説明

超音波診断装置

【課題】チャネル間のクロストークの抑制。
【解決手段】複数の振動子13は、超音波を送受信する。複数の送信回路Txは、複数の振動子13を駆動するための駆動信号を発生する。複数の受信回路Rxは、複数の振動子13からの電気信号を信号処理する。伝送系統は、複数の振動子13にそれぞれ対応する複数のチャネルChを有する。チャネルCh各々は、送信回路Txと振動子13と受信回路Rxとを接続する。抵抗部は、複数のチャネルChにそれぞれ分岐接続された複数の抵抗モジュールRmを有する。抵抗モジュールRm各々は、チャネルCh各々の電気抵抗値を抵抗値HIGHと抵抗値LOWとの間で切替可能に構成される。送信制御回路211は、複数の伝送路Chの電気抵抗値を抵抗値HIGHと抵抗値LOWとの間で個別に切替えるために複数の抵抗モジュールRmを個別に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波パルス反射法により、体表から生体内の軟組織の断層像を無侵襲に得る医療用画像機器である。この超音波診断装置は、他の医療用画像機器に比べ、小型で安価、X線などの被爆がなく安全性が高い、血流イメージングが可能等の特長を有し、心臓、腹部、泌尿器、および産婦人科などで広く利用されている。
【0003】
また、近年、造影剤を生体に投与し、そのバブルの非線形応答を検出して映像化を行うコントラストハーモニックイメージング法が造影剤の開発とともに臨床検査において使われるようになってきている。造影剤は、超音波の送信周波数に対して、主に二次高調波成分を大きく発生する。コントラストハーモニックイメージング法は、この様な造影剤の特性を利用して、高調波成分を選択的に映像化するものである。
【0004】
コントラストハーモニックイメージング法において、高調波成分を検出するための手法が幾つか存在する。その一つとして、複数回の送受信で送信の基本波を除去するパルスインバージョンと呼ばれる手法がある。この手法は、例えば、各走査線につき、超音波送信音圧を相対的に0.5、1.0、0.5のレベルに設定して、3回の超音波送受信を行う。送信音圧が1.0である受信エコーの波形から送信音圧が0.5である二つの受信エコーの波形を差し引くと、基本波成分はゼロになるが、高調波成分はゼロにはならない。これは、送信音圧の違いにより造影剤からの応答が非線形となり、高調波成分として検出されるからである。パルスインバージョンは、この様に検出される高調波成分(主に二次高調波成分)を用いて、各ビーム毎の反射エコーを再構成して映像化する手法である。
【0005】
ところで、超音波送信音圧の相対的なレベル設定(上記例では、0.5、1.0、0.5のレベル設定)は、例えば送信電源電圧を送受信レート毎に切り替えることで実現できる。しかしながら、この方法では、送信電圧精度を確保するための電圧制御が難しい場合がある。このため、近年では、振動子の送信開口を半分にし、相対的に焦点音圧を0.5とする方法が採用されている。この方法は、例えば送信開口を10素子としたとき、送信回路を振動子に対して1素子毎に送信する/しないチャネルを割り付け、送信音圧を1.0とする場合には10素子全てを送信に利用し、送信音圧を0.5とする場合には一つおきの5素子を送信に利用するものである。これにより、同じ開口で0.5と1.0の送信音圧を発生することができる。
【0006】
図9は、従来の送信回路の構成の一例を示した図である。図9に示すように、送信回路は、通常、FETなどのスイッチングデバイスを電源から出力に対して接続し、これをON/OFFすることで電源電圧に相当する送信波形を振動子に供給する。また、送信回路は、正負の電源を備え、正負それぞれの電源に対して同じようにスイッチングデバイスを接続し、交互にONすることで正負の波形を出力することができる。また、図10に示すように、トランス結合で1次側の巻き線を逆接続してそれぞれの巻き線側にスイッチングデバイスを接続し、スイッチングデバイスを交互にONすれば、片側電源で正負の波形を送信することができる。なお、図10では、デュアルパルサとしての送信回路を例示した。図10に示す送信回路は、通常、Bモードとカラーモードの際、交互に切り替えて使用される。
【0007】
しかしながら、従来の超音波診断装置においては、例えば次のような問題がある。例えば、図9に示した従来の送信回路は、スイッチングデバイスをONする期間は出力が電源とショート状態となる。出力端側から見た出力インピーダンスは低く、ほぼスイッチングデバイスのON抵抗で決まる値になる。一方、スイッチングデバイスがOFFの状態の時には、出力端側から見た出力インピーダンスは非常に高い値になっている。このため、図9に示す従来の送信回路を使って、送信開口を交互に送信する/しないと選択して0.5の送信音圧を発生する場合、送信回路から振動子までの伝送路上の浮遊電流に起因して、送信するチャネルからのクロストークが発生する。このクロストークにより、本来は送信しないにもかかわらず、送信しないチャネルから微弱送信がされることがある。この微弱送信により、送信音圧を0.5にすることができず、従って送信音圧が1.0の受信エコー波形と引き算をしてもゼロとすることができない。その結果、微弱送信に起因する信号が造影剤バブルからの二次高調波成分以外のエコーとして検出され、ノイズやバブル以外の組織の消え残りとして画像に描出されてしまうという欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
目的は、チャネル間のクロストークを抑制することができる超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係る超音波診断装置は、超音波を送受信する複数の振動子と、前記複数の振動子を駆動するための駆動信号を発生する複数の送信回路と、前記複数の振動子からの電気信号を信号処理するための複数の受信回路と、前記複数の振動子にそれぞれ対応する複数の伝送路を有する伝送系統であって、前記伝送路各々は、前記送信回路と前記振動子と前記受信回路とを接続する伝送系統と、前記複数の伝送路にそれぞれ分岐接続された複数の抵抗モジュールを有する抵抗部であって、前記抵抗モジュール各々は、前記伝送路各々の電気抵抗値を第1抵抗値と前記第1抵抗値よりも低い第2抵抗値との間で切替可能に構成される抵抗部と、前記複数の伝送路の電気抵抗値を前記第1抵抗値と前記第2抵抗値との間で個別に切替えるために前記複数の抵抗モジュールを個別に制御する制御回路と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図。
【図2】図1の送信部と超音波プローブ(振動子)と受信部との間の接続関係を模式的に示す図。
【図3】本実施形態の実施例1に係る送信部と抵抗部との詳細な構成を示す図。
【図4】実施例1に係る1チャネル分の送信回路と抵抗モジュールとの具体的な構造の一例を示す図。
【図5】図4に示される送信回路の出力信号のタイミングチャートを示す図。
【図6】図3の送信制御回路から出力される、一回の送受信レートにおけるスイッチ信号のタイミングチャートを示す図。
【図7】本実施形態の実施例2に係る送信部と抵抗部との詳細な構成を示す図。
【図8】実施例2に係る1チャネル分の送信回路と抵抗モジュールとの具体的な構造の一例を示す図。
【図9】従来技術を説明するための図。
【図10】従来技術を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる超音波診断装置を説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1の構成を示す図である。図1に示すように、超音波診断装置1は、超音波プローブ10とコンピュータ装置20とを有している。コンピュータ装置20は、送信部21、受信部22、Bモード処理部23、ドプラ処理部24、シネメモリ25、画像処理部26、表示処理部27、内部記憶部28、入力部29、表示部30、及びシステム制御部31を備えている。
【0013】
超音波プローブ10は、プローブヘッドを有している。プローブヘッドの先端側には、振動子アレイが内蔵されている。振動子アレイは、一次元状または2次元状に配列された複数の振動子を有している。プローブヘッドの基部には、プローブケーブルが取り付けられている。プローブケーブルの先端には、プローブコネクタが取り付けられている。プローブコネクタは、コンピュータ装置20に装着される。プローブコネクタがコンピュータ装置20に装着されている状態において、超音波プローブ10とコンピュータ装置20との間で種々の電気信号の送受信が行われる。
【0014】
振動子は、超音波の送受信を行う。具体的には、振動子は、送信部21からプローブケーブルを介して振動子駆動信号の印加を受ける。振動子駆動信号の印加を受けて振動子は、超音波を送信し、被検体により反射された超音波を受信し、受信された超音波に応じたエコー信号を発生する。発生されたエコー信号は、プローブケーブルを介して受信部22に供給される。エコー信号の振幅は、反射された不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、移動している血流や心臓壁等の移動体の表面で超音波が反射された場合、エコー信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向の速度成分に依存した周波数偏移を受ける。
【0015】
送信部21は、システム制御部31による制御に従って、超音波プローブ10に内蔵されている複数の振動子に振動子駆動信号を供給する。この送信部21の構成については、後で詳しく説明する。
【0016】
受信部22は、図示していないアンプ回路、A/D変換器、遅延回路、及び加算器等を有している。アンプ回路は、超音波プローブ10を介して取り込まれたエコー信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅されたアナログのエコー信号をデジタルエコー信号に変換する。遅延回路は、デジタル変換されたエコー信号に対し受信指向性を決定し、受信ダイナミックフォーカスを行うのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。また、受信部22は、パルスインバージョンにおける信号加算処理や信号減算処理を実行する。
【0017】
Bモード処理部23は、受信部22からのエコー信号に対数増幅や包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるBモードデータを生成する。
【0018】
ドプラ処理部24は、受信部22からのエコー信号に自己相関演算を施し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度や分散、パワー等の血流情報の強度をカラーで表現するドプラデータを発生する。
【0019】
シネメモリ25は、Bモード処理部23からのBモードデータやドプラ処理部24からのドプラデータをフレーム毎に一時記憶する。
【0020】
画像処理部26は、Bモード処理部23あるいはドプラ処理部24から受け取ったデータを用いて、超音波走査線上のデータであるRAWデータを生成する。また、画像処理部26は、RAWデータにRAW−ピクセル変換を施すことにより、ピクセルから構成される画像データを生成する。あるいは、画像処理部26は、RAWデータにRAW−ボクセル変換を施すことにより、ボクセルから構成されるボリュームデータを生成する。さらに、画像処理部26は、ボリュームデータに対して、ボリュームレンダリング、多断面変換表示(MPR:multi planar reconstruction)、最大値投影表示(MIP:maximum intensity projection)等の所定の画像処理を行う。なお、ノイズ低減や画像の繋がりを良くすることを目的として、画像処理部26の後に二次元的なフィルタを挿入し、空間的なスムージングを行うようにしてもよい。
【0021】
表示処理部27は、画像処理部26において生成・処理された各種画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、γカーブ補正、RGB変換等の各種を実行する。
【0022】
表示部28は、表示処理部27からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や血流情報を画像として表示する。
【0023】
内部記憶部29は、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件、画像処理プログラム、その他のデータ群が保管されている。
【0024】
入力部30は、ユーザからの各種指令や情報入力をシステム制御部31に入力する。具体的には、入力部30は、超音波走査の開始指示や終了指示を入力する。入力デバイスとしては、キーボード、マウス、各種ボタン、タッチパネル等が適宜利用可能である。
【0025】
システム制御部31は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち超音波診断装置1の動作を制御する。特に、システム制御部31は、後述する送信動作に関する制御を実行する。
【0026】
以下、本実施形態に係る超音波診断装置1の詳細について説明する。超音波診断装置1は、超音波送信に利用する伝送路から超音波送信に利用しない伝送路へのクロストークを抑制するために、伝送路の抵抗値(インピーダンス値)を切替え可能な仕組みを有している。
【0027】
まず、図2を参照しながら、送信部21と振動子13と受信部22との間の接続関係を模式的に示す図である。図2に示すように、コンピュータ装置20には、送信部21、抵抗部41、分岐部43、インターフェース部45、及び受信部22が設けられている。また、超音波プローブ10には、振動子アレイ11が設けられている。振動子アレイ11は、複数の振動子13を有している。さらに、超音波プローブ10には、プローブケーブル15とプローブコネクタ17とが設けられている。
【0028】
送信部21は、複数の送信回路Txを搭載しており、受信部22は、複数の受信回路Rxを搭載している。送信回路Txと受信回路Rxと振動子13との個数は同数(例えば、n個)である。すなわち、複数の振動子13の各々について送信回路Txと受信回路Rxとが設けられている。送信回路Tx、振動子13、及び受信回路Rxは、インターフェース部45にプローブコネクタ15が装着された状態において、伝送路(以下、チャネルと呼ぶことにする。)Chを介して個別に電気的に接続されている。分岐部43は、送信部21とインターフェース部45との間に設けられている。分岐部43は、送信回路Txと同数の複数の分岐点431を有している。分岐点341は、送信回路Txとインターフェース部45との間の伝送路Chと、受信回路Rxとインターフェース部45との間の伝送路Chとの交差点である。
【0029】
ここで、送信回路Rxと分岐点431との間のチャネルChを送信側チャネルTChと呼び、受信回路Rxと分岐点431との間のチャネルChを受信側チャネルRChと呼び、分岐点431とインターフェース部45との間のチャネルChを共有チャネルJChと呼び、プローブコネクタ17と振動子13との間のチャネルChをプローブチャネルPChと呼ぶことにする。なお、複数の共有チャネルJChと複数のプローブチャネルPChとは、インターフェース部45にプローブコネクタ15が装着された状態において、個別に接続される。すなわち、インターフェース部45にプローブコネクタ15が装着された状態において、送信側チャネルTCh、受信側チャネルRCh、共有チャネルJCh、及びプローブチャネルPChは、一本のチャネルChを構成する。
【0030】
送信回路Txは、振動子13を駆動するための駆動信号(振動子駆動信号)を発生する。発生された振動子駆動信号は、送信側チャネルTCh、共有チャネルJCh、及びプローブチャネルPChを経由して振動子13に印加される。振動子駆動信号の印加を受けた振動子13は、超音波を発生する。被検体により反射された超音波は、振動子13によりエコー信号に変換される。エコー信号は、プローブチャネルPCh、共有チャネルJCh、及び受信側チャネルRChを経由して受信回路Rxに供給される。なお本実施形態において、振動子13への振動子駆動信号の供給から受信回路Rxによるエコー信号の受信までの動作単位を、送受信レートと呼ぶことにする。
【0031】
詳細は後述するが、送信回路Txは、送信制御回路の制御に従って、個別に振動子駆動信号を発生可能である。例えば、ある送受信レートにおいて、奇数番チャネルの送信回路Txは振動子駆動信号を発生し、偶数番チャネルの送信回路Txは振動子駆動信号を発生しない。送信回路Txは、送受信レート毎に交互に振動子駆動信号の発生の実行と停止とを繰り返すことができる。これにより、超音波送信に利用するチャネルから超音波送信に利用しないチャネルへのクロストークが発生してしまう。クロストークの発生により超音波送信に利用しないチャネルから微弱な超音波が発生され、超音波の強度分布に悪影響を与える。また、クロストークに起因する浮遊電流が受信回路に流入することもある。この場合、受信回路内のアンプ回路により浮遊電流が増幅されてしまう。受信回路のアンプ回路の増幅度は、比較的高いので、浮遊電流により画質が激しく劣化してしまう。なお、超音波送信に利用するチャネルとは、振動子駆動信号を発生する送信回路Rxが属するチャネルである。反対に、超音波送信に利用しないチャネルとは、振動子駆動信号を発生しない送信回路Rxが属するチャネルである。すなわち、振動子駆動信号を発生しない送信回路Rxが属するチャネルであるが、浮遊電流の影響により超音波送信に寄与したチャネルは、超音波送信に利用するチャネルには属さず、超音波送信に利用しないチャネルに属するものとする。なお、単一のチャネルにおいて、超音波送信に利用するか、あるいは、超音波送信に利用しないかは、送受信レート毎に切替え可能である。
【0032】
本実施形態に係る超音波診断装置1においては、送信側チャネルTCh、受信側チャネルRCh、共有チャネルJCh、及びプローブチャネルPChの何れかに抵抗部41が設けられている。図2においては、例示のため、抵抗部41は、送信部21と分岐部43との間に設けられている。抵抗部41は、複数のチャネルChにそれぞれ分岐接続されている複数の抵抗モジュールRmを有している。抵抗モジュールRmは、チャネルChの出力抵抗値(インピーダンス値)を第1抵抗値と第2抵抗値との間で切替可能な回路部品である。なお、第2抵抗値は、第1抵抗値よりも高いものとする。以下、わかりやすさのため、第1抵抗値を抵抗値LOWと呼び、第2抵抗値を抵抗値HIGHと呼ぶことにする。抵抗モジュールRmは、後述の送信制御回路による制御に従って、伝送路の電気抵抗値を抵抗値LOWから抵抗値HIGH、あるいは、抵抗値HIGHから抵抗値LOWに切替える。抵抗モジュールRmは、個別に電気抵抗値を切替えることができる。
【0033】
このように、本実施形態に係る超音波診断装置1は、抵抗部41を搭載することにより、超音波送信に利用するチャネルから超音波送信に利用しないチャネルへのクロストークの抑制を実現している。
【0034】
以下、送信部21と抵抗部41との詳細を実施例1と実施例2とに分けて説明する。なお、以下の説明を具体的に行うため、抵抗部41は、送信部21と分岐部43との間の送信側チャネルTChに設けられているとする。なお、以下、説明の簡単のため送信側チャネルTCh、受信側チャネルRch、共有チャネルJCh、及びプローブチャネルPChを区別せずにチャネルChと呼ぶことにする。
【0035】
[実施例1]
図3は、実施例1に係る送信部21と抵抗部41との詳細な構成を示す図である。なお、図3では、第0チャネルCh0〜第2チャネルCh2、第nチャネルChn分の構成のみが例示されている。もちろん、なお、他のチャネルChについても第0〜第2チャネル及び第nチャネルと同様の構成を有している。なお、nは、振動子13の数に対応する。例えば、nは、64や128、256である。しかしながら、nは、それ以外の任意の値であっても良い。図4は、1チャネルCh分の送信回路Txと抵抗モジュールRmとの具体的な構造の一例を示す図である。
【0036】
図3に示すように、送信部21は、送信制御回路211と複数の送信回路Txとを有している。送信制御回路211と複数の送信回路Txとは、複数のチャネルChを介して個別に接続されている。送信回路Txの出力側のチャネルChには、抵抗モジュールRmが分岐接続されている。送信制御回路211と複数の抵抗モジュールRmとは、後述するスイッチ信号のための複数の信号線RCを介して個別に接続されている。
【0037】
また、送信部21には、送信電源213が設けられている。送信電源TxVは、複数の送信回路Txのための電力を発生する。送信電源213と複数の送信回路Txとは、送信電源213からの電圧TxVを有する電力が複数の送信回路Txに分電供給可能に電力供給路VCを介して接続されている。なお、電圧TxVは任意の値に変更可能である。
【0038】
送信制御回路211は、複数の送信回路Txと複数の抵抗モジュールRmとを制御する。具体的には、送信制御回路211は、複数の送信回路Txに対してチャネル選択制御、波形生成、及び遅延制御を実行し、複数の抵抗モジュールRmに対して抵抗制御を実行する。
【0039】
チャネル選択制御において、送信制御回路211は、複数のチャネルChのうちの、超音波送信に利用するチャネルChを選択する。チャネルの選択は、振動子13の駆動パターンに応じて送受信レート毎に行われる。具体的には、複数のチャネルChの中から送信開口に属するチャネルChが選択される。送信開口は、1回の超音波送信において同時に駆動する複数の振動子13の集合である。例えば、所定回数の送受信レートおきに送信開口が1振動子ずつずれるように、送受信レート毎に送信開口に属する振動子13が選択される。また、送信制御回路211は、超音波送信に利用するチャネルとして、奇数番のチャネルと偶数番のチャネルとを送受信レート毎に交互に選択してもよい。また、送信開口に属する振動子に限定して、奇数番のチャネルと偶数番のチャネルとを送受信レート毎に交互に選択してもよい。これにより、例えば、送信開口が6チャネルで1つの送信回路の送信音圧が1.0の場合、1回の超音波送信において3チャネルの送信回路が送信に利用され、6チャネル分の送信回路の平均送信音圧を0.5とすることができる。
【0040】
波形生成において、送信制御回路211は、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信回路Txを駆動するための駆動信号(送信回路駆動信号)を繰り返し発生する。遅延制御において、送信制御回路211は、チャネルCh毎に、超音波のフォーカス位置を決定するための遅延時間を送信回路駆動信号に与える。遅延時間が与えられた送信回路駆動信号は、チャネル選択制御において選択された送信回路Tx、すなわち、超音波送信に利用される送信回路Txに入力される。送信回路駆動信号の供給を受けて送信回路Txは、送信回路駆動信号に応じた振動子駆動信号を発生する。
【0041】
図4に示すように、送信回路Txは、所定の送信波形を有する振動子駆動信号の生成のため、2つのFET(電界効果トランジスタ:field effect transistor)型のスイッチ215と2つの送信電源213とを有している。例えば、送信回路Txは、Pチャネル型のFETスイッチ215pとNチャネル型のFETスイッチ215nとを有している。FETスイッチ215pには、電圧+TxVを発生する電源213pが接続され、FETスイッチ215nには、電圧−TxVを発生する電源213nが接続されている。送信制御回路211からFETスイッチ215pのゲートに電圧(送信回路駆動信号)が印加されることにより、電圧+TxVに対応する電流がドレインからソースへ流れ、チャネルChへ流れる。送信制御回路211からFETスイッチ215nのゲートに電圧(送信回路駆動信号)が印加されることにより、電圧−TxVに対応する電流がソースからドレインへ流れ、チャネルChへ流れる。送信制御回路211は、送信回路Txが既定の送信波形を有する振動子駆動信号を発生するように、既定のタイミングでFETスイッチ215pのゲートとFETスイッチ215nのゲートとに順番に電圧(送信回路駆動信号)を印加する。
【0042】
図5は、送信回路Txの出力信号のタイミングチャートを示す図である。図5の(a)は、Pチャンネル型のFETスイッチ215pへの電圧、図5の(b)は、Nチャンネル型のFETスイッチ215nへの電圧,図5の(c)は、送信回路Txからの出力信号(振動子駆動信号)を示す。図5の(a)と図5の(b)とに示すように、FETスイッチ215pとFETスイッチ215nとには、互いにタイミングをずらして電圧が印加される。FETスイッチ215pからは、電圧印加に応答して、電圧+TxVに対応する電流が流れ、FETスイッチ215nからは、電圧印加に応答して、電圧−TxVに対応する電流が流れる。電圧+TxVに対応する電流と電圧−TxVに対応する電流とは、図4に示されるFETスイッチ215pとFETスイッチ215nとの接続点P1において加算され、振動子駆動信号が生成される。結果的に、振動子駆動信号の波形は、図5の(c)に示すような方形波を有している。
【0043】
このように、FETスイッチ215のゲートに電圧が印加されている期間、すなわち、FETスイッチ215がONの期間、チャネルChの出力は、電源213とショート状態になっている。この場合、送信回路Txの出力端側からみた出力インピーダンスは、比較的低く、FETスイッチ215のON抵抗で決まる値に略等しい。一方、FETスイッチ215のゲートに電圧が印加されていない期間、すなわち、FETスイッチ215がOFFの期間、チャネルChの出力は、電源213とショート状態になっていない。この場合、送信回路Txの出力端側からみた出力インピーダンスは、非常に高い。
【0044】
抵抗制御において、送信制御回路Txは、複数のチャネルChの出力抵抗値を抵抗値HIGHと抵抗値LOWとの間で切替えるように抵抗モジュールRmを個別に制御する。
【0045】
図4に示すように、抵抗モジュールRmは、チャネルChに分岐接続されている。抵抗モジュールRmは、信号線SL1、抵抗器R1、及び開閉器(以下、抵抗スイッチと呼ぶことにする。)W1を有している。信号線SL1の一端部E1は、チャネルChに分岐接続されている。信号線SL1の他の一端部E2は、GND電位またはDC(direct current)電位に接続されている。GND電位の場合、一端部E2は、アース端子に接続される。DC電位の場合、一端部E2は、DC電源に接続される。一端部E2がGND電位に接続されるか、DC電位に接続されるかは、電圧+TxVと電圧−TxVとの値に応じて決められる。例えば、電圧+TxVと電圧−TxVとの中間値が0の場合、一端部E2は、GND電位に接続される。電圧+TxVと電圧−TxVとの中間値が0でない場合、一端部E2は、DC電位に接続される。信号線SL1の一端部E1と一端部E2との間には、抵抗器R1が直列で接続されている。抵抗器R1は、比較的小さな電気抵抗値を有している。抵抗器R1の電気抵抗値としては、例えば、50Ωが挙げられる。なお、抵抗器R1は、ダンピング抵抗であっても、シャント回路の抵抗であっても良い。抵抗器R1と一端部E2との間には、抵抗スイッチW1が直列で接続されている。抵抗スイッチW1は、抵抗器R1とチャネルChとの間の接続を開閉可能な電気素子である。抵抗スイッチW1は、送信制御回路211からのスイッチ信号に従って、抵抗器R1とチャネルChとの間の接続を開いたり、閉じたりする。
【0046】
次に、送信部21と抵抗部41との動作例について説明する。ここで以下の説明を具体的に行うため、送信制御回路211は、偶数番チャネルChの送信回路Txと奇数番チャネルChの送信回路Txとに対して送受信レート毎に交互に送信回路駆動信号を供給する。偶数番チャネルを超音波送信に利用するチャネル、奇数番チャネルを超音波送信に利用しないチャネルであるとする。
【0047】
図6は、送信制御回路211から出力される、一回の送受信レートにおけるスイッチ信号のタイミングチャートを示す図である。図6の(a)は、Pチャンネル型のFETスイッチ215pへの電圧、図5の(b)は、Nチャンネル型のFETスイッチ215nへの電圧,図5の(c)は、送信回路Txからの出力信号(振動子駆動信号)を示す。さらに、図6の(d)は、超音波送信に利用するチャネルChの抵抗モジュールRmへのスイッチ信号を示し、図6の(e)は、超音波送信に利用しないチャネルChの抵抗モジュールRmへのスイッチ信号を示す。図6の(a)、(b)、及び(c)に示すように、送信制御回路211は、送信回路Txが既定の波形を有する振動子駆動信号を発生するように、既定のタイミングでFETスイッチ215pのゲートとFETスイッチ215nのゲートとに順番に電圧(送信回路駆動信号)を印加する。また、送信制御回路211は、図6の(d)に示すように、超音波送信に利用するチャネルChの抵抗スイッチRmに、抵抗スイッチRmを開くためのスイッチ信号(OFF信号)を供給する。抵抗スイッチRmが開く場合、チャネルChの電気抵抗値は、FETスイッチ215と電源213とがショート状態となり、且つチャネルChと一端部E2との接続が遮断されているので、非常に小さくなる。
【0048】
一方、送信制御回路211は、超音波送信に利用しないチャネルChの送信回路Txには送信回路駆動信号を印加しない。また、送信制御回路211は、図6の(e)に示すように、超音波送信に利用するチャネルの抵抗スイッチRmに、抵抗スイッチRmを閉じるためのスイッチ信号(ON信号)を供給する。抵抗スイッチRmが閉じる場合、チャネルChの電気抵抗値は、チャネルChと一端部E2とが導通されるので、抵抗器R1の電気抵抗値と略同一となり、抵抗スイッチRmを開いている場合の電気的抵抗値に比して非常に小さい値となる。従って、抵抗スイッチRmを開いている場合に比して、超音波送信に利用するチャネルChの電気抵抗値と超音波送信に利用しないチャネルChの電気抵抗値との差、すなわち、超音波送信に利用するチャネルChの電圧と超音波送信に利用しないチャネルChの電圧との差を小さくすることができる。結果的に、超音波送信に利用するチャネルChから超音波送信に利用しないチャネルChへのクロストークを抑制することができる。
【0049】
なお、上述の説明においては、本実施形態に係る抵抗スイッチRmの動作パターンとして、超音波送信に利用しないチャネルChの抵抗スイッチRmのみを閉じるとした。しかしながら、本実施形態に係る抵抗スイッチRmの動作パターンは、これに限定されない。送信制御回路211は、映像モードの種類に応じて、抵抗スイッチRmの動作パターンを切替えることができる。具体的には、送信制御回路211は、映像モードの種類と抵抗スイッチRmの動作パターンの種類とを対応づけて記憶している。送信制御回路211は、映像モードが決定された場合、決定された映像モードに対応づけられた動作パターンで複数の抵抗モジュールRmを動作する。このように送信制御回路211は、映像モードの種類に応じて、複数のチャネルChの電気抵抗値を抵抗値LOWと抵抗値HIGHとで切替えることができる。以下に、映像モードの種類に応じた抵抗スイッチRmの動作パターンについて説明する。
【0050】
映像モードとして、エコー信号に含まれる基本波成分と高調波成分との両方を利用する通常のモードの他に、高調波成分のみを利用するハーモニックイメージングモードが知られている。ハーモニックモードには、生体組織に由来するエコー信号の高調波成分を利用する組織ハーモニックイメージングモードや、超音波造影剤の微小気泡に由来するエコー信号の高調波成分を利用するコントラストハーモニックイメージングモードが知られている。
【0051】
映像モードがコントラストハーモニックモードの場合、電源215の電圧は数ボルト程度に設定される。この場合、超音波送信に利用しないチャネルChの抵抗スイッチRmと超音波送信に利用するチャネルChの抵抗スイッチRmとの両方が閉じている場合であっても、超音波送信に利用しないチャネルChの電圧と超音波送信に利用するチャネルChの電圧とは、電源215の電圧が数百ボルトの場合(例えば、通常のBモード)に比して、比較的近い値を有している。従って、コントラストハーモニックモードの場合、送信制御回路211は、超音波送信に利用しないチャネルChの抵抗スイッチRmだけでなく、超音波送信に利用するチャネルChの抵抗スイッチRmも閉じてもよい。これにより、超音波送信に利用するチャネルChから超音波送信に利用しないチャネルChへのクロストークを、超音波送信に利用するチャネルChの抵抗スイッチRmと超音波送信に利用しないチャネルChの抵抗スイッチRmとを互い違いに動作することなく、抑制することができる。この場合、全てのチャネルChの抵抗スイッチRmに対して同一種類のスイッチ信号を供給すれば良いので、超音波送信に利用するチャネルChの抵抗スイッチRmと超音波送信に利用しないチャネルChの抵抗スイッチRmとに異なる種類のスイッチ信号を供給する場合に比して、回路構成が簡単となる。なお、この場合、超音波送信に利用するチャネルChの電力損失は、抵抗スイッチRmを開く場合に比して大きくなる。しかしながら、上述のように、コントラストハーモニックモードにおける電源215の電圧は、比較的に低いので、電力に対する影響は低い。なお、コントラストハーモニックモードであっても、送信制御回路211は、超音波送信に利用しないチャネルChの抵抗スイッチRmを閉じ、超音波送信に利用するチャネルChの抵抗スイッチRmを開いても良い。
【0052】
映像モードが基本波成分と高調波成分との両方を利用する通常のモードの場合、上述のように、電源215の電圧は数十〜数百ボルト程度に設定される。この場合、超音波送信に利用しないチャネルChの抵抗スイッチRmと超音波送信に利用するチャネルChの抵抗スイッチRmとの両方が閉じている場合、超音波送信に利用しないチャネルChの電圧と超音波送信に利用するチャネルChの電圧とは、大きく乖離している。従って、通常のモードの場合、送信制御回路211は、超音波送信に利用しないチャネルChの抵抗スイッチRmを閉じ、超音波送信に利用するチャネルChの抵抗スイッチRmも開く。これにより、上述のように、超音波送信に利用するチャネルChから超音波送信に利用しないチャネルChへのクロストークを、超音波送信に利用するチャネルChの抵抗スイッチRmと超音波送信に利用しないチャネルChの抵抗スイッチRmとを互い違いに動作することで、抑制することができる。
【0053】
[実施例2]
上述のように、実施例1に係る送信部21は、一つの振動子13に一つの送信回路Txを有しているとした。実施例2に係る送信部21は、一つの振動子13に二つの送信回路TxA及びTxBを有している。以下、実施例2に係る超音波診断装置について説明する。なお以下の説明において、実施例1と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0054】
図7は、実施例2に係る送信部21と抵抗部41との詳細な構成を示す図である。なお、図7では、第0チャネルCh0〜第2チャネルCh2、第nチャネルChn分の構成のみが例示されている。もちろん、なお、他のチャネルChについても第0〜第2チャネル及び第nチャネルと同様の構成を有している。
【0055】
図7に示すように、実施例2に係る送信部21は、送信制御回路217と複数の送信回路Txとを有している。各送信回路TXは、独立した制御系統で動作する2つの送信回路TxA及び送信回路TxBを有している。送信回路TxAと送信回路TxBとの両方は、チャネルCh毎に設けられている。送信回路TxAと送信回路TxBとは、デュアルパルサとしての機能を有している。また、送信電源213は、独立して駆動する送信電源213Aと送信電源213Bとを有している。送信回路TxAは送信電源213Aに接続され、送信回路TxBは送信電源213Bに接続されている。送信電源213Aと送信電源213Bとは、互いに異なる電圧に対応する電力を発生する。送信電源213Aは、送信電源213Aからの電力が複数の送信回路TxAに分電供給可能に電力供給路VCAを介して接続されている。同様に、送信電源213Bは、送信電源213Bからの電力が複数の送信回路TxBに分電供給可能に電力供給路VCBを介して接続されている。ここで、本実施形態では、送信電源213Aは電圧TxVAを有する電力を供給し、送信電源213Bは電圧TxVBを有する電力を供給する。なお、電圧TxVAや電圧TxVBは任意の値に変更可能である。
【0056】
送信制御回路217は、複数の送信回路TxA及びTxBと複数の抵抗モジュールRmとを制御する。具体的には、送信制御回路217は、複数の送信回路TxA及びTxBに対してチャネル選択制御、波形生成、遅延制御、及びイネーブル制御を実行し、複数の抵抗モジュールRmに対して抵抗制御を実行する。
【0057】
チャネル選択制御において、送信制御回路217は、複数のチャネルChのうちの、超音波送信に利用するチャネルChを選択する。波形生成において、送信制御回路217は、送信回路TxA及びTxBを駆動するための送信回路駆動信号を繰り返し発生する。遅延制御において、送信制御回路217は、チャネルCh毎に、超音波のフォーカス位置を決定するための遅延時間を送信回路駆動信号に与える。遅延時間が与えられた送信回路駆動信号は、チャネル選択制御において選択されたチャネルChに属する送信回路TxA及び送信回路TxBに入力される。
【0058】
イネーブル制御において、送信制御回路217は、イネーブル信号を送信回路TxAと送信回路TxBとの両方に供給する。イネーブル信号は、ハイレベル(High)又はローレベル(Low)の種別によって、送信回路TxA及び送信回路TxBのいずれを送信用に駆動させるかを選択制御するための信号である。イネーブル信号の種類は、全チャネルCh又は所定数チャネルCh毎に共通である。送信回路TxAと送信回路TxBとの何れか一方の入力端子には、送信回路TxAと送信回路TxBとの何れか一方が選択的に駆動するように、反転ゲートIVが設けられている。図7においては、送信回路Aに反転ゲートIVが設けられている。送信回路TxAと送信回路TxBとは、イネーブル信号を入力すると、ハイレベル又はローレベルの種別に応じて排他的に動作し、所定のタイミングで駆動信号を振動子13に供給する。
【0059】
ここで、説明を簡単にするため、ローレベルのイネーブル信号は、送信用として送信回路TxAを選択するための信号であるとし、ハイレベルのイネーブル信号は、送信用として送信回路TxBを選択するための信号であるとする。この場合、送信制御回路217からローレベルのイネーブル信号が送信回路TxAと送信回路TxBとの両方に入力されると、送信回路TxAが選択的に駆動される。そして、送信回路TxAは、送信制御回路217からの送信回路駆動信号の供給を受け、電圧TxVAに応じた送信波形を有する振動子駆動信号を出力する。反対に、送信制御回路217からハイレベルのイネーブル信号が送信回路TxAと送信回路TxBとの両方に入力されると、送信回路TxBが選択的に駆動される。そして、送信回路TxBは、送信制御回路217からの送信回路駆動信号の供給を受け、電圧TxVBに応じた送信波形を有する振動子駆動信号を出力する。振動子駆動信号は、振動子13に供給される。振動子駆動信号の供給を受けた振動子13は、振動子駆動信号に応じた強度の超音波を発生する。
【0060】
デュアルパルサ型の送信回路Txは、例えば、異なる送信電圧が要求されるBモード用の超音波送信とカラードプラモード用の超音波送信とを互い違いに実行する場合に利用される。Bモードにおいては、高分解能化のために短い送信パルス且つ高い送信電圧で超音波送信が実行され、カラードプラモードにおいて、感度確保のために、長いパルス列の送信パルスで超音波送信が実行される。この場合、例えば、電圧TxVAは100V程度の高い電圧に設定され、電圧TxVBは60V程度の低い電圧に設定される。送信制御回路217は、Bモード送信を実行する送受信レートにおいて、ローレベルのイネーブル信号を送信回路TxAと送信回路TxBとに供給し、送信回路TxAから振動子駆動信号を振動子13に供給することで、Bモード用の超音波送信を実行する。送信制御回路217は、ドプラモード送信を実行する送受信レートにおいて、ハイレベルのイネーブル信号を送信回路TxAと送信回路TxBとに供給し、送信回路TxBから振動子駆動信号を振動子13に供給することで、ドプラモード用の超音波送信を実行する。これにより、Bモードとドプラモードとの両方に適した波数や電圧で超音波送信を実行することができる。
【0061】
抵抗制御において、送信制御回路217は、チャネルChの出力抵抗値を抵抗値HIGHと抵抗値LOWとの間で切替えるように抵抗モジュールRmを個別に制御する。実施例2に係る抵抗制御は、実施例1に係る抵抗制御と同様の方法により実行される。すなわち、まず、送信制御回路217は、映像モードの種類に応じて抵抗モジュールRmの抵抗スイッチの動作パターンを選択する。そして、送信制御回路217は、選択された動作パターンに従って抵抗スイッチW1の開閉を制御する。例えば、送信制御回路217は、超音波送信に利用するチャネルChの抵抗スイッチを開き、超音波送信に利用しないチャネルChの抵抗スイッチを閉じる。これにより、超音波送信に利用するチャネルChから超音波送信に利用しないチャネルChへのクロストークを抑制することができる。
【0062】
図8は、実施例2に係る1チャネルCh分の送信回路Txと抵抗モジュールRmとの具体的な構造の一例を示す図である。
【0063】
図8に示すように、送信回路Txは、変圧器型の構造を有している。具体的には、送信回路TxAは電源213Aを有し、送信回路TxBは電源213Bを有している。電源213Aと一次巻き線L2及び一次巻き線L3とは、電源213Aからの電力を分電供給するための信号線を介して接続されている。一次巻き線L2と一次巻き線L3とは、逆接続されている。一次巻き線L2側の信号線には開閉器W1が設けられ、一次巻き線L3側の信号線には開閉器W2が設けられている。同様に、電源213Bと一次巻き線L4及び一次巻き線L5とは、電源213Bからの電力を分電供給するための信号線を介して接続されている。一次巻き線L4と一次巻き線L5とは、逆接続されている。一次巻き線L4側の信号線には開閉器W3が設けられ、一次巻き線L5側の信号線には開閉器W4が設けられている。鉄心ICを挟んで一次巻き線L2、L3、L4、及びL5の反対側には、二次巻き線L1が設けられている。二次巻き線L1には、チャネルChを介して振動子13に接続されている。また、チャネルChには、抵抗モジュールRmが分岐接続されている。
【0064】
例えば、イネーブル制御において送信回路TxAが選択された場合、開閉器W1と開閉器W2とを交互に開閉すると、電圧+TxVAに応じた誘導起電力が二次巻き線L1に発生する。そして、この誘導起電力に応じた電流(振動子駆動信号)がチャネルChを介して振動子13に供給される。同様に、イネーブル制御において送信回路TxBが選択された場合、開閉器W3と開閉器W4とを交互に開閉すると、電圧+TxVBに応じた誘導起電力が二次巻き線L1に発生する。そして、この誘導起電力に応じた電流(振動子駆動信号)が二次巻き線L1からチャネルChを介して振動子13に供給される。
【0065】
送信制御回路217は、図6に示すタイミングと同様のタイミングで、超音波送信に利用しないチャネルChの抵抗スイッチRmにスイッチ信号(OFF信号)を、超音波送信に利用するチャネルChの抵抗スイッチRmにスイッチ信号(ON信号)を供給することにより、超音波送信に利用しないチャネルChの抵抗スイッチRmを閉じ、超音波送信に利用するチャネルChの抵抗スイッチRmを開く。これにより、超音波送信に利用するチャネルChから超音波送信に利用しないチャネルChへのクロストークを抑制することができる。また、送信制御回路217は、例えば、コントラストハーモニックモードの場合、超音波送信に利用しないチャネルChの抵抗スイッチRmだけでなく、超音波送信に利用するチャネルChの抵抗スイッチRmも閉じてもよい。これにより、超音波送信に利用するチャネルChから超音波送信に利用しないチャネルChへのクロストークを、超音波送信に利用するチャネルChの抵抗スイッチRmと超音波送信に利用しないチャネルChの抵抗スイッチRmとを互い違いに動作することなく、抑制することができる。
【0066】
なお、電圧TxVAと電圧TxVBとは、略同一の電圧に設定されてもよい。この場合、例えば、奇数番チャネルChの送信回路TxAに送信電源213Aを接続し、偶数番チャネルChの送信回路TxBに送信電源213Bが接続されると良い。これにより、各送信電源213A,213Bに接続される送信回路の個数を、上述の場合に比して、半分にすることができる。従って、各送信電源213A,213Bの電流容量を低減することができる。
【0067】
以上で、実施例1及び実施例2の説明を終了する。
【0068】
なお、上述の説明において、抵抗モジュールは、送信回路と分岐点との間の送信側チャネルに分岐接続されるとした。しかしながら、上述のように、抵抗モジュールは、基板構成等に応じて、分岐点とインターフェース部との間の共有チャネル、プローブコネクタと振動子との間のプローブチャネル、または、受信回路と分岐点との間の受信側チャネルに分岐接続されてもよい。例えば、送信回路の後段に高圧スイッチを設け、複数の振動子を切り替え接続する装置においては、高圧スイッチの2次側(振動子接続側)に抵抗モジュールを接続してもよい。また、ダイオード等で送信回路と受信回路とを分離可能な構成の場合、受信側チャネルに抵抗モジュールを設けても良い。
【0069】
上記の説明の通り、本実施形態に係る超音波診断装置1は、複数の振動子13、複数の送信回路Tx、複数の受信回路Rx、伝送系統、抵抗部41、及び送信制御回路211,217を搭載している。複数の振動子13は、超音波を送受信する。複数の送信回路Txは、複数の振動子13を駆動するための駆動信号を発生する。複数の受信回路Rxは、複数の振動子13からの電気信号を信号処理する。伝送系統は、複数の振動子13にそれぞれ対応する複数のチャネルChを有する。チャネルCh各々は、送信回路Txと振動子13と受信回路Rxとを接続する。抵抗部41は、複数のチャネルChにそれぞれ分岐接続された複数の抵抗モジュールRmを有する。抵抗モジュールRm各々は、チャネルCh各々の電気抵抗値を抵抗値HIGHと抵抗値LOWとの間で切替可能に構成される。送信制御回路211,217は、複数の伝送路Chの電気抵抗値を抵抗値HIGHと抵抗値LOWとの間で個別に切替えるために複数の抵抗モジュールRmを個別に制御する。
【0070】
上記構成により、超音波診断装置1は、超音波送信に利用するチャネルChから超音波送信に利用しないチャネルChへのクロストークを低減することができる。従って、超音波送信に利用しなりチャネルChを流れる浮遊電流を抑制することができ、浮遊電流に起因する微弱な超音波の送信を抑制することができる。従って、画質を向上させることができる。特に、パルスインバーションを利用したハーモニックコントラストモードの場合、送信音圧1.0のエコー信号から送信音圧0.5の2つのエコー信号を減算すると略ゼロにすることができる。その結果、ハーモニックコントラストモードによる画像の画質にノイズが含まれず、画質が向上する。また、上記構成により、振動子駆動信号に同期して発生する定常的なノイズを抑制することができるので、超音波診断装置1は、アーチファクトの少ない画像を生成でき、診断能を向上することができる。
【0071】
かくして本実施形態によれば、チャネル間のクロストークを抑制することができる超音波診断装置を提供することが可能となる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0073】
1…超音波診断装置、10…超音波プローブ、20…コンピュータ装置、21…送信部、22…受信部、23…Bモード処理部、24…ドプラ処理部、25…シネメモリ、26…画像処理部、27…表示処理部、28…表示部、29…内部記憶部、30…入力部、31…システム制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信する複数の振動子と、
前記複数の振動子を駆動するための駆動信号を発生する複数の送信回路と、
前記複数の振動子からの電気信号を信号処理するための複数の受信回路と、
前記複数の振動子にそれぞれ対応する複数の伝送路を有する伝送系統であって、前記伝送路各々は、前記送信回路と前記振動子と前記受信回路とを接続する伝送系統と、
前記複数の伝送路にそれぞれ分岐接続された複数の抵抗モジュールを有する抵抗部であって、前記抵抗モジュール各々は、前記伝送路各々の電気抵抗値を第1抵抗値と前記第1抵抗値よりも低い第2抵抗値との間で切替可能に構成される抵抗部と、
前記複数の伝送路の電気抵抗値を前記第1抵抗値と前記第2抵抗値との間で個別に切替えるために前記複数の抵抗モジュールを個別に制御する制御回路と、
を具備する超音波診断装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記複数の伝送路のうちの超音波送信に利用する伝送路の電気抵抗値を前記第1抵抗値に切替え、前記複数の伝送路のうちの超音波送信に利用しない伝送路の電気抵抗値を前記第2抵抗値に切替える、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記抵抗モジュール各々は、
前記伝送路に分岐接続された一端と、接地され又は電圧源に接続された他端とを有する信号線と、
前記信号線に直列で接続される抵抗器と、
前記抵抗器と前記他端との間、または、前記抵抗器と前記一端との間において前記信号線に直列で接続された開閉器と、有する、
請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記第1抵抗値に切替える場合、前記開閉器を開き、前記第2抵抗値に切替える場合、前記開閉器を閉じる、請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記制御回路は、映像モードの種類に応じて、前記開閉器の動作パターンを切替える、請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記制御回路は、前記映像モードが前記エコー信号の高調波成分を利用するモードの場合、前記複数の伝送路の全て、または、前記複数の伝送路のうちの所定の伝送路の電気抵抗値を前記第2抵抗値に切替える、請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記抵抗器は、ダンピング抵抗またはシャント抵抗である、請求項3記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−52154(P2013−52154A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193243(P2011−193243)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】