説明

超音波診断装置

【課題】頚動脈診断において、被験者と超音探触子の姿勢決めすることができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】本発明の超音波診断装置は、体表から超音波を送受信する超音波振動子と前記超音波振動子を有する超音波探触子と受信された超音波から断面画像を構築する超音波診断装置であって、被検者の胴体姿勢を基準と定める姿勢基準手段と、前記被検者の頭部に設置する角度センサと、前記超音波探触子にする角度センサと、前記角度センサからの取得角度情報から姿勢角度を演算する制御手段と、その姿勢角度を表示する表示手段を有している。
この構成により、被検者と超音波探触子の姿勢決めすることができ、かつ、設置場所の制約を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
生体内に超音波探触子から超音波を照射して受け取ったエコー信号から断面画像を構築し表示する超音波診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
頚動脈における動脈硬化診断に超音波診断装置が使われる。このとき、超音波探触子を首に当接させ頚動脈の血管壁を超音波のエコー信号で作った画像を取得し、血管壁の厚さやプラークなどの症状について診断することになる。症状の経過観察を行う場合は、過去と同じ場所を調べる必要があり、そのためには、首も同じ姿勢をとり、それに対して、超音波探触子も同じ位置で同じ姿勢に姿勢決めして診断することが必要となる。
【0003】
従来の超音波診断装置において、過去の診断と首と超音波探触子を同じ姿勢に姿勢決めするには、診断する者の感覚に依るものであった。よって、過去の診断と同じ姿勢にするため、首と超音波探触子を姿勢決めできる手段を備えた超音波診断装置は有効である。
【0004】
特許文献1には、磁場を発生させ、電磁気的なセンサにより位置と角度を取得し、観察部位のロケーションを把握するためのナビゲーション表示する超音波診断装置が開示されている。
【特許文献1】特開平11−47133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁場を発生させ、電磁気的なセンサにより位置と角度を取得し、観察部位のロケーションを把握するためのナビゲーション表示する超音波診断装置については、電磁気的なセンサを用いているため、他の電子機器や設備による外的な磁場の影響を受けやすく、また、磁場を発生させているので他の電子機器に影響を及ぼす可能があるため、設置場所の制約を多く受ける問題があった。
【0006】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、体表から超音波を送受信する超音波振動子と前記超音波振動子を有する超音波探触子と受信された超音波から断面画像を構築する超音波診断装置であって、被検者の胴体姿勢を基準と定める姿勢基準手段と、前記被検者の頭部に設置する角度センサと、前記超音波探触子に設置された角度センサと、前記角度センサからの取得角度情報から姿勢角度を演算する制御手段と、その姿勢角度を表示する表示手段を有することで、被検者と超音波探触子の姿勢決めすることができ、設置場所の制約が少ない超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の超音波診断装置は、体表から超音波を送受信する超音波振動子と前記超音波振動子を有する超音波探触子と受信された超音波から断面画像を構築する超音波診断装置であって、被検者の胴体姿勢を基準と定める姿勢基準手段と、前記被検者の頭部に設置する第一の角度センサと、前記超音波探触子に設置された第二の角度センサと、第一の角度センサと第2の角度センサからの取得角度情報から姿勢角度を演算する制御手段と、その姿勢角度を表示する表示手段を有している。
【0008】
この構成により、被検者と超音波探触子の姿勢決めすることができ、かつ、設置場所の制約を少なくすることができる。
【0009】
また、本発明の超音波診断装置は、前記姿勢基準手段が、前記第一の角度センサと前記第2の角度センサとを取り付ける勘合部を有している特徴を有している。
【0010】
この構成により、前記姿勢基準手段に、角度センサを正確に合わせて、角度センサの原点キャリブレーションを行うことができる。
【0011】
また、本発明の超音波診断装置は、姿勢基準手段が、前記第一の角度センサと前記第二の角度センサとである特徴を有している。
【0012】
この構成により、頭部に設置した角度センサと超音波探触子に設置した角度センサを、姿勢基準手段に合わせて原点合わせすることなく、原点を設定することができる。
【0013】
また、本発明の超音波診断装置は、姿勢基準手段が、ベッドに設置されている特徴を有している。
【0014】
この構成により、ベッドを介して被検者の胴体に、簡単に基準を設置することができる。
【0015】
また、本発明の超音波診断装置は、前記姿勢基準手段が、枕に設置されている特徴を有している。
【0016】
この構成により、枕を介して被検者の胴体に、簡単に基準を設置することができる。
【0017】
また、本発明の超音波診断装置は、前記表示手段が、前記制御手段から演算された姿勢角度から人体の形状モデルを表示する特徴を有している。
【0018】
この構成により、診断する者は、被検者と超音波探触子の姿勢の表示を確認することができる。
【0019】
また、本発明の超音波診断装置は、前記第一の角度センサと前記第2角度センサとの角度情報から、姿勢角度の変動を検知して、前記表示手段に表示する特徴を有している。
【0020】
この構成により、手ぶれや位置ずれを検出して、安定した計測ができるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の超音波診断装置は、体表から超音波を送受信する超音波振動子と前記超音波振動子を有する超音波探触子と受信された超音波から断面画像を構築する超音波診断装置であって、被検者の胴体姿勢を基準と定める姿勢基準手段と前記被検者の頭部に設置する角度センサと前記超音波探触子に角度センサと、前記被検者の頭部に設置する角度センサと前記超音波探触子に角度センサからの取得角度情報を表示する表示手段を有している。
【0022】
この構成により、被検者と超音波探触子の姿勢決めすることができ、かつ、設置場所の制約を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態の超音波診断装置について、図面を用いて説明する。
【0024】
本発明の実施の形態の超音波診断装置を図1から8に示す。図1において、被検者の胴体部5の姿勢を基準と定める姿勢基準手段1と、前記被検者の頭部7に設置する角度センサ2(第一の角度センサ)と、超音波探触子4に設置された角度センサ3(第2の角度センサ)と、前記角度センサ2、3からの取得角度情報から被検者の姿勢角度と超音波探触子4の姿勢角度を算出する制御手段101と、その値を表示する表示手段102を有している。前記超音波探触子4からの信号から断層画像を構築する超音波診断装置100を有している。また、被検者は、ベッド8の上で枕9に頭部をのせて仰向けになっている。図2において、姿勢基準手段1は、その一部に、角度センサ2、3を勘合するための勘合部20を有している。なお、勘合部の向きは、図中に示されたもの以外でも良く、形状は、角度センサ2、3を勘合できる形状である。
【0025】
また、図3において、姿勢基準手段1は、その一部に、角度センサ2、3に設置された穴部22を勘合する突起部21を有している。なお、穴部22と突起部21は、円筒形に限らなく、個数は複数あっても構わない。なお、姿勢基準手段1は、樹脂材などのブロック材でもよい。なお、姿勢基準手段1は、角度センサでも構わない。
【0026】
図6において、姿勢基準手段1a、1bはベッドまたは枕9に設置された場合である。図7において、表示手段102は、姿勢基準手段1と角度センサ2、3からの角度情報をもとに制御手段101で演算され構築された人体の形状モデル103を示した場合である。なお、人体の形状モデル103は、3次元グラフィックモデルや、ワイヤーフレームモデルで構わない。なお、角度センサ2、3は、3軸まわりの角度を検出できることが望ましい。なお、角度センサ2、3は、角速度センサや加速度センサを複数組み合わせて構成されているものでも構わない。
【0027】
以上のように構成された超音波診断装置について、図1から図8を用いてその動作を説明する。
【0028】
図1において、仰向けに寝た被検者の首部6に超音波探触子4を当接させ、前記超音波探触子4から超音波を送受信して、超音波診断装置100で断層画像を構築し表示する。観測する部位である総頚動脈の断面が表示されるように、超音波探触子4を首部6に当接させることになる。このとき、経過診断の際に、頚動脈に対する超音波探触子4の位置・姿勢を同じにして診断する必要がある。頚動脈の位置は超音波診断装置100の断面画像が表示される位置となるが、その姿勢は、胴体部5に対する首部6の姿勢に依存するものである。よって、まず被検者の頭部7の姿勢により胴体部5に対する首部6の姿勢決めができ、また、その首部6の姿勢に対して超音波探触子4を同じ姿勢にすることで、頚動脈に対する超音波探触子4の当てる姿勢を同じに姿勢決めすることができる。
【0029】
具体的には、図4(a)において、まず、姿勢基準手段1を被験者の胴体部5に設置する。このとき、設置場所は、左右の鎖骨の間が望ましい。次に、図4(b)において、姿勢基準手段1に角度センサ2(第一の角度センサ)を取り付けて、制御手段101にて、このときの角度センサ2の角度をキャリブレーションして原点とする。これは、姿勢基準手段1の角度を(RX0, RY0, RZ0)とし、角度センサ2の角度(RX1, RY1, RZ1)とし、この取り付け時の角度を(RX10, RY10, RZ10)とすれば、
(RX10, RY10, RZ10) = (RX0, RY0, RZ0) = (0, 0, 0)
となる。次に、図4(c)において、角度センサ2を頭部7に設置する。これにより、これ以降、角度センサ2の角度(RX1, RY1, RZ1)が、姿勢基準手段1に対する首部の姿勢角度として表わすことができる。ここで、姿勢基準手段1に角度センサ2を取り付けるときに、図2、3に示すように、姿勢基準手段1と角度センサ2を勘合させることで、双方のずれを防ぐことができる。
【0030】
同様に、角度センサ3(第2の角度センサ)においては、図5に示される。図5(a)において、まず、姿勢基準手段1を被験者の胴体部5に設置する。次に、図5(b)において、姿勢基準手段1に角度センサ3を取り付けて、制御手段101にて、このときの角度センサ3の角度をキャリブレーションして原点とする。これは、姿勢基準手段1の角度を(RX0, RY0, RZ0)とし、角度センサ3の角度(RX2, RY2, RZ2)とし、この取り付け時の角度を(RX20, RY20, RZ20)とすれば、
(RX20, RY20, RZ20) = (RX0, RY0, RZ0) = (0, 0, 0)
となる。次に、図5(c)において、角度センサ3を超音波探触子4に取り付ける。これにより、これ以降、図5(d)に示すように、角度センサ3の角度(RX2, RY2, RZ2)が、姿勢基準手段1に対する超音波探触子の姿勢角度として表わすことができる。これらの角度の演算は、制御手段101によって行われるものである。
【0031】
また、姿勢基準手段1が角度センサの場合は、角度センサ2、3の角度(RX1, RY1, RZ1)、(RX2, RY2, RZ2)から、胴体部5に設置された姿勢基準手段1の角度(RX0, RY0, RZ0)を、差し引いた値を首部6と超音波探触子4の姿勢角度とすればよい。
【0032】
このように求められた首部と超音波探触子の姿勢角度は、表示手段102に表示され、制御手段101に設置した記録再生手段に記録される。また、この首部6の姿勢角度と超音波探触子4の姿勢角度は、胴体部5を基準としたものであるため、ベッド8の向きなどが変わっても、基準に対して同じ角度に保つことが可能である。また、磁場・電磁気を用いていないため周りの環境の影響を受けにくく、設置場所の制約が少ないものになる。
【0033】
また、胴体部5がベッド8に対して、常に同じ姿勢、例えば仰向けになっていれば、胴体部5の姿勢は同一なものとなるため、ベッド8に角度センサ1aを設置しても良く、枕9がベッド8に対して同じ姿勢に設置すれば姿勢基準1cを枕9に設置することも同様になる。
【0034】
図7において、人体の形状モデル103は、胴体部と頭部と首部の形状モデルのパーツを、制御手段101で演算された人体の姿勢角度をもとに構築される。なお、各形状モデルのパーツは、標準的な寸法が与えられていてもよい。なお、性別や年齢になどによって、各形状モデルのパーツの寸法を変えてもよい。なお、形状モデルのパーツは、球や円筒などの簡易的な形状でも構わない。
【0035】
角度センサ2、3の角度は、常に制御手段101で監視されているため、角度ぶれや角度ずれを検視することができる。
【0036】
角度ぶれの場合、例えば、図8(a)のように角度RX2が時間とともに変化することになる。この変化がある基準より大きくなると、制御手段101で角度ぶれが発生したと判断し、表示手段102に表示する。例えば、角度ぶれを判断する基準は、±1°とすれば良い。また、図8(b)のように、例えば角度RX2が大きく変化して、ある基準よりも大きくなった場合、制御手段101で角度ずれと判断して、表示手段102に表示する。例えば、角度ずれの基準は、±5°とすれば良い。
【0037】
このような本発明の実施の形態によれば、この構成により、被検者と超音波探触子の姿勢決めすることができ、かつ、設置場所の制約を少なくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明の超音波診断装置は、体表から超音波を送受信する超音波振動子と前記超音波振動子を有する超音波探触子と受信された超音波から断面画像を構築する超音波診断装置であって、被検者の胴体姿勢を基準と定める姿勢基準手段と、前記被検者の頭部に設置する角度センサ(第一の角度センサ)と、前記超音波探触子に設置する角度センサ(第2の角度センサ)と、前記角度センサからの取得角度情報から姿勢角度を演算する制御手段と、その姿勢角度を表示する表示手段を有している。
【0039】
この構成により、被検者と超音波探触子の姿勢決めすることができ、かつ、設置場所の制約を少なくすることができ、生体内に超音波探触子から超音波を照射して受け取ったエコー信号から断面画像を構築し表示する超音波診断装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態における超音波診断装置の概観図
【図2】本発明の実施の形態における超音波診断装置の動作説明の図
【図3】本発明の実施の形態における超音波診断装置の動作説明の図
【図4】本発明の実施の形態における超音波診断装置の動作説明の図
【図5】本発明の実施の形態における超音波診断装置の動作説明の図
【図6】本発明の実施の形態における超音波診断装置の動作説明の図
【図7】本発明の実施の形態における超音波診断装置の動作説明の図
【図8】本発明の実施の形態における超音波診断装置の動作説明の図
【符号の説明】
【0041】
1,1a,1b 姿勢基準手段
2 角度センサ(第一の角度センサ)
3 角度センサ(第二の角度センサ)
4 超音波探触子
5 胴体部
6 首部
7 頭部
8 ベッド
9 枕
20 勘合部
21 突起部
22 穴部
30 ケーブル
100 超音波診断装置
101 制御手段
102 表示手段
103 人体の形状モデル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体表から超音波を送受信する超音波振動子と前記超音波振動子を有する超音波探触子と受信された超音波から断面画像を構築する超音波診断装置であって、被検者の胴体姿勢を基準と定める姿勢基準手段と、前記被検者の頭部に設置する第一の角度センサと、前記超音波探触子に設置する第二の角度センサと、前記第一の角度センサと前記第2の角度センサとからの取得角度情報から姿勢角度を演算する制御手段と、その姿勢角度を表示する表示手段を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記姿勢基準手段は、前記第一の角度センサと前記第2の角度センサとを取り付ける勘合部を有していることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記姿勢基準手段は、前記第一の角度センサと前記第2の角度センサとであることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記姿勢基準手段は、ベッドに設置されていることを特徴とする請求項1または3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記姿勢基準手段は、枕に設置されていることを特徴とする請求項1または3に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記表示手段は、前記制御手段から演算された姿勢角度から人体の形状モデルを表示することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第一の角度センサと前記第2の角度センサとから、姿勢角度の変動を検知して、前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−149044(P2008−149044A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342172(P2006−342172)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】