説明

路面融雪構造

【課題】 自然エネルギーのみを利用する路面融雪手段であって、特に簡易な構造で設置工事が容易で、且つランニングコストを必要としない路面構造を提供する。
【解決手段】 所定の舗装体3で舗装路面を構築する際に、舗装路面の直下の地中部分が地表温度の影響を受けないように相応の範囲で断熱層部4を形成すると共に、前記断熱層部4に透孔41を適宜間隔毎に穿設し、前記透孔内に伝熱部5を組み込むと共に、伝熱部5の表裏に伝熱部と熱伝導可能に組み込む受放熱部6,7を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面融雪構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
路面融雪手段として、その熱源を地熱に求める手段は従前より種々提案され、実施されている。例えば地中と路面との間にヒートパイプを埋設し、地中部分で蒸発(吸熱)させ路面埋設部分で凝縮(放熱)するように作動液を循環させて路面融雪を実施している(特許文献1:特開平8−184005号公報)。
【0003】
また地中を蓄熱部として利用する手段として、路面下の地中に蓄熱型伝熱路を形成し、路面上の熱を地下に放熱して地熱の昇温に使用し、地熱の前記伝熱路による熱移動で路面融雪を行うことや(特許文献2:特開2008−31813号公報)、地中に蓄熱槽を形成し、不凍液を循環させて、地中の蓄熱槽配管で温めた不凍液を、舗装体内の循環管路に通して舗装体を温めて路面融雪を行う手段などが提案されている(特許文献3:特開2008−304141号公報)。
【0004】
尚舗装体層内に電熱線や温水循環管等の発熱体を埋設し、電気や燃料などの外部エネルギーを使用して、舗装体を直接加熱する融雪手段においては、舗装体の熱が地中に逃散しないように、路面下に断熱層を形成することは知られている(特許文献4:特開平10−152808号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−184005号公報。
【特許文献2】特開2008−31813号公報。
【特許文献3】特開2008−304141号公報。
【特許文献4】特開平10−152808号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した地熱利用を路面融雪装置における、ヒートポンプを使用する手段は、現実的な融雪を実現するために、深さ10〜20mの穴掘削を行い、このボーリング孔にヒートパイプを埋設し、且つ作動液が漏洩すると機能しなくなるので、ヒートパイプ自体を堅牢にする必要があり、その建設コストが非常に大きくなってしまう。
【0007】
また特許文献2に開示されているように、単に蓄熱型伝熱路を構築する手段では、伝熱路以外の箇所の地中温度が、路面温度の影響を受けてしまい、伝熱路自体以外の蓄熱効果を期待できない。
【0008】
更に特許文献3に開示されているように、地中の蓄熱部分が他の地中部分(路面温度の影響を受ける箇所)の影響を受けることなく、地中部分に断熱層で囲繞した蓄熱槽を構築する手段は、設置工事が大規模になってしまい、また不凍液の循環のためのランニングコストも必要となる。
【0009】
そこで本発明は、簡易な構造で設置工事が容易で、且つランニングコストを必要としない新規な路面融雪構造を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る路面融雪構造は、所定の舗装体で舗装路面を構築する際に、舗装路面の直下の地中部分が地表温度の影響を受けないように相応の範囲で断熱層部を形成すると共に、前記断熱層部に透孔を適宜間隔毎に穿設し、前記透孔内に伝熱部を組み込むと共に、伝熱部の表裏に伝熱部と熱伝導可能に組み込む受放熱部を設けてなることを特徴とするものである。
【0011】
而して、舗装路面下の断熱層部の地中(地盤)は、表層部分である舗装体の温度の影響を受けない範囲で断熱層部が形成されているので(必要に応じて鉛直方向に区切る断熱層で補完するようにしても良い)、断熱層部直下においては、気温の影響を受けない地下数メートル(5〜10m)と同様の地中温度(平均的に15℃程度)となる。従って、伝熱部を介在して、断熱層部直下の地熱が舗装体に伝達され、舗装体の温度を高めて降雪時の路面融雪が実現する。
【0012】
また本発明(請求項2)に係る路面融雪構造は、前記の路面融雪構造において特に、表側受放熱部が、断熱層部の表面に設けた受放熱板と、舗装体内に配置した受放熱金属網で形成してなるもので、裏面受放熱部との熱伝導に際して、舗装体への熱伝導効率を高めるものである。
【0013】
更に本発明(請求項3)に係る路面融雪構造は、裏側受放熱部が、断熱層部の裏面に設けた受放熱板、又は地中に打設した受放熱杭で形成してなるもので、表側受放熱部との熱伝導に際して、地盤中への熱伝導効率を高めるものである。
【0014】
また本発明(請求項4)に係る路面融雪構造は、特に伝熱部が、降雪気温以上で伝熱遮断を行う熱動作部を備えてなるもので、降雪気温以上(4〜6℃程度)においては、伝熱部の熱伝導を遮断することで、気温によって平均的な地中温度(15℃程度)より低くなっている舗装体に対して、地熱の伝導に伴う放熱を阻止することで、地中温度の低下を防止して、融雪効率を高める。
【0015】
また本発明(請求項5)に係る路面融雪構造は、前記の熱動作部を備えた伝熱部において、更に伝熱部が、所定の温暖気温以上で熱伝導を行う、熱動作部を備えてなるもので、気温(舗装体温度)が例えば平均的な地中温度15℃以上となると、伝熱部が熱遮断から熱伝導の状態に移行させて、舗装体の熱を地中に放熱して蓄熱を行う。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記のとおりで、路面下に断熱層部を形成して、路面下の地盤温度が外気の影響を受けないようにして、所定の深度と同様な温度を維持させることで、簡易に地熱を取り出して舗装体の温度上昇に利用できるようにし、簡易な構成で且つランニングコストを必要とせずに路面融雪を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の説明図(全体断面図)。
【図2】同伝熱部の断面図。
【図3】同伝熱部の熱動作部の要部説明図。
【図4】同伝熱部の熱動作部の動作説明図。
【図5】同の別例の断面図(熱動作機構有り)。
【図6】同の別例の断面図(熱動作機構なし)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態に示した路面融雪構造は、基本的に通常の舗装と同様に、地盤1の上面に必要に応じて砕石2を敷設し、アスファルト等の舗装体3で所定の舗装を施すもので、本発明は、前記の舗装面を構築する際に、融雪構造も同時に構築するものである。
【0019】
融雪構造は、断熱層部4、伝熱部5、表裏の受放熱部6,7を備えたものである。断熱層部4は、所定の厚さの発泡スチロールなどのような堅牢さと断熱性を備えたものである。
【0020】
伝熱部5は、後述する断熱層部4に穿設された透孔41に嵌合できる大きさの容器部51内に、固定伝熱体(熱伝導体)52と作動伝熱体53を組み入れると共に、作動伝熱体53に、設定温度を基準として熱伝導及び伝導遮断を行う熱動作部54を組み込んだものである。
【0021】
具体的には固定伝熱体52は、半円柱形状で、表側(舗装体側)で露出して、後述する表側受放熱部6と当接するように、且つ裏側受放熱部7とは熱遮断されているように容器部51に組み入れているもので、半円柱形状の平側面の一方(中心軸の左右の一方)が低温時熱伝導面Aとして作用し、他方が高温時熱伝導面Bとして作用するものである。
【0022】
作動伝熱体53は、固定伝熱体52の対応する半円柱形状であるが、容器部51の中心に立設した軸部(断熱処理構造)55に対して適宜な軸受け部56を介して僅かな角度分だけ回動可能に設けたものである。特に上面は、表側(舗装体側)において表側受放熱部6と熱遮断されるようにし、下面は裏側(地面側)の裏側受放熱部7と当接するようしており、低温時熱伝導面Aと対面する箇所が低温時熱伝導面Cとして、他方の高温時熱伝導面Bと対面する箇所を高温時熱伝導面Dとするものである。
【0023】
熱動作部54は、軸部55にその基部を固定したバイメタルで構成され、先部を高温時熱伝導面Dの一部に連結しているもので、後述するように所定の温度で所定撓み動作がなされるように設計したバイメタルを採用するものである。また前記のバイメタルの動作範囲を考慮して、固定伝熱体52の高温時熱伝熱面Bの一部に抉り部521を形成しておく。
【0024】
表側受放熱部6は、適宜大きさの受放熱板61と、舗装体3内に配置される受放熱金属網62からなる。
【0025】
裏側受放熱部7は、適宜大きさの受放熱板71と、前記受放熱板71に溶着された受放熱杭72からなる。特に受放熱杭72は、地盤1との接触面積が大きくなるように、平板杭や平板スパイラル杭等が好ましい。また前記受放熱杭72の長さは、当該地方の降雪量に対応して定めるもので、寒冷地ほど長くして地中深く(数メートル)打設する。
【0026】
そして前記部材を使用して路面融雪構造を構築するには、地盤1上の砕石2の上に断熱層部4を敷設する。前記の断熱層部4は、融雪対象範囲より広くし、また必要に応じて断熱層部4の外周縁で鉛直方向に区切る断熱層で補完するようにしても良い。前記の断熱層部には適宜間隔で透孔41を穿設する。この透孔41に対応する箇所には、予め裏側受放熱部7を設置する。
【0027】
伝熱部5を前記透孔41内に嵌合装着し、伝熱部5の作動伝熱体53と裏側受放熱部7の受放熱板71とを接触状態とし、伝熱部5の表側(上側)に表側受放熱部6の受放熱板61を配置して、伝熱部5の固定伝熱体52と前記受放熱板61とを接触状態とする。
【0028】
更に断熱層部4の上面に受放熱金属網61を敷き、その上にアスファルトなどの舗装体3を適宜厚さ敷設して、融雪路面を構築するものである。
【0029】
従って上記の融雪路面においては、断熱層部4によって、断熱層部4より下方の地中(地盤)1は、表層部分である舗装体3の温度の影響を遮断しているので、通常時には一般に外気温の影響を受けない深さ(5〜10m)の地中と同程度の温度(約15℃)が維持されることになる。
【0030】
そこで気温が低下するとそれに伴って舗装体3の温度も低下する。舗装体3の温度は、表側受放熱部6を介して、伝熱部5内の雰囲気温度も低下させ、熱動作部(バイメタル)54が撓曲し、作動伝熱体53を回動させ、固定伝熱体52の低温時伝熱面Aと作動伝熱体53の低温時伝熱面Cとを接触させることになる。
【0031】
前記の伝熱面ACの接触によって、地中熱が伝熱部5を介して舗装体3に伝えられることになり、舗装体3を外気温より昇温させるものである。熱動作部5は、当初地中熱によって一旦は温められ、冷温状態から通常状態に復帰するが、舗装体3の冷温状態が継続することで、伝熱部5が地中熱の舗装体3への流路となるが、外気温が一定以下になると、バイメタルの冷温状態に維持されることなる。
【0032】
従って外気温が低下し舗装体3が低温状態に至ると、熱動作部54によって伝熱部5の熱遮断が解除され、舗装体3に地中熱が供給されることになり、舗装体3を積雪が生じない程度の最低限の温度を維持することによって降雪の融雪を行うものである。
【0033】
また外気温が一定以上(地中温度15℃以上)に達した際に、熱動作部54の動作によって、作動伝熱体53を逆方向に回動させ、固定伝熱体52の高温時伝熱面Bと作動伝熱体53の高温時伝熱面Dとを接触させ、舗装体3が太陽熱で温められて昇温した保有熱を、伝熱部5を介して地中(地盤)1に流し、地中に蓄熱を行うものである。
【0034】
このように降雪が生じ易い気温以下においては、舗装体3を地熱で温めて、降雪を直ちに融雪することで路面積雪が生じないようにしたものである。
【0035】
また本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、裏側受放熱部7は地熱を伝熱部5に伝えることができるものであれば任意の構造とすることができるもので、例えば図5に例示する通り、広範囲に設けた受放熱板61のみで構成するようにしても良い。
【0036】
更に図6で例示するとおり、伝熱部5に熱遮断機能を備えることなく、常時所定の地中温度(約15℃程度)を維持させた地中(地盤)1内と、舗装体3とを熱連結して、舗装体3の温度維持を図るようにしても良い。
【符号の説明】
【0037】
1 地盤
2 砕石
3 舗装体
4 断熱層部
41 透孔
5 伝熱部
51 容器部
52 固定伝熱体
521 抉り部
53 作動伝熱体
54 熱動作部(バイメタル)
55 軸部
56 軸受け部
6 表側受放熱部
61 受放熱板
62 受放熱金属網
7 裏側受放熱部
71 受放熱版
72 受放熱杭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の舗装体で舗装路面を構築する際に、舗装路面の直下の地中部分が地表温度の影響を受けないように相応の範囲で断熱層部を形成すると共に、前記断熱層部に透孔を適宜間隔毎に穿設し、前記透孔内に伝熱部を組み込むと共に、伝熱部の表裏に伝熱部と熱伝導可能に組み込む受放熱部を設けてなることを特徴とする路面融雪構造。
【請求項2】
表側受放熱部が、断熱層部の表面に設けた受放熱板と、舗装体内に配置した受放熱金属網で形成してなる請求項1記載の路面融雪構造。
【請求項3】
裏側受放熱部が、断熱層部の裏面に設けた受放熱板、又は地中に打設した受放熱杭で形成してなる請求項1又は2記載の路面融雪構造。
【請求項4】
伝熱部が、降雪気温以上で伝熱遮断を行う、熱動作部を備えてなる請求項1乃至3記載のいずれかの路面融雪構造。
【請求項5】
伝熱部が、所定の温暖気温以上で熱伝導を行う、熱動作部を備えてなる請求項4記載の路面融雪構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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