距離継電装置
【課題】 電力系統の周波数が変動している場合でも、事故点までのインピーダンスを十分な精度で算出することができ、サンプリング位相によらずにインピーダンスの算出が行える距離継電装置を提供すること
【解決手段】 電力系統の電圧,電流の瞬時値をメモリ部1へ記憶し、抽出部2は所定時期についてデータ抽出を行う。複数の演算部3,4,5により瞬時値データについて所定の演算を行い、判定部6は最終的な演算結果が所定しきい値の範囲内にあった場合に保護動作信号を出力する。抽出は基準時点の瞬時値データ、定格周波数の電気角で90°前の時点における瞬時値データ、定格周波数の電気角で180°前の時点における瞬時値データとを抽出し、演算部では複数の演算部により瞬時値データから異なる2つの実効値演算結果の差分を算出して電力系統の周波数変動を補正する演算を行う。
【解決手段】 電力系統の電圧,電流の瞬時値をメモリ部1へ記憶し、抽出部2は所定時期についてデータ抽出を行う。複数の演算部3,4,5により瞬時値データについて所定の演算を行い、判定部6は最終的な演算結果が所定しきい値の範囲内にあった場合に保護動作信号を出力する。抽出は基準時点の瞬時値データ、定格周波数の電気角で90°前の時点における瞬時値データ、定格周波数の電気角で180°前の時点における瞬時値データとを抽出し、演算部では複数の演算部により瞬時値データから異なる2つの実効値演算結果の差分を算出して電力系統の周波数変動を補正する演算を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統の電圧および電流から事故点までのインピーダンスを求めて故障の判別を行う距離継電装置に関するもので、より具体的には、所定周期のサンプリングにより得られる電力系統の瞬時値データを使用してインピーダンスの算出を行う演算方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
距離継電装置は、電力系統の電圧および電流から事故点までのインピーダンスを求めて保護範囲内の事故か否かを判定し、保護範囲内の事故の場合に遮断器のトリップ信号を出力する構成になっている。
【0003】
図1は、距離継電装置による事故検出の原理を説明する構成図である。距離継電装置99は、電力系統のある点へ接続し、当該点において電圧vおよび電流iを測定し、取り込みを行う。そして、その取り込み点から事故点FまでのインピーダンスZを求め、予め設定してあるインピーダンスの所定しきい値と比較して、保護範囲内の事故かどうかを判定し、保護範囲内であれば保護動作信号を出力する。
【0004】
事故点FまでのインピーダンスZは、抵抗成分Rとリアクタンス成分Xからなる複素数として表すことができ、距離継電装置99ではそれらの値を求めることになる。インピーダンスZの算出のための演算方法としては、電力系統の電圧および電流の基本波ベクトルを用いたベクトル計算による方法がよく知られている。まず、距離継電装置99において取り込む点の電圧v(t),電流i(t)は、
v(t)=Vsin(ωt+θ) …(1)
i(t)=Isinωt …(2)
となり、それぞれ時刻tにおける瞬時値を示している。ここで、Vは電圧の振幅値、Iは電流の振幅値、ωは電圧および電流の角周波数、θは電流に対する電圧の進み位相である。角周波数ωは電力系統の基本周波数fbに関してω=2πfbという関係になる。
【0005】
電圧,電流が式(1),(2)で示す関係にあるとき、インピーダンスZは抵抗成分Rおよびリアクタンス成分Xに関して、
R=Vcosθ/I=VIcosθ/I2 …(3)
X=Vsinθ/I=VIsinθ/I2 …(4)
Z=R+jX …(5)
となり、jは虚数単位である。
【0006】
したがって、電圧v(t),電流i(t)の瞬時値のから、I2,VIcosθ,VIsinθを求めれば、式(3),(4),(5)により抵抗成分R,リアクタンス成分X,インピーダンスZを算出することができる。
【0007】
上記式に示すインピーダンスZの算出には、所定周期のサンプリングにより得られる電力系統の瞬時値データを使用して演算を行う演算方法を適用している。まず、電力系統の定格周波数の12倍のサンプリング周波数により電圧,電流の瞬時値をサンプリングして記憶する。記憶した電圧,電流の瞬時値をvk,ikとすると、
vk=Vsin(ωkT+θ) …(6)
ik=Isin(ωkT) …(7)
と表すことができ、Tはサンプリング周期、kは1,2,3,… という値をとる。
【0008】
電力系統の定格周波数が50Hzの場合、12倍のサンプリング周波数fsは600Hz、周期T=1/600となる。現時点におけるサンプリング位置をmとすると、記憶した瞬時値のうちk=m―0とk=m−3の瞬時値は、
vm−0=Vsin{ω(m−0)T+θ} …(8)
im−0=Isin{ω(m−0)T} …(9)
vm−3=Vsin{ω(m−3)T+θ} …(10)
im−3=Isin{ω(m−3)T} …(11)
となっているので、これを用いれば、
I2=im−02+im−32 …(12)
VIcosθ=vm−0・im−0+vm−3・im−3 …(13)
VIsinθ=vm−3・im−0−vm−0・im−3 …(14)
という演算によりI2,VIcosθ,VIsinθが求まる。
【0009】
なお、式(12),(13),(14)において右辺が左辺となる証明は以下に示す数1の通りである。
【数1】
【0010】
したがって、式(12),(13),(14)を式(3),(4)へ代入することにより、抵抗成分R,リアクタンス成分Xは、
R=(vm−0・im−0+vm−3・im−3)/(im−02+im−32) …(15)
X=(vm−3・im−0−vm-0・im-3)/(im-02+im−32) …(16)
というように求めることができる。
【0011】
なお、サンプリング周波数fsは、電力系統の定格周波数の12倍とする設定がよく用いられている。例えば特許文献1などに見られるように、そうした設定においても高性能を得るための技術の提案がある。
【特許文献1】特開平8−126190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、そうした従来の演算方法では以下に示すような問題がある。電力系統の周波数が変動した場合は、サンプリング周波数と電力系統の電気量との間に成立していた周期性の関係が成り立たなくなる。このため、算出インピーダンスには演算誤差が含まれてしまう。また、サンプリング開始位置に影響を受けることから、算出インピーダンスは演算処理毎に演算結果が変動してしまう。したがって、距離継電装置が演算誤差に起因した誤動作を起こす問題がある。
【0013】
電力系統周波数fの変動(周波数変動率α)は基本周波数fbに関して、
α=(f−fb)/fb …(17)
と定義し、例えば基本周波数fbが50Hzであるとき、電力系統周波数fが60Hzとなったのであれば周波数変動率αは0.2となる。
【0014】
そして、電圧,電流の瞬時値は、周波数変動率αを考慮するので、
vm−0=Vsin{ω(1+α)(m−0)T+θ} …(18)
im−0=Isin{ω(1+α)(m−0)T} …(19)
vm−3=Vsin{ω(1+α)(m−3)T+θ} …(20)
im−3=Isin{ω(1+α)(m−3)T} …(21)
となる。これらの式(18)〜(21)は式(12),(13),(14)の右辺へ代入し、数2に示す式(22),(23),(24)となる。そして、これらの式(22),(23),(24)は式(15),(16)へ代入することにより、抵抗成分R,リアクタンス成分Xは、数2に示す式(25),(26)となる。
【数2】
【0015】
式(25),(26)は周波数変動率αを含んでおり、式(3),(4)と明らかに相違している。すなわち、周波数が変動すると抵抗成分R,リアクタンス成分Xを正しく求めることができなく、誤差が生じることになる。
【0016】
特性図を例示すると、図2は式(25)に係る周波数特性であり、周波数変動率αに対する抵抗成分Rの誤差率(最大値)を示している。そして、図3は式(26)に係る周波数特性であり、周波数変動率αに対するリアクタンス成分Xの誤差率(最大値)を示している。図2,図3において、実線(a)はサンプリング開始位置を0°とした場合の特性であり、点線(b)はサンプリング開始位置を60°とした場合の特性である。
【0017】
図2,図3から明らかなように、従来の演算方法では、電力系統の周波数が変動している場合は、事故点までのインピーダンスを正しく求めることができない問題がある。また、インピーダンスの演算結果はサンプリング開始位置(サンプリング位相)に応じて変動してしまい、演算結果が定まらないといった問題が起きる。
【0018】
この発明は上記した課題を解決するもので、その目的は、電力系統の周波数が変動している場合でも、事故点までのインピーダンスを十分な精度で算出することができ、サンプリング位相によらずにインピーダンスの算出が行える距離継電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記した目的を達成するために、本発明に係る距離継電装置は、電力系統の電圧,電流の瞬時値を記憶するメモリ部と、メモリ部から所定時期についてデータ抽出を行う抽出部と、抽出部が抽出した瞬時値データについて所定の演算を行う複数の演算部と、演算部から最終的に出力する演算結果が所定しきい値の範囲内にあった場合に保護動作信号を出力する判定部とを備えて、抽出部での抽出はある時点を基準時点とし、当該基準時点の電圧瞬時値v0と電流瞬時値i0、基準時点から電力系統の定格周波数の電気角で90°前の時点における電圧瞬時値v3と電流瞬時値i3、基準時点から電力系統の定格周波数の電気角で180°前の時点における電圧瞬時値v6と電流瞬時値i6とを抽出し、演算部では複数の演算部により瞬時値データから異なる2つの実効値演算結果の差分を算出して電力系統の周波数変動を補正する演算を行う構成にする(請求項1)。
【0020】
また、演算部として演算部A,演算部B,抵抗演算部を備え、演算部Aでの演算は、電圧瞬時値v3と電流瞬時値i3とを乗算して計算値1とし、電圧瞬時値v6と電流瞬時値i0とを乗算して計算値2とし、電圧瞬時値v0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値3とし、計算値2と計算値3との加算平均値を求め、計算値1から前記加算平均値を減算する演算とし、演算部Bでの演算は、電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、電流瞬時値i0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、計算値4から計算値5減算する演算とし、抵抗演算部での演算は、演算部Aの演算結果を演算部Bの演算結果で除算して抵抗成分とする演算を行う構成にする(請求項2)。
【0021】
また、演算部として演算部C,演算部B,リアクタンス演算部を備え、演算部Cでの演算は、電圧瞬時値v3と電流瞬時値i0とを乗算して計算値6とし、電圧瞬時値v0と電流瞬時値i3とを乗算して計算値7とし、計算値6から計算値7を減算する演算とし、演算部Bでの演算は、電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、電流瞬時値i0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、計算値4から計算値5減算する演算とし、リアクタンス演算部での演算は、演算部Cの演算結果を演算部Bの演算結果で除算してリアクタンス成分とする演算を行う構成にする(請求項3)。
【0022】
また、演算部として演算部C,演算部B,演算部D,リアクタンス演算部を備え、演算部Cでの演算は、電圧瞬時値v3と電流瞬時値i0とを乗算して計算値6とし、電圧瞬時値v0と電流瞬時値i3とを乗算して計算値7とし、計算値6から計算値7を減算する演算とし、演算部Bでの演算は、電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、電流瞬時値i0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、計算値4から計算値5減算する演算とし、演算部Dでの演算は、電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、電流瞬時値i0と電流瞬時値i6との加算平均値を2乗して計算値8とし、計算値4から計算値8を減算して平方根を求め、当該平方根を電流瞬時値i3で除算する演算とし、リアクタンス演算部での演算は、演算部Cの演算結果を演算部Bの演算結果で除算し、当該除算結果に演算部Dの演算結果を乗算してリアクタンス成分とする演算を行う構成にする(請求項4)。
【0023】
また、演算部として演算部A,演算部C,演算部B,抵抗演算部,リアクタンス演算部,インピーダンス演算部を備え、演算部Aでの演算は、電圧瞬時値v3と電流瞬時値i3とを乗算して計算値1とし、電圧瞬時値v6と電流瞬時値i0とを乗算して計算値2とし、電圧瞬時値v0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値3とし、計算値2と計算値3との加算平均値を求め、計算値1から加算平均値を減算する演算とし、演算部Cでの演算は、電圧瞬時値v3と電流瞬時値i0とを乗算して計算値6とし、電圧瞬時値v0と電流瞬時値i3とを乗算して計算値7とし、計算値6から計算値7を減算する演算とし、演算部Bでの演算は、電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、電流瞬時値i0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、計算値4から計算値5減算する演算とし、抵抗演算部での演算は、演算部Aの演算結果を演算部Bの演算結果で除算して抵抗成分とする演算を行い、リアクタンス演算部での演算は、演算部Cの演算結果を演算部Bの演算結果で除算してリアクタンス成分とする演算を行い、インピーダンス演算部での演算は、抵抗演算部の演算結果とリアクタンス演算部の演算結果とを合成してインピーダンスとする演算を行う構成にする(請求項5)。
【0024】
また、演算部として演算部A,演算部C,演算部B,演算部D,抵抗演算部,リアクタンス演算部,インピーダンス演算部を備え、演算部Aでの演算は、電圧瞬時値v3と電流瞬時値i3とを乗算して計算値1とし、電圧瞬時値v6と電流瞬時値i0とを乗算して計算値2とし、電圧瞬時値v0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値3とし、計算値2と計算値3との加算平均値を求め、計算値1から加算平均値を減算する演算とし、演算部Cでの演算は、電圧瞬時値v3と電流瞬時値i0とを乗算して計算値6とし、電圧瞬時値v0と電流瞬時値i3とを乗算して計算値7とし、計算値6から計算値7を減算する演算とし、演算部Bでの演算は、電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、電流瞬時値i0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、計算値4から計算値5減算する演算とし、演算部Dでの演算は、電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、電流瞬時値i0と電流瞬時値i6との加算平均値を2乗して計算値8とし、計算値4から計算値8を減算して平方根を求め、当該平方根を電流瞬時値i3で除算する演算とし、抵抗演算部での演算は、演算部Aの演算結果を演算部Bの演算結果で除算して抵抗成分とする演算を行い、リアクタンス演算部での演算は、演算部Cの演算結果を演算部Bの演算結果で除算し、当該除算結果に演算部Dの演算結果を乗算してリアクタンス成分とする演算を行い、インピーダンス演算部での演算は、抵抗演算部の演算結果とリアクタンス演算部の演算結果とを合成してインピーダンスとする演算を行う構成にする(請求項6)。
【0025】
係る構成にすることにより本発明では、複数の演算部により瞬時値データから異なる2つの実効値演算結果の差分を算出して電力系統の周波数変動を補正する演算を行うので、周波数変動の影響を除外することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る距離継電装置では、複数の演算部により瞬時値データから異なる2つの実効値演算結果の差分を算出して電力系統の周波数変動を補正する演算を行うので、周波数変動の影響を除外することができる。したがって、電力系統の周波数が変動している場合でも、事故点までのインピーダンスを十分な精度で算出することができる。そして、サンプリング位相によらずにインピーダンスの算出が行える。その結果、演算誤差に起因した誤動作を回避することができる。
【0027】
また、サンプリング位相によらずにインピーダンスの算出が行えるため、従来の一般的なサンプリング周期であっても、高精度の演算結果を得ることができる。したがって、装置構成の各部をむやみと高性能のものにする必要がなく、装置構成を簡素にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(第1の実施の形態)
図4は本発明の第1の実施の形態を示している。本実施形態において、距離継電装置は、メモリ部1,抽出部2,演算部A3,演算部B4,抵抗演算部5,判定部6を備え、電力系統の電圧v,電流iをメモリ部1へ取り込み、そのメモリ部1から瞬時値データを抽出部2へ送り込んで各演算部3,4,5において抽出データの演算を行い、それらの演算結果から判定部6において事故点の判定を行う構成になっている。
【0029】
メモリ部1には、電力系統の電圧v,電流iの瞬時値を記憶し、抽出部2ではメモリ部1が取り込んだ瞬時値データから特定データを抽出するようになっている。ここでの抽出は、ある時点を基準時点とし、その基準時点の電圧瞬時値v0と電流瞬時値i0、基準時点から電力系統の定格周波数の電気角で90°前の時点における電圧瞬時値v3と電流瞬時値i3、基準時点から電力系統の定格周波数の電気角で180°前の時点における電圧瞬時値v6と電流瞬時値i6とを抽出する。
【0030】
抽出した瞬時値は、抽出部2から演算部A3,演算部B4へ送り、それぞれ演算を行う。演算部A3では、電圧瞬時値v3と電流瞬時値i3とを乗算して計算値1とし、電圧瞬時値v6と電流瞬時値i0とを乗算して計算値2とし、電圧瞬時値v0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値3とし、計算値2と計算値3との加算平均値を求め、計算値1から加算平均値を減算する演算を行う。演算部B4では、電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、電流瞬時値i0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、計算値4から計算値5を減算する演算を行う。
【0031】
抵抗演算部5では、演算部A3の演算結果を演算部B4の演算結果で除算して抵抗成分Rとする演算を行う。そして、判定部6では、抵抗演算部5から取り込んだ演算結果(抵抗成分R)が、所定しきい値の範囲内にあった場合に保護動作信号を出力する。
【0032】
次に原理を説明する。まず条件として、電力系統の定格周波数が50Hzの場合、12倍のサンプリング周波数fsは600Hz、周期T=1/600となる。サンプリング間隔は、定格周波数が50Hzでは電気角30°となる。
【0033】
メモリ部1は、電圧,電流の瞬時値をサンプリング周期Tでサンプルして記憶する。その電圧vk,電流ikは式で表すと、
vk=Vsin(ωkT+θ) …(6)
ik=Isin(ωkT) …(7)
となり、kは1,2,3,… という値をとる。
【0034】
抽出部2は記憶した瞬時値のうちk=m―0とk=m−3およびk=m−6の瞬時値、すなわち、
vm−0=Vsin{ω(m−0)T+θ} …(27)
im−0=Isin{ω(m−0)T} …(28)
vm−3=Vsin{ω(m−3)T+θ} …(29)
im−3=Isin{ω(m−3)T} …(30)
vm−6=Vsin{ω(m−6)T+θ} …(31)
im−6=Isin{ω(m−6)T} …(32)
を抽出する。
【0035】
抽出した瞬時値を電気角で表す。電力系統周波数が50Hzの場合、ある時点を基準時点をk=m−0とすれば、k=m−0が基準時点の瞬時値、k=m−3は基準時点から90°前の瞬時値、k=m−6は基準時点から180°前の瞬時値となる。
【0036】
ω(m−3)T−ω(m−0)T=−3ωT
=−3×2π×50×(1/600)
=−π/2
ω(m−6)T−ω(m−0)T=−6ωT
=−6×2π×50×(1/600)
=−π
【0037】
演算部A3は、抽出部2からのvm−0,vm−3,vm−6,im−0,im−3,im−6の瞬時値を用いて、
計算値1=vm−3・im−3
計算値2=vm−6・im−0
計算値3=vm−0・im−6
を求める。そしてこれらより、
vm−3・im−3−{(vm−6・im−0+vm−0・im−6)/2}
を求める。したがって、演算部A3の出力yAは、
yA=vm−3・im−3−{(vm−6・im−0+vm−0・im−6)/2} …(33)
となる。
【0038】
演算部B4は、抽出部2からのim−0,im−3,im−6の瞬時値を用いて、
im−32−im−0・im−6
を求める。したがって、演算部B4の出力yBは、
yB=im−32−im−0・im−6 …(34)
となる。
【0039】
抵抗演算部5は、上記演算部A3と演算部B4の演算結果を用い、
R=yA/yB
=[vm−3・im−3−{(vm−6・im−0+vm−0・im−6)/2}]
/(im−32−im−0・im−6)
…(35)
の演算を行う。
【0040】
電力系統には周波数の変動があるので、ωは、式(17)に示す周波数変動率αを考慮してω(1+α)と表すことができ、式(27)〜(32)は以下のようになる。
【0041】
vm−0=Vsin{ω(1+α)(m−0)T+θ} …(27a)
im−0=Isin{ω(1+α)(m−0)T} …(28a)
vm−3=Vsin{ω(1+α)(m−3)T+θ} …(29a)
im−3=Isin{ω(1+α)(m−3)T} …(30a)
vm−6=Vsin{ω(1+α)(m−6)T+θ} …(31a)
im−6=Isin{ω(1+α)(m−6)T} …(32a)
したがってyA、yBは、
yA=vm−3・im−3−{(vm−6・im−0+vm−0・im−6)/2}
=VIcosθ[1−cos2{3ω(1+α)T}]
…(36)
yB=im−32−im−0・im−6
=I2[1−cos2{3ω(1+α)T}]
…(37)
となり、抵抗演算部5では以下のように抵抗成分Rが求まる。
【0042】
R=yA/yB
=[vm−3・im−3−{(vm−6・im−0+vm−0・im−6)/2}]
/(im−32−im−0・im−6)
=VIcosθ[1−cos2{3ω(1+α)T}]
/(I2[1−cos2{3ω(1+α)T}])
=VIcosθ/I2
…(38)
【0043】
特性図を例示すると、式(38)は図5に示す周波数特性となる。同図は、横軸が周波数変動率α、縦軸が抵抗成分Rの誤差率(最大値)であって、実線(a)はサンプリング開始位置を0°とした場合の特性であり、点線(b)はサンプリング開始位置を60°とした場合の特性であるが、両者は一致していて図中には実線のみとなっている。
【0044】
また、図6はインピーダンス平面における動作領域を説明するグラフ図であり、同図に示す抵抗値RSの右側領域は、保護動作を起動すべき動作領域(所定しきい値)になっている。判定部6の動作では、予め設定しておいた所定しきい値RSとの比較を行い、抵抗演算部5で算出した抵抗成分Rが、所定しきい値RSの範囲内(動作領域)となった場合に保護動作信号を出力することになる。
【0045】
以上のように、抵抗成分Rの演算式には、周波数変動率αおよびサンプリング開始位置mを含まなく、それらを排除した演算結果を得ることができる。したがって、電力系統周波数が基本周波数から変動している場合でも、その影響を受けずに高精度に事故点Fまでの抵抗成分Rを演算することができる。そして、抵抗成分Rの演算結果は、サンプリング位相によらない演算結果となっている。
【0046】
すなわち本発明にあっては、複数の演算部により瞬時値データから異なる2つの実効値演算結果の差分を算出して電力系統の周波数変動率αを補正する演算を行うので、周波数変動の影響を除外することができる。したがって、電力系統の周波数が変動している場合でも、事故点Fまでのインピーダンスを十分な精度で算出することができる。そして、サンプリング位相によらずにインピーダンスの算出が行える。その結果、演算誤差に起因した誤動作を回避することができる。
【0047】
(第2の実施の形態)
図7は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施形態において、距離継電装置は、メモリ部1,抽出部2,演算部C7,演算部B4,リアクタンス演算部8,判定部6を備え、電力系統の電圧v,電流iをメモリ部1へ取り込み、そのメモリ部1から瞬時値データを抽出部2へ送り込んで各演算部7,4,8において抽出データの演算を行い、それらの演算結果から判定部6において事故点の判定を行う構成になっている。なお、第1の実施の形態と同様な構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0048】
演算部C7では、電圧瞬時値v3と電流瞬時値i0とを乗算して計算値6とし、電圧瞬時値v0と電流瞬時値i3とを乗算して計算値7とし、計算値6から計算値7を減算する演算を行う。
【0049】
リアクタンス演算部8では、演算部C7の演算結果を演算部B4の演算結果で除算してリアクタンス成分Xとする演算を行う。そして、判定部6では、リアクタンス演算部8から取り込んだ演算結果(リアクタンス成分X)が、所定しきい値の範囲内にあった場合に保護動作信号を出力する。
【0050】
次に原理を説明する。サンプリングの条件等は第1実施形態と同様である。
【0051】
演算部C7は、抽出部2から送られた瞬時値データ、つまりvm−0,vm−3,im−0,im−3を用いて、
vm−3・im−0−vm−0・im−3
を求める。このため、演算部C7の出力yCは、
yC=vm−3・im−0−vm−0・im−3 …(39)
となる。
【0052】
リアクタンス演算部8は、演算部C7の演算結果と演算部B4の演算結果とを用い、つまり式(39)と式(34)を用い、
X=yC/yB
=(vm−3・im−0−vm−0・im−3yB)/im−32−im−0・im−6) …(40)
の演算を行う。
【0053】
ここで第1実施形態と同様に、電力系統の周波数変動率αを考慮してωをω(1+α)と表すこととし、式(27a)〜(30a)を式(39)へ代入すると、
yC=vm−3・im−0−vm−0・im−3
=VIsinθsin{3ω(1+α)T} …(39)
となり、この式(39)の演算を演算部C7が行う。
【0054】
リアクタンス演算部8は、上記の式(39)によるyCを、前述した式(37)によるyBで除算してリアクタンス成分Xとする演算を行うので、以下に示すように求まる。
【0055】
X=yC/yB
=(vm−3・im−0−vm−0・im−3)/(im−32−im−0・im−6)
=VIsinθsin{3ω(1+α)T}
/(I2[1−cos2{3ω(1+α)T}])
=(VIsinθ/I2)・1/sin{3ω(1+α)T} …(41)
【0056】
特性図を例示すると、式(41)は図8に示す周波数特性となる。同図は、横軸が周波数変動率α、縦軸がリアクタンス成分Xの誤差率(最大値)であって、実線(a)はサンプリング開始位置を0°とした場合の特性であり、点線(b)はサンプリング開始位置を60°とした場合の特性であるが、両者は一致していて図中には実線のみとなっている。
【0057】
図8から明らかなように、リアクタンス成分Xとしては、周波数変動率に応じた一定の誤差を含んでおり、周波数変動率が±10%の範囲において1.5%以下程度の算出誤差となる。この誤差は、従来の約15%程度の誤差が1/10となり、精度が大幅に向上したことになる。そして、サンプリング位相によらない演算結果となる。
【0058】
なお、式(41)において、電力系統の周波数が定格周波数ではα=0なので、リアクタンス成分Xは、
X=(VIsinθ/I2)・1/sin{3ω(1+α)T}
=(VIsinθ/I2)・1/sin{3×2π×50/600}
=VIsinθ/I2
…(42)
となり、図8に示す特性も明らかに誤差はない。
【0059】
また、図9はインピーダンス平面における動作領域を説明するグラフ図であり、同図に示すリアクタンス値XSの上側領域は、保護動作を起動すべき動作領域(所定しきい値)になっている。判定部6の動作では、予め設定しておいた所定しきい値XSとの比較を行い、リアクタンス演算部8で算出したリアクタンス成分Xが、所定しきい値XSの範囲内(動作領域)となった場合に保護動作信号を出力することになる。
【0060】
以上のように、リアクタンス成分Xの演算式には、周波数変動率に応じた一定の誤差を含むものの、周波数変動率が±10%の範囲で発生した場合は、検出誤差は約1.3%以下に抑えることができ、従来に比べて格段に高精度と言える。
【0061】
すなわち本発明にあっては、電力系統の周波数が変動している場合でも、事故点Fまでのインピーダンスを十分な精度で算出することができる。そして、サンプリング位相によらずにインピーダンスの算出が行える。その結果、演算誤差に起因した誤動作を回避することができる。
【0062】
(第3の実施の形態)
図10は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施形態において、距離継電装置は、メモリ部1,抽出部2,演算部C7,演算部B4,演算部D9,リアクタンス演算部8,判定部6を備え、電力系統の電圧v,電流iをメモリ部1へ取り込み、そのメモリ部1から瞬時値データを抽出部2へ送り込んで各演算部7,4,9,8において抽出データの演算を行い、それらの演算結果から判定部6において事故点の判定を行う構成になっている。なお、第1,2の実施の形態と同様な構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0063】
演算部D9では、電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、電流瞬時値i0と電流瞬時値i6との加算平均値を2乗して計算値8とし、計算値4から計算値8を減算して平方根を求め、当該平方根を電流瞬時値i3で除算する演算を行う。
【0064】
リアクタンス演算部8では、演算部C7の演算結果を演算部B4の演算結果で除算し、当該除算結果に演算部D9の演算結果を乗算してリアクタンス成分Xとする演算を行う。そして、判定部6では、リアクタンス演算部8から取り込んだ演算結果(リアクタンス成分X)が、所定しきい値の範囲内にあった場合に保護動作信号を出力する。
【0065】
次に原理を説明する。サンプリングの条件等は第1実施形態と同様である。
【0066】
演算部B4の演算結果は、第1実施形態で示した式(34)のyBとなり、演算部C3の演算結果は、第2実施形態で示した式(39)のyCとなる。そして、演算部D9の出力yDは、数3に示す式(43)となる。
【数3】
【0067】
リアクタンス演算部8は、演算部C7の演算結果yC,演算部B4の演算結果yB,演算部D9の演算結果のyDを用いて、数3に示す式(44)の演算を行うことになる。
【0068】
ここで第1実施形態と同様に、電力系統の周波数変動率αを考慮してωをω(1+α)で表すこととし、式(28a),(30a),(32a)を式(43)へ代入すると、yDは数3に示す式(45)のようになる。
【0069】
また、式(44)のyC/yBは、第2実施形態で示した式(41)となるので、式(41)と式(45)から式(44)は、数3に示す式(46)となる。したがって、式(46)によれば、周波数変動率の影響がないリアクタンス成分Xが求まり、これはリアクタンス演算部8で得ることになる。
【0070】
特性図を例示すると、式(46)は図11に示す周波数特性となる。同図は、横軸が周波数変動率α、縦軸がリアクタンス成分Xの誤差率(最大値)であって、実線(a)はサンプリング開始位置を0°とした場合の特性であり、点線(b)はサンプリング開始位置を60°とした場合の特性であるが、両者は一致していて図中には実線のみとなっている。
【0071】
以上のように、リアクタンス成分Xの演算式には、周波数変動率αおよびサンプリング開始位置mを含まなく、それらを排除した演算結果を得ることができる。したがって、電力系統周波数が基本周波数から変動している場合でも、その影響を受けずに高精度に事故点Fまでのリアクタンス成分Xを演算することができる。そして、リアクタンス成分Xの演算結果は、サンプリング位相によらない演算結果となっている。
【0072】
すなわち本発明にあっては、電力系統の周波数が変動している場合でも、事故点Fまでのインピーダンスを十分な精度で算出することができる。そして、サンプリング位相によらずにインピーダンスの算出が行える。その結果、演算誤差に起因した誤動作を回避することができる。
【0073】
(第4の実施の形態)
図12は本発明の第4の実施の形態を示している。本実施形態において、距離継電装置は、メモリ部1,抽出部2,演算部A3,演算部B4,演算部C7,抵抗演算部5,リアクタンス演算部8,インピーダンス演算部10,判定部6を備え、電力系統の電圧v,電流iをメモリ部1へ取り込み、そのメモリ部1から瞬時値データを抽出部2へ送り込んで各演算部3,4,7,5,8,10において抽出データの演算を行い、それらの演算結果から判定部6において事故点の判定を行う構成になっている。なお、第1,2,3の実施の形態と同様な構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0074】
インピーダンス演算部10では、抵抗演算部5の演算結果とリアクタンス演算部8の演算結果とを合成してインピーダンスZとする演算を行う。そして、判定部6では、インピーダンス演算部10から取り込んだ演算結果(インピーダンスZ)が、所定しきい値の範囲内にあった場合に保護動作信号を出力する。
【0075】
次に原理を説明する。サンプリングの条件等は第1実施形態と同様である。インピーダンス演算部10は、抵抗演算部5からの抵抗成分Rとリアクタンス演算部8からのリアクタンス成分Xを用い、
Z=R+jX …(47)
という演算を行う。ここで、抵抗成分R,リアクタンス成分Xは前述したように、周波数が変動しても影響がなく、あるいは影響による誤差が小さくなるため、上記式(47)で算出したインピーダンスZは精度が高いと言える。
【0076】
図13はインピーダンス平面における動作領域を説明するグラフ図であり、同図に示す円形の領域は、保護動作を起動すべき動作領域(所定しきい値)になっている。判定部6の動作では、予め設定しておいた所定しきい値(動作領域)との比較を行い、インピーダンス演算部10で算出したインピーダンスZが、所定しきい値の範囲内となった場合に保護動作信号を出力することになる。
【0077】
以上のように、インピーダンスZの演算式には、抵抗成分Rは周波数が変動しても影響がなく、リアクタンス成分Xは影響による誤差が小さくなるため、従来に比べて格段に高精度の演算結果を得ることができる。そして、インピーダンスZの演算結果は、サンプリング位相によらない演算結果となっている。
【0078】
すなわち本発明にあっては、電力系統の周波数が変動している場合でも、事故点Fまでのインピーダンスを十分な精度で算出することができる。そして、サンプリング位相によらずにインピーダンスの算出が行える。その結果、演算誤差に起因した誤動作を回避することができる。
【0079】
(第5の実施の形態)
図14は本発明の第5の実施の形態を示している。本実施形態において、距離継電装置は、メモリ部1,抽出部2,演算部A3,演算部B4,演算部C7,演算部D9,抵抗演算部5,リアクタンス演算部8,インピーダンス演算部10,判定部6を備え、電力系統の電圧v,電流iをメモリ部1へ取り込み、そのメモリ部1から瞬時値データを抽出部2へ送り込んで各演算部3,4,7,9,5,8,10において抽出データの演算を行い、それらの演算結果から判定部6において事故点の判定を行う構成になっている。なお、第1,2,3,4の実施の形態と同様な構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0080】
本実施形態にあっては、演算部D9を削除することで第4実施形態と同一構成となる。また、演算部D9の演算結果を用いたリアクタンス演算部8での演算は第3実施形態と同一であり、詳細な説明は省略する。
【0081】
前述した他の実施形態から容易に分かるように、本実施形態では、抵抗成分R,リアクタンス成分Xの演算ではともに、周波数変動率αおよびサンプリング開始位置mを含まなく、それらを排除した演算結果を得ることができる。したがって、インピーダンスZについても周波数変動の影響がなく、従来に比べて格段に高精度の演算結果を得ることができる。そして、インピーダンスZの演算結果は、サンプリング位相によらない演算結果となっている。
【0082】
すなわち本発明にあっては、電力系統の周波数が変動している場合でも、事故点Fまでのインピーダンスを十分な精度で算出することができる。そして、サンプリング位相によらずにインピーダンスの算出が行える。その結果、演算誤差に起因した誤動作を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】距離継電装置による事故検出の原理を説明する構成図である。
【図2】抵抗成分Rの演算式に係る周波数特性であり、周波数変動率αに対する抵抗成分Rの誤差率を示している。
【図3】リアクタンス成分Xの演算式に係る周波数特性であり、周波数変動率αに対するリアクタンス成分Xの誤差率を示している。
【図4】本発明に係る距離継電装置の好適な一実施の形態を示す構成図である。
【図5】抵抗成分Rの演算式に係る周波数特性であり、周波数変動率αに対する抵抗成分Rの誤差率を示している。
【図6】インピーダンス平面における動作領域を説明するグラフ図である。
【図7】本発明に係る距離継電装置の第2の実施の形態を示す構成図である。
【図8】リアクタンス成分Xの演算式に係る周波数特性であり、周波数変動率αに対するリアクタンス成分Xの誤差率を示している。
【図9】インピーダンス平面における動作領域を説明するグラフ図である。
【図10】本発明に係る距離継電装置の第3の実施の形態を示す構成図である。
【図11】リアクタンス成分Xの演算式に係る周波数特性であり、周波数変動率αに対するリアクタンス成分Xの誤差率を示している。
【図12】本発明に係る距離継電装置の第4の実施の形態を示す構成図である。
【図13】インピーダンス平面における動作領域を説明するグラフ図である。
【図14】本発明に係る距離継電装置の第5の実施の形態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0084】
1 メモリ部
2 抽出部
3 演算部A
4 演算部B
5 抵抗演算部
6 判定部
7 演算部C
8 リアクタンス演算部
9 演算部D
10 インピーダンス演算部
99 距離継電装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統の電圧および電流から事故点までのインピーダンスを求めて故障の判別を行う距離継電装置に関するもので、より具体的には、所定周期のサンプリングにより得られる電力系統の瞬時値データを使用してインピーダンスの算出を行う演算方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
距離継電装置は、電力系統の電圧および電流から事故点までのインピーダンスを求めて保護範囲内の事故か否かを判定し、保護範囲内の事故の場合に遮断器のトリップ信号を出力する構成になっている。
【0003】
図1は、距離継電装置による事故検出の原理を説明する構成図である。距離継電装置99は、電力系統のある点へ接続し、当該点において電圧vおよび電流iを測定し、取り込みを行う。そして、その取り込み点から事故点FまでのインピーダンスZを求め、予め設定してあるインピーダンスの所定しきい値と比較して、保護範囲内の事故かどうかを判定し、保護範囲内であれば保護動作信号を出力する。
【0004】
事故点FまでのインピーダンスZは、抵抗成分Rとリアクタンス成分Xからなる複素数として表すことができ、距離継電装置99ではそれらの値を求めることになる。インピーダンスZの算出のための演算方法としては、電力系統の電圧および電流の基本波ベクトルを用いたベクトル計算による方法がよく知られている。まず、距離継電装置99において取り込む点の電圧v(t),電流i(t)は、
v(t)=Vsin(ωt+θ) …(1)
i(t)=Isinωt …(2)
となり、それぞれ時刻tにおける瞬時値を示している。ここで、Vは電圧の振幅値、Iは電流の振幅値、ωは電圧および電流の角周波数、θは電流に対する電圧の進み位相である。角周波数ωは電力系統の基本周波数fbに関してω=2πfbという関係になる。
【0005】
電圧,電流が式(1),(2)で示す関係にあるとき、インピーダンスZは抵抗成分Rおよびリアクタンス成分Xに関して、
R=Vcosθ/I=VIcosθ/I2 …(3)
X=Vsinθ/I=VIsinθ/I2 …(4)
Z=R+jX …(5)
となり、jは虚数単位である。
【0006】
したがって、電圧v(t),電流i(t)の瞬時値のから、I2,VIcosθ,VIsinθを求めれば、式(3),(4),(5)により抵抗成分R,リアクタンス成分X,インピーダンスZを算出することができる。
【0007】
上記式に示すインピーダンスZの算出には、所定周期のサンプリングにより得られる電力系統の瞬時値データを使用して演算を行う演算方法を適用している。まず、電力系統の定格周波数の12倍のサンプリング周波数により電圧,電流の瞬時値をサンプリングして記憶する。記憶した電圧,電流の瞬時値をvk,ikとすると、
vk=Vsin(ωkT+θ) …(6)
ik=Isin(ωkT) …(7)
と表すことができ、Tはサンプリング周期、kは1,2,3,… という値をとる。
【0008】
電力系統の定格周波数が50Hzの場合、12倍のサンプリング周波数fsは600Hz、周期T=1/600となる。現時点におけるサンプリング位置をmとすると、記憶した瞬時値のうちk=m―0とk=m−3の瞬時値は、
vm−0=Vsin{ω(m−0)T+θ} …(8)
im−0=Isin{ω(m−0)T} …(9)
vm−3=Vsin{ω(m−3)T+θ} …(10)
im−3=Isin{ω(m−3)T} …(11)
となっているので、これを用いれば、
I2=im−02+im−32 …(12)
VIcosθ=vm−0・im−0+vm−3・im−3 …(13)
VIsinθ=vm−3・im−0−vm−0・im−3 …(14)
という演算によりI2,VIcosθ,VIsinθが求まる。
【0009】
なお、式(12),(13),(14)において右辺が左辺となる証明は以下に示す数1の通りである。
【数1】
【0010】
したがって、式(12),(13),(14)を式(3),(4)へ代入することにより、抵抗成分R,リアクタンス成分Xは、
R=(vm−0・im−0+vm−3・im−3)/(im−02+im−32) …(15)
X=(vm−3・im−0−vm-0・im-3)/(im-02+im−32) …(16)
というように求めることができる。
【0011】
なお、サンプリング周波数fsは、電力系統の定格周波数の12倍とする設定がよく用いられている。例えば特許文献1などに見られるように、そうした設定においても高性能を得るための技術の提案がある。
【特許文献1】特開平8−126190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、そうした従来の演算方法では以下に示すような問題がある。電力系統の周波数が変動した場合は、サンプリング周波数と電力系統の電気量との間に成立していた周期性の関係が成り立たなくなる。このため、算出インピーダンスには演算誤差が含まれてしまう。また、サンプリング開始位置に影響を受けることから、算出インピーダンスは演算処理毎に演算結果が変動してしまう。したがって、距離継電装置が演算誤差に起因した誤動作を起こす問題がある。
【0013】
電力系統周波数fの変動(周波数変動率α)は基本周波数fbに関して、
α=(f−fb)/fb …(17)
と定義し、例えば基本周波数fbが50Hzであるとき、電力系統周波数fが60Hzとなったのであれば周波数変動率αは0.2となる。
【0014】
そして、電圧,電流の瞬時値は、周波数変動率αを考慮するので、
vm−0=Vsin{ω(1+α)(m−0)T+θ} …(18)
im−0=Isin{ω(1+α)(m−0)T} …(19)
vm−3=Vsin{ω(1+α)(m−3)T+θ} …(20)
im−3=Isin{ω(1+α)(m−3)T} …(21)
となる。これらの式(18)〜(21)は式(12),(13),(14)の右辺へ代入し、数2に示す式(22),(23),(24)となる。そして、これらの式(22),(23),(24)は式(15),(16)へ代入することにより、抵抗成分R,リアクタンス成分Xは、数2に示す式(25),(26)となる。
【数2】
【0015】
式(25),(26)は周波数変動率αを含んでおり、式(3),(4)と明らかに相違している。すなわち、周波数が変動すると抵抗成分R,リアクタンス成分Xを正しく求めることができなく、誤差が生じることになる。
【0016】
特性図を例示すると、図2は式(25)に係る周波数特性であり、周波数変動率αに対する抵抗成分Rの誤差率(最大値)を示している。そして、図3は式(26)に係る周波数特性であり、周波数変動率αに対するリアクタンス成分Xの誤差率(最大値)を示している。図2,図3において、実線(a)はサンプリング開始位置を0°とした場合の特性であり、点線(b)はサンプリング開始位置を60°とした場合の特性である。
【0017】
図2,図3から明らかなように、従来の演算方法では、電力系統の周波数が変動している場合は、事故点までのインピーダンスを正しく求めることができない問題がある。また、インピーダンスの演算結果はサンプリング開始位置(サンプリング位相)に応じて変動してしまい、演算結果が定まらないといった問題が起きる。
【0018】
この発明は上記した課題を解決するもので、その目的は、電力系統の周波数が変動している場合でも、事故点までのインピーダンスを十分な精度で算出することができ、サンプリング位相によらずにインピーダンスの算出が行える距離継電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記した目的を達成するために、本発明に係る距離継電装置は、電力系統の電圧,電流の瞬時値を記憶するメモリ部と、メモリ部から所定時期についてデータ抽出を行う抽出部と、抽出部が抽出した瞬時値データについて所定の演算を行う複数の演算部と、演算部から最終的に出力する演算結果が所定しきい値の範囲内にあった場合に保護動作信号を出力する判定部とを備えて、抽出部での抽出はある時点を基準時点とし、当該基準時点の電圧瞬時値v0と電流瞬時値i0、基準時点から電力系統の定格周波数の電気角で90°前の時点における電圧瞬時値v3と電流瞬時値i3、基準時点から電力系統の定格周波数の電気角で180°前の時点における電圧瞬時値v6と電流瞬時値i6とを抽出し、演算部では複数の演算部により瞬時値データから異なる2つの実効値演算結果の差分を算出して電力系統の周波数変動を補正する演算を行う構成にする(請求項1)。
【0020】
また、演算部として演算部A,演算部B,抵抗演算部を備え、演算部Aでの演算は、電圧瞬時値v3と電流瞬時値i3とを乗算して計算値1とし、電圧瞬時値v6と電流瞬時値i0とを乗算して計算値2とし、電圧瞬時値v0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値3とし、計算値2と計算値3との加算平均値を求め、計算値1から前記加算平均値を減算する演算とし、演算部Bでの演算は、電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、電流瞬時値i0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、計算値4から計算値5減算する演算とし、抵抗演算部での演算は、演算部Aの演算結果を演算部Bの演算結果で除算して抵抗成分とする演算を行う構成にする(請求項2)。
【0021】
また、演算部として演算部C,演算部B,リアクタンス演算部を備え、演算部Cでの演算は、電圧瞬時値v3と電流瞬時値i0とを乗算して計算値6とし、電圧瞬時値v0と電流瞬時値i3とを乗算して計算値7とし、計算値6から計算値7を減算する演算とし、演算部Bでの演算は、電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、電流瞬時値i0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、計算値4から計算値5減算する演算とし、リアクタンス演算部での演算は、演算部Cの演算結果を演算部Bの演算結果で除算してリアクタンス成分とする演算を行う構成にする(請求項3)。
【0022】
また、演算部として演算部C,演算部B,演算部D,リアクタンス演算部を備え、演算部Cでの演算は、電圧瞬時値v3と電流瞬時値i0とを乗算して計算値6とし、電圧瞬時値v0と電流瞬時値i3とを乗算して計算値7とし、計算値6から計算値7を減算する演算とし、演算部Bでの演算は、電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、電流瞬時値i0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、計算値4から計算値5減算する演算とし、演算部Dでの演算は、電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、電流瞬時値i0と電流瞬時値i6との加算平均値を2乗して計算値8とし、計算値4から計算値8を減算して平方根を求め、当該平方根を電流瞬時値i3で除算する演算とし、リアクタンス演算部での演算は、演算部Cの演算結果を演算部Bの演算結果で除算し、当該除算結果に演算部Dの演算結果を乗算してリアクタンス成分とする演算を行う構成にする(請求項4)。
【0023】
また、演算部として演算部A,演算部C,演算部B,抵抗演算部,リアクタンス演算部,インピーダンス演算部を備え、演算部Aでの演算は、電圧瞬時値v3と電流瞬時値i3とを乗算して計算値1とし、電圧瞬時値v6と電流瞬時値i0とを乗算して計算値2とし、電圧瞬時値v0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値3とし、計算値2と計算値3との加算平均値を求め、計算値1から加算平均値を減算する演算とし、演算部Cでの演算は、電圧瞬時値v3と電流瞬時値i0とを乗算して計算値6とし、電圧瞬時値v0と電流瞬時値i3とを乗算して計算値7とし、計算値6から計算値7を減算する演算とし、演算部Bでの演算は、電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、電流瞬時値i0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、計算値4から計算値5減算する演算とし、抵抗演算部での演算は、演算部Aの演算結果を演算部Bの演算結果で除算して抵抗成分とする演算を行い、リアクタンス演算部での演算は、演算部Cの演算結果を演算部Bの演算結果で除算してリアクタンス成分とする演算を行い、インピーダンス演算部での演算は、抵抗演算部の演算結果とリアクタンス演算部の演算結果とを合成してインピーダンスとする演算を行う構成にする(請求項5)。
【0024】
また、演算部として演算部A,演算部C,演算部B,演算部D,抵抗演算部,リアクタンス演算部,インピーダンス演算部を備え、演算部Aでの演算は、電圧瞬時値v3と電流瞬時値i3とを乗算して計算値1とし、電圧瞬時値v6と電流瞬時値i0とを乗算して計算値2とし、電圧瞬時値v0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値3とし、計算値2と計算値3との加算平均値を求め、計算値1から加算平均値を減算する演算とし、演算部Cでの演算は、電圧瞬時値v3と電流瞬時値i0とを乗算して計算値6とし、電圧瞬時値v0と電流瞬時値i3とを乗算して計算値7とし、計算値6から計算値7を減算する演算とし、演算部Bでの演算は、電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、電流瞬時値i0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、計算値4から計算値5減算する演算とし、演算部Dでの演算は、電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、電流瞬時値i0と電流瞬時値i6との加算平均値を2乗して計算値8とし、計算値4から計算値8を減算して平方根を求め、当該平方根を電流瞬時値i3で除算する演算とし、抵抗演算部での演算は、演算部Aの演算結果を演算部Bの演算結果で除算して抵抗成分とする演算を行い、リアクタンス演算部での演算は、演算部Cの演算結果を演算部Bの演算結果で除算し、当該除算結果に演算部Dの演算結果を乗算してリアクタンス成分とする演算を行い、インピーダンス演算部での演算は、抵抗演算部の演算結果とリアクタンス演算部の演算結果とを合成してインピーダンスとする演算を行う構成にする(請求項6)。
【0025】
係る構成にすることにより本発明では、複数の演算部により瞬時値データから異なる2つの実効値演算結果の差分を算出して電力系統の周波数変動を補正する演算を行うので、周波数変動の影響を除外することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る距離継電装置では、複数の演算部により瞬時値データから異なる2つの実効値演算結果の差分を算出して電力系統の周波数変動を補正する演算を行うので、周波数変動の影響を除外することができる。したがって、電力系統の周波数が変動している場合でも、事故点までのインピーダンスを十分な精度で算出することができる。そして、サンプリング位相によらずにインピーダンスの算出が行える。その結果、演算誤差に起因した誤動作を回避することができる。
【0027】
また、サンプリング位相によらずにインピーダンスの算出が行えるため、従来の一般的なサンプリング周期であっても、高精度の演算結果を得ることができる。したがって、装置構成の各部をむやみと高性能のものにする必要がなく、装置構成を簡素にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(第1の実施の形態)
図4は本発明の第1の実施の形態を示している。本実施形態において、距離継電装置は、メモリ部1,抽出部2,演算部A3,演算部B4,抵抗演算部5,判定部6を備え、電力系統の電圧v,電流iをメモリ部1へ取り込み、そのメモリ部1から瞬時値データを抽出部2へ送り込んで各演算部3,4,5において抽出データの演算を行い、それらの演算結果から判定部6において事故点の判定を行う構成になっている。
【0029】
メモリ部1には、電力系統の電圧v,電流iの瞬時値を記憶し、抽出部2ではメモリ部1が取り込んだ瞬時値データから特定データを抽出するようになっている。ここでの抽出は、ある時点を基準時点とし、その基準時点の電圧瞬時値v0と電流瞬時値i0、基準時点から電力系統の定格周波数の電気角で90°前の時点における電圧瞬時値v3と電流瞬時値i3、基準時点から電力系統の定格周波数の電気角で180°前の時点における電圧瞬時値v6と電流瞬時値i6とを抽出する。
【0030】
抽出した瞬時値は、抽出部2から演算部A3,演算部B4へ送り、それぞれ演算を行う。演算部A3では、電圧瞬時値v3と電流瞬時値i3とを乗算して計算値1とし、電圧瞬時値v6と電流瞬時値i0とを乗算して計算値2とし、電圧瞬時値v0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値3とし、計算値2と計算値3との加算平均値を求め、計算値1から加算平均値を減算する演算を行う。演算部B4では、電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、電流瞬時値i0と電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、計算値4から計算値5を減算する演算を行う。
【0031】
抵抗演算部5では、演算部A3の演算結果を演算部B4の演算結果で除算して抵抗成分Rとする演算を行う。そして、判定部6では、抵抗演算部5から取り込んだ演算結果(抵抗成分R)が、所定しきい値の範囲内にあった場合に保護動作信号を出力する。
【0032】
次に原理を説明する。まず条件として、電力系統の定格周波数が50Hzの場合、12倍のサンプリング周波数fsは600Hz、周期T=1/600となる。サンプリング間隔は、定格周波数が50Hzでは電気角30°となる。
【0033】
メモリ部1は、電圧,電流の瞬時値をサンプリング周期Tでサンプルして記憶する。その電圧vk,電流ikは式で表すと、
vk=Vsin(ωkT+θ) …(6)
ik=Isin(ωkT) …(7)
となり、kは1,2,3,… という値をとる。
【0034】
抽出部2は記憶した瞬時値のうちk=m―0とk=m−3およびk=m−6の瞬時値、すなわち、
vm−0=Vsin{ω(m−0)T+θ} …(27)
im−0=Isin{ω(m−0)T} …(28)
vm−3=Vsin{ω(m−3)T+θ} …(29)
im−3=Isin{ω(m−3)T} …(30)
vm−6=Vsin{ω(m−6)T+θ} …(31)
im−6=Isin{ω(m−6)T} …(32)
を抽出する。
【0035】
抽出した瞬時値を電気角で表す。電力系統周波数が50Hzの場合、ある時点を基準時点をk=m−0とすれば、k=m−0が基準時点の瞬時値、k=m−3は基準時点から90°前の瞬時値、k=m−6は基準時点から180°前の瞬時値となる。
【0036】
ω(m−3)T−ω(m−0)T=−3ωT
=−3×2π×50×(1/600)
=−π/2
ω(m−6)T−ω(m−0)T=−6ωT
=−6×2π×50×(1/600)
=−π
【0037】
演算部A3は、抽出部2からのvm−0,vm−3,vm−6,im−0,im−3,im−6の瞬時値を用いて、
計算値1=vm−3・im−3
計算値2=vm−6・im−0
計算値3=vm−0・im−6
を求める。そしてこれらより、
vm−3・im−3−{(vm−6・im−0+vm−0・im−6)/2}
を求める。したがって、演算部A3の出力yAは、
yA=vm−3・im−3−{(vm−6・im−0+vm−0・im−6)/2} …(33)
となる。
【0038】
演算部B4は、抽出部2からのim−0,im−3,im−6の瞬時値を用いて、
im−32−im−0・im−6
を求める。したがって、演算部B4の出力yBは、
yB=im−32−im−0・im−6 …(34)
となる。
【0039】
抵抗演算部5は、上記演算部A3と演算部B4の演算結果を用い、
R=yA/yB
=[vm−3・im−3−{(vm−6・im−0+vm−0・im−6)/2}]
/(im−32−im−0・im−6)
…(35)
の演算を行う。
【0040】
電力系統には周波数の変動があるので、ωは、式(17)に示す周波数変動率αを考慮してω(1+α)と表すことができ、式(27)〜(32)は以下のようになる。
【0041】
vm−0=Vsin{ω(1+α)(m−0)T+θ} …(27a)
im−0=Isin{ω(1+α)(m−0)T} …(28a)
vm−3=Vsin{ω(1+α)(m−3)T+θ} …(29a)
im−3=Isin{ω(1+α)(m−3)T} …(30a)
vm−6=Vsin{ω(1+α)(m−6)T+θ} …(31a)
im−6=Isin{ω(1+α)(m−6)T} …(32a)
したがってyA、yBは、
yA=vm−3・im−3−{(vm−6・im−0+vm−0・im−6)/2}
=VIcosθ[1−cos2{3ω(1+α)T}]
…(36)
yB=im−32−im−0・im−6
=I2[1−cos2{3ω(1+α)T}]
…(37)
となり、抵抗演算部5では以下のように抵抗成分Rが求まる。
【0042】
R=yA/yB
=[vm−3・im−3−{(vm−6・im−0+vm−0・im−6)/2}]
/(im−32−im−0・im−6)
=VIcosθ[1−cos2{3ω(1+α)T}]
/(I2[1−cos2{3ω(1+α)T}])
=VIcosθ/I2
…(38)
【0043】
特性図を例示すると、式(38)は図5に示す周波数特性となる。同図は、横軸が周波数変動率α、縦軸が抵抗成分Rの誤差率(最大値)であって、実線(a)はサンプリング開始位置を0°とした場合の特性であり、点線(b)はサンプリング開始位置を60°とした場合の特性であるが、両者は一致していて図中には実線のみとなっている。
【0044】
また、図6はインピーダンス平面における動作領域を説明するグラフ図であり、同図に示す抵抗値RSの右側領域は、保護動作を起動すべき動作領域(所定しきい値)になっている。判定部6の動作では、予め設定しておいた所定しきい値RSとの比較を行い、抵抗演算部5で算出した抵抗成分Rが、所定しきい値RSの範囲内(動作領域)となった場合に保護動作信号を出力することになる。
【0045】
以上のように、抵抗成分Rの演算式には、周波数変動率αおよびサンプリング開始位置mを含まなく、それらを排除した演算結果を得ることができる。したがって、電力系統周波数が基本周波数から変動している場合でも、その影響を受けずに高精度に事故点Fまでの抵抗成分Rを演算することができる。そして、抵抗成分Rの演算結果は、サンプリング位相によらない演算結果となっている。
【0046】
すなわち本発明にあっては、複数の演算部により瞬時値データから異なる2つの実効値演算結果の差分を算出して電力系統の周波数変動率αを補正する演算を行うので、周波数変動の影響を除外することができる。したがって、電力系統の周波数が変動している場合でも、事故点Fまでのインピーダンスを十分な精度で算出することができる。そして、サンプリング位相によらずにインピーダンスの算出が行える。その結果、演算誤差に起因した誤動作を回避することができる。
【0047】
(第2の実施の形態)
図7は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施形態において、距離継電装置は、メモリ部1,抽出部2,演算部C7,演算部B4,リアクタンス演算部8,判定部6を備え、電力系統の電圧v,電流iをメモリ部1へ取り込み、そのメモリ部1から瞬時値データを抽出部2へ送り込んで各演算部7,4,8において抽出データの演算を行い、それらの演算結果から判定部6において事故点の判定を行う構成になっている。なお、第1の実施の形態と同様な構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0048】
演算部C7では、電圧瞬時値v3と電流瞬時値i0とを乗算して計算値6とし、電圧瞬時値v0と電流瞬時値i3とを乗算して計算値7とし、計算値6から計算値7を減算する演算を行う。
【0049】
リアクタンス演算部8では、演算部C7の演算結果を演算部B4の演算結果で除算してリアクタンス成分Xとする演算を行う。そして、判定部6では、リアクタンス演算部8から取り込んだ演算結果(リアクタンス成分X)が、所定しきい値の範囲内にあった場合に保護動作信号を出力する。
【0050】
次に原理を説明する。サンプリングの条件等は第1実施形態と同様である。
【0051】
演算部C7は、抽出部2から送られた瞬時値データ、つまりvm−0,vm−3,im−0,im−3を用いて、
vm−3・im−0−vm−0・im−3
を求める。このため、演算部C7の出力yCは、
yC=vm−3・im−0−vm−0・im−3 …(39)
となる。
【0052】
リアクタンス演算部8は、演算部C7の演算結果と演算部B4の演算結果とを用い、つまり式(39)と式(34)を用い、
X=yC/yB
=(vm−3・im−0−vm−0・im−3yB)/im−32−im−0・im−6) …(40)
の演算を行う。
【0053】
ここで第1実施形態と同様に、電力系統の周波数変動率αを考慮してωをω(1+α)と表すこととし、式(27a)〜(30a)を式(39)へ代入すると、
yC=vm−3・im−0−vm−0・im−3
=VIsinθsin{3ω(1+α)T} …(39)
となり、この式(39)の演算を演算部C7が行う。
【0054】
リアクタンス演算部8は、上記の式(39)によるyCを、前述した式(37)によるyBで除算してリアクタンス成分Xとする演算を行うので、以下に示すように求まる。
【0055】
X=yC/yB
=(vm−3・im−0−vm−0・im−3)/(im−32−im−0・im−6)
=VIsinθsin{3ω(1+α)T}
/(I2[1−cos2{3ω(1+α)T}])
=(VIsinθ/I2)・1/sin{3ω(1+α)T} …(41)
【0056】
特性図を例示すると、式(41)は図8に示す周波数特性となる。同図は、横軸が周波数変動率α、縦軸がリアクタンス成分Xの誤差率(最大値)であって、実線(a)はサンプリング開始位置を0°とした場合の特性であり、点線(b)はサンプリング開始位置を60°とした場合の特性であるが、両者は一致していて図中には実線のみとなっている。
【0057】
図8から明らかなように、リアクタンス成分Xとしては、周波数変動率に応じた一定の誤差を含んでおり、周波数変動率が±10%の範囲において1.5%以下程度の算出誤差となる。この誤差は、従来の約15%程度の誤差が1/10となり、精度が大幅に向上したことになる。そして、サンプリング位相によらない演算結果となる。
【0058】
なお、式(41)において、電力系統の周波数が定格周波数ではα=0なので、リアクタンス成分Xは、
X=(VIsinθ/I2)・1/sin{3ω(1+α)T}
=(VIsinθ/I2)・1/sin{3×2π×50/600}
=VIsinθ/I2
…(42)
となり、図8に示す特性も明らかに誤差はない。
【0059】
また、図9はインピーダンス平面における動作領域を説明するグラフ図であり、同図に示すリアクタンス値XSの上側領域は、保護動作を起動すべき動作領域(所定しきい値)になっている。判定部6の動作では、予め設定しておいた所定しきい値XSとの比較を行い、リアクタンス演算部8で算出したリアクタンス成分Xが、所定しきい値XSの範囲内(動作領域)となった場合に保護動作信号を出力することになる。
【0060】
以上のように、リアクタンス成分Xの演算式には、周波数変動率に応じた一定の誤差を含むものの、周波数変動率が±10%の範囲で発生した場合は、検出誤差は約1.3%以下に抑えることができ、従来に比べて格段に高精度と言える。
【0061】
すなわち本発明にあっては、電力系統の周波数が変動している場合でも、事故点Fまでのインピーダンスを十分な精度で算出することができる。そして、サンプリング位相によらずにインピーダンスの算出が行える。その結果、演算誤差に起因した誤動作を回避することができる。
【0062】
(第3の実施の形態)
図10は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施形態において、距離継電装置は、メモリ部1,抽出部2,演算部C7,演算部B4,演算部D9,リアクタンス演算部8,判定部6を備え、電力系統の電圧v,電流iをメモリ部1へ取り込み、そのメモリ部1から瞬時値データを抽出部2へ送り込んで各演算部7,4,9,8において抽出データの演算を行い、それらの演算結果から判定部6において事故点の判定を行う構成になっている。なお、第1,2の実施の形態と同様な構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0063】
演算部D9では、電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、電流瞬時値i0と電流瞬時値i6との加算平均値を2乗して計算値8とし、計算値4から計算値8を減算して平方根を求め、当該平方根を電流瞬時値i3で除算する演算を行う。
【0064】
リアクタンス演算部8では、演算部C7の演算結果を演算部B4の演算結果で除算し、当該除算結果に演算部D9の演算結果を乗算してリアクタンス成分Xとする演算を行う。そして、判定部6では、リアクタンス演算部8から取り込んだ演算結果(リアクタンス成分X)が、所定しきい値の範囲内にあった場合に保護動作信号を出力する。
【0065】
次に原理を説明する。サンプリングの条件等は第1実施形態と同様である。
【0066】
演算部B4の演算結果は、第1実施形態で示した式(34)のyBとなり、演算部C3の演算結果は、第2実施形態で示した式(39)のyCとなる。そして、演算部D9の出力yDは、数3に示す式(43)となる。
【数3】
【0067】
リアクタンス演算部8は、演算部C7の演算結果yC,演算部B4の演算結果yB,演算部D9の演算結果のyDを用いて、数3に示す式(44)の演算を行うことになる。
【0068】
ここで第1実施形態と同様に、電力系統の周波数変動率αを考慮してωをω(1+α)で表すこととし、式(28a),(30a),(32a)を式(43)へ代入すると、yDは数3に示す式(45)のようになる。
【0069】
また、式(44)のyC/yBは、第2実施形態で示した式(41)となるので、式(41)と式(45)から式(44)は、数3に示す式(46)となる。したがって、式(46)によれば、周波数変動率の影響がないリアクタンス成分Xが求まり、これはリアクタンス演算部8で得ることになる。
【0070】
特性図を例示すると、式(46)は図11に示す周波数特性となる。同図は、横軸が周波数変動率α、縦軸がリアクタンス成分Xの誤差率(最大値)であって、実線(a)はサンプリング開始位置を0°とした場合の特性であり、点線(b)はサンプリング開始位置を60°とした場合の特性であるが、両者は一致していて図中には実線のみとなっている。
【0071】
以上のように、リアクタンス成分Xの演算式には、周波数変動率αおよびサンプリング開始位置mを含まなく、それらを排除した演算結果を得ることができる。したがって、電力系統周波数が基本周波数から変動している場合でも、その影響を受けずに高精度に事故点Fまでのリアクタンス成分Xを演算することができる。そして、リアクタンス成分Xの演算結果は、サンプリング位相によらない演算結果となっている。
【0072】
すなわち本発明にあっては、電力系統の周波数が変動している場合でも、事故点Fまでのインピーダンスを十分な精度で算出することができる。そして、サンプリング位相によらずにインピーダンスの算出が行える。その結果、演算誤差に起因した誤動作を回避することができる。
【0073】
(第4の実施の形態)
図12は本発明の第4の実施の形態を示している。本実施形態において、距離継電装置は、メモリ部1,抽出部2,演算部A3,演算部B4,演算部C7,抵抗演算部5,リアクタンス演算部8,インピーダンス演算部10,判定部6を備え、電力系統の電圧v,電流iをメモリ部1へ取り込み、そのメモリ部1から瞬時値データを抽出部2へ送り込んで各演算部3,4,7,5,8,10において抽出データの演算を行い、それらの演算結果から判定部6において事故点の判定を行う構成になっている。なお、第1,2,3の実施の形態と同様な構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0074】
インピーダンス演算部10では、抵抗演算部5の演算結果とリアクタンス演算部8の演算結果とを合成してインピーダンスZとする演算を行う。そして、判定部6では、インピーダンス演算部10から取り込んだ演算結果(インピーダンスZ)が、所定しきい値の範囲内にあった場合に保護動作信号を出力する。
【0075】
次に原理を説明する。サンプリングの条件等は第1実施形態と同様である。インピーダンス演算部10は、抵抗演算部5からの抵抗成分Rとリアクタンス演算部8からのリアクタンス成分Xを用い、
Z=R+jX …(47)
という演算を行う。ここで、抵抗成分R,リアクタンス成分Xは前述したように、周波数が変動しても影響がなく、あるいは影響による誤差が小さくなるため、上記式(47)で算出したインピーダンスZは精度が高いと言える。
【0076】
図13はインピーダンス平面における動作領域を説明するグラフ図であり、同図に示す円形の領域は、保護動作を起動すべき動作領域(所定しきい値)になっている。判定部6の動作では、予め設定しておいた所定しきい値(動作領域)との比較を行い、インピーダンス演算部10で算出したインピーダンスZが、所定しきい値の範囲内となった場合に保護動作信号を出力することになる。
【0077】
以上のように、インピーダンスZの演算式には、抵抗成分Rは周波数が変動しても影響がなく、リアクタンス成分Xは影響による誤差が小さくなるため、従来に比べて格段に高精度の演算結果を得ることができる。そして、インピーダンスZの演算結果は、サンプリング位相によらない演算結果となっている。
【0078】
すなわち本発明にあっては、電力系統の周波数が変動している場合でも、事故点Fまでのインピーダンスを十分な精度で算出することができる。そして、サンプリング位相によらずにインピーダンスの算出が行える。その結果、演算誤差に起因した誤動作を回避することができる。
【0079】
(第5の実施の形態)
図14は本発明の第5の実施の形態を示している。本実施形態において、距離継電装置は、メモリ部1,抽出部2,演算部A3,演算部B4,演算部C7,演算部D9,抵抗演算部5,リアクタンス演算部8,インピーダンス演算部10,判定部6を備え、電力系統の電圧v,電流iをメモリ部1へ取り込み、そのメモリ部1から瞬時値データを抽出部2へ送り込んで各演算部3,4,7,9,5,8,10において抽出データの演算を行い、それらの演算結果から判定部6において事故点の判定を行う構成になっている。なお、第1,2,3,4の実施の形態と同様な構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0080】
本実施形態にあっては、演算部D9を削除することで第4実施形態と同一構成となる。また、演算部D9の演算結果を用いたリアクタンス演算部8での演算は第3実施形態と同一であり、詳細な説明は省略する。
【0081】
前述した他の実施形態から容易に分かるように、本実施形態では、抵抗成分R,リアクタンス成分Xの演算ではともに、周波数変動率αおよびサンプリング開始位置mを含まなく、それらを排除した演算結果を得ることができる。したがって、インピーダンスZについても周波数変動の影響がなく、従来に比べて格段に高精度の演算結果を得ることができる。そして、インピーダンスZの演算結果は、サンプリング位相によらない演算結果となっている。
【0082】
すなわち本発明にあっては、電力系統の周波数が変動している場合でも、事故点Fまでのインピーダンスを十分な精度で算出することができる。そして、サンプリング位相によらずにインピーダンスの算出が行える。その結果、演算誤差に起因した誤動作を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】距離継電装置による事故検出の原理を説明する構成図である。
【図2】抵抗成分Rの演算式に係る周波数特性であり、周波数変動率αに対する抵抗成分Rの誤差率を示している。
【図3】リアクタンス成分Xの演算式に係る周波数特性であり、周波数変動率αに対するリアクタンス成分Xの誤差率を示している。
【図4】本発明に係る距離継電装置の好適な一実施の形態を示す構成図である。
【図5】抵抗成分Rの演算式に係る周波数特性であり、周波数変動率αに対する抵抗成分Rの誤差率を示している。
【図6】インピーダンス平面における動作領域を説明するグラフ図である。
【図7】本発明に係る距離継電装置の第2の実施の形態を示す構成図である。
【図8】リアクタンス成分Xの演算式に係る周波数特性であり、周波数変動率αに対するリアクタンス成分Xの誤差率を示している。
【図9】インピーダンス平面における動作領域を説明するグラフ図である。
【図10】本発明に係る距離継電装置の第3の実施の形態を示す構成図である。
【図11】リアクタンス成分Xの演算式に係る周波数特性であり、周波数変動率αに対するリアクタンス成分Xの誤差率を示している。
【図12】本発明に係る距離継電装置の第4の実施の形態を示す構成図である。
【図13】インピーダンス平面における動作領域を説明するグラフ図である。
【図14】本発明に係る距離継電装置の第5の実施の形態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0084】
1 メモリ部
2 抽出部
3 演算部A
4 演算部B
5 抵抗演算部
6 判定部
7 演算部C
8 リアクタンス演算部
9 演算部D
10 インピーダンス演算部
99 距離継電装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統の電圧,電流の瞬時値を記憶するメモリ部と、前記メモリ部から所定時期についてデータ抽出を行う抽出部と、前記抽出部が抽出した瞬時値データについて所定の演算を行う複数の演算部と、前記演算部から最終的に出力する演算結果が所定しきい値の範囲内にあった場合に保護動作信号を出力する判定部とを備えて、
前記抽出部での抽出はある時点を基準時点とし、当該基準時点の電圧瞬時値v0と電流瞬時値i0、前記基準時点から電力系統の定格周波数の電気角で90°前の時点における電圧瞬時値v3と電流瞬時値i3、前記基準時点から電力系統の定格周波数の電気角で180°前の時点における電圧瞬時値v6と電流瞬時値i6とを抽出し、前記演算部では複数の演算部により前記瞬時値データから異なる2つの実効値演算結果の差分を算出して電力系統の周波数変動を補正する演算を行うことを特徴とする距離継電装置。
【請求項2】
前記演算部として演算部A,演算部B,抵抗演算部を備え、
前記演算部Aでの演算は、前記電圧瞬時値v3と前記電流瞬時値i3とを乗算して計算値1とし、前記電圧瞬時値v6と前記電流瞬時値i0とを乗算して計算値2とし、前記電圧瞬時値v0と前記電流瞬時値i6とを乗算して計算値3とし、前記計算値2と前記計算値3との加算平均値を求め、前記計算値1から前記加算平均値を減算する演算とし、
前記演算部Bでの演算は、前記電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、前記電流瞬時値i0と前記電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、前記計算値4から前記計算値5減算する演算とし、
前記抵抗演算部での演算は、前記演算部Aの演算結果を前記演算部Bの演算結果で除算して抵抗成分とする演算を行うことを特徴とする請求項1に記載の距離継電装置。
【請求項3】
前記演算部として演算部C,演算部B,リアクタンス演算部を備え、
前記演算部Cでの演算は、前記電圧瞬時値v3と前記電流瞬時値i0とを乗算して計算値6とし、前記電圧瞬時値v0と前記電流瞬時値i3とを乗算して計算値7とし、前記計算値6から前記計算値7を減算する演算とし、
前記演算部Bでの演算は、前記電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、前記電流瞬時値i0と前記電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、前記計算値4から前記計算値5減算する演算とし、
前記リアクタンス演算部での演算は、前記演算部Cの演算結果を前記演算部Bの演算結果で除算してリアクタンス成分とする演算を行うことを特徴とする請求項1に記載の距離継電装置。
【請求項4】
前記演算部として演算部C,演算部B,演算部D,リアクタンス演算部を備え、
前記演算部Cでの演算は、前記電圧瞬時値v3と前記電流瞬時値i0とを乗算して計算値6とし、前記電圧瞬時値v0と前記電流瞬時値i3とを乗算して計算値7とし、前記計算値6から前記計算値7を減算する演算とし、
前記演算部Bでの演算は、前記電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、前記電流瞬時値i0と前記電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、前記計算値4から前記計算値5減算する演算とし、
前記演算部Dでの演算は、前記電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、前記電流瞬時値i0と前記電流瞬時値i6との加算平均値を2乗して計算値8とし、前記計算値4から前記計算値8を減算して平方根を求め、当該平方根を前記電流瞬時値i3で除算する演算とし、
前記リアクタンス演算部での演算は、前記演算部Cの演算結果を前記演算部Bの演算結果で除算し、当該除算結果に前記演算部Dの演算結果を乗算してリアクタンス成分とする演算を行うことを特徴とする請求項1に記載の距離継電装置。
【請求項5】
前記演算部として演算部A,演算部C,演算部B,抵抗演算部,リアクタンス演算部,インピーダンス演算部を備え、
前記演算部Aでの演算は、前記電圧瞬時値v3と前記電流瞬時値i3とを乗算して計算値1とし、前記電圧瞬時値v6と前記電流瞬時値i0とを乗算して計算値2とし、前記電圧瞬時値v0と前記電流瞬時値i6とを乗算して計算値3とし、前記計算値2と前記計算値3との加算平均値を求め、前記計算値1から前記加算平均値を減算する演算とし、
前記演算部Cでの演算は、前記電圧瞬時値v3と前記電流瞬時値i0とを乗算して計算値6とし、前記電圧瞬時値v0と前記電流瞬時値i3とを乗算して計算値7とし、前記計算値6から前記計算値7を減算する演算とし、
前記演算部Bでの演算は、前記電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、前記電流瞬時値i0と前記電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、前記計算値4から前記計算値5減算する演算とし、
前記抵抗演算部での演算は、前記演算部Aの演算結果を前記演算部Bの演算結果で除算して抵抗成分とする演算を行い、
前記リアクタンス演算部での演算は、前記演算部Cの演算結果を前記演算部Bの演算結果で除算してリアクタンス成分とする演算を行い、
前記インピーダンス演算部での演算は、前記抵抗演算部の演算結果と前記リアクタンス演算部の演算結果とを合成してインピーダンスとする演算を行うことを特徴とする請求項1に記載の距離継電装置。
【請求項6】
前記演算部として演算部A,演算部C,演算部B,演算部D,抵抗演算部,リアクタンス演算部,インピーダンス演算部を備え、
前記演算部Aでの演算は、前記電圧瞬時値v3と前記電流瞬時値i3とを乗算して計算値1とし、前記電圧瞬時値v6と前記電流瞬時値i0とを乗算して計算値2とし、前記電圧瞬時値v0と前記電流瞬時値i6とを乗算して計算値3とし、前記計算値2と前記計算値3との加算平均値を求め、前記計算値1から前記加算平均値を減算する演算とし、
前記演算部Cでの演算は、前記電圧瞬時値v3と前記電流瞬時値i0とを乗算して計算値6とし、前記電圧瞬時値v0と前記電流瞬時値i3とを乗算して計算値7とし、前記計算値6から前記計算値7を減算する演算とし、
前記演算部Bでの演算は、前記電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、前記電流瞬時値i0と前記電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、前記計算値4から前記計算値5減算する演算とし、
前記演算部Dでの演算は、前記電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、前記電流瞬時値i0と前記電流瞬時値i6との加算平均値を2乗して計算値8とし、前記計算値4から前記計算値8を減算して平方根を求め、当該平方根を前記電流瞬時値i3で除算する演算とし、
前記抵抗演算部での演算は、前記演算部Aの演算結果を前記演算部Bの演算結果で除算して抵抗成分とする演算を行い、
前記リアクタンス演算部での演算は、前記演算部Cの演算結果を前記演算部Bの演算結果で除算し、当該除算結果に前記演算部Dの演算結果を乗算してリアクタンス成分とする演算を行い、
前記インピーダンス演算部での演算は、前記抵抗演算部の演算結果と前記リアクタンス演算部の演算結果とを合成してインピーダンスとする演算を行うことを特徴とする請求項1に記載の距離継電装置。
【請求項1】
電力系統の電圧,電流の瞬時値を記憶するメモリ部と、前記メモリ部から所定時期についてデータ抽出を行う抽出部と、前記抽出部が抽出した瞬時値データについて所定の演算を行う複数の演算部と、前記演算部から最終的に出力する演算結果が所定しきい値の範囲内にあった場合に保護動作信号を出力する判定部とを備えて、
前記抽出部での抽出はある時点を基準時点とし、当該基準時点の電圧瞬時値v0と電流瞬時値i0、前記基準時点から電力系統の定格周波数の電気角で90°前の時点における電圧瞬時値v3と電流瞬時値i3、前記基準時点から電力系統の定格周波数の電気角で180°前の時点における電圧瞬時値v6と電流瞬時値i6とを抽出し、前記演算部では複数の演算部により前記瞬時値データから異なる2つの実効値演算結果の差分を算出して電力系統の周波数変動を補正する演算を行うことを特徴とする距離継電装置。
【請求項2】
前記演算部として演算部A,演算部B,抵抗演算部を備え、
前記演算部Aでの演算は、前記電圧瞬時値v3と前記電流瞬時値i3とを乗算して計算値1とし、前記電圧瞬時値v6と前記電流瞬時値i0とを乗算して計算値2とし、前記電圧瞬時値v0と前記電流瞬時値i6とを乗算して計算値3とし、前記計算値2と前記計算値3との加算平均値を求め、前記計算値1から前記加算平均値を減算する演算とし、
前記演算部Bでの演算は、前記電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、前記電流瞬時値i0と前記電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、前記計算値4から前記計算値5減算する演算とし、
前記抵抗演算部での演算は、前記演算部Aの演算結果を前記演算部Bの演算結果で除算して抵抗成分とする演算を行うことを特徴とする請求項1に記載の距離継電装置。
【請求項3】
前記演算部として演算部C,演算部B,リアクタンス演算部を備え、
前記演算部Cでの演算は、前記電圧瞬時値v3と前記電流瞬時値i0とを乗算して計算値6とし、前記電圧瞬時値v0と前記電流瞬時値i3とを乗算して計算値7とし、前記計算値6から前記計算値7を減算する演算とし、
前記演算部Bでの演算は、前記電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、前記電流瞬時値i0と前記電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、前記計算値4から前記計算値5減算する演算とし、
前記リアクタンス演算部での演算は、前記演算部Cの演算結果を前記演算部Bの演算結果で除算してリアクタンス成分とする演算を行うことを特徴とする請求項1に記載の距離継電装置。
【請求項4】
前記演算部として演算部C,演算部B,演算部D,リアクタンス演算部を備え、
前記演算部Cでの演算は、前記電圧瞬時値v3と前記電流瞬時値i0とを乗算して計算値6とし、前記電圧瞬時値v0と前記電流瞬時値i3とを乗算して計算値7とし、前記計算値6から前記計算値7を減算する演算とし、
前記演算部Bでの演算は、前記電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、前記電流瞬時値i0と前記電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、前記計算値4から前記計算値5減算する演算とし、
前記演算部Dでの演算は、前記電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、前記電流瞬時値i0と前記電流瞬時値i6との加算平均値を2乗して計算値8とし、前記計算値4から前記計算値8を減算して平方根を求め、当該平方根を前記電流瞬時値i3で除算する演算とし、
前記リアクタンス演算部での演算は、前記演算部Cの演算結果を前記演算部Bの演算結果で除算し、当該除算結果に前記演算部Dの演算結果を乗算してリアクタンス成分とする演算を行うことを特徴とする請求項1に記載の距離継電装置。
【請求項5】
前記演算部として演算部A,演算部C,演算部B,抵抗演算部,リアクタンス演算部,インピーダンス演算部を備え、
前記演算部Aでの演算は、前記電圧瞬時値v3と前記電流瞬時値i3とを乗算して計算値1とし、前記電圧瞬時値v6と前記電流瞬時値i0とを乗算して計算値2とし、前記電圧瞬時値v0と前記電流瞬時値i6とを乗算して計算値3とし、前記計算値2と前記計算値3との加算平均値を求め、前記計算値1から前記加算平均値を減算する演算とし、
前記演算部Cでの演算は、前記電圧瞬時値v3と前記電流瞬時値i0とを乗算して計算値6とし、前記電圧瞬時値v0と前記電流瞬時値i3とを乗算して計算値7とし、前記計算値6から前記計算値7を減算する演算とし、
前記演算部Bでの演算は、前記電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、前記電流瞬時値i0と前記電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、前記計算値4から前記計算値5減算する演算とし、
前記抵抗演算部での演算は、前記演算部Aの演算結果を前記演算部Bの演算結果で除算して抵抗成分とする演算を行い、
前記リアクタンス演算部での演算は、前記演算部Cの演算結果を前記演算部Bの演算結果で除算してリアクタンス成分とする演算を行い、
前記インピーダンス演算部での演算は、前記抵抗演算部の演算結果と前記リアクタンス演算部の演算結果とを合成してインピーダンスとする演算を行うことを特徴とする請求項1に記載の距離継電装置。
【請求項6】
前記演算部として演算部A,演算部C,演算部B,演算部D,抵抗演算部,リアクタンス演算部,インピーダンス演算部を備え、
前記演算部Aでの演算は、前記電圧瞬時値v3と前記電流瞬時値i3とを乗算して計算値1とし、前記電圧瞬時値v6と前記電流瞬時値i0とを乗算して計算値2とし、前記電圧瞬時値v0と前記電流瞬時値i6とを乗算して計算値3とし、前記計算値2と前記計算値3との加算平均値を求め、前記計算値1から前記加算平均値を減算する演算とし、
前記演算部Cでの演算は、前記電圧瞬時値v3と前記電流瞬時値i0とを乗算して計算値6とし、前記電圧瞬時値v0と前記電流瞬時値i3とを乗算して計算値7とし、前記計算値6から前記計算値7を減算する演算とし、
前記演算部Bでの演算は、前記電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、前記電流瞬時値i0と前記電流瞬時値i6とを乗算して計算値5とし、前記計算値4から前記計算値5減算する演算とし、
前記演算部Dでの演算は、前記電流瞬時値i3を2乗して計算値4とし、前記電流瞬時値i0と前記電流瞬時値i6との加算平均値を2乗して計算値8とし、前記計算値4から前記計算値8を減算して平方根を求め、当該平方根を前記電流瞬時値i3で除算する演算とし、
前記抵抗演算部での演算は、前記演算部Aの演算結果を前記演算部Bの演算結果で除算して抵抗成分とする演算を行い、
前記リアクタンス演算部での演算は、前記演算部Cの演算結果を前記演算部Bの演算結果で除算し、当該除算結果に前記演算部Dの演算結果を乗算してリアクタンス成分とする演算を行い、
前記インピーダンス演算部での演算は、前記抵抗演算部の演算結果と前記リアクタンス演算部の演算結果とを合成してインピーダンスとする演算を行うことを特徴とする請求項1に記載の距離継電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−92757(P2008−92757A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273901(P2006−273901)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000002842)株式会社高岳製作所 (72)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000002842)株式会社高岳製作所 (72)
【Fターム(参考)】
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