超音波診断装置及び超音波診断装置制御プログラム
【課題】回路規模を増大させないで、画像の取得と同時に素子の信号を取り込んでこれを解析し、送受信条件の最適化を行う超音波診断装置等を提供すること。
【解決手段】供給される駆動信号に応答して被検体に対し超音波を送信し、前記被検体からの反射波に基づいて受信信号を発生する複数の超音波振動素子に、所定の送信条件に従って駆動信号を供給する送信ユニットと、複数の超音波振動素子に対応する複数の画像生成用受信信号を記憶し、当該記憶された各画像生成用受信信号を用いて所定の受信条件に従って受信ビームを生成すると共に、複数の超音波振動素子に対応する複数の補正用受信信号を記憶する受信ユニットと、複数の補正用受信信号を受け取り、当該複数の補正用受信信号に基づいて、送信条件及び前記受信条件の少なくとも一方を補正する補正ユニットと、受信ビームに基づいて超音波画像を生成する画像処理ユニットと、を具備する。
【解決手段】供給される駆動信号に応答して被検体に対し超音波を送信し、前記被検体からの反射波に基づいて受信信号を発生する複数の超音波振動素子に、所定の送信条件に従って駆動信号を供給する送信ユニットと、複数の超音波振動素子に対応する複数の画像生成用受信信号を記憶し、当該記憶された各画像生成用受信信号を用いて所定の受信条件に従って受信ビームを生成すると共に、複数の超音波振動素子に対応する複数の補正用受信信号を記憶する受信ユニットと、複数の補正用受信信号を受け取り、当該複数の補正用受信信号に基づいて、送信条件及び前記受信条件の少なくとも一方を補正する補正ユニットと、受信ビームに基づいて超音波画像を生成する画像処理ユニットと、を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特に、デジタルビームフォーマが搭載されている医療用の超音波診断装置及び当該超音波診断装置に実装される超音波診断装置制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は生体内情報の画像を表示する診断装置であり、X線診断装置やX線コンピュータ断層撮影装置などの他の画像診断装置に比べ、安価で被曝が無く、非侵襲性に実時間で観測するための有用な装置として利用されている。超音波診断装置の適用範囲は広く、心臓などの循環器から肝臓、腎臓などの腹部、末梢血管、産婦人科、乳癌の診断などに適用されている。
【0003】
この様な超音波診断装置では、アレイトランスデューサを使用して送受信ビームの指向性を形成して、ビームの方向を順次変更する事により、被検体内の被走査領域(二次元領域内或いは三次元領域)内の組織からの超音波データを取得する。そして、得られた超音波データに基づいて被走査領域に対応する複数の断面画像、或いはボリュームレンダリング画像等を生成し表示する。観察者は、表示された画像を観察することにより、被検体内の組織形状を把握して診断に使用される。
【0004】
超音波画像の分解能は、距離方向については使用する超音波帯域の広さで決まり、方位方向については使用する周波数・距離・送受信の開口の広さに依存する。この性質により、分解能は、例えば均一な媒質を経由して画像を形成する場合には開口を大きくすればするほど向上する。超音波プローブも、1980年頃には30−40素子の開口が主流であったが、現在においては、100素子近くに増大されているもの主流となっている。超音波プローブの開口をさらに大きくした場合、均一な媒質を経由して画像を得ることが期待できる。その一方で、実際の皮膚を経由して画像を得る応用では、皮下組織などの音響的性質の不均一性が原因で開口を増大させても分解能が改善されず、かえって、不要応答が増大して診断に適さない画像を出す状況が発生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−79607号公報
【特許文献2】特開平5−146445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、生体の不均一性を測定し、それに起因する位相と振幅の歪みを補正する技術が提案され検討されている。
【0007】
図12は、従来の受信回路での受信信号の流れを示した図である。同図に示す様に、各超音波振動素子の信号は前処理の後A/D変換によってデジタル化され、ビームフォーマに送られる。ここではメモリ801〜804によるクロック単位の遅延とデジタルフィルタ811〜814によるクロック以下の微小遅延を与えられ所定の方向・深さからの信号が同時になるように調整されて加算回路821で加算されて指向性を形成する。所定の方向を複数設ける同時受信を行っている場合にはこの遅延加算の処理が複数行われるように構成される。一方デジタル化された信号はビームフォーマとは別に、送受信条件を適正化する処理系9として、各素子の波形を保存するメモリ901〜903とこれらの出力の相互相関を計算する相関回路911〜912により隣接素子の相関を解析し各素子に至る媒体の不均一性を推定し送受信の振幅・遅延の補正値を計算する回路921を構成している。
【0008】
図13は、従来の受信回路のメモリの動作を説明するための図である。同図に示す様に、各超音波振動素子の信号は前処理の後A/D変換によってデジタル化され、ビームフォーマに送られる(RX01,RX02)。この受信信号RX01はメモリ801の対応するアドレス領域801Bに順次書き込まれ、次の送信に対応した受信信号RX02は異なるアドレス領域801Cに書き込まれる。このように次の信号による上書きが発生しないようにアドレス空間を広く取ることで、一つの受信信号を複数回読み出す事が可能となり、例えば、RX01のデータは異なる遅延時間でRX01B1,RX01B2,RX01B3と三回読み出して異なる焦点・指向性を形成する事ができる。このような機能は、二次元アレイ振動子を使って三次元走査を実現する際に実時間性を向上させる事ができる。メモリの書き込みと読み出しのクロック速度は、書き込みは音響的な信号の帯域で決定され、最大でも40〜60MHz程度で事前に間引きをすることで更に遅いクロックで書き込む状態であるが、読み出しは100MHz以上にする事が出来、複数回読み出しを行ったり、読み出しの時間的余裕が取れるケースが多い。
【0009】
しかしながら、従来の超音波診断装置においては、ビームフォーマとは別に送受信条件の適正化のための処理系を設ける必要がある。このため、回路規模が増大してしまい、装置の大型化、コスト増大を招き、実用的な装置の提供を妨げている。これらの問題は、二次元アレイ超音波プローブにおいて特に顕著である。
【0010】
当該事情を鑑みて、回路規模を増大させることなく、画像の取得と同時に素子の信号を取り込んでこれを解析し、送受信条件の最適化を行うことができる超音波診断装置及び超音波診断装置制御プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0012】
一実施形態に係る超音波診断装置は、供給される駆動信号に応答して被検体に対し超音波を送信し、前記被検体からの反射波に基づいて受信信号を発生する複数の超音波振動素子を有する超音波プローブと、所定の送信条件に従って前記複数の超音波振動素子に前記駆動信号を供給する送信ユニットと、前記複数の超音波振動素子に対応する複数の画像生成用受信信号を記憶し、当該記憶された各画像生成用受信信号を用いて所定の受信条件に従って受信ビームを生成すると共に、前記複数の超音波振動素子に対応する複数の補正用受信信号を記憶する受信ユニットと、前記複数の補正用受信信号を受け取り、当該複数の補正用受信信号に基づいて、前記送信条件及び前記受信条件の少なくとも一方を補正する補正ユニットと、前記受信ビームに基づいて超音波画像を生成する画像処理ユニットと、前記超音波画像を表示する表示ユニットと、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。
【図2】図2は、超音波受信ユニット22のブロック構成図である。
【図3】図3は、所定のチャネルにおける、ビームフォーミング処理系と解析・補正処理系との処理の流れを説明するための概念図である。
【図4】図4は、送受信条件適正化機能を説明するための図である。
【図5】図5は、送受信条件適正化機能を説明するための図である。
【図6A】図6Aは、送受信条件適正化機能の適用例1を説明するための図である。
【図6B】図6Bは、送受信条件適正化機能の適用例1を説明するための図である。
【図6C】図6Cは、送受信条件適正化機能の適用例1を説明するための図である。
【図7A】図7Aは、送受信条件適正化機能の適用例2を説明するための図である。
【図7B】図7Bは、送受信条件適正化機能の適用例2を説明するための図である。
【図7C】図7Cは、送受信条件適正化機能の適用例2を説明するための図である。
【図8A】図8Aは、送受信条件適正化機能の適用例3を説明するための図である。
【図8B】図8Bは、送受信条件適正化機能の適用例3を説明するための図である。
【図9】図9は、送受信条件適正化機能の適用例4を説明するための図である。
【図10A】図10Aは、送受信条件適正化機能の適用例4を説明するための図である。
【図10B】図10Bは、送受信条件適正化機能の適用例4を説明するための図である。
【図10C】図10Cは、送受信条件適正化機能の適用例4を説明するための図である。
【図11】図11は、二次元アレイプローブを用いた第2の実施形態を説明するための図である。
【図12】図12は、従来の超音波診断装置における受信処理を説明するための図である。
【図13】図13は、従来の受信回路のメモリの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態及び第2実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0015】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。同図に示すように、本超音波診断装置1は、超音波プローブ12、入力装置13、モニター14、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22、Bモード処理ユニット23、ドプラ処理ユニット24、RAWデータメモリ25、ボリュームデータ生成ユニット26、画像処理ユニット28、表示処理ユニット30、制御プロセッサ29、記憶ユニット31、インターフェースユニット32を具備している。
【0016】
超音波プローブ12は、被検体に対して超音波を送信し、当該送信した超音波に基づく被検体からの反射波を受信するデバイス(探触子)であり、その先端に配列された複数の超音波振動子、整合層、バッキング材等を有し、超音波診断装置本体11とケーブルで接続される。各超音波振動子は独立したチャネルを形成し、超音波送信ユニット21からの駆動信号に基づきスキャン領域内の所望の方向に超音波を送信し、当該被検体からの反射波を電気信号に変換する。整合層は、当該超音波振動子に設けられ、超音波エネルギーを効率良く伝播させるための中間層である。バッキング材は、当該超音波振動子から後方への超音波の伝播を防止する。当該超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送受信方向の速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0017】
なお、本実施形態に係る超音波プローブ12は、一次元アレイプローブ(複数の超音波振動子が一方向に沿って配列されたプローブ)、二次元アレイプローブ(複数の超音波振動子が二次元マトリックス状に配列されたプローブ)のいずれであってもよい。
【0018】
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を有している。
【0019】
モニター14は、表示処理ユニット27からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。
【0020】
超音波送信ユニット21は、図示しないが、クロック発生器、分周器、送信遅延回路、パルサを有している。クロック発生器で発生されたクロックパルスを分周器で例えば5KHz程度のレートパルスに落とし、このレートパルスを送信遅延回路を通してパルサに与えて高周波の電圧パルスを発生し、超音波プローブ12の各超音波振動子を駆動する(つまり機械的に振動させる)ようになっている。超音波送信ユニット21は、任意の波形を発生できるものであっても良い。超音波プローブ12を介して被検体内に送信される超音波は、被検体内の音響インピーダンスの境界で反射し、当該反射波に基づいて各超音波振動子において、機械的振動から電気信号に変換されることになる。
【0021】
超音波受信ユニット22は、各超音波振動子から、反射波に起因する電気信号を受け取り、所定の処理を施すことにより、指向性を有する信号(エコー信号)を生成する。また、超音波受信ユニット22は、被検体(生体)の不均一性を解析し補正する処理を実行する。同超音波受信ユニット22の構成については、後で詳しく説明する。
【0022】
Bモード処理ユニット23は、受信ユニット22からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。
【0023】
ドプラ処理ユニット24は、いわゆるカラードプライメージング(CDI)を実現するユニットであり、まず、受信回路5からのエコー信号から周波数偏移を受けたドプラ信号を取り出し、この取り出したドプラ信号からMTIフィルタで特定の周波数成分だけを通し、その通過した信号の周波数を自己相関器により求め、この周波数から演算部で平均速度、分散、パワーを演算するように構成されている。なお、MTIフィルタの通過帯域を調整することにより、主に血流を映像化する一般的なドプラモード(このモードによる画像データを血流ドプラ画像データと称する)と、主に心筋等の臓器を映像化する組織ドプラモード(このモードによる画像データを組織ドプラ画像データと称する)とを切り替えることができるようになっている。
RAWデータメモリ25は、Bモード処理ユニット23から受け取った複数のBモードデータを用いて、超音波走査線上のBモードデータであるBモードRAWデータを生成する。また、RAWデータメモリ25は、血流検出ユニット24から受け取った複数の血流データを用いて、三次元的な超音波走査線上の血流データである血流RAWデータを生成する。なお、ノイズ低減や画像の繋がりを良くすることを目的として、RAWデータメモリ25の後に三次元的なフィルタを挿入し、空間的なスムージングを行うようにしてもよい。
【0024】
ボリュームデータ生成ユニット26は、RAWデータをボリューム単位へのデータ配置に変換することにより、RAWデータメモリ25或いは高解像度データ生成ユニット26から受け取ったBモードRAWデータからBモードボリュームデータを生成する。この変換は、空間的な位置情報を加味した処理により、画像生成処理において用いられる視体積内の各視線上のBモードボリュームデータを生成するものである。なお、本実施形態においては、上記変換処理によって生成されたBモードボリュームデータを用いて、各種画像処理を実行する場合を例とする。しかしながら、当該例に拘泥されず、例えば、RAW−ボクセル変換を実行することで生成されるBモードボクセルボリュームデータを用いて、高解像度データ取得機能に従う処理を実行するようにしてもよい。
【0025】
バックエンド処理ユニット27は、制御プロセッサ29の制御のもと、各超音波振動素子からの受信信号を用いて、素子間の到達時間差、位相ひずみ、振幅ひずみ等を解析し、これらの結果に従って、送信遅延・受信遅延を補正する。
【0026】
画像処理ユニット28は、ボリュームデータ生成ユニット26から受け取ったデータを用いて、ボリュームレンダリング、多断面変換表示(MPR:Multi Planar Reconstruction)、最大値投影表示(MIP:Maximum Intensity Projection)等の所定の画像処理を行う。なお、ノイズ低減や画像の繋がりを良くすることを目的として、画像処理ユニット28の後に二次元的なフィルタを挿入し、空間的なスムージングを行うようにしてもよい。
【0027】
表示処理ユニット30は、画像処理ユニット28において生成・処理された各種画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、γカーブ補正、RGB変換等の各種を実行する。
【0028】
制御プロセッサ29は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する。特に、制御プロセッサ29は、後述する送受信条件適正化機能において、画像生成用のエコー信号と複数の補正用のエコー信号とが時分割に記憶されるように、受信ユニット22を制御する。或いは、制御プロセッサ29は、画像生成用のエコー信号と複数の補正用のエコー信号とが物理的に異なるメモリ領域に記憶され、それぞれの信号を異なるタイミングで出力するように、受信ユニット22を制御する。これらの制御により、受信ユニット22は、制御プロセッサ29の制御に従って、画像生成用の受信ビームに対応するエコー信号を出力する第1の機能と、補正用のエコー信号を出力する第2の機能との二つの機能を所定のタイミングで果たすことになる。
【0029】
記憶ユニット31は、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件、画像処理プログラム、ボディマーク生成プログラム、後述する送受信条件適正化機能を実現するための専用プログラム、その他のデータ群が保管されている。また、必要に応じて、図示しない画像メモリ中の画像の保管などにも使用される。記憶ユニット31のデータは、インターフェースユニット32を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0030】
インターフェースユニット32は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインタフェースである。当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インターフェースユニット32よって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0031】
(送受信条件適正化機能)
次に、本超音波診断装置1が有する送受信条件適正化機能について説明する。同機能は、回路規模を増大させることなく、各チャネル毎のエコー信号取得と共に別途エコー信号を取り込んでこれを用いて超音波伝播媒体の不均一性を解析し、送受信条件を適正化するものである。当該送受信条件適正化機能は、制御プロセッサ29の制御のもと、超音波受信ユニット22において実行される。
【0032】
図2は、超音波受信ユニット22のブロック構成図である。同図に示す様に、超音波受信ユニット22は、A/D変換器401、ビームフォーマ用メモリ501〜504、FIRフィルタ511〜514、加算器521、独立メモリ601〜604、フィルタ611〜614、マルチプレクサ621を有している。ビームフォーマ用メモリ501〜504、FIRフィルタ511〜514、加算器521により、ビームフォーミング処理系を構成し、独立メモリ601〜604、フィルタ611〜614、マルチプレクサ621により、送受信条件適正化機能を実現するための処理系(解析・補正処理系)を構成する。なお、同図の例では説明を簡単にするため、4チャネル分(4つの超音波振動素子分)の構成を例示した。しかしながら、現実には、超音波振動素子それぞれに対応する信号処理系統が個別に設けられることになる。
【0033】
図2に示す様に、各超音波振動素子からのエコー信号は、前処理の後A/D変換器401においてデジタル化され、ビームフォーマ用メモリ501〜504に送られる。ビームフォーマ用メモリ501〜504では、クロック単位の遅延(比較的長い遅延)が実行される。すなわち、ビームフォーマ用メモリ501〜504を用いた書き込み或いは読み出しにおいて素子毎に異なるアドレス制御を行うことで、デジタル化する際のサンプリング単位の遅延を与える。その後FIRフィルタ511〜514ではクロック以下の微小遅延を与えることで、更に正確な遅延処理を実行する。各チャネルに対応するエコー信号は、これらの遅延処理により、所定の方向・深さからの信号が同時になるように調整される。加算回路521は、各遅延処理後の各エコー信号を加算することで、高い指向性を持つ受信ビームを形成する。なお、加算回路521は、同時に複数の方向からの信号を選択的に取り出すために異なる指向性を形成するための構成、繰り返して読み出すための構成を有する。
【0034】
また、各超音波振動素子からのエコー信号は、前処理の後A/D変換器401においてデジタル化され、ビームフォーマへの入力処理と並行して、独立メモリ601〜604に同時に格納される。なお、独立メモリ601〜604は、ビームフォーミングとは論理的に別系統であるが、物理的にはビームフォーマ用メモリ501〜504の領域を分離して同じ物理的メモリに格納することができる。フィルタ611〜614は、独立メモリ601〜604から読み出された各エコー信号をフィルタリングし、所定の帯域の信号を取り出す。マルチプレクサ621は、各チャネル毎に振幅・遅延を補正するためのチャネルデータを生成し、後段の処理系統(バックエンド処理ユニット27等)に出力する。制御プロセッサ29は、マルチプレクサ621からのチャネル毎のチャネルデータ(所定帯域のエコー信号)の相互相関(隣接する超音波振動素子における信号の相関)を解析することで、被検体内において超音波が各超音波振動子に至る経路の不均一性を推定する。
【0035】
図3は、所定のチャネル(すなわち、所定の超音波振動素子)における、ビームフォーミング処理系と解析・補正処理系との処理の流れを説明するための概念図である。
【0036】
図3の矢印A1に示す様に、所定のチャネルに対応し前処理後のデジタル化されたエコー信号(RX01,RX02)が、ビームフォーマ用メモリ501に入力されると、まず、先の送信TX01に対応する(時間的に先行する)受信信号RX01が、ビームフォーマ用メモリ501の対応するアドレス領域501Bに順次書き込まれる。また、次の送信TX02に対応する受信信号RX02は、アドレス領域501Bとは異なるアドレス領域501Cに書き込まれる。すなわち、遅延前のメモリ501には、同時収集した信号が距離方向にゲートしたパケットに分割して記憶される。
【0037】
一方、不均一性解析・補正処理のために用いられる当該超音波振動素子のデータは、図3の矢印A2に示す様に、独立メモリ601に書き込まれ、ビームフォーミング用のCHデータとは別個独立に保持される。
【0038】
ビームフォーミングにおいては、一つの受信信号(例えば、RX01のデータ)を、異なる遅延時間でRX01B1、RX01B2、RX01B3によって三回読み出し、異なる焦点・指向性を形成することが可能である。さらに、残りの時間で当該超音波振動素子に対応するCHデータを読み出し、フィルタなどを介して、ビームフォーマ出力と同じ経路を通じてバックエンド処理ユニット27に送る。その後、制御プロセッサ29は、バックエンド処理ユニット27に記憶されたチャネル毎の信号を用いて当該超音波振動素子に関する相関計算を実行し、伝播媒質の不均一性分析等が、後段の処理系において画像を表示しながら実行される。
【0039】
送受信超音波が均一な伝播媒体を経由したものである場合には、各超音波振動素子の信号は、例えば図4の左側に示す様に、伝播距離差に応じた遅延時間で信号が到達する。従って、伝播距離で計算された所定の遅延時間で遅延すれば、各超音波振動素子からの信号の位相を、例えば図4の右側に示す様に揃えることができ、これらを加算することにより、所定の方向・距離からの信号を強調し他の場所からの信号を抑制することができる。
【0040】
一方、送受信超音波が不均一な伝播媒体を経由してきたものである場合には、各超音波振動素子の信号は、例えば図5の左側に示す様に、伝播距離差に応じた遅延時間とは異なる時刻に到達することになる。このため、伝播距離で計算された所定の遅延時間で遅延させても、例えば図5の右側に示す様に各超音波新装素子の信号の位相を揃えることはできない。従って、これらの信号を加算しても所定の方向・距離からの信号の増強が低下し、また他の場所からの信号の抑圧が減少して指向性が劣化し画像の分解能が低下してしまう。
【0041】
本送受信条件適正化機能では、各超音波振動素子の信号をバックエンド処理ユニット27で到達時間差を分析すると共に位相ひずみや振幅ひずみを解析し、これらの結果に従って、送信遅延・受信遅延を補正する。従って、指向性の劣化を好適に低減させることが可能である。
【0042】
(適用例1)
次に、本送受信条件適正化機能の他の適用例について説明する。本適用例は、各超音波振動素子毎の振幅を解析し、適切に感度調整を行うものである。なお、画像表示を行う為のビームフォーミングを行いながら、各超音波振動素子の波形を取得し、バックエンド処理ユニット27に転送する動作は上述の通りである。
【0043】
本適用例に係る送受信条件適正化機能では、取得した各超音波振動素子の信号の振幅を以下のように解析し、受信感度を修正する。すなわち、バックエンド処理ユニット27は、各信号が図6Aに示す様に過小でないか、或いは図6Cに示す様に過大であり飽和した波形になっていないかを確認し、過小であれば、感度を上昇させ、過大であれば、感度を低減させ、図6Bに示すような適切な波形に補正する。
【0044】
(適用例2)
次に、本送受信条件適正化機能を用いて、撮像対象に対する超音波プローブ12の移動を検出する例について説明する。
【0045】
図7Aは、セクタ走査型の画像例を示している。この走査方式によって取得された画像では、近距離の視野が狭く、超音波プローブ12の移動による近距離画像の変化を検出する事が困難である。そこで、図7Bに示す様に、受信した各超音波振動素子の信号の時間的変化を検出し、これに基づいて超音波プローブ12の移動を検出する。例えば、超音波プローブ12を図7Cの矢印の方向に移動させた場合には、検出される信号は、図7Bから図7Cに示す様な移動したパターンとして得られる。バックエンド処理ユニット27は、当該信号パターンの時間的変化に基づいて、超音波プローブ12の移動を検出する。検出した移動の有無に従って、例えば超音波プローブ12の動きの無い状態では、受信ユニット22の全ての処理系をビームフォーマとして動作させ実時間性の高い画像を提供することも可能である。
【0046】
(適用例3)
次に、超音波プローブ12の超音波送受信面直下の多重反射の量により、超音波プローブ12の被検体表面からの浮きを検出する適用例について説明する。
【0047】
超音波プローブ12が被検体表面からの浮いていない状態では、図8Aに示す様に、近距離の散乱・反射はあまり大きくない。一方、超音波プローブ12が被検体表面から浮いた状態になった状態では、近距離に強い反射に起因する信号が発生し(受信され)ゆっくりと減寂する。従って、部分的に超音波振動素子が被検体表面に対して浮いた状態では、図8(b)に示す様に、浮いた超音波振動素子(同図では上の2つ)からは近距離に大きな信号が受信されることになる。バックエンド処理ユニット27は、この様に部分的に発生する近距離での大きな信号に基づいて、被検体表面から浮いた超音波振動素子からの受信信号を除外する。これにより、不要応答を抑えることが可能となる。
【0048】
(適用例4)
次に、複数の異なる遅延・振幅補正による部分画像を形成して比較し、その結果に応じて送受信の遅延・振幅条件を再設定する適用例について説明する。
【0049】
図9に示す様に、伝播時間から予測した到達時間差Bに比して、時間差が少ない信号が各超音波振動素子によって現実に受信された場合を想定する。係る場合、受信した各超音波振動素子毎の信号を使って、仮想的に図9のA、B、Cに示すような三つの伝播遅延時間を想定した部分画像を形成し、それぞれ図10A、図10B、図10Cに示す様に表示する。観察者は、表示された部分画像を観察して比較し、所望する遅延時間差に対応する画像を選択することで、送受信の遅延・振幅条件を再設定することができる。
【0050】
なお、図10A、図10B、図10Cの例(すなわち、図9に示す到達時間差A、B、Cの例)を比較すると、時間差の一致しているAの画像がぼけの少ない画像となり、実際の時間差に近い条件を画像形成の為の送受信条件への変更に使用することができる。
【0051】
(適用例5)
超音波画像上に関心領域を設定し、当該関心領域の前記超音波振動素子の各受信信号に基づいて、画像形成の為の送受信条件への変更するようにしてもよい。
【0052】
(効果)
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0053】
本超音波診断装置によれば、各超音波振動素子に対応する複数の補正用受信信号を画像生成用受信信号と同一の経路を通じ受け取り、当該複数の補正用受信信号に基づいて素子間の遅延時間差、振幅差、多重反射量等を解析し、その結果に基づいて送信条件及び送受信条件の少なくとも一方を補正する。従って、少ない消費電力と回路規模で、各チャネル毎のエコー信号取得と共に別途エコー信号を取り込んでこれを用いて超音波伝播媒体の不均一性を解析し、送受信条件を適正化することができる。その結果、脂肪層などの不均一層の多い患者に対しても、実時間性の高く劣化の少ない画像を提供することができる。
【0054】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、二次元超音波アレイプローブを用いて送受信条件適正化機能を実現するものである。
【0055】
図11は、本実施形態に係る超音波プローブ12(二次元超音波アレイプローブ)のブロック図である。同図に示す様に、超音波プローブ12は、振動子ユニット120、サブアレイビームフォーマ122、超音波送信ユニット21を具備している。
【0056】
超音波送信ユニット2は、図1に示したものと同様である。
【0057】
振動子ユニット120は、二次元マトリックス状に配列された複数の超音波振動子を有する。
【0058】
サブアレイビームフォーマ122は、前置増幅回路122a、部分遅延加算回路122bを有する。前置増幅回路122aは、振動子ユニット120から受け取ったチャネル毎のエコー信号を増幅する。部分遅延加算回路122bは、増幅されたチャネル毎のエコー信号を、例えば空間的に隣接する数チャネル〜十数チャネル単位で部分的に遅延加算し、それぞれが走査領域の異なる局所空間に対応する複数の部分的なビーム(部分ビーム)を生成する。
【0059】
部分遅延加算回路122bにおいて生成された複数の部分ビームとしてのエコー信号は、メインビームフォーマとしての後段の超音波受信ユニット22に送り出される。超音波受信ユニット22は、部分遅延加算回路122bから受け取った複数のエコー信号を用いて、第1の実施形態で説明した送受信条件適正化処理を実行する。
【0060】
なお、本実施形態においては、超音波送信ユニット21、サブアレイビームフォーマ122を超音波プローブ12側に設ける構成を例とした。しかしながら、当該例に拘泥されず、超音波送信ユニット21、サブアレイビームフォーマ122の双方を装置本体11側に設ける構成であってもよいし、超音波送信ユニット21、サブアレイビームフォーマ122のいずれか一方を装置本体11側に設ける構成であってもよい。また、ビームフォーマから出力されるデータを同じ指向性を持つ直線上の焦点に焦点を合わせる遅延量制御の例で説明した。しかしながら連続した直線上の焦点である必要は無く、画像化に必要な場所だけを不連続に指定して遅延加算制御を行っても良い。
【0061】
以上述べた構成によれば、二次元超音波アレイプローブを用いた場合であっても、送受信条件適正化機能を実現することができる。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0063】
例えば、本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0064】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…超音波診断装置、12…超音波プローブ、13…入力装置、14…モニター、21…超音波送信ユニット、22…超音波受信ユニット、23…Bモード処理ユニット、24…ドプラ処理ユニット、25…RAWデータメモリ、26…ボリュームデータ生成ユニット、27…バックエンド処理ユニット、28…画像処理ユニット、29…制御プロセッサ、231…記憶ユニット、32…インターフェースユニット
【技術分野】
【0001】
特に、デジタルビームフォーマが搭載されている医療用の超音波診断装置及び当該超音波診断装置に実装される超音波診断装置制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は生体内情報の画像を表示する診断装置であり、X線診断装置やX線コンピュータ断層撮影装置などの他の画像診断装置に比べ、安価で被曝が無く、非侵襲性に実時間で観測するための有用な装置として利用されている。超音波診断装置の適用範囲は広く、心臓などの循環器から肝臓、腎臓などの腹部、末梢血管、産婦人科、乳癌の診断などに適用されている。
【0003】
この様な超音波診断装置では、アレイトランスデューサを使用して送受信ビームの指向性を形成して、ビームの方向を順次変更する事により、被検体内の被走査領域(二次元領域内或いは三次元領域)内の組織からの超音波データを取得する。そして、得られた超音波データに基づいて被走査領域に対応する複数の断面画像、或いはボリュームレンダリング画像等を生成し表示する。観察者は、表示された画像を観察することにより、被検体内の組織形状を把握して診断に使用される。
【0004】
超音波画像の分解能は、距離方向については使用する超音波帯域の広さで決まり、方位方向については使用する周波数・距離・送受信の開口の広さに依存する。この性質により、分解能は、例えば均一な媒質を経由して画像を形成する場合には開口を大きくすればするほど向上する。超音波プローブも、1980年頃には30−40素子の開口が主流であったが、現在においては、100素子近くに増大されているもの主流となっている。超音波プローブの開口をさらに大きくした場合、均一な媒質を経由して画像を得ることが期待できる。その一方で、実際の皮膚を経由して画像を得る応用では、皮下組織などの音響的性質の不均一性が原因で開口を増大させても分解能が改善されず、かえって、不要応答が増大して診断に適さない画像を出す状況が発生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−79607号公報
【特許文献2】特開平5−146445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、生体の不均一性を測定し、それに起因する位相と振幅の歪みを補正する技術が提案され検討されている。
【0007】
図12は、従来の受信回路での受信信号の流れを示した図である。同図に示す様に、各超音波振動素子の信号は前処理の後A/D変換によってデジタル化され、ビームフォーマに送られる。ここではメモリ801〜804によるクロック単位の遅延とデジタルフィルタ811〜814によるクロック以下の微小遅延を与えられ所定の方向・深さからの信号が同時になるように調整されて加算回路821で加算されて指向性を形成する。所定の方向を複数設ける同時受信を行っている場合にはこの遅延加算の処理が複数行われるように構成される。一方デジタル化された信号はビームフォーマとは別に、送受信条件を適正化する処理系9として、各素子の波形を保存するメモリ901〜903とこれらの出力の相互相関を計算する相関回路911〜912により隣接素子の相関を解析し各素子に至る媒体の不均一性を推定し送受信の振幅・遅延の補正値を計算する回路921を構成している。
【0008】
図13は、従来の受信回路のメモリの動作を説明するための図である。同図に示す様に、各超音波振動素子の信号は前処理の後A/D変換によってデジタル化され、ビームフォーマに送られる(RX01,RX02)。この受信信号RX01はメモリ801の対応するアドレス領域801Bに順次書き込まれ、次の送信に対応した受信信号RX02は異なるアドレス領域801Cに書き込まれる。このように次の信号による上書きが発生しないようにアドレス空間を広く取ることで、一つの受信信号を複数回読み出す事が可能となり、例えば、RX01のデータは異なる遅延時間でRX01B1,RX01B2,RX01B3と三回読み出して異なる焦点・指向性を形成する事ができる。このような機能は、二次元アレイ振動子を使って三次元走査を実現する際に実時間性を向上させる事ができる。メモリの書き込みと読み出しのクロック速度は、書き込みは音響的な信号の帯域で決定され、最大でも40〜60MHz程度で事前に間引きをすることで更に遅いクロックで書き込む状態であるが、読み出しは100MHz以上にする事が出来、複数回読み出しを行ったり、読み出しの時間的余裕が取れるケースが多い。
【0009】
しかしながら、従来の超音波診断装置においては、ビームフォーマとは別に送受信条件の適正化のための処理系を設ける必要がある。このため、回路規模が増大してしまい、装置の大型化、コスト増大を招き、実用的な装置の提供を妨げている。これらの問題は、二次元アレイ超音波プローブにおいて特に顕著である。
【0010】
当該事情を鑑みて、回路規模を増大させることなく、画像の取得と同時に素子の信号を取り込んでこれを解析し、送受信条件の最適化を行うことができる超音波診断装置及び超音波診断装置制御プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0012】
一実施形態に係る超音波診断装置は、供給される駆動信号に応答して被検体に対し超音波を送信し、前記被検体からの反射波に基づいて受信信号を発生する複数の超音波振動素子を有する超音波プローブと、所定の送信条件に従って前記複数の超音波振動素子に前記駆動信号を供給する送信ユニットと、前記複数の超音波振動素子に対応する複数の画像生成用受信信号を記憶し、当該記憶された各画像生成用受信信号を用いて所定の受信条件に従って受信ビームを生成すると共に、前記複数の超音波振動素子に対応する複数の補正用受信信号を記憶する受信ユニットと、前記複数の補正用受信信号を受け取り、当該複数の補正用受信信号に基づいて、前記送信条件及び前記受信条件の少なくとも一方を補正する補正ユニットと、前記受信ビームに基づいて超音波画像を生成する画像処理ユニットと、前記超音波画像を表示する表示ユニットと、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。
【図2】図2は、超音波受信ユニット22のブロック構成図である。
【図3】図3は、所定のチャネルにおける、ビームフォーミング処理系と解析・補正処理系との処理の流れを説明するための概念図である。
【図4】図4は、送受信条件適正化機能を説明するための図である。
【図5】図5は、送受信条件適正化機能を説明するための図である。
【図6A】図6Aは、送受信条件適正化機能の適用例1を説明するための図である。
【図6B】図6Bは、送受信条件適正化機能の適用例1を説明するための図である。
【図6C】図6Cは、送受信条件適正化機能の適用例1を説明するための図である。
【図7A】図7Aは、送受信条件適正化機能の適用例2を説明するための図である。
【図7B】図7Bは、送受信条件適正化機能の適用例2を説明するための図である。
【図7C】図7Cは、送受信条件適正化機能の適用例2を説明するための図である。
【図8A】図8Aは、送受信条件適正化機能の適用例3を説明するための図である。
【図8B】図8Bは、送受信条件適正化機能の適用例3を説明するための図である。
【図9】図9は、送受信条件適正化機能の適用例4を説明するための図である。
【図10A】図10Aは、送受信条件適正化機能の適用例4を説明するための図である。
【図10B】図10Bは、送受信条件適正化機能の適用例4を説明するための図である。
【図10C】図10Cは、送受信条件適正化機能の適用例4を説明するための図である。
【図11】図11は、二次元アレイプローブを用いた第2の実施形態を説明するための図である。
【図12】図12は、従来の超音波診断装置における受信処理を説明するための図である。
【図13】図13は、従来の受信回路のメモリの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態及び第2実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0015】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。同図に示すように、本超音波診断装置1は、超音波プローブ12、入力装置13、モニター14、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22、Bモード処理ユニット23、ドプラ処理ユニット24、RAWデータメモリ25、ボリュームデータ生成ユニット26、画像処理ユニット28、表示処理ユニット30、制御プロセッサ29、記憶ユニット31、インターフェースユニット32を具備している。
【0016】
超音波プローブ12は、被検体に対して超音波を送信し、当該送信した超音波に基づく被検体からの反射波を受信するデバイス(探触子)であり、その先端に配列された複数の超音波振動子、整合層、バッキング材等を有し、超音波診断装置本体11とケーブルで接続される。各超音波振動子は独立したチャネルを形成し、超音波送信ユニット21からの駆動信号に基づきスキャン領域内の所望の方向に超音波を送信し、当該被検体からの反射波を電気信号に変換する。整合層は、当該超音波振動子に設けられ、超音波エネルギーを効率良く伝播させるための中間層である。バッキング材は、当該超音波振動子から後方への超音波の伝播を防止する。当該超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送受信方向の速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0017】
なお、本実施形態に係る超音波プローブ12は、一次元アレイプローブ(複数の超音波振動子が一方向に沿って配列されたプローブ)、二次元アレイプローブ(複数の超音波振動子が二次元マトリックス状に配列されたプローブ)のいずれであってもよい。
【0018】
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を有している。
【0019】
モニター14は、表示処理ユニット27からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。
【0020】
超音波送信ユニット21は、図示しないが、クロック発生器、分周器、送信遅延回路、パルサを有している。クロック発生器で発生されたクロックパルスを分周器で例えば5KHz程度のレートパルスに落とし、このレートパルスを送信遅延回路を通してパルサに与えて高周波の電圧パルスを発生し、超音波プローブ12の各超音波振動子を駆動する(つまり機械的に振動させる)ようになっている。超音波送信ユニット21は、任意の波形を発生できるものであっても良い。超音波プローブ12を介して被検体内に送信される超音波は、被検体内の音響インピーダンスの境界で反射し、当該反射波に基づいて各超音波振動子において、機械的振動から電気信号に変換されることになる。
【0021】
超音波受信ユニット22は、各超音波振動子から、反射波に起因する電気信号を受け取り、所定の処理を施すことにより、指向性を有する信号(エコー信号)を生成する。また、超音波受信ユニット22は、被検体(生体)の不均一性を解析し補正する処理を実行する。同超音波受信ユニット22の構成については、後で詳しく説明する。
【0022】
Bモード処理ユニット23は、受信ユニット22からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。
【0023】
ドプラ処理ユニット24は、いわゆるカラードプライメージング(CDI)を実現するユニットであり、まず、受信回路5からのエコー信号から周波数偏移を受けたドプラ信号を取り出し、この取り出したドプラ信号からMTIフィルタで特定の周波数成分だけを通し、その通過した信号の周波数を自己相関器により求め、この周波数から演算部で平均速度、分散、パワーを演算するように構成されている。なお、MTIフィルタの通過帯域を調整することにより、主に血流を映像化する一般的なドプラモード(このモードによる画像データを血流ドプラ画像データと称する)と、主に心筋等の臓器を映像化する組織ドプラモード(このモードによる画像データを組織ドプラ画像データと称する)とを切り替えることができるようになっている。
RAWデータメモリ25は、Bモード処理ユニット23から受け取った複数のBモードデータを用いて、超音波走査線上のBモードデータであるBモードRAWデータを生成する。また、RAWデータメモリ25は、血流検出ユニット24から受け取った複数の血流データを用いて、三次元的な超音波走査線上の血流データである血流RAWデータを生成する。なお、ノイズ低減や画像の繋がりを良くすることを目的として、RAWデータメモリ25の後に三次元的なフィルタを挿入し、空間的なスムージングを行うようにしてもよい。
【0024】
ボリュームデータ生成ユニット26は、RAWデータをボリューム単位へのデータ配置に変換することにより、RAWデータメモリ25或いは高解像度データ生成ユニット26から受け取ったBモードRAWデータからBモードボリュームデータを生成する。この変換は、空間的な位置情報を加味した処理により、画像生成処理において用いられる視体積内の各視線上のBモードボリュームデータを生成するものである。なお、本実施形態においては、上記変換処理によって生成されたBモードボリュームデータを用いて、各種画像処理を実行する場合を例とする。しかしながら、当該例に拘泥されず、例えば、RAW−ボクセル変換を実行することで生成されるBモードボクセルボリュームデータを用いて、高解像度データ取得機能に従う処理を実行するようにしてもよい。
【0025】
バックエンド処理ユニット27は、制御プロセッサ29の制御のもと、各超音波振動素子からの受信信号を用いて、素子間の到達時間差、位相ひずみ、振幅ひずみ等を解析し、これらの結果に従って、送信遅延・受信遅延を補正する。
【0026】
画像処理ユニット28は、ボリュームデータ生成ユニット26から受け取ったデータを用いて、ボリュームレンダリング、多断面変換表示(MPR:Multi Planar Reconstruction)、最大値投影表示(MIP:Maximum Intensity Projection)等の所定の画像処理を行う。なお、ノイズ低減や画像の繋がりを良くすることを目的として、画像処理ユニット28の後に二次元的なフィルタを挿入し、空間的なスムージングを行うようにしてもよい。
【0027】
表示処理ユニット30は、画像処理ユニット28において生成・処理された各種画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、γカーブ補正、RGB変換等の各種を実行する。
【0028】
制御プロセッサ29は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する。特に、制御プロセッサ29は、後述する送受信条件適正化機能において、画像生成用のエコー信号と複数の補正用のエコー信号とが時分割に記憶されるように、受信ユニット22を制御する。或いは、制御プロセッサ29は、画像生成用のエコー信号と複数の補正用のエコー信号とが物理的に異なるメモリ領域に記憶され、それぞれの信号を異なるタイミングで出力するように、受信ユニット22を制御する。これらの制御により、受信ユニット22は、制御プロセッサ29の制御に従って、画像生成用の受信ビームに対応するエコー信号を出力する第1の機能と、補正用のエコー信号を出力する第2の機能との二つの機能を所定のタイミングで果たすことになる。
【0029】
記憶ユニット31は、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件、画像処理プログラム、ボディマーク生成プログラム、後述する送受信条件適正化機能を実現するための専用プログラム、その他のデータ群が保管されている。また、必要に応じて、図示しない画像メモリ中の画像の保管などにも使用される。記憶ユニット31のデータは、インターフェースユニット32を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0030】
インターフェースユニット32は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインタフェースである。当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インターフェースユニット32よって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0031】
(送受信条件適正化機能)
次に、本超音波診断装置1が有する送受信条件適正化機能について説明する。同機能は、回路規模を増大させることなく、各チャネル毎のエコー信号取得と共に別途エコー信号を取り込んでこれを用いて超音波伝播媒体の不均一性を解析し、送受信条件を適正化するものである。当該送受信条件適正化機能は、制御プロセッサ29の制御のもと、超音波受信ユニット22において実行される。
【0032】
図2は、超音波受信ユニット22のブロック構成図である。同図に示す様に、超音波受信ユニット22は、A/D変換器401、ビームフォーマ用メモリ501〜504、FIRフィルタ511〜514、加算器521、独立メモリ601〜604、フィルタ611〜614、マルチプレクサ621を有している。ビームフォーマ用メモリ501〜504、FIRフィルタ511〜514、加算器521により、ビームフォーミング処理系を構成し、独立メモリ601〜604、フィルタ611〜614、マルチプレクサ621により、送受信条件適正化機能を実現するための処理系(解析・補正処理系)を構成する。なお、同図の例では説明を簡単にするため、4チャネル分(4つの超音波振動素子分)の構成を例示した。しかしながら、現実には、超音波振動素子それぞれに対応する信号処理系統が個別に設けられることになる。
【0033】
図2に示す様に、各超音波振動素子からのエコー信号は、前処理の後A/D変換器401においてデジタル化され、ビームフォーマ用メモリ501〜504に送られる。ビームフォーマ用メモリ501〜504では、クロック単位の遅延(比較的長い遅延)が実行される。すなわち、ビームフォーマ用メモリ501〜504を用いた書き込み或いは読み出しにおいて素子毎に異なるアドレス制御を行うことで、デジタル化する際のサンプリング単位の遅延を与える。その後FIRフィルタ511〜514ではクロック以下の微小遅延を与えることで、更に正確な遅延処理を実行する。各チャネルに対応するエコー信号は、これらの遅延処理により、所定の方向・深さからの信号が同時になるように調整される。加算回路521は、各遅延処理後の各エコー信号を加算することで、高い指向性を持つ受信ビームを形成する。なお、加算回路521は、同時に複数の方向からの信号を選択的に取り出すために異なる指向性を形成するための構成、繰り返して読み出すための構成を有する。
【0034】
また、各超音波振動素子からのエコー信号は、前処理の後A/D変換器401においてデジタル化され、ビームフォーマへの入力処理と並行して、独立メモリ601〜604に同時に格納される。なお、独立メモリ601〜604は、ビームフォーミングとは論理的に別系統であるが、物理的にはビームフォーマ用メモリ501〜504の領域を分離して同じ物理的メモリに格納することができる。フィルタ611〜614は、独立メモリ601〜604から読み出された各エコー信号をフィルタリングし、所定の帯域の信号を取り出す。マルチプレクサ621は、各チャネル毎に振幅・遅延を補正するためのチャネルデータを生成し、後段の処理系統(バックエンド処理ユニット27等)に出力する。制御プロセッサ29は、マルチプレクサ621からのチャネル毎のチャネルデータ(所定帯域のエコー信号)の相互相関(隣接する超音波振動素子における信号の相関)を解析することで、被検体内において超音波が各超音波振動子に至る経路の不均一性を推定する。
【0035】
図3は、所定のチャネル(すなわち、所定の超音波振動素子)における、ビームフォーミング処理系と解析・補正処理系との処理の流れを説明するための概念図である。
【0036】
図3の矢印A1に示す様に、所定のチャネルに対応し前処理後のデジタル化されたエコー信号(RX01,RX02)が、ビームフォーマ用メモリ501に入力されると、まず、先の送信TX01に対応する(時間的に先行する)受信信号RX01が、ビームフォーマ用メモリ501の対応するアドレス領域501Bに順次書き込まれる。また、次の送信TX02に対応する受信信号RX02は、アドレス領域501Bとは異なるアドレス領域501Cに書き込まれる。すなわち、遅延前のメモリ501には、同時収集した信号が距離方向にゲートしたパケットに分割して記憶される。
【0037】
一方、不均一性解析・補正処理のために用いられる当該超音波振動素子のデータは、図3の矢印A2に示す様に、独立メモリ601に書き込まれ、ビームフォーミング用のCHデータとは別個独立に保持される。
【0038】
ビームフォーミングにおいては、一つの受信信号(例えば、RX01のデータ)を、異なる遅延時間でRX01B1、RX01B2、RX01B3によって三回読み出し、異なる焦点・指向性を形成することが可能である。さらに、残りの時間で当該超音波振動素子に対応するCHデータを読み出し、フィルタなどを介して、ビームフォーマ出力と同じ経路を通じてバックエンド処理ユニット27に送る。その後、制御プロセッサ29は、バックエンド処理ユニット27に記憶されたチャネル毎の信号を用いて当該超音波振動素子に関する相関計算を実行し、伝播媒質の不均一性分析等が、後段の処理系において画像を表示しながら実行される。
【0039】
送受信超音波が均一な伝播媒体を経由したものである場合には、各超音波振動素子の信号は、例えば図4の左側に示す様に、伝播距離差に応じた遅延時間で信号が到達する。従って、伝播距離で計算された所定の遅延時間で遅延すれば、各超音波振動素子からの信号の位相を、例えば図4の右側に示す様に揃えることができ、これらを加算することにより、所定の方向・距離からの信号を強調し他の場所からの信号を抑制することができる。
【0040】
一方、送受信超音波が不均一な伝播媒体を経由してきたものである場合には、各超音波振動素子の信号は、例えば図5の左側に示す様に、伝播距離差に応じた遅延時間とは異なる時刻に到達することになる。このため、伝播距離で計算された所定の遅延時間で遅延させても、例えば図5の右側に示す様に各超音波新装素子の信号の位相を揃えることはできない。従って、これらの信号を加算しても所定の方向・距離からの信号の増強が低下し、また他の場所からの信号の抑圧が減少して指向性が劣化し画像の分解能が低下してしまう。
【0041】
本送受信条件適正化機能では、各超音波振動素子の信号をバックエンド処理ユニット27で到達時間差を分析すると共に位相ひずみや振幅ひずみを解析し、これらの結果に従って、送信遅延・受信遅延を補正する。従って、指向性の劣化を好適に低減させることが可能である。
【0042】
(適用例1)
次に、本送受信条件適正化機能の他の適用例について説明する。本適用例は、各超音波振動素子毎の振幅を解析し、適切に感度調整を行うものである。なお、画像表示を行う為のビームフォーミングを行いながら、各超音波振動素子の波形を取得し、バックエンド処理ユニット27に転送する動作は上述の通りである。
【0043】
本適用例に係る送受信条件適正化機能では、取得した各超音波振動素子の信号の振幅を以下のように解析し、受信感度を修正する。すなわち、バックエンド処理ユニット27は、各信号が図6Aに示す様に過小でないか、或いは図6Cに示す様に過大であり飽和した波形になっていないかを確認し、過小であれば、感度を上昇させ、過大であれば、感度を低減させ、図6Bに示すような適切な波形に補正する。
【0044】
(適用例2)
次に、本送受信条件適正化機能を用いて、撮像対象に対する超音波プローブ12の移動を検出する例について説明する。
【0045】
図7Aは、セクタ走査型の画像例を示している。この走査方式によって取得された画像では、近距離の視野が狭く、超音波プローブ12の移動による近距離画像の変化を検出する事が困難である。そこで、図7Bに示す様に、受信した各超音波振動素子の信号の時間的変化を検出し、これに基づいて超音波プローブ12の移動を検出する。例えば、超音波プローブ12を図7Cの矢印の方向に移動させた場合には、検出される信号は、図7Bから図7Cに示す様な移動したパターンとして得られる。バックエンド処理ユニット27は、当該信号パターンの時間的変化に基づいて、超音波プローブ12の移動を検出する。検出した移動の有無に従って、例えば超音波プローブ12の動きの無い状態では、受信ユニット22の全ての処理系をビームフォーマとして動作させ実時間性の高い画像を提供することも可能である。
【0046】
(適用例3)
次に、超音波プローブ12の超音波送受信面直下の多重反射の量により、超音波プローブ12の被検体表面からの浮きを検出する適用例について説明する。
【0047】
超音波プローブ12が被検体表面からの浮いていない状態では、図8Aに示す様に、近距離の散乱・反射はあまり大きくない。一方、超音波プローブ12が被検体表面から浮いた状態になった状態では、近距離に強い反射に起因する信号が発生し(受信され)ゆっくりと減寂する。従って、部分的に超音波振動素子が被検体表面に対して浮いた状態では、図8(b)に示す様に、浮いた超音波振動素子(同図では上の2つ)からは近距離に大きな信号が受信されることになる。バックエンド処理ユニット27は、この様に部分的に発生する近距離での大きな信号に基づいて、被検体表面から浮いた超音波振動素子からの受信信号を除外する。これにより、不要応答を抑えることが可能となる。
【0048】
(適用例4)
次に、複数の異なる遅延・振幅補正による部分画像を形成して比較し、その結果に応じて送受信の遅延・振幅条件を再設定する適用例について説明する。
【0049】
図9に示す様に、伝播時間から予測した到達時間差Bに比して、時間差が少ない信号が各超音波振動素子によって現実に受信された場合を想定する。係る場合、受信した各超音波振動素子毎の信号を使って、仮想的に図9のA、B、Cに示すような三つの伝播遅延時間を想定した部分画像を形成し、それぞれ図10A、図10B、図10Cに示す様に表示する。観察者は、表示された部分画像を観察して比較し、所望する遅延時間差に対応する画像を選択することで、送受信の遅延・振幅条件を再設定することができる。
【0050】
なお、図10A、図10B、図10Cの例(すなわち、図9に示す到達時間差A、B、Cの例)を比較すると、時間差の一致しているAの画像がぼけの少ない画像となり、実際の時間差に近い条件を画像形成の為の送受信条件への変更に使用することができる。
【0051】
(適用例5)
超音波画像上に関心領域を設定し、当該関心領域の前記超音波振動素子の各受信信号に基づいて、画像形成の為の送受信条件への変更するようにしてもよい。
【0052】
(効果)
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0053】
本超音波診断装置によれば、各超音波振動素子に対応する複数の補正用受信信号を画像生成用受信信号と同一の経路を通じ受け取り、当該複数の補正用受信信号に基づいて素子間の遅延時間差、振幅差、多重反射量等を解析し、その結果に基づいて送信条件及び送受信条件の少なくとも一方を補正する。従って、少ない消費電力と回路規模で、各チャネル毎のエコー信号取得と共に別途エコー信号を取り込んでこれを用いて超音波伝播媒体の不均一性を解析し、送受信条件を適正化することができる。その結果、脂肪層などの不均一層の多い患者に対しても、実時間性の高く劣化の少ない画像を提供することができる。
【0054】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、二次元超音波アレイプローブを用いて送受信条件適正化機能を実現するものである。
【0055】
図11は、本実施形態に係る超音波プローブ12(二次元超音波アレイプローブ)のブロック図である。同図に示す様に、超音波プローブ12は、振動子ユニット120、サブアレイビームフォーマ122、超音波送信ユニット21を具備している。
【0056】
超音波送信ユニット2は、図1に示したものと同様である。
【0057】
振動子ユニット120は、二次元マトリックス状に配列された複数の超音波振動子を有する。
【0058】
サブアレイビームフォーマ122は、前置増幅回路122a、部分遅延加算回路122bを有する。前置増幅回路122aは、振動子ユニット120から受け取ったチャネル毎のエコー信号を増幅する。部分遅延加算回路122bは、増幅されたチャネル毎のエコー信号を、例えば空間的に隣接する数チャネル〜十数チャネル単位で部分的に遅延加算し、それぞれが走査領域の異なる局所空間に対応する複数の部分的なビーム(部分ビーム)を生成する。
【0059】
部分遅延加算回路122bにおいて生成された複数の部分ビームとしてのエコー信号は、メインビームフォーマとしての後段の超音波受信ユニット22に送り出される。超音波受信ユニット22は、部分遅延加算回路122bから受け取った複数のエコー信号を用いて、第1の実施形態で説明した送受信条件適正化処理を実行する。
【0060】
なお、本実施形態においては、超音波送信ユニット21、サブアレイビームフォーマ122を超音波プローブ12側に設ける構成を例とした。しかしながら、当該例に拘泥されず、超音波送信ユニット21、サブアレイビームフォーマ122の双方を装置本体11側に設ける構成であってもよいし、超音波送信ユニット21、サブアレイビームフォーマ122のいずれか一方を装置本体11側に設ける構成であってもよい。また、ビームフォーマから出力されるデータを同じ指向性を持つ直線上の焦点に焦点を合わせる遅延量制御の例で説明した。しかしながら連続した直線上の焦点である必要は無く、画像化に必要な場所だけを不連続に指定して遅延加算制御を行っても良い。
【0061】
以上述べた構成によれば、二次元超音波アレイプローブを用いた場合であっても、送受信条件適正化機能を実現することができる。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0063】
例えば、本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0064】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…超音波診断装置、12…超音波プローブ、13…入力装置、14…モニター、21…超音波送信ユニット、22…超音波受信ユニット、23…Bモード処理ユニット、24…ドプラ処理ユニット、25…RAWデータメモリ、26…ボリュームデータ生成ユニット、27…バックエンド処理ユニット、28…画像処理ユニット、29…制御プロセッサ、231…記憶ユニット、32…インターフェースユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される駆動信号に応答して被検体に対し超音波を送信し、前記被検体からの反射波に基づいて受信信号を発生する複数の超音波振動素子を有する超音波プローブと、
所定の送信条件に従って前記複数の超音波振動素子に前記駆動信号を供給する送信ユニットと、
前記複数の超音波振動素子に対応する複数の画像生成用受信信号を記憶し、当該記憶された各画像生成用受信信号を用いて所定の受信条件に従って受信ビームを生成すると共に、前記複数の超音波振動素子に対応する複数の補正用受信信号を記憶する受信ユニットと、
前記複数の補正用受信信号を受け取り、当該複数の補正用受信信号に基づいて、前記送信条件及び前記受信条件の少なくとも一方を補正する補正ユニットと、
前記受信ビームに基づいて超音波画像を生成する画像処理ユニットと、
前記超音波画像を表示する表示ユニットと、
を具備する超音波診断装置。
【請求項2】
前記受信ユニットは、
前記超音波振動素子毎に設けられ、前記画像生成用受信信号の記憶に用いる第1の領域と前記補正用受信信号の記憶に用いる第2の領域とを有する複数の記憶ユニットと、
前記超音波振動素子毎に対する前記画像生成用受信信号の信号処理に用いる複数の第1のフィルタと、
前記超音波振動素子毎に対する前記補正用受信信号の信号処理に用いる複数の第2のフィルタと、
を具備する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記補正ユニットは、前記超音波振動素子毎の前記補正用受信信号に基づいて、前記複数の超音波振動素子間での前記受信信号の到達時間差、振幅差、前記複数の超音波振動素子における多重反射の量の少なくともいずれかを解析し、当該解析結果に基づいて、前記送信条件及び前記受信条件の少なくとも一方を補正する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記送信条件及び前記受信条件の少なくとも一方は、前記各超音波振動素子の感度、遅延時間の少なくともいずれかである請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記補正ユニットは、前記超音波振動素子毎の前記補正用受信信号に基づいて、前記複数の超音波振動素子間での前記受信信号の振幅差を解析し、当該解析結果に応じて前記各超音波振動素子の感度を補正する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記補正ユニットは、前記超音波振動素子毎の前記補正用受信信号に基づいて、前記複数の超音波振動素子間での前記受信信号の到達時間差を解析し、当該解析結果に応じて前記各超音波振動素子の送信遅延時間及び受信遅延時間の少なくとも一方を補正する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記補正ユニットは、前記超音波振動素子毎の前記補正用受信信号に基づいて、前記複数の超音波振動素子における多重反射の量を解析し、当該解析結果に応じて前記送信及び受信に用いる超音波振動素子を選択する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記画像生成ユニットは、前記補正ユニットによって補正された複数の前記送信条件及び前記受信条件に従う複数の部分画像を生成し、
前記表示ユニットは、前記複数の部分画像を表示し、
前記補正ユニットは、表示された前記複数の部分画像のうち、選択ユニットによって選択された部分画像に基づいて、前記送信条件及び前記受信条件の少なくとも一方を補正する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記表示ユニットに表示された超音波画像上に関心領域を設定するための設定ユニットをさらに具備し、
前記補正ユニットは、前記関心領域の前記超音波振動素子の各受信信号に基づいて、前記送信条件及び前記受信条件の少なくとも一方を補正する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記補正ユニットは、前記複数の画像生成用受信信号と同一の経路を通じて前記複数の補正用受信信号を受け取る請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記生成された受信ビームを出力する第1の機能と前記補正受信信号を出力する第2の機能とが所定のタイミングで切り替わるように、前記受信ユニットを制御する制御ユニットをさらに具備する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記制御ユニットは、前記複数の画像生成用受信信号と前記複数の補正用受信信号とを時分割に記憶するように、前記受信ユニットを制御する請求項11記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記制御ユニットは、前記複数の画像生成用受信信号と前記複数の補正用受信信号とを物理的に異なるメモリ領域に記憶し、それぞれの信号を異なるタイミングで出力するように、前記受信ユニットを制御する請求項11記載の超音波診断装置。
【請求項14】
前記超音波プローブは、二次元超音波プローブである請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項15】
超音波診断装置に内蔵されたコンピュータに、
供給される駆動信号に応答して被検体に対し超音波を送信し、前記被検体からの反射波に基づいて受信信号を発生する複数の超音波振動素子に、所定の送信条件に従って駆動信号を供給させる供給機能と、
前記複数の超音波振動素子に対応する複数の画像生成用受信信号を記憶させ、当該記憶された各画像生成用受信信号を用いて所定の受信条件に従って受信ビームを生成すると共に、前記複数の超音波振動素子に対応する複数の補正用受信信号を記憶させる記憶機能と、
前記複数の補正用受信信号を受け取り、当該複数の補正用受信信号に基づいて、前記送信条件及び前記受信条件の少なくとも一方を補正させる補正機能と、
前記受信ビームに基づいて超音波画像を生成させる生成機能と、
前記超音波画像を表示させる表示機能と、
を具備する超音波診断装置制御プログラム。
【請求項1】
供給される駆動信号に応答して被検体に対し超音波を送信し、前記被検体からの反射波に基づいて受信信号を発生する複数の超音波振動素子を有する超音波プローブと、
所定の送信条件に従って前記複数の超音波振動素子に前記駆動信号を供給する送信ユニットと、
前記複数の超音波振動素子に対応する複数の画像生成用受信信号を記憶し、当該記憶された各画像生成用受信信号を用いて所定の受信条件に従って受信ビームを生成すると共に、前記複数の超音波振動素子に対応する複数の補正用受信信号を記憶する受信ユニットと、
前記複数の補正用受信信号を受け取り、当該複数の補正用受信信号に基づいて、前記送信条件及び前記受信条件の少なくとも一方を補正する補正ユニットと、
前記受信ビームに基づいて超音波画像を生成する画像処理ユニットと、
前記超音波画像を表示する表示ユニットと、
を具備する超音波診断装置。
【請求項2】
前記受信ユニットは、
前記超音波振動素子毎に設けられ、前記画像生成用受信信号の記憶に用いる第1の領域と前記補正用受信信号の記憶に用いる第2の領域とを有する複数の記憶ユニットと、
前記超音波振動素子毎に対する前記画像生成用受信信号の信号処理に用いる複数の第1のフィルタと、
前記超音波振動素子毎に対する前記補正用受信信号の信号処理に用いる複数の第2のフィルタと、
を具備する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記補正ユニットは、前記超音波振動素子毎の前記補正用受信信号に基づいて、前記複数の超音波振動素子間での前記受信信号の到達時間差、振幅差、前記複数の超音波振動素子における多重反射の量の少なくともいずれかを解析し、当該解析結果に基づいて、前記送信条件及び前記受信条件の少なくとも一方を補正する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記送信条件及び前記受信条件の少なくとも一方は、前記各超音波振動素子の感度、遅延時間の少なくともいずれかである請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記補正ユニットは、前記超音波振動素子毎の前記補正用受信信号に基づいて、前記複数の超音波振動素子間での前記受信信号の振幅差を解析し、当該解析結果に応じて前記各超音波振動素子の感度を補正する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記補正ユニットは、前記超音波振動素子毎の前記補正用受信信号に基づいて、前記複数の超音波振動素子間での前記受信信号の到達時間差を解析し、当該解析結果に応じて前記各超音波振動素子の送信遅延時間及び受信遅延時間の少なくとも一方を補正する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記補正ユニットは、前記超音波振動素子毎の前記補正用受信信号に基づいて、前記複数の超音波振動素子における多重反射の量を解析し、当該解析結果に応じて前記送信及び受信に用いる超音波振動素子を選択する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記画像生成ユニットは、前記補正ユニットによって補正された複数の前記送信条件及び前記受信条件に従う複数の部分画像を生成し、
前記表示ユニットは、前記複数の部分画像を表示し、
前記補正ユニットは、表示された前記複数の部分画像のうち、選択ユニットによって選択された部分画像に基づいて、前記送信条件及び前記受信条件の少なくとも一方を補正する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記表示ユニットに表示された超音波画像上に関心領域を設定するための設定ユニットをさらに具備し、
前記補正ユニットは、前記関心領域の前記超音波振動素子の各受信信号に基づいて、前記送信条件及び前記受信条件の少なくとも一方を補正する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記補正ユニットは、前記複数の画像生成用受信信号と同一の経路を通じて前記複数の補正用受信信号を受け取る請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記生成された受信ビームを出力する第1の機能と前記補正受信信号を出力する第2の機能とが所定のタイミングで切り替わるように、前記受信ユニットを制御する制御ユニットをさらに具備する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記制御ユニットは、前記複数の画像生成用受信信号と前記複数の補正用受信信号とを時分割に記憶するように、前記受信ユニットを制御する請求項11記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記制御ユニットは、前記複数の画像生成用受信信号と前記複数の補正用受信信号とを物理的に異なるメモリ領域に記憶し、それぞれの信号を異なるタイミングで出力するように、前記受信ユニットを制御する請求項11記載の超音波診断装置。
【請求項14】
前記超音波プローブは、二次元超音波プローブである請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項15】
超音波診断装置に内蔵されたコンピュータに、
供給される駆動信号に応答して被検体に対し超音波を送信し、前記被検体からの反射波に基づいて受信信号を発生する複数の超音波振動素子に、所定の送信条件に従って駆動信号を供給させる供給機能と、
前記複数の超音波振動素子に対応する複数の画像生成用受信信号を記憶させ、当該記憶された各画像生成用受信信号を用いて所定の受信条件に従って受信ビームを生成すると共に、前記複数の超音波振動素子に対応する複数の補正用受信信号を記憶させる記憶機能と、
前記複数の補正用受信信号を受け取り、当該複数の補正用受信信号に基づいて、前記送信条件及び前記受信条件の少なくとも一方を補正させる補正機能と、
前記受信ビームに基づいて超音波画像を生成させる生成機能と、
前記超音波画像を表示させる表示機能と、
を具備する超音波診断装置制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−31654(P2013−31654A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−150297(P2012−150297)
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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