説明

超音波造影剤の投薬処方物

【課題】増強された画像および長い持続時間の画像を提供する微粒子を含む投薬処方物、ならびに超音波画像化技術に使用する微粒子を含む投薬処方物を投与するためのキットを提供すること。
【解決手段】臨床研究が行われ、ポリマー微粒子を使用して、顕著に増強された長い持続時間の画像を提供する特定の投薬処方物が開発された。このポリマー微粒子は、その中に組み込まれるペルフルオロカーボンガスを有する。この投薬処方物は、生体適合性ポリマーから形成される微粒子を含有し、これらの微粒子は、好ましくはこのポリマー中に組み込まれる脂質を含有し、そして体温において気体であるペルフルオロカーボンを含む。これらの微粒子は、心室において5分間より長くか、または心筋において1分間より長く超音波画像化法を増強するのに有効な量(体重1kgあたり0.025mg〜8.0mgの範囲の微粒子の用量)で患者に提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、診断用イメージング剤の一般的な分野にあり、そして特に、増強された画像および長い持続時間の画像を提供する特定の超音波造影剤の投薬処方物に関する。
【0002】
超音波を使用して、ヒトまたは動物の臓器および内部構造体の画像を得る場合、超音波の波(ヒトの耳によって認識できる周波数を上回る周波数の音響エネルギーの波)は、これらの波が身体を通過するときに反射される。異なる型の身体組織は、超音波の波を異なって反射し、異なる内部構造体で反射した超音波の波によってもたらされる反射が検出され、そして電子的に視覚表示へと変換される。
【0003】
いくつかの医学的状態に関して、目的の器官または構造体の有用な画像を得ることは、特に困難である。なぜなら、この構造体の細部は、コントラスト増強剤がない場合、超音波の波の反射によってもたらされる超音波画像において、周囲の組織から適切に識別できないからである。特定の生理学的状態および病理学的状態の検出ならびに観察は、超音波造影剤を目的の器官または他の構造体に投与して超音波画像のコントラストを増強することによって顕著に改善され得る。他の場合において、超音波造影剤それ自体の動きの検出は、特に重要である。例えば、特定の心血管の異常から生じることが既知である明確な血流(blood flow)パターンは、超音波造影剤を血流(bloodstream)に投与し、そして血流(blood flow)または血液量のいずれかを観察することによってのみ識別でき得る。
【0004】
超音波造影剤として有用な材料は、超音波の波が身体を通過し、そしてこれらの波が反射されて、医学的診断がなされる画像を生じる場合に、超音波の波に対する効果を有することによって機能する。異なる型の物質は、超音波の波に、異なる様式で、種々の程度の影響を及ぼす。さらに、コントラスト増強剤によってもたらされる特定の効果は、他の効果より容易に測定され、そして観察される。超音波造影剤のための理想的な組成物の選択において、超音波の波が身体を通過するときにこの超音波の波に対して最も劇的な効果を有する材料が好ましい。また、この超音波の波に対する効果は、容易に測定されるべきである。気体は、超音波造影剤として使用するのに好ましい媒体である。この気体は、界面活性剤によって安定化された気泡としてか、またはリポソームもしくは微粒子中に封入することによって、使用前に安定化される必要がある。超音波画像において認められ得る、以下の3つの主なコントラスト増強効果が存在する:後方散乱、ビームの減衰、および音波の速度差。
【0005】
種々の天然のポリマーおよび合成ポリマーは、投与後により長く持続する超音波造影剤を作製する目的で、空気のような超音波造影剤を封入するために使用された。非特許文献1は、空気が充填された3ミクロンの合成ポリマー粒子を記載する。これらの粒子は、血漿中および適用された圧力下で安定であることが報告された。しかし、2.5MHzにおいて、それらのエコー輝度は、低かった。マイクロバブル懸濁物の別の型は、超音波処理したアルブミンから得られた。非特許文献2。Feinsteinは、インビトロで優れた安定性を有する、肺内外の通過に適した大きさであるマイクロバブルの調製を記載する。しかし、これらのマイクロバブルは、インビボにおいて短命であり、圧力下におけるそれらの不安定性に起因して、およそ数秒(1回の循環の経過(circulation pass)とほぼ等しい)の半減期を有する。非特許文献3;および非特許文献4。
【0006】
ゼラチンに封入されたマイクロバブルがまた、Rasor Associates,Incによる特許文献1に記載された。これらは、ゼラチンを「合体させること(coalescing)」によって形成される。フッ素含有材料のシェル(shell)の中に封入された気体のマイクロバブルは、Molecular Biosystems,Incによる特許文献2に記載される。
【0007】
ガラクトースの微結晶によって安定化されたマイクロバブル(SHU 454およびSHU 508)がまた、Fritzchらによって報告された。非特許文献5;および非特許文献6。これらのマイクロバブルは、インビトロで最長15分間まで持続するが、インビトロでは20秒未満しか持続しない。非特許文献7;および非特許文献8。Schering Aktiengesellschaftによる特許文献3は、超音波画像化法のための、マイクロカプセル化した気体またはマイクロカプセル化した揮発性液体の調製および使用を開示し、これらのマイクロカプセルは、合成ポリマーまたは多糖類から形成される。Sinteticaによる特許文献4は、治療目的または診断目的のための、界面に析出したポリマーの膜によって囲まれた空気のマイクロバルーンまたは気体のマイクロバルーンを開示し、このポリマーは、宿主動物への注射のためか、または経口投与、直腸投与、もしくは尿道投与のための水性キャリア中に分散され得る。
【0008】
Delta Biotechnology Limitedによる特許文献5は、水性のタンパク質溶液を噴霧乾燥して球体の中に気体を捕捉する中空の球体を形成することによる、画像化に使用するための微粒子の調製を記載する。特許文献6は、ポリシアノアクリレートまたはポリエステルのシェルの中に含まれる気体から構成される、超音波結像のための微粒子の合成を記載する。特許文献7は、気体を含む共有結合したマトリックスを含有する微粒子の造影剤の製造を開示し、ここでこのマトリックスは、炭水化物である。Ungerに対する特許文献8、特許文献9および特許文献10は、超音波造影剤として使用するためのリポソームを記載し、これらのリポソームは、気体、気体前駆材料(例えば、pHによって活性化されるか、または光によって活性化される気体の前駆材料)、および液体または固体の他のコントラスト増強剤を含む。
【0009】
他の者は、封入される気体の効果を検討し、そして空気と比較して画像化を増強するフッ素化ガスの使用を示唆した。Quayに対する特許文献11は、超音波画像におけるコントラストを増強するための、ペルフルオロカーボンを含む薬剤の使用を開示する。これらの薬剤は、溶液中で長い寿命を示し、そして肺を横切るのに十分小さい、選択された気体の小さい気泡またはマイクロバブルから構成され、これらの薬剤は、心血管系および生命の維持に必要な他の器官の超音波画像化法におけるそれらの使用を可能にする。Braccoによる特許文献12は、血流中の圧力に対する曝露の際の、微小胞の崩壊を防止する、フッ素化炭化水素ガスの使用を開示する。Nycomedによる特許文献13は、溶液(例えば、タンパク質溶液)のコアセルベーションによって形成される、ペルフルオロカーボンを含む画像化のためのマイクロカプセルを開示する。Massachusetts Institute of Technologyによる特許文献14は、ポリエチレングリコール−ポリ(ラクチド−co−グリコリド)ブロックポリマーから形成され、その中にイメージング剤が封入された微粒子を開示し、これらの微粒子は、気体(例えば、空気およびペルフルオロカーボン)を含む。Sonus Pharmaceuticals,Inc.による特許文献15に記載されるように、固体および液体が音波を同様の程度反射する一方で、気体は、より効率的であることが公知であり、そして超音波造影剤として使用するのに好ましい媒体である。実際に、特許文献15の実施例12に示されるように、タンパク質のマイクロカプセルは、ミニ豚(mini−pig)に投与した場合に、安全性の問題(および有効性の課題)を生じるとして拒絶された。特許文献16および特許文献17の両方は、合成ポリマーシェル中のペルフルオロカーボンガスを使用してコントラストを増強する方法を記載する。特許文献18は、多孔性ポリマー微粒子を作製する方法を記載し、この微粒子はエコー輝度を増加させるためにこのポリマー中に組み込まれる疎水性因子を有する。
【0010】
数種の超音波造影剤は、米国または欧州のいずれかにおいて、非常に制限された心臓の適用について認可された。OPTISON(登録商標)(Amersham、Mallinkrodt)は、気体のオクタフルオロプロパンを含む、熱変性したヒトアルブミンのマイクロカプセルから構成される。各1mLのミクロスフェア懸濁物は、2ミクロン〜4.5ミクロンのサイズ範囲の平均直径および220μgのオクタフルオロプロパンを有する、5×10個〜8×10個のミクロスフェアを含む。これらのミクロスフェアは、心筋の血流評価については認可されず、そして心室の増強についてのみ認可された。高いボーラス用量(5mLの懸濁物または1100μgのオクタフルオロプロパン)において、心室の増強は、最長で5分間まで持続する。
【0011】
DEFINITY(登録商標)(Bristol Myers Medical Imaging)は、オクタフルオロプロパンを含む脂質のミクロスフェアからなり、この脂質のシェルは、リン脂質DPPA、DPPC、およびmPEG−DPPEから構成される。各1mLの懸濁物は、1.1ミクロン〜3.3ミクロンのサイズ範囲の平均直径および1100μgのオクタフルオロプロパンを有する1.2×1010個の微粒子を含む。この薬剤は、心室の増強についてのみ認可され、そして心筋の血流評価については認可されていない。700μL(70kgの人間に対する)のボーラス用量または5133μgの気体において、この薬剤は、約3.4分間の心室における増強の持続時間を有する。
IMAGENT(登録商標)(Photogen Inc.)は、ペルフルオロヘキサンを含む脂質のミクロスフェアからなり、この脂質のシェルは、リン脂質(DMPC)から構成される。各1mLの懸濁物は、3ミクロン未満の平均直径および92μgのペルフルオロヘキサンを有する1.4×10個の微粒子を含む。この薬剤は、心室の増強についてのみ認可され、そして心筋の血流評価については認可されていない。0.43mL(70kgの人間に対する)のボーラス用量または40μgの気体において、この薬剤は、約2.6分間の心室における増強の平均持続時間を有する。
全ての場合において、これらの市販の薬剤は、制限された有用性を有し、心室の増強以外の適用について認可されておらず、そして5分間以下の期間持続する心室における画像増強の平均持続時間を提供する。心血管系(特に、心筋および心室)の増強された画像を、長い持続期間で可能にする市販の超音波造影剤は、存在しない。ボーラスまたは短時間の注入として投与した場合、先行技術に記載された薬剤は、心臓の完全な検査を実施するのに必要とされる時間の量よりかなり短い時間持続する心筋の画像を生じる。代表的に、先行技術の薬剤は、心筋に対して1分間をはるかに下回って持続する画像を提供する。心筋において1分間を超えるか、そして/または心室において5分間より長い、増強された画像の持続時間を提供し得る薬剤が、所望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第80/02365号パンフレット
【特許文献2】国際公開第96/04018号パンフレット
【特許文献3】欧州特許第398935号明細書
【特許文献4】欧州特許第458745号明細書
【特許文献5】国際公開第92/18164号パンフレット
【特許文献6】国際公開第93/25242号パンフレット
【特許文献7】国際公開第92/21382号パンフレット
【特許文献8】米国特許第5,334,381号明細書
【特許文献9】米国特許第5,123,414号明細書
【特許文献10】米国特許第5,352,435号明細書
【特許文献11】米国特許第5,393,524号明細書
【特許文献12】欧州特許第554213号明細書
【特許文献13】国際公開第95/23615号パンフレット
【特許文献14】国際公開第95/03357号パンフレット
【特許文献15】国際公開第94/16739号パンフレット
【特許文献16】米国特許第6,132,699号明細書
【特許文献17】米国特許第5,611,344号明細書
【特許文献18】米国特許第5,837,221号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Schneiderら、「Invest.Radiol.」、1992年、第27巻、p.134−139
【非特許文献2】Feinsteinら、「J.Am.Coll.Cardiol.」、1988年、第11巻、p.59−65
【非特許文献3】Gottlieb,S.ら、「J.Am.Soc.Echo.」、1990年、第3巻、p.328、要約
【非特許文献4】Shapiro,J.R.ら、「J.Am.Coll.Cardiol.」、1990年、第16巻、p.1603−1607
【非特許文献5】Fritzsch,T.ら、「Invest.Radiol.」、1988年、第23巻、第1補遺、p.302−305
【非特許文献6】Fritzsch,T.ら、「Invest.Radiol.」、1990年、第25巻、第1補遺、160−161
【非特許文献7】Rovai,D.ら、「J.Am.Coll.Cardiol.」、1987年、第10巻、p.125−134
【非特許文献8】Smith,M.ら、「J.Am.Coll.Cardiol.」、1989年、第13巻、p.1622−1628
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、特に、心臓の適用について、増強された画像および長い持続時間の画像を提供する微粒子を含む投薬処方物を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、超音波画像化技術に使用する微粒子を含む投薬処方物を投与するためのキットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
臨床研究が行われ、そしてポリマー微粒子を使用して顕著に増強された長い持続時間の画像を提供する、特定の投薬処方物が開発された。このポリマー微粒子は、その中に組み込まれるペルフルオロカーボンガスを有する。この投薬処方物は、代表的に、1用量、2用量、または最大で5用量まで(最も好ましくは、1用量または2用量)の、生体適合性ポリマーから形成される微粒子を含有し、これらの微粒子は、好ましくはこのポリマー中に組み込まれる脂質を含有し、そして体温において気体であるペルフルオロカーボンを含む。これらの微粒子は、心室において5分間より長く、そして/または心筋において1分間より長く超音波画像化法を増強するのに有効な用量であり、かつ体重1kgあたり0.025mg〜8.0mgの範囲の微粒子の用量で患者に投与される。好ましくは、患者に投与される用量は、体重1kgあたり0.05mg〜4.0mgの範囲の微粒子である。好ましい実施形態において、超音波画像化法は、心室において9分間より長く増強されるか、そして/または心筋において2分間より長く増強される。
【0017】
代表的に、上記投薬処方物は、バイアルまたはシリンジ中に提供される。代表的な処方物において、この投薬処方物は、使用する前に滅菌水を用いて再構成される乾燥粉末の形態であり、この投薬処方物は、上記微粒子の等浸透圧懸濁物または等張懸濁物を得るために、この乾燥粉末のバイアルまたはシリンジに滅菌水を添加し、そして振盪することによって再構成される。この投薬処方物の好ましい実施形態において、その懸濁物は、懸濁物の1mLあたり1.0×10個〜3.5×10個の微粒子、または懸濁物の1mLあたり25mg〜50mgの微粒子を含み、最も好ましくは、懸濁物の1mLあたり1.5×10個〜2.8×10個の微粒子、または懸濁物の1mLあたり30mg〜45mgの微粒子を含む懸濁物を生じる濃度を有する。好ましい実施形態において、これらの微粒子は、8ミクロン未満の平均粒子サイズを有し、最も好ましくは1.8ミクロン〜3.0ミクロンの平均粒子サイズを有する。
【0018】
最も好ましい実施形態において、上記気体は、CF、C、C、C、C、C、C10、またはSFである。好ましい実施形態において、気体は、微粒子懸濁物の投与容量の1mLあたり、75μg〜500μgとの間の量で提供されるn−ペルフルオロブタン(C10)であり;好ましくは、このn−ペルフルオロブタンは、微粒子懸濁物の投与容量の1mLあたり、100μg〜400μgとの間の量で提供され、そして最も好ましくは微粒子懸濁物の投与容量の1mLあたり、150μg〜350μgとの間の量で提供されるか;またはこの気体は、微粒子懸濁物の投与容量の1mLあたり、75μg〜375μgとの間の量(最も好ましくは、微粒子懸濁物の投与容量の1mLあたり、120μgと300μgとの間の量)で提供されるn−オクタフルオロプロパンである。
【0019】
最も好ましい実施形態において、上記微粒子は、合成ポリマー(例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリグリコリド、ポリラクチド、およびポリ(ラクチド−co−グリコリド)が挙げられるポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンおよびポリプロピレンのようなポリアルキレン、ポリ(エチレングリコール)のようなポリアルキレングリコール、ポリ(エチレンオキシド)ポリビニルアルコールのようなポリアルキレンオキシド、ポリ(吉草酸)、およびポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)、ならびにそれらの誘導体、コポリマーおよびブレンド)から形成され、そして0.01%と30%との間の割合(脂質の重量/ポリマーの重量)でこのポリマーに組み込まれる疎水性化合物(最も好ましくは、0.01%と30%との間の割合(脂質の重量/ポリマーの重量)でこのポリマーに組み込まれる脂質)を含む。特に好ましい実施形態において、この脂質は、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン(DPDPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(ditricosanoylphosphatidylcholine)(DTPC)、ジリグノセロイルファチジルコリン(dilignoceroylphatidylcholine)(DLGPC);またはホスファチジルエタノールアミンである。
【0020】
最も好ましくは、上記微粒子中の合成ポリマーは、50:50(すなわち、1:1)のラクチド対グリコリドの比および20,000Da〜4,0000Daの範囲の重量平均分子量を有するポリ(ラクチド−co−グリコリド)であり、この微粒子中の疎水性化合物は、5%と6.6%との間の割合(DAPCの重量/ポリマーの重量)で存在するDAPCである。
【0021】
上記投薬処方物は、微粒子を含む乾燥粉末のバイアルまたはシリンジとして提供されても、この微粒子を再懸濁するための溶液を備えるキット中に提供されてもよい。代表的に、乾燥粉末のバイアルまたはシリンジはまた、再構成後に溶液を等浸透圧であるかまたは等張にするために、賦形剤(例えば、糖類または塩類)を備える。その後、この投薬処方物は、注射によって、ボーラスまたは最長で30分間までの期間にわたる注射のいずれかとして、画像化される患者に投与される。
【0022】
上記微粒子は、超音波画像化法、磁気共鳴画像法、透視検査、X線、およびコンピュータ連動断層撮影が挙げられる種々の診断的な画像化手順において有用である。この微粒子は、心臓学の用途(例えば、心筋の血流評価および心室の増強)についての臨床試験において試験された。
【0023】
(発明の詳細な説明)
超音波画像化法のための改良された方法、微粒子、キット、および投薬処方物は、本明細書中に記載される。この微粒子は、種々の診断的な超音波画像化法の用途(特に、超音波手順(例えば、血管の画像化ならびに心筋の血流評価、心筋の血液量評価および心室の増強のような心エコー検査))において有用である。
【0024】
(I.定義)
一般に本明細書中で使用される場合、用語「微粒子」は、特に明記されない限り、「ミクロスフェア」および「マイクロカプセル」、ならびに他の微粒子を含む。微粒子は、形が球状であっても、球状でなくてもよい。「マイクロカプセル」は、気体のコア(core)を取り囲む外側のポリマーシェルを有する微粒子として、本明細書中で定義される。本明細書中で定義される場合、「ミクロスフェア」は、中実のポリマー球体、または気体によって満たされるポリマー全体わたるポア(pore)によって形成される、ハニカム構造もしくはスポンジ様構造を有する多孔性球体であり得る。いくつかのミクロスフェアは、ポリマーシェル全体にわたるポアによって形成される、ハニカム構造またはスポンジ様構造を有する外側のポリマーシェルを含み得、そしてこれらのポアは、気体によって満たされる。この型のミクロスフェアに関して、この外側のポリマーシェルは、気体の内部コアを取り囲む。
【0025】
一般に本明細書中で使用される場合、用語「投薬量」および「用量」は、1回に与えられる物質の量または所望の診断効果またはコントラスト効果を生じるのに必要とされる物質の量をいうために、同意語として使用される。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「投薬処方物」とは、所望の診断効果またはコントラスト効果を生じるのに必要とされる物質の1つ以上の投薬量を含む、バイアルまたは他の容器(例えば、シリンジ)をいう。
【0027】
一般に本明細書中で使用される場合、「患者の領域」とは、患者の特定の範囲または部分をいう。いくつかの例において、「患者の領域」とは、患者全体にわたる範囲をいう。このような領域の例は、肺領域、胃腸領域、心血管領域(心筋組織または心筋(myocardium)(すなわち、心筋(heart muscle))、心室、心房、弁の機能を含む)、腎領域および他の身体の領域、組織、器官などであり、これらとしては、脈管系および循環系、ならびに癌性組織を含む患部組織が挙げられる。「患者の領域」としては、例えば、診断的な画像化によって画像化される領域が挙げられる。この「患者の領域」は、好ましくは内部であるが、外部であってもよい。
【0028】
一般に本明細書中で使用される場合、「脈管構造」は、血管(動脈、静脈、毛細管などが挙げられる)を示す。
【0029】
一般に本明細書中で使用される場合、「胃腸領域」は、食道、胃、小腸および大腸、ならびに直腸によって定義される領域を含む。
【0030】
一般に本明細書中で使用される場合、「腎領域」とは、腎臓、および直接腎臓に通じ、そして直接腎臓から導出される脈管系によって規定される領域をいい、そしてこの領域は、腹大動脈を含む。
【0031】
一般に本明細書中で使用される場合、「標的化される領域」および「標的領域」は、薬剤の送達が所望される患者の領域をいうために、交換可能に使用される。
【0032】
一般に本明細書中で使用される場合、「画像化される領域」および「画像化領域」は、画像化が所望される患者の領域をいうために、交換可能に使用される。
【0033】
一般に本明細書中で使用される場合、「心室の血流または心室(ventricular chamber)の増強」とは、1回以上の心周期において心室(ventricles of heart)を通る血液の流れをいう。
【0034】
一般に本明細書中で使用される場合、「心房の血流」とは、1回以上の心周期において心房を通る血液の流れをいう。
【0035】
一般に本明細書中で使用される場合、「心筋の血流」とは、1回以上の心周期における、心臓の血管を含む、心筋(heart muscle)または心筋(myocardium)の脈管構造中の血液の流れをいう。
【0036】
一般に本明細書中で使用される場合、「心筋の血液量」とは、心筋(heart muscle)または心筋(myocardium)の脈管構造中の血液の容量をいう。
【0037】
一般に本明細書中で使用される場合、「心周期」とは、心臓の完結した収縮性の期間をいい、そしてこの期間は、拡張期および収縮期の両方を含む。
【0038】
一般に本明細書中で使用される場合、「増加した輝度」とは、超音波造影剤を用いずに得られた画像と比較した画像の輝度の増加をいう。
【0039】
一般に本明細書中で使用される場合、「増強された画像」とは、超音波造影剤を用いずに得られた画像に対して、増加した輝度を有する画像をいう。
【0040】
一般に本明細書中で使用される場合、「持続時間」とは、増加した輝度の画像が検出され得る総時間をいう。
【0041】
一般に本明細書中で使用される場合、「冠血管拡張薬」とは、患者に投与した場合に心血管領域の脈管構造の拡張を引き起こす生物活性因子(例えば、ジピリダモールまたはアデノシン)をいう。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(II.微粒子)
好ましい実施形態において、上記微粒子は、ポリマー、脂質およびペルフルオロカーボンを含む。微粒子は、ミクロスフェアおよびマイクロカプセルの両方で構成されても、ミクロスフェアのみまたはマイクロカプセルのみから構成されてもよい。
【0043】
(ポリマー)
好ましい実施形態において、上記微粒子は、合成ポリマーから形成される。合成ポリマーは、生体適合性であり、そして生物学的材料によって汚染されていない微粒子をもたらす。さらに、合成ポリマーは、インビトロおよびインビボの両方でのより再現性のある合成および分解に起因して好ましい。このポリマーは、インビボの安定性に必要とされる時間(すなわち、画像化が所望される部位に分布するために必要とされる時間)、および画像化するために必要とされる時間に基づいて選択される。合成ポリマーは、異なる性質を有する微粒子を生成する(例えば、分子量および/または官能基を変化させる)ために改変され得る。
【0044】
代表的な合成ポリマーは、以下である:ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリグリコリド、ポリラクチド、およびポリ(ラクチド−co−グリコリド)コポリマーのようなポリ(ヒドロキシ酸)ならびにブレンド、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンおよびポリプロピレンのようなポリアルキレン、ポリ(エチレングリコール)のようなポリアルキレングリコール、ポリ(エチレンオキシド)ポリビニルアルコールのようなポリアルキレンオキシド、ポリ(吉草酸)、およびポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)、ならびにそれらの誘導体、コポリマーおよびブレンド。本明細書中で使用される場合、「誘導体」は、化学基(例えば、アルキル、アルキレン)の置換および付加、水酸化、酸化、ならびに当業者によって慣用的になされる他の改変を有するポリマーを含む。
【0045】
好ましい生分解性ポリマーの例としては、ヒドロキシ酸(例えば、乳酸およびグリコール酸)のポリマー、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、PEGとのコポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)、ならびにそれらのブレンドおよびコポリマーが挙げられる。最も好ましいポリマーは、50:50(すなわち、1:1)のラクチド対グリコリドの比のポリ(ラクチド−co−グリコリド)であり、そしてこのポリマーは、20,000Da〜4,0000Daの範囲の重量平均分子量を有する。このポリマーの重量平均分子量(M)は、個々のポリマー鎖の分布範囲内で、所定の分子量を有する分子の質量に基づいて計算された平均分子量である。Mは、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)を使用して決定され得る。
【0046】
(疎水性化合物)
好ましい実施形態において、上記ポリマーは、米国特許第5,837,221号に記載されるような疎水性化合物を含む。一般的に、疎水性である脂質のような化合物を、ポリマー内に有効量で組み込むことは、微粒子による水の透過および/または取り込みを制限し、したがって微粒子からの気体の損失を制限する。このことは、脂質、合成ポリマーおよびその中に封入された気体(特に、ペルフルオロカーボンのようなフッ素化ガス)を含む微粒子によって提供される、増強された画像化の持続時間を増加させるのに有効である。上記ポリマー微粒子の内側の気体を安定化するために使用され得る脂質としては、以下の脂質の分類が挙げられるが、これらに限定されない:脂肪酸および誘導体、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロールおよびステロイド誘導体、テルペンならびにビタミン。
【0047】
脂肪酸およびその誘導体としては、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸、奇数鎖脂肪酸および偶数鎖脂肪酸、シス異性体およびトランス異性体、ならびにアルコール、エステル、無水物、ヒドロキシ脂肪酸およびプロスタグランジンを含む脂肪酸誘導体が挙げられ得るが、これらに限定されない。使用され得る飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸としては、12個と22個との間の炭素原子を有する、直鎖形態または分枝形態のいずれかである分子が挙げられるが、これらに限定されない。使用され得る飽和脂肪酸の例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸が挙げられるが、これらに限定されない。使用され得る不飽和脂肪酸の例としては、ラウリン酸、フィゼテリン酸(physeteric acid)、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、およびオレイン酸が挙げられるが、これらに限定されない。使用され得る分枝脂肪酸の例としては、イソラウリン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、およびイソステアリン酸ならびにイソプレノイドが挙げられるが、これらに限定されない。脂肪酸誘導体としては、12−(((7’−ジエチルアミノクマリン−3−イル)カルボニル)メチルアミノ)−オクタデカン酸;N−[12−(((7’ジエチルアミノクマリン−3−イル)カルボニル)メチル−アミノ)オクタデカノイル]−2−アミノパルミチン酸、Nスクシニル−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンおよびパルミトイル−ホモシステイン;ならびに/またはそれらの組み合わせが挙げられる。使用され得るモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドまたはそれらの誘導体としては、6個と24個との間の炭素原子の間の脂肪酸または脂肪酸混合物を有する分子、ジガラクトシルジグリセリド、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロール;1,2−ジパルミトイル−sn−3スクシニルグリセロール;および1,3−ジパルミトイル−2−スクシニルグリセロールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
使用され得るリン脂質としては、ホスファチジン酸、飽和および不飽和の脂質の両方を含むホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジル誘導体、カルジオリピン、およびβ−アシル−アルキルリン脂質が挙げられるが、これらに限定されない。リン脂質の例としては、ホスファチジルコリン(例えば、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン(DPDPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)、ジリグノセロイルファチジルコリン(DLPC));およびホスファチジルエタノールアミン(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンまたは1−ヘキサデシル−2−パルミトイルグリセロホスホエタノールアミン)が挙げられるが、これらに限定されない。非対称なアシル鎖(例えば、6個の炭素の1つのアシル鎖および12個の炭素の別のアシル鎖を有する)を有する合成リン脂質がまた、使用され得る。
【0049】
使用され得るスフィンゴ脂質としては、セラミド、スフィンゴミエリン、セレブロシド、ガングリオシド、スルファチドおよびリゾスルファチドが挙げられる。スフィンゴ脂質の例としては、ガングリオシドGM1およびガングリオシドGM2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
使用され得るステロイドとしては、コレステロール、コレステロールサルフェート、コレステロールヘミスクシネート、6−(5−コレステロール3β−イルオキシ)ヘキシル−6−アミノ−6−デオキシ−1−チオ−α−D−ガラクトピラノシド、6−(5−コレステン−3β−イルオキシ(tloxy))ヘキシル−6−アミノ−6−デオキシル−1−チオ−α−Dマンノピラノシドおよびコレステリル(4’−トリメチル35アンモニオ)ブタノエートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
使用され得るさらなる脂質化合物としては、トコフェロールおよび誘導体、ならびに油およびステアリルアミン(stearlyamine)のような誘導体化された油が挙げられる。
【0052】
種々のカチオン性脂質(例えば、DOTMA,N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド;DOTAP、1,2−ジオレオイルオキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン;およびDOTB、1,2−ジオレオイル−3−(4’−トリメチル−アンモニオ)ブタノイル−sn−グリセロール)が、使用され得る。
【0053】
最も好ましい脂質は、リン脂質であり、好ましくはDPPC、DAPC、DSPC、DTPC、DBPC、DLPCであり、そして最も好ましくはDPPC、DSPC、DAPCおよびDBPCである。
【0054】
脂質含有量は、0.01%〜30%(脂質のw/ポリマーのw)の範囲であり;好ましくは0.1%〜20%(脂質のw/ポリマーのw)の範囲であり、そして最も好ましくは1%〜12%(脂質のw/ポリマーのw)の範囲である。
【0055】
本明細書中に記載される方法によって形成される場合、上記微粒子のサイズは、一貫して再現性がある。本明細書中で使用される場合、粒子に関して、用語「サイズ」または「直径」とは、特に明記されない限り、数平均粒子サイズをいう。数平均粒子サイズ(X)を定義するために使用され得る式の例は、以下に示される:
【0056】
【数1】

=所定の直径(d)の粒子の数。
【0057】
本明細書中で使用される場合、用語「体積平均直径」とは、体積加重した直径平均をいう。体積平均直径(X)を定義するために使用され得る式の例は、以下に示される:
【0058】
【数2】

=所定の直径(d)の粒子の数。
【0059】
粒子サイズの分析は、クールター計数器を用いて、光学顕微鏡法、走査型電子顕微鏡法または透過型電子顕微鏡法、Malvern Mastersizerを使用するようなレーザー回折法、光散乱法または飛行時間法によって行われ得る。本明細書中で使用される場合、「クルーター法」とは、粉末が電解質中に分散され、そして得られる懸濁物を50μm開口チューブを取り付けたCoulter Multisizer IIを使用して分析する方法をいう。この方法は、サイズの大きさおよび粒子の濃度を提供する。
【0060】
肺毛細管床を通過し得る注射可能な微粒子の調製するための好ましい実施形態において、この微粒子は、8ミクロン未満の直径を有する。より大きい微粒子は、肺のベッド(bed)を詰まらせ得、そしてより小さい微粒子は、十分なコントラスト効果を提供できない。静脈内に投与される超音波造影剤について好ましい微粒子のサイズは、0.75ミクロンと5ミクロンとの間であり、そして最も好ましくは1.8ミクロンと3.0ミクロンとの間である。
【0061】
好ましい実施形態において、微粒子は、ポリマー全体にわたるポアによって形成されるハニカム構造またはスポンジ様構造を有するか、またはこの微粒子は、ハニカム状かまたはスポンジ様の多孔性構造を伴うポリマーシェルを有する。両方の場合において、これらのポアは、気体によって満たされる。これらの微粒子は、ポア形成剤(例えば、以下に記載されるような揮発性の塩)を含むポリマー溶液を噴霧乾燥することによって形成される。
【0062】
(造影超音波画像化剤)
フッ素化ガスの例としては、CF、C、C、C、C、C、C10、およびSFが挙げられる。n−ペルフルオロブタン(C10)は、使用温度で凝縮しない不溶の気体を提供し、そして薬理学的に受容可能であるので、特に好ましい。
【0063】
上記微粒子に含まれる気体の量は、気体の型に依存するが、代表的には、微粒子懸濁物の投与容量の1mLあたり75μg〜500μgの間である。n−ペルフルオロブタンに関して、好ましい気体含有量は、微粒子懸濁物の投与容量の1mLあたり、100μg〜400μgの間であり、そして最も好ましくは、微粒子懸濁物の投与容量の1mLあたり、150μg〜350μgの間である。n−オクタフルオロプロパンに関して、好ましい気体含有量は、微粒子懸濁物の投与容量の1mLあたり、75μg〜375μgの間であり、そして最も好ましくは微粒子懸濁物の投与容量の1mLあたり、120μg〜300μgの間である。
【0064】
(III.微粒子を作製するための方法)
上記微粒子は、種々の方法によって生産され得、そして好ましくは、噴霧乾燥によって生産される。主要な条件は、ポリマーが、微粒子を形成する前に、疎水性化合物または脂質と一緒に、溶解されるかまたは融解される必要があることである。
【0065】
(溶媒)
形成の間、上記ポリマーは、一般的に、溶媒中に溶解される。本明細書中で定義されるように、ポリマーのための溶媒は、有機溶媒であり、この有機溶媒は、揮発性であるか、もしくは比較的低い沸点を有するか、または真空の下で除去され得、そしてヒトに対する微量の投与に対して受容可能である(例えば、塩化メチレン)。他の溶媒(例えば、酢酸エチル、ギ酸エチル、エタノール、メタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、アセトニトニル、テトラヒドロフラン(THF)、ホルムアミド、酢酸、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびクロロホルム)がまた、利用され得るか、またはその組み合わせが利用され得る。一般的に、このポリマーは上記溶媒中に溶解されて、ポリマー溶液を形成し、このポリマー溶液は、0.1%(w/v)と60%(w/v)との間の濃度、より好ましくは0.25%(w/v)と30%(w/v)との間の濃度、および最も好ましくは0.5%(w/v)〜10%(w/v)の間の濃度を有する。
【0066】
(噴霧乾燥)
微粒子は、好ましくは、噴霧乾燥によって生産され、この噴霧乾燥は、適切な溶媒中に生体適合性ポリマーおよび脂質を溶解し、ポア形成剤をこのポリマー溶液中に、固体としてかまたは溶液として分散し、次いでこのポリマー溶液およびこのポア形成剤を噴霧乾燥して、微粒子を形成することに基づく。本明細書中に定義されるように、ポリマーの溶液およびポア形成剤を「噴霧乾燥」するプロセスとは、このポリマー溶液およびポア形成剤が微粒化されて、微細なミスト(mist)を形成し、そしてこのミストが熱いキャリアガスと直接接触させることによって乾燥されるプロセスをいう。当該分野において利用可能な乾燥噴霧器を使用して、このポリマー溶液およびポア形成剤は、乾燥噴霧器の入口ポートにて微粒化され、少なくとも1回乾燥チャンバを通過し、その後、粉末として回収され得る。温度は、使用される気体またはポリマーに依存して変えられ得る。入口ポートおよび出口ポートの温度は、所望の産物を生産するために制御され得る。
【0067】
噴霧乾燥の間に形成される微粒子のサイズおよび形態は、ポリマー溶液およびポア形成剤を噴霧するために使用されるノズル、ノズルの圧力、ポア形成剤を含むポリマー溶液の流速、使用されるポリマー、溶液中のポリマーの濃度、ポリマーのための溶媒の型、ポア形成剤の型および量、噴霧する温度(入口および出口の両方の温度)およびポリマーの分子量によって変化する。一般に、このポリマー溶液の濃度が同じであると仮定した場合、このポリマーの分子量が高くなるにつれて、粒子サイズは大きくなる。
【0068】
噴霧乾燥のための代表的なプロセスのパラメーターは、以下の通りである:入口の温度=30℃〜200℃、出口の温度=5℃〜100℃、およびポリマーの流速=10ml/分〜5,000ml/分。
【0069】
ガス状の診断剤は、噴霧乾燥する前に、ポリマー溶液およびポア形成剤と一緒に乳化することによって封入され得る。あるいは、空気が充填された微粒子が噴霧乾燥工程の間に生産され得、その後この空気が、この微粒子に所望の気体の流れを適用するか、またはこの微粒子を真空に引いて、封入された空気を除去し、次いで所望のペルフルオロカーボンガスで充填することによって、ペルフルオロカーボンガスで置換され得る。気体を交換するために真空工程が使用される場合、凍結乾燥器または真空チャンバが使用され得る。
【0070】
(微粒子形成を促進するための添加剤)
種々の界面活性剤が、上記微粒子の形成の間に添加され得る。使用され得る例示的な乳化剤または界面活性剤(0.1%w/wポリマー〜15%w/wポリマー)としては、ほとんどの生理的に受容可能な乳化剤が挙げられる。例としては、アミノ酸と結合体化された天然形態の胆汁酸塩またはアミノ酸と結合体化された合成形態の胆汁酸塩、および非結合体型の天然形態の胆汁酸塩または非結合体型の合成形態の胆汁酸塩(例えば、タウロデオキシコール酸塩およびコール酸塩)が挙げられる。
【0071】
細孔形成剤が、ポリマー溶液の0.01重量/体積%〜90重量/体積%の量でこのポリマー溶液中に含まれて、細孔形成を増加させる。例えば、噴霧乾燥において、細孔形成剤(例えば、揮発性塩(例えば、炭酸水素アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、もしくは安息香酸アンモニウム、または他の揮発性塩))が、固体としてかまたは溶媒(例えば、水)中の溶液として、使用され得る。その後、固体の細孔形成剤またはその細孔形成剤を含む溶液が、上記ポリマー溶液で乳化されて、そのポリマー中に細孔形成剤の分散物または液滴を生成する。その後、この分散物または乳化物は、ポリマー溶媒および細孔形成剤の両方を除去するために噴霧乾燥される。このポリマーが沈殿した後、硬化した微粒子が、このポリマー沈殿工程の間に除去されなかったあらゆる細孔形成剤を除去するために、凍結され得そして凍結乾燥され得る。
【0072】
好ましい微粒子は、上記のポリマー(ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(ラクチド対グリコリド比 50:50であり、20,000ダルトン〜40,000ダルトンの範囲内の重量平均分子量を有する))および上記のリン脂質(ジアラキドイルホスファチジルコリン((1,2−ジアラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DAPC)))を5%〜6.6%(DPAC重量/ポリマー重量)にて使用して、形成される。この微粒子は、マンニトールとTWEEN(登録商標)80との溶液中でさらに処方されて微粒子乾燥粉末を生じるように処理される。この微粒子乾燥粉末は、凍結乾燥機にてn−ペルフルオロブタンを充填される。この乾燥粉末は、その乾燥粉末のバイアルに5mlの滅菌水を添加し振盪して等浸透圧性マンニトール中の微粒子懸濁物を生じることによって、使用前にこの滅菌水で再構成される。この懸濁物の好ましい特性は、投与される微粒子懸濁物体積1mL当たりのn−ペルフルオロブタンが150μg〜350μgである気体含有量、投与される微粒子懸濁物体積1mL当たりの微粒子が1.5×10〜2.8×10、投与される微粒子懸濁物体積1mL当たりの微粒子が30mg〜45mg、そして1.8ミクロン〜3.0ミクロンの範囲内にある平均粒径である。
【0073】
(IV.上記微粒子の適用)
(1.患者に対して投与するための処方物)
上記微粒子は、乾燥粉末を生じるために賦形剤を用いてさらに処理される。この賦形剤は、患者に対して投与する前に薬学的に受容可能なキャリアを用いて再構成した後に、その微粒子の張度または浸透圧モル濃度または懸濁容易性を提供する。浸透圧モル濃度または張度を提供するために適切な賦形剤は、糖(マンニトール、デキストロース、またはグルコースが挙げられるが、これらに限定はされない)および塩(塩化ナトリウムまたはリン酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定はされない)である。上記微粒子の懸濁容易性を提供するために適切な賦形剤としては、薬学的に受容可能な湿潤剤または薬学的に受容可能な界面活性剤(ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)、ポリソルベート20(TWEEN(登録商標)20)、プルロニック、またはポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定はされない)が挙げられる。浸透圧モル濃度もしくは張度を提供するために適切であるか、または湿潤剤として使用され得る、賦形剤は、参考文献(例えば、the Handbook of Pharmaceutical Excipients(Fourth Edition,Royal Pharmaceutical Society of Great Britain,Science & Practice Publishers)、またはRemingtons:The Science and Practice of Pharmacy(Nineteenth Edition,Mack Publishing Company))に記載されている。微粒子と賦形剤との乾燥粉末は、その微粒子を賦形剤溶液中に懸濁することによって、生成される。さらなるサイズ分画工程が、必要な場合には使用され得る。賦形剤溶液中の微粒子は、バイアルまたはシリンジ中に充填され、凍結され、そして凍結乾燥されて、乾燥粉末処方物が生成される。この凍結乾燥工程の最後において、凍結乾燥機にペルフルオロカーボンガスを充填することによって、この微粒子に、ペルフルオロカーボンガスが充填される。その後、このバイアルまたはシリンジは、閉鎖またはキャップされ、バイアルの場合にはクリンピングされる。これにより、そのバイアルまたはシリンジ中に、ペルフルオロカーボンヘッドスペースが生じる。
【0074】
あるいは、上記微粒子は、上記薬学的賦形剤と乾燥混合され得、その後、バイアルまたはシリンジの中に充填され得る。凍結乾燥機または真空チャンバにおいてこのバイアルもしくはシリンジに充填した後に真空を適用することによって、この微粒子に、ペルフルオロカーボンガスが充填され得る。その後、このバイアルまたはシリンジは、閉鎖またはキャップされ、バイアルの場合にはクリンピングされる。これにより、そのバイアルまたはシリンジ中に、ペルフルオロカーボンヘッドスペースが生じる。
【0075】
(2.投与単位)
種々のサイズの微粒子投与単位が、使用され得る。例えば、小投与単位は、25mg〜75mgの微粒子を含み得る。中間投与単位は、75mg〜150mgを含み得る。大投与単位は、150mg〜250mgの微粒子を含み得る。超大投与単位は、250mg〜1000mgの微粒子を含み得る。
【0076】
微粒子懸濁物が再構成後に形成される場合、その懸濁物中の微粒子の質量濃度は、代表的には、20mg/mL〜60mg/mLの範囲にある。この懸濁物中の微粒子の好ましい質量濃度は、25mg/mL〜50mg/mLである。この懸濁物中の微粒子の最も好ましい質量濃度は、30mg/mL〜45mg/mLである。この懸濁物中の微粒子の好ましい濃度は、懸濁物1mL当たり1.0×10微粒子〜3.5×10微粒子であり、この懸濁物中の微粒子の最も好ましい濃度は、1mL当たり1.5×10微粒子〜2.8×10微粒子である。この微粒子は、8ミクロン未満の好ましい平均粒径を有し、最も好ましくは、1.8ミクロン〜3.0ミクロンの範囲内にある平均粒径を有する。
【0077】
薬学的に受容可能なキャリアとしては、注射用水、滅菌水、生理食塩水、グリセロール含有生理食塩水、TWEEN(登録商標)20含有生理食塩水、TWEEN(登録商標)80含有生理食塩水、等浸透圧性デキストロース(5%)、1/2等浸透圧性デキストロース(2.5%)、等浸透圧性マンニトール(5%)、1/2等浸透圧性マンニトール(2.5%)、TWEEN(登録商標)20含有等浸透圧性マンニトール、およびTWEEN(登録商標)80含有等浸透圧性マンニトールが挙げられ得る。
【0078】
(3.キット)
ペルフルオロカーボンガスを含有する上記微粒子の非経口投与のためのキットが、提供され得る。このキットは、少なくとも2種の成分を含む。一方の成分は、バイアルまたはシリンジ中にある投与単位の乾燥粉末造影剤を含み、もう一方の成分は、バイアルまたはシリンジ中にある薬学的に受容可能なキャリアを含む。患者に対する投与の前に、この薬学的に受容可能なキャリアは、この投与単位の乾燥粉末造影剤に添加されて、ガスを充填された微粒子の懸濁物を形成する。このガスを充填された微粒子は、任意の投与経路による診断画像化において、超音波画像化造影剤として使用可能である。
【0079】
(4.微粒子のためのバイアルまたは容器)
いかなる特殊なバイアルも、シリンジも、接続システムも、このキットのためには必要とされない。従来のバイアル、シリンジ、およびアダプターが、この微粒子とともに使用され得る。バイアルについての唯一の必要条件は、栓と容器との間での良好な密封である。従って、この密封の質が、一番の関心事項である。密封の完全性の何らかの低下も、望ましくない物質をバイアルに侵入可能にし得るか、またはガスを流出可能にし得る。滅菌性を確保することに加えて、真空の保持が、安全かつ適切な再構成を確保するために減圧にて閉鎖された製品のために必要である。栓に関して、この栓は、エラストマーに基づく化合物または他成分処方物(例えば、ポリ(イソブチレン)または「ブチルゴム」)であり得、そしてこの栓は、使用されるガスを非透過性でなければならない。上記バイアルのサイズは、そのバイアル中の乾燥粉末の総用量に依存して、選択される。好ましいバイアルサイズは、5mL、10mL、20mL、および30mLである。上記シリンジサイズは、そのシリンジ中の乾燥粉末の総用量に依存して、選択される。好ましいシリンジサイズは、5mLシリンジ、10mLシリンジ、20mLシリンジ、および50mLシリンジである。
【0080】
(5.診断適用)
上記微粒子組成物は、多くの種々の診断適用(超音波画像化、磁気共鳴画像化、蛍光透視法、x線、およびコンピューター断層撮影が挙げられる)において使用され得る。
【0081】
好ましい実施形態において、上記微粒子は、超音波手順(例えば、血管画像化および心エコー検査法(心室画像化、心筋血流評価、心筋血液量評価、冠動脈疾患の診断、および駆出率評価が挙げられるが、これらに限定されない)において使用される。
【0082】
上記微粒子は、脈管画像化において、ならびに肝臓疾患および腎臓疾患を検出するための適用において、腫瘍塊および腫瘍組織を検出して特徴付ける際に、ならびに末梢血速度を測定する際に、使用され得る。上記微粒子はまた、組織接着を最小にするリガンドと、または身体の特定領域へとその微粒子をインビボで標的化するリガンドと、連結され得る。
【0083】
(画像を得るための一般的方法)
乾燥粉末形態の上記微粒子は、投与前に薬学的に受容可能なキャリアを用いて再構成される。その後、検出のために有効な量が、適切な経路を使用してか、血管中への注射(例えば、静脈内(i.v.)注射もしくは動脈内(i.a.)注射)によってか、または経口的に、患者に対して投与される。その微粒子組成物は、ボーラス注射として、または短期間注入(30分間未満)として、患者に対して静脈内投与され得る。好ましくは、上記注射は、15秒間〜20分間の範囲の期間にわたって、最も好ましくは30秒間〜15分間の範囲の期間にわたって、投与される。代表的には、1回の注射につき体重1kg当たり0.025mg〜8mgの範囲の用量が、患者に対して静脈内投与され、好ましくは、その用量は、0.05mg/kg〜4mg/kgの範囲にある。
【0084】
診断的超音波適用のために、エネルギーが、標的組織を画像化するために患者の少なくとも一部に対して適用される。その後、その患者の内部領域の可視画像が、得られ、その結果、罹患組織の存在または不在が、確認され得る。超音波画像化技術(セカンドハーモニックイメージングおよび同期(gated)画像化が挙げられる)は、当該分野において周知であり、そして例えば、Uhlendorf,IEEE Transactions on Ultrasonics,Ferroelectrics,and Frequency Control,14(1):70〜79(1994)およびSutherlandら、Journal of the American Society of Echocardiography,7(5):441〜458(1994)(これらの各々の開示は、その全体が本明細書において参考として援用される)において記載されている。
【0085】
超音波が、変換器を用いて適用され得る。この超音波は、パルス波であってもよいし、望ましい場合には、連続波であってもよい。従って、診断的超音波は、一般的には、エコーの適用を含み、その後、受信期間(listening period)の間に、超音波変換器は、反射シグナルを受信する。高調波(harmonics)、超高調波(ultraharmonics)、または分数調波(subharmonics)が、使用され得る。セカンドハーモニックモードが、有益なことに使用され得、この場合、2×の周波数が受信される。×は、付随的(incidental)周波数である。これは、バックグラウンド物質からのシグナルを低減し、画像化剤を使用して変換器からのシグナルを増強するように作用し得る。この画像化剤は、望ましい部位(例えば、血餅)へと標的化され得る。他の高調波シグナル(例えば、奇数高調波シグナル(例えば、3×または5×)が、この方法を使用して同様に受信される。分数調波シグナル(例えば、×/2および×/3)もまた、受信され得、そして画像を形成するように処理され得る。
【0086】
さらに、パワードップラーまたはカラードップラーが、適用され得る。パワードップラーの場合、そのパワードップラーの比較的高いエネルギーは、小胞(vesicle)を共鳴させ得る。これは、アコースティックエミッションを生じ得る。このアコースティックエミッションは、分数調波範囲または高調波範囲内にあり得、ある場合には、適用される超音波と同じ周波数であり得る。
【0087】
(具体的画像化適用)
本明細書において記載される微粒子は、心臓学適用および放射線医学適用の両方において使用され得る。心臓学的適用のために、上記微粒子組成物は、患者に対して投与され、その患者は、超音波機器を使用して走査されて、心血管領域の可視画像が得られる。必要に応じて、その微粒子組成物は、薬理学的ストレッサーまたは物理的ストレッサーと組み合わせて、投与される。適切な薬理学的ストレッサーとしては、冠血管拡張剤(例えば、ジピリダモールまたはアデノシン)、強心剤(すなわち、心臓収縮強度を増加する因子)(例えば、ドブタミン)、または変力性因子(chronotropic agent)(すなわち、収縮頻度を増加する因子)(例えば、ドブタミン)が挙げられる。適切な物理的ストレッサーとしては、身体運動(例えば、トレッドミルまたは固定自転車を使用することによる)が挙げられる。
【0088】
放射線医学的適用のために、上記微粒子組成物が、患者に対して投与され、その患者は、試験されるべき患者領域の可視画像を得るために、超音波機器を使用して走査される。
【0089】
上記微粒子は、心血管系の機能を評価するため、ならびに心筋血流もしくは心筋血液量を評価するため、または冠動脈心疾患(冠動脈疾患)を診断するために、使用され得る。例えば、上記微粒子は、心室の画像を増強し得、そして壁運動分析を介して領域的心機能分析を補助し得、そして駆出率測定を介して全体的心機能を補助し得る。上記微粒子はまた、機能的心組織を、虚血性(血流欠損)心組織または梗塞(死)心組織のいずれかから区別するために、心筋血流を評価するために使用され得る。心筋において検出されるコントラストシグナルは、心筋血液量の推定値として使用され得る。なぜなら、超音波造影剤は、静脈内投与後に静脈内に存在するからである。特定の心筋領域におけるコントラスト強度もしくは画像の明るさがないことまたは経時的減少は、血流減少(すなわち、欠損)の指標である。
【0090】
ほとんどの場合、患者が重篤な冠動脈心疾患を有さない限り、超音波造影などの技術によって評価される種々の心臓領域への血液流は、正常に見える。重篤な心疾患を有さない患者における血流異常を検出するため、または比較的小さな心筋血流欠損を検出するために、ストレス状態を誘導することによって心臓に対する血流動員を増加することが必要である。ストレスは、患者に運動させることによって、または薬理学的化合物(例えば、血管拡張剤、強心剤、もしくは変力性因子(chronotropic agent))を投与することによって、誘導され得る。運動の間または薬理学的ストレスの間、血流欠損は、より容易に検出され得る。なぜなら、血流を増加させる能力は、狭窄している冠動脈によって血液供給される領域において減少するからである。超音波造影剤投与後の心筋の超音波画像の比較は、ストレス前状態(すなわち、安静状態)およびストレス状態の両方においてなされ得る。ストレス時画像化の間に見出されるが安静時画像化の間には見出されない、明るさが増強されていない心筋領域は、虚血の指標である。ストレス時画像化の間および安静画像化の間に見出される明るさが増強されていない心筋領域は、梗塞の指標である。
【0091】
一実施形態において、心筋血流は、(1)患者に対して第1回の微粒子組成物注射を行うこと、(2)心血管領域の可視画像を得るために超音波機器画像化を使用して患者を走査すること、(3)薬理学的ストレスもしくは運動を使用して患者においてストレス状態を誘導すること、(4)第2回の上記微粒子組成物注射を投与して走査を継続すること、ならびに(5)工程(2)と(4)において得られた画像の差を視覚的にかまたは定量的画像分析を使用することによって評価することによって、測定され得る。
【0092】
放射線医学的適用のために、上記微粒子は、放射線医学的適用のために超音波画像化能力(腎疾患画像化、肝疾患画像化、および末梢血管疾患画像化を含む)を改善するために使用され得、血流可視性を増加し、身体深部の小病変または構造の検出を改善する。上記微粒子は、大血管適用および微小血管適用の両方のために使用され得る。大血管適用(身体の主要な動脈および静脈の疾患状態および状態の診断)において、上記微粒子は、頭蓋内血管の可視化を介して脳卒中および脳卒中前状態の検出を補助し得、大血管(例えば、頚動脈)におけるアテローム性動脈硬化症を、頚動脈硬化症の程度、脈管移植片開存性、および末梢血管血栓症を評価することによって検出する。微小血管適用(小血管流のパターン分析を介する疾患状態の診断)において、上記微粒子は、肝臓(例えば、腺腫または血管腫)、腎臓、脾臓(例えば、脾動脈瘤)、乳房および卵巣ならびに他の組織および器官において、病変、腫瘍、または他の疾患を同定することを補助し得る。
【0093】
患者における罹患組織は、その患者に対して上記微粒子組成物を投与すること、そして超音波画像化を使用してその患者を走査してその患者における何らかの罹患組織の可視画像を得ることによって、診断され得る。罹患組織は、明るさが増強された領域または明るさの増強を示さない領域として、示され得る。
【0094】
(微粒子組成物を使用して得られる増強画像)
上記微粒子は、投与後に増強画像を生じる。増強画像は、超音波造影剤を投与していない場合と比較した画像の明るさの増大によって、またはその画像中のアーチファクトの実質的排除によって、示され得る。従って、心血管領域(心組織およびそれに関連する脈管構造)の超音波画像化に関して、増強画像は、例えば、心血管領域画像における明るさの増大によって、および/または心血管領域画像におけるアーチファクト発生の実質的排除によって、示され得る。上記薬剤の単回投与後の画像は、10秒間〜60分間持続する。この画像は、好ましくは、20秒間〜30分間持続し、最も好ましくは30秒間〜20分間持続する。好ましい実施形態において、超音波画像化は、心室において5分間よりも長く増強され、心筋においては1分間よりも長く増強される。
【0095】
この画像における明るさの増大は、裸眼によって視覚的にか、または定量的画像分析を使用して、評価され得る。特に上記で同定されたグレースケール(約0VDU〜約255VDU、またはグレーレベル)に関して、好ましくは、少なくとも約10VDUの明るさレベル(グレーレベル)の増加が存在する。より好ましくは、この画像は、約10VDUよりも大きな(例えば、約15VDU、約20VDU、約25VDU、約30VDU、約35VDU、約40VDU、約45VDU、約50VDU、約55VDU、約60VDU、約65VDU、約70VDU、約75VDU、約80VDU、約85VDU、約90VDU、約95VDU、または100VDUの)明るさ増加を有する。いくつかの実施形態において、上記の明るさ増加は、約100VDUよりも大きい(例えば、約105VDU、約110VDU、約120VDU、約125VDU、約130VDU、約135VDU、約140VDU、約145VDU、または150VDU)。他の実施形態において、上記の明るさ増加は、約150VDUよりも大きい(例えば、約155VDU、約160VDU、約165VDU、約170VDU、約175VDU、約180VDU、約185VDU、約190VDU、約195VDU、または約200VDU)。あるいは、上記の明るさ増加は、約200VDUよりも大きい(例えば、約205VDU、約210VDU、約215VDU、約220VDU、約225VDU、約230VDU、約240VDU、約245VDU、約250VDU、または約255VDU)。
【0096】
上記の方法および組成物は、以下の非限定的な実施例を参照してさらに理解される。
【実施例】
【0097】
(材料)
酢酸、炭酸水素アンモニウム、マンニトール(USP)、およびポリソルベート80(動物由来成分なし)を、Spectrum Chemicals,Gardena,CA)から購入した。ポリマー(ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)(50:50))およびジアラキドイルホスファチジルコリン(1,2−ジアラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DAPC))を、それぞれ、Boehringer Ingelheim(Ingelheim,Germany)およびAvanti(Alabaster,AL)から購入した。塩化メチレンを、EM Science(EMD Chemicals,Gibbstown,NJ)から購入した。バイアル(30ml管状バイアル)および栓(20mm、灰色、一通気孔、Fluro−Tec)を、West Pharmaceutical Services(Lionville,PA)から購入した。n−ペルフルオロブタン(DFB)ガスを、F2 Chamicals Ltd,Lancashire,UKから購入した。
【0098】
(分析方法)
(微粒子の質量濃度の定量)
バイアル中の微粒子の質量濃度を、ICP−MS(誘導結合プラズマ−質量分析法)を使用して定量した。その微粒子中のポリマーの量を、ICP−MSによってスズについて分析することによって決定した。上記微粒子中に存在するポリマーの量を、その微粒子中で見出されるスズの量と、その微粒子を生成するために使用されるポリマーの特定ロットにおいて見出されるスズの量との比較に基づいて、決定した。その微粒子中のリン脂質の量を、ICP−MSによってリンについて分析することによって決定した。上記微粒子中に存在するリンの量は、そのリン脂質自体のリンの量と比較した上記微粒子中で見出されるリンの量に基づいて、決定した。懸濁物1mL当たりの微粒子の質量は、バイアル1つ当たりのポリマーおよびリン脂質の量を加算し、その後、その合計を再構成体積(5mL)で除算することによって、算出した。
【0099】
(粒径分析)
再構成された微粒子のサンプルを、電解質溶液に添加した。生じた懸濁物を、50μmアパーチャチューブを取り付けたCoulter Multisizer IIを使用して、粒径および微粒子濃度について分析した。
【0100】
(微粒子のガス含有量)
上記乾燥粉末のバイアルを、5mLの水で再構成し、振盪して、微粒子懸濁物を生成した。生じた懸濁物を、針およびシリンジを使用して栓を通して0.3mLアリコート群のセットを引き出すことによって、DFB含有量について分析した。これらのアリコートを、密封したヘッドスペースバイアル中に注入した。このヘッドスペースバイアルを、室温にて少なくとも10時間かけて平衡化した。その後、サンプルを加熱し、その後、ヘッドスペースサンプラーオーブンにおいて45℃まで20分間かけて加熱した。この懸濁物の上にあるヘッドスペースガスを、パージ済み充填インレットおよび火炎イオン化検出器を使用するガスクロマトグラフィーによって分析した。定量を、面積ベースの一点較正を使用して実施した。このGCシステムのパラメーターおよび温度プログラムを、表1および表2において列挙する。
【0101】
(表1:GCシステムのパラメーター)
【0102】
【表1】

(表2:GC温度プログラム)
【0103】
【表2】

(実施例1:超音波造影剤として使用するための微粒子の調製)
有機溶液を、176gのPLGA、10.6gのジアラキドイルホスファチジルコリン(1,2−ジアラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DAPC))、および2.26gの酢酸を5.88Lの塩化メチレン中に25℃にて溶解することによって調製した。338mlの注射用水中に溶解した68.5gの炭酸水素アンモニウムから構成される水溶液を、この有機溶液に添加し、ローター−ステーター乳化混合機を使用して10Lホモジナイゼーションタンク中にて4310RPMで10分間ホモジナイズした。
【0104】
生じた乳化物を、窒素ガスを噴霧用兼乾燥用のガスとして使用して、噴霧乾燥した。乳化物を、Spraying Systems(Wheaton,IL)から得た空気噴霧ノズルとBuchi(Brinkmann,Westbury,NY)から得たガラス乾燥チャンバ/サイクロンシステムとを使用するベンチトップ型噴霧乾燥器にて噴霧乾燥した。噴霧乾燥条件は、以下の通りであった:40ml/分の乳化物流量、30L/分の噴霧ガス速度、46kg/時間の乾燥ガス速度、および12℃のアウトレット温度。
【0105】
その噴霧乾燥生成物を、分散工程、凍結工程、および凍結乾燥工程を介してさらに処理した。水性ビヒクルを、140gのマンニトールと4.10gのポリソルベート80とを5.0Lの水中に溶解することによって調製した。噴霧乾燥した微粒子を、そのビヒクル中に濃度25mg/mlにて分散させた。この分散物を、Misonix Incorporated(Farmingdale,NY)から得たステンレス鋼製の800シリーズのフローセルソニケーターを使用して脱凝集させ、Vorti−Siv(Salem,OH)から得た10’’直径の振動ふるい(RBF−10)に通して篩分けした。このソニケーターには、4℃のカバーをして、この分散物の加熱を防いだ。この分散物を、25μmスクリーンおよび20μmスクリーンに150mL/分にて連続して通して篩分けした。篩分けした分散物を、バイアル中に充填し(30mlバイアル中に10ml充填物)、部分的に栓をし、そして液体窒素中に浸漬することによって凍結した。
【0106】
凍結後、そのバイアルを凍結乾燥した。凍結乾燥の最後に、チャンバを分離し、n−ペルフルオロブタン(DFB)をこのバイアル中に圧力−5kPaになるまで充填し、その後、栓をした。
【0107】
その乾燥粉末を、使用前に5mLの滅菌水で再構成した。この再構成は、この水をこの乾燥粉末バイアルに添加すること、そして振盪して、等浸透圧性マンニトール中にある微粒子分散物を生じることによった。この懸濁物は、1mLの懸濁物当たり2.2×10の微粒子を含み、1mLの懸濁物当たり37mgの微粒子を含んだ。この微粒子は、平均粒径2.2ミクロンを有した。
【0108】
(実施例2:上記微粒子からのガス漏出率)
実施例1の方法によって生成された微粒子の2つの別個のバッチ(バッチ1およびバッチ2)からのガス漏出率を、上記分析方法の節において記載されるように、ガスクロマトグラフィー(GC)を使用して評価した。3番目のロットのミクロスフェア(バッチ3)を、実施例の方法と同様に生成したが、上記のリン脂質(ジアラキドイルホスファチジルコリン(1,2−ジアラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DAPC))はこの微粒子生成の間は省いた。
【0109】
(表3:微粒子についてのガス含有量およびガス漏出率)
【0110】
【表3】

DPACを含む上記微粒子は、70分間後に出発ガス含有量のうちの約10%を失った。一方、DPACを含まない上記微粒子は、出発ガス含有量のうちの87%を失った。さらに、DPACを含む上記微粒子は、DAPCを含まない上記微粒子と比較して、高い初期出発ガス含有量を有した。このことは、DAPCを含むことが、噴霧乾燥の間の上記微粒子の内部多孔性構造の形成および上記微粒子内でのガスの保持にとって重要であることを、示す。
【0111】
被験体への投与後の超音波造影剤の意図的使用の総持続時間は、一般的には、実行される心臓学的超音波試験または放射線医学的超音波試験の型に依存して、約30秒間〜約60分間程度である。従って、液体DAPCを含む上記微粒子からのガスの損失は、その超音波試験期間の間は問題にならないと推定される。
【0112】
(実施例3:微粒子用量の関数としての心臓画像増強)
実施例1における方法によって生成された微粒子を、健常なヒト成人において研究した。上記乾燥粉末は、5mlの滅菌水をバイアルに添加してそのバイアルを10回振盪することによって、使用前に再構成した。生じる懸濁物中のミクロスフェアの最終濃度は、約37mg/mLであった。被験体に、0.5mg/体重kg、2.0mg/体重kg、または4.0mg/体重kgのいずれかの単回投与を与えた。被験体に、連続的ハーモニックイメージング(フレームレート15Hzおよび変換器周波数2.1/4.2MHz)を使用して、経胸壁超音波画像化を行った。画像を、強度および増強持続時間について視覚的に評価した。
【0113】
心室における増強持続時間は、2mg/kg用量および4mg/kg用量の両方で、9分間よりも長かった。コントラスト効果は、被験体を30分間時点で再画像化した場合に、これらの2つの用量にて、上記被験体15人中13人において依然として明らかであった。このことは、上記微粒子により提供される増強の長期持続時間を示す。
【0114】
心室増強の持続時間を、表4においてまとめる。
【0115】
(表4:左心室画像増強の持続時間)
【0116】
【表4】

(実施例4:心臓画像評価用の市販製品に対する微粒子の比較)
比較心臓超音波画像研究を、体重および心機能について一致させた2人の成人男性において実行した。第一の被験体には、実施例1の方法により生成した微粒子の単回投与を与えた。その乾燥粉末は、バイアルに5mLの滅菌水を添加してそのバイアルを10回振盪することによって、使用前に再構成した。生じた懸濁物中のミクロスフェアの最終濃度は、約37mg/mLであり、その懸濁物のガス含有量は、懸濁物1mL当たり約250μgであった。この第一の被験体には、4mg微粒子/kgの用量を与えた。これは、体重1kg当たり27μgのガス用量に対応する。第二の被験体には、アルブミンミクロスフェアを含むペルフルオロプロパンを含む市販の超音波造影剤であるOPTISON(登録商標)(Amersham Health)の単回投与を与えた。この2人の被験体に、音響的に活性な成分であるガスを同じ合計量(27μg/体重kg)与えた。この2人の被験体に対して、連続的ハーモニックイメージング(フレームレート15Hzおよび変換器周波数2.1/4.2MHz)を使用して、経胸壁超音波画像化を行った。画像を、強度および増強持続時間について視覚的に評価した。
【0117】
心室増強および心筋増強の持続時間を、表5においてまとめる。
【0118】
(表5:別個の超音波造影剤を用いた画像増強の持続時間)
【0119】
【表5】

実施例1において記載される方法を使用して生成した微粒子は、心室および心筋の両方の画像増強を提供する。この画像増強は、OPTISON(登録商標)よりもかなり長く、そしてこれは、超音波による完全心臓試験を実行するために適切な持続時間である。
【0120】
(実施例5:微粒子処方物を使用する、虚血を評価するための心筋血流の評価)
実施例1における方法に従って生成した微粒子を、冠動脈心疾患について評価する被験体に対して投与した。この被験体に、60分間の間隔を空けて2回のこの微粒子の注射を与えた。第一回の微粒子注射(「安静(rest)注射」、1.7mg/kg)は、安静時の心筋を評価するために使用した。第二回の微粒子注射の前に、この被験体に対して、冠血管拡張剤であるジピリダモール(0.56mg/kg)を使用して、薬理学的にストレスを負荷した。ストレス誘導の後、この被験体に、ストレス下での心筋を放火するために、2回目の微粒子注射(「ストレス注射」、1.3mg/kg)を与えた。
【0121】
この被験体に関する上記微粒子投与後の経時的な安静時画像およびストレス時画像の比較は、画像増強における増加が最小である心筋領域を示す。この領域は、上記ストレスの誘導後にサイズが大きくなった。このことは、心筋組織の区域が、梗塞した成分および虚血性成分の両方を有することを示す。虚血の検出は、代替的診断技術である核画像化を使用して確認した。安静時核灌流およびストレス時核灌流を、99Tc(MIBI)投与後に実行した。この被験体を、市販のγ線計数器を使用して画像化した。超音波安静時画像および超音波ストレス時画像において気付いた欠損を、安静時核灌流画像およびストレス時核灌流画像において確認した。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は例えば、以下の項目を提供する。
(項1)
微粒子を含み、増強された造影超音波画像を提供する投薬処方物であって、該微粒子は、生体適合性ポリマーを含み、そして該微粒子中に組み込まれる、体温において気体であるペルフルオロカーボンを有し、該投薬処方物は、該微粒子が静脈内に投与される場合に、増強された超音波画像を、心室において5分間より長くか、または心筋において1分間より長く提供するのに有効な該微粒子の用量を含む、投薬処方物。
(項2)
心室の増強された超音波画像を9分間より長く提供するか、または心筋の増強された超音波画像を2分間より長く提供する、上記項1に記載の投薬処方物。
(項3)
心室の増強された超音波画像を、少なくとも30分間提供する、上記項1に記載の投薬処方物。
(項4)
体重1kgあたり0.025mg〜8.0mgの範囲の微粒子の用量を含む、上記項1に記載の投薬処方物。
(項5)
体重1kgあたり0.05mg〜4.0mgの範囲の微粒子の用量を含む、上記項4に記載の投薬処方物。
(項6)
使用する前に滅菌水を用いて再構成され得る微粒子の乾燥粉末の形態である上記項1に記載の投薬処方物であって、該投薬処方物は、該微粒子の等浸透圧懸濁物を得るために、該乾燥粉末のバイアルまたはシリンジに滅菌水を添加し、そして振盪することによって再構成され得る、投薬処方物。
(項7)
懸濁物の1mLあたり1.0×10個〜3.5×10個の範囲の微粒子の濃度、または懸濁物1mLあたり25mg〜50mgの範囲の微粒子の質量濃度を有する懸濁物を形成する、上記項6に記載の投薬処方物。
(項8)
懸濁物の1mLあたり1.5×10個〜2.8×10個の範囲の微粒子の濃度、または懸濁物1mLあたり30mg〜45mgの範囲の微粒子の質量濃度を有する懸濁物を形成する、上記項7に記載の投薬処方物。
(項9)
前記微粒子は、8ミクロン未満の平均粒子サイズを有する、上記項1に記載の投薬処方物。
(項10)
前記微粒子は、1.9ミクロン〜2.6ミクロンの範囲の平均粒子サイズを有する、上記項9に記載の投薬処方物。
(項11)
体重1kgあたり0.5mg〜4.0mgの範囲の微粒子の用量を含む、上記項1に記載の投薬処方物。
(項12)
前記用量は、体重1kgあたり0.5mgの微粒子、体重1kgあたり2.0mgの微粒子および体重1kgあたり4.0mgの微粒子からなる群より選択される、上記項11に記載の投薬処方物。
(項13)
前記気体は、CF、C、C、C、C、C、C10、およびSFからなる群より選択される、上記項1に記載の投薬処方物。
(項14)
前記気体は、n−ペルフルオロブタン(C10)であり、該n−ペルフルオロブタンは、微粒子懸濁物の投与容量の1mLあたり、75μgと500μgとの間の量で提供される、上記項13に記載の投薬処方物。
(項15)
前記n−ペルフルオロブタン(C10)は、微粒子懸濁物の投与容量の1mLあたり、100μgと400μgとの間の量で提供される、上記項14に記載の投薬処方物。
(項16)
前記n−ペルフルオロブタン(C10)は、微粒子懸濁物の投与容量の1mLあたり、150μgと350μgとの間の量で提供される、上記項15に記載の投薬処方物。
(項17)
前記気体は、n−オクタフルオロプロパン(C)であり、該n−オクタフルオロプロパンは、微粒子懸濁物の投与容量の1mLあたり、75μgと375μgとの間の量で提供される、上記項15に記載の投薬処方物。
(項18)
前記n−オクタフルオロプロパン(C)は、微粒子懸濁物の投与容量の1mLあたり、120μgと300μgとの間の量で提供される、上記項17に記載の投薬処方物。
(項19)
前記微粒子は、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)、それらのコポリマーおよびブレンドからなる群より選択される合成ポリマーから形成される、上記項1に記載の投薬処方物。
(項20)
0.01%と30%との間の割合(疎水性化合物の重量/ポリマーの重量)で前記ポリマーに組み込まれる疎水性化合物を、さらに含む、上記項1に記載の投薬処方物。
(項21)
前記疎水性化合物は、0.01%と30%との間の割合(脂質の重量/ポリマーの重量)で前記ポリマーに組み込まれる脂質である、上記項20に記載の投薬処方物。
(項22)
前記脂質は、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン(DPDPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)、ジリグノセロイルファチジルコリン(DLGPC)、およびホスファチジルエタノールアミンからなる群より選択されるリン脂質である、上記項21に記載の投薬処方物。
(項23)
前記ポリマーは、1:1のラクチド対グリコリドの比および20kDa〜40kDaの範囲の重量平均分子量を有するポリ(ラクチド−co−グリコリド)であり、そして前記脂質は、5%と6.6%との間の割合(脂質の重量/ポリマーの重量)で該ポリマーに組み込まれるジアラキドイルホスファチジルコリンである、上記項22に記載の投薬処方物。
(項24)
微粒子の乾燥粉末を備えるバイアルまたはシリンジ中にある、上記項1に記載の投薬処方物。
(項25)
前記バイアルまたはシリンジは、糖類、塩類、および界面活性剤からなる群より選択される1つ以上の賦形剤をさらに備える、上記項24に記載の投薬処方物。
(項26)
乾燥微粒子のバイアルまたはシリンジ、および該微粒子を再懸濁するための溶液のバイアルまたはシリンジを備えるキット中にある、上記項1に記載の投薬処方物。
(項27)
本質的に1用量または2用量からなる、上記項1に記載の投薬処方物。
(項28)
本質的に最大で5用量からなる、上記項1に記載の投薬処方物。
(項29)
増強された超音波画像を提供する方法であって、該方法は、上記項1〜28のいずれかに記載の投薬処方物を患者に投与する工程、および次いで該患者の範囲を画像化し、造影剤が存在しない場合と比較して増強された画像を生じる工程を包含する、方法。
(項30)
前記患者の心血管系に負荷を与える因子を該患者に投与する工程、および該患者を再度画像化する工程を、さらに包含する、上記項29に記載の方法。
(項31)
前記画像化される範囲は、心血管領域、肝臓、腎臓、脾臓、乳房、および卵巣からなる群より選択される、上記項29に記載の方法。
(項32)
上記項1〜28のいずれかに記載の投薬処方物および該投薬処方物を再構成するための溶液を備える、キット。
(項33)
造影超音波画像化法のための投薬処方物を作製する方法であって、該方法は、上記項1〜28のいずれかによって定義されるような投薬処方物を生産するために、以下:
必要に応じて賦形剤を含む溶液中に、生体適合性ポリマーおよび疎水性化合物を含む微粒子を懸濁する工程;
バイアルまたはシリンジ中に該懸濁物を配置する工程;
該懸濁物を凍結する工程;
該バイアルを凍結乾燥して、該バイアルまたはシリンジ中に乾燥粉末処方物を形成する工程;および
ペルフルオロカーボンガスで凍結乾燥器を充填しなおす工程、
を包含する、方法。
(項34)
造影超音波画像化法のための投薬処方物を作製する方法であって、該方法は、上記項1〜28のいずれかによって定義されるような投薬処方物を生産するために、以下:
生体適合性ポリマーを含む微粒子と、必要に応じて賦形剤を含む疎水性化合物とをドライブレンドする工程;
バイアルまたはシリンジ中に該混合物を配置する工程;および
該バイアルに真空を適用した後にペルフルオロカーボンガスで該バイアルまたはシリンジを充填する工程、
を包含する、方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2011−140527(P2011−140527A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−94529(P2011−94529)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【分割の表示】特願2007−515022(P2007−515022)の分割
【原出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【出願人】(505113768)アキュスフィア, インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】