説明

足場作業用リフト

【課題】ワイヤの乱巻きやそれによるキンクが発生せず、安全且つ円滑な昇降が可能な足場作業用リフトを提供する。
【解決手段】足場用パイプによって枠組みが形成された足場Aと、足場Aの一部に垂直方向に開放された荷台昇降用空間Cと、荷台昇降用空間Cの両側の縦パイプ1に固定されて垂直に設置された一対のガイドレール5と、荷台昇降用空間Cに配置されるかご型の昇降荷台10と、昇降荷台10の両側部に設けられ、一対のガイドレール5を走行するように回転するとともに、昇降荷台10の水平方向の位置を規制するガイドローラユニット11と、荷台昇降用空間Cの最上部に設置され、昇降荷台10の上部に固着されたチェーン14を巻き上げる電動チェーンブロック13と、昇降荷台10が所定以上の速度で落下したときに作動して昇降荷台10を停止させる安全ブロック17とを備えた足場作業用リフト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築現場や、既存建築物の補修時に設置される足場に付設され、工事に必要な資材や足場の構築部材等を荷上げしたり荷下ろししたりする足場作業用リフトに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の建築や補修時に、作業者が高所で安全に作業したり、移動したりするために、床板と手摺りを含む足場を仮設することが行われている。
足場の上層と地上との間で資材や足場の構築部材を上げ下ろしする場合、地上と足場の各層に人員を配置して、手渡しで資材や部材を荷上げしたり荷下ろししたりしていた。しかし、これでは荷上げや荷下ろしだけの作業のために多くの人員が必要となり、時間が長く掛かったり、受け渡しに失敗して部材を落とすと重大な事故につながるという危険が多い。また人員や時間を多く必要とするため作業コストも高くなる。
【0003】
このような人海戦術的な作業を改善するために、滑車とロープを用いて資材や部材を吊り上げたり吊り下げたりすることも行われているが、1回での重量は20kgが限界であり、手が疲れて長時間の作業は無理である。また、資材や部材をロープで結束するため、結束が外れると資材や部材が落下して危険である。
【0004】
クレーンのような重機を用いて資材や部材の上げ下ろしをすることも考えられるが、クレーンが乗り入れるのに困難な場所もあり、また重機の導入コストやレンタルコストも高い。
【0005】
このような問題を解消するために、特許文献1には、足場において隣接する一対の建地にそれぞれ取り付けられた一対の昇降用レールと、この昇降用レールに上下昇降自在に取り付けられた荷台と、足場の上部に取り付けられ、荷台を吊り下げるための巻上ワイヤを巻き上げたり、繰り出したりする電動巻上ウインチと、昇降用レールに沿って設けられた安全ワイヤと、巻上ワイヤによって吊り下げられ、荷台に取り付けられ、巻上ワイヤが切れたときに、安全ワイヤを狭持して荷台の落下にブレーキを掛ける落下防止機構とからなる足場用荷揚機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−320132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前掲の特許文献1に開示された足場用荷揚機においては、荷台を吊り下げる巻上ワイヤを昇降駆動する手段として、電動巻上ウインチを使用している。しかしながら、この電動巻上ウインチは、モータによって回転駆動されるドラムにワイヤを巻き付けていくことによりワイヤを巻き上げる構成になっているため、ワイヤがドラムに整列巻きされている間は問題は無いが、ドラムに二層以上にワイヤが巻かれると、ワイヤの乱巻きやそれによるキンク(もつれや捻れ)が発生する。そうすると、ワイヤに掛かる荷重によりドラム上に巻かれているワイヤ同士の摩擦によるワイヤ撚り線の損耗、さらに、乱巻きによる荷台の瞬間的な急降下が発生し、安全性が低下するという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、ワイヤの乱巻きやそれによるキンクが発生せず、安全且つ円滑な昇降が可能な足場作業用リフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の足場作業用リフトは、足場用パイプによって枠組みが形成された足場と、前記足場の一部に垂直方向に開放された荷台昇降用空間と、前記荷台昇降用空間の両側の足場用パイプに固定されて垂直に設置された一対のガイドレールと、前記荷台昇降用空間に配置されるかご型の昇降荷台と、前記昇降荷台の両側部に設けられ、前記一対のガイドレールを走行するように回転するとともに、前記昇降荷台の水平方向の位置を規制するガイドローラと、前記荷台昇降用空間の最上部に設置され、前記昇降荷台の上部に固着されたチェーンを巻き上げるチェーンブロックと、前記昇降荷台が所定以上の速度で落下したときに作動して前記昇降荷台を停止させるリフト落下安全装置とを備えたものである。
【0010】
本発明においては、足場の一部に、垂直方向に開放された荷台昇降用空間を形成し、その荷台昇降用空間の両側の足場用パイプに左右一対の垂直のガイドレールを固定する。そのガイドレールに、昇降荷台の両側部に設けられたガイドローラを装着して、ガイドレールに沿って昇降荷台が円滑に昇降できるようにする。荷台昇降用空間の上部にはチェーンブロックが設置されており、そのチェーンブロックにより巻き上げ、巻き下げられるチェーンの下端を昇降荷台の上部に固着する。この構成の足場作業用リフトの昇降荷台に資材や部材を積み込んでチェーンブロックを駆動することによりチェーンが巻き上げられ、昇降荷台が上昇する。所定の高さでチェーンブロックを停止することにより、昇降荷台から資材や部材を下ろすことができる。足場の上層から資材や部材を下ろすときは、昇降荷台に資材や部材を積み込んで地上まで下ろすことにより資材や部材の撤収ができる。チェーンブロックは、チェーンをチェーンホイルに半巻きしているだけで巻き付けているわけではないので、ウインチのように乱巻きが生じることがなく、キンクも生じないため、確実で円滑な昇降が可能である。万一、チェーンブロックのチェーンが破損して昇降荷台が落下する事故が生じたときは、リフト落下安全装置が働いて昇降荷台を停止させるので、人身事故や対物事故を未然に防止できて安全である。
【0011】
前記ガイドレールを四角パイプとし、前記ガイドローラを四角パイプの4面に所定のクリアランスをもって当接する4つのローラから構成することにより、昇降荷台の前後左右方向の揺れを規制することができ、また、ガイドレールの平行度や真直度が多少出ていなくても、そのクリアランスを吸収して、昇降荷台の昇降動作を円滑にすることができる。
【0012】
前記昇降荷台の正面側と背面側には、それぞれ開閉扉ないし開閉アームを設けることにより、地上において昇降荷台の正面側から資材や部材を出し入れしたり、足場の上層で足場の床板に面した昇降荷台の背面側から資材や部材を出し入れするときに開閉扉ないし開閉アームを開けることができ、昇降時には開閉扉ないし開閉アームを閉じることにより資材や部材の落下を防止することができる。
【0013】
前記昇降荷台の上部に、昇降荷台の高さよりも長い部材の上部を支持する、水平方向の回転軸の回りに回転可能なローラを設け、このローラに長尺部材の上方を立て掛けておくことにより、昇降荷台の上部から長尺部材を収納したり取り出したりするときに長尺部材の突起物が昇降荷台のフレームに引っ掛かって取り出しにくくなることを防止し、ローラの回転によって突起物を通過させることにより容易に長尺部材を取り出すことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の足場作業用リフトによれば、足場用パイプによって枠組みが形成された足場と、足場の一部に垂直方向に開放された荷台昇降用空間と、荷台昇降用空間の両側の足場用パイプに固定されて垂直に設置された一対のガイドレールと、荷台昇降用空間に配置されるかご型の昇降荷台と、昇降荷台の両側部に設けられ、一対のガイドレールを走行するように回転するとともに、昇降荷台の水平方向の位置を規制するガイドローラと、荷台昇降用空間の最上部に設置され、昇降荷台の上部に固着されたチェーンを巻き上げるチェーンブロックと、昇降荷台が所定以上の速度で落下したときに作動して昇降荷台を停止させるリフト落下安全装置とを備えたことにより、ワイヤの乱巻きやそれによるキンクが発生せず、安全且つ円滑な昇降が可能な足場作業用リフトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る足場作業用リフトを設置した足場の一部を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る足場作業用リフトを設置した足場の上部の一部を示す正面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る昇降荷台の正面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る昇降荷台の側面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る昇降荷台の背面図である。
【図6】図3のX−X断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るガイドローラユニットの詳細を示すものであり、(a)は要部斜視図、(b)は要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1および図2に示すように、本発明の実施の形態に係る足場作業用リフトは、建築しようとする建築物Bまたは補修しようとする建築物Bの壁面に沿って組み立てられた足場Aの一部に垂直方向に開放された荷台昇降用空間Cに昇降可能に設置される。足場Aは、縦パイプ1と横パイプ2をクランプ3を用いて格子状に組み、これに踏み板4、手摺り、ブラケット、斜材、ジャッキ等を取り付けて構築する。
【0017】
足場Aの荷台昇降用空間Cの両側の対向する縦パイプ1には、一対のガイドレール5がレール固定金具6により垂直に固定されている。この一対のガイドレール5に、直方体かご型の昇降荷台10の両側に取り付けられたガイドローラユニット11が装着されて、昇降荷台10が垂直方向に昇降可能に構成されるとともに、昇降荷台10の前後左右の水平方向の位置を規制するようになっている。
【0018】
昇降荷台10の昇降駆動は、足場Aの荷台昇降用空間Cの最上部にリフト吊りブラケット12によって吊り下げられた電動チェーンブロック13(例えば、株式会社キトー製、ED240)によって行うようにしている。すなわち、電動チェーンブロック13によって昇降駆動されるチェーン14の下端のフック15が、昇降荷台10の上部枠101の中心付近に固着された吊り輪102に掛けられている。電動チェーンブロック13によって巻き上げられたチェーン14の他端は、チェーンバッグ16内に収納されて、下方に垂れ下がらないようになっている。
【0019】
さらにリフト吊りブラケット12には、リフト安全装置としての安全ブロック17(例えば、藤井電工株式会社製、JRG−30N)のワイヤ18の下端に取り付けられているフック19が、昇降荷台10の上部枠101の後部に固着された安全装置用吊り輪103に掛けられており、通常時は昇降荷台10の昇降に伴ってワイヤ18は安全ブロック17内に巻き取られたり、巻き出されたりするが、昇降荷台10が所定以上の速度で落下したときに作動してワイヤ18の巻き出しに制動がかかり、昇降荷台10を停止させるようになっている。
【0020】
昇降荷台10は、図3〜図6に示すように、四隅の支柱104と底板105と側板106を有しており、前面には下部扉107と上部扉108がそれぞれ蝶番109によって開閉自在に取り付けられている。下部扉107と上部扉108には、それぞれ閉じた状態で固定する扉止め110が設けられている。
【0021】
また、昇降荷台10の背面には、図5に示すように下部扉111が蝶番109によって開閉自在に取り付けられており、扉止め110が設けられている。下部扉111の上部には、2本の開閉レバー112が軸113を中心に回動自在に設けられており、水平状態で受け金具114により支柱104に止まるようになっている。
【0022】
上部枠101の上部には、軸受115によって表面がプラスチックのローラ116が回転自在に支持されており、昇降荷台10の高さよりも長い部材を搭載するときにその部材の上部がローラ116に立て掛けられるようにしている。そうすることで、部材に突起物が設けられていたとしても、その突起物がローラ116に引っ掛かってもローラ116が回転することで突起物がローラ116を容易に越えていくため、昇降荷台10の上方からの部材の出し入れが容易になる。このようなローラ116がないと、部材の突起物が上部枠101の枠材に引っ掛かって部材の出し入れに支障が生じ、作業性が悪くなる。
【0023】
上述のガイドローラユニット11の詳細を図7に示す。ガイドローラユニット11は上下のC形ローラ取り付け板117間に90度の角度間隔で溶接やボルト締め等により固着された固定板118のそれぞれにローラ119を取り付けることにより、ガイドレール5の4面に当接するローラ119を取り付けることができる。C形ローラ取り付け板117の基部は、昇降荷台10の側部に固定されたL字状断面の取付材120の2面にボルト締めや溶接で固定する。各ローラ119は、ガイドレール5の4面に対して若干のクリアランスをもたせて取り付けることにより、ガイドレール5が何本も継ぎ足して所定の高さに延ばされるときの真直度や昇降荷台10の取付材120との平行度が多少出ていなくても、その誤差を吸収して、円滑に昇降できるようにしている。
【0024】
以上の構成の足場作業用リフトの使用方法について説明する。
まず、足場Aの地上部に昇降荷台10を下ろした状態で上部扉108、下部扉107を開けて部材を搬入する。長尺部材は、上部枠101の上部のローラ116にもたれ掛けさせるようにして収納する。部材の搬入が終わると、上部扉108、下部扉107を閉じてリモコン(図示せず)を操作して電動チェーンブロック13を作動させ、チェーン14を巻き上げる。そうすると、昇降荷台10が上昇する。足場Aの所定位置に昇降荷台10が到達したときにリモコンの停止ボタンを押して昇降荷台10を停止させる。足場Aの踏み板4側に昇降荷台10の背面が位置するので、昇降荷台10の背面の下部扉111、開閉レバー112を開いて、部材を取り出す。ローラ116に立て掛けている長尺部材は、昇降荷台10の上方から取り出す。
【0025】
なお、作業が終了したときの部材の搬出は、上記と逆の手順で行い、地上において昇降荷台10から撤収する。
【0026】
電動チェーンブロック13は、長円状の輪が交互に90度向きを変えながら連結されたチェーン14をチェーンホイル(図示せず)により巻き上げ、巻き下げするものであり、ドラムにワイヤを巻き付ける方式のウインチのように乱巻きやキンクが生じない。そのため、ワイヤ同士の摩擦によるワイヤ撚り線の損耗、さらに、乱巻きによる昇降荷台10の瞬間的な急降下の発生をなくすことができ、安全性が高まる。
なお、万一の時にチェーン14が破損して昇降荷台10が落下したときは、安全ブロック17が働いて昇降荷台10を停止させるので、人身事故や対物事故を未然に防止できて安全である。
【0027】
このようにして、電動チェーンブロック13を用いて昇降荷台10の昇降を行うことにより、従来のワイヤ式の電動ウインチのようなワイヤの乱巻きやそれによるキンクが発生せず、安全且つ円滑な昇降が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、ワイヤの乱巻きやそれによるキンクが発生せず、安全且つ円滑な昇降が可能な足場作業用リフトとして、新築の建築物の工事現場、既存の建築物の補修の際の工事現場において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
A 足場
B 建築物
C 荷台昇降用空間
1 縦パイプ
2 横パイプ
3 クランプ
4 踏み板
5 ガイドレール
6 レール固定金具
10 昇降荷台
11 ガイドローラユニット
12 リフト吊りブラケット
13 電動チェーンブロック
14 チェーン
15 フック
16 チェーンバッグ
17 安全ブロック
18 ワイヤ
19 フック
101 上部枠
102 吊り輪
103 安全装置用吊り輪
104 支柱
105 底板
106 側板
107 下部扉
108 上部扉
109 蝶番
110 扉止め
111 下部扉
112開閉レバー112
113 軸
114 受け金具
115 軸受
116 ローラ
117 C形ローラ取り付け板
118 固定板
119 ローラ
120 取付材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足場用パイプによって枠組みが形成された足場と、
前記足場の一部に垂直方向に開放された荷台昇降用空間と、
前記荷台昇降用空間の両側の足場用パイプに固定されて垂直に設置された一対のガイドレールと、
前記荷台昇降用空間に配置されるかご型の昇降荷台と、
前記昇降荷台の両側部に設けられ、前記一対のガイドレールを走行するように回転するとともに、前記昇降荷台の水平方向の位置を規制するガイドローラと、
前記荷台昇降用空間の最上部に設置され、前記昇降荷台の上部に固着されたチェーンを巻き上げるチェーンブロックと、
前記昇降荷台が所定以上の速度で落下したときに作動して前記昇降荷台を停止させるリフト落下安全装置と
を備えた足場作業用リフト。
【請求項2】
前記ガイドレールは四角パイプであり、前記ガイドローラは前記四角パイプの4面に所定のクリアランスをもって当接する4つのローラからなる請求項1記載の足場作業用リフト。
【請求項3】
前記昇降荷台の正面側と背面側には、それぞれ開閉扉ないし開閉アームが設けられている請求項1または2に記載の足場作業用リフト。
【請求項4】
前記昇降荷台の上部には、当該昇降荷台の高さよりも長い部材の上部を支持する、水平方向の回転軸の回りに回転可能なローラが設けられている請求項1から3のいずれかの項に記載の足場作業用リフト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−281072(P2010−281072A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134197(P2009−134197)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【特許番号】特許第4397431号(P4397431)
【特許公報発行日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(509139520)株式会社アイル (1)
【出願人】(591131475)和新工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】