説明

路面の水検出方法およびその装置

【課題】 従来のような電極を路面に一部露出させ、該電極間の電気抵抗が水によって変化することで水の有無を検出するものにあっては、電極の破損および故障や電極面の汚れによる測定精度の低下が問題となり、また、路面上に一部が露出していることから設置路面と電極が設けられた収容体との間に隙間が生じ易く車両の走行による振動等によって前記隙間が大きくなって路面舗装を定期的に実行しなければならないといった問題があった。
【解決手段】 路面を透過した水が浸入し、該浸入した水を排出する開口部が形成された導波管を透水性舗装路に埋設し、該導波管内に送信したマイクロ波の減衰を基に水の有無や量の判定を行うようにしたことを特徴とする路面の水検出方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透水性舗装路に埋設し、該透水性舗装路に降った雨や雪あるいは路面凍結による路面上の水の有無あるいは水の量を測定する路面の水検出方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における路面の水検出を行う装置としては、例えば、特開2002−156349、特開2003−155704に開示されている発明のように、路面にセンサとしての電極を所望間隔隔てて一部を露出させた状態で埋設し、この電極間に電圧を印加し雨や雪、凍結による水分によって前記電極間の電気抵抗の変化を測定し、該電気抵抗が変化することで水や塩水の有無を検出するものであった。
【特許文献1】特開2002−156349
【特許文献2】特開2003−155704
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記した従来例のような電極を路面に一部を露出させ、該電極間の電気抵抗が水によって変化することで水の有無を検出するものにあっては、電極の破損および故障や電極面の汚れによる測定精度低下が問題となり、また、路面上に一部が露出していることから設置路面と電極が設けられた収容体との間に隙間が生じ易く車両の走行による振動等によって前記隙間が大きくなって路面舗装を定期的に実行しなければならないといった問題があった。
【0004】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、水分を検出する装置である導波管を透水性舗装路に埋設して、かつ、マイクロ波の減衰を基にして水(塩水を含む)の有無あるいは量を検出するようにしたので、従来のようなセンサの破損や汚染の影響を受けることがなく、また、センサ部の路面の定期的な修繕の必要がない路面の水検出方法およびその装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の路面の水検出方法は前記した問題点を解決せんとするもので、請求項1の手段は、路面を透過した水が浸入し、該浸入した水を排出する開口部が形成された導波管を透水性舗装路に埋設し、該導波管内に送信したマイクロ波の減衰を基に水の有無あるいは量の判定を行うようにしたことを特徴とする。
【0006】
請求項2の手段は、前記した請求項1において、前記導波管内に導波管に浸入した水が透過する多孔質導水路を設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項3の手段は、前記した請求項1または2において、前記導波管の開口部が、送信するマイクロ波の波長の1/10以下のメッシュ幅を備えた金属メッシュであることを特徴とする。
【0008】
請求項4の手段は、前記した請求項2または3において、前記多孔質導水路が、設置場所の透水性舗装路を形成する骨材であることを特徴とする。
【0009】
本発明の路面の水検出装置に係る請求項5の手段は、水の浸入と排出を行う開口部が形成された導波管と、該導波管内に所定周波数のマイクロ波を送信する電波送信手段と、前記導波管内を透過あるいは反射したマイクロ波を受信する電波受信手段と、前記電波送信手段からの送信強度と前記電波受信手段の受信強度を基に水の有無や量を判定する演算手段とから構成したものである。
【0010】
請求項6の手段は、前記した請求項5において、前記導波管内に導波管に浸入した水が透過する多孔質導水路を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項7の手段は、前記した請求項5または6において、前記導波管の開口部が、送信するマイクロ波の波長の1/10以下のメッシュ幅を備えた金属メッシュで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は前記したように、路面を透過した水(塩水を含む)が浸入し、該浸入した水を排出する開口部が形成された導波管を透水性舗装路に埋設し、該導波管内に送信したマイクロ波の減衰を基に水の有無や量の判定を行うようにしたので、装置が路面上に露出することがない。従って、センサの破損や汚染の影響を受けることがなく、また、路面を定期的に修繕する必要がないものである。
【0013】
また、導波管内に導波管に浸入した水が透過する多孔質導水路を設けたことにより、透水性舗装路と略同一の透水性を導波管内に形成することができ、路面の水の状態を正確に検出できるものである。
【0014】
また、導波管内に送信するマイクロ波の波長の1/10以下のメッシュ幅を備えた金属メッシュを導波管に設けたことにより、路面から浸入する水を導波管内に良好に浸入させることができると共に、マイクロ波が導波管の外に漏れることがないため精度の高い水の検出を行うことが可能である。
【0015】
また、多孔質導水路を透水性舗装路を構成する材料と同じ骨材で形成したことにより、常に透水性舗装路面の状態と同じ透水性能を有する状態で観測することが可能であり、従って、水や水量に対するより精度の高い検出を実行することが可能である等の効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、透水性舗装路の路面から浸入する水を舗装路中に埋設された導波管内に導き、該導波管内において送信されたマイクロ波による電波の減衰を測定することで水の有無や量を検出する。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明に係る路面の水検出装置の一実施例を図面と共に説明する。
図1、図2において、1は全体形状が一端が閉じられた直方体の金属板で形成され、図示しない透水性舗装路の透水性舗装路部分の表層から5〜10cmの位置に埋設された導波管にして、直方体の上面と下面の一部に開口部11を形成し、この導波管1に送信するマイクロ波の波長の1/10以下のメッシュ幅に形成された金属メッシュ12が取付けられている。また、導波管1内には設置場所と同じ骨材(例えば、細粒の自然石)とバインダー(例えば、セメント)を含む設置路面と同等の透水性を有する多孔質導水路13が導波管1内に収容されている。
【0018】
なお、前記透水性路面から流れ込む水を通過させ、かつ、排出するための前記金属メッシュ12に代えて、導波管1の上下面にマイクロ波の波長の1/10以下の多数の小孔を金属板に開けた開口部11によって形成してもよい。また、導波管1の形状は直方体に限定されるものではなく、電波の減衰量を判別できる形状のものであれば、如何なる形状のものであってもよい。
【0019】
2は例えば、2.45GHzの発振周波数の電波を生成する発信器21と、前記導波管1の一側面に取付けられ増幅された前記発信器21よりの電波が印加される送信器22とからなる電波送信器手段、3は前記送信器22と同一面に取付けられ前記導波管1を透過し、終端の金属面で反射した前記電波を受信する受信器31と、該受信器31で受信した電波を検波する検波器32とにより構成された電波受信手段である。
【0020】
なお、図示した受信器31は、送信器22と同一面に取付けられ送信器31より放射される電波が前記多孔質導水路13を通過し、導波管1の終端で反射した電波を受信するようにしたものであるが、受信器31は送信器22が取付けられた面と対向する終端に形成した非金属面に取付け、送信器22より放射され多孔質導水路13を通過した電波を受信器31で受信するようにしてもよい。
【0021】
4は前記電波送信手段2の送信強度に対する電波受信手段3の受信強度の比を電波の減衰量として算出する送受信変化量算出手段、5は基準となる水分を含まない多孔質導水路13と水分を含む状態の多孔質導水路13による電波の減衰量を予め多数記憶する電波減衰量基準記憶手段である。
【0022】
なお、電波減衰量基準記憶手段5における記憶の形態は、前記した送信と受信の比率による方式に限定されるものではなく、送信信号が常に一定であれば受信信号の強度と予め記憶した受信波の強度値とを比較することも可能であり、要は、導波管内の水に起因する誘電損失による電波の減衰の変化を判定できるものであればよい。
【0023】
6は前記送受信変化量算出手段4と電波減衰量基準記憶手段5との判定基準を基に路面上における水の有無あるいは量を判定する路面状態判別手段である。なお、前記した水の有無の信号と図示しない公知の路面温度センサの温度信号とにより、路面状態判別手段6に凍結予測機能等を付加することも可能である。
【0024】
7は前記路面状態判別手段6の判別結果を公知の各種融雪装置の制御信号あるいは路面状態監視信号として道路管理事務所等の中央装置に図示しない適宜な通信手段を介して送る出力手段、8は前記路面の水の有無あるいは量を判定するためのプログラムを記憶している制御プログラム記憶手段、9は前記制御プログラム記憶手段8のプログラムと図示しないキースイッチにより設定されたサンプリング周期や発振周波数等の設定値に従い図3に示すフローチャートの動作を行うCPUである。
【0025】
次に、本発明の導波管を用いた電波吸収体の計測原理について説明する。例えば、「2001年6月29日 日刊工業新聞社発行」「橋本 修 著」の「SCIENCE AND TECHNOLOGY 電波吸収体のはなし」に記載された方形導波管を用いて複素誘電率を測定する場合を例に説明する。図4に示すように電界方向の壁面の上下方向にはっきり決まっているTE10モードの電波が伝播している方形導波管内に、金属で短絡した状態で試料(本発明の多孔質導水路13に該当)を挿入すると、試料の境界面において反射がおこり導波管内に定在波が生じる。この時、方形導波管内は自由空間と同じように伝送線理論を用いて表現することができ、試料側を見込んだ入力インピーダンスを理論的
【数1】

に計算できる。
【0026】
また、方形導波管内の電界強度を測定できる定在波測定器を用いて、管内の電圧定在波比ρ(=Vmax /Vmin )や試料前面から電圧最小点までの距離lmin
を測定することにより、資料側を見込んだ入力インピーダンス
【数2】

も測定できる。そして、これらの測定結果と計算結果を等しくしておくことにより、複素誘電率が測定できることになる。
【数3】

【0027】
そして、以上の測定において大事なことは、インピーダンスが複素数ということである。そのため、数式1は1つであるが、この式の両辺が等しくなるためには、この数式の実部と虚部がともに等しくなる必要があり、実際には2つの数式があることと同じである。このことから、もし測定試料が誘電性材料である場合
【数4】

には、前記式1を用いて未知数としての複素比誘電率の実部と虚部の2つが決定できることとなる。
【数5】

【0028】
このような原理からして、複素誘電率と量(多孔質導水路13の厚みに相当)によって特性インピーダンスが変化、すなわち、多孔質導水路13に対する水の有無に起因する複素誘電率とその量によって特性インピーダンスが変化することにより電波の減衰量が変化するものである。
【0029】
なお、水の複素誘電率が2.45GHz、0℃において約82−j21に対して10%の塩水では約58−j13程度になるため、水と凍結防止剤等を含む塩水とを識別することが可能となる。
【0030】
次に、図3のフローチャートに基づいて動作を説明する。
先ず、装置のスタートスイッチ(図示せず)を操作すると計時が開始される(ステップS1)。次に、予め設定した時間(計時周期、例えば5分)が経過したか否かの判定を行う(ステップS2)。そして、ステップS2において時間が経過したと判定すると、電波送信手段2を動作させて送信器22より導波管1に対してマイクロ波を送信(ステップS4)すると共に電波受信手段3の受信器31でマイクロ波の反射波を受信する(ステップS4)。
【0031】
次に、電波送信手段2の送信器22より発射された電波に対する電波受信手段3の受信器31で受信した電波の減衰量を送受信変化量算出手段4で算出する(ステップS5)。なお、この算出した減衰量を記憶すると共に複数回の算出で得た減衰量の平均値を算出するようにしてもよい(図3の鎖線で示す)。
【0032】
次に、前記算出した減衰量と電波減衰量基準記憶手段5に記憶してある基準値とを路面状態判別手段6において比較する(ステップS6)。なお、減衰量を表す基準値の形態は、前記した送信と受信の強度比に限定されるものではなく、種々の形態を採用することができる。
【0033】
次に、ステップS6の比較に基づいて水の有無あるいは量の判定を路面状態判別手段6によって行い、路面状態監視信号として出力手段7を介して出力する(ステップS7)。さらに、装置に対するオフ操作が行われたか否かを監視し、オフ操作が行われない場合にはステップS2に戻って前記した動作を繰り返し行う(ステップS8)。
【0034】
なお、前記した実施例においては、透水性舗装路と同じ状態で水の計測を行うために導波管内に骨材を入れた多孔質導水路を形成したが、原理で説明した導波管内の試料は水や塩水だけでもよい。周知のとおり、導波管内に水分が存在する場合には、試料の形状に係わらず水分子による電波吸収が起こるため電波の減衰が生じる。そこで、導波管に浸入する水の量に対して排出する量が少ない開口部を導波管に設けることにより、多孔質導水路を設けた場合と同じ保水性を導波管内に確保することができるため同様な計測を実行することが可能となる。
【0035】
また、導波管を用いて水の有無あるいは量を計測する本発明にあっては、冬季等の積雪や凍結の有無を判定するために、定期的に導波管をマイクロ波によって加熱し、路面上の雪や氷を溶かしてから判定するようにすることも可能である。
また、水が塩水の場合には、前記のように誘電損失に起因する複素誘電率が異なるため、複数の周波数に対する判定基準を予め用意することで塩水の有無や量を検出することができる。さらに、水(または塩水)の量の増加に対して電波の減衰量は比例的に増加するため、水量との相関テーブル等を用意し、このテーブルを基準にして路面の濡れの強度を予測する比較基準を設定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の路面の水検出装置を示すブロック図である。
【図2】同上に使用する導波管の具体例を示す斜視図である。
【図3】動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】方形導波管定在波方の考え方を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 導波管
12 金属メッシュ
13 多孔質導水路
2 電波送信手段
2b 送信器
3 電波受信手段
31 受信器
4 送受信変化量算出手段
5 電波減衰量基準記憶手段
6 路面状態判別手段
7 出力手段
8 制御プログラム記憶手段
9 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面を透過した水が浸入し、該浸入した水を排出する開口部が形成された導波管を透水性舗装路に埋設し、該導波管内に送信したマイクロ波の減衰を基に水の有無あるいは量の判定を行うようにしたことを特徴とする路面の水検出方法。
【請求項2】
前記導波管内に導波管に浸入した水が透過する多孔質導水路を設けたことを特徴とする請求項1記載の路面の水検出方法。
【請求項3】
前記導波管の開口部が、送信するマイクロ波の波長の1/10以下のメッシュ幅を備えた金属メッシュであることを特徴とする請求項1または2記載の路面の水検出方法。
【請求項4】
前記多孔質導水路が、設置場所の透水性舗装路を形成する骨材であることを特徴とする請求項2または3記載の路面の水検出方法。
【請求項5】
水の浸入と排出を行う開口部が形成された導波管と、
該導波管内に所定周波数のマイクロ波を送信する電波送信手段と、
前記導波管内を透過あるいは反射したマイクロ波を受信する電波受信手段と、前記電波送信手段からの送信強度と前記電波受信手段の受信強度を基に水の有無や量を判定する演算手段と、
から構成したしたことを特徴とする路面の水検出装置。
【請求項6】
前記導波管内に導波管に浸入した水が透過する多孔質導水路を設けたことを特徴とする請求項5記載の路面の水検出装置。
【請求項7】
前記導波管の開口部が、送信するマイクロ波の波長の1/10以下のメッシュ幅を備えた金属メッシュで構成されていることを特徴とする請求項5または6記載の路面の水検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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