説明

超音波診断装置

【課題】複数のプローブを備える超音波診断装置において、配線処理を簡略化する。
【解決手段】送信回路22−1,22−2や受信回路23−1,23−2などから成る内部回路21と、複数のプローブ挿入口16−1,16−2,16−3を備える外部回路31との間を連絡する配線41−1,41−2を、スイッチ32−1,32−2で切換えすることで、該配線41を複数のプローブで共用した上で、前記プローブ挿入口16−1,16−2,16−3から、その共用を実現するスイッチ32−1,32−2を含む外部回路31を、移動部材によって診断装置本体に対して移動可能にする。したがって、プローブ挿入口を診断装置本体上で移動可能にして、複数のプローブの取り回しを改善しても、配線41は、複数のプローブ間で共用可能な最小限の数とすることができる。これによって、配線処理を簡略化し、また診断画像への影響も抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記超音波診断装置は、生体などの被検体の断層画像を、X線被爆などを伴うことなく、無侵襲に得ることができ、広く使用されている。その使用方法は、一般的に、ベッドサイドに該超音波診断装置を移動させ、診察者がベッドに寝た被験者に対してプローブを押し当てるというものである。
【0003】
そこで、特許文献1には、図5で示すように、キャスター1によって移動可能なベース2に対して、モニタ3および操作パネル4を正対して取付ける一方、プローブ5を駆動するとともに、そのプローブ5からの信号に基づいて前記モニタ3に表示する前記断層画像を作成する電気回路を収容した診断装置本体6を、菱形、すなわち矩形の筐体を45°回転させて取付けることで、前記診察者の足元にスペースを確保し、該診察者が楽な姿勢を取れるようにした超音波診断装置10が提案されている。図5において、(a)は超音波診断装置10の平面図であり、(b)は正面図である。
【0004】
また、前記特許文献1の他の実施例には、摩擦係数の小さい部材や、ターンテーブルなどを使用して、前記ベース2に対して診断装置本体6を所定の角度範囲で回転可能とし、超音波診断装置がベッドの右側にあるのか左側にあるのかによって、プローブ4の取り回しを改善するようにした構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−353152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来技術は、診断装置本体6全体が回転するので、前記所定の角度範囲で規制されていても、内部での配線の処理が大変であり、また診断画像に影響を及ぼす可能性もある。超音波診断装置は、前記診断装置本体6に収容される電気回路と、プローブ5との間の線数が多く、たとえば200本もあり、またプローブ5には、診断部位や深さなどに応じて複数の種類があり(乳房や前立腺などの浅い所を見るリニア形、子宮や肝臓などの深い所を見るコンベックス形、肋骨の間から入れて心臓を見るセクター形等)、色々な機能を備えるプレミアム機になると、同時に使用することはなくても、それら多数のプローブを、常時プローブ挿入口(レセプタクル)7に差したままであり、特に問題である。
【0007】
本発明の目的は、簡単な構成で、複数のプローブの取り回しを改善することができる超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の超音波診断装置は、診断装置本体に設けられた複数のプローブ挿入口(レセプタクル、コネクタ)からそれぞれプローブが引出されて成る超音波診断装置において、前記診断装置本体内に、1または複数台設けられる超音波の送受信回路と、前記送受信回路から伸びて形成され、該診断装置本体の内外を連絡する連絡配線と、前記複数の各プローブ挿入口に対応して設けられ、前記連絡配線との間で、択一的にプローブ挿入口を連絡配線に接続する信号切換え器と、前記信号切換え器および複数のプローブ挿入口が搭載され、それらの前記引出しの位置を前記診断装置本体に対して移動可能に支持する移動部材とを含むことを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、診断装置本体から複数のプローブが引出されて成る超音波診断装置において、内外を連絡する配線を複数のプローブで共用した上で、プローブ挿入口から、その共用を実現する信号切換え器を、移動部材によって前記診断装置本体に対して移動可能にする。
【0010】
したがって、プローブ挿入口(引出し位置)を診断装置本体上で移動可能にして、複数のプローブの取り回しを改善しても、その移動部分に引回される配線は、複数のプローブそれぞれについてではなく、複数のプローブ間で共用可能な最小限の数とすることができる。これによって、配線処理を簡略化し、また診断画像への影響も抑えることができる。
【0011】
なお、送受信回路は1台に限らず、複数台設けられて、診断装置本体内でも、信号切換え器によって択一的に接続されるようにしてもよい。これによって、プローブの種類や用途等に対応したグループ毎などで使い分けが行われたり、或いは、各プローブに専用の送受信回路がそれぞれ設けられ、少なくとも一部分の配線がプローブ間で共用される。また、たとえばリニアアレイと2Dアレイとのように、同時に使用するプローブが存在する場合には、前記連絡配線を前記同時に使用するチャネル分設ければよい。
【0012】
また、本発明の超音波診断装置では、前記各プローブ挿入口と対応する信号切換え器との間に、少なくとも送信信号を増幅するアンプが設けられることを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、診断装置本体の内外を連絡する配線の少なくとも一部を複数のプローブ間で共有しても、少なくとも送信信号には、それぞれのプローブに応じた適切な増幅を行うことができる。また、前記連絡配線で伝播される信号振幅を小さくすることができ、配線への負担を小さくすることができる。
【0014】
さらにまた、本発明の超音波診断装置では、前記移動部材は、前記診断装置本体に対して、前記信号切換え器およびプローブ挿入口を前後方向に摺動変位させることを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、診断装置本体に対して、プローブ挿入口が前後方向、すなわち奥行き方向に配列されている場合、手前側のプローブを使用する場合には、前記移動部材によってプローブ挿入口を後方へ移動させることで、診察者の足元スペースを確保して楽な姿勢を取れるようにし、また奥側のプローブを使用する場合には、前記移動部材によってプローブ挿入口を前方へ移動させることで、その奥側のプローブを診断部位に届かせることができ、或いは被験者(ベッド)と該超音波診断装置との位置を変えずに、反対側、すなわち右側のプローブを左側に、左側のプローブを右側に、取り回すことができる。
【0016】
また、本発明の超音波診断装置では、前記移動部材は、前記診断装置本体に対して、前記信号切換え器およびプローブ挿入口を鉛直軸線回りに回転変位させることを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、診断装置本体の反対側、すなわち右側のプローブを左側へ、左の側のプローブを右側へ、容易に取り回すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の超音波診断装置は、以上のように、診断装置本体から複数のプローブが引出されて成る超音波診断装置において、内外を連絡する配線を複数のプローブで共用した上で、プローブ挿入口から、その共用を実現する信号切換え器を、移動部材によって前記診断装置本体に対して移動可能にする。
【0019】
それゆえ、プローブ挿入口(引出し位置)を診断装置本体上で移動可能にして、複数のプローブの取り回しを改善しても、その移動部分に引回される配線は、複数のプローブそれぞれについてではなく、複数のプローブ間で共用可能な最小限の数とすることができる。これによって、配線処理を簡略化し、また診断画像への影響も抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の一形態に係る超音波診断装置の側面図である。
【図2】前記超音波診断装置における診断装置本体の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の他の形態に係る超音波診断装置の側面図である。
【図4】図3の斜視図である。
【図5】典型的な従来技術の超音波診断装置の六面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の一形態に係る超音波診断装置11の側面図である。この超音波診断装置11は、診断装置本体12と、該診断装置本体12上に設けられる操作パネル13および表示装置14と、複数のプローブ15とを備えて構成される。
【0022】
この超音波診断装置11では、前記複数のプローブ15のためのプローブ挿入口(レセプタクル、コネクタ)16は、診断装置本体12の側面において、前後方向、すなわち奥行き方向に配列されている。図1は、超音波診断装置11の右側面図であり、その右側面に3つのプローブ挿入口16が示されているが、図示しない左側面にも同様に設けられていてもよく、また3つに限らず、複数設けられていればよい。
【0023】
また、プローブ15には、リニア形、コンベックス形、セクター形、2D形等の種々の種類があるが、基本的に、プローブ挿入口16との関係は固定されておらず、すなわちいずれのプローブ挿入口16にいずれのプローブ15が装着されてもよい。しかしながら、ピン数の関係等で、プローブ15とプローブ挿入口16との関係が予め定められていてもよい。
【0024】
プローブ15とプローブ挿入口16との間は、たとえば線数が200本以上の同軸のケーブル17によって接続されている。前記各プローブ15は、診断装置本体12の側面に設けられた保持部材18によって、不使用時はそれぞれ保持されている。
【0025】
図2は、診断装置本体12の電気的構成を示すブロック図である。この図2では、前記プローブ挿入口16は片側分の3つで、さらにそれぞれに添え数字1〜3を付して示している。この診断装置本体12は、電気的には、内部回路21と、外部回路31と、それらを連絡する連絡配線41とを備えて構成される。
【0026】
前記内部回路21は、撮像画像に対応したプローブ15からの送信ビームを作成する送信回路22−1,22−2と、プローブ15で受信された信号を増幅して整相加算する受信回路23−1,23−2と、前記操作パネル13からの入力操作に応答して前記送信ビームの制御等を行う制御回路24と、各受信回路23−1,23−2での受信信号から断層画像を作成し、前記表示装置14へ出力する信号処理回路25−1,25−2とを備えて構成される。
【0027】
前記連絡配線41は、前記2系統の送受信の系統に合わせて、連絡配線41−1,41−2(総称するときは、以下参照符号41で示す)の2系統設けられている。これによって、たとえばリニアアレイと2Dアレイとのように、同時に2つのプローブ15が使用可能となっている。しかしながら、前記送受信の系統に、連絡配線41は、1系統であってもよく、連絡配線41の少なくとも一部が、複数のプローブ挿入口16間で共有されればよい。また、送受信の系統は、プローブ挿入口16は3つであるものの、使用可能なプローブ15の種類それぞれに対応して、前記プローブ挿入口16の数以上が設けられてもよい。その場合で、送受信の系統数が連絡配線41の系統数を上回る場合には、間に信号切換え器となるスイッチが設けられて、連絡配線41を1つの送受信の系統が択一的に使用するようにすればよい。
【0028】
前記2系統の連絡配線41−1,41−2に合わせて、前記外部回路31でも、信号切換え器となる2つのスイッチ32−1,32−2(総称するときは、以下参照符号32で示す)が設けられている。前記スイッチ32−1,32−2は、前記3つのプローブ挿入口16−1,16−2,16−3に、前記連絡配線41−1,41−2、したがって2つの送受信の系統を任意かつ択一的に接続するものであり、前記各連絡配線41−1,41−2に接続される共通接点と、前記各プローブ挿入口16−1,16−2,16−3に接続される3つの個別接点とを備える。
【0029】
前記スイッチ32−1,32−2の各個別接点と、対応するプローブ挿入口16−1,16−2,16−3との間には、送信信号を増幅するアンプ33−1,33−2,33−3(総称するときは、以下参照符号33で示す)および受信信号を増幅するアンプ34−1,34−2,34−3(総称するときは、以下参照符号34で示す)が設けられている。これによって、各プローブに応じた適切な増幅を行うことができるようになっている。
【0030】
上述のように構成される超音波診断装置11において、注目すべきは、上述のようにスイッチ32を用いることで、複数のプローブ挿入口16に対して連絡配線41を共用とした上で、それらのスイッチ32およびプローブ挿入口16ならびにアンプ33,34、すなわち外部回路31が、移動部材19に搭載され、前記診断装置本体12に対して移動可能とすることである。前記移動部材19は、診断装置本体12の側面に設けられた案内部材20上を、矢符30で示す前後方向に摺動変位し、任意の位置で、図示しない係止部材によって、停止可能となる。
【0031】
このように構成することで、プローブ挿入口16を診断装置本体12上で移動可能にして、複数のプローブ15の取り回しを改善しても、その移動部分に引回される連絡配線41は、複数のプローブ15それぞれについてではなく、複数のプローブ15間で共用可能な最小限の数とすることができる。これによって、配線処理を簡略化し、また診断画像への影響も抑えることができる。
【0032】
また、各プローブ挿入口16に対応して、少なくとも送信側にアンプ33を挿入することで、それぞれのプローブ15に応じた適切な増幅を行うことができる。また、前記連絡配線41で伝播される信号振幅を小さくすることができ、該連絡配線41への負担を小さくすることができる。具体的には、線径を細くして、診断装置本体12の内外に亘る引回しを容易にしたり、シールドを簡略化するなどの効果を得ることができる。
【0033】
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の他の形態に係る超音波診断装置51の側面図であり、図4はその斜視図である。この超音波診断装置51は、前述の超音波診断装置11に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。前述の超音波診断装置11では、プローブ挿入口16が、矢符30で示す前記診断装置本体12の前後方向、すなわち奥行き方向に配列されているので、前記案内部材20も、前記移動部材19を前記矢符30で示す前後方向に摺動変位させている。これによって、手前側のプローブを使用する場合には、前記移動部材19によってプローブ挿入口16を後方へ移動させることで、診察者の足元スペースを確保して楽な姿勢を取れるようにし、また奥側のプローブを使用する場合には、前記移動部材19によってプローブ挿入口16を前方へ移動させることで、その奥側のプローブを診断部位に届かせることができ、或いは被験者(ベッド)と該超音波診断装置11との位置を変えずに、反対側、すなわち右側のプローブを左側に、左側のプローブを右側に、取り回すことができる。
【0034】
これに対して、この超音波診断装置51では、診断装置本体52の前面側に、鉛直方向を軸線方向とする円筒面を有する案内部材50が設けられており、その案内部材50上を移動部材59は矢符60で示す周方向に摺動変位、すなわち鉛直軸線回りに回転変位する。このように構成することで、診断装置本体52の反対側、すなわち右側のプローブを左側へ、左の側のプローブを右側へ、容易に取り回すことができる。
【0035】
また、上述の例では、移動部材19,59に対して、複数のプローブ挿入口16は横並びで搭載されていたけれども、縦に積層されてもよい。
【符号の説明】
【0036】
11,51 超音波診断装置
12,52 診断装置本体
13 操作パネル
14 表示装置
15 プローブ
16;16−1,16−2,16−3 プローブ挿入口(レセプタクル、コネクタ)
17 ケーブル
18 保持部材
19,59 移動部材
20,50 案内部材
21 内部回路
22−1,22−2 送信回路
23−1,23−2 受信回路
24 制御回路
25−1,25−2 信号処理回路
31 外部回路
32;32−1,32−2 スイッチ
33:33−1,33−2,33−3 アンプ
34;34−1,34−2,34−3 アンプ
41;41−1,41−2 連絡配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断装置本体に設けられた複数のプローブ挿入口からそれぞれプローブが引出されて成る超音波診断装置において、
前記診断装置本体内に、1または複数台設けられる超音波の送受信回路と、
前記送受信回路から伸びて形成され、該診断装置本体の内外を連絡する連絡配線と、
前記複数の各プローブ挿入口に対応して設けられ、前記連絡配線との間で、択一的にプローブ挿入口を連絡配線に接続する信号切換え器と、
前記信号切換え器および複数のプローブ挿入口が搭載され、それらの前記引出しの位置を前記診断装置本体に対して移動可能に支持する移動部材とを含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記各プローブ挿入口と対応する信号切換え器との間に、少なくとも送信信号を増幅するアンプが設けられることを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記移動部材は、前記診断装置本体に対して、前記信号切換え器およびプローブ挿入口を前後方向に摺動変位させることを特徴とする請求項1または2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記移動部材は、前記診断装置本体に対して、前記信号切換え器およびプローブ挿入口を鉛直軸線回りに回転変位させることを特徴とする請求項1または2記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−101749(P2011−101749A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258250(P2009−258250)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】