説明

越波検知システム

【課題】誤検出が少なく信頼度の高い越波検知システムを得る。
【解決手段】越波検知システムは、越波の監視を行う区域を撮影して画像データを出力する監視カメラと、防波堤に向かって進退する波に向いて電波を放射するとともに反射体により反射されて戻ってくる反射波を受信するアンテナと、上記監視カメラから出力される画像データを解析して防波堤を越える動きがあるか否かを判定するとともに動きがあると判定したとき上記反射波の周波数スペクトルから得られるドップラ速度が所定の条件を満たすとき越波が発生すると判断する遠隔制御監視装置と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防潮堤、防波堤などの天端を越えて堤内に流入する越波を検知する越波検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の越波検知装置は、越波の監視を行う区域の映像を撮像する撮像部と、この撮像部を制御する制御部と、撮像部からの画像データを記憶するフレームメモリと、画像データから波打ち際の波の輪郭形状を抽出する波輪郭形状抽出部と、波輪郭形状抽出部で抽出された波輪郭形状の変化を基に越波の発生を判定する越波判定部とを備える(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−52974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような越波検知装置では、越波以外の、他の動きのある要因(車、人、自転車などの移動物体やその影、車のライトなど)が監視領域内に入ってしまうと誤検出するという問題があった。
【0005】
この発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、誤検出が少なく信頼度の高い越波検知システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る越波検知システムは、越波の監視を行う区域を撮影して画像データを出力する監視カメラと、防波堤に向かって進退する波に向いて電波を放射するとともに反射体により反射されて戻ってくる反射波を受信するアンテナと、上記監視カメラから出力される画像データを解析して防波堤を越える動きがあるか否かを判定するとともに動きがあると判定したとき上記反射波の周波数スペクトルから得られるドップラ速度が所定の条件を満たすとき越波が発生すると判断する遠隔制御監視装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る越波検知システムは、画像のデータを解析して監視領域内に動きがあると判定したとき、さらにドップラ速度のデータを用いて越波が発生していると判断するので、監視領域内に他の動きのある要因が入ってもそのときのドップラ速度と電波が波で反射するときのドップラ速度とが異なり、他の動きのある要因を越波と間違って判断することが防げる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の好適な実施の形態に係る越波検知システムの構成図である。
【図2】図1の越波検知システムを防波堤付近に配置した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の越波検知システムの好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
図1は、この発明の好適な実施の形態に係る越波検知システムの構成図である。図2は、図1の越波検知システムを防波堤付近に配置した様子を示す図である。
この発明の実施の形態1に係る越波検知システムは、防波堤31の天端を越えて道路32に流れ込んでくる越波を検知するシステムであり、防波堤31の天端を含む監視区域を撮影する監視カメラ1と、防波堤31に寄せる波に向かう方向に電波を放射するとともに波により反射された電波を受信して高周波信号に変換するアンテナ11と、監視カメラ1により撮影された画像のデータを一旦蓄積するとともにWebブラウザからの要求に従ってHTTPに則りWebサーバに画像データを送るIPビデオサーバ2と、アンテナ11を駆動するアンテナ駆動装置12と、アンテナ11に高周波信号を送信するとともにアンテナ11で受信された高周波信号を受信する送受信装置13と、送信される高周波信号と受信される高周波信号からドップラ速度を抽出する信号処理装置14とを備える。
【0010】
また、この発明の実施の形態1に係る越波検知システムは、ドップラ速度のデータを伝送装置3に送るとともにアンテナ駆動装置12および送受信装置13を制御する制御データを伝送装置3から受け取る制御監視装置15、画像およびドップラ速度のデータをインタネット4に送出するとともにアンテナ11および送受信装置13を制御する制御データをインタネット4を介して受け取る伝送装置3を備える。
なお、IPビデオサーバ2、伝送装置3、アンテナ駆動装置12、送受信装置13、信号処理装置14、制御監視装置15をまとめて送受信信号処理部100と称し、IPビデオサーバ2、伝送装置3、アンテナ駆動装置12、信号処理装置14、制御監視装置15は、コンピュータから構成されている。
【0011】
また、この発明の実施の形態1に係る越波検知システムは、インタネット4を介して画像およびドップラ速度のデータを受け取るとともにアンテナ11および送受信装置13に対する制御データを送出する伝送装置21、画像のデータを表示するWeb表示装置22、画像のデータを録画する録画装置23、アンテナ11および送受信装置13の制御データを出力するとともに画像のデータとドップラ速度のデータから越波を検知する遠隔制御監視装置24を備える。
伝送装置21、Web表示装置22、録画装置23、遠隔制御監視装置24をまとめて遠隔制御監視部101と称し、コンピュータから構成されている。
【0012】
監視カメラ1は、防波堤31の天端を含む監視区域を撮影し、所定の周期でフレーム毎にIPビデオサーバ2に送信する。
IPビデオサーバ2は、監視カメラ1から送信されてきた画像データをメタデータとして撮影日時を付加して蓄積する。また、IPビデオサーバ2は、遠隔制御監視装置24のWebブラウザからの要求に従って画像データをWebブラウザに送信する。
アンテナ11の回転台18は、アンテナ駆動装置12からの制御信号により2軸方向にアンテナ11を回転し、アンテナ11から放射される電波が水平方向および垂直方向に振られる。
アンテナ11の回転台18は、遠隔制御監視装置24から送られてくる制御信号により回転したり停止したりする。
【0013】
波が防波堤31を越えそうなときにはアンテナ11から放射される電波が盛り上がってくる波によって反射され、反射してアンテナ11に戻った反射波は周波数がドップラ効果により高くなる。従って、信号処理装置14は、送受信装置13の受信部16で受信した高周波信号の周波数スペクトルを求め、ピーク値と半値幅を求める。このピーク値と送信部17から出力される高周波信号の周波数との差を求め、求めた差からドップラ速度を検出する。
また、受信部16で受信した高周波信号から求まるドップラ速度は波の速度に因っており、半値幅は波の量に因っている。波と同時に雨が吹き付けているときには、半値幅の大きさで波と雨とを分離することができる。
信号処理装置14はドップラ速度と半値幅を求め、ドップラ速度のデータとして制御監視装置15に送る。その際、ドップラ速度のデータに、メタデータとしての検出日時を添付して送る。
【0014】
遠隔制御監視装置24は、画像のデータを解析して監視領域内に動きがあるか否かを判定する。すなわち、予め画像内にいくつかの監視領域を設定し、この監視領域における動きを検出している。動き検出方法は、時間的に前後に撮像して得られる2つの画像信号の差分を表わす濃度相対差の和を、計測範囲の総画素数で除算して濃度相対差の平均を求め、これが限界値をこえる場合に動きがあると判定する。限界値は、順次連続して求められるN個の濃度相対差の平均M(i)の総和をNで除して求まる平均値に補正係数k(k>1)を乗算して求めている。さらに、濃度相対差の平均が限界値を越えたときにトリガ信号を発生させ、このトリガ信号が発生されたときは、予め決めた回数に亘って濃度相対差の平均を限界値と比較し、限界値を越える回数が所定の回数以上となるときに動きがあると判定する。
【0015】
遠隔制御監視装置24は、画像のデータを解析して監視領域内に動きがあると判定したとき、その画像の撮影日時と同じ検出日時のドップラ速度のデータを用いて越波が発生しているか否かを判断する。
ドップラ速度のデータからドップラ速度の平均値を取り出し、予め定められた閾値よりも大きいとき越波が発生していると判断する。
【0016】
このように画像のデータを解析して監視領域内に動きがあると判定したとき、さらにドップラ速度のデータを用いて越波が発生していると判断するので、監視領域内に他の動きのある要因が入ってもそのときのドップラ速度と電波が波で反射するときのドップラ速度とが異なり、他の動きのある要因を越波と間違って判断することが防げる。
【符号の説明】
【0017】
1 監視カメラ、2 IPビデオサーバ、3 伝送装置、4 インタネット、11 アンテナ、12 アンテナ駆動装置、13 送受信装置、14 信号処理装置、15 制御監視装置、16 受信部、17 送信部、18 回転台、21 伝送装置、22 Web表示装置、23 録画装置、24 遠隔制御監視装置、31 防波堤、32 道路、100 送受信信号処理部、101 遠隔制御監視部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
越波の監視を行う区域を撮影して画像データを出力する監視カメラと、
防波堤に向かって進退する波に向いて電波を放射するとともに反射体により反射されて戻ってくる反射波を受信するアンテナと、
上記監視カメラから出力される画像データを解析して防波堤を越える動きがあるか否かを判定するとともに動きがあると判定したとき上記反射波の周波数スペクトルから得られるドップラ速度が所定の条件を満たすとき越波が発生すると判断する遠隔制御監視装置と、
を備えることを特徴とする越波検知システム。
【請求項2】
上記遠隔制御監視装置は、上記反射波のスペクトルのピーク幅の大小により波と雨とを分離することを特徴とする請求項1に記載の越波検知システム。
【請求項3】
上記監視カメラから出力される画像データを表示するWeb表示装置を備え、
上記遠隔制御監視装置は、上記監視カメラとアンテナを制御することを特徴とする請求項1または2に記載の越波検知システム。

【図1】
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【図2】
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