む超音波画像データを生成する画像収集手段と、
前記超音波断層画像データに対する画像処理によって前記骨又は関節を構成する骨領域を抽出し、抽出された前記骨領域に応じて前記超音波信号の収集領域を調整する領域調整手段と、
を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記超音波画像データに基づいて、指標値を用いた複数の関節の評価結果を示す評価情報を生成する評価情報作成手段を更に備える請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記画像収集手段は、超音波ドプラ信号に基づいて超音波ドプラ画像データを生成するように構成され、
前記領域調整手段は、前記超音波ドプラ信号の収集領域を前記骨領域に応じて調整するように構成される請求項1又は2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記領域調整手段は、前記超音波断層画像データを生成するための超音波反射信号の収集領域を前記骨領域に応じて調整するように構成される請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記領域調整手段は、骨頭間の距離を計測し、前記骨頭間の距離に基づいて前記超音波信号の収集領域を調整するように構成される請求項1乃至4のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
被検体に超音波を送信することによって収集した超音波信号に基づいて前記被検体の関節が描出された超音波断層画像データを含む超音波画像データを生成する画像収集手段と、
前記超音波画像データに基づいて、指標値を用いた複数の関節の評価結果を示す評価情報を生成する評価情報作成手段と、
を備える超音波診断装置。
【請求項7】
超音波診断装置を、
被検体に超音波を送信することによって収集した超音波信号に基づいて前記被検体の骨又は関節が描出された超音波断層画像データを含む超音波画像データを生成する画像収集手段、及び
前記超音波断層画像データに対する画像処理によって前記骨又は関節を構成する骨領域を抽出し、抽出された前記骨領域に応じて前記超音波信号の収集領域を調整する領域調整手段、
として機能させる超音波診断装置の制御プログラム。
【請求項8】
超音波診断装置を、
被検体に超音波を送信することによって収集した超音波信号に基づいて前記被検体の関節が描出された超音波断層画像データを含む超音波画像データを生成する画像収集手段、及び
前記超音波画像データに基づいて、指標値を用いた複数の関節の評価結果を示す評価情報を生成する評価情報作成手段、
として機能させる超音波診断装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−51998(P2013−51998A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190193(P2011−190193)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】