超音波診断装置
【課題】超音波プローブを被検体に装着可能にすること。
【解決手段】実施形態の超音波診断装置は、超音波プローブと、処理装置とを備える。超音波プローブは、被検体に接着することを目的として接触する接触面が前記被検体の突起部と嵌合可能な形状に形成される。例えば、超音波プローブは、被検体の突起部である骨の間に嵌合可能な形状に形成される。処理装置は、前記被検体に装着された前記超音波プローブから当該被検体に対して送信された超音波の反射波信号を処理する。
【解決手段】実施形態の超音波診断装置は、超音波プローブと、処理装置とを備える。超音波プローブは、被検体に接着することを目的として接触する接触面が前記被検体の突起部と嵌合可能な形状に形成される。例えば、超音波プローブは、被検体の突起部である骨の間に嵌合可能な形状に形成される。処理装置は、前記被検体に装着された前記超音波プローブから当該被検体に対して送信された超音波の反射波信号を処理する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波診断装置は、X線診断装置やX線コンピュータ断層撮影装置などの他の医用画像診断装置に比べ、簡便な操作性、被爆のおそれがない非侵襲性などの利点を備えた装置として、今日の医療において、心臓、肝臓、腎臓、乳腺など、様々な生体組織の検査や診断に利用されている。例えば、超音波診断装置は、医師等の操作者によって超音波プローブを被検体に押し当てた場合に、かかる超音波プローブから送信した超音波が被検体の内部組織で反射された反射波信号を受信することによって、被検体内の組織構造の画像である超音波画像を生成する。このため、超音波診断装置は、操作者によって超音波プローブが押し当てられる部位に応じて、異なる組織の超音波画像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−132664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、被検体に装着可能な超音波プローブを有する超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の超音波診断装置は、超音波プローブと、処理装置とを備える。超音波プローブは、被検体に接着することを目的として接触する接触面が前記被検体の突起部と嵌合可能な形状に形成される。処理装置は、前記被検体に装着された前記超音波プローブから当該被検体に対して送信された超音波の反射波信号を処理する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る診断システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る診断装置の外観を模式的に示す図である。
【図3】図3は、被検体Pに装着された第1の実施形態に係る超音波プローブの外観を模式的に示す図である。
【図4】図4は、図3のA1矢視による超音波プローブを示す外観拡大図である。
【図5】図5は、図3のA2矢視による超音波プローブを示す外観拡大図である。
【図6】図6は、図5のI1−I1線における超音波プローブを示す断面図である。
【図7】図7は、肋間に固定される超音波プローブの状態を模式的に示す図である。
【図8】図8は、第1の実施形態に係る2次元超音波プローブを示す外観拡大図である。
【図9】図9は、第1の実施形態に係る装置本体の構成例を示す図である。
【図10】図10は、第1の実施形態に係る診断装置による処理手順を示すフローチャートである。
【図11】図11は、変形例1に係る超音波プローブを示す外観拡大図である。
【図12】図12は、図11のI2−I2線における超音波プローブを示す断面図である。
【図13】図13は、被検体に固定された変形例1に係る超音波プローブを示す外観図である。
【図14】図14は、変形例2に係る超音波プローブを示す外観拡大図である。
【図15】図15は、図14のI3−I3線における超音波プローブを示す断面図である。
【図16】図16は、変形例3に係る超音波プローブを示す断面図である。
【図17】図17は、実施形態に係る診断装置によって実施される運動負荷心エコー検査の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1の実施形態)
まず、図1を用いて、第1の実施形態に係る診断システムについて説明する。図1は、第1の実施形態に係る診断システムの構成例を示す図である。図1に例示するように、第1の実施形態に係る診断システムには、一つの態様として、個人宅にいる被検体Pに装着される診断装置1と、被検体Pの個人宅に設置される無線ルータ等のアクセスポイント11と、病院に設置されるサーバ装置12とが含まれる。アクセスポイント11とサーバ装置12とは、ネットワーク10を介して通信可能である。例えば、アクセスポイント11とサーバ装置12とは、VPN(Virtual Private Network)等のセキュリティが確保された回線を介して相互に通信を行う。
【0008】
診断装置1は、被検体Pによって携帯されるホルター心電計と一体化された携帯可能な超音波診断装置であり、アクセスポイント11と無線通信を行う。具体的には、診断装置1は、装置本体100と、被検体Pに固定可能な薄型の超音波プローブ101とを有する。装置本体100は、被検体Pが日常生活を送っている中で定期的に心電図(ECG:Electrocardiogram)の記録を行うとともに、超音波プローブ101から被検体Pに送信された超音波の反射波信号から超音波画像を生成する。さらに、装置本体100は、これらの心電図や超音波画像を定期的にアクセスポイント11に送信することで、ネットワーク10を介してサーバ装置12に心電図や超音波画像を送信する。
【0009】
サーバ装置12は、患者である被検体毎に、被検体に関する個人情報、被検体から得られた心電図や超音波画像等の各種医用データを記憶する。第1の実施形態におけるサーバ装置12は、装置本体100から定期的に送信される心電図や超音波画像を受け付けることにより、日常生活を送っている被検体Pから得られた心電図や超音波画像を蓄積する。これにより、病院内の医師等は、携帯端末やパーソナルコンピュータを用いてサーバ装置12にアクセスすることにより、個人宅にいる被検体Pから得られた心電図や超音波画像を確認することが可能となる。
【0010】
ここで、第1の実施形態における装置本体100は、被検体Pから定期的に測定する心電図を解析する。そして、装置本体100は、心電図解析の結果、被検体Pの異常を検知した場合に、超音波プローブ101に超音波を送信させることで被検体Pの超音波画像を生成する。すなわち、装置本体100は、心電図を用いた解析により被検体Pに異常のおそれがある場合に、即座に超音波プローブ101により被検体Pをスキャンすることで超音波画像を生成する。そして、装置本体100は、超音波画像を生成するたびに、異常検知時の心電図とともに超音波画像をサーバ装置12に送信する。これにより、第1の実施形態に係る診断装置1は、被検体Pに異常のおそれがある場合に、心電図だけでなく超音波画像を用いた診察を可能にする。一般に、心電図は、被検体P内に流れる微小電気信号から得られるので、被検体Pの体位変化に伴って心電図の波形が変化したり、体動により心電図の波形にノイズが発生する場合がある。第1の実施形態における診断装置1は、心電図及び超音波画像を用いた複合的な診察を可能にするので、被検体Pの体位変化や体動に伴って心電図の波形が乱れる場合であっても、医師による診断精度を向上させることができる。
【0011】
以下に、上述した診断装置1についてより詳細に説明する。以下では、まず、上記の複合的な診察を可能にする超音波プローブ101について説明し、次に、装置本体100の構成及び処理手順について説明する。なお、第1の実施形態では、診断装置1が、被検体Pの心電図を定期的に記録するとともに、異常検知時に被検体Pの胸部(例えば、心臓)の超音波画像を生成する例について説明する。ただし、診断装置1は、胸部以外の他の部位(例えば、腹部等)の超音波画像を生成してもよい。
【0012】
図2は、第1の実施形態に係る診断装置1の外観を模式的に示す図である。図2に示すように、第1の実施形態に係る診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101と、ホルター心電計プローブ111とを有する。
【0013】
装置本体100と超音波プローブ101とはケーブル102によって電気通信可能に接続され、装置本体100とホルター心電計プローブ111とはケーブル112によって電気通信可能に接続される。ケーブル102及びケーブル112は、折り曲げることが可能な部材であり、例えば、ゴム等の絶縁体により覆われた金属線である。
【0014】
ホルター心電計プローブ111は、粘着パッド等により被検体Pの体表に固定されており、被検体P内から微小電気信号を検出することにより心電図データを取得する。超音波プローブ101は、被検体Pに接着することを目的として接触する接触面が被検体Pの突起部(肋骨等)と嵌合可能な形状に形成される。この超音波プローブ101は、被検体Pに超音波を送信し、かかる超音波が被検体P内で反射された反射波信号を受信する。装置本体100は、被検体Pに装着された超音波プローブ101から被検体Pに対して送信された超音波の反射波信号を処理する処理装置である。具体的には、装置本体100は、ホルター心電計プローブ111によって取得された心電図データを受け付けるとともに、超音波プローブ101によって受信された反射波信号を用いて超音波画像を生成する。
【0015】
このような診断装置1は、被検体Pに装着可能に形成されることで、日常生活を送っている被検体Pから心電図データや超音波画像を得ることができる。特に、第1の実施形態に係る超音波プローブ101は、厚さの薄い平板状に形成されることで、被検体Pに固定されることを可能にする。
【0016】
図3〜図5を用いて、第1の実施形態に係る超音波プローブ101の形状について説明する。図3は、被検体Pに装着された第1の実施形態に係る超音波プローブ101の外観を模式的に示す図である。なお、図3では、超音波プローブ101が装着された被検体Pの側面を見た例を示す。
【0017】
図3に示した例では、超音波プローブ101は、被検体Pの胸部近傍の体表に装着され、被検体Pの腰部近傍に装着された装置本体100とケーブル102を介して接続される。かかる超音波プローブ101は、固定用ベルトや粘着パッド等によって被検体Pに固定される。例えば、図1に例示した被検体Pのように、超音波プローブ101は、体表に密着する弾性体である固定用ベルトにより被検体Pに固定される。また、例えば、超音波プローブ101は、粘着性を有する粘着パッドが塗布されることで、かかる粘着パッドを介して被検体Pに固定される。このような超音波プローブ101は、被検体Pに固定された状態であっても被検体Pの動きを妨害しにくい形状となるように、医師等が超音波プローブ101を保持するための凸状のグリップを有しない。この点について図4及び図5を用いて説明する。
【0018】
図4及び図5は、第1の実施形態に係る超音波プローブ101を示す外観拡大図である。図4は、図3のA1矢視による超音波プローブ101を示す外観拡大図であり、図5は、図3のA2矢視による超音波プローブ101を示す外観拡大図である。
【0019】
図4及び図5に示すように、超音波プローブ101は、平板状の中空である外装ケース103を有する。図4及び図5に示した例では、外装ケース103は、略直方体の形状をなしており、例えば合成樹脂等により形成される。具体的には、外装ケース103は、図4に示した状態において、上下の面が一定の面積を有するのに対して、高さ方向の大きさである厚さが薄く形成される。なお、外装ケース103は、直方体における12個の辺が丸みを帯びた形状に形成される。
【0020】
また、図5に示すように、超音波プローブ101は、被検体Pと接触させられる外装ケース103の面である接触面104に開口部が形成され、かかる開口部に音響レンズ105が設けられる。音響レンズ105は、後述する圧電素子107から発生する超音波を収束させる。この点について図6を用いて説明する。
【0021】
図6は、図5のI1−I1線における超音波プローブ101を示す断面図である。図6に示すように、第1の実施形態に係る超音波プローブ101の外装ケース103は、接触面104に音響レンズ105の下面と略同一の形状の孔である開口部104aが形成される。そして、音響レンズ105は、かかる開口部104aに固定される。言い換えれば、音響レンズ105は、被検体Pの突起部である骨等の間に嵌合可能な凸形状に形成された湾曲部が外装ケース103上に配置されることとなる。
【0022】
また、超音波プローブ101は、外装ケース103の接触面104を上面とした場合に、音響レンズ105から外装ケース103の下面方向に、音響整合層106、圧電素子107、バッキング材108が積層される。音響レンズ105は、上記の通り超音波を収束させる。音響整合層106は、圧電素子107と被検体Pとの間との音響インピーダンスの不整合を緩和する。
【0023】
圧電素子107は、フレキシブルケーブル等の電極109によりケーブル102と接続され、かかる電極109を介して装置本体100との間で電気信号を送受信する。かかる圧電素子107は、装置本体100から供給される送信信号に基づき超音波を発生し、被検体Pからの反射波信号を受信する。具体的には、第1の実施形態における圧電素子107は、外装ケース103の略厚み方向F1に超音波を発生する。なお、ここでは図示していないが、圧電素子107は、複数の圧電素子から構成されており、圧電素子それぞれが、超音波を発生し、反射波信号を受信する。図6に示した例では、複数の圧電振動子が一列で配置されているものとする。したがって、上述してきた超音波プローブ101は、1次元超音波プローブに該当する。バッキング材108は、圧電素子107から後方(外装ケース103の下面方向)への超音波の伝播を防止する。
【0024】
例えば、超音波プローブ101から被検体に超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体の体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ101が有する圧電素子107にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。送信された超音波パルスが移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。そして、超音波プローブ101によって受信された反射波信号は、ケーブル102を介して装置本体100に送信される。装置本体100は、超音波プローブ101から受け付けた反射波信号を用いて、被検体Pの超音波画像を生成する。
【0025】
このように、第1の実施形態における超音波プローブ101は、図3〜図6に示した例のように、平板状の外装ケース103を有し、さらに、被検体Pと接触させられる外装ケース103の接触面104に音響レンズ105が設けられ、かかる音響レンズ105を介して外装ケース103の略厚み方向F1に発射される超音波を発生する圧電素子107を外装ケース103の内部に有する。かかる超音波プローブ101は、厚さが薄く、かつ、平板形状であるので、被検体Pに固定されやすく、また、被検体Pに固定された状態であっても被検体Pの動きを妨害しにくい。
【0026】
なお、上述した超音波プローブ101から発射される超音波は、被検体P内の骨等で略全反射される。このため、心臓の超音波画像を生成することを望む場合であっても、超音波プローブ101と撮影対象の心臓との間に骨が位置すると、超音波画像に描出されない可能性がある。したがって、上記の実施形態のように被検体Pの胸部の超音波画像を生成する場合には、超音波プローブ101から発射される超音波が被検体Pの肋骨を避けて心臓等に到達することが望ましい。そこで、上述した超音波プローブ101の音響レンズ105は、被検体Pの肋間に沿った凸形状であることが望ましい。この点について図7を用いて説明する。
【0027】
図7は、肋間に固定される超音波プローブ101の状態を模式的に示す図である。なお、図7では、音響レンズ105の形状を明示するために、音響レンズ105が被検体Pの肋間に直接嵌合されているようにみえる状態を示したが、実際には、超音波プローブ101は、被検体Pの体表に接着されており、肋骨に直接接触しない。図6に示した例のように、音響レンズ105は、外装ケース103の接触面104から離れる方向に湾曲した凸状に形成される。ここで、音響レンズ105は、図7に示した例のように、かかる湾曲部が被検体Pの肋間に嵌合可能な形状に形成される。これにより、音響レンズ105が肋間に位置するように超音波プローブ101が被検体Pに固定されることにより、超音波プローブ101から発射される超音波は、肋骨を避けて進行することができる。この結果、装置本体100は、超音波プローブ101によって受信された反射波信号を用いて、肋骨に囲まれた心臓等が描出された超音波画像を生成することができる。また、肋間に沿った凸形状である音響レンズ105は、かかる肋間に嵌まりやすいので、超音波プローブ101を被検体Pに固定しやすくできる。
【0028】
また、上記第1の実施形態では、超音波プローブ101が、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである例を示した。しかし、超音波プローブ101は、複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブであってもよい。図8は、第1の実施形態に係る2次元超音波プローブ101を示す外観拡大図である。なお、図8は、図5に対応する図である。2次元超音波プローブ101は、複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置されるので、図8に示した例のように縦方向と横方向との長さが略同一の音響レンズ105aが設けられる。かかる音響レンズ105aについても、被検体Pの肋間に沿った凸形状であることが望ましい。
【0029】
次に、図9を用いて、第1の実施形態に係る装置本体100について説明する。図9は、第1の実施形態に係る装置本体100の構成例を示す図である。図9に例示した装置本体100は、図示しないバッテリー等が搭載されており、かかるバッテリーにより動作する。図9に例示したように、第1の実施形態に係る装置本体100は、超音波プローブ101と、ホルター心電計プローブ111と、入力装置21とが接続される。
【0030】
入力装置21は、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、トラックボール、ボタン等の入力デバイスである。これらの入力デバイスは、装置本体100の側面等に設けられる。装置本体100は、入力装置21を介して、ユーザ(例えば、被検体P)からの操作指示を受け付ける。
【0031】
また、装置本体100は、ネットワーク10や外部記憶装置22と接続される。第1の実施形態においては、装置本体100は、ネットワーク10や外部記憶装置22と無線接続されるものとする。外部記憶装置22は、例えば、図1に例示した病院内に配置されるサーバ装置12や、かかるサーバ装置12と接続されるストレージサーバ等である。
【0032】
また、装置本体100は、図9に例示するように、ホルター心電計システム121と、解析回路122と、ブックマーク回路123と、システムコントローラ124と、スキャンコントローラ125と、送受信ユニット126と、Bモード処理ユニット127と、ドプラモード処理ユニット128と、座標変換回路129と、画像合成回路130と、内部記憶装置131と、外部インタフェース部132とを有する。
【0033】
ホルター心電計プローブ111は、粘着パッド等により被検体Pの体表に固定された状態において、被検体P内から微小電気信号を検出することで心電図データを取得する。ホルター心電計システム121は、ホルター心電計プローブ111によって取得された心電図データを受け付ける。そして、ホルター心電計システム121は、かかる心電図データを内部記憶装置131に格納する。なお、第1の実施形態におけるホルター心電計システム121は、ホルター心電計プローブ111から心電図データを定常的に受け付けて、受け付けた心電図データを内部記憶装置131に蓄積していく。
【0034】
解析回路122は、ホルター心電計プローブ111から心電図データを受け付け、受け付けた心電図データをリアルタイムに解析することで、被検体Pに異常が発生しているか否かを判定する。そして、解析回路122は、このような解析の結果、被検体Pに異常が発生しているおそれがあると判定した場合には、異常発生通知をブックマーク回路123やシステムコントローラ124に送信する。
【0035】
なお、解析回路122による解析処理について説明すると、解析回路122は、例えば、心電図データから、心周期の波形を表すP波、QRS波(Q波、R波およびS波)、T波を取得し、これらの各波を用いて被検体Pに異常が発生しているか否かを判定する。例えば、Q波からS波までの期間が心室の収縮期間を示し、S波からT波までの期間が心室の拡張期間を示すので、解析回路122は、S−T間(S波からT波までの期間)における心臓の動きを解析することで、虚血性心疾患や心筋梗塞の疑いがあるか否かを判定する。また、例えば、S−T間では0mvで波形が水平となる区間がみられるが、この水平部分が狭心症では正常な状態よりも低下し、心筋梗塞では上昇するので、解析回路122は、S−T間を解析することで、狭心症の疑いがあるか否かを判定する。
【0036】
ブックマーク回路123は、解析回路122から異常発生通知を受け付けた場合に、かかる異常発生通知を受信した時刻である異常発生時刻を保持する。例えば、ブックマーク回路123は、異常発生時刻を所定の記憶メモリにログとして格納する。また、例えば、ブックマーク回路123は、解析回路122によって異常が検出された心電図データに対して、異常発生時刻をデータとして付加する。
【0037】
システムコントローラ124は、例えば、CPU、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路であり、装置本体100による処理を全体制御する。図9では制御線を図示することを省略したが、システムコントローラ124は、装置本体100内の各部に対して制御信号を送信し、各部による処理を制御する。
【0038】
第1の実施形態におけるシステムコントローラ124は、解析回路122から異常発生通知を受け付けた場合に、異常発生通知を受けた時刻から所定時間(例えば、1秒や2秒や5秒等)が経過するまで超音波プローブ101によるスキャン処理を行うようにスキャンコントローラ125を制御する。
【0039】
スキャンコントローラ125は、送受信ユニット126を制御することにより、超音波プローブ101にスキャンを開始させる。このとき、スキャンコントローラ125は、システムコントローラ124によって指定された時刻の範囲だけスキャンを行うように送受信ユニット126を制御する。
【0040】
送受信ユニット126は、超音波の送受信処理を行う。具体的には、送受信ユニット126は、超音波を送信する場合に、内部のパルサにおいて高電圧パルスを所定の遅延時間毎に順次発生させる。かかる高電圧パルスが超音波プローブ101に内蔵される圧電素子107の各振動子セルに順次印加されることで、各振動子セルにおいて超音波が発生する。
【0041】
また、超音波の受信時には、超音波プローブ101内部の圧電素子107の各振動子セルにおいて、超音波ビームの反射波が受信され、その複数チャンネルの受信信号が送受信ユニット126に入力される。送受信ユニット126は、プリアンプによって受信信号をゲイン補正した後に、A/D変換する。そして、送受信ユニット126は、A/D変換後の信号を受信フォーカス位置に応じて各チャンネルに遅延制御と加算処理(整相加算)を行った後、直交検波と帯域制限フィルタによって信号帯域を制御することで反射波データを生成し、生成した反射波データをBモード処理ユニット127やドプラモード処理ユニット128に送信する。
【0042】
Bモード処理ユニット127は、送受信ユニット126から反射波データを受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを行って、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0043】
ドプラモード処理ユニット128は、送受信ユニット126から受け取った反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0044】
Bモード処理ユニット127によって生成されたBモードデータや、ドプラモード処理ユニット128によって生成されたドプラデータは、生データ(Rawデータ)とも呼ばれ、内部記憶装置131に格納される。また、かかる生データは、座標変換回路129に送信される。
【0045】
座標変換回路129は、Bモード処理ユニット127やドプラモード処理ユニット128から受け付けた生データを、受信ビーム時の座標系から画像表示のための直交座標系へ変換する。
【0046】
画像合成回路130は、座標変換回路129によって直交座標系に変換されたBモード画像やドプラモード・カラーモード画像を内部記憶装置131に格納し、画像収集条件などの文字情報と併せて画像合成を行った後に、RGBのマップ値を割り当てる。このようにして、画像合成回路130は、超音波画像として合成画像を生成する。
【0047】
内部記憶装置131は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)、フラッシュSSD(Solid State Drive)等の記憶デバイスである。かかる内部記憶装置131は、Bモード処理ユニット127やドプラモード処理ユニット128によって生成された生データや、画像合成回路130によって生成された超音波画像等を記憶する。
【0048】
外部インタフェース部132は、無線通信により外部装置との間で各種データを送受する。具体的には、システムコントローラ124は、無線通信機能を有し、内部記憶装置131に記憶されている生データや超音波画像等を外部記憶装置22に格納したりすることができる。
【0049】
ここで、第1の実施形態におけるシステムコントローラ124は、解析回路122から異常発生通知を受け付けて、所定時間だけスキャン処理を行うようにスキャンコントローラ125を制御した場合に、ブックマーク回路123によって記録された異常発生時刻と、解析回路122によって異常が検出された心電図データと、スキャンコントローラ125を制御することで生成された超音波画像とを対応付けて内部記憶装置131に格納する。そして、システムコントローラ124は、内部記憶装置131に格納した異常発生時刻と心電図データと超音波画像とを対応付けたデータ群をサーバ装置12に送信する。なお、システムコントローラ124は、かかるデータ群を定期的に内部記憶装置131から取得してサーバ装置12に送信してもよいし、解析回路122によって異常が検出されるたびに、かかるデータ群をサーバ装置12に送信してもよい。
【0050】
次に、図10を用いて、第1の実施形態に係る診断装置1による処理手順について説明する。図10は、第1の実施形態に係る診断装置1による処理手順を示すフローチャートである。
【0051】
図10に示すように、診断装置1の装置本体100は、ホルター心電計プローブ111を介して被検体Pの心電図データを順次取得する(ステップS101)。そして、装置本体100の解析回路122は、順次取得される心電図データを解析することで、被検体Pに異常が発生しているか否かを判定する(ステップS102)。そして、装置本体100は、解析回路122によって被検体Pの異常が検出されない間は(ステップS102否定)、ホルター心電計プローブ111を介して被検体Pの心電図データを順次取得する(ステップS101)。
【0052】
一方、解析回路122によって被検体Pの異常が検出された場合には(ステップS102肯定)、装置本体100のシステムコントローラ124は、スキャンコントローラ125を制御することにより、超音波プローブ101によるスキャン処理を開始する(ステップS103)。この結果、超音波プローブ101、送受信ユニット126、Bモード処理ユニット127、ドプラモード処理ユニット128、座標変換回路129、画像合成回路130等が処理を行うことにより、装置本体100は、超音波画像を生成する(ステップS104)。
【0053】
そして、システムコントローラ124は、ステップS102において異常が検出された心電図データと、ステップS104において生成された超音波画像とを対応付けて内部記憶装置131に格納する(ステップS105)。そして、システムコントローラ124は、内部記憶装置131に格納した心電図データと超音波画像との組合せをサーバ装置12に送信する(ステップS106)。
【0054】
上述したように、第1の実施形態によれば、超音波プローブ101は被検体Pに装着することができる。
【0055】
また、第1の実施形態によれば、心電図及び超音波画像を用いた複合的な診察を可能にするので、被検体Pの体位変化や体動に伴って心電図の波形が乱れる場合であっても、医師による診断精度を向上させることができる。
【0056】
なお、上記第1の実施形態では、診断装置1が、心電図の解析により異常を検出した場合に、超音波画像を生成する例を示した。しかし、診断装置1は、心電図の解析結果で異常を検出しない場合であっても、超音波画像を生成してもよい。例えば、診断装置1は、所定の時間が経過するたびに、超音波プローブ101によるスキャン処理を開始させて超音波画像を生成してもよい。
【0057】
また、例えば、診断装置1は、特定の時刻になった場合に、超音波画像を生成してもよい。例えば、一般的に、不整脈と冠動脈が痙攣する冠攣縮性狭心症は、労作と無関係に夜や早朝に多く発生することが知られており、病院内における心電図検査や負荷心電図検査では診断がつかない場合もある。そこで、診断装置1は、超音波プローブ101にスキャン処理を開始させる処理を夜や早朝に集中して行ってもよい。これにより、診断装置1は、被検体Pの冠攣縮性狭心症等の診断が可能となる超音波画像を生成できる場合がある。
【0058】
また、上記例のように、診断装置1が、定期的に超音波画像を生成する用途や、特定の時間帯に超音波画像を生成する用途に用いられる場合には、診断装置1は、心電計システムを有しなくてもよい。具体的には、診断装置1は、図9に例示したホルター心電計プローブ111、ホルター心電計システム121、解析回路122及びブックマーク回路123を有しなくてもよい。
【0059】
また、上記第1の実施形態では、診断装置1が、心電図の解析により異常発生を検出した場合に、異常発生時刻から所定時間が経過するまでの間、超音波プローブ101によるスキャン処理を行う例を示した。しかし、診断装置1は、異常発生を検出した場合に、所定数の超音波画像が生成されるまで超音波プローブ101によるスキャン処理を行ってもよい。
【0060】
また、上記第1の実施形態において、診断装置1は、心電図を解析することで心時相を特定し、特定の心時相のタイミングで間欠的に超音波プローブ101によるスキャン処理を行ってもよい。そして、診断装置1は、間欠的に生成した超音波画像と、かかる超音波画像を生成したときに得られた心電図とをサーバ装置12に送信してもよい。このとき、サーバ装置12は、診断装置1から送信される超音波画像や心電図をリアルタイムに解析して、心臓壁の変動異常等を検出した場合には、異常発生時刻を所定の記憶メモリにログとして格納してもよい。
【0061】
また、上記第1の実施形態において、診断装置1は、超音波プローブ101が図8に例示したように2次元超音波プローブである場合には、3次元の医用画像データであるボリュームデータを取得してもよい。
【0062】
また、上記第1の実施形態において、診断装置1のシステムコントローラ124は、解析回路122による異常検出の回数が所定回数を超えた場合や、解析回路122による異常検出が所定時間連続した場合には、医師等が保持する携帯端末等にメール等により警告を通知してもよい。
【0063】
また、上記第1の実施形態において、診断装置1は、ホルター心電計プローブ111の代わりに、被検体Pの脈拍を取得可能な腕時計型の脈計測装置を有してもよい。かかる場合に、解析回路122は、例えば脈拍が所定の閾値範囲内でない場合には、被検体Pに異常が発生したと判定する。
【0064】
また、上記第1の実施形態において、図9に例示した送受信ユニット126、Bモード処理ユニット127、ドプラモード処理ユニット128、座標変換回路129、画像合成回路130等は、省電力モード(スタンバイ状態)で動作し、解析回路122によって異常が検出された場合に、システムコントローラ124による制御に従って、省電力モード(スタンバイ状態)から通常の電力供給モードにて動作してもよい。
【0065】
また、上記第1の実施形態において、診断装置1は、超音波画像を生成せずに、超音波プローブ101によって受信された反射波信号をサーバ装置12に送信してもよい。かかる場合には、超音波プローブ101は、図9に例示したBモード処理ユニット127、ドプラモード処理ユニット128、座標変換回路129及び画像合成回路130を有しなくてもよい。これにより、超音波プローブ101は、より小型化することが可能となる。また、この場合には、サーバ装置12は、図9に例示したBモード処理ユニット127、ドプラモード処理ユニット128、座標変換回路129及び画像合成回路130と同等の機能を有し、診断装置1から受信した反射波信号を用いて、超音波画像を生成する。
【0066】
また、上記例において、診断装置1は、超音波プローブ101によって受信された反射波信号から生データまで生成し、生成した生データをサーバ装置12に送信してもよい。かかる場合には、超音波プローブ101は、図9に例示した座標変換回路129及び画像合成回路130を有しなくてもよい。また、この場合には、サーバ装置12は、図9に例示した座標変換回路129及び画像合成回路130と同等の機能を有し、診断装置1から受信した生データを用いて、超音波画像を生成する。この例の場合、Bモード処理ユニット127やドプラモード処理ユニット128によって生成される生データは、反射波信号と比較してデータサイズが小さいので、診断装置1とアクセスポイント11との間における通信帯域の圧迫を防止することができ、同様に、アクセスポイント11とサーバ装置12との間における通信帯域の圧迫を防止することができる。
【0067】
また、上記例において、診断装置1は、医師や看護婦等が使用するデスクトップ型のパーソナルコンピュータや、ノート型のパーソナルコンピュータや、タブレット型のパーソナルコンピュータや、携帯端末等に送信してもよい。また、診断装置1は、心電図と超音波画像との組合せを送るのではなく、サーバ装置12や医師等が使用するパーソナルコンピュータ等に、心電図だけを送信してもよいし、超音波画像だけを送信してもよい。また、診断装置1は、解析回路122によって異常が検出された時刻の前後において得られた心電図と超音波画像との組合せを送信してもよい。
【0068】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、図3〜図8を用いて、薄型かつ平板状の超音波プローブ101の形状について説明した。しかし、診断装置1と接続される超音波プローブの形状は上記第1の実施形態に示した形状に限られない。そこで、第2の実施形態では、超音波プローブの他の形状例について説明する。
【0069】
[傾斜面]
上記第1の実施形態では、超音波プローブが、上面及び下面が略平行に形成された略直方体の外装ケース103を有する例を示した。しかし、超音波プローブは、双方の面が平行に形成されていない外装ケースを有してもよい。この点について図11及び図12を用いて説明する。図11は、変形例1に係る超音波プローブ201を示す外観拡大図である。また、図12は、図11のI2−I2線における超音波プローブ201を示す断面図である。
【0070】
図11に示すように、変形例1に係る超音波プローブ201は、被検体Pと接触させられる接触面204が傾斜面として形成される。具体的には、図12に示した例において、超音波プローブ201の外装ケース203は、ケーブル102が接続される側面部203aの厚さF11よりも側面部203aの反対側に位置する側面部203bの厚さF12の方が大きく、側面部203aから側面部203bに向かうほど厚くなる形状に形成される。すなわち、変形例1に係る超音波プローブ201は、図11に示した例において、下面に対して平行でない傾斜面である接触面204の一部に、下面と略平行な底面105bを有する開口部205aが形成され、かかる開口部205aの底面205bに音響レンズ105が固定される。
【0071】
図13は、被検体Pに固定された変形例1に係る超音波プローブ201を示す外観図である。図13に示すように、変形例1に係る超音波プローブ201が被検体Pに固定された場合、接触面204の傾斜に応じて音響レンズ105から発射される超音波の方向が傾く。これにより、変形例1に係る超音波プローブ201は、揺動可能でない圧電素子を有する場合であっても、外装ケース203の上面と下面とのなす角度に応じて、超音波を体表に対して略垂直以外の方向に送信することができる。なお、図13に示すように、被検体Pと超音波プローブ201の音響レンズ105との間には超音波用ゼリーが埋まるように塗布される。
【0072】
[窪み]
また、上記第1の実施形態では、超音波プローブが、平面状の上面及び下面が略平行に形成された略直方体の外装ケース103を有する例を示した。しかし、超音波プローブは、上面及び下面のうち音響レンズ105が設けられる接触面に、被検体Pの突起部(骨等)と係り合う凹部が形成された外装ケースを有してもよい。この点について図14及び図15を用いて説明する。図14は、変形例2に係る超音波プローブ301を示す外観拡大図である。また、図15は、図14のI3−I3線における超音波プローブ301を示す断面図である。
【0073】
図14及び図15に示すように、変形例2に係る超音波プローブ301は、被検体Pと接触させられる接触面304上に略直線状の窪みである凹部304a及び304bが形成される外装ケース303を有する。図14及び図15に示した例では、外装ケース303は、音響レンズ105を挟む位置に凹部304aと凹部304bが形成される。より具体的に説明すると、図15に示した例において、超音波プローブ301の外装ケース303は、ケーブル102が接続される側面部303aと音響レンズ105の位置との間に凹部304aが形成され、側面部303aの反対側に位置する側面部303bと音響レンズ105の位置との間に凹部304bが形成される。凹部304a及び304bは、接触面304から下面(底面)方向に湾曲した窪みであり、被検体Pの突起部と係り合う。
【0074】
このような超音波プローブ301は、凹部304a及び304bが肋間に嵌まりやすい形状であるので、被検体Pに固定されやすい。具体的には、超音波プローブ301は、音響レンズ105の両端に凹部304a及び304bが形成された外装ケース303を有するので、図7に示した例において、凹部304a及び304bが被検体Pの肋骨に位置する。このため、超音波プローブ301は、被検体Pに固定されやすく、この結果、被検体P内の固定の部位(例えば、心臓)を定常的に撮影することを可能にする。
【0075】
[アダプタ]
また、上記第1の実施形態では、超音波プローブが、平面状の上面及び下面が略平行に形成された略直方体の外装ケース103を有する例を示した。しかし、超音波プローブは、接触面から離れる方向に延伸自在な延伸部材(すなわち、少なくとも1以上に積み重ねられた複数の平板状の接着部材)が設けられた外装ケースを有してもよい。この点について図16を用いて説明する。図16は、変形例4に係る超音波プローブ401を示す断面図である。
【0076】
図16に示すように、変形例3に係る超音波プローブ401は、外装ケース403の接触面404のうち少なくとも中央部以外の面上に、接触面404から離れる方向に延伸自在な延伸部材としてアダプタ404a及び404bが設けられる。図16に示した例では、外装ケース403の接触面404のうち音響レンズ105を挟む位置にアダプタ404aとアダプタ404bとが設けられる。より具体的に説明すると、図16に示した例において、アダプタ404aは、外装ケース403の接触面404のうち、ケーブル102が接続される外装ケース403の側面部403aと音響レンズ105の位置との間に設けられる。また、アダプタ404bは、外装ケース403の接触面404のうち、側面部403aの反対側に位置する側面部403bと音響レンズ105の位置との間に設けられる。
【0077】
かかるアダプタ404a及び404bは、外装ケース403の厚さ方向に伸縮自在な部材である。例えば、アダプタ404a及び404bは、図16に示した例のように、直径が異なる複数の円柱部材が伸縮自在に連結される。図16に示した例では、円柱部材同士が最小の重なり範囲で重なっている伸状態のアダプタ404a及び404bを示している。
【0078】
このような変形例3に係る超音波プローブ401は、揺動可能でない圧電素子を有する場合であっても、アダプタ404aとアダプタ404bの伸縮状態に応じて、超音波を体表に対して略垂直以外の方向に送信することができる。さらに、超音波プローブ401は、アダプタ404a及び404bの伸縮状態を変動させることで、超音波の発射方向が調整することができる。なお、図13の例と同様に、被検体Pと超音波プローブ401の音響レンズ105との間には超音波用ゼリーが埋まるように塗布される。
【0079】
なお、ここでは図示することを省略するが、上記変形例3に係る超音波プローブ401は、アダプタ404aとアダプタ404bの代わりに、伸縮部材や弾性部材が設けられてもよい。これにより、固定バンド等によって超音波プローブ401が被検体Pの体表に圧着された場合に、伸縮部材等の形状変化により接触面404と体表との角度を調整することが可能になる。このため、図13の例と同様に、超音波を体表に対して略垂直以外の方向に送信することができる。この場合、角度調整には弾性部材の固さ、すなわち形状変化率の異なる部材を併用することで傾斜角度を修正し、図16の例と同様に、略垂直以外の所望の方向に超音波を送信できるように微調整が可能になる。なお、図13の例と同様に、被検体Pと超音波プローブ401の音響レンズ105との間には超音波用ゼリーが埋まるように塗布される。
【0080】
また、ここでは図示することを省略するが、上記第1の実施形態に係る超音波プローブ101は、接触面104上に厚さの異なる粘着パッドを貼り付けてもよい。この場合であっても、図13の例と同様に、超音波を体表に対して略垂直以外の方向に送信することができる。加えて、粘着パッドの厚さを変更することで傾斜角度も容易に修正できるので、図16の例と同様に、略垂直以外の所望の方向に超音波を送信できるように微調整が可能になる。なお、図13の例と同様に、被検体Pと超音波プローブ401の音響レンズ105との間には超音波用ゼリーが埋まるように塗布される。
【0081】
また、上述してきた超音波プローブ101、201、301又は401の形状は、上記例に限られない。例えば、上記例では、外装ケースの面(接触面等)が略四角形である例を示したが、外装ケースの面は、円形や楕円形や台形等の任意の形状でもよい。また、例えば、上記例では、音響レンズ105が接触面の中央近傍に設けられる例を示したが、音響レンズ105は、接触面の中央近傍以外の領域に設けられてもよい。
【0082】
また、例えば、上記図11に示した例では、外装ケース203の接触面204と底面とが所定の角度をなす例を示したが、超音波プローブ201において、接触面204と底面とは略平行であってもよい。かかる場合には、図12に示した開口部205aの底面205bと、外装ケース203の接触面204とが所定の角度をなす関係であればよい。かかる場合であっても、超音波を体表に対して略垂直以外の方向に送信することができる。
【0083】
また、例えば、上記図14に示した例では、外装ケース303の接触面304上に略直線状の凹部304a及び304bが形成される例を示した。しかし、凹部304a及び304bは略直線状でなくてもよく、被検体Pの突起部(骨等)と係り合うことが可能であればいかなる形状であってもよい。
【0084】
また、上記図11〜図13や図16等に示した超音波の送信方向が制御可能な超音波プローブは、1次元超音波プローブに適用することが有効である。すなわち、1次元超音波プローブは、超音波の送信方向が固定されるが、図11〜図13や図16等に示した構成とすることで、超音波の送信方向を制御することができる。
【0085】
[据え置き型]
また、上記の図1〜図16を用いて説明した実施形態では、診断装置1が被検体Pに携帯されることを前提とする例を示した。しかし、診断装置1は、被検体Pに携帯されない据え置き型であってもよい。具体的には、上述してきた診断装置1のうち、超音波プローブ101及びホルター心電計プローブ111は、被検体Pに携帯されてもよいが、装置本体100については、被検体Pに携帯されずに医療室等に据え置きされてもよい。
【0086】
以下、据え置き型の診断装置1における実施形態について、ストレスエコーを例に挙げて説明する。近年、虚血性心疾患等の心臓疾患の検査を目的として、ストレスエコーと呼ばれる検査が行われる場合がある。ストレスエコーは、心臓に負荷をかけて、安静時には確認できない心筋の動きや血液の流れの変化を調べるための超音波検査で、運動負荷心エコーと薬剤負荷心エコーがある。前者は患者に何段階かの異なる負荷の運動をしてもらうことで、後者は薬剤(例えばドブタミン)の量を何段階かに変えながら、心拍数と血圧をあげる。運動ができない状態の患者では薬剤負荷が行われるが、薬剤を使用しない安全性の高い運動負荷が実施されることが多い。かかる運動負荷心エコー検査では、前述したように被検体Pに運動を行わせた後、超音波プローブを被検体Pに押し当てることで超音波画像を動画または静止画群として少なくとも1心拍以上記録し、心電計プローブを被検体Pに取り付けることで心電図を記録することが行われる。ここで、運動負荷心エコーにおいては、被検体Pが運動を行ってから所定時間(例えば、90秒など)が経過するまでに超音波画像や心電図を記録することが求められる。すなわち、医師等の操作者は、運動後の被検体Pに対して、即座に超音波プローブを被検体Pに押し当てたり、心電計プローブを被検体Pに取り付けたりすることを要する。そして、超音波画像を記録するためには、観察対象の部位(心臓等)に超音波が照射されるように超音波プローブを被検体Pに押し当てることを要するので、ストレスエコーを行う操作者には高い技術が求められることとなる。
【0087】
しかし、上述した実施形態に係る据え置き型の診断装置1を用いた場合、操作者は、高い技術が求められることなく、超音波画像や心電図を容易に記録することができる。具体的には、実施形態に係る超音波プローブ101及びホルター心電計プローブ111を被検体Pに取り付けた状態で、かかる被検体Pに運動をさせる。そして、操作者は、被検体Pが運動を行った後に、装置本体100を操作することで、運動後の被検体Pにおける超音波画像や心電図を即座に記録することができる。また、上記の通り、実施形態に係る超音波プローブ101は、肋間等と嵌合することで被検体Pに固定されるので、被検体Pが運動した場合であっても位置ずれが発生することを防止できる。このため、操作者は、観察対象の部位(心臓等)に超音波が照射されるように、時間をかけて超音波プローブ101を運動前の被検体Pに取り付けることができる。そして、操作者は、被検体Pが運動した場合であっても超音波プローブ101の取り付け位置を調整することなく、観察対象の超音波画像を記録することができる。
【0088】
このように、上述した診断装置1は、装置本体100が据え置き型であっても、超音波プローブ101及びホルター心電計プローブ111が被検体Pに固定されるので、ストレスエコー等において高精度で効率的な検査を実現することができる。また、超音波プローブ101を被検体Pの同一の場所に取り付けることで、同じ観察対象の超音波画像を何度も記録することができるので、上述してきた診断装置1は、再現性の高い超音波診断装置として利用することができる。
【0089】
なお、上述した診断装置1は、複数の超音波プローブ101を有してもよい。この場合、操作者は、複数の観察対象が存在する場合に、各観察対象に超音波が照射されるように各超音波プローブ101を被検体Pに取り付けることで、1度に複数の超音波画像を記録することができる。例えば、運動負荷心エコーにおいて、心臓用音響ウィンドウと呼ばれる心尖ウィンドウ(Apical Window)や胸骨傍ウィンドウ(Parasternal Window)といった肋間の複数の観察位置から観察可能な心臓の特定断面の超音波画像を記録する場合、運動後の所定時間内に超音波プローブを各観察位置に適切な角度で押し当てることは技術が必要であるので、場合によって被検体Pに何度も運動を行わせることを要するおそれがある。しかし、実施形態に係る診断装置1では、1度に複数の超音波画像を記録することができるので、被検体Pに何度も運動を行わせることなくストレスエコーを実現することができる。なお、それぞれのプローブからの超音波反射波が干渉するような場合は、それぞれを順次切り替えて送受信する時間差制御を行う。
【0090】
[自動運動負荷心エコー]
上記では、被検体Pが運動を行った後に、操作者が装置本体100を操作することで、運動負荷心エコーを行う例を示した。しかし、装置本体100は、被検体Pによる運動が終了した時点を検知することで、運動直後の超音波画像及び心電図を自動的に記録してもよい。この点について図17を用いて具体的に説明する。図17は、実施形態に係る診断装置1によって実施される運動負荷心エコー検査の一例を示す図である。
【0091】
図17に示した例では、ホルター心電計プローブ111によって心電図波形W10が記録されたものとする。また、超音波画像G11〜G13及びG21〜G23は、心電図波形W10においてR波が検出された時刻に生成されたものとする。装置本体100のシステムコントローラ124は、心電図波形W10においてR波が検出される時刻についてのみ、スキャンコントローラ125を制御することで超音波画像を間欠的に生成する。なお、ここでは、R波が検出されるたびに超音波画像を順次生成する例を示したが、装置本体100は、所定時間(例えば、1分)が経過し、かつ、R波が検出されるタイミングにおいて超音波画像を間欠的に生成してもよい。
【0092】
そして、装置本体100は、このような超音波画像G11〜G13及びG21〜G23を解析することにより、被検体Pが運動中であるか否かを判定する。具体的には、心臓は伸縮運動を行うので、被検体Pが運動をしていない場合であっても心臓の形状や位置は変化する。しかし、各R波が検出されるタイミングにおいては、被検体Pが運動をしていない限りは、心臓の形状や位置は略同一となることが考えられる。そこで、装置本体100は、各R波が検出されるタイミングにおいて生成された超音波画像間の動きベクトル等を解析する(例えば相互相関処理などを利用する)ことにより、心臓の形状や位置が変化しているか否かを検出する。そして、装置本体100は、動きベクトルの大きさが所定値よりも小さい場合には、被検体Pが運動していないと判定し、動きベクトルの大きさが所定値以上である場合には、被検体Pが運動していると判定する。
【0093】
例えば、図17に示した例において、各R波に対応する超音波画像G11〜G13が連続して生成されたものとする。この例の場合、超音波画像G11〜G13に描出されている心臓の位置は略同一である。このため、装置本体100は、超音波画像G11〜G13が生成された時点では、心臓の位置が動いていないので、被検体Pが運動していないと判定することができる。
【0094】
また、例えば、図17に示した例において、各R波に対応する超音波画像G21〜G23が連続して生成されたものとする。この例の場合、超音波画像G21〜G23に描出されている心臓の位置はそれぞれ異なる。このため、装置本体100は、超音波画像G21〜G23が生成された時点では、心臓の位置が動いているので、被検体Pが運動していると判定することができる。
【0095】
このようにして、装置本体100は、心電図波形W10における各R波に対応する超音波画像を解析することにより、被検体Pが運動中であるか否かを判定する。そして、100は、被検体Pが運動している状態から運動していない状態となった際に、超音波画像を連続して生成する。すなわち、装置本体100は、R波が検出されるタイミングにおいて超音波画像を間欠的に生成する状態から、R波が検出されるタイミングに関係なく超音波画像を連続して生成する状態となる。この場合、少なくとも1心拍以上の動画または静止画群を収集し、保存する。前記収集時間あるいは心拍数は事前にユーザが指定可能とする。また、必要に応じて、収集期間中に被検体Pが運動しているかも並行して判定し、収集期間中に被検体Pの運動を検知した場合は、その動画または静止画群を破棄あるいは動きがあったことを示す情報を付加すると同時に、ユーザに画面上で知らせる。
【0096】
これにより、装置本体100は、運動している被検体Pが停止した場合に、自動的に超音波画像を連続して生成するので、操作者が装置本体100を操作することなく、自動的にストレスエコーの検査を実施することができる。
【0097】
なお、上述した被検体Pの運動有無を判定する処理は、装置本体100のシステムコントローラ124によって行われてもよいし、装置本体100が備える専用チップや専用プログラムによって行われてもよい。また、上記例では、R波が検出されるタイミングで超音波画像を生成する例を示したが、装置本体100は、P波、Q波、S波、T波、U波等の他の波が検出されるタイミング、あるいは検出しやすい波からの任意の遅延時間のタイミングで超音波画像を生成してもよい。
【0098】
以上説明したとおり、第1及び第2の実施形態によれば、超音波プローブを被検体に装着することができる。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0100】
1 診断装置
100 装置本体
101 超音波プローブ
103 外装ケース
104 接触面
105 音響レンズ
107 圧電素子
111 ホルター心電計プローブ
121 ホルター心電計システム
122 解析回路
123 ブックマーク回路
124 システムコントローラ
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波診断装置は、X線診断装置やX線コンピュータ断層撮影装置などの他の医用画像診断装置に比べ、簡便な操作性、被爆のおそれがない非侵襲性などの利点を備えた装置として、今日の医療において、心臓、肝臓、腎臓、乳腺など、様々な生体組織の検査や診断に利用されている。例えば、超音波診断装置は、医師等の操作者によって超音波プローブを被検体に押し当てた場合に、かかる超音波プローブから送信した超音波が被検体の内部組織で反射された反射波信号を受信することによって、被検体内の組織構造の画像である超音波画像を生成する。このため、超音波診断装置は、操作者によって超音波プローブが押し当てられる部位に応じて、異なる組織の超音波画像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−132664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、被検体に装着可能な超音波プローブを有する超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の超音波診断装置は、超音波プローブと、処理装置とを備える。超音波プローブは、被検体に接着することを目的として接触する接触面が前記被検体の突起部と嵌合可能な形状に形成される。処理装置は、前記被検体に装着された前記超音波プローブから当該被検体に対して送信された超音波の反射波信号を処理する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る診断システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る診断装置の外観を模式的に示す図である。
【図3】図3は、被検体Pに装着された第1の実施形態に係る超音波プローブの外観を模式的に示す図である。
【図4】図4は、図3のA1矢視による超音波プローブを示す外観拡大図である。
【図5】図5は、図3のA2矢視による超音波プローブを示す外観拡大図である。
【図6】図6は、図5のI1−I1線における超音波プローブを示す断面図である。
【図7】図7は、肋間に固定される超音波プローブの状態を模式的に示す図である。
【図8】図8は、第1の実施形態に係る2次元超音波プローブを示す外観拡大図である。
【図9】図9は、第1の実施形態に係る装置本体の構成例を示す図である。
【図10】図10は、第1の実施形態に係る診断装置による処理手順を示すフローチャートである。
【図11】図11は、変形例1に係る超音波プローブを示す外観拡大図である。
【図12】図12は、図11のI2−I2線における超音波プローブを示す断面図である。
【図13】図13は、被検体に固定された変形例1に係る超音波プローブを示す外観図である。
【図14】図14は、変形例2に係る超音波プローブを示す外観拡大図である。
【図15】図15は、図14のI3−I3線における超音波プローブを示す断面図である。
【図16】図16は、変形例3に係る超音波プローブを示す断面図である。
【図17】図17は、実施形態に係る診断装置によって実施される運動負荷心エコー検査の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1の実施形態)
まず、図1を用いて、第1の実施形態に係る診断システムについて説明する。図1は、第1の実施形態に係る診断システムの構成例を示す図である。図1に例示するように、第1の実施形態に係る診断システムには、一つの態様として、個人宅にいる被検体Pに装着される診断装置1と、被検体Pの個人宅に設置される無線ルータ等のアクセスポイント11と、病院に設置されるサーバ装置12とが含まれる。アクセスポイント11とサーバ装置12とは、ネットワーク10を介して通信可能である。例えば、アクセスポイント11とサーバ装置12とは、VPN(Virtual Private Network)等のセキュリティが確保された回線を介して相互に通信を行う。
【0008】
診断装置1は、被検体Pによって携帯されるホルター心電計と一体化された携帯可能な超音波診断装置であり、アクセスポイント11と無線通信を行う。具体的には、診断装置1は、装置本体100と、被検体Pに固定可能な薄型の超音波プローブ101とを有する。装置本体100は、被検体Pが日常生活を送っている中で定期的に心電図(ECG:Electrocardiogram)の記録を行うとともに、超音波プローブ101から被検体Pに送信された超音波の反射波信号から超音波画像を生成する。さらに、装置本体100は、これらの心電図や超音波画像を定期的にアクセスポイント11に送信することで、ネットワーク10を介してサーバ装置12に心電図や超音波画像を送信する。
【0009】
サーバ装置12は、患者である被検体毎に、被検体に関する個人情報、被検体から得られた心電図や超音波画像等の各種医用データを記憶する。第1の実施形態におけるサーバ装置12は、装置本体100から定期的に送信される心電図や超音波画像を受け付けることにより、日常生活を送っている被検体Pから得られた心電図や超音波画像を蓄積する。これにより、病院内の医師等は、携帯端末やパーソナルコンピュータを用いてサーバ装置12にアクセスすることにより、個人宅にいる被検体Pから得られた心電図や超音波画像を確認することが可能となる。
【0010】
ここで、第1の実施形態における装置本体100は、被検体Pから定期的に測定する心電図を解析する。そして、装置本体100は、心電図解析の結果、被検体Pの異常を検知した場合に、超音波プローブ101に超音波を送信させることで被検体Pの超音波画像を生成する。すなわち、装置本体100は、心電図を用いた解析により被検体Pに異常のおそれがある場合に、即座に超音波プローブ101により被検体Pをスキャンすることで超音波画像を生成する。そして、装置本体100は、超音波画像を生成するたびに、異常検知時の心電図とともに超音波画像をサーバ装置12に送信する。これにより、第1の実施形態に係る診断装置1は、被検体Pに異常のおそれがある場合に、心電図だけでなく超音波画像を用いた診察を可能にする。一般に、心電図は、被検体P内に流れる微小電気信号から得られるので、被検体Pの体位変化に伴って心電図の波形が変化したり、体動により心電図の波形にノイズが発生する場合がある。第1の実施形態における診断装置1は、心電図及び超音波画像を用いた複合的な診察を可能にするので、被検体Pの体位変化や体動に伴って心電図の波形が乱れる場合であっても、医師による診断精度を向上させることができる。
【0011】
以下に、上述した診断装置1についてより詳細に説明する。以下では、まず、上記の複合的な診察を可能にする超音波プローブ101について説明し、次に、装置本体100の構成及び処理手順について説明する。なお、第1の実施形態では、診断装置1が、被検体Pの心電図を定期的に記録するとともに、異常検知時に被検体Pの胸部(例えば、心臓)の超音波画像を生成する例について説明する。ただし、診断装置1は、胸部以外の他の部位(例えば、腹部等)の超音波画像を生成してもよい。
【0012】
図2は、第1の実施形態に係る診断装置1の外観を模式的に示す図である。図2に示すように、第1の実施形態に係る診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101と、ホルター心電計プローブ111とを有する。
【0013】
装置本体100と超音波プローブ101とはケーブル102によって電気通信可能に接続され、装置本体100とホルター心電計プローブ111とはケーブル112によって電気通信可能に接続される。ケーブル102及びケーブル112は、折り曲げることが可能な部材であり、例えば、ゴム等の絶縁体により覆われた金属線である。
【0014】
ホルター心電計プローブ111は、粘着パッド等により被検体Pの体表に固定されており、被検体P内から微小電気信号を検出することにより心電図データを取得する。超音波プローブ101は、被検体Pに接着することを目的として接触する接触面が被検体Pの突起部(肋骨等)と嵌合可能な形状に形成される。この超音波プローブ101は、被検体Pに超音波を送信し、かかる超音波が被検体P内で反射された反射波信号を受信する。装置本体100は、被検体Pに装着された超音波プローブ101から被検体Pに対して送信された超音波の反射波信号を処理する処理装置である。具体的には、装置本体100は、ホルター心電計プローブ111によって取得された心電図データを受け付けるとともに、超音波プローブ101によって受信された反射波信号を用いて超音波画像を生成する。
【0015】
このような診断装置1は、被検体Pに装着可能に形成されることで、日常生活を送っている被検体Pから心電図データや超音波画像を得ることができる。特に、第1の実施形態に係る超音波プローブ101は、厚さの薄い平板状に形成されることで、被検体Pに固定されることを可能にする。
【0016】
図3〜図5を用いて、第1の実施形態に係る超音波プローブ101の形状について説明する。図3は、被検体Pに装着された第1の実施形態に係る超音波プローブ101の外観を模式的に示す図である。なお、図3では、超音波プローブ101が装着された被検体Pの側面を見た例を示す。
【0017】
図3に示した例では、超音波プローブ101は、被検体Pの胸部近傍の体表に装着され、被検体Pの腰部近傍に装着された装置本体100とケーブル102を介して接続される。かかる超音波プローブ101は、固定用ベルトや粘着パッド等によって被検体Pに固定される。例えば、図1に例示した被検体Pのように、超音波プローブ101は、体表に密着する弾性体である固定用ベルトにより被検体Pに固定される。また、例えば、超音波プローブ101は、粘着性を有する粘着パッドが塗布されることで、かかる粘着パッドを介して被検体Pに固定される。このような超音波プローブ101は、被検体Pに固定された状態であっても被検体Pの動きを妨害しにくい形状となるように、医師等が超音波プローブ101を保持するための凸状のグリップを有しない。この点について図4及び図5を用いて説明する。
【0018】
図4及び図5は、第1の実施形態に係る超音波プローブ101を示す外観拡大図である。図4は、図3のA1矢視による超音波プローブ101を示す外観拡大図であり、図5は、図3のA2矢視による超音波プローブ101を示す外観拡大図である。
【0019】
図4及び図5に示すように、超音波プローブ101は、平板状の中空である外装ケース103を有する。図4及び図5に示した例では、外装ケース103は、略直方体の形状をなしており、例えば合成樹脂等により形成される。具体的には、外装ケース103は、図4に示した状態において、上下の面が一定の面積を有するのに対して、高さ方向の大きさである厚さが薄く形成される。なお、外装ケース103は、直方体における12個の辺が丸みを帯びた形状に形成される。
【0020】
また、図5に示すように、超音波プローブ101は、被検体Pと接触させられる外装ケース103の面である接触面104に開口部が形成され、かかる開口部に音響レンズ105が設けられる。音響レンズ105は、後述する圧電素子107から発生する超音波を収束させる。この点について図6を用いて説明する。
【0021】
図6は、図5のI1−I1線における超音波プローブ101を示す断面図である。図6に示すように、第1の実施形態に係る超音波プローブ101の外装ケース103は、接触面104に音響レンズ105の下面と略同一の形状の孔である開口部104aが形成される。そして、音響レンズ105は、かかる開口部104aに固定される。言い換えれば、音響レンズ105は、被検体Pの突起部である骨等の間に嵌合可能な凸形状に形成された湾曲部が外装ケース103上に配置されることとなる。
【0022】
また、超音波プローブ101は、外装ケース103の接触面104を上面とした場合に、音響レンズ105から外装ケース103の下面方向に、音響整合層106、圧電素子107、バッキング材108が積層される。音響レンズ105は、上記の通り超音波を収束させる。音響整合層106は、圧電素子107と被検体Pとの間との音響インピーダンスの不整合を緩和する。
【0023】
圧電素子107は、フレキシブルケーブル等の電極109によりケーブル102と接続され、かかる電極109を介して装置本体100との間で電気信号を送受信する。かかる圧電素子107は、装置本体100から供給される送信信号に基づき超音波を発生し、被検体Pからの反射波信号を受信する。具体的には、第1の実施形態における圧電素子107は、外装ケース103の略厚み方向F1に超音波を発生する。なお、ここでは図示していないが、圧電素子107は、複数の圧電素子から構成されており、圧電素子それぞれが、超音波を発生し、反射波信号を受信する。図6に示した例では、複数の圧電振動子が一列で配置されているものとする。したがって、上述してきた超音波プローブ101は、1次元超音波プローブに該当する。バッキング材108は、圧電素子107から後方(外装ケース103の下面方向)への超音波の伝播を防止する。
【0024】
例えば、超音波プローブ101から被検体に超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体の体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ101が有する圧電素子107にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。送信された超音波パルスが移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。そして、超音波プローブ101によって受信された反射波信号は、ケーブル102を介して装置本体100に送信される。装置本体100は、超音波プローブ101から受け付けた反射波信号を用いて、被検体Pの超音波画像を生成する。
【0025】
このように、第1の実施形態における超音波プローブ101は、図3〜図6に示した例のように、平板状の外装ケース103を有し、さらに、被検体Pと接触させられる外装ケース103の接触面104に音響レンズ105が設けられ、かかる音響レンズ105を介して外装ケース103の略厚み方向F1に発射される超音波を発生する圧電素子107を外装ケース103の内部に有する。かかる超音波プローブ101は、厚さが薄く、かつ、平板形状であるので、被検体Pに固定されやすく、また、被検体Pに固定された状態であっても被検体Pの動きを妨害しにくい。
【0026】
なお、上述した超音波プローブ101から発射される超音波は、被検体P内の骨等で略全反射される。このため、心臓の超音波画像を生成することを望む場合であっても、超音波プローブ101と撮影対象の心臓との間に骨が位置すると、超音波画像に描出されない可能性がある。したがって、上記の実施形態のように被検体Pの胸部の超音波画像を生成する場合には、超音波プローブ101から発射される超音波が被検体Pの肋骨を避けて心臓等に到達することが望ましい。そこで、上述した超音波プローブ101の音響レンズ105は、被検体Pの肋間に沿った凸形状であることが望ましい。この点について図7を用いて説明する。
【0027】
図7は、肋間に固定される超音波プローブ101の状態を模式的に示す図である。なお、図7では、音響レンズ105の形状を明示するために、音響レンズ105が被検体Pの肋間に直接嵌合されているようにみえる状態を示したが、実際には、超音波プローブ101は、被検体Pの体表に接着されており、肋骨に直接接触しない。図6に示した例のように、音響レンズ105は、外装ケース103の接触面104から離れる方向に湾曲した凸状に形成される。ここで、音響レンズ105は、図7に示した例のように、かかる湾曲部が被検体Pの肋間に嵌合可能な形状に形成される。これにより、音響レンズ105が肋間に位置するように超音波プローブ101が被検体Pに固定されることにより、超音波プローブ101から発射される超音波は、肋骨を避けて進行することができる。この結果、装置本体100は、超音波プローブ101によって受信された反射波信号を用いて、肋骨に囲まれた心臓等が描出された超音波画像を生成することができる。また、肋間に沿った凸形状である音響レンズ105は、かかる肋間に嵌まりやすいので、超音波プローブ101を被検体Pに固定しやすくできる。
【0028】
また、上記第1の実施形態では、超音波プローブ101が、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである例を示した。しかし、超音波プローブ101は、複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブであってもよい。図8は、第1の実施形態に係る2次元超音波プローブ101を示す外観拡大図である。なお、図8は、図5に対応する図である。2次元超音波プローブ101は、複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置されるので、図8に示した例のように縦方向と横方向との長さが略同一の音響レンズ105aが設けられる。かかる音響レンズ105aについても、被検体Pの肋間に沿った凸形状であることが望ましい。
【0029】
次に、図9を用いて、第1の実施形態に係る装置本体100について説明する。図9は、第1の実施形態に係る装置本体100の構成例を示す図である。図9に例示した装置本体100は、図示しないバッテリー等が搭載されており、かかるバッテリーにより動作する。図9に例示したように、第1の実施形態に係る装置本体100は、超音波プローブ101と、ホルター心電計プローブ111と、入力装置21とが接続される。
【0030】
入力装置21は、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、トラックボール、ボタン等の入力デバイスである。これらの入力デバイスは、装置本体100の側面等に設けられる。装置本体100は、入力装置21を介して、ユーザ(例えば、被検体P)からの操作指示を受け付ける。
【0031】
また、装置本体100は、ネットワーク10や外部記憶装置22と接続される。第1の実施形態においては、装置本体100は、ネットワーク10や外部記憶装置22と無線接続されるものとする。外部記憶装置22は、例えば、図1に例示した病院内に配置されるサーバ装置12や、かかるサーバ装置12と接続されるストレージサーバ等である。
【0032】
また、装置本体100は、図9に例示するように、ホルター心電計システム121と、解析回路122と、ブックマーク回路123と、システムコントローラ124と、スキャンコントローラ125と、送受信ユニット126と、Bモード処理ユニット127と、ドプラモード処理ユニット128と、座標変換回路129と、画像合成回路130と、内部記憶装置131と、外部インタフェース部132とを有する。
【0033】
ホルター心電計プローブ111は、粘着パッド等により被検体Pの体表に固定された状態において、被検体P内から微小電気信号を検出することで心電図データを取得する。ホルター心電計システム121は、ホルター心電計プローブ111によって取得された心電図データを受け付ける。そして、ホルター心電計システム121は、かかる心電図データを内部記憶装置131に格納する。なお、第1の実施形態におけるホルター心電計システム121は、ホルター心電計プローブ111から心電図データを定常的に受け付けて、受け付けた心電図データを内部記憶装置131に蓄積していく。
【0034】
解析回路122は、ホルター心電計プローブ111から心電図データを受け付け、受け付けた心電図データをリアルタイムに解析することで、被検体Pに異常が発生しているか否かを判定する。そして、解析回路122は、このような解析の結果、被検体Pに異常が発生しているおそれがあると判定した場合には、異常発生通知をブックマーク回路123やシステムコントローラ124に送信する。
【0035】
なお、解析回路122による解析処理について説明すると、解析回路122は、例えば、心電図データから、心周期の波形を表すP波、QRS波(Q波、R波およびS波)、T波を取得し、これらの各波を用いて被検体Pに異常が発生しているか否かを判定する。例えば、Q波からS波までの期間が心室の収縮期間を示し、S波からT波までの期間が心室の拡張期間を示すので、解析回路122は、S−T間(S波からT波までの期間)における心臓の動きを解析することで、虚血性心疾患や心筋梗塞の疑いがあるか否かを判定する。また、例えば、S−T間では0mvで波形が水平となる区間がみられるが、この水平部分が狭心症では正常な状態よりも低下し、心筋梗塞では上昇するので、解析回路122は、S−T間を解析することで、狭心症の疑いがあるか否かを判定する。
【0036】
ブックマーク回路123は、解析回路122から異常発生通知を受け付けた場合に、かかる異常発生通知を受信した時刻である異常発生時刻を保持する。例えば、ブックマーク回路123は、異常発生時刻を所定の記憶メモリにログとして格納する。また、例えば、ブックマーク回路123は、解析回路122によって異常が検出された心電図データに対して、異常発生時刻をデータとして付加する。
【0037】
システムコントローラ124は、例えば、CPU、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路であり、装置本体100による処理を全体制御する。図9では制御線を図示することを省略したが、システムコントローラ124は、装置本体100内の各部に対して制御信号を送信し、各部による処理を制御する。
【0038】
第1の実施形態におけるシステムコントローラ124は、解析回路122から異常発生通知を受け付けた場合に、異常発生通知を受けた時刻から所定時間(例えば、1秒や2秒や5秒等)が経過するまで超音波プローブ101によるスキャン処理を行うようにスキャンコントローラ125を制御する。
【0039】
スキャンコントローラ125は、送受信ユニット126を制御することにより、超音波プローブ101にスキャンを開始させる。このとき、スキャンコントローラ125は、システムコントローラ124によって指定された時刻の範囲だけスキャンを行うように送受信ユニット126を制御する。
【0040】
送受信ユニット126は、超音波の送受信処理を行う。具体的には、送受信ユニット126は、超音波を送信する場合に、内部のパルサにおいて高電圧パルスを所定の遅延時間毎に順次発生させる。かかる高電圧パルスが超音波プローブ101に内蔵される圧電素子107の各振動子セルに順次印加されることで、各振動子セルにおいて超音波が発生する。
【0041】
また、超音波の受信時には、超音波プローブ101内部の圧電素子107の各振動子セルにおいて、超音波ビームの反射波が受信され、その複数チャンネルの受信信号が送受信ユニット126に入力される。送受信ユニット126は、プリアンプによって受信信号をゲイン補正した後に、A/D変換する。そして、送受信ユニット126は、A/D変換後の信号を受信フォーカス位置に応じて各チャンネルに遅延制御と加算処理(整相加算)を行った後、直交検波と帯域制限フィルタによって信号帯域を制御することで反射波データを生成し、生成した反射波データをBモード処理ユニット127やドプラモード処理ユニット128に送信する。
【0042】
Bモード処理ユニット127は、送受信ユニット126から反射波データを受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを行って、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0043】
ドプラモード処理ユニット128は、送受信ユニット126から受け取った反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0044】
Bモード処理ユニット127によって生成されたBモードデータや、ドプラモード処理ユニット128によって生成されたドプラデータは、生データ(Rawデータ)とも呼ばれ、内部記憶装置131に格納される。また、かかる生データは、座標変換回路129に送信される。
【0045】
座標変換回路129は、Bモード処理ユニット127やドプラモード処理ユニット128から受け付けた生データを、受信ビーム時の座標系から画像表示のための直交座標系へ変換する。
【0046】
画像合成回路130は、座標変換回路129によって直交座標系に変換されたBモード画像やドプラモード・カラーモード画像を内部記憶装置131に格納し、画像収集条件などの文字情報と併せて画像合成を行った後に、RGBのマップ値を割り当てる。このようにして、画像合成回路130は、超音波画像として合成画像を生成する。
【0047】
内部記憶装置131は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)、フラッシュSSD(Solid State Drive)等の記憶デバイスである。かかる内部記憶装置131は、Bモード処理ユニット127やドプラモード処理ユニット128によって生成された生データや、画像合成回路130によって生成された超音波画像等を記憶する。
【0048】
外部インタフェース部132は、無線通信により外部装置との間で各種データを送受する。具体的には、システムコントローラ124は、無線通信機能を有し、内部記憶装置131に記憶されている生データや超音波画像等を外部記憶装置22に格納したりすることができる。
【0049】
ここで、第1の実施形態におけるシステムコントローラ124は、解析回路122から異常発生通知を受け付けて、所定時間だけスキャン処理を行うようにスキャンコントローラ125を制御した場合に、ブックマーク回路123によって記録された異常発生時刻と、解析回路122によって異常が検出された心電図データと、スキャンコントローラ125を制御することで生成された超音波画像とを対応付けて内部記憶装置131に格納する。そして、システムコントローラ124は、内部記憶装置131に格納した異常発生時刻と心電図データと超音波画像とを対応付けたデータ群をサーバ装置12に送信する。なお、システムコントローラ124は、かかるデータ群を定期的に内部記憶装置131から取得してサーバ装置12に送信してもよいし、解析回路122によって異常が検出されるたびに、かかるデータ群をサーバ装置12に送信してもよい。
【0050】
次に、図10を用いて、第1の実施形態に係る診断装置1による処理手順について説明する。図10は、第1の実施形態に係る診断装置1による処理手順を示すフローチャートである。
【0051】
図10に示すように、診断装置1の装置本体100は、ホルター心電計プローブ111を介して被検体Pの心電図データを順次取得する(ステップS101)。そして、装置本体100の解析回路122は、順次取得される心電図データを解析することで、被検体Pに異常が発生しているか否かを判定する(ステップS102)。そして、装置本体100は、解析回路122によって被検体Pの異常が検出されない間は(ステップS102否定)、ホルター心電計プローブ111を介して被検体Pの心電図データを順次取得する(ステップS101)。
【0052】
一方、解析回路122によって被検体Pの異常が検出された場合には(ステップS102肯定)、装置本体100のシステムコントローラ124は、スキャンコントローラ125を制御することにより、超音波プローブ101によるスキャン処理を開始する(ステップS103)。この結果、超音波プローブ101、送受信ユニット126、Bモード処理ユニット127、ドプラモード処理ユニット128、座標変換回路129、画像合成回路130等が処理を行うことにより、装置本体100は、超音波画像を生成する(ステップS104)。
【0053】
そして、システムコントローラ124は、ステップS102において異常が検出された心電図データと、ステップS104において生成された超音波画像とを対応付けて内部記憶装置131に格納する(ステップS105)。そして、システムコントローラ124は、内部記憶装置131に格納した心電図データと超音波画像との組合せをサーバ装置12に送信する(ステップS106)。
【0054】
上述したように、第1の実施形態によれば、超音波プローブ101は被検体Pに装着することができる。
【0055】
また、第1の実施形態によれば、心電図及び超音波画像を用いた複合的な診察を可能にするので、被検体Pの体位変化や体動に伴って心電図の波形が乱れる場合であっても、医師による診断精度を向上させることができる。
【0056】
なお、上記第1の実施形態では、診断装置1が、心電図の解析により異常を検出した場合に、超音波画像を生成する例を示した。しかし、診断装置1は、心電図の解析結果で異常を検出しない場合であっても、超音波画像を生成してもよい。例えば、診断装置1は、所定の時間が経過するたびに、超音波プローブ101によるスキャン処理を開始させて超音波画像を生成してもよい。
【0057】
また、例えば、診断装置1は、特定の時刻になった場合に、超音波画像を生成してもよい。例えば、一般的に、不整脈と冠動脈が痙攣する冠攣縮性狭心症は、労作と無関係に夜や早朝に多く発生することが知られており、病院内における心電図検査や負荷心電図検査では診断がつかない場合もある。そこで、診断装置1は、超音波プローブ101にスキャン処理を開始させる処理を夜や早朝に集中して行ってもよい。これにより、診断装置1は、被検体Pの冠攣縮性狭心症等の診断が可能となる超音波画像を生成できる場合がある。
【0058】
また、上記例のように、診断装置1が、定期的に超音波画像を生成する用途や、特定の時間帯に超音波画像を生成する用途に用いられる場合には、診断装置1は、心電計システムを有しなくてもよい。具体的には、診断装置1は、図9に例示したホルター心電計プローブ111、ホルター心電計システム121、解析回路122及びブックマーク回路123を有しなくてもよい。
【0059】
また、上記第1の実施形態では、診断装置1が、心電図の解析により異常発生を検出した場合に、異常発生時刻から所定時間が経過するまでの間、超音波プローブ101によるスキャン処理を行う例を示した。しかし、診断装置1は、異常発生を検出した場合に、所定数の超音波画像が生成されるまで超音波プローブ101によるスキャン処理を行ってもよい。
【0060】
また、上記第1の実施形態において、診断装置1は、心電図を解析することで心時相を特定し、特定の心時相のタイミングで間欠的に超音波プローブ101によるスキャン処理を行ってもよい。そして、診断装置1は、間欠的に生成した超音波画像と、かかる超音波画像を生成したときに得られた心電図とをサーバ装置12に送信してもよい。このとき、サーバ装置12は、診断装置1から送信される超音波画像や心電図をリアルタイムに解析して、心臓壁の変動異常等を検出した場合には、異常発生時刻を所定の記憶メモリにログとして格納してもよい。
【0061】
また、上記第1の実施形態において、診断装置1は、超音波プローブ101が図8に例示したように2次元超音波プローブである場合には、3次元の医用画像データであるボリュームデータを取得してもよい。
【0062】
また、上記第1の実施形態において、診断装置1のシステムコントローラ124は、解析回路122による異常検出の回数が所定回数を超えた場合や、解析回路122による異常検出が所定時間連続した場合には、医師等が保持する携帯端末等にメール等により警告を通知してもよい。
【0063】
また、上記第1の実施形態において、診断装置1は、ホルター心電計プローブ111の代わりに、被検体Pの脈拍を取得可能な腕時計型の脈計測装置を有してもよい。かかる場合に、解析回路122は、例えば脈拍が所定の閾値範囲内でない場合には、被検体Pに異常が発生したと判定する。
【0064】
また、上記第1の実施形態において、図9に例示した送受信ユニット126、Bモード処理ユニット127、ドプラモード処理ユニット128、座標変換回路129、画像合成回路130等は、省電力モード(スタンバイ状態)で動作し、解析回路122によって異常が検出された場合に、システムコントローラ124による制御に従って、省電力モード(スタンバイ状態)から通常の電力供給モードにて動作してもよい。
【0065】
また、上記第1の実施形態において、診断装置1は、超音波画像を生成せずに、超音波プローブ101によって受信された反射波信号をサーバ装置12に送信してもよい。かかる場合には、超音波プローブ101は、図9に例示したBモード処理ユニット127、ドプラモード処理ユニット128、座標変換回路129及び画像合成回路130を有しなくてもよい。これにより、超音波プローブ101は、より小型化することが可能となる。また、この場合には、サーバ装置12は、図9に例示したBモード処理ユニット127、ドプラモード処理ユニット128、座標変換回路129及び画像合成回路130と同等の機能を有し、診断装置1から受信した反射波信号を用いて、超音波画像を生成する。
【0066】
また、上記例において、診断装置1は、超音波プローブ101によって受信された反射波信号から生データまで生成し、生成した生データをサーバ装置12に送信してもよい。かかる場合には、超音波プローブ101は、図9に例示した座標変換回路129及び画像合成回路130を有しなくてもよい。また、この場合には、サーバ装置12は、図9に例示した座標変換回路129及び画像合成回路130と同等の機能を有し、診断装置1から受信した生データを用いて、超音波画像を生成する。この例の場合、Bモード処理ユニット127やドプラモード処理ユニット128によって生成される生データは、反射波信号と比較してデータサイズが小さいので、診断装置1とアクセスポイント11との間における通信帯域の圧迫を防止することができ、同様に、アクセスポイント11とサーバ装置12との間における通信帯域の圧迫を防止することができる。
【0067】
また、上記例において、診断装置1は、医師や看護婦等が使用するデスクトップ型のパーソナルコンピュータや、ノート型のパーソナルコンピュータや、タブレット型のパーソナルコンピュータや、携帯端末等に送信してもよい。また、診断装置1は、心電図と超音波画像との組合せを送るのではなく、サーバ装置12や医師等が使用するパーソナルコンピュータ等に、心電図だけを送信してもよいし、超音波画像だけを送信してもよい。また、診断装置1は、解析回路122によって異常が検出された時刻の前後において得られた心電図と超音波画像との組合せを送信してもよい。
【0068】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、図3〜図8を用いて、薄型かつ平板状の超音波プローブ101の形状について説明した。しかし、診断装置1と接続される超音波プローブの形状は上記第1の実施形態に示した形状に限られない。そこで、第2の実施形態では、超音波プローブの他の形状例について説明する。
【0069】
[傾斜面]
上記第1の実施形態では、超音波プローブが、上面及び下面が略平行に形成された略直方体の外装ケース103を有する例を示した。しかし、超音波プローブは、双方の面が平行に形成されていない外装ケースを有してもよい。この点について図11及び図12を用いて説明する。図11は、変形例1に係る超音波プローブ201を示す外観拡大図である。また、図12は、図11のI2−I2線における超音波プローブ201を示す断面図である。
【0070】
図11に示すように、変形例1に係る超音波プローブ201は、被検体Pと接触させられる接触面204が傾斜面として形成される。具体的には、図12に示した例において、超音波プローブ201の外装ケース203は、ケーブル102が接続される側面部203aの厚さF11よりも側面部203aの反対側に位置する側面部203bの厚さF12の方が大きく、側面部203aから側面部203bに向かうほど厚くなる形状に形成される。すなわち、変形例1に係る超音波プローブ201は、図11に示した例において、下面に対して平行でない傾斜面である接触面204の一部に、下面と略平行な底面105bを有する開口部205aが形成され、かかる開口部205aの底面205bに音響レンズ105が固定される。
【0071】
図13は、被検体Pに固定された変形例1に係る超音波プローブ201を示す外観図である。図13に示すように、変形例1に係る超音波プローブ201が被検体Pに固定された場合、接触面204の傾斜に応じて音響レンズ105から発射される超音波の方向が傾く。これにより、変形例1に係る超音波プローブ201は、揺動可能でない圧電素子を有する場合であっても、外装ケース203の上面と下面とのなす角度に応じて、超音波を体表に対して略垂直以外の方向に送信することができる。なお、図13に示すように、被検体Pと超音波プローブ201の音響レンズ105との間には超音波用ゼリーが埋まるように塗布される。
【0072】
[窪み]
また、上記第1の実施形態では、超音波プローブが、平面状の上面及び下面が略平行に形成された略直方体の外装ケース103を有する例を示した。しかし、超音波プローブは、上面及び下面のうち音響レンズ105が設けられる接触面に、被検体Pの突起部(骨等)と係り合う凹部が形成された外装ケースを有してもよい。この点について図14及び図15を用いて説明する。図14は、変形例2に係る超音波プローブ301を示す外観拡大図である。また、図15は、図14のI3−I3線における超音波プローブ301を示す断面図である。
【0073】
図14及び図15に示すように、変形例2に係る超音波プローブ301は、被検体Pと接触させられる接触面304上に略直線状の窪みである凹部304a及び304bが形成される外装ケース303を有する。図14及び図15に示した例では、外装ケース303は、音響レンズ105を挟む位置に凹部304aと凹部304bが形成される。より具体的に説明すると、図15に示した例において、超音波プローブ301の外装ケース303は、ケーブル102が接続される側面部303aと音響レンズ105の位置との間に凹部304aが形成され、側面部303aの反対側に位置する側面部303bと音響レンズ105の位置との間に凹部304bが形成される。凹部304a及び304bは、接触面304から下面(底面)方向に湾曲した窪みであり、被検体Pの突起部と係り合う。
【0074】
このような超音波プローブ301は、凹部304a及び304bが肋間に嵌まりやすい形状であるので、被検体Pに固定されやすい。具体的には、超音波プローブ301は、音響レンズ105の両端に凹部304a及び304bが形成された外装ケース303を有するので、図7に示した例において、凹部304a及び304bが被検体Pの肋骨に位置する。このため、超音波プローブ301は、被検体Pに固定されやすく、この結果、被検体P内の固定の部位(例えば、心臓)を定常的に撮影することを可能にする。
【0075】
[アダプタ]
また、上記第1の実施形態では、超音波プローブが、平面状の上面及び下面が略平行に形成された略直方体の外装ケース103を有する例を示した。しかし、超音波プローブは、接触面から離れる方向に延伸自在な延伸部材(すなわち、少なくとも1以上に積み重ねられた複数の平板状の接着部材)が設けられた外装ケースを有してもよい。この点について図16を用いて説明する。図16は、変形例4に係る超音波プローブ401を示す断面図である。
【0076】
図16に示すように、変形例3に係る超音波プローブ401は、外装ケース403の接触面404のうち少なくとも中央部以外の面上に、接触面404から離れる方向に延伸自在な延伸部材としてアダプタ404a及び404bが設けられる。図16に示した例では、外装ケース403の接触面404のうち音響レンズ105を挟む位置にアダプタ404aとアダプタ404bとが設けられる。より具体的に説明すると、図16に示した例において、アダプタ404aは、外装ケース403の接触面404のうち、ケーブル102が接続される外装ケース403の側面部403aと音響レンズ105の位置との間に設けられる。また、アダプタ404bは、外装ケース403の接触面404のうち、側面部403aの反対側に位置する側面部403bと音響レンズ105の位置との間に設けられる。
【0077】
かかるアダプタ404a及び404bは、外装ケース403の厚さ方向に伸縮自在な部材である。例えば、アダプタ404a及び404bは、図16に示した例のように、直径が異なる複数の円柱部材が伸縮自在に連結される。図16に示した例では、円柱部材同士が最小の重なり範囲で重なっている伸状態のアダプタ404a及び404bを示している。
【0078】
このような変形例3に係る超音波プローブ401は、揺動可能でない圧電素子を有する場合であっても、アダプタ404aとアダプタ404bの伸縮状態に応じて、超音波を体表に対して略垂直以外の方向に送信することができる。さらに、超音波プローブ401は、アダプタ404a及び404bの伸縮状態を変動させることで、超音波の発射方向が調整することができる。なお、図13の例と同様に、被検体Pと超音波プローブ401の音響レンズ105との間には超音波用ゼリーが埋まるように塗布される。
【0079】
なお、ここでは図示することを省略するが、上記変形例3に係る超音波プローブ401は、アダプタ404aとアダプタ404bの代わりに、伸縮部材や弾性部材が設けられてもよい。これにより、固定バンド等によって超音波プローブ401が被検体Pの体表に圧着された場合に、伸縮部材等の形状変化により接触面404と体表との角度を調整することが可能になる。このため、図13の例と同様に、超音波を体表に対して略垂直以外の方向に送信することができる。この場合、角度調整には弾性部材の固さ、すなわち形状変化率の異なる部材を併用することで傾斜角度を修正し、図16の例と同様に、略垂直以外の所望の方向に超音波を送信できるように微調整が可能になる。なお、図13の例と同様に、被検体Pと超音波プローブ401の音響レンズ105との間には超音波用ゼリーが埋まるように塗布される。
【0080】
また、ここでは図示することを省略するが、上記第1の実施形態に係る超音波プローブ101は、接触面104上に厚さの異なる粘着パッドを貼り付けてもよい。この場合であっても、図13の例と同様に、超音波を体表に対して略垂直以外の方向に送信することができる。加えて、粘着パッドの厚さを変更することで傾斜角度も容易に修正できるので、図16の例と同様に、略垂直以外の所望の方向に超音波を送信できるように微調整が可能になる。なお、図13の例と同様に、被検体Pと超音波プローブ401の音響レンズ105との間には超音波用ゼリーが埋まるように塗布される。
【0081】
また、上述してきた超音波プローブ101、201、301又は401の形状は、上記例に限られない。例えば、上記例では、外装ケースの面(接触面等)が略四角形である例を示したが、外装ケースの面は、円形や楕円形や台形等の任意の形状でもよい。また、例えば、上記例では、音響レンズ105が接触面の中央近傍に設けられる例を示したが、音響レンズ105は、接触面の中央近傍以外の領域に設けられてもよい。
【0082】
また、例えば、上記図11に示した例では、外装ケース203の接触面204と底面とが所定の角度をなす例を示したが、超音波プローブ201において、接触面204と底面とは略平行であってもよい。かかる場合には、図12に示した開口部205aの底面205bと、外装ケース203の接触面204とが所定の角度をなす関係であればよい。かかる場合であっても、超音波を体表に対して略垂直以外の方向に送信することができる。
【0083】
また、例えば、上記図14に示した例では、外装ケース303の接触面304上に略直線状の凹部304a及び304bが形成される例を示した。しかし、凹部304a及び304bは略直線状でなくてもよく、被検体Pの突起部(骨等)と係り合うことが可能であればいかなる形状であってもよい。
【0084】
また、上記図11〜図13や図16等に示した超音波の送信方向が制御可能な超音波プローブは、1次元超音波プローブに適用することが有効である。すなわち、1次元超音波プローブは、超音波の送信方向が固定されるが、図11〜図13や図16等に示した構成とすることで、超音波の送信方向を制御することができる。
【0085】
[据え置き型]
また、上記の図1〜図16を用いて説明した実施形態では、診断装置1が被検体Pに携帯されることを前提とする例を示した。しかし、診断装置1は、被検体Pに携帯されない据え置き型であってもよい。具体的には、上述してきた診断装置1のうち、超音波プローブ101及びホルター心電計プローブ111は、被検体Pに携帯されてもよいが、装置本体100については、被検体Pに携帯されずに医療室等に据え置きされてもよい。
【0086】
以下、据え置き型の診断装置1における実施形態について、ストレスエコーを例に挙げて説明する。近年、虚血性心疾患等の心臓疾患の検査を目的として、ストレスエコーと呼ばれる検査が行われる場合がある。ストレスエコーは、心臓に負荷をかけて、安静時には確認できない心筋の動きや血液の流れの変化を調べるための超音波検査で、運動負荷心エコーと薬剤負荷心エコーがある。前者は患者に何段階かの異なる負荷の運動をしてもらうことで、後者は薬剤(例えばドブタミン)の量を何段階かに変えながら、心拍数と血圧をあげる。運動ができない状態の患者では薬剤負荷が行われるが、薬剤を使用しない安全性の高い運動負荷が実施されることが多い。かかる運動負荷心エコー検査では、前述したように被検体Pに運動を行わせた後、超音波プローブを被検体Pに押し当てることで超音波画像を動画または静止画群として少なくとも1心拍以上記録し、心電計プローブを被検体Pに取り付けることで心電図を記録することが行われる。ここで、運動負荷心エコーにおいては、被検体Pが運動を行ってから所定時間(例えば、90秒など)が経過するまでに超音波画像や心電図を記録することが求められる。すなわち、医師等の操作者は、運動後の被検体Pに対して、即座に超音波プローブを被検体Pに押し当てたり、心電計プローブを被検体Pに取り付けたりすることを要する。そして、超音波画像を記録するためには、観察対象の部位(心臓等)に超音波が照射されるように超音波プローブを被検体Pに押し当てることを要するので、ストレスエコーを行う操作者には高い技術が求められることとなる。
【0087】
しかし、上述した実施形態に係る据え置き型の診断装置1を用いた場合、操作者は、高い技術が求められることなく、超音波画像や心電図を容易に記録することができる。具体的には、実施形態に係る超音波プローブ101及びホルター心電計プローブ111を被検体Pに取り付けた状態で、かかる被検体Pに運動をさせる。そして、操作者は、被検体Pが運動を行った後に、装置本体100を操作することで、運動後の被検体Pにおける超音波画像や心電図を即座に記録することができる。また、上記の通り、実施形態に係る超音波プローブ101は、肋間等と嵌合することで被検体Pに固定されるので、被検体Pが運動した場合であっても位置ずれが発生することを防止できる。このため、操作者は、観察対象の部位(心臓等)に超音波が照射されるように、時間をかけて超音波プローブ101を運動前の被検体Pに取り付けることができる。そして、操作者は、被検体Pが運動した場合であっても超音波プローブ101の取り付け位置を調整することなく、観察対象の超音波画像を記録することができる。
【0088】
このように、上述した診断装置1は、装置本体100が据え置き型であっても、超音波プローブ101及びホルター心電計プローブ111が被検体Pに固定されるので、ストレスエコー等において高精度で効率的な検査を実現することができる。また、超音波プローブ101を被検体Pの同一の場所に取り付けることで、同じ観察対象の超音波画像を何度も記録することができるので、上述してきた診断装置1は、再現性の高い超音波診断装置として利用することができる。
【0089】
なお、上述した診断装置1は、複数の超音波プローブ101を有してもよい。この場合、操作者は、複数の観察対象が存在する場合に、各観察対象に超音波が照射されるように各超音波プローブ101を被検体Pに取り付けることで、1度に複数の超音波画像を記録することができる。例えば、運動負荷心エコーにおいて、心臓用音響ウィンドウと呼ばれる心尖ウィンドウ(Apical Window)や胸骨傍ウィンドウ(Parasternal Window)といった肋間の複数の観察位置から観察可能な心臓の特定断面の超音波画像を記録する場合、運動後の所定時間内に超音波プローブを各観察位置に適切な角度で押し当てることは技術が必要であるので、場合によって被検体Pに何度も運動を行わせることを要するおそれがある。しかし、実施形態に係る診断装置1では、1度に複数の超音波画像を記録することができるので、被検体Pに何度も運動を行わせることなくストレスエコーを実現することができる。なお、それぞれのプローブからの超音波反射波が干渉するような場合は、それぞれを順次切り替えて送受信する時間差制御を行う。
【0090】
[自動運動負荷心エコー]
上記では、被検体Pが運動を行った後に、操作者が装置本体100を操作することで、運動負荷心エコーを行う例を示した。しかし、装置本体100は、被検体Pによる運動が終了した時点を検知することで、運動直後の超音波画像及び心電図を自動的に記録してもよい。この点について図17を用いて具体的に説明する。図17は、実施形態に係る診断装置1によって実施される運動負荷心エコー検査の一例を示す図である。
【0091】
図17に示した例では、ホルター心電計プローブ111によって心電図波形W10が記録されたものとする。また、超音波画像G11〜G13及びG21〜G23は、心電図波形W10においてR波が検出された時刻に生成されたものとする。装置本体100のシステムコントローラ124は、心電図波形W10においてR波が検出される時刻についてのみ、スキャンコントローラ125を制御することで超音波画像を間欠的に生成する。なお、ここでは、R波が検出されるたびに超音波画像を順次生成する例を示したが、装置本体100は、所定時間(例えば、1分)が経過し、かつ、R波が検出されるタイミングにおいて超音波画像を間欠的に生成してもよい。
【0092】
そして、装置本体100は、このような超音波画像G11〜G13及びG21〜G23を解析することにより、被検体Pが運動中であるか否かを判定する。具体的には、心臓は伸縮運動を行うので、被検体Pが運動をしていない場合であっても心臓の形状や位置は変化する。しかし、各R波が検出されるタイミングにおいては、被検体Pが運動をしていない限りは、心臓の形状や位置は略同一となることが考えられる。そこで、装置本体100は、各R波が検出されるタイミングにおいて生成された超音波画像間の動きベクトル等を解析する(例えば相互相関処理などを利用する)ことにより、心臓の形状や位置が変化しているか否かを検出する。そして、装置本体100は、動きベクトルの大きさが所定値よりも小さい場合には、被検体Pが運動していないと判定し、動きベクトルの大きさが所定値以上である場合には、被検体Pが運動していると判定する。
【0093】
例えば、図17に示した例において、各R波に対応する超音波画像G11〜G13が連続して生成されたものとする。この例の場合、超音波画像G11〜G13に描出されている心臓の位置は略同一である。このため、装置本体100は、超音波画像G11〜G13が生成された時点では、心臓の位置が動いていないので、被検体Pが運動していないと判定することができる。
【0094】
また、例えば、図17に示した例において、各R波に対応する超音波画像G21〜G23が連続して生成されたものとする。この例の場合、超音波画像G21〜G23に描出されている心臓の位置はそれぞれ異なる。このため、装置本体100は、超音波画像G21〜G23が生成された時点では、心臓の位置が動いているので、被検体Pが運動していると判定することができる。
【0095】
このようにして、装置本体100は、心電図波形W10における各R波に対応する超音波画像を解析することにより、被検体Pが運動中であるか否かを判定する。そして、100は、被検体Pが運動している状態から運動していない状態となった際に、超音波画像を連続して生成する。すなわち、装置本体100は、R波が検出されるタイミングにおいて超音波画像を間欠的に生成する状態から、R波が検出されるタイミングに関係なく超音波画像を連続して生成する状態となる。この場合、少なくとも1心拍以上の動画または静止画群を収集し、保存する。前記収集時間あるいは心拍数は事前にユーザが指定可能とする。また、必要に応じて、収集期間中に被検体Pが運動しているかも並行して判定し、収集期間中に被検体Pの運動を検知した場合は、その動画または静止画群を破棄あるいは動きがあったことを示す情報を付加すると同時に、ユーザに画面上で知らせる。
【0096】
これにより、装置本体100は、運動している被検体Pが停止した場合に、自動的に超音波画像を連続して生成するので、操作者が装置本体100を操作することなく、自動的にストレスエコーの検査を実施することができる。
【0097】
なお、上述した被検体Pの運動有無を判定する処理は、装置本体100のシステムコントローラ124によって行われてもよいし、装置本体100が備える専用チップや専用プログラムによって行われてもよい。また、上記例では、R波が検出されるタイミングで超音波画像を生成する例を示したが、装置本体100は、P波、Q波、S波、T波、U波等の他の波が検出されるタイミング、あるいは検出しやすい波からの任意の遅延時間のタイミングで超音波画像を生成してもよい。
【0098】
以上説明したとおり、第1及び第2の実施形態によれば、超音波プローブを被検体に装着することができる。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0100】
1 診断装置
100 装置本体
101 超音波プローブ
103 外装ケース
104 接触面
105 音響レンズ
107 圧電素子
111 ホルター心電計プローブ
121 ホルター心電計システム
122 解析回路
123 ブックマーク回路
124 システムコントローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に接着することを目的として接触する接触面が前記被検体の突起部と嵌合可能な形状に形成された超音波プローブと、
前記被検体に装着された前記超音波プローブから当該被検体に対して送信された超音波の反射波信号を処理する処理装置と、
を備える、超音波診断装置。
【請求項2】
前記超音波プローブは、
前記接触面を有する平板状の外装ケースと、
前記被検体の突起部である骨の間に嵌合可能な凸形状に形成された湾曲部が前記外装ケース上に配置されるレンズと、
前記レンズを介して前記外装ケースの略厚み方向に送信される超音波を発生させる圧電素子と、
を備える、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記超音波プローブは、
前記接触面を有し、前記被検体の突起部である骨と係り合う凹部が当該接触面に形成された外装ケースと、
前記外装ケースに設けられたレンズと、
前記レンズを介して前記外装ケースの略厚み方向に送信される超音波を発生させる圧電素子と、
を備える、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記超音波プローブは、
伸縮部材、又は、少なくとも1以上に積み重ねられた複数の平板状の接着部材が前記接触面に形成されることにより、超音波の送信角度が変更可能である、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記処理装置は、
事前に設定された少なくとも1以上の時刻において、前記超音波プローブに対して超音波の送信処理及び反射波信号の受信処理を実行するように制御する制御部を備える、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記被検体に携帯されるとともに当該被検体の脈波又は脈拍を計測する脈計測装置をさらに備え、
前記処理装置は、
前記脈計測装置により計測された脈波又は脈拍に基づいて、前記被検体の異常有無を検出する検出部と、
前記検出部により異常が検出された場合に、前記超音波プローブに対して超音波の送信処理及び反射波信号の受信処理を開始するように制御するとともに、前記検出部により異常が検出されてから所定の時刻が経過するまで前記送信処理及び前記受信処理を行うように前記超音波プローブを制御する制御部と
をさらに備える、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記被検体の心電図を取得する心電計をさらに備え、
前記処理装置は、
前記心電図において所定の波形が検出されるタイミングにおいて生成された各超音波画像を解析することにより前記被検体が停止しているか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記制御部は、
前記判定部による判定の結果、前記被検体が動いている状態から停止している状態に変化した場合に、前記超音波プローブに対して超音波の送信処理及び反射波信号の受信処理を行うように制御する、
請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項1】
被検体に接着することを目的として接触する接触面が前記被検体の突起部と嵌合可能な形状に形成された超音波プローブと、
前記被検体に装着された前記超音波プローブから当該被検体に対して送信された超音波の反射波信号を処理する処理装置と、
を備える、超音波診断装置。
【請求項2】
前記超音波プローブは、
前記接触面を有する平板状の外装ケースと、
前記被検体の突起部である骨の間に嵌合可能な凸形状に形成された湾曲部が前記外装ケース上に配置されるレンズと、
前記レンズを介して前記外装ケースの略厚み方向に送信される超音波を発生させる圧電素子と、
を備える、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記超音波プローブは、
前記接触面を有し、前記被検体の突起部である骨と係り合う凹部が当該接触面に形成された外装ケースと、
前記外装ケースに設けられたレンズと、
前記レンズを介して前記外装ケースの略厚み方向に送信される超音波を発生させる圧電素子と、
を備える、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記超音波プローブは、
伸縮部材、又は、少なくとも1以上に積み重ねられた複数の平板状の接着部材が前記接触面に形成されることにより、超音波の送信角度が変更可能である、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記処理装置は、
事前に設定された少なくとも1以上の時刻において、前記超音波プローブに対して超音波の送信処理及び反射波信号の受信処理を実行するように制御する制御部を備える、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記被検体に携帯されるとともに当該被検体の脈波又は脈拍を計測する脈計測装置をさらに備え、
前記処理装置は、
前記脈計測装置により計測された脈波又は脈拍に基づいて、前記被検体の異常有無を検出する検出部と、
前記検出部により異常が検出された場合に、前記超音波プローブに対して超音波の送信処理及び反射波信号の受信処理を開始するように制御するとともに、前記検出部により異常が検出されてから所定の時刻が経過するまで前記送信処理及び前記受信処理を行うように前記超音波プローブを制御する制御部と
をさらに備える、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記被検体の心電図を取得する心電計をさらに備え、
前記処理装置は、
前記心電図において所定の波形が検出されるタイミングにおいて生成された各超音波画像を解析することにより前記被検体が停止しているか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記制御部は、
前記判定部による判定の結果、前記被検体が動いている状態から停止している状態に変化した場合に、前記超音波プローブに対して超音波の送信処理及び反射波信号の受信処理を行うように制御する、
請求項6に記載の超音波診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−78570(P2013−78570A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−208086(P2012−208086)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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