説明

踵ホルダー

【課題】X線撮像装置に対する着脱が自在な踵ホルダーを提供する。
【解決手段】踵ホルダー10は、足裏プレート12と踵受け14と補助プレート16を備えている。足裏プレート12は、足30を足裏から支えるプレートであり、足30の踵側において踵受け14に固定的に接続される。補助プレート16は、足30をアキレス腱側から支えるプレートであり、足30の踵側において踵受け14に固定的に接続される。踵受け14は、X線ファンビーム20に対応した特徴的な形状となっている。踵受け14はX線ファンビーム20の広がり角に対応した傾斜面を備えている。また、踵受け14は、足30の踵が載せられる面側において、足30を持ち上げるように凸状に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の踵を支える踵ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
X線や超音波を利用して骨の性状を評価する技術が従来から知られており、例えば、特許文献1には超音波などを利用して骨を評価する骨評価装置が記載されており、特許文献2には超音波を利用して骨密度などを測定する技術が記載されている。
【0003】
骨の性状の評価においては、被検者の腕や足などの様々な部位の骨が測定対象とされる。特許文献1,2には、被検者の足の骨を評価する技術が記載されている。例えば、特許文献1には、2つの測定部を近接させた際に、一方の測定部が踵に接触した段階から載置台がスライド移動を始め、自動的に足の中心線を振動子間中心線に一致させる骨評価装置が記載されている。また、特許文献2には、V字型に形成されたフットプレートのV字の底に穴を設け、測定部位置調整用治具をその穴に組み付けることにより、測定部位を毎回同じ箇所とするフットプレートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−154842号公報
【特許文献2】特開2007−75421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した背景技術に鑑み、本願の発明者は、被検者の踵の骨を評価する際の改良技術について研究開発を重ねてきた。特に、骨の性状を評価する場合に様々な部位の骨が測定対象とされることに鑑み、踵の骨を測定する際に利用される踵に適した測定用の治具について研究開発を重ねてきた。
【0006】
本発明は、その研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、X線撮像装置に対する着脱が自在な踵ホルダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的にかなう好適な踵ホルダーは、X線撮像装置に対する着脱が自在な踵ホルダーであって、被検者の踵を受ける踵受けと、前記被検者の足裏を載せる足裏プレートと、前記被検者の足をアキレス腱側から支える補助プレートと、を有し、前記踵受けは、X線撮像装置から照射されるX線ファンビームの広がり角に対応した傾斜面を備える、ことを特徴とする。
【0008】
望ましい具体例において、前記踵受けの傾斜面は、X線ファンビームの照射方向に沿って且つX線ファンビームの走査方向に沿って形成される、ことを特徴とする。
【0009】
望ましい具体例において、前記踵受けの傾斜面は、エアバリューが計測される照射空間に隣接して形成される、ことを特徴とする。
【0010】
望ましい具体例において、前記踵受けは、被検者の踵と接触する面側において凸状に形成される、ことを特徴とする。
【0011】
望ましい具体例において、前記踵受けは、被検者の踵と接触する部分に踵の形状に応じた窪みを備える、ことを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記足裏プレートは、被検者の足裏と接触する面側において凸状に形成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、X線撮像装置に対する着脱が自在な踵ホルダーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施において好適な踵ホルダー10の斜視図である。
【図2】踵受け14の踵が載せられる面側の形状を説明するための図である。
【図3】足裏プレート12の足裏と接触する面側の形状を説明するための図である。
【図4】踵ホルダーが取り付けられるX線撮像装置100を示す図である。
【図5】X線撮像装置100の踵測定状態を示す図である。
【図6】X線撮像装置の内部構成を示す機能ブロック図である。
【図7】X線検出器列112による検出信号の収集を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の好適な実施形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施において好適な踵ホルダー10の斜視図である。踵ホルダー10は、足裏プレート12と踵受け14と補助プレート16を備えている。なお、図1には、踵ホルダー10によって支えられる被検者の足30と、足30に対して照射されるX線ファンビーム20も示されている。X線ファンビーム20は、図の下側から上側に向かって平面的に末広がり状に照射され、その平面に直交する走査方向(破線の矢印)にスキャン(走査)され、足30を含む領域が撮像される。
【0017】
足裏プレート12は、足30を足裏から支えるプレートであり、例えば、足30のつま先から踵付近まで、足裏を全体的に載せることができる大きさであることが望ましい。また、足裏プレート12は、例えば、足30の踵付近において屈曲された形状であり、足30の踵側において踵受け14に固定的に接続される。
【0018】
補助プレート16は、足30をアキレス腱側から支えるプレートである。補助プレート16は、例えば、足30の踵付近において屈曲された形状であり、足30の踵側において踵受け14に固定的に接続される。
【0019】
足裏プレート12と補助プレート16は、側面から見ておよそV字型となるように、踵受け14に固定される。そして、そのV字型の底の部分となる踵受け14に足30の踵が載せられる。例えば、踵受け14の踵と接触する部分に、踵の形状に応じた窪みなどが形成されてもよい。
【0020】
踵受け14は、X線ファンビーム20に対応した特徴的な形状となっている。例えば、踵受け14は、X線ファンビーム20の広がり角に対応した傾斜面を備えている。足30の踵が載せられる面の裏側がその傾斜面であり、その傾斜面は、X線ファンビーム20の端部22におけるX線の照射方向に沿って、且つ、X線ファンビーム20の走査方向(破線の矢印)に沿って平面状に形成される。こうして、X線ファンビーム20の端部22によりエアバリューが計測される照射空間に隣接して傾斜面が形成され、エアバリューを計測する照射空間が確保されている。さらに、踵受け14は、足30の踵が載せられる面側にも特徴的な形状を備えている。
【0021】
図2は、踵受け14の踵が載せられる面側の形状を説明するための図である。図1を利用して説明したように、X線ファンビーム20は走査方向に沿って走査される。図2は、踵受け14と足30を含む位置に走査された(移動した)X線ファンビームを含む面による断面図である。
【0022】
踵受け14は、足30の踵が載せられる面側において、足30を持ち上げるように凸状に形成される。例えば、図2に示すように、踵受け14の断面が円弧状に形成される。そして、その凸状に形成された面上に足30が載せられる。
【0023】
図1を利用して説明したように、X線ファンビーム20は末広がり状に照射される。そのため、図2に示すように、X線ファンビーム内のX線24が、足30の踵部分において鉛直方向に対して傾いて斜めに照射される。
【0024】
X線24が斜めに照射されるものの、踵受け14が足30を持ち上げるように凸状に形成されているため、X線24が踵受け14を通過せずに足30のみを通過する領域が比較的広く確保される。そのため、仮に、図1に示す踵ホルダー10がX線ファンビーム20に対して少し傾いて取り付けられ、図2に示すX線24に対して踵受け14が少し傾いていたとしても、X線24が踵受け14を通過せずに足30のみを通過する領域を確保することができる。
【0025】
なお、足30には、測定対象である骨32と比較対象となる軟部組織が含まれている。骨32と皮膚34に挟まれた部分が軟部組織である。骨32の骨密度などを測定する際には、骨32に加えて軟部組織も撮像される。
【0026】
図3は、足裏プレート12の足裏と接触する面側の形状を説明するための図である。足裏プレート12についても、足30の足裏が載せられる面側において、足30を持ち上げるように凸状に形成されることが望ましい。例えば、図3(A)に示す足裏プレート12aのように断面が円弧状に形成される。また、図3(B)に示す足裏プレート12bのように円弧状に高さを揃えた複数のフィンが設けられてもよいし、図3(C)に示す足裏プレート12cのように中央部のみが凸状に形成されてもよい。
【0027】
足裏プレート12が足30を持ち上げるように凸状に形成されることにより、図2を利用して説明した踵受け14の場合と同様に、X線24が足裏プレート12を通過せずに足30のみを通過する領域が比較的広く確保される。
【0028】
図4は、踵ホルダー10(図1)が取り付けられるX線撮像装置100を示す図である。X線撮像装置100は、踵以外の部位の骨を撮像することができる。例えば、被検者の前腕の骨が撮像される。図4は、X線撮像装置100の前腕測定状態を示しており、厚さ方向(Z軸方向)が上下方向(鉛直方向)となるようにX線撮像装置100が設置される。そして、被検者の前腕がX線撮像装置100の測定エリア110に挿入され、測定エリア110内で下から上へ向かって形成されるX線ファンビーム20(図1)がX軸方向に沿ってスキャンされて前腕が撮像される。
【0029】
図5は、X線撮像装置100の踵測定状態を示す図である。踵の測定において、X線撮像装置100は、図5(A)(B)に示すように、厚さ方向(Z軸方向)が水平方向となるように配置され、測定エリア110(図4)が上向きにされる。そして、その測定エリア110内に踵ホルダー10が取り付けられる。さらに、被検者の足30が踵ホルダー10に支えられ、測定エリア110内でZ軸の負側から正側へ向かって形成されるX線ファンビーム20(図1)がX軸方向に沿ってスキャンされて踵が撮像される。
【0030】
図6は、X線撮像装置100(図5)の内部構成を示す機能ブロック図である。X線発生器111は、被検者の足30に対してX線ファンビーム20を照射する。X線ファンビーム20は、X線発生器111側を頂点としてX線検出器列112側へ向かって徐々に扇状に広がる2次元的なファンビームである。
【0031】
X線検出器列112は、1次元的に配列された複数のX線検出器によって構成され、X線発生器111から発生して足30を透過したX線ファンビーム20を検出する。X線検出器列112によって検出されたX線ファンビーム20に関する検出信号は、X線画像形成部120へ出力される。
【0032】
X線画像形成部120は、X線ファンビーム20の検出信号に基づいて、足30内の骨などを映し出したX線画像の画像データを形成する。画像データの形成には、周知の技術が利用される。そして、X線画像形成部120において形成された画像データに対応するX線画像は表示部122に表示される。なお、X線撮像装置内の各部は、制御部130によって制御される。
【0033】
図7は、X線検出器列112による検出信号の収集を説明するための図である。X線検出器列112は、直線状に配列された複数のX線検出器(X線検出素子)で構成されている。例えば、1チャンネル(ch)から1000チャンネル(ch)までの1000個のX線検出器でX線検出器列112が形成されている。
【0034】
足30の踵を測定する際には、図5に示したように、足30が踵ホルダー10に支えられ、足30を間に挟んで対向して配置されたX線発生器111とX線検出器列112が、互いの相対的な位置関係を固定しつつ、図5に示すX軸方向に沿って移動する(走査される)。
【0035】
その移動(走査)の過程において、図7に示すように、X軸方向に並ぶ複数のラインに亘って、例えば1ラインから1000ラインまで、各ラインごとに複数のX線検出器の各々によりX線カウント数が計数される。そして、Y軸方向に配列された例えば1000個のX線検出器により、X軸方向の例えば1ラインから1000ラインまで、X線カウント数が2次元的に計数される。こうして2次元的に計数されたX線カウント数に基づいて2次元のX線画像50が形成される。
【0036】
X線画像50内には、測定対象となる足30に加えて、足30を支える踵ホルダー10の画像も含まれている。X線画像50内の領域52は、X線が足30や踵ホルダー10を透過せず空気のみを透過して計数される領域、つまりエアバリューが計測される領域である。図1を利用して説明したように、踵ホルダー10の踵受け14は、X線ファンビーム20の広がり角に対応した傾斜面を備えており、エアバリューを計測する照射空間が確保されている。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【符号の説明】
【0038】
10 踵ホルダー、12 足裏プレート、14 踵受け、16 補助プレート、100 X線撮像装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線撮像装置に対する着脱が自在な踵ホルダーであって、
被検者の踵を受ける踵受けと、
前記被検者の足裏を載せる足裏プレートと、
前記被検者の足をアキレス腱側から支える補助プレートと、
を有し、
前記踵受けは、X線撮像装置から照射されるX線ファンビームの広がり角に対応した傾斜面を備える、
ことを特徴とする踵ホルダー。
【請求項2】
請求項1に記載の踵ホルダーであって、
前記踵受けの傾斜面は、X線ファンビームの照射方向に沿って且つX線ファンビームの走査方向に沿って形成される、
ことを特徴とする踵ホルダー。
【請求項3】
請求項2に記載の踵ホルダーであって、
前記踵受けの傾斜面は、エアバリューが計測される照射空間に隣接して形成される、
ことを特徴とする踵ホルダー。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の踵ホルダーであって、
前記踵受けは、被検者の踵と接触する面側において凸状に形成される、
ことを特徴とする踵ホルダー。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の踵ホルダーであって、
前記踵受けは、被検者の踵と接触する部分に踵の形状に応じた窪みを備える、
ことを特徴とする踵ホルダー。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の踵ホルダーであって、
前記足裏プレートは、被検者の足裏と接触する面側において凸状に形成される、
ことを特徴とする踵ホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−83399(P2011−83399A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237899(P2009−237899)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】