説明

超音波送受信器固定具、超音波送受信器固定具を用いた配管流れ監視装置および配管流れ監視方法

【課題】 どの方向の流速ベクトルに対しても高精度に流量を監視できる超音波トランスデューサの数と配置の最適化を図ることを可能とする。
【解決手段】 超音波送受信器固定具(20)は、複数の超音波送受信器(50)を、被測定配管(60)の外側に位置して同心円周上に等間隔で固定可能な装着部(22)を備えたことを特徴とする。また、配管流れ監視装置(10)は、上記の超音波送受信器固定具(20)に加えて、その超音波送受信器固定具(20)の装着部(22)へ固定した複数の超音波送受信器(50)が、前記被測定配管(60)内を流れる流体の流速情報を計測したデータに基づいて前記流体の流速変化量を計測してその流速変化量から流量変化量を取得する制御装置(30)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定配管内を流れる流体の流速を計測するための複数の超音波送受信器を固定する超音波送受信器固定具、その超音波送受信器固定具を用いて固定した複数の超音波送受信器によって被測定配管内を流れる流速を計測し、その流速変化量から流量の変化量を監視する配管流れ監視装置および配管流れ監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、超音波を利用して流体の流量を測定する流量測定装置が広く利用されている。超音波による流量測定には、ドップラ法、相互相関法、伝搬時間差法、伝搬時間逆数差法、シング・アラウンド法などがある。
超音波は物質を透過して伝播する性質があるので、特に被測定配管の外側から内部の流量を測定することが好適である。超音波は、導管が不透明であっても、流体自体が不透明であっても、導管内の速度分布や流量を測定することができる。したがって、懸濁液や、水銀またはナトリウム等の液体金属などの不透明流体が被測定流体であっても、流速(および流速に基づく流量)の測定にも適応できる。
【0003】
本出願人は配管流れの流量の変化量を高精度に監視するために、特許文献1に示す「配管流れ監視装置および配管流れ監視方法」を開発している。その方法は、配管の中心流速と流量がある流量範囲において線形性を持つことを利用しているものである。
更に具体的には、3つの超音波トランスデューサ(超音波送受信器)を用いて配管のある1点に対して(特に配管中心に対して)三次元流速を計測し、その流速変化量から流量の変化量を監視する装置および方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−197076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、配管のある1点(特に配管中心)の流速を計測できればよいので、理論的には配管円周上のどの位置であっても3つの超音波トランスデューサを設置すれば、配管中心の流速の測定精度は同じとなるはずである。
【0006】
しかし、実際には超音波ドップラ法の流速分解能が有限である。したがって、流量監視精度は、超音波トランスデューサの数と配置によって大きく影響を受ける。しかも、配管中心の流速ベクトルは流量の変化や配管のレイアウトによって変化する。それゆえ、どの方向の流速ベクトルであっても高精度に流量を監視できる超音波トランスデューサの数と配置の最適化を図る必要があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、どの方向の流速ベクトルに対しても高精度に流量を監視できる超音波トランスデューサの数と配置の最適化を図ることを可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(第一の発明)
本願における第一の発明は、 複数の超音波送受信器(50)を、被測定配管(60)の外側に位置して同心円周上に等間隔で固定可能な装着部(22)を備えた超音波送受信器固定具(20)に係る。
【0009】
(作用)
複数の超音波送受信器(50)を被測定配管(60)の外側に位置して同心円周上に等間隔で固定して流体情報を計測する場合は、複数の超音波送受信器(50)を等間隔で配置しない場合より、流量監視精度が向上する。
本発明に係る超音波送受信器固定具(20)があれば、等間隔での固定作業が容易となり、現倍での作業効率の向上に寄与する。
【0010】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、 前記装着部(22)は、前記被測定配管(60)に対して前記同心円周方向へ回転可能であるように形成する。
予め配置された装着部どうしがなす角度の半分の位置に、回転を停止させる目印や物理的な簡易ストッパなどを備えていると、なお良い。
【0011】
(作用)
装着部(22)が同心円周方向へ回転可能であることによって、前記複数の超音波送受信器(50)で流体の流速情報を計測終了した後、その装着部(22)に固定されている複数の超音波送受信器(50)の等間隔をなす角度の半分の角度だけ前記装着部(22)を回転させて、二度目の計測をすることができる。 それによって、複数の超音波送受信器(50)を装着部(22)へ固定した数に対して2倍の計測位置を確保できる。その結果、計測箇所をより多くできるので流量監視精度が向上する。さらに、複数の超音波送受信器(50)が有効活用される。
【0012】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、 前記装着部(22)は、その外周方向に複数に分割可能に形成するとともに、その各分割部分を一体的に連結した筒状体を構成することもできる。
【0013】
(作用)
前記装着部(22)が複数に分割可能であるので、前記各分割部分は被測定配管(60)の外側へ囲むようにして連結具などで一体的に連結することができる。 それによって、装着部(22)は被測定配管(60)の長手方向の任意の位置へ設置する作業が容易化される。
【0014】
(第二の発明)
本願における第二の発明は、 複数の超音波送受信器(50)を、被測定配管(60)の外側に位置して同心円周上に等間隔で固定可能である装着部(22)を備えた超音波送受信器固定具(20)と、 その超音波送受信器固定具(20)の装着部(22)へ固定した複数の超音波送受信器(50)が、前記被測定配管(60)内を流れる流体の流速情報を計測した異なる計測点の3つ以上のデータに基づいて前記流体の流速変化量を計測してその流速変化量から流量変化量を取得する制御装置(30)と、を備えたことを特徴とする配管流れ監視装置(10)に係る。
【0015】
(作用)
超音波送受信器固定具(20)では、複数の超音波送受信器(50)が被測定配管(60)の外側に位置して同心円周上に等間隔で固定して流体情報を計測するので、複数の超音波送受信器(50)を等間隔で配置しない場合に比べて、流量監視精度が向上する。制御装置(30)では、上記の超音波送受信器固定具(20)を用いて流体の流速情報を計測した異なる計測点の3つ以上のデータに基づいて流量変化量を取得するので、より高精度での流量の監視が可能となる。
【0016】
(第二の発明のバリエーション1)
第二の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、 前記装着部(22)が、前記被測定配管(60)に対して前記同心円周方向へ回転可能である。
【0017】
(作用)
装着部(22)が同心円周方向へ回転可能であることによって、前記複数の超音波送受信器(50)で流体の流速情報を計測終了した場合に、その装着部(22)に固定されている複数の超音波送受信器(50)の等間隔をなす角度の半分の角度だけ前記装着部(22)を回転させて、二度目の計測をすることができる。 それによって、複数の超音波送受信器(50)を装着部(22)へ固定した数に対して2倍の計測位置を確保できる。その結果、計測箇所を増やすことができるので、流量の監視精度が向上する。同時に、複数の超音波送受信器(50)が有効活用されることとなる。
【0018】
(第二の発明のバリエーション2)
第二の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、 前記装着部(22)は、その外周方向に複数に分割可能であるように形成するとともに、その各分割部分を一体的に連結した筒状体を構成することもできる。
【0019】
(作用)
前記装着部(22)が複数に分割可能であるので、前記各分割部分は被測定配管(60)の外側へ囲むようにして連結具などで一体的に連結することができる。それによって、装着部(22)は被測定配管(60)の長手方向の任意の位置へ容易に設置される。
【0020】
(第二の発明のバリエーション3)
第二の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、 前記制御装置(30)は、前記複数の超音波送受信器(50)で前記流体の流速情報を計測終了した後、その装着部(22)に固定されている複数の超音波送受信器(50)の等間隔をなす角度の半分の角度だけ前記装着部(22)を回転させて、二度目の計測をする指令を与える指令部(48)を備えることもできる。
【0021】
(作用)
指令部(48)は、複数の超音波送受信器(50)による一度目の計測に加えて、複数の超音波送受信器(50)の等間隔をなす角度の半分の角度だけ装着部(22)を回転させて二度目の計測をする指令を与えるので、複数の超音波送受信器(50)を装着部(22)へ固定した数に対して2倍の計測位置を確保できる。その結果、計測箇所をより多くできるので流量監視精度が向上する。さらに、複数の超音波送受信器(50)が有効活用される。
【0022】
(第三の発明)
本願における第三の発明は、 被測定配管(60)の外側の同心円周上に等間隔に位置する複数の計測点(50)から超音波を用いて前記同心円周の中心の1点の流速情報を計測し、 その計測した流速情報から異なる計測点の3つ以上のデータに基づいて流速変化量を計測し、 その流速変化量から流量変化量を取得することを特徴とする配管流れ監視方法に係る。
【0023】
(作用)
被測定配管(60)の外側の同心円周上に等間隔に位置する複数の計測点(50)から流体情報を計測するので、複数の計測点(50)が等間隔に位置していない場合より、流量監視精度が向上する。したがって、より一層高精度で流量を監視することとなる。
【0024】
(第三の発明のバリエーション1)
第三の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、 上記の同心円周上に等間隔に位置する複数の計測点(50)から超音波を用いて前記同心円周の中心の1点の流速情報を計測した後、 前記複数の計測点(50)を、前記等間隔をなす角度の半分の角度だけ同心円周上で回転し、 その回転後の前記複数の計測点(50)から超音波を用いて再び前記同心円周の中心の1点の流速情報を計測することとしてもよい。
【0025】
(作用)
前記複数の計測点(50)で流体の流速情報を計測終了した後、その複数の計測点(50)の等間隔をなす角度の半分の角度だけ回転させて、再び計測をすることによって、一度目の前記複数の計測点(50)の数に対して2倍の計測点を確保できる。その結果、計測点を増やすことができるので、流量の監視精度を向上させることに寄与する。
【発明の効果】
【0026】
第一の発明によれば、どの方向の流速ベクトルに対しても高精度に流量を監視できる超音波送受信器の数と配置の最適化を図ることを可能とする超音波送受信器固定具を提供することができた。
第二の発明によれば、どの方向の流速ベクトルに対しても高精度に流量を監視できる超音波送受信器の数と配置の最適化を図ることを可能とする配管流れ監視装置を提供することができた。
第三の発明によれば、どの方向の流速ベクトルに対しても高精度に流量を監視できる超音波による計測点の数と配置の最適化を図ることを可能とする配管流れ監視方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態の超音波送受信器固定具、並びに前記超音波送受信器固定具を備えた配管流れ監視装置を示す概略的な構成図である。
【図2】超音波送受信器の設置状態を説明するための配管断面図である。
【図3】本発明の実施形態の配管流れ監視装置の機能ブロック図である。
【図4】超音波送受信器を被測定配管の屈曲部へ設置する状態を説明するための概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態で示すものは一例であるので、特許請求範囲に適用される範囲はそれらの例に限定されない。
本実施形態に係る超音波送受信器固定具20は、図1および図2に示すように、被測定配管60内を流れる流体の流速を計測するための複数の超音波送受信器50(超音波トランスデューサ)を固定する器具である。
【0029】
前記超音波送受信器固定具20は、図1に示すように複数の超音波送受信器50を被測定配管60の外側に位置して同心円周上に等間隔で固定可能な固定部23を有する装着部22と、その装着部22を設けるために前記被測定配管60の外側に取り付ける固定具本体21と、を有している。
【0030】
前記固定具本体21は、例えば円筒形などの筒状体をなしており、被測定配管60の外側へ固定する構成である。その一例として、前記筒状体が外周方向に2分割あるいは3分割などのように分割可能とする。それに加えて、前記各分割部分を被測定配管60の外側から被せて連結具などで一体的に連結する。そのような構成とすることで、固定具本体21は被測定配管60の長手方向の任意の箇所へ容易に取り付けたり、外したりすることができる。
しかし、前記固定具本体21は前述した筒状体に限定されず、その他の形状であっても良い。つまり、特定な形状に限定されない。
【0031】
前記装着部22は、例えば円筒形などの筒状体をなしており、その筒状体を例えば軸受24によって円周方向へ回転可能に設けられる。その一例として、前記装着部22は、図1において左側の部分が固定具本体21に回転可能に支持され、図1において右側の部分が固定具本体21から突出している。その突出した部分に複数の超音波送受信器50を円周方向へ等間隔にて固定できる構造である。さらに、前記装着部22はモータなどの回転駆動部25にて正転方向および逆転方向に回転駆動される構成である。
【0032】
上記の装着部22は、一例として、その筒状体が外周方向に2分割あるいは3分割などのように分割可能とし、前記各分割部分を連結具などで一体的に連結することができる。それによって、前記各分割部分は被測定配管60の外側へ囲むようにして連結具などで一体的に連結した後、その装着部22を前記固定具本体21へ回転可能に取り付けることができる。その結果、装着部22は被測定配管60の長手方向の任意の箇所にて、容易に取り付けたり、外したりすることができる。
【0033】
前記装着部22には、複数の超音波送受信器50を同心円周上に等間隔で固定する固定部23が設けられている。また、各超音波送受信器50は、図1に示すように配管60内の流体の主流方向に対して所定の角度θ1傾斜して前記固定部23へ固定される。これによって主流方向に流れる液体が超音波送受信器50に対して離接する方向成分を有することとなるので、超音波によって流速を測定することが可能となる。
なお、主流方向とは、配管60の軸方向であって、配管60内の流体が主に流れる方向である。また、角度θ1は測定する流速や偏流の状況によって適宜設定することができる。
【0034】
上記の装着部22における複数の固定部23は、配管60の外側において円周方向に等間隔の角度θ2ずつ離して配置される。その角度θ2は測定する配管60の口径や設置状況によって適宜設定することができる。
一例として、超音波送受信器50を固定する箇所が2つであれば、角度θ2は180°であり、3つであれば角度θ2は120°であり、4つであれば角度θ2は90°であり、6つであれば角度θ2は60°であり、8つであれば角度θ2は45°である。
【0035】
なお、本実施形態では図1に示すように3つの超音波送受信器50を例示しているが、計測する箇所がより多いほど流量監視精度が向上する。したがって、超音波送受信器50を固定可能な数は多い方が望ましい。
また、超音波送受信器50にて計測する位置は、被測定配管60に対して3箇所以上であることが望ましい。しかし、超音波送受信器50を固定する固定部23の数は、角度θ2が180°の等間隔に配置した2つであっても良い。その場合、まず2箇所で流速を計測終了した後に、前記装着部22を前記角度θ2の半分の角度90°回転させて二度目の計測をすることによって、合計4箇所(同心円周上の異なる計測点が3つ以上になる)で計測できるからである。
その他の例として、角度θ2が120°の等間隔に配置した3つの超音波送受信器50にて計測する場合は、一度目の計測が終了した後に、前記装着部22を前記角度θ2の半分の角度60°回転させて二度目の計測をすることによって、合計6箇所の計測ができる。
【0036】
以上のように、装着部22が同心円周方向へ回転可能であることによって、前記装着部22が有する固定部23の数の2倍の計測をすることができるので、より多くの計測箇所を得ることができ、流量監視精度が向上することとなる。また、複数の超音波送受信器50を有効活用することができる。
【0037】
また、前記装着部22における複数の固定部23を使用する例として、例えば前記装着部22が6つの固定部23を有する場合、そのうちの3つの固定部23に対して角度θ2が120°の等間隔となるように3つの超音波送受信器50を固定してもよい。そのとき、一度目の計測だけであれば3箇所(計測点)の計測となるが、それに加えて、その後に前記角度θ2の半分の角度60°回転させて二度目の計測をすれば合計6箇所(計測点)の計測ができる。
【0038】
同じようにして、例えば前記装着部22が8つの固定部23を有する場合、そのうちの4つの固定部23に対して角度θ2が90°の等間隔となるように4つの超音波送受信器50を固定してもよい。そのとき、一度目の計測だけであれば4箇所(計測点)の計測となるが、それに加えて、その後に前記角度θ2の半分の角度45°回転させて二度目の計測をすれば合計8箇所(計測点)の計測ができる。
なお、前記装着部22における複数の固定部23を使用する方法は、上記の例に限定されず、広範囲に適用される。
【0039】
複数の超音波送受信器50は、配管60の外円周上の等間隔に位置する3つ以上の異なる箇所(計測点)から超音波を用いて配管60の中心の1点の流速情報を計測する。
上記の流速情報を計測する1点とは、図2に示すように例えば3つの超音波送受信器50から送信された超音波パルス波53の交点E1である。その超音波パルス波53の交点となるのは装着部22の回転中心であり、本実施形態では配管60の中心としている。換言すれば、流速情報を計測する1点とは、同心円周上に配置された3つの超音波送受信器50が回転するときの回転中心である。
【0040】
次に、本実施形態に係る配管流れ監視装置10について図面を参照して説明する。
配管流れ監視装置10は、図1に示すように前記超音波送受信器固定具20を用いて複数の超音波送受信器50を固定し、その複数の超音波送受信器50によって被測定配管60内を流れる流速を計測し、その流速変化量から流量の変化量を監視する装置である。すなわち、配管流れ監視装置10は、複数の超音波送受信器50を固定した上記の超音波送受信器固定具20に加えて、制御装置であるパソコンなどの測定端末器30を含む装置である。
【0041】
図1において流体として例えば液体61は、矢印で示すように左から右へ流れる流れ方向が主流方向であるとする。その主流方向とは、配管60の軸方向であって、配管60内の流体が主に流れる方向をいう。
【0042】
配管流れ監視装置10は、ドップラ法および相互相関法を用いた計測ができる。例えばドップラ法を用いるには、ナイキストのサンプリング定理により制限されるような場合は相互相関法を用いる。あるいは、相互相関法の測定範囲を超えている場合はドップラ法を用いる。そのように状況に応じた方法を使い分けることによって多様な配管60の構造に対応することが可能である。
超音波送受信器50から送信した超音波パルス波53は、管内を流れる気泡62などの浮遊物で反射する。その反射波54は超音波送受信器50によって受信されて測定端末器30へ送信される。
【0043】
配管流れ監視装置10は、図3に示すように、測定端末器30と超音波送受信器固定具20に備えた複数の超音波送受信器50とがケーブル11を介して有線で接続されている。超音波送受信器50は、本実施形態では同じものが3つ設置されているが、そのうちの1つを詳細に図示している。
【0044】
前記超音波送受信器50は、超音波送信部51と超音波受信部52とを含んで構成される。
前記超音波送信部51は、圧電素子等で構成され、配管60の外側から内部に向かって図1および図2に示した超音波パルス波53を送信する。また、前記超音波受信部52は、気泡62によって反射された反射波54を受信する。
【0045】
前記測定端末器30は、制御部40と記憶部31と表示部32と操作部33とを含んで構成される。
前記制御部40は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により測定端末器30を管理および制御する。記憶部31は、ROM、RAM、EEPROM、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成され、制御部40で処理されるプログラムや取得データなどを記憶する。表示部32は、液晶ディスプレイ、EL(Electro Luminescence)、PDP(Plasma Display Panel)等で構成され、記憶部31に記憶されたアプリケーションのGUI(Graphical User Interface)を表示する。操作部33は、キーボード、十字キー、ジョイスティック等の複数のキー(スイッチ)およびマウスから構成され、ユーザの操作入力をするものである。
さらに、上記の制御部40は、パルサー41、レシーバ42、A/D変換部43、流速合成部44、初期状態取得部45、経過状態取得部46、変化量取得部47、指令部48を含んで構成されている。
【0046】
前記パルサー41は、ケーブル11を介して超音波送信部51に超音波入力信号(電圧)を入力する。その超音波入力信号には超音波送信部51が送信する超音波パルス波53の周波数情報および間隔情報を含んでいる。
前記レシーバ42は、超音波受信部52によってアナログ信号に変換された反射波54の信号を増幅する。
前記A/D変換部43は、レシーバ42によって増幅されたアナログ信号としての反射波54をデジタル信号に変換する。
前記流速合成部44は、超音波送受信器50からレシーバ42、A/D変換部43を経て得た3つ以上の流速情報の各流速ベクトルを合算して三次元流速値を算出する。
【0047】
前記初期状態取得部45は、流速合成部44で得られたある時点の三次元流速値から初期状態を取得する。その初期状態は、プラントなどの設備が健全であるときに測定して取得することができる。
前記経過状態取得部46は、流速合成部44で得られた任意の時点の三次元流速値から経過状態を取得する。その経過状態は数日後や数ヶ月後などの任意の時点で取得することができる。つまり、初期状態取得部45と組み合わせることで、所望する期間におけるプラントの状態を取得することができる。 さらに、前記経過状態取得部46は、所望する期間、所定の間隔をもって継続して経過状態を取得することができる。
【0048】
上記の初期状態取得部45と経過状態取得部46は、三次元流速値、主流方向の流速値、またはこれらに基づく流量を初期状態または経過状態として取得することができる。
超音波送受信器50で測定できるのは、超音波送受信器50に対して離接する方向の速度成分(流速情報)である。 したがって、3つ以上の速度成分から三次元流速値を求めることができる。その三次元流速値を用いることによって、偏流や乱流であっても測定することが可能となる。また、1点の流速情報を用いることによって、配管60の直径すべてに超音波を到達させる必要がないので、配管60が大口径で、さらに大流量かつ大偏量であるような箇所であっても測定が可能となる。
【0049】
上記の三次元流速値は、そのまま初期状態または経過状態としてもよいし、さらに主流方向の流速値に変換して比較してもよいし、または既知の管径を用いて流量に変換してから比較してもよい。流速と流量は比例するため、流速の変化をとらえれば、流量の変化に置き換えることができる。
【0050】
上記の変化量取得部47は、初期状態取得部45から得た初期状態と、経過状態取得部46から得た経過状態を比較することによって相対変化量を取得する。その相対変化量には、初期状態を定格値とし、その定格値と経過状態の測定値を比較して得られる変化率も含まれる。また、初期状態と、その初期状態を取得したある時点から任意の時点まで所定の間隔をもって継続して取得された複数の経過状態とを比較して経時的な変化量を取得することができる。それによって、所望する期間におけるプラントの性能や動作効率の変遷(トレンドチャート)を監視することができる。
【0051】
また、上記の指令部48は、超音波送受信器固定具20の装着部22の複数の固定部23へ円周方向に等間隔の角度θ2ずつ離して装着した超音波送受信器50によって一度目の計測終了後に、前記角度θ2の半分の角度だけ前記装着部22を回転させて二度目の計測をする指令を与えるものである。
前記指令部48は、パルサー41へ流速情報を計測する指令を与えるとともに、ケーブル12を介して前記装着部22を回転駆動する回転駆動部25へ駆動開始および駆動停止、回転方向や回転角度などの駆動指令を与える。
【0052】
なお、本発明に係る配管流れ監視装置10は、図4に示すように屈曲した配管60の屈曲部に設置させても機能を発揮できる。屈曲部付近には矢印で示したように偏流が発生しているが、例えば3つの超音波送受信器50により、交点E2のXYZ上での三次元ベクトルを計測し、得られた三次元ベクトルを基にした流速情報から相対変化量を測定することで対応が可能である。
【0053】
次に、上記の配管流れ監視装置10における作用、すなわち本発明に係る配管流れ監視方法について説明する。
まず、超音波送受信器固定具20における装着部22の固定部23へ複数の超音波送受信器50を等間隔の位置へ固定する。
なお、前記超音波送受信器固定具20に固定した複数の超音波送受信器50によって、被測定配管60の外円周上の等間隔に位置する3つ以上の箇所(計測点)にて流速情報を計測する方法は、前述した超音波送受信器固定具20における説明の通りである。
すなわち、詳しい説明は省略するが、超音波送受信器固定具20の装着部22の複数の固定部23へ円周方向に等間隔の角度θ2ずつ離して装着した超音波送受信器50によって、一度目で3つ以上の箇所(計測点)にて流速情報を計測することができる。あるいは、一度目の計測終了後に、前記角度θ2の半分の角度だけ装着部22を回転して二度目の計測をし、それらを合計して4つ以上の箇所(同心円周上の異なる計測点が3つ以上になる)にて流速情報を計測することもできる。
【0054】
以上のように、超音波送受信器固定具20を用いて、配管60の外円周上の等間隔に位置する3つ以上の異なる箇所(計測点)から、各超音波送受信器50から送信される超音波パルス波53を用いて装着部22の回転中心(同心円周の中心)の1点の流速情報を計測することとなる。前記回転中心の1点は、本実施形態では被測定配管60の中心の1点となる。
すなわち、各超音波送受信器50では、超音波送信部51から配管60の内部に向かって超音波パルス波53を所定の周波数で送信する。その超音波パルス波53が気泡62によって反射された1点の流速情報である反射波54を超音波受信部52によって受信する。
【0055】
反射波54から得られた3つ以上の流速情報を流速合成部44で三次元流速値として算出する。その測定が初期状態の取得かあるいは経過状態の取得かを判断する。
その判断が初期状態の取得である場合、すなわち設備が健全に動作しているある時点における測定である場合には、初期状態取得部45が流速合成部44で算出した三次元流速値から初期状態を算出する。
一方、上記の判断が経過状態の取得である場合、あるいは上記の初期状態を算出した後である場合、経過状態取得部46が流速合成部44で算出した任意の時点の三次元流速値から経過状態を算出する。
次いで、変化量取得部47は上記の初期状態と経過状態を比較することによって相対変化量を取得する。その取得した相対変化量は、記憶部31にて記憶したり、表示部32にて表示したりすることができる。
それによって、設備の管理者は管内流れの状態を把握し、流量の相対変化量の過多をもって動作の健全さを把握することができる。
【0056】
なお、配管流れ監視装置10は所望の期間継続して配管60の監視が可能である。そのため、変化量取得部47が相対変化量を取得した後にも、さらに相対変化量の取得を継続すると判断した場合は、再び3つの超音波送受信器50から超音波パルス波53を送信し、配管60の監視を継続する。 また、変化量取得部47が相対変化量の取得を終了すると判断した場合は、配管60の監視を終了する。
【0057】
従来の配管流れ監視装置(「背景技術」の項に示した特許文献1)および本実施形態の配管流れ監視装置10における流量監視精度について実験・解析を行なった結果、以下の点が明らかになった。
(1)被測定配管60の外円周上で3つ以上の異なる箇所(計測点)にて計測する場合、単に3箇所から計測しても流量を監視できるが、配管60に対する計測箇所はより多い方が流量監視精度は向上する。
本実施形態では、装着部22が同心円周方向へ回転可能であることによって、複数の超音波送受信器50で一度目の計測を終了した後、前記複数の超音波送受信器50の等間隔をなす角度θ2の半分の角度だけ装着部22を回転させて、二度目の計測をすることができる。それによって、装着部22が有する固定部23の数の2倍の計測をすることができるので、より多くの計測箇所(計測点)を得ることができ、流量監視精度が向上することとなる。さらに、複数の超音波送受信器50が有効活用される。
(2)3つ以上の異なる箇所の計測位置は、配管60の外円周上で等間隔である方が流量監視精度は向上する。この点は上記の(1)の条件より優先される事項である。
【0058】
例えば、異なる箇所の計測位置が5つであっても、配管60の外円周上で等間隔に配置していない場合は、異なる箇所の計測位置が3つで等間隔に配置した場合より、流量監視精度が悪いことが実験的に明らかとなった。
したがって、例えば、現場の配管60のレイアウトや干渉物の影響によって複数の超音波送受信器50を等間隔に配置できない場合などは、超音波送受信器50の数を減らしても等間隔に配置することが優先されることが考えられる。
【0059】
以上のことから、本実施形態に係る超音波送受信器固定具20、並びに前記超音波送受信器固定具20を用いた配管流れ監視装置10および配管流れ監視方法においては、どの方向の流速ベクトルに対しても高精度に流量を監視できる超音波送受信器50の数と配置の最適化を図ることが可能となった。 その結果、配管60が大口径で、さらに大流量かつ大偏量であるような箇所であっても、より一層高い精度で流量を監視することができた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、超音波流量計の製造業、超音波流量計に関するデータ処理などに関わるソフトウェア開発業、流量の計測に関するコンサルティング業などにおいて、利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0061】
10 配管流れ監視装置 11 ケーブル
12 ケーブル
20 超音波送受信器固定具 21 固定具本体
22 装着部 23 固定部
24 軸受 25 回転駆動部
30 測定端末器(制御装置) 31 記憶部
32 表示部 33 操作部
40 制御部 41 パルサー
42 レシーバ 43 A/D変換部
44 流速合成部 45 初期状態取得部
46 経過状態取得部 47 変化量取得部
48 指令部
50 超音波送受信器 51 超音波送信部
52 超音波受信部 53 超音波パルス波
54 反射波
60 配管 61 液体
62 気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の超音波送受信器を、被測定配管の外側に位置して同心円周上に等間隔で固定可能な装着部を備えたことを特徴とする超音波送受信器固定具。
【請求項2】
前記装着部は、前記被測定配管に対して前記同心円周方向へ回転可能である請求項1に記載の超音波送受信器固定具。
【請求項3】
前記装着部は、その外周方向に複数に分割可能に形成し、その各分割部分を一体的に連結した筒状体を構成している請求項1または請求項2のいずれかに記載の超音波送受信器固定具。
【請求項4】
複数の超音波送受信器には、
被測定配管の外側に位置して同心円周上に等間隔で固定可能である装着部を備えた超音波送受信器固定具と、
その超音波送受信器固定具の装着部へ固定した複数の超音波送受信器が、前記被測定配管内を流れる流体の流速情報を計測した異なる計測点の3つ以上のデータに基づいて前記流体の流速変化量を計測してその流速変化量から流量変化量を取得する制御装置と、
を備えた配管流れ監視装置。
【請求項5】
前記装着部は、前記被測定配管に対して前記同心円周方向へ回転可能である請求項4に記載の配管流れ監視装置。
【請求項6】
前記装着部は、その外周方向に複数に分割可能に形成し、その各分割部分を一体的に連結した筒状体を構成している請求項4または請求項5に記載の配管流れ監視装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記複数の超音波送受信器によって前記流体の流速情報を計測終了した場合に、その装着部に固定されている複数の超音波送受信器の等間隔をなす角度の半分の角度だけ前記装着部を回転させて、二度目の計測をする指令を与える指令部を備えた請求項4から請求項6のいずれかに記載の配管流れ監視装置。
【請求項8】
被測定配管の外側の同心円周上に等間隔に位置する複数の計測点から超音波を用いて前記同心円周の中心の1点の流速情報を計測し、
その計測した流速情報から異なる計測点の3つ以上のデータに基づいて流速変化量を計測し、
その流速変化量から流量変化量を取得することとした配管流れ監視方法。
【請求項9】
上記の同心円周上に等間隔に位置する複数の計測点から超音波を用いて前記同心円周の中心の1点の流速情報を計測した後、
前記複数の計測点を、前記等間隔をなす角度の半分の角度だけ同心円周上で回転し、
その回転後の前記複数の計測点から超音波を用いて再び前記同心円周の中心の1点の流速情報を計測する請求項8に記載の配管流れ監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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