説明

超音波診断装置

【課題】走査及び画像生成に関する処理と画像表示を停止することなく、送信フォーカス段数やフレームレートなどの走査条件を変更可能とする超音波診断装置を提供する。
【解決手段】各構成要素が、走査条件に対応する制御データを記憶する第1と第2の領域を備えた制御データ記憶部と、前記第1と第2の記憶領域に対し前記制御データを書込む領域と前記制御データを読み出す領域を制御する領域切替部とを備え、前記第1と第2の記憶領域のいずれか一方に変更後の走査条件に対応する制御データが書込まれ、前記領域切替部によって切替え制御され、前記書込まれた制御データが読み出されることで、前記構成要素を前記変更後の走査条件に対応する制御データで動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波の送受信により超音波画像を得る技術に関し、特に超音波検査の実施時に超音波画像の取得(走査)を停止することなく走査条件を変更することで、超音波診断を中断することなく異なる条件での検査を続けて実施可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
観測対象に応じてフレームレートや画質等の走査条件を変更可能な超音波診断装置は、走査条件の変更に応じて分解能や感度を維持するために、走査線の本数、送信フォーカス段数等のパラメータを変更する手段を有している。これらパラメータは、操作者の選択値、あるいは、表示形態の変更に対応する最適値へ自動的に移行するようになっている。
【0003】
例えば、送信フォーカス段数は、各走査線が送信フォーカスをあてる点の数を表している。送信フォーカスをあてる点の付近は解像度が上がることから、送信フォーカス段数を増やすことにより画像の解像度を向上させることが可能となる。
【0004】
前記パラメータはフレームレート、つまり、単位時間あたりに何度画面が更新されるかに密接に関係している。例えば、送信フォーカス段数を上げると超音波プローブの各振動子が1回の走査において送信するビームの回数が増えるため、走査線本数が多い程、又は、送信フォーカス段数が多い程、フレームレートが低下する。つまり、走査線本数の増加や送信フォーカス段数の増加と、フレームレートの向上はトレードオフの関係にあり、そのため、観測対象の特性に応じて最適な走査条件を選択し、観測対象ごとに逐次変更する必要がある。
【0005】
例えば、肝臓造影検査では造影剤を注入後の経過時間に応じて観測できる部位が異なるため、造影剤注入直後の検査の初期段階では動脈相や門脈相の観測を行い、検査の終盤では肝実質相の観測を行う。
【0006】
動脈相や門脈相の観測を行う検査の初期段階では、造影剤の流れが速く瞬時の情報が必要となるため、フレームレートを上げる必要があり、それに伴い送信フォーカス段数を下げることとなる。
【0007】
肝実質相の観測を行う検査終盤においては、造影剤の流れが緩やかになり、動脈相や門脈相の観測時のように高いフレームレートを必要としない。そのため、肝実質相の観測のときには送信フォーカス段数を増やして高い解像度を得られる設定とする。
【0008】
所定のフレームレートで超音波診断装置を動作させる技術として、例えば特許文献1には、走査実行時にフレームレートが所定の閾値を下回らないように維持するための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−116149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来の超音波診断装置においては、所定の観測の中で走査条件を変更する際には、走査及び画像生成に関する処理を停止する必要があり、その間、超音波画像を取得することができなかった。これは、走査条件を変更するタイミングで、操作者が走査条件として指定した送信フォーカス段数等のパラメータに従い、超音波画像を生成する各構成要素の動作を制御するデータ(以降ではこのデータを「制御データ」と呼ぶ)を走査条件ごとに算出したうえで、各構成要素が読み出す制御データを、新しい制御データに書き換える必要があるためである。
【0011】
前記特許文献1には、超音波検査中に超音波診断装置の挙動を所定の走査条件にあわせて制御する技術が開示されているが、送信フォーカス段数やフレームレートなどの走査条件を測定対象にあわせて変更しながら動作させることができるものではない。
【0012】
この発明は上記の問題を解決するものであり、走査及び画像生成に関する処理を停止することなく、送信フォーカス段数やフレームレートなどの走査条件を変更可能とする超音波診断装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、この発明の第1の形態は、超音波プローブを介して被検体に超音波を送信し、前記被検体から反射した超音波エコーを前記超音波プローブを介して受信することで前記被検体の走査を行う送受信処理部と、前記超音波エコー信号を信号処理する信号処理部と、信号処理された前記超音波エコーのデータを基に超音波画像を生成する画像生成部と、前記超音波画像を表示する表示部と、前記各構成要素を走査条件に対応して動作制御するシステム制御部とを備えた超音波診断装置であって、前記走査条件に対応して前記各構成要素を動作制御するための制御データを生成する制御データ生成部と、前記構成要素それぞれに設けられ、前記制御データ生成部で生成された制御データを記憶する第1と第2の記憶領域を有する制御データ記憶部と、前記構成要素それぞれについて、前記第1と第2の記憶領域に対し前記制御データを書き込む領域と前記制御データを読み出す領域を切替え制御する制御データ領域切替部と、前記制御データ生成部に前記走査条件の変更を指示する操作部とを備え、前記操作部から走査条件の変更の指示を受けて、前記第1と第2の記憶領域のいずれか一方に前記変更後の走査条件に対応する制御データが書き込まれ、所定のタイミングで前記制御データ領域切替部が切替え制御され、前記書き込まれた制御データが読み出されることを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、超音波画像を生成する各構成要素が、第1の領域及び第2の領域のいずれか一方の領域に記憶された、第1の走査条件に係る制御データを基に動作している間に、あらかじめ第2の走査条件、つまり、次の走査条件に係る制御データを作成し他方の領域に記憶させておく。そして、次の走査のタイミングで記憶された制御データを読み出して各構成要素を動作させる。これにより、走査条件を変更するタイミングで、第2の走査条件に係る制御データの算出と該制御データへの書換えを行う必要が無くなるため、走査及び画像生成に関する処理を停止することなく送信フォーカス段数やフレームレートなどの走査条件を変更することが可能となる。
【0015】
また、走査を停止することなく走査条件を変更することが可能となるため、走査の停止に伴う超音波画像の見落としを予防することが可能となる。さらに、走査条件を変更するときに診断が中断されるような煩わしさが無くなり操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態又は変形例1に係る超音波診断装置の機能ブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る超音波診断装置の走査時の処理シーケンスを示したシーケンス図である。
【図3】変形例1に係る超音波診断装置の走査時の処理シーケンスを示したシーケンス図である。
【図4】変形例2に係る超音波診断装置の機能ブロック図である。
【図5】変形例2に係る超音波診断装置の走査時の動作を示したフローチャートである。
【図6】走査条件の変更を行うときの従来の方式及び新しい方式の処理流れを時間軸上で比較した比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成について図1を参照しながら説明する。
【0018】
超音波プローブ10としては、複数の超音波振動子が所定方向(走査方向)に1列に配置された1次元アレイプローブ、又は、複数の超音波振動子が2次元的に配置された2次元アレイプローブが用いられる。また、所定方向(走査方向)に配列された超音波振動子を走査方向に直交する方向(スライス方向)に機械的に揺動可能な1次元アレイプローブを用いても良い。超音波プローブ10は、送受信処理部11からの信号(以降では、この信号を「送信駆動パルス」と呼ぶ)により所定の走査条件(例えば、フレームレートや送信フォーカス段数)に従って動作する。
【0019】
送受信処理部11は、送受信処理制御部111と、制御データ記憶部112と、制御データ読み出し領域切替部1131と、制御データ書き込み領域切替部1132で構成される。
【0020】
送受信処理制御部111は、超音波プローブ10に送信駆動パルスを出力するためのクロック発生回路、送信遅延回路、及びパルサ回路と、超音波プローブ10からの信号(以降では、この信号を「受信エコー信号」と呼ぶ)を受信するプリアンプ回路、A/D変換回路、及び受信遅延・加算回路を含んで構成されている。
【0021】
また、送受信処理制御部111は、超音波プローブ10の各超音波振動子から出力されるエコー信号を受信すると、受信チャンネルごとにプリアンプ回路で増幅し、増幅されたエコー信号をA/D変換したうえで受信遅延・加算回路で受信ビーム方向を決定するのに必要な遅延時間処理を行い整相加算して受信ビームを生成する(この加算により受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される)。なお、この送受信処理制御部111によって整相加算処理された信号を「RFデータ」と称する場合がある。送受信処理制御部111は、生成したRFデータを後述する信号処理制御部121に出力する。
【0022】
送受信処理制御部111は、操作部15から操作者が指定した、例えば、フレームレートや送信フォーカス段数等の走査条件、又は、Bモードやドップラーモード等の走査モード(以降は、特に指定が無い限り該走査条件及び該走査モードを総じて「走査条件」と呼ぶ)に応じて各回路を動作させるための制御データを制御データ読み出し領域切替部1131を介し制御データ記憶部112から読み出す(制御データ領域切替部113及び制御データ記憶部112については後述する)。
【0023】
制御データ記憶部112は、前記制御データを記憶する第1の領域1121及び第2の領域1122を有する。第1の領域1121及び第2の領域1122にはそれぞれ異なる制御データが記憶される。なお、第1の領域1121及び第2の領域1122はそれぞれ異なるメモリで構成するようにしても良いし、1つのメモリの記憶領域をそれぞれ異なる2つの領域に分割して、第1の領域1121及び第2の領域1122としても良い。また、3つ以上の領域を設け、該3つ以上の領域のいずれか2つの領域を第1の領域1121及び第2の領域1122としても良い。
【0024】
制御データ読み出し領域切替部1131は、送受信処理制御部111が制御データを読み出す領域を、第1の領域1121及び第2の領域1122のいずれか一方に選択的に切替える。制御データ読み出し領域切替部1131による制御データを読み出す領域の切替えは送受信処理制御部111により制御される。
【0025】
また、制御データ書き込み領域切替部1132は、制御データ生成部16から設定された制御データが、第1の領域1121及び第2の領域1122のいずれか一方に選択的に書込まれるように制御データを書込む領域を切替える。制御データ書き込み領域切替部1132による制御データを書込む領域の切替えは、第1の領域1121及び第2の領域1122にそれぞれ異なる制御データが記憶されるように送受信処理制御部111により制御される。
【0026】
制御データ記憶部112への制御データの書き込みは、制御データ書き込み領域切替部1132を介し制御データ生成部16が行う(制御データ生成部16については後述する)。
【0027】
なお、制御データ記憶部112に記憶された制御データは、制御データ読み出し領域切替部1131により第1の領域1121及び第2の領域1122のいずれか一方の領域から読み出し可能となるように制御される。このとき、制御データ記憶部112への制御データの書き込みは、制御データ書き込み領域切替部1132により他方の領域にのみ書き込み可能となるように制御される。
【0028】
信号処理部12は、信号処理制御部121と、制御データ記憶部122と、制御データ読み出し領域切替部1231と、制御データ書き込み領域切替部1232とで構成される。
【0029】
信号処理制御部121は、Bモード処理部やCFM(Color Flow Mapping)処理部などを備えて構成されている。Bモード処理部は、エコーの振幅情報の映像化を行う。具体的には、Bモード処理部は送受信処理制御部111から出力された受信信号(RFデータ)に対してバンドパスフィルタ処理を行い、その後、出力信号の包絡線を検波し、検波されたデータに対して対数変換による圧縮処理を施す。また、CFM処理部は、動いている血流の映像化を行う血流情報を作成する。血流情報には、速度、分散、パワー等の情報が含まれる。以降では、これらのRFデータを信号処理したデータを「信号処理後のデータ」と呼ぶ場合がある。信号処理制御部121は、信号処理後のデータを後述する画像生成制御部131へ出力する。
【0030】
信号処理制御部121は、操作部15から操作者が指定した走査条件に応じて各回路を動作させるための制御データを、制御データ読み出し領域切替部1231を介し制御データ記憶部122から読み出す。
【0031】
なお、制御データ記憶部122に記憶される制御データの具体的な内容は異なるものの、制御データ記憶部122及び制御データ読み出し領域切替部1231、制御データ書き込み領域切替部1232との構成及び動作は、それぞれ送受信処理部11の制御データ記憶部112及び制御データ読み出し領域切替部1131、制御データ書き込み領域切替部1132と同様のため詳細な説明は省略する。
【0032】
画像生成部13は、画像生成制御部131と、制御データ記憶部132と、制御データ読み出し領域切替部1331、制御データ書き込み領域切替部1332とで構成される。
【0033】
画像生成制御部131は、走査線信号列で表される信号処理後のデータを、空間座標に基づいた座標系のデータに変換する(デジタルスキャンコンバージョン)。例えば、画像生成制御部131は、信号処理制御部121のBモード処理部から出力された信号処理後のデータに対してスキャンコンバージョン処理を施すことで、被検体の組織形状を表すBモード画像データを生成する。
【0034】
また、ボリュームスキャンが行なわれている場合、画像生成制御部131は、信号処理制御部121から信号処理後のデータとしてボリュームデータを受け、そのボリュームデータにボリュームレンダリングを行うことで3次元画像データを生成するようにしても良い。さらに、画像生成制御部131は、ボリュームデータにMPR処理(Multi Plannar Reconstruction)を施すことにより、MPR画像データ(任意断面の画像データ)を生成するようにしても良い。画像生成制御部131により生成された、Bモード画像データや3次元画像データなどの超音波画像データは表示部14へ出力される。
【0035】
画像生成制御部131は、操作部15から操作者が指定した走査条件に応じで各回路を動作させるための制御データを、制御データ読み出し領域切替部1331を介し制御データ記憶部132から読み出す。
【0036】
なお、制御データ記憶部132に記憶される制御データの具体的な内容は異なるものの、制御データ記憶部132及び制御データ読み出し領域切替部1331の構成及び動作は、それぞれ送受信処理部11の制御データ記憶部112及び制御データ読み出し領域切替部1131、制御データ書き込み領域切替部1332と同様のため詳細な説明は省略する。また、上記した制御データ読み出し領域切替部1131、1231、及び、1331と制御データ書き込み領域切替部1132,1232、及び、1332とが制御データ領域切替部に相当する。
【0037】
表示部14は、画像生成制御部131が出力した超音波画像のデータを表示するための表示手段である。なお、表示部14に表示制御部(図示しない)を設け、所定のフォーマットに従い超音波画像を配置し表示させるようにしても良い。
【0038】
制御データ生成部16は、操作部15から操作者が指定した走査条件を受けて、各構成要素の制御部(送受信処理制御部111、信号処理制御部121、又は、画像生成制御部131)がそれぞれの各回路を動作させるための制御データを生成する。制御データ生成部16は、生成した制御データを、各構成要素の制御データ領域切替部(制御データ読み出し領域切替部1131、1231、又は、1331と制御データ書き込み領域切替部1132,1232、又は、1332)を介して、各構成要素の制御データ記憶部(制御データ記憶部112、122、又は、132)に設定し記憶させる。
【0039】
また、制御データ生成部16は、各構成要素の制御データ記憶部に設定送信した制御データを基に、各構成要素が動作するタイミングや該設定した制御データが記憶された領域を指定する制御データ(例えばアドレスやポインター)を作成する。制御データ生成部16は、作成した制御データとしてシステム制御部17の制御データ記憶部172に設定し記憶させるとともに、制御データを制御データ記憶部172に設定したことをシステム制御処理部171に通知する(制御データ記憶部172及びシステム制御処理部171については後述する)。
【0040】
なお、上記の制御データ生成部16の説明では、操作部15からの指示ごとに走査条件を変更する場合の動作を例に説明したが、あらかじめ操作部15から複数の走査条件を入力しておき、所定のタイミングで逐次切替えることも可能である。
【0041】
この場合、制御データ生成部16に、操作部15から操作者が指定した複数の走査条件を、各走査条件に変更するタイミングとあわせて記憶する記憶領域(図示しない)を設ける。制御データ生成部16は、前記各走査条件に変更するタイミングに従い、上記で説明した各制御データの作成及び設定と、システム制御処理部171への制御データの設定に関する通知を行うことで実施可能である。
【0042】
システム制御部17は、制御データ記憶部172と、制御データ読み出し領域切替部1731と、制御データ書き込み領域切替部1732とシステム制御処理部171とで構成される。
【0043】
制御データ記憶部172は、後述するシステム制御処理部171が動作するための制御データを記憶する第1の領域1721及び第2の領域1722を有する。制御データは、制御データ生成部16により、後述する制御データ読み出し領域切替部1731と、制御データ書き込み領域切替部1732を介し第1の領域1721及び第2の領域1722のいずれか一方に書き込まれる。なお、制御データ記憶部172は、制御データ記憶部112と同様に、第1の領域1721及び第2の領域1722はそれぞれ異なるメモリで構成するようにしても良いし、1つのメモリの記憶領域をそれぞれ異なる2つの領域に分割して、第1の領域1721及び第2の領域1722としても良い。
【0044】
制御データ書き込み領域切替部1732は、制御データ生成部16から設定された制御データが第1の領域1721及び第2の領域1722のいずれか一方に選択的に記憶されるように、制御データを書込む領域を切替える。制御データ書き込み領域切替部1732による制御データを書込む領域の切替えは、第1の領域1721及び第2の領域1722にそれぞれ異なる制御データが記憶されるように後述するシステム制御処理部171により制御される。
【0045】
また、制御データ読み出し領域切替部1731は、後述するシステム制御処理部171が制御データを読み出す領域を、第1の領域1721及び第2の領域1722のいずれか一方に選択的に切替える。制御データ読み出し領域切替部1731による制御データを読み出す領域の切替えは、システム制御処理部171が制御データ生成部16の指示を受けて制御する。
【0046】
システム制御処理部171は、送受信処理部11の送受信処理制御部111に超音波画像の取得の開始、終了(停止)、又は、走査条件の変更を指示するとともに、第1の領域1121又は第2の領域1122のどちらの領域に記憶された制御データを読み出すかを指示することで、送受信処理制御部111の動作を制御する。
【0047】
システム制御処理部171が、送受信処理制御部111を制御するタイミングや、送受信処理制御部111を第1の領域1121及び第2の領域1122のどちらの領域に記憶された制御データで動作させるかは、制御データ生成部16が制御データ記憶部172に記憶させた制御データにより決定される。
【0048】
システム制御処理部171は、制御データ生成部16からの通知を受けると、制御データ生成部16により制御データ記憶部172に記憶された制御データを、後述する制御データ読み出し領域切替部1731を介して読み出す。
【0049】
システム制御処理部171は、制御データに指定されたタイミングに従い、送受信処理制御部111に超音波画像の取得の開始、終了(停止)、又は、走査条件の変更を指示するとともに、動作時に制御データを読み出す領域を指示する。
【0050】
次に、本実施形態に係る超音波診断装置1にて走査条件を変更する場合の動作について、図2を参照しながら説明する。図2は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の走査時の処理シーケンスを示したシーケンス図である。
【0051】
例えば、肝臓造影検査の場合、動脈相や門脈相の観測を行う造影剤注入直後の初期段階においては、造影剤の流れが速く瞬時の情報が必要となるため、フレームレートを上げた走査条件を設定する。例えば、この走査条件を第1の走査条件とする。
【0052】
また、肝実質相の観測を行う検査終盤においては、造影剤の流れが緩やかになり、動脈相や門脈相の観測時のように高いフレームレートを必要としないため、フレームレートを下げ送信フォーカス段数を増やし高い解像度を得られる走査条件とする。例えば、この走査条件を第2の走査条件とする。
【0053】
本説明では、肝臓造影検査を想定し、造影剤の注入開始から60秒の時点(この時点をn回目の走査とする)までは動脈相や門脈相を観測する第1の走査条件で動作し、60秒後(n+1回目の走査)から肝実質相の観測を行う第2の走査条件に変更された場合を例に、本実施形態に係る超音波診断装置1にて走査条件を変更する場合の動作について説明する。なお、以下は走査間での設定変更を例に説明するが、走査線ごとに設定を変更することも可能である。その場合は、走査線が切り替わる(例えばm本目の走査線からm+1本目の走査線に切り替わる)タイミングで後述する各制御を行うことが可能となる。
【0054】
操作者は、造影剤の注入開始から60秒後(n+1回目の走査)に走査条件を第2の走査条件に変更する場合、造影剤の注入開始から60秒が経過する前、つまり、n回目の走査が完了する前に、操作部15から次の走査条件(第2の走査条件)と次の走査条件に切替えるタイミング(検査開始から60秒後、つまり、n+1回目の走査)を指定する。
【0055】
制御データ生成部16は、操作者が指定した次の走査条件(第2の走査条件)に関する入力を操作部15から受けて、第2の走査条件で各構成要素の制御部(送受信処理制御部111、信号処理制御部121、又は、画像生成制御部131)の各回路を動作させるための制御データを生成し、生成された制御データを各制御データ記憶部(制御データ記憶部112、122、及び、132)に設定する。
【0056】
なお、以降では、単に「各構成要素の制御部」と記載した場合、送受信処理制御部111、信号処理制御部121、又は、画像生成制御部131を指すものとする。同様に、単に「各制御データ記憶部」と記載した場合、各構成要素の制御データ記憶部、つまり、制御データ記憶部112、122、又は、132を指すものとする。
【0057】
また、本説明では、第1の走査条件に関する制御データは、各制御データ記憶部の第1の領域(第1の領域1121、1221、又は、1321)に記憶されているものとする。そのため、第2の走査条件に関する制御データは、各制御データ書き込み領域切替部(制御データ書き込み領域切替部1132、1232、又は、1332)により各制御データ記憶部の第2の領域(第2の領域1122、1222、又は、1322)に書き込まれるように制御される。
【0058】
次に、制御データ生成部16は、各構成要素の制御部が第2の走査条件で動作を開始するタイミング(n+1回目の走査)と、各構成要素の制御部の各回路が第2の走査条件で動作するための制御データが記憶された各制御データ記憶部の領域(第2の領域)を示すデータを、制御データとしてシステム制御部17の制御データ記憶部172に設定する。制御データの設定が完了すると、制御データ生成部16は、該制御データを制御データ記憶部172に設定したことをシステム制御処理部171に通知する。
【0059】
システム制御処理部171は、制御データ生成部16からの指示を受けて、制御データ読み出し領域切替部1731を制御し制御データを読み出す領域を第2の領域1722に切替え、制御データを第2の領域1722から読み出す。このとき、システム制御処理部171は、あわせて制御データ書き込み領域切替部1732を制御し、制御データが書込まれる領域を第1の領域1721に切替える。
【0060】
次に、システム制御処理部171は、制御データから送受信処理制御部111が第2の走査条件で動作するタイミング(n+1回目の走査)を読み出し、送受信処理制御部111に第2の走査条件での動作を指示する命令、具体的には、n+1回目の走査から第2の走査条件への変更を通知する送受信処理命令c111を生成する。
【0061】
また、n+1回目の走査から走査条件が変更されるため、システム制御処理部171は、第2の走査条件に関する制御データが記憶された領域(第2の領域)を通知する領域指定命令c211を生成し、送受信処理命令c111に付帯したうえで送受信処理制御部111に出力する。
【0062】
送受信処理制御部111は、システム制御処理部171から送受信処理命令c111が設定されると、まず送受信処理命令に領域指定命令が付帯されているかを確認する。この場合、領域指定命令c211が付帯されていることになる。
【0063】
送受信処理制御部111は、領域指定命令c211が付帯されていることを確認すると、走査条件を変更するタイミング、つまり、n+1回目の走査に係る処理を実行する前に制御データ読み出し領域切替部1131を制御し、制御データを読み出す領域を第2の領域1122に切替える。このとき制御データ書き込み領域切替部1132をあわせて制御し、制御データが書込まれる領域を第2の領域1122から第1の領域1121に切替える。
【0064】
制御データを読み出す領域が第2の領域1122に切り替えられると、送受信処理制御部111は、第2の領域1122から制御データを読み出し、該制御データを基に超音波プローブ10に送信駆動パルスc112を出力する。これにより、送受信処理制御部111が第2の走査条件で動作することとなる。
【0065】
送受信処理制御部111は、超音波プローブ10からエコー信号c113を受信すると、受信したエコー信号c113に遅延時間処理を行い整相加算してRFデータを作成する。RFデータの作成が完了すると、送受信処理制御部111は、該RFデータを基に信号処理を指示する信号処理命令c114を生成し、該RFデータを付帯する。
【0066】
また、送受信処理制御部111は、システム制御処理部171から設定された領域指定命令c211により走査条件が変更されているため、領域指定命令c211と同様の条件で制御データを読み出す領域(第2の領域)を指定する領域指定命令c212を生成する。送受信処理制御部111は、生成した領域指定命令c212を信号処理命令c114に付帯したうえで信号処理制御部121に出力する。
【0067】
信号処理制御部121は、送受信処理制御部111から信号処理命令c114が設定されると、まず信号処理命令に領域指定命令が付帯されているかを確認する。この場合、領域指定命令c212が付帯されていることになる。
【0068】
信号処理制御部121は、領域指定命令c212が付帯されていることを確認すると、走査条件を変更するタイミング、つまり、n+1回目の走査に係る処理を実行する前に制御データ読み出し領域切替部1231を制御し、制御データを読み出す領域を第2の領域1222に切替える。このとき制御データ書き込み領域切替部1232をあわせて制御し、制御データが書込まれる領域を第2の領域1222とは異なる領域、つまり、第1の領域1221に切替える。
【0069】
制御データを読み出す領域が第2の領域1222に切り替えられると、信号処理制御部121は、第2の領域1222から制御データを読み出し、該制御データを基に信号処理命令c114に付帯されたRFデータを信号処理する。これにより、信号処理制御部121が第2の走査条件で信号処理動作を制御することとなる。
【0070】
信号処理制御部121は、信号処理が完了すると、信号処理後のデータを基に画像の生成を指示する画像生成命令c115を作成し、該信号処理後のデータを付帯する。
【0071】
また、信号処理制御部121は、送受信処理制御部111から設定された領域指定命令c212により走査条件が変更されているため、領域指定命令c212と同様の条件で制御データを読み出す領域(第2の領域)を指定する領域指定命令c213を生成する。信号処理制御部121は、生成した領域指定命令c213を画像生成命令c115に付帯したうえで画像生成制御部131に出力する。
【0072】
画像生成制御部131は、信号処理制御部121から画像生成命令c115が設定されると、まず画像生成命令に領域指定命令が付帯されているかを確認する。この場合、領域指定命令c213が付帯されていることになる。
【0073】
画像生成制御部131は、領域指定命令c213が付帯されていることを確認すると、走査条件を変更するタイミング、つまり、n+1回目の走査に係る処理を実行する前に制御データ読み出し領域切替部1331を制御し、制御データを読み出す領域を第2の領域1322に切替える。このとき制御データ書き込み領域切替部1332をあわせて制御し、制御データが書込まれる領域を第2の領域1322とは異なる領域、つまり、第1の領域1321に切替える。
【0074】
制御データを読み出す領域が第2の領域1322に切り替えられると、画像生成制御部131は、第2の領域1322から制御データを読み出し、該制御データを基に画像生成命令c115に付帯された信号処理後のデータに超音波画像の生成に係る処理を行い画像データを生成する。これにより、画像生成制御部131が第2の走査条件で画像生成の動作を制御することとなる。
【0075】
画像生成制御部131は、超音波画像の生成に係る処理が完了すると、生成した画像データを表示させる表示命令c116を作成し、該画像データを付加したうえで表示部14へ出力し、該画像データを表示部14に表示させる。このとき、表示制御部(図示しない)により所定のフォーマットに各画像を配置し表示させるようにしても良い。
【0076】
なお、走査条件を変更しない場合の動作については、システム制御処理部171からの送受信処理命令c101を起点とした、n回目の走査に係る送受信処理制御部111から表示部14までの処理シーケンスが該当する。
【0077】
以上をまとめると、まず、各構成要素の制御部が第1の領域及び第2の領域のいずれか一方に記憶された第1の走査条件で動作させるための制御データを基に動作している間に、制御データ生成部16が、次の走査条件(第2の走査条件)の制御データを他方の領域にあらかじめ書込む。その後、走査条件の変更時に各構成要素の制御部及びシステム制御処理部171が制御データを読み出す領域を一方の領域から他方の領域に切替える。これにより、走査及び超音波画像の生成に係る処理を停止せずに走査条件、つまり、送信フォーカス段数やフレームレートを第1の走査条件から第2の走査条件に変更することが可能となる。
【0078】
(変形例1)
第1の実施形態に係る超音波診断装置では、各構成要素の制御部又はシステム制御処理部171が、制御パラメータを読み出す領域及び書込む領域を切替える領域指定命令を送受信処理命令c111、信号処理命令c114、又は、画像生成命令c115のような、超音波の送受信や超音波画像の生成に係る命令(以降ではこれらを総じて「エコーデータ処理命令」と呼ぶ場合がある)に付帯し出力していた。
【0079】
しかし、必ずしも領域指定命令をエコーデータ処理命令に付帯して出力する必要はない。変形例1に係る超音波診断装置は、領域指定命令とエコーデータ処理命令とをそれぞれ異なる情報としてタイミングを異ならせて動作させることができる。
【0080】
変形例1に係る超音波診断装置の動作について、n+1回目の走査から走査条件が変更された場合を例に、図3を参照しながら説明する。図3は、変形例1に係る超音波診断装置の走査時の処理シーケンスを示したシーケンス図である。なお、変形例1に係る超音波診断装置の説明については、第1の実施形態と動作の異なるシステム制御処理部171、送受信処理制御部111、信号処理制御部121及び画像生成制御部131についてのみ記載し、その他の構成については同様の動作のため説明を省略するものとする。
【0081】
システム制御処理部171は、n+1回目の走査を指示する送受信処理命令c111を送受信処理制御部111に設定する直前に、制御データを読み出す領域(第2の領域)を指定する領域指定命令c211を送受信処理制御部111に設定する。
【0082】
送受信処理制御部111は、システム制御処理部171から領域指定命令c211が設定されると、n回目の走査に関する処理の完了後(信号処理制御部121に信号処理命令c104を設定後)に、設定された領域指定命令c211の内容を確認する。その後、送受信処理制御部111は、領域指定命令c211で指示された条件に従い制御データ読み出し領域切替部1131と制御データ書き込み領域切替部1132を制御し、制御データを読み出す領域及び制御データを書込む領域を切替える。制御データを読み出す領域及び制御データを書込む領域の切替え制御については、第1の実施形態と同様のため詳細な説明は省略する。
【0083】
送受信処理制御部111は、制御データを読み出す領域及び制御データを書込む領域の切替えが完了すると、領域指定命令c211と同様の条件で制御データを読み出す領域(第2の領域)を指定した領域指定命令c212を作成し、信号処理制御部121に設定する。その後、送受信処理制御部111は、システム制御処理部171から送受信処理命令c111を受け、n+1回目の走査に関する処理を実行する。
【0084】
信号処理制御部121は、送受信処理制御部111から領域指定命令c212が設定されると、n回目の走査に関する処理の完了後(画像生成制御部131に画像生成命令c105を設定後)に、設定された領域指定命令c212の内容を確認する。その後、信号処理制御部121は、領域指定命令c212で指示された条件に従い制御データ読み出し領域切替部1231と制御データ書き込み領域切替部1232を制御し、制御データを読み出す領域及び制御データを書込む領域を切替える。制御データを読み出す領域及び制御データを書込む領域の切替え制御については、第1の実施形態と同様のため詳細な説明は省略する。
【0085】
信号処理制御部121は、制御データを読み出す領域及び制御データを書込む領域の切替えが完了すると、領域指定命令c212と同様の条件で制御データを読み出す領域(第2の領域)を指定した領域指定命令c213を作成し、画像生成制御部131に設定する。その後、信号処理制御部121は送受信処理制御部111から信号処理命令c114を受け、n+1回目の走査に関する処理を実行する。
【0086】
画像生成制御部131は、信号処理制御部121から領域指定命令c213が設定されると、n回目の走査に関する処理の完了後(表示部14に表示命令c106を設定後)に、設定された領域指定命令c213の内容を確認する。その後、画像生成制御部131は、領域指定命令c213で指示された条件に従い制御データ読み出し領域切替部1331と制御データ書き込み領域切替部1332を制御し、制御データを読み出す領域及び制御データを書込む領域を切替える。制御データを読み出す領域及び制御データを書込む領域の切替え制御については、第1の実施形態と同様のため詳細な説明は省略する。
【0087】
画像生成制御部131は、制御データを読み出す領域及び制御データを書込む領域の切替えが完了した後、送受信処理制御部111から信号処理命令c114を受け、n+1回目の走査に関する処理を実行する。
【0088】
なお、各構成要素の制御部(送受信処理制御部111、信号処理制御部121、又は、画像生成制御部131)が、n回目の走査に関する処理を完了する前に領域指定命令が設定された場合は、各構成要素の制御部は、制御データを読み出す領域及び制御データを書込む領域の切替えを、n回目の走査に関する処理の完了後に実行する。
【0089】
また、各構成要素の制御部が、領域指定命令による制御データを読み出す領域及び制御データを書込む領域の切替えが完了する前にn+1回目の走査に関するエコーデータ処理命令が設定された場合は、各構成要素の制御部は、エコーデータ処理命令によるn+1回目の走査に関する処理を、領域指定命令に係る処理の完了後に実行する。
【0090】
以上をまとめると、変形例1に係る超音波診断装置1は、領域指定命令とエコーデータ処理命令とをそれぞれ異なる命令として送受信するため、各構成要素における領域の切替制御のタイミングをさらに細かく指定することが可能となる。
【0091】
(変形例2)
変形例2に係る超音波診断装置1Aの構成について、図4を参照しながら説明する。図4は、変形例2に係る超音波診断装置の機能ブロック図である。なお、構成の説明は、第1の実施形態又は変形例1に係る超音波診断装置1と異なる部分についてのみ行うものとする。
【0092】
第1の実施形態及び変形例1では、各構成要素の制御部が各制御データ領域切替部を切替え制御していた。変形例2に係る超音波診断装置1Aでは、システム制御処理部171Aが、各構成要素の制御部、つまり、送受信処理制御部111A、信号処理制御部121A、又は、画像生成制御部131Aの処理タイミングと、各構成要素の制御データ領域切替部(制御データ領域切替部173、113、123、又は、133)による制御データを読み出す領域及び制御データを書込む領域の切替えを制御する。
【0093】
そのため、変形例2に係る超音波診断装置1Aの、各構成要素の制御部(送受信処理制御部111A、信号処理制御部121A、又は、画像生成制御部131A)は、各構成要素の制御データ領域切替部(制御データ領域切替部173、113、123、又は、133)による制御データを読み出す領域及び制御データを書込む領域の切替え制御を行わない。
【0094】
次に、変形例2に係る超音波診断装置1Aにて走査条件を変更する場合の動作について、図5を参照しながら説明する。図5は、変形例2に係る超音波診断装置の走査時の動作を示したフローチャートである。
【0095】
システム制御処理部171Aは、各構成要素が走査条件を変更する前の走査に係る処理が完了したタイミングで、各制御データ領域切替部による制御データを読み出す領域及び制御データを書込む領域の切替えを制御する。
【0096】
以下に、変形例2に係る超音波診断装置1Aにて走査条件を変更する場合の動作について、図5を参照しながら説明する。図5は、変形例2に係る超音波診断装置の走査時の動作を示したフローチャートである。本説明では、n回目の走査までは第1の領域に記憶された第1の走査条件に関する制御データで動作し、n+1回目の走査から第2の領域に記憶された第2の走査条件に関する制御データで動作する場合を例に具体的に説明する。
【0097】
(ステップS101、ステップS111)
送受信処理制御部111Aは、システム制御処理部171Aからの送受信処理命令(ステップS171)を受けて、第1の領域1121に記憶された制御データに従い、n回目の走査に係る送受信処理を実施する。送受信処理制御部111Aは、超音波プローブ10から受信したエコー信号を遅延加算処理したうえで、RFデータとして信号処理制御部121に出力する。RFデータの出力処理が完了したら、送受信処理制御部111Aは、システム制御処理部171Aに送受信処理出力完了を通知する。
【0098】
(ステップS172)
システム制御処理部171Aは、送受信処理制御部111Aから送受信処理出力完了が通知されると、送受信処理部11Aの制御データ読み出し領域切替部1131に制御データを読み出す領域として第2の領域を指定した領域指定命令を設定する。
【0099】
(ステップS112)
送受信処理部11Aの制御データ読み出し領域切替部1131は、システム制御処理部171Aからの領域指定命令を受けて、送受信処理制御部111Aが制御パラメータを読み出す領域を第2の領域1122に切替える。あわせて制御データ書き込み領域切替部1132は、制御データ生成部16により制御データが書き込まれる領域を第1の領域1121に切替える。
【0100】
具体的には、システム制御処理部171Aからの領域指定命令により、制御データ読み出し領域切替部1131は、第1の領域1121及び第2の領域1122のいずれか一方の領域に記憶された制御データを読み出し可能に制御する。このとき、制御データ記憶部112への制御データの書き込みは、制御データ書き込み領域切替部1132により他方の領域にのみ書き込み可能に制御される。本制御は第1の実施形態又は変形例1に係る超音波診断装置1における各制御データ領域切替部の制御と同様である。
【0101】
よって、システム制御処理部171Aからの領域指定命令により、送受信処理制御部111Aが制御パラメータを読み出す領域が、n回目の走査に関する処理の完了後に第2の領域1122に変更される。これにより、送受信処理制御部111Aは、n+1回目の走査から設定変更後の新しい走査条件(第2の走査条件)で動作することとなる。
【0102】
(ステップS173)
次に、システム制御処理部171Aは、信号処理制御部121Aに信号処理を指示する信号処理命令を設定する。
【0103】
(ステップS121)
信号処理制御部121Aは、システム制御処理部171Aからの信号処理命令を受けて、第1の領域1221に記憶された制御データに従い、送受信処理制御部111Aが設定したn回目の走査に関するRFデータを信号処理する。信号処理の内容については信号処理制御部121と同様のため説明は省略する。
【0104】
信号処理制御部121Aは、信号処理が完了すると、信号処理後のデータを画像生成制御部131Aに出力する。信号処理後のデータの出力処理が完了したら、信号処理制御部121Aは、システム制御処理部171Aに信号処理出力完了を通知する。
【0105】
(ステップS174)
システム制御処理部171は、信号処理制御部121Aから信号処理出力完了が通知されると、信号処理部12Aの制御データ読み出し領域切替部1231に制御データを読み出す領域として第2の領域を指定した領域指定命令を設定する。
【0106】
(ステップS122)
信号処理部12Aの制御データ読み出し領域切替部1231は、システム制御処理部171Aからの領域指定命令を受けて、信号処理制御部121Aが制御データを読み出す領域を第2の領域1222に切替える。あわせて制御データ書き込み領域切替部1232は、制御データ生成部16により制御データが書き込まれる領域を第1の領域1221に切替える。領域の切替え制御については、送受信処理部11Aの場合と同様のため詳しい説明は省略する。
【0107】
(ステップS175)
次に、システム制御処理部171Aは、画像生成制御部131に超音波画像の生成を指示する画像生成命令を設定する。
【0108】
(ステップS131)
画像生成制御部131Aは、システム制御処理部171からの画像生成命令を受けて、第1の領域1321に記憶された制御データに従い、信号処理制御部121Aから設定されたn回目の走査に関する信号処理後のデータを基に超音波画像を生成する。信号処理後のデータから超音波画像を生成する処理の内容は画像生成制御部131と同様のため説明は省略する。
【0109】
画像生成制御部131Aは、超音波画像の生成の処理が完了すると、生成した画像データを表示部14に出力し表示させる。画像データの出力処理が完了したら、画像生成制御部131Aは、システム制御処理部171に画像生成出力完了を通知する。
【0110】
(ステップS176)
システム制御処理部171は、画像生成制御部131Aから画像生成出力完了応答通知されると、画像生成部13Aの制御データ読み出し領域切替部1331に制御データを読み出す領域として第2の領域を指定した領域指定命令を設定する。
【0111】
(ステップS132)
画像生成部13Aの制御データ読み出し領域切替部1331は、システム制御処理部171Aからの領域指定命令を受けて、画像生成制御部131Aが制御データを読み出す領域を第2の領域1322に切替える。あわせて制御データ書き込み領域切替部1332は、制御データ生成部16により制御データが書き込まれる領域を第1の領域1321に切替える。領域の切替え制御については、送受信処理部11Aの場合と同様のため詳しい説明は省略する。
【0112】
(ステップS176)
システム制御処理部171は、画像生成制御部131Aに領域指定命令を設定した後、n+1回目の走査に係る処理を開始する。
【0113】
これにより、各構成要素の制御部(送受信処理制御部111A、信号処理制御部121A、又は、画像生成制御部131A)がn回目の走査に係る処理の完了後、各領域指定命令により制御データを読み出し領域が第2の領域に変更される。このことから、各構成要素の制御部はn+1回目の走査から設定変更後の新しい走査条件、つまり第2の走査条件で動作することとなる。
【0114】
以上により、変形例2に係る超音波診断装置1Aにおいては、システム制御処理部171により、各構成要素の制御部の動作と各構成要素における領域の切替制御を集中管理することが可能となる。
【0115】
図6は、走査条件の変更を行う際の従来の方式及び新しい方式の処理流れを時間軸上で比較した比較図である。図6からもわかる通り、本発明に係る超音波診断装置における各構成要素の制御部は、走査及び画像生成に関する処理を停止することなく、走査条件変更前の処理(図6の「第1の走査条件での観測」)から走査条件変更後の処理(図6の「第2の走査条件での観測」)に移行することが可能である。このことから、フレームレートや送信フォーカス段数などの走査条件を、超音波診断を中断することなく第1の走査条件から第2の走査条件に変更することが可能となる。
【0116】
なお、上記した第1の実施形態、変形例1、及び、変形例2の説明では、フレームレートや送信フォーカス段数等の走査条件を変更する場合を例に説明したが、走査線の数等の他の走査条件や、Bモードやドップラーモード等の走査モードも同様の方法で変更することが可能である。
【0117】
また、上記した第1の実施形態、変形例1、及び、変形例2の説明では、走査条件を変更するときに領域指定命令を設定する例について説明したが、単に設定変更を通知する命令により各構成要素の動作を制御する構成としても良い。
【0118】
この場合、設定変更を通知する命令により、各構成要素の制御部が制御データを読み出す領域は、現在走査条件を読込んでいる領域から他方の領域(新しい走査条件が記憶された領域)に切替えられるように各制御データ領域切替部が制御される。このとき、制御データが書込まれる領域は、新しい走査条件が記憶された領域とは異なる領域に切替えられるように各制御データ領域切替部が制御されると良い。
【符号の説明】
【0119】
1、1A 超音波診断装置 10 超音波プローブ
11、11A 送受信処理部 111、111A 送受信処理制御部
12、12A 信号処理部 121、121A 信号処理制御部
13、13A 画像生成部 131、131A 画像生成制御部
14 表示部 15 操作部 16 制御データ生成部
17、17A システム制御部 171、171A システム制御処理部
112、122、132、172 制御データ記憶部
1131、1231、1331、1731 制御データ読み出し領域切替部
1132、1232、1332、1732 制御データ書き込み領域切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブを介して被検体に超音波を送信し、前記被検体から反射した超音波エコーを前記超音波プローブを介して受信することで前記被検体の走査を行う送受信処理部と、前記超音波エコー信号を信号処理する信号処理部と、信号処理された前記超音波エコーのデータを基に超音波画像を生成する画像生成部と、前記超音波画像を表示する表示部と、前記各構成要素を走査条件に対応して動作制御するシステム制御部とを備えた超音波診断装置であって、
前記走査条件に対応して前記各構成要素を動作制御するための制御データを生成する制御データ生成部と、
前記構成要素それぞれに設けられ、前記制御データ生成部で生成された制御データを記憶する第1と第2の記憶領域を有する制御データ記憶部と、
前記構成要素それぞれについて、前記第1と第2の記憶領域に対し前記制御データを書き込む領域と前記制御データを読み出す領域を切替え制御する制御データ領域切替部と、
前記制御データ生成部に前記走査条件の変更を指示する操作部とを備え、
前記操作部から走査条件の変更の指示を受けて、前記第1と第2の記憶領域のいずれか一方に前記変更後の走査条件に対応する制御データが書き込まれ、
所定のタイミングで前記制御データ領域切替部が切替え制御され、前記書き込まれた制御データが読み出されることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記所定のタイミングは前記送受信処理部が前記超音波プローブに次の走査を実行させる前、又は、前記信号処理部もしくは前記画像生成部が次の走査に係る最初のデータを処理実行する前であることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記構成要素が、超音波エコー信号を処理したデータに、前記超音波エコー信号を処理したデータを受信する他の構成要素の前記制御データ領域切替部を切替え制御するための制御命令を付帯し、
前記他の構成要素が、超音波エコー信号を処理したデータに、前記超音波エコー信号を処理したデータの転送先である他の構成要素の前記制御データ領域切替部を切替え制御するための制御命令を付帯し、
前記他の構成要素が、前記超音波エコー信号を処理したデータが転送されたときに、前記超音波エコー信号を処理したデータに付帯された制御命令を基に前記他の構成要素の前記制御データ領域切替部を切替え制御することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記構成要素が、超音波エコー信号を処理したデータが転送される他の構成要素の前記制御データ領域切替部を切替え制御するための制御命令を、前記他の構成要素が前記超音波エコー信号を処理したデータが転送される前に、あらかじめ前記他の構成要素に設定し、
前記他の構成要素が、前記制御命令を基に前記他の構成要素の前記制御データ領域切替部を切替え制御することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記システム制御部が、前記構成要素から、他の構成要素への前記超音波エコー信号を処理したデータに関する転送処理の完了通知を受けて、前記構成要素の前記制御データ領域切替部を切替え制御することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−156237(P2011−156237A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21651(P2010−21651)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】