説明

足被覆具及びその製造方法

【課題】突起部による足の少なくとも一部分の押圧効果を、長期に亘って効果的に得ることができる足被覆具及びその製造方法を提供する。
【解決手段】足裏に密着する足裏生地12を備えた足被覆具本体11と、上記足裏生地12に備えた突起部13とで構成し、上記突起部13を、上記足裏生地12に突状に設置する突状物14と、該突状物14を上方から覆う当て布15とで形成し、上記当て布15を、当て布本体生地16と、該当て布本体生地16に備えた固着層とで形成し、上記当て布15における、上記突状物14に対して平面視外側へはみ出した外周縁部15aと上記足裏生地12とを、上記固着層により固着した足被覆具10であって、上記突状物14と上記当て布15とを、上記固着層により一体に固着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、靴下、サポータ、タイツ、ストッキング、スパッツなど、足裏をはじめとする足の少なくとも一部分に密着した状態で被覆する着用形態となる足被覆具に関し、詳しくは、足の少なくとも一部分に密着する足密着生地に設けた突起部により、様々な押圧効果を得ることができる足被覆具及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述したような足密着生地に突起部を備えた足被覆具の中でも、例えば、足裏生地に突起部を備えたものが多数提案されている。
【0003】
これは歩行の際に足裏が突起部により押圧され、疲労回復、健康増進、或いは、外反母趾、O脚、X脚の矯正といった効果が期待できるからである。
【0004】
例えば、特許文献1における「衝撃吸収靴下類」もその1つである。
特許文献1に係る「衝撃吸収靴下類」は、靴下類の靴下本体の内側における踵部等の荷重が加わる部所にクッション材を設けている。上記クッション材の上方から当て部材を重ね、この当て部材の周囲を靴下本体に縫着することにより取り付けている。
なお、クッション材は、弾性発泡材で形成し、当て部材は、靴下本体と同様に伸縮性を有する素材で形成している。
【0005】
さらに特許文献1には、上記衝撃吸収靴下類は、歩行時の衝撃緩和、或いは、X脚、O脚の矯正効果を得ることができる旨、謳われている。
【0006】
さらにまた、特許文献1には、当て部材の周囲の一部を縫着せずに開けておき、この開いた部分からクッション材を出し入れさせて交換し得ることも開示されている。
【0007】
しかし、クッション材は、靴下本体と当て部材との間に挿入されているだけであるので、これら靴下本体と当て部材との一体性に乏しいといわざるを得ない。
【0008】
詳しくは、「衝撃吸収靴下類」を着用時において、クッション材に足裏からの荷重が加わると、靴下本体と当て部材との間でクッション材のみが変形したりずれ動いたりするため、クッション材は、靴下本体や当て部材に対して擦れ易い。
【0009】
このため、長期に亘って使用し続けると、クッション材の厚みが磨耗により劣化し、例えば、クッション材の厚みが薄くなり所望の押圧効果を得ることができないといった難点を有する。
【0010】
また、特許文献1には、上述したように、クッション材を当て部材に対して出し入れさせて交換し得る構成が開示されている。係る構成の場合、クッション材を新しいものに交換することができるが、度々交換する必要があるため面倒であり、コストも嵩むといった難点を有し、根本的な課題の解決につながらないといえる。
【0011】
さらに、クッション材は、靴下本体と当て部材との間に挿入されているだけであり、これら靴下本体と当て部材との一体性に乏しいため、足裏の荷重をクッション材側へ加えたとき、クッション材のみが荷重に対して側方へ逃げるようにずれ動いたり、変形し、ダイレクトに荷重を受けることができないおそれがある。
【0012】
従って、足裏の十分な押圧効果を得ることができないばかりか歩行のし易さに支障を来たすという難点も有する。
【0013】
さらにまた、例えば、脹脛、或いは、踝など、足の足裏以外の部分を密着状態で被覆する足密着生地に突起部を設けた場合においても同様に、、クッション材と当て部材との一体性に乏しければ、突起部による十分な押圧効果を期待できないといわざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平03−279401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで本発明では、突起部による足の少なくとも一部分の押圧効果を、長期に亘って効果的に得ることができる足被覆具及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、足の少なくとも一部分に密着する足密着生地を備えた足被覆具本体と、上記足密着生地に備えた突起部とで構成し、上記突起部を、上記足密着生地に突状に接置する突状物と、該突状物を上方から覆う当て布とで形成し、上記当て布を、当て布本体生地と、該当て布本体生地に備えた固着層とで形成し、上記当て布における、上記突状物に対して平面視外側へはみ出した外周縁部と上記足密着生地とを、上記固着層により固着した足被覆具であって、上記突状物と上記当て布とを、上記固着層により一体に固着したことを特徴とする。
【0017】
当て布は、突状物を覆った状態でその外周縁部を足密着生地に固着するとともに、突状物自体に対しても一体に固着した構成であるため、突状物は、足密着生地と当て布との間で、これら生地に対しての一体性を保つことができる。
【0018】
よって、足の少なくとも一部分からの荷重が突起部に加わっても、突状物が足密着生地と当て布との間でこれら生地と一体に変形するため、突状物が当て布に対して擦れることがない。
【0019】
従って、長期に亘って使用しても、突状物が磨耗により平坦状にならず、突状を維持することができ、マッサージ効果など優れた押圧効果を持続することができる。
【0020】
さらに、突状物は、足密着生地と当て布との間で、これら生地に対しての一体性を保つことができるため、足の少なくとも一部分から加わる荷重をダイレクトに受け止めることができる。よって、単に、突状物を足密着生地に備えた構成や、突状物を当て布で覆ってその外周縁部のみを固着した構成と比較して、足の少なくとも一部分を突起部が押圧することによる、例えば、マッサージ効果などの押圧効果を効果的に得ることができ、その押圧効果を長期に亘って持続することができる。
【0021】
上記突状物は、所望の押圧効果に応じて適宜の弾性、剛性、大きさ、厚み、形状で足密着生地に備える箇所、個数を適宜、設定することができる。
【0022】
さらに、上記突状物は、例えば、発泡ウレタン、ゴムなどの部材で形成することができる。上記当て布は、編み物生地、織物生地、不織布などで形成することができる。上記突状物、上記当て布の双方とも、用途、押圧効果に応じて構成材料を適宜、設定することができる。
【0023】
上記足の少なくとも一部分には、例えば、脹脛(フクラハギ)部分、踝部分、踵部分、足裏部分を含むものとする。
【0024】
例えば、踵部分に備えた場合には、靴擦れ防止効果を得ることができる。
【0025】
この発明の態様として上記足密着生地は、足裏に密着する足裏生地であることが好ましい。
【0026】
足裏生地に突起部を備えることにより、歩行時に足裏に体重が加わることで突起による十分な押圧を得ることができるからである。そして、突状物と当て布とが優れた一体性を有するという上述した本発明の作用、効果をより顕著に発揮することができるからである。
【0027】
詳しくは、歩行の際に、足裏にかかる衝撃をしっかりと吸収し、疲れ難く、歩き易いよう歩行サポートしたり、外反母趾の矯正効果など、様々な足裏の押圧効果を、長期に亘って効果的に得ることができる。
【0028】
ここで、足裏の押圧効果とは、例えば、歩行サポート、疲労感の緩和、ツボを刺激することによるマッサージ効果、O脚、X脚の矯正といった効果であり、足裏を突起部により押圧することにより得られる効果であれば特に限定しない。
【0029】
なお、上記足密着生地を足裏生地として形成した場合、突起部は、足裏生地の例えば、土踏まず相当部分などの一部分、複数部分、或いは、全体に亘って形成することができる。
【0030】
この発明の態様として上記当て布を、非伸縮性に形成することができる。
【0031】
上記当て布を、非伸縮性に形成した場合、足裏など足の少なくとも一部分から突状物に荷重がかかっても、当て布が伸縮することなく、該当て布と一体に固着した突状物が荷重に対して側方へ逃げるように変形することを当て布により規制することができ、荷重をよりダイレクトに受け止めることができる。
【0032】
上記当て布を、非伸縮性に形成する場合には、例えば、上記当て布本体生地を、伸縮性生地で形成し、上記固着層を上記当て布本体生地の伸縮性を規制する伸縮規制部材で形成することができる。
【0033】
上記固着層は、上記当て布本体生地の伸縮性を規制する固着成分で形成しているため、固着層を当て布本体生地の一方の面側に形成することにより、伸縮性生地で形成した当て布本体生地が伸縮しないよう規制することができる。
【0034】
よって係る構成であっても、当て布によって、突状物が荷重に対して側方へ逃げるように変形することを規制することができ、足裏など足の少なくとも一部分からの荷重をダイレクトに受け止めることができる。
【0035】
またこの発明の態様として上記当て布本体生地を、綿繊維とポリエステル繊維とからなる伸縮性生地で形成することができる。
【0036】
当て布本体生地は、足被覆具着用時において足裏など足の少なくとも一部分が接触するが、綿繊維を備えることにより柔軟性に優れ、優れた肌触りで形成することができる。さらに、当て布本体生地には、ポリエステル繊維を備えることで、耐久性、耐摩耗性を向上させることができる。
【0037】
またこの発明の態様として上記当て布の外周縁部に切込み部を形成することができる。
【0038】
上記構成により、突状物を覆った状態の当て布は、その外周縁部を足密着生地に固着する際、該外周縁部に皺や弛みが残留せずに、見栄えよく、しっかりと足密着生地に固着することができる。
【0039】
当て布が非伸縮性である場合、該当て布の外周縁部には、特に、皺や弛みが残留し易くなるが、上記当て布の外周縁部に切込み部を形成することにより、当て布が非伸縮性であっても皺や弛みがない状態で、足密着生地に対して固着することができるため特に好ましい。
【0040】
またこの発明の態様として上記突状物をエラストマーで形成し、上記固着層をポリオレフィン系熱融着フィルムで形成することができる。
【0041】
上記エラストマーは、例えば、発泡樹脂と比較して耐磨耗性に優れるため、突状物をエラストマーで形成することにより、長期に亘って使用しても磨耗により平坦になることなく突状に保つことができる。
【0042】
ところが、突状物をエラストマーで形成する場合、一般に弾力性、耐候性、成形の際の流動性といった各種の特性を改善するためにオイルが添加されることが多いが、このオイルにより、当て布を突状物に対してしっかりと固着することを阻害されることがある。
【0043】
そこで、上記固着層をエラストマーに対しても優れた固着性能を発揮するポリオレフィン系熱融着フィルムで形成することにより、当て布がエラストマー製の突状物に対して剥離することなく、強固に固着することができる。
【0044】
また本発明は、突状物を足の少なくとも一部分に密着する足密着生地に突状に備え、上記当て布における固着層を形成した側の一方の面が上記突状物と重合するよう該突状物を上方から覆い、加熱押圧部材を、上記当て布の上記突状物に対して平面視外側へはみ出した外周縁部を含む略全体に上方から押し当て、上記当て布を上記固着層の溶融により上記突状物とともに上記足密着生地に対して一体に固着する足被覆具の製造方法であることを特徴とする。
【0045】
加熱押圧部材を、突状物を上方から覆った状態の当て布の上方から押し当てるという一工程により、上記突状物と上記当て布とを一体に固着することができる。
このため、当て布を突状物、及び、足密着生地に対して容易に、且つ、強固に一体化することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明では、突起部による足の少なくとも一部分の押圧効果を、長期に亘って効果的に得ることができる足被覆具及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施形態の靴下の外観図。
【図2】図1のA−A線断面の一部拡大図。
【図3】一部拡大して示した突起部周辺の平面図。
【図4】足裏部分における突起部の配置を示す説明図。
【図5】本実施形態の靴下の製造方法の説明図。
【図6】本実施形態の靴下の作用説明図。
【図7】足裏部分における突起部の他の配置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
この発明の一実施形態を、以下図面を用いて説明する。
(第一実施形態)
第一実施形態における靴下10は、図1から図4に示すように構成している。
なお、図1は、靴下10を一部破断して示した外観図であり、図2は、図1におけるA−A線矢視断面の一部拡大図であり、図3は、後述する突起部13の一部を拡大して示した突起部13付近の平面図であり、図4は、靴下10を着用した足裏の様子を一部省略して示した説明図である。また、図1では、靴下10の右片方のみを図示し、左片方は省略している。
【0049】
上記靴下10は、図1、及び、図4に示すように、靴下本体11の足裏部分の生地(以下、「足裏生地12」という。)の内面側(裏面側)であって、土踏まず相当位置に突起部13を設けている。
【0050】
上記突起部13は、スチレン系エラストマーで弾性を有して形成した突状物14と、該突状物14を上方から覆う当て布15とで構成し、当て布15と足裏生地12との間に上記突状物14を介在させた状態で当て布15を突状物14及び足裏生地12に対して一体に固着している。
【0051】
詳しくは、上記突状物14は、大まかに平面視略半楕円形状で形成し(図4参照)、長手方向が約83mm、短手方向が約45mm程度の大きさで成形している。上記突状物14は、図2に示すように、突状の断面形状で成形している。
なお、上記突状物14は、最大で約10mm程度の厚み(H)に形成している(図2中、H参照)。
【0052】
上記当て布15は、図3に示すように、上記突状物14を覆ったとき、該当て布15の外周縁部15a全体が該突状物14の全周に対して略同じはみ出し量(例えば、約10mm程度)となるよう上記突状物14よりも一回り大きな平面視略楕円形状で形成している。
【0053】
上記当て布15は、当て布本体生地16と、該当て布本体生地16の一方の面全体に形成した固着層17とで形成している。
【0054】
上記当て布本体生地16は、綿繊維から成る綿糸とポリエステル繊維からなるポリエステル糸とで編成した伸縮性を有した編物生地であり、詳しくは、全体に対して綿が約75%で配合し、ポリエステルが約25%の配合してなるシンカーパイル生地で形成している(図3中の一部拡大図参照)。
【0055】
これにより上記当て布本体生地16は、綿繊維による柔軟な肌触りとポリエステル繊維による耐久性を兼ね備えて形成している。
【0056】
さらに、当て布15の外周縁部15aには、該外周縁部15aを略4等分配する各部分に、中央に向けて5mm程度に切り欠いたスリット状の切込み部31を形成している(図3の一部拡大図参照)。
【0057】
当て布15は、上記当て布本体生地16の一方の面に対して固着フィルム32を添着することにより固着層17を形成している(図2参照)。固着フィルム32には、融点が約120℃〜130℃であるポリオレフィン系熱溶着フィルム32を用いている。
【0058】
当て布15は、伸縮性を有する当て布本体生地16の一方の面全体に、上述したように上記固着層17を形成することで、上記当て布本体生地16の伸縮性を規制し、本来、伸縮性に優れた布本体生地16が略伸縮しないよう形成している。
【0059】
上記突起部13は、上述したように、当て布本体生地16の外周部分15aを固着層17により足裏生地12に固着するとともに、当て布本体生地16と突状物14との重合部分33も固着層17により固着し、上記突状物14と上記当て布15とを一体に形成している(図2の一部拡大図参照)。
続いて、靴下本体11に突起部13を設けた上述した靴下10の製造方法について図5(a),(b)を用いて説明する。
なお、図5(a)は、突状物14を当て布15で覆う直前の状態を断面であらわした説明図であり、図5(b)は、当て布15を覆った状態の突状物14に対して上方から加熱ヘッド34で加圧する直前の様子を断面であらわした説明図である。
さらに、当て布15は、予め、当て布本体生地16の一方の面側に、固着フィルム32を添着した積層構造で形成しておき、該当て布15の外周縁部15aを略4等分配する各箇所に、切込み部31を形成しているものとして説明する。
【0060】
図5(a)に示すように、突状物14を靴下本体11の足裏生地12の踵相当部分に突状に設置する。当て布15における固着層17を形成した側の一方の面が上記突状物14と重合するよう上記当て布15により突状物14を上方から覆う(図5(a)中、仮想線で示した当て布15参照)。
なお、このとき、上記当て布15の外周縁部15aは、上記突状物14に対して平面視外側へはみ出した状態となる。
【0061】
図5(b)に示すように、上記当て布15の上記突状物14に対して平面視外側へはみ出した外周縁部15aを含む略全体に対して、加熱した加熱ヘッド34を上方から押し当てて加圧する。加熱ヘッド34は、固着フィルム32の120〜130℃程度の融点よりも高い約150℃程度に加熱している。
【0062】
加熱ヘッド34の加圧により、突状物14は弾性変形し、加熱ヘッド34の押圧面34aが突起部13全体に接触した状態で加圧することができるため(図示せず)、上記固着層17が溶融し、図2に示すように、上記当て布本体生地16を上記突状物14とともに上記足裏生地12に対して一体に固着することができる。
【0063】
なお、図5(b)中には、押圧面34aが平坦状である加熱ヘッド34の構成について図示したが、加熱ヘッド34の押圧面34aは、突起部13の突形状に対応するよう逃げ部を有した凹形状で構成するなど、特に、限定しない。
【0064】
上述した靴下10は、以下のような作用、効果を得ることができる。
上記靴下10は、突起部13を足裏生地12の特に土踏まず相当部分に備えることにより(図4参照)、歩行の際に、図6に示すように、足裏からの荷重を突起部13で受け止め、足裏にかかる衝撃を吸収することができる。よって、歩き易さが向上するよう歩行をサポートすることができる。
さらに、足裏の土踏まず部分は、突起部13により適度な押圧を受けるため、血行促進を図り、疲れ難いといった効果を得ることができる。
なお、図6は、靴下10を着用している様子を示す中央縦断面図である。
【0065】
また、靴下10の足裏生地12に突起部13を設けることにより、靴底や中敷に突起を設ける場合と比較して、足裏に対する密着性に優れるため、突起部13による足裏の押圧効果を効果的に得ることができる。さらに、屋内外を問わずに着用できるため、長時間に亘って押圧効果を得ることができる。
【0066】
さらに、突起部13は、上記当て布本体生地16を上記突状物14とともに上記足裏生地12に対して一体に固着した構成である。このため、足裏からの荷重が突起部13に加わり、突状物14が変形しようとしても、当て布15とともに突状物14が一体に変形し、該突状物14が当て布15に対して擦れることがない。
【0067】
従って、長期に亘って使用しても、突状物14が磨耗により劣化して平坦状にならず、突状を維持することができ、押圧効果を持続することができる。
【0068】
さらに、突状物14は、足裏生地12と当て布15との間で、当て布15に対して一体に固着されているため、足裏から荷重を受けたとき、当て布15は、突状物14が足裏からの荷重に対して側方へ逃げるように変形することを規制することができる。
【0069】
すなわち、突状物14は、足裏からの荷重に対して略真直ぐに収縮するよう弾性変形し、足裏からの荷重をダイレクトに受け止めることができる。
さらにまた、突状物14は、歩行時に、足裏生地12と当て布15との間で不測にずれ動くことがなく定位置に固定しておくことができる。
【0070】
従って、適切に歩行をサポートすることができ、靴下10の着用者は、長時間歩行しても疲れ難く、快適に歩行することができる。
【0071】
ところで、仮に、当て布15が伸縮性を有する場合、突状物14に足裏からの荷重がかかり、突状物14が荷重に対して逃げるように側方へ不測に変形した場合、当て布15は、突状物14と一体に固着しているため、この変形に伴って当て布15が伸縮し、足裏からの荷重をしっかりと受け止めることができないというおそれを有する。
【0072】
これに対して、本実施形態の当て布15は、伸縮性を有する上記当て布本体生地16の一方の面全体に、伸縮性のない固着フィルム32を添着し、該固着フィルム32が上記当て布本体生地16の伸縮性を規制するよう形成し、当て布15全体としては伸縮しないよう形成している。
【0073】
このように当て布15が、非伸縮性である場合、足裏からの荷重が突状物14にかかっても、突状物14と一体に形成した当て布15が伸縮しないため、該当て布15により突状物14が荷重に対して側方へ逃げるように変形することをしっかりと規制することができる。
【0074】
よって、当て布15と突状物14とを一体に固着した構成において、当て布15を非伸縮性に形成することで、足裏からの荷重を、より一層、ダイレクトに受け止めることができる。
従って、歩行時の衝撃を吸収し、靴下10の着用者は、長時間歩行しても疲れ難く、快適に歩行することができる。
【0075】
また、上記当て布本体生地16は、綿が75%であり、ポリエステルが25%の配合からなるシンカーパイル生地で形成している。
【0076】
当て布15は、固着層17により伸縮性が規制されるが、綿が75%で配合されているため、優れた肌触り、柔軟性を発揮することができる。さらに、ポリエステルが25%で配合されているため、足裏が接触しても磨耗することなく耐久性、耐摩耗性を確保することができる。
【0077】
ところで、図5(b)に示すように、突状物14を当て布15で覆い、その状態で当て布15の外周縁部15aを足裏生地12に固着する際、単純に、当て布15の外周縁部15aを足裏生地12に重合させた場合、当て布15の外周縁部15aには、皺や弛みが残留し、見栄えが悪く、足裏生地12に対してしっかりと固着することができないという難点が生じる。
【0078】
特に、当て布15が非伸縮性である場合、該当て布15の外周縁部15aに生じた皺や弛みを、当て布15自体を伸縮させることにより解消することができないため、より皺や弛みが残留し易くなる。
【0079】
これに対して、上述したように、当て布15は、該当て布15の外周縁部15aに切込み部31を形成している。
このため、切込み部31の隙間を適宜、広げた状態で当て布15の外周縁部15aを足裏生地12に固着することにより、皺や弛みが残留せずに、外周縁部15aを見栄えよく、しっかりと足裏生地12に固着することができる(図3参照)。
【0080】
また、突起部13は、上記突状物14をエラストマーで形成し、上記固着層17をポリオレフィン系熱融着フィルム32で形成している。
【0081】
上記エラストマーは、衝撃吸収性に優れているのに加え、例えば、発泡樹脂、発泡ウレタンと比較して耐磨耗性に優れるため、突状物14をエラストマーで形成することにより、長期に亘って使用しても磨耗により平坦状になることなく突状を維持することができるという効果を得ることができる。
【0082】
ところが、突状物14をエラストマーで形成する場合、突状物14は、エラストマーの弾力性、耐候性、成形の際の流動性といった各種の特性を改善するためにオイル成分(油分)を添加して形成されることが一般的であるが、このオイル成分により、突状物14に対して当て布15を固着することを阻害されるおそれがある。
【0083】
そこで、固着層17を形成するための固着フィルム32は、ポリオレフィン系熱融着フィルム32を用いている。ポリオレフィン系熱融着フィルム32は、上記オイル成分を添加したエラストマーに対しても優れた固着性能を発揮するため、当て布15が突状物14に対して剥離することなく、強固に固着することができる。
【0084】
また、靴下10の製造方法において、突状物14を覆った状態の当て布15の上方から加熱ヘッド34で加圧するという一工程により、上記突状物14と上記当て布15とを一体に固着することができる。
【0085】
このため、当て布15を突状物14、及び、足裏生地12に対して容易に、且つ、強固に一体化することができ、例えば、当て布15の外周縁部15aを縫着する場合のように手間を要しない。
【0086】
以下では、他の実施形態における靴下20について説明する。
但し、以下で説明する靴下20の構成のうち、上述した第一実施形態における靴下10と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0087】
(第二実施形態)
第二実施形態における靴下20は、図7(a)に示すように、突起部23を足裏生地12の中足骨相当部位に備えている。突状物24は、平面視すると楕円の長軸方向の一端側に対して他方の側が幅方向の外側へ膨出した平面視略水滴形状で形成している。
なお、図7(a)は、第二実施形態の靴下20を着用した状態の足裏の様子を足裏生地12などを一部省略して示した説明図である。
【0088】
突状物24は、長手方向が約48mm程度、短手方向が約34mm程度で形成し、最大の厚みは、上記突状物24と同様に約10mm程度で形成している。
【0089】
突状物24を覆う当て布25は、突状物24より一回り大きい大きさで形成している。
【0090】
上記構成により、特に、外反母趾の矯正という押圧効果を得ることができる。
詳しくは、歩行の際に、突状物24により足裏の母趾内転筋付近や中足骨付近(第2趾の付け根部分)が押圧されるため、図7(b)に示すように、足の先端部分の幅方向の中央部が外側に対して上方へと弓状に押し上げるストレッチ効果を得ることができるため、外反母趾の矯正に効果的である。さらに、ツボ押し効果、マッサージ効果などの他の押圧効果も得ることができる。
なお、図7(b)は、図7(a)のB−B線端面図である。
【0091】
このように、突起部23は、足裏の所望の部位を押圧するよう備えることができる。例えば、突起部23を、幅方向の外側(第5趾側)へ備えた場合、O脚の矯正効果を得ることができ、幅方向の内股側(第1趾側)へ備えた場合、X脚の矯正効果を得ることができる。
【0092】
突状物24の厚み、形状、大きさ、個数などは、適宜、用途、効果に応じて設定することができる。さらに例えば、突状物24は、エラストマーのみで形成するに限らず、ゲルマニウムや磁石など他の材料で形成する、或いは、これら成分をエラストマーに含有することができる。ゲルマニウムは、疲れをとり、新陳代謝を活発するという効能が謳われ、磁石は、血行がよくなるという効能が謳われている。
【0093】
上述した実施形態と、この発明の構成との対応において、
靴下10,20は、足被覆具に対応し、
靴下本体11は、足被覆具本体に対応し、
ポリオレフィン系熱溶着フィルム32は、当て布本体生地の伸縮性を規制する伸縮規制部材に対応し、
加熱ヘッド34は、加熱押圧部材に対応するものとする。
【0094】
また、本発明の足被覆具は、上述した形態に限定せず、その他にも、様々な構成で構成することができる。
例えば、突起部13,23と同様の構成は、上述したように靴下に設けるに限らず、例えば、サポータ、タイツ、ストッキング、スパッツなど、足に密着した状態で足裏を被覆する着用形態となる足被覆具であれば、これら靴下以外の足被覆具に適用してもよい。
【0095】
さらに、突起部13,23は、足裏生地12に設けるに限らず、足密着生地における足裏生地12以外の部分に設けてもよく、例えば、脹脛(フクラハギ)部分、踝部分、踵部分、膝部分、足の甲部分、足指部分、足指の付け根部分を押圧可能に構成することができる。
【符号の説明】
【0096】
10,20…靴下
11…靴下本体
13,23…突起部
12…足裏生地
14,24…突状物
15,25…当て布
15a…外周縁部
16…当て布本体生地
17…固着層
31…切込み部
33…重合部分
34…加熱ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足の少なくとも一部分に密着する足密着生地を備えた足被覆具本体と、上記足密着生地に備えた突起部とで構成し、
上記突起部を、上記足密着生地に突状に接置する突状物と、
該突状物を上方から覆う当て布とで形成し、
上記当て布を、当て布本体生地と、該当て布本体生地に備えた固着層とで形成し、
上記当て布における、上記突状物に対して平面視外側へはみ出した外周縁部と上記足密着生地とを、上記固着層により固着した足被覆具であって、
上記突状物と上記当て布とを、上記固着層により一体に固着した
足被覆具。
【請求項2】
上記足密着生地は、足裏に密着する足裏生地である
請求項1に記載の足被覆具。
【請求項3】
上記当て布を、非伸縮性に形成した
請求項1、又は、2に記載の足被覆具。
【請求項4】
上記当て布本体生地を、伸縮性生地で形成し、
上記固着層を上記当て布本体生地の伸縮性を規制する伸縮規制部材で形成した
請求項3に記載の足被覆具。
【請求項5】
上記当て布本体生地を、綿繊維とポリエステル繊維とからなる伸縮性生地で形成した
請求項1から4のいずれかに記載の足被覆具。
【請求項6】
上記当て布の外周縁部に切込み部を形成した
請求項1から5のいずれかに記載の足被覆具。
【請求項7】
上記突状物をエラストマーで形成し、上記固着層をポリオレフィン系熱融着フィルムで形成した
請求項1から6のいずれかに記載の足被覆具。
【請求項8】
突状物を足の少なくとも一部分に密着する足密着生地に突状に備え、
上記当て布における固着層を形成した側の一方の面が上記突状物と重合するよう該突状物を上方から覆い、
加熱押圧部材を、上記当て布の上記突状物に対して平面視外側へはみ出した外周縁部を含む略全体に上方から押し当て、上記当て布を上記固着層の溶融により上記突状物とともに上記足密着生地に対して一体に固着する
足被覆具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−196215(P2010−196215A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44967(P2009−44967)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(503203638)トップマン工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】