説明

超高強度グラウト組成物

【課題】流動性に優れ、蒸気養生を行わなくとも超高強度であり且つ自己収縮が小さい超高強度グラウト組成物を提供すること。また、流動性に優れ、蒸気養生を行わなくとも超高強度であり且つ自己収縮が小さい超高強度グラウトを提供すること。
【手段】特定の水結合材比で使用する、セメントと、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末及び石膏類をそれぞれ特定の割合で含有するこ。更に、増粘剤、減水剤、骨材、発泡剤から選ばれる1種又は2種以上を含有すると好適である。また、これら及びセメントの含有率を特定にすると好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高強度グラウト組成物に関する。詳しくは、流動性に優れ、材齢28日における圧縮強度が120N/mmを超えるにも拘らず自己収縮が小さい超高強度グラウト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築技術の向上や土地の有効活用の観点より、建築構造物の超高層化あるいは大規模化の傾向が高まっている。このような建築構造物の超高層化あるいは大規模化に対応するために、構造物自体の高強度化が求められている。そのため、主構造および各種部材の接合部に使用されるコンクリートやグラウトモルタルの強度を超高強度とすることが必須となっている。
【0003】
一般的にモルタルやコンクリートを超高強度化するために、シリカフューム等の活性シリカを添加する方法が知られている。シリカフューム等の活性シリカを添加すると、そのボールベアリング効果による水結合材比の低減、マイクロフィラー効果による充填性の向上、並びにポゾラン反応による硬化体組織の緻密化等により、添加したモルタルやコンクリートの硬化体が高強度化する。なお、本発明における結合材とは、水硬性セメントや高炉スラグ粉末等の水硬性物質、並びに活性シリカ等のポゾランをいい、水結合材比とは、単位水量を単位結合材量で除した値(水の質量を結合材の質量の総和で除した値)をいう。この種の技術として、高性能減水剤とアルカリ金属の炭酸塩等を併用し、石膏類及び/または炭酸カルシウム、活性シリカを配合した高強度を発現できるセメント混和材が知られている(例えば特許文献1参照。)。しかしながら、この種のコンクリートやモルタルは、セメント量が多く、水セメント比が小さいので、硬化後の自己収縮が大きくなるという課題があった。また、これらの材齢28日における圧縮強度は、70〜100N/mmであり、本発明でいう超高強度(圧縮強度120N/mm超)には至らない。
【0004】
また、無水石膏及びポゾラン性微粉末を含有する高強度モルタル・コンクリート用混和材が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この高強度モルタル・コンクリート用混和材は、混和したモルタルやコンクリートが超高強度となるために、当該モルタル等の水結合材比を25%以下と小さくするとともに、蒸気養生を必要としていた。
【0005】
また、か焼温度、シリカ/アルミナの組成比及び粒度等を特定することで、モルタルやコンクリートを超高強度にできるセメント混和材が知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、このセメント混和材は、混和するモルタルやコンクリート等の水結合材比が25%以下であるために、硬化後の当該モルタル等の自己収縮が大きいことが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−209152号公報
【特許文献2】特開2006−248828号公報
【特許文献3】特公平07−033271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題の解決、即ち、本発明は、流動性に優れ、蒸気養生を行わなくとも超高強度であり且つ自己収縮が小さい超高強度グラウト組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、流動性に優れ、蒸気養生を行わなくとも超高強度であり且つ自己収縮が小さい超高強度グラウトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題解決のため鋭意検討した結果、特定の水結合材比で使用するセメント、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末及び石膏類を特定の割合で含有することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下の(1)〜(4)で表す超高強度グラウト組成物、及び(5)で表す超高強度グラウトである。
(1)セメント、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末2〜20質量%、石膏類3〜18質量%を含有し、水結合材比26〜35%で使用することを特徴とする超高強度グラウト組成物。
(2)更に、増粘剤、減水剤、骨材、発泡剤から選ばれる1種又は2種以上を含有してなる上記(1)の超高強度グラウト組成物。
(3)セメントを25〜60質量%、増粘剤を0.01〜0.10質量%、減水剤を0.1〜0.8質量%及び骨材を35〜60質量%含有する、上記(1)又は(2)の超高強度グラウト組成物。
(4)発泡剤を0.0002〜0.003質量%含有する上記(1)〜(3)の超高強度グラウト組成物。
(5)上記(1)〜(4)の超高強度グラウト組成物と、水結合材比26〜35%となる量の水とを練りまぜ製造した超高強度グラウト。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流動性に優れ、蒸気養生を行わなくとも超高強度であり且つ自己収縮が小さい超高強度グラウト及びそのための超高強度グラウト組成物、即ち自己収縮が小さい超高強度グラウト及びそのための超高強度グラウト組成物が得られる。また、本発明の超高強度グラウト及びそのための超高強度グラウト組成物は、硬化時の自己収縮が起こり難く且つ超高強度が得られるので、超高層建築物の各部材の接合部分や超高強度の部材内部の充填等に、好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の超高強度グラウト組成物に用いるセメントは、水硬性セメントであればよく、例えば普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱の各種ポルトランドセメント、エコセメント、並びにこれらのポルトランドセメント又はエコセメントに、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム又は石灰石微粉末等を混合した各種混合セメント、太平洋セメント社製「ジェットセメント」(商品名)や住友大阪セメント社製「ジェットセメント」(商品名)等の超速硬セメント、アルミナセメント等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を使用することができる。ワービリティを損ない難く可使時間が長く確保し易いことから、各種ポルトランドセメント、エコセメント及び各種混合セメントから選ばれる一種又は二種以上を使用することが好ましい。本発明の超高強度グラウト組成物においてセメントの含有率は、25〜60質量%とする。25質量%未満では材料分離を抑えながらグラウトとしての流動性を確保し難い。60質量%を超えると、自己収縮を抑えながらグラウトとしての流動性を確保し難い。材料分離し難く、自己収縮が小さく且つグラウトとしての良好な流動性が得られることから、セメントの含有率を30〜55質量%とすることが好ましく、40〜50質量%とすることが更に好ましい。
【0011】
本発明の超高強度グラウト組成物に用いる非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末は、SiO及びAlを主要化学成分として含有する鉱物のうち非晶質のものである。ここでいう非晶質とは、粉末X線回折装置による測定で、ピークが見られなくなることをいい、本発明に用いる非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末は非晶質の割合が70質量%以上であればよく、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100%即ち粉末X線回折装置による測定でピークが全く見られないものが最も好ましい。非晶質の割合が低いアルミノ珪酸鉱物粉末、即ち結晶質の割合が高いアルミノ珪酸鉱物粉末は、非晶質の割合が高いアルミノ珪酸鉱物粉末に比べて、同じ混和量における強度発現性が悪く、同じ強度を得るためにはより多くのアルミノ珪酸鉱物粉末を必要とする。本発明に用いる非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末には、SiO及びAl以外に、TiO、Fe、CaO、MgO、KO、NaO等の微量成分が含まれていても良い。微量成分の合計が10質量%以下とすることが、グラウトの圧縮強度を高めることから好ましく、SiO及びAl以外の各微量成分が2.5%以下とすることがより好ましい。本発明に用いる非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末は、SiO及びAlを主要化学成分として含有する結晶質のアルミノ珪酸鉱物を加熱し非晶質化した非晶質アルミノ珪酸鉱物を粉末にすることによって得られる。加熱による非晶質化の前に粉末にしても良い。ここで用いる結晶質のアルミノ珪酸鉱物は、鉱物中に結晶水や水酸基が含まれていても良い。本発明に用いる非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末としては、カオリナイト、ハロサイト、ディッカイト等のカオリン鉱物を加熱し非晶質化した非晶質アルミノ珪酸鉱物の粉末が、化学成分が比較的安定したものを入手し易く、混和したグラウトの物性が比較的安定することから好ましい。アルミノ珪酸鉱物の非晶質化のための加熱としては、外熱キルン、内熱キルン、電気炉等による焼成、及び溶融炉を用いた溶融等が挙げられる。
【0012】
本発明の超高強度グラウト組成物に用いる非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末の粉末度は、JIS R 5201−1997に規定される比表面積試験による測定したブレーン比表面積の値が、15000〜45000cm/gの範囲のものが好ましい。15000cm/g未満では、超高強度とするためにより多くの非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末を混和する必要があり、45000cm/g以上では混和したグラウトの流動性を得るためにより多くの減水剤が必要となる。より好ましい非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末の粉末度は、ブレーン比表面積で20000〜40000cm/gの範囲である。
【0013】
本発明の超高強度グラウト組成物において非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末の含有率は、2〜20質量%とする。2質量%より少ないと強度が不足するか、強度を得るために水量を水結合材比26%よりも少なくせざるを得ないために自己収縮が大きくなる。非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末の含有率が20質量%を超えると、流動性が得られ難くなり、グラウトとしての流動性を確保するために水量又は減水剤量を増加させると強度が不足する。非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末の含有率を4〜10質量%とすることが、硬化時の自己収縮をより抑制し、減水剤及び増粘剤の含有率の調整によりグラウトとしての良好な流動性を確保し易い点でより好ましい。
【0014】
本発明の超高強度グラウト組成物に用いる石膏類は、無水石膏、二水石膏又は半水石膏を主成分とする粉末であれば特に限定されないが、強度増進作用の観点からII型無水石膏を主成分とするものが好ましい。石膏類は、セメント中のアルミネート相等と反応しエトリンガイト(3CaO・Al・3CaSO・32HO)を生成させ、これによりグラウト硬化体の収縮を抑制することができるとともに、初期強度を高めることができる。使用する石膏類の粉末度はブレーン法による比表面積で3000cm/g以上のものが、反応活性が得られるので好ましい。より好ましくは粉末度が6000cm/g以上の石膏類が良い。粉末度の上限は特に制限されないが、粉末度を高めるコストが嵩む割にはその効果が鈍化することから概ね15000cm/g程度が適当である。
【0015】
本発明の超高強度グラウト組成物において石膏類の含有率は、3〜18質量%とする。3質量%未満では自己収縮が大きくなるとともに強度が不足する。18質量%を超えると、流動性が得られ難くなり、グラウトとしての流動性を確保するために水量又は減水剤量を増加させると強度が不足する。強度が高く且つ良好な流動性が得られることから、石膏類の含有率を5〜15質量%とすることが好ましく、5〜10質量%とすることが更に好ましい。
【0016】
本発明の超高強度グラウト組成物は、水結合材比26〜35%で使用する。26%よりも小さい水結合材比で使用すると、自己収縮ひずみが大きくなる。また、35%を超える水結合材比で使用すると、硬化後のグラウトの強度が不足する。より自己収縮ひずみが小さく且つ高い強度が得られることから、水結合材比28〜34%で使用する。尚、本発明において使用する水の量は、水溶液やエマルション等の液状の混和材料に含まれる水量も考慮したものとする。
【0017】
本発明の超高強度グラウト組成物に、更に、増粘剤、減水剤、骨材、発泡剤から選ばれる1種又は2種以上を含有することが好ましい。増粘剤及び減水剤を含有することで、グラウトの材料分離を抑えながら高い流動性を得ることができる。用いる増粘剤としては、セルロース系増粘剤、アクリル系増粘剤、グアーガム系増粘剤などが使用でき、セルロース系増粘剤が好ましく、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい例として挙げられる。本発明の超高強度グラウト組成物における増粘剤の含有率は、0.01〜0.10質量%とすることが好ましい。
【0018】
また、本発明で用いる減水剤としては、特に限定されず、例えば、ポリカルボン酸塩系減水剤、ナフタレンスルホン酸塩系減水剤、メラミンスルホン酸塩系減水剤及びリグニンスルホン酸塩系減水剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。用いる減水剤としては、高性能減水剤又は高性能AE減水剤を用いると、グラウトを超高強度とし易いことから好ましい。ポリカルボン酸塩系高性能減水剤又はポリカルボン酸塩系高性能AE減水剤が、少量の含有で流動性保持時間を長くできることから特に好ましい。本発明の超高強度グラウト組成物における減水剤の含有率は、0.1〜0.8質量%とすることが好ましい。
【0019】
また、本発明の超高強度グラウト組成物において、骨材を用いることで自己収縮を抑制し易くなる。本発明で用いる骨材としては、特に限定されず、例えば、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、川砂利、陸砂利、砕石、人工骨材、スラグ骨材などを用いることができる。本発明の超高強度グラウト組成物における骨材の含有率は、35〜60質量%とすることが好ましい。
【0020】
また、本発明の超高強度グラウト組成物において、発泡剤を用いることで自己収縮を抑制し易くなるとともに、グラウトを無収縮、即ちグラウトの初期膨張率を0%よりも大きくすることができる。本発明で用いる発泡剤としては、特に限定されず、具体的には水と混練後に気体を発生する物質であればよい。この膨張作用によりグラウトモルタルの沈下現象を防止し、構造物との一体化を図る。その具体例として、例えば、アルミニウムや亜鉛等の両性金属の粉末や過酸化物質等が挙げられる。なかでも、効果的に発泡し、膨張作用を発揮することができるので、アルミニウム粉末が好ましい。本発明の超高強度グラウト組成物における発泡剤の含有率は、0.0002〜0.003質量%とすることが好ましい。
【0021】
本発明の超高強度グラウト組成物には、セメント、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末、石膏類、発泡剤、増粘剤、骨材及び減水剤以外に、他の混和材料から選ばれる一種又は二種以上を本発明の効果を実質損なわない範囲で併用することができる。この混和材料としては、例えば膨張材、セメント用ポリマー、防水材、防錆剤、収縮低減剤、保水剤、顔料、繊維、撥水剤、白華防止剤、急結剤(材)、急硬剤(材)、凝結遅延剤、消泡剤、高炉スラグ微粉末、石粉、シリカフューム、火山灰、空気連行剤、表面硬化剤等が挙げられる。また、本発明で使用される混和材料は、粉末状でも水溶液状でも使用可能であるが、施工現場で複雑な計量操作等を必要とせずに、所定量の水を計量し混練するだけですぐに使用できるように、本発明の超高強度グラウト組成物の配合成分のすべてが予め混合され粉末状である所謂「プレミックス製品」であるほうが施工現場での作業性が良い為、使用する混和材料自体も全て粉末状又は顆粒状であることが好ましい。
【0022】
本発明の超高強度グラウト組成物は、V型混合機や可傾式コンクリートミキサ等の重力式ミキサ、ヘンシェル式ミキサ、リボンミキサ等のミキサにより、所定量の上記各材料を予め混合する方が、添加後の超高強度グラウト組成物において材料の偏在が抑えられることから好ましい。このとき用いるミキサは、連続式ミキサでもバッチ式ミキサでも良い。各材料のミキサ内への投入順序は特に限定されない。一種ずつ添加してもよく、一部又は全部を同時に添加してもよい。また、袋やポリエチレン製容器等の容器に各材料を計り取り投入する方法により、本発明の超高強度グラウト組成物を製造することもできる。
【0023】
本発明の超高強度グラウト組成物は、水結合材比26〜35%となる量の水と混練して用いる。このときの水量は、水性の液状混和材料(例えば減水剤やゴムラテックス。)を添加する場合は、超高強度グラウト組成物に添加する水性の液状混和材料に含まれる水の量も考慮する。水結合材比26%未満では自己収縮が大き過ぎ、35%を超えると超強度となる強度が得られない。自己収縮がより小さく且つより高強度が得られることから、28〜34%が好ましい。
【0024】
また、本発明の超高強度グラウトは、上記の超高強度グラウト組成物と、水結合材比26〜35%となる量の水とを混練したものである。本発明の超高強度グラウトに、本発明の効果を実質損なわない範囲で、上記の混和材料から選ばれる一種又は二種以上を混和し含有させることができる。このとき、水性の液状混和材料を混和するときは、この水性の液状混和材料に含まれる水量も考慮した上で、水結合材比26〜35%となるようにする必要がある。混練する方法は特に限定されず、例えば水に上記の超高強度グラウト組成物を全量加え混練する方法、水に上記の超高強度グラウト組成物を混練しながら加え更に混練する方法、上記の超高強度グラウト組成物に水を全量加え混練する方法、上記の超高強度グラウト組成物に水を混練しながら加え更に混練する方法、水及び上記の超高強度グラウト組成物のそれぞれ一部ずつを2以上に分けて混練したものを合わせて更に混練する方法、水と水性の混和材料を合わせたものに上記の超高強度グラウト組成物を全量加え混練する方法、水と水性の混和材料を合わせたものに上記の超高強度グラウト組成物を混練しながら加え更に混練する方法、上記の超高強度グラウト組成物に水と水性の混和材料を合わせたものを全量加え混練する方法、上記の超高強度グラウト組成物に水と水性の混和材料を合わせたものを混練しながら加え更に混練する方法、水と水性の混和材料を合わせたものに及び上記の超高強度グラウト組成物のそれぞれ一部ずつを2以上に分けて混練したものを合わせて更に混練する方法等がある。上記の超高強度グラウト組成物と水以外に混和材料を混和させる場合は、上記の超高強度グラウト組成物に添加しても、水に添加しても、両方に添加してもよく、上記の超高強度グラウト組成物と水を混練したものに添加してもよい。また、混練に用いる器具や混練装置も特に限定されないが、ミキサを用いることが量を多く混練できるので好ましい。用いることのできるミキサとしては連続式ミキサでもバッチ式ミキサでも良く、例えばパン型コンクリートミキサ、パグミル型コンクリートミキサ、重力式コンクリートミキサ、グラウトミキサ、ハンドミキサ、左官ミキサ等が挙げられる。
【実施例】
【0025】
[実施例1]
表1に示す配合割合で各水準3kgのグラウト組成物を作製した。このときの使用材料を以下に示す。グラウト組成物の作製方法は、作製するグラウト組成物の質量が3kgとなる量の表1に示す割合の各材料を、ポリ袋(縦650mm×横350mm×厚さ0.1mm)に投入し、密閉した後に60秒間手で振り、各材料を混合することでグラウト組成物を作製した。作製したグラウト組成物を表1に示す水結合材比となる水量の水を加え、金属容器内でハンドミキサ(1100r.p.m.,羽根直径100mm)により120秒間混練することによりグラウトを作製した。グラウトの作製は、何れも20±3℃、湿度80%以上の恒温室内で行った。
<使用材料>
アルミノ珪酸鉱物粉末A:市販品(BASFジャパン社製焼成カオリン、商品名「メタマックス」、粉末X線回折装置による測定でピークが全く見られない(非晶質))
アルミノ珪酸鉱物粉末B:市販のカオリナイトを小型内熱キルンで750℃で焼成したものをブレーン比表面積2500g/cmに粉砕したもの。粉末X線回折装置による測定でピークが全く見られない。
アルミノ珪酸鉱物粉末C:市販のカオリナイトを小型内熱キルンで1300℃で焼成したものをブレーン比表面積2500g/cmに粉砕したもの。粉末X線回折装置による測定でピークが見られ、ムライトと同定した(結晶質)。
セメントN:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
セメントH:早強ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
発泡剤:アルミニウム粉末(東洋アルミニウウム社製)
骨材:珪砂(市販品、商品名「嘉穂4号珪砂」)
減水剤:ポリカンルボン酸塩系高性能減水剤(花王社製)
増粘剤:水溶性セルロース系増粘剤(信越化学工業社製)
水:佐倉市上水
【0026】
【表1】

【0027】
作製したグラウトの品質試験として、以下に示す通り、練り混ぜ直後及び60分後のフロー値、材齢7日,28日及び56日の圧縮強度、並びに自己収縮ひずみを測定し、練り混ぜ直後の骨材沈降の有無、即ち材料分離の有無を手触りにより確認した。これらの結果を表2及び表3に分けて、作業性の評価とともに示した。作業性の評価は以下に示す通りである。表3の自己収縮ひずみ欄の「膨張」は、材齢12時間〜4日までの自己収縮ひずみが全て正の値、即ち膨張していたことを意味し、「収縮」は、材齢12時間〜4日までの自己収縮ひずみが全て負の値、即ち収縮していたことを意味する。尚、圧縮強度試験以外の品質試験は、何れも20±3℃、湿度80%以上の恒温室内で行った。
<品質試験方法>
・流動性試験
JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」11.フロー試験に準じて、落下運動行わずに、フロー値を測定した。このとき、フローテーブルの上に載せたアクリル板(50cm×50cm×1cm)上で試験を行った。尚、60分後の測定は、上記ハンドミキサで30秒間撹拌した後に行った。
・骨材沈降の有無の確認(不分離性の確認)
作製したグラウトを2リットルポリビーカーに入れ、30分間静置後に、ポリビーカーの底部分に細骨材が溜まっているか否かを手触りにより確認することで不分離性を判断した。ポリビーカーの底部分に細骨材が沈降し溜まっているものを「材料分離」、骨材が溜まっていないものを「良好」とした。
・圧縮強度試験
土木学会基準JSCE−G 505−1999「円柱供試体を用いたモルタルまたはセメントペーストの圧縮強度試験方法」に準じ、各材齢の圧縮強度を測定した。このとき供試体は、材齢1日で脱型し、その後20℃の水中で試験直前まで養生した。
・自己収縮ひずみ
JCI基準JCI−SAS3「コンクリートの自己収縮応力試験方法(案)」に準じて、自己収縮ひずみを測定した。このとき、自己収縮ひずみの起点は始発時間とした。尚、自己収縮ひずみが正の値のときは膨張を、負の値のときは収縮を意味している。
<作業性の評価>
良好:グラウトとして良好な流動性を60分間確保し、且つ骨材沈降が無く材料不分離性を有しているものを、作業性良好とした。
不良:グラウトとして良好な流動性を60分間確保できなかったもの、或いは骨材沈降が見られたものを、作業性不良とした。
【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
本発明の実施例に当たるグラウトは、何れもフロー値が練り混ぜ直後で290mm以上、60分後においても220mm以上ありグラウトとして充分な流動性が備わっているとともに、材料不分離性も備わっており、作業性に優れていることがわかる。また、これらの本発明の実施例に当たるグラウトは、材齢12時間〜4日まで全て何れも自己収縮ひずみが正の値、即ち膨張側にあり、自己収縮が起こっていないことがわかる。また、これらの本発明の実施例に当たるグラウトは、何れも材齢28日において圧縮強度が120N/mm以上と、超高強度であった。
【0031】
[実施例2]
実施例1で作製した配合No.3,No.4,No.9及びNo.13のグラウトを用いて、土木学会基準JSCE−F 542−1999「充てんモルタルのブリーディング率および膨張率試験方法」に準じて、材齢1日及び7日の初期膨張率を測定した。その結果を表4に示した。
【0032】
【表4】

【0033】
本発明の実施例に当たり且つ発泡剤を0.0002〜0.003質量%の範囲内で含有する配合No.3及びNo.4のグラウトは、材齢1日及び7日ともに正の値で、無収縮性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、圧縮強度120N/mmを超え且つ硬化時の自己収縮が起こり難くい超高強度グラウトが得られるので、超高層建築物の各部材の接合部分や超高強度の部材内部の充填等に、好適に用いることができる。本発明により得られる超高強度グラウトは、蒸気養生を行わぬとも圧縮強度120N/mmを超えるが、より早期に超高強度を得るために蒸気養生を行うこともできることから、超高強度パイル等の蒸気養生を行うコンクリート製品等のセメント製品に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末2〜20質量%、石膏類3〜18質量%を含有し、水結合材比26〜35%で使用することを特徴とする超高強度グラウト組成物。
【請求項2】
更に、増粘剤、減水剤、骨材、発泡剤から選ばれる1種又は2種以上を含有してなる請求項1に記載の超高強度グラウト組成物。
【請求項3】
セメントを25〜60質量%、増粘剤を0.01〜0.10質量%、減水剤を0.1〜0.8質量%及び骨材を35〜60質量%含有する、請求項1又は請求項2に記載の超高強度グラウト組成物。
【請求項4】
発泡剤を0.0002〜0.003質量%含有する請求項1〜請求項3に記載の超高強度グラウト組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4に記載の超高強度グラウト組成物と、水結合材比26〜35%となる量の水とを練りまぜ製造した超高強度グラウト。

【公開番号】特開2011−136863(P2011−136863A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297912(P2009−297912)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】