説明

超音波診断装置

【課題】耐水性を備える無線超音波プローブを有する超音波診断装置において、障害物や外部ノイズの影響を低減し、超音波プローブと装置本体との間での無線通信の品質を向上させることができ、適切な撮像を行なうことができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】診断装置本体の第2無線通信部が、前記診断装置本体と通信ケーブルを介して接続された状態で、診断装置本体と分離可能に設けられ、かつ、前記無線超音波プローブに取り付け可能であることにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を送受信することにより生体内の臓器等の撮像を行って、診断のために用いられる超音波診断画像を生成する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、振動子アレイを内蔵した超音波プローブと、この超音波プローブに接続された装置本体とを有しており、超音波プローブから被検体に向けて超音波を送信し、被検体からの超音波エコーを超音波プローブで受信して、その受信信号を装置本体で電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
また、超音波診断装置において、超音波プローブの操作性を向上させるために、超音波プローブと装置本体との間を接続するケーブルの煩わしさを無くし、超音波プローブの操作性を向上させるために、超音波プローブと装置本体との間でのデータの送受信を無線通信によって行なうことが提案されている。
【0004】
超音波プローブと装置本体との間でのデータの送受信を無線通信で行なう場合には、障害物や外部ノイズの影響を受けることが考えられ、撮像する際の通信環境によっては、通信品質が劣化し、適切な撮像を行なうことができないおそれがある。
そのため、超音波プローブと装置本体との間でのデータの送受信を無線通信で行なう際の、通信品質を向上させる方法が種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、超音波を送受波して取得したエコーデータに基づいて送信信号を生成する送信信号生成部と、生成された送信信号を無線送信するアンテナとを有し、アンテナは、その送信方向が互いに異なる複数の方向に向けられること、および、装置本体の無線受信部を、装置本体から分離して設け、柔軟なケーブルを介して装置本体に接続し、超音波プローブから無線送信される信号の送信状態に応じて無線受信部の設置位置を決定することによって、超音波プローブと装置本体との間での無線通信の品質を向上させることが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、装置本体と接続可能なケーブルを有する無線超音波プローブにより、無線通信の品質が悪い場合には、このケーブルを装置本体に接続して、有線にて通信を行なうことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−244580号公報
【特許文献2】特表2010−528698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のように、無線通信をするアンテナの設置位置を変更しても、やはり、障害物や外部ノイズの影響を受ける場合があり、無線通信の品質を向上させることができないおそれがある。
また、超音波診断においては、患者と超音波プローブ間の音響特性を向上させるため、患者に超音波ゼリーを塗って、超音波ゼリーの上から超音波プローブを当てて、超音波プローブによる走査を行なうことが一般的である。このような場合、使用後の超音波プローブは、消毒液による消毒処理を行なう必要があり、超音波プローブには耐水性が要求される。そのため、特許文献2のように、超音波プローブが、装置本体と接続するための露出した電気端子を有することは好ましくない。
【0009】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、耐水性を備える無線通信でデータの送受信を行なう超音波プローブを有する超音波診断装置において、障害物や外部ノイズの影響を低減し、超音波プローブと装置本体との間での無線通信の品質を向上させることができ、適切な撮像を行なうことができる超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、被検体に向けて超音波を送信し、被検体において反射された超音波エコーを受信して受信信号を出力する超音波送受信部、前記超音波送受信部から出力される前記受信信号に対して信号処理を行なって伝送信号を生成する信号処理部、および、無線通信によって前記伝送信号を外部に送信する第1無線通信部を有する無線超音波プローブと、前記第1無線通信部から送信される前記伝送信号を受信する第2無線通信部、および、前記第2無線通信部が受信した前記伝送信号から超音波画像を生成する画像生成部を有する診断装置本体とを備える超音波診断装置であって、前記第2無線通信部が、前記診断装置本体と通信ケーブルを介して接続された状態で、診断装置本体と分離可能に設けられ、かつ、前記無線超音波プローブに取り付け可能であることを特徴とする超音波診断装置を提供する。
【0011】
さらに、前記無線超音波プローブは、露出した電気端子を有さないことが好ましい。
また、前記第2無線通信部は、前記無線超音波プローブへの取り付け位置を決める位置決め手段を有することが好ましい。
また、前記無線超音波プローブは、電源となるバッテリを有し、このバッテリは、無線給電によって充電されることが好ましい。
【0012】
また、前記診断装置本体は、前記無線超音波プローブを収容可能なプローブホルダを有し、このプローブホルダが、前記第2無線通信部を備えることが好ましい。
また、前記診断装置本体のプローブホルダが、前記バッテリへの給電手段を備えることが好ましい。
また、前記第2無線通信部は、前記診断装置本体に取り付け可能に設けられ、前記診断装置本体から取り外した際に、締まる方向に働く締付機構を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記構成を有する本発明の超音波診断装置によれば、超音波診断装置本体側の第2無線通信部が、超音波診断装置本体と信号ケーブルを介して接続された状態で、超音波診断装置本体と分離可能に設けられ、かつ、超音波プローブに取り付け可能であるので、障害物や外部ノイズの影響を低減し、超音波プローブと装置本体との間での無線通信の品質を向上させることができ、適切な撮像を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)および(B)は、本発明の超音波診断装置の一例を概念的に示す図である。
【図2】図1に示す超音波診断装置に用いられる無線超音波プローブの一例を概念的に示すブロック図である。
【図3】図1に示す超音波診断装置の無線通信ユニットを概念的に示す図である。
【図4】(A)は、無線超音波プローブに無線通信ユニットを取り付けた状態の概念的な図であり、(B)は、(A)のB−B線断面図である。
【図5】図1に示す超音波診断装置の無線超音波プローブの構成を表すブロック図である。
【図6】図1に示す超音波診断装置の診断装置本体の構成を表すブロック図である。
【図7】(A)および(B)は、本発明の超音波診断装置の他の一例を概念的に示す図である。
【図8】図7に示す超音波診断装置の一部を概念的に示す図である。
【図9】図7に示す超音波診断装置の無線通信ユニットの形状を概念的に示す図である。
【図10】(A)は、無線通信ユニットが係止部に係止した状態を概念的に示す図であり、(B)は、(A)の側面図である。
【図11】無線通信ユニットを、無線超音波プローブに取り付けた状態を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の超音波診断装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0016】
図1(A)に、本発明の超音波診断装置の一例を概念的に示し、(B)には、(A)に示す超音波診断装置において、無線超音波プローブを無線通信ユニットに取り付けた状態を概念的に示す。
図1(A)に示す超音波診断装置10は、無線超音波プローブ12と、診断装置本体14とを有する。無線超音波プローブ12と診断装置本体14とは、無線超音波プローブ12の第1無線通信部50と、診断装置本体14の第2無線通信部62との無線通信によって接続される。
【0017】
無線超音波プローブ12は、基本的に、公知の無線超音波プローブであり、リニアスキャン方式、コンベックススキャン方式、セクタスキャン方式等いずれの方式の超音波プローブであってもよい。
【0018】
図2に無線超音波プローブ12の構成をブロック図で概念的に示す。
無線超音波プローブ12は、超音波の送受信を行なう振動子ユニット24と、振動子ユニット24が受信した超音波の受信信号を処理する信号処理部26と、無線超音波プローブ12の各部に電力を供給するバッテリ部28と、診断装置本体14との間で無線通信を行なうことにより、信号処理部26が処理した受信信号を診断装置本体14に送信すると共に、診断装置本体14からの各種の制御信号を受信する無線通信部30とを有する。これらの点については後に詳述する。
【0019】
診断装置本体14は、無線超音波プローブ12との間で無線通信を行なうための無線通信部が、診断装置本体と通信ケーブルを介して接続された状態で、診断装置本体と分離可能に設けられている以外は、基本的に、公知の診断装置本体であり、装置本体部16と、装置本体部16に通信ケーブル18を介して接続される無線通信ユニット20とを有している。
無線通信ユニット20は、通常、装置本体部16の所定位置に保持されている。
【0020】
図3に無線通信ユニット20を概念的に示す。また、図4(A)には、無線超音波プローブ12を無線通信ユニット20に取り付けた状態の概念的な図を示し、図4(B)には、図4(A)のB−B線断面図を示す。
図3に示すように、無線通信ユニット20は、破線で示すように、内部に第2無線通信部62を有するユニット本体94と、伸縮可能な弾性材料で形成され、長手方向の両端がユニット本体94に固定された把持部材96とを有する。
図示例においては、ユニット本体94の筺体の一面は、無線超音波プローブ12の筺体の一部の形状に対応した凹部が形成されており、この凹部と把持部材96との間で、無線超音波プローブ12を把持することができる(図4(A)および(B))。
【0021】
このように、本発明の超音波診断装置10は、診断装置本体14の無線通信ユニット20(第2無線通信部62)を、通信ケーブル18を介して装置本体部16と接続された状態で、装置本体部16と分離可能に設けて、かつ、この無線通信ユニット20に無線超音波プローブ12を取り付け可能にした構成を有する。このような構成を有することにより、通常、外部ノイズや障害物の影響が小さく、無線通信の品質に問題がない場合には、図1(A)に示すように、無線超音波プローブと診断装置本体とは、無線通信によってケーブルがない状態で接続されるので、ケーブルの煩わしさがなく、無線超音波プローブの操作性を向上させることができる。
【0022】
また、障害物や外部ノイズがある場合には、無線通信ユニット20に無線超音波プローブ12を取り付けることにより、無線超音波プローブ12の第1無線通信部50と診断装置本体14の第2無線通信部62とを近接させた状態で無線通信を行なうことができるので、障害物や外部ノイズの影響を低減し、無線超音波プローブと診断装置本体との間での無線通信の品質を向上させることができ、適切な撮像を行なうことができる。
また、無線超音波プローブ12と診断装置本体14(無線通信ユニット20)とは、無線通信によって接続されるので、露出した電気端子を設ける必要がなく、耐水性を備える無線超音波プローブとすることができる。
【0023】
次に、図5に示す無線超音波プローブ12の構成を表すブロック図と、図6に示す診断装置本体14の構成を示すブロック図とを用いて、超音波診断装置10の構成について説明を行なう。
無線超音波プローブ12は、振動子ユニット24と、信号処理手段26と、バッテリ部28と、無線通信手段30と、操作スイッチ32とを有する。
【0024】
振動子ユニット24は、超音波の送信および受信を行なうためのものであり、1次元又は2次元のトランスデューサアレイを構成する複数の超音波トランスデューサ34と、駆動信号生成部36と、送信制御部38とを有している。
【0025】
複数の超音波トランスデューサ34は、印加される複数の駆動信号に従って超音波を送信すると共に、伝搬する超音波エコーを受信して複数の受信信号を出力する。各超音波トランスデューサ34は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb(lead) zirconate titanate)に代表される圧電セラミクスや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン:polyvinylidene difluoride)に代表される高分子圧電素子等の圧電性を有する材料(圧電体)の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
【0026】
そのような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮する。この伸縮により、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生し、それらの超音波の合成によって超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することによって伸縮し、電気信号を発生する。それらの電気信号は、超音波の受信信号として、信号処理手段26の受信信号処理部42に出力される。
【0027】
駆動信号生成部36は、例えば、複数の送信回路として複数のパルサを含んでおり、送信制御部38によって選択された送信遅延パターンに基づいて、複数の超音波トランスデューサ34から送信される超音波が被検体内の組織のエリアをカバーする幅広の超音波ビームを形成するように複数の駆動信号の遅延量を調節して複数の超音波トランスデューサ34に供給する。
【0028】
信号処理手段26は、受信制御部40と、複数チャンネルの受信信号処理部42と、パラレル/シリアル変換部44と、メモリ46と、プローブ制御部48とを有している。
【0029】
受信制御部40は、複数チャンネルの受信信号処理部42の動作を制御する。各チャンネルの受信信号処理部42は、対応する超音波トランスデューサ34から出力される受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成し、複素ベースバンド信号をサンプリングすることにより、組織のエリアの情報を含む生データ(サンプルデータ)を生成して、生データをパラレル/シリアル変換部44に供給する。さらに、受信信号処理部42は、複素ベースバンド信号をサンプリングして得られるデータに高能率符号化のためのデータ圧縮処理を施すことにより生データを生成しても良い。データ圧縮処理としては、ランレングス圧縮やハフマン符号化等を用いることができる。
【0030】
パラレル/シリアル変換部44は、複数チャンネルの受信信号処理部42によって生成されたパラレルの生データを、シリアルの生データに変換する。例えば、パラレル/シリアル変換部44は、64個の超音波トランスデューサから出力される64個の受信信号に基づいて得られる複素ベースバンド信号を表す128チャンネルのパラレルの生データを、1つ又は複数のチャンネルのシリアルの生データに変換する。これにより、超音波トランスデューサの数と比較して、伝送チャンネルの数が大幅に低減される。メモリ46は、パラレル/シリアル変換部44によって変換されたシリアルの生データを一時的に格納する。
【0031】
プローブ制御部48は、診断装置本体14から伝送される各種の制御信号に基づいて、無線超音波プローブ12の各部の制御を行う。
【0032】
無線通信手段30は、第1無線通信部50と、通信制御部52とを有している。
第1無線通信部50は、シリアルの生データに基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、伝送信号をアンテナに供給してアンテナから電波を送信することにより、シリアルの生データを送信する。変調方式としては、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)等が用いられる。ASK又はPSKを用いる場合には、1系統で1チャンネルのシリアルデータを伝送することが可能であり、QPSKを用いる場合には、1系統で2チャンネルのシリアルデータを伝送することが可能であり、16QAMを用いる場合には、1系統で4チャンネルのシリアルデータを伝送することが可能である。
【0033】
第1無線通信部50は、診断装置本体14との間で無線通信を行なうことにより、生データを診断装置本体14に送信すると共に、診断装置本体14から各種の制御信号を受信して、受信された制御信号を通信制御部52に出力する。
通信制御部52は、プローブ制御部48によって設定された送信電波強度で生データの送信が行なわれるように第1無線通信部50を制御すると共に、第1無線通信部50が受信した各種の制御信号をプローブ制御部48に出力する。
【0034】
操作スイッチ32は、超音波診断装置をライブモードやフリーズモードに設定するためのスイッチを含んでいる。ライブモード又はフリーズモードの設定信号は、生データと共に伝送信号に含まれて、診断装置本体14に送信される。なお、ライブモードとフリーズモードとの切替は、診断装置本体14において行なわれるようにしても良い。
【0035】
バッテリ部28は、バッテリ制御部54と、電源スイッチ56と、バッテリ58と、受電手段60とを有している。
バッテリ58は、電力を必要とする駆動信号生成部36や受信信号処理部42等の各部に電力を供給する。無線超音波プローブ12には電源スイッチ56が設けられており、バッテリ制御部54は、電源スイッチ56の状態に基づいて、バッテリ58から各部に電力を供給するか否かを制御する。バッテリ58は、受電手段60を用いて充電が可能となっている。
【0036】
以上において、送信制御部38、受信制御部40、パラレル/シリアル変換部44、通信制御部52、プローブ制御部48、及び、バッテリ制御部54等は、FPGA(Field Programmable Gate Array:現場でプログラミング可能なゲートアレイ)等のディジタル回路によって構成しても良いし、中央演算装置(CPU)と、CPUに各種の処理を行なわせるためのソフトウェア(プログラム)とによって構成しても良い。
【0037】
前述のように、図6は、診断装置本体14の構成を表すブロック図である。
診断装置本体14は、第2無線通信部62を有する無線通信ユニット20と、通信制御部64、シリアル/パラレル変換部66、データ格納部68、画像形成部70、表示制御部72、表示部74、操作部76、本体制御部78、電源制御部80、電源スイッチ82、電源部84、および、給電手段86を有する装置本体部16と、無線通信ユニット20と装置本体部16とを接続する通信ケーブル18とを有している。
【0038】
無線通信ユニット20の第2無線通信部62は、無線超音波プローブ12との間で無線通信を行なうことにより、各種の制御信号を無線超音波プローブ12に送信する。また、第2無線通信部62は、アンテナによって受信される信号を復調することにより、シリアルの生データを出力する。
第2無線通信部62は、装置本体部16の通信制御部64、および、シリアル/パラレル変換部66と通信ケーブル18を介して接続されている。
【0039】
装置本体部16の通信制御部64は、本体制御部78によって設定された送信電波強度で各種の制御信号の送信が行なわれるように第2無線通信部62を制御する。
【0040】
シリアル/パラレル変換部66は、第2無線通信部62から出力されるシリアルの生データを、例えば、64個の超音波トランスデューサから出力される受信信号に基づいて得られる64個の複素ベースバンド信号を表す128チャンネルのパラレルの生データに変換する。データ格納部68は、メモリ又はハードディスク等によって構成され、シリアル/パラレル変換部66によって変換された少なくとも1フレーム分の生データを格納する。
【0041】
画像形成部70は、データ格納部68から読み出される1フレーム毎の生データに受信フォーカス処理を施して、超音波診断画像を表す画像信号を生成する。このように、1フレーム毎の生データを取得してから画像信号を生成して動画を表示することにより、フレーム内における画像欠損や送信遅れの影響を防止することができる。画像形成部70は、整相加算部88と、画像処理部90とを含んでいる。
【0042】
整相加算部88は、本体制御部78において設定された受信方向に応じて、予め記憶されている複数の受信遅延パターンの中から1つの受信遅延パターンを選択し、選択された受信遅延パターンに基づいて、サンプルデータによって表される複数の複素ベースバンド信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行なう。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれたベースバンド信号(音線信号)が生成される。
【0043】
画像処理部90は、整相加算部88によって生成される音線信号に基づいて、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。画像処理部90は、STC(sensitivity time control)部と、DSC(digital scan converter:ディジタル・スキャン・コンバータ)とを含んでいる。STC部は、音線信号に対して、超音波の反射位置の深度に応じて、距離による減衰の補正を施す。DSCは、STC部によって補正された音線信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)し、階調処理等の必要な画像処理を施すことにより、Bモード画像信号を生成する。
【0044】
表示制御部72は、画像形成部70によって生成される画像信号に基づいて、表示部74に超音波診断画像を表示させる。表示部74は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部72の制御の下で、超音波画像を表示する。
【0045】
本体制御部78は、操作部76を用いたオペレータの操作に従って、超音波診断装置10の各部を制御する。診断装置本体14には電源スイッチ82が設けられており、電源制御部80は、電源スイッチ82の状態に基づいて、電源部84のオン/オフを制御する。プローブホルダに設けられた給電手段86は、電磁誘導作用によって、無線超音波プローブ12の受電手段60に電力を供給する。
【0046】
以上において、通信制御部64、シリアル/パラレル変換部66、画像形成部70、表示制御部72、本体制御部78、及び、電源制御部80は、中央演算装置(CPU)と、CPUに各種の処理を行なわせるためのソフトウェア(プログラム)とによって構成されるが、それらをディジタル回路で構成しても良い。
【0047】
次に、超音波診断装置10の動作について説明する。
通常、超音波診断を行う場合には、図1(A)に示すように、無線通信ユニット20は、装置本体部16に保持された状態で、無線超音波プローブ12との無線通信が行なわれる。
操作者は、無線超音波プローブ12を被検体の表面に当接する。この状態で、駆動信号生成部36から供給される駆動信号に従って複数のトランスデューサ34から超音波が送信され、被検体からの超音波エコーを受信した各トランスデューサ34から出力された受信信号がそれぞれ対応する受信信号処理部42に供給されてサンプルデータが生成され、パラレル/シリアル変換部44によって変換されたサンプルデータが、第1無線通信部50と第2無線通信部との無線通信により、診断装置本体14へ伝送されて、シリアル/パラレル変換部66によって変換された後、データ格納部68に格納される。さらに、データ格納部68から1フレーム毎のサンプルデータが読み出され、画像形成部70で画像信号が生成され、この画像信号に基づいて表示制御部72により超音波診断画像が表示部74に表示される。
【0048】
ここで、外部ノイズ等の影響により、無線通信の状態が悪い場合には、図1(B)に示すように、無線超音波プローブ12は、無線通信ユニット20に取り付けられ、無線超音波プローブ12の第1無線通信部50と診断装置本体14の第2無線通信部62とを近接させた状態で無線通信を行なう。
操作者は、無線通信ユニット20に、無線超音波プローブ12が取り付けられた状態で、超音波画像の撮像を行なう。データの送受信や処理等については、前述の無線による通常の超音波診断と同様である。
【0049】
このように、本発明の超音波診断装置10は、診断装置本体14の無線通信ユニット20(第2無線通信部62)を、通信ケーブル18を介して装置本体部16と接続された状態で、装置本体部16と分離可能に設けて、かつ、この無線通信ユニット20に無線超音波プローブ12を取り付け可能にした構成を有する。このような構成を有することにより、通常、外部ノイズや障害物の影響が小さく、無線通信の品質に問題がない場合には、図1(A)に示すように、無線超音波プローブと診断装置本体とは、無線通信によってケーブルがない状態で接続されるので、ケーブルの煩わしさがなく、無線超音波プローブの操作性を向上させることができる。
【0050】
また、障害物や外部ノイズがある場合でも、図1(B)に示すように、無線通信ユニット20に無線超音波プローブ12を取り付けることにより、無線超音波プローブ12の第1無線通信部50と、診断装置本体14の第2無線通信部62とを近接させた状態で無線通信を行なうことができるので、障害物や外部ノイズの影響を低減し、無線超音波プローブと診断装置本体との間での無線通信の品質を向上させることができ、適切な撮像を行なうことができる。
また、無線超音波プローブ12と診断装置本体14(無線通信ユニット20)とは、無線通信によって接続されるので、露出した電気端子を設ける必要がなく、耐水性を備える無線超音波プローブとすることができる。
【0051】
図7(A)に、本発明の超音波診断装置の他の一例を概念的に示し、(B)に、(A)に示す超音波診断装置において、無線超音波プローブを無線通信ユニットに取り付けた状態を概念的に示す。
図7(A)に示す超音波診断装置100は、超音波プローブを保持するためのプローブホルダが無線通信ユニットを兼ねる構成を有する。この超音波診断装置100は、無線超音波プローブ102と診断装置本体104とを有している。
なお、図7(A)に示す超音波診断装置100は、図1に示す超音波診断装置10において、無線超音波プローブ12に代えて、凹部102aを有する無線超音波プローブ102を有し、無線通信ユニット20を備える診断装置本体14に代えて、無線通信ユニット108および係止部110を備える診断装置本体104を有する以外は、同じ構成を有するので、同じ部位には、同じ符号を付し、以下の説明は異なる部位を主に行なう。
【0052】
無線超音波プローブ102は、その筺体に凹部102aを有する以外は、無線超音波プローブ12と同様の構成を有するものであり、第1無線通信部50を有し、無線通信によって診断装置本体104と接続される。
凹部102aは、後述する無線通信ユニット108の可動アーム112が係合し、無線超音波プローブ102と無線通信ユニット108とを固定するためのものである。無線超音波プローブ102に凹部102aを形成することにより、無線通信ユニット108との固定を確実なものとすることができる。
【0053】
図8に診断装置本体104の一部を概念的に示す。
診断装置本体104は、装置本体部16と、装置本体部16に通信ケーブル18を介して接続される無線通信ユニット108とを有している。
また、装置本体部16には、無線通信ユニット108を係止するための係止部110が形成されている。係止部110は、直方体の部材で、長手方向の両端面に突起部110aが形成されている。突起部110aは、後述する無線通信ユニット108の可動アーム112の貫通穴112aおよび固定アーム114の貫通穴114aと係合する。
【0054】
無線通信ユニット108は、無線超音波プローブ102との間で無線通信を行なうための第2無線通信部62を内部に有し、装置本体部16と通信ケーブル18を介して接続された状態で、装置本体部16と分離可能に設けられている。また、無線通信ユニット108は、通常、装置本体部16の係止部110に係止され、プローブホルダとして機能する。
【0055】
図9に、無線通信ユニット108の形状を概念的に表す斜視図を示す。
無線通信ユニット108は、開口部108aと、可動アーム112と、固定アーム114とを有する。
開口部108aは、無線超音波プローブ102の一部が挿通可能で、無線超音波プローブ102を保持することができる大きさの貫通穴である。開口部108aを、無線超音波プローブ102を保持することができる大きさの貫通穴とすることにより、無線通信ユニット108を、プローブホルダとして用いることができる。
また、無線通信ユニット108の側面には、開口部108aに貫通するスリットが形成されている。スリットには可動アーム112が配置される。
なお、図示例の開口部108aは、円形としたが、これに限定はされず、無線超音波プローブを保持することができれば、矩形等、種々の形状とすることができる。
【0056】
可動アーム112および固定アーム114は、可動アーム112が、ねじりコイルばねによって固定アーム114の方向に付勢されることにより、締付機構として機能するものである。図8に示すように、可動アーム112は、略中央部分が、開口部108aの形状に応じて湾曲した棒状部材であり、無線通信ユニット108のスリットに配置され、固定アーム114の方向に付勢されることにより、開口部108aを狭める方向に移動する。
可動アーム112が固定アーム114の方向に付勢され、開口部108aを狭める方向に移動することにより、開口部108aに挿通された無線超音波プローブ102の凹部102aに可動アーム112が係合し、無線通信ユニット108、すなわち、プローブホルダに無線超音波プローブ102を取り付けることができる。この取り付け構成は、図1に示す超音波診断装置10にも利用可能である。
【0057】
また、可動アーム112および固定アーム114の先端部には、係止部110の突起部110aに係合するための貫通穴112aおよび114aが、それぞれ、設けられている。
可動アーム112を開閉することにより、無線通信ユニット108の、係止部110への取り付け/取り外し、および、無線超音波プローブ102への取り付け/取り外しを行なうことができる。
【0058】
図10(A)に、無線通信ユニット108を係止部110に係止した状態で診断装置本体104上面から見た概略図を示し、図10(B)に、図10(A)の側面図を示す。
図10(A)および図10(B)に示すように、可動アーム112の貫通穴112aおよび固定アーム114の貫通穴114aと、係止部110の突起部110aとが係合することにより、無線通信ユニット108は、装置本体部16に固定され、無線超音波プローブ102を保持するためのプローブホルダとして機能する。
【0059】
一方、図11に、無線通信ユニット108に、無線超音波プローブ102を取り付けた状態で、超音波の送受信側(振動子ユニット24側)とは反対側(無線通信手段30に近い側)から見た概念図を示す。図11においては、固定アーム112と凹部102aとの係合状態を示すために、無線通信ユニット108の一部の図示を省略している。
図11に示すように、無線超音波プローブ102を、無線通信ユニット108の開口部108aに挿通した状態で、無線通信ユニット108の可動アーム112が、無線超音波プローブ102の凹部102aに係合することにより、無線通信ユニット108と無線超音波プローブ102とが固定される。
【0060】
このように、本発明の超音波診断装置100は、診断装置本体14のプローブホルダの内部に第2無線通信部62を配置して、このプローブホルダを、装置本体部16と分離可能な無線通信ユニット108とし、この無線通信ユニット108に無線超音波プローブ102を取り付け可能にした構成を有する。このような構成を有することにより、通常、外部ノイズや障害物の影響が小さく、無線通信の品質に問題がない場合には、図7(A)に示すように、無線超音波プローブと診断装置本体とは、無線通信によってケーブルがない状態で接続されるので、ケーブルの煩わしさがなく、無線超音波プローブの操作性を向上させることができる。
【0061】
また、障害物や外部ノイズがある場合には、図7(B)に示すように、無線通信ユニット108に無線超音波プローブ102を取り付けることにより、無線超音波プローブ102の第1無線通信部50と、診断装置本体104の第2無線通信部62とを近接させた状態で無線通信を行なうことができるので、障害物や外部ノイズの影響を低減し、無線超音波プローブと診断装置本体との間での無線通信の品質を向上させることができ、適切な撮像を行なうことができる。
また、無線超音波プローブ102と診断装置本体104(無線通信ユニット108)とは、無線通信によって接続されるので、露出した電気端子を設ける必要がなく、耐水性を備える無線超音波プローブとすることができる。
【0062】
ここで、無線通信ユニット108は、プローブホルダとしての機能も有するので、その内部に給電手段86を配置してもよい。給電手段86は、電磁誘導作用によって、無線超音波プローブの受電手段に電力を供給するもの等、公知の無線の給電手段を用いることができる。
【0063】
また、図示例においては、無線通信ユニット108が、可動アームおよび固定アームからなる締付機構を有することにより、無線超音波プローブ102への取り付けを可能にしたが、本発明はこれに限定はされず、無線超音波プローブへ取り付けることができれば、種々の固定方法を利用することができる。
【0064】
以上、本発明の超音波診断装置について説明したが、本発明は、上記実施例に限定はされず、本発明を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行なってもよいのは、もちろんである。
【0065】
例えば、超音波診断装置は、通信ケーブルの巻取り手段を有していてもよい。巻取り手段は、自動で通信ケーブルを巻き取るものであってもよく、手動で通信ケーブルを巻き取るものであってよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、超音波を送受信することにより生体内の臓器等の撮像を行って、診断のために用いられる超音波診断画像を生成する超音波診断装置において利用することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
10、100 超音波診断装置
12、102 無線超音波プローブ
14、104 診断装置本体
16 装置本体部
18 通信ケーブル
20、108 無線通信ユニット
24 振動子ユニット
26 信号処理手段
28 バッテリ部
30 無線通信手段
32 操作スイッチ
34 超音波トランスデューサ
36 駆動信号生成部
38 送信制御部
40 受信制御部
42 受信信号処理部
44 パラレル/シリアル変換部
46 メモリ
48 プローブ制御部
50 第1無線通信部
52 通信制御部
54 バッテリ制御部
56 電源スイッチ
58 バッテリ
60 受電手段
62 第2無線通信部
64 通信制御部
66 シリアル/パラレル変換部
68 データ格納部
70 画像形成部
72 表示制御部
74 表示部
76 操作部
78 本体制御部
80 電源制御部
82 電源スイッチ
84 電源部
86 給電手段
88 整相加算部
90 画像処理部
94 ユニット本体
96 把持部材
102a 凹部
108a 開口部
110 係止部
110a 突起部
112 可動アーム
112a、114a 貫通穴
114 固定アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に向けて超音波を送信し、被検体において反射された超音波エコーを受信して受信信号を出力する超音波送受信部、前記超音波送受信部から出力される前記受信信号に対して信号処理を行なって伝送信号を生成する信号処理部、および、無線通信によって前記伝送信号を外部に送信する第1無線通信部を有する無線超音波プローブと、
前記第1無線通信部から送信される前記伝送信号を受信する第2無線通信部、および、前記第2無線通信部が受信した前記伝送信号から超音波画像を生成する画像生成部を有する診断装置本体とを備える超音波診断装置であって、
前記第2無線通信部が、前記診断装置本体と通信ケーブルを介して接続された状態で、診断装置本体と分離可能に設けられ、かつ、前記無線超音波プローブに取り付け可能であることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記無線超音波プローブは、露出した電気端子を有さない請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記第2無線通信部は、前記無線超音波プローブへの取り付け位置を決める位置決め手段を有する請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記無線超音波プローブは、電源となるバッテリを有し、このバッテリは、無線給電によって充電される請求項1〜3のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記診断装置本体は、前記無線超音波プローブを収容可能なプローブホルダを有し、このプローブホルダが、前記第2無線通信部を備える請求項1〜4のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記診断装置本体のプローブホルダが、前記バッテリへの給電手段を備える請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記第2無線通信部は、前記診断装置本体に取り付け可能に設けられ、前記診断装置本体から取り外した際に、締まる方向に働く締付機構を有する請求項1〜6のいずれかに記載の超音波診断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−95934(P2012−95934A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248160(P2010−248160)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】