説明

身体ケア用具を振動させるためのモーター

身体ケア装置に振動動作を行わせるモーターアッセンブリは、水平方向に配置されたU字型の固定子部分と、一端が固定された捻りばね軸を含んでいる電機子部分と、を含んでいる。電機子部分は、更に、ばね軸の上端付近に固定されたU字型の磁石取付部材を含んでおり、このU字型の部材は、ばね軸の長さの相当部分に沿って、ばね軸から離れて伸張している、2つの相対する脚部を有している。各脚部の先端には磁石アッセンブリがあり、磁石アッセンブリは、固定子部分と、交互に捻れるように相互作用して、電機子、ブラシヘッド、又は電機子に取り付けられている他の工作物を前後に振動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的には、臨床用途に使用される用具を含め、身体ケア用用具に、より具体的には、その様な用具に使用するのに適したモーター構造に関する。
【背景技術】
【0002】
振動動作を行う小形の用具に使用されるモーターは、具体的な用途次第で、作動中に選択された量のトルクを提供する或る種のばねの様な復元機構を、通常は含んでいる。振動動作に関する設計要件は、ばねマス系アッセンブリの所望の機械的共振周波数を提供するのに必要な、系のばね定数によって決められる。ばねマス系の共振周波数を含む電気的及び機械的な作動周波数は、用具の性能を最適化するために平衡が保たれていなければならない。多くの用途において、ユーザーの便利さの点から、用具の外形(高さ)は低いことが重要であり、これは、ばねマス系の全体構成に相当な制約を課すことになる。
【0003】
小形用具用の様々なモーター構造が知られているが、各システムは、用途要件次第で固有の利点と欠点を有している。振動モーターの復元機能を作り出すために捻り管ばねが使用されてきているが、捻り管は高張力ばね材で容易に入手できるものではなく、従って、しばしば現在の実施形態で実現可能な長さより長い長さを必要とする。捻り管の端部を、管を潰すこと無くクランプするのは、捻り管の実施形態にとって相当困難な問題を提起することになる。無軸捻りワイヤ装置を使用することもできるが、その様な装置では、個々のワイヤに高い応力が生じ、同時に過剰なZ方向の運動を生じることになる。他の可能性のある解決策は、対になったリボン又は板ばねを使用しているが、その様な装置は、コストが高く、ばね部材に過剰な応力が生じる。更に、これらの解決策の多くは、長期に亘って作動の信頼性を確保するには複雑すぎる。
【0004】
従って、振動工作物を使用しているスキンケア用具の様な身体ケア用具では、外形が低く、作動の信頼性があり、振動動作には付き物の応力に耐えることのできるモーター装置が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、身体ケア用具に周期的な振動動作を起こさせるためのモーターであって、モーターは、固定子部分と、電機子部分であって、一端が固定された中央捻りばね軸と、ばね軸の他端付近に取り付けられており、ばね軸の長さの相当部分に沿って伸張し、ばね軸から間隔を置いて配置されている2つの相対する取付部分を含んでいる、磁石取付部材と、2つの取付部材の端部付近に配置され、作動的モーター相互作用のために固定子部分と整列している、磁石アッセンブリと、を含んでいる電機子部分と、電機子が8−26°の範囲内の角度に亘って振動するようにモーターを駆動するための駆動装置アッセンブリと、を備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、顔面皮膚の洗浄用途に特に適合しており、本発明のモーター構造の或る実施形態を含んでいる身体ケア用具を示している。しかしながら、このモーターは、他の身体ケア用具にも使用することができ、例えば、にきび及び黒にきびの治療、運動選手の足の治療、傷の洗浄治療及び遅々とした/治癒しない傷の治療、頭皮の洗浄、化学的剥離処置、たこになった皮膚及び乾癬の治療、及び、かみそり負けの治療及びシェービングクリーム塗布器での使用を含め様々なシェイビング用途が、これに含まれるものと理解されたい。
【0007】
図示の実施形態では、全体を10で示す用具は、用具カバー基部部分12と、嵌め合いカバー上部部分14を含んでいる。基部部分と上部部分は、共に、プラスチック製の成形部品である。用具は、ヘッド部分16と、ユーザーが掴んで使い易いように人間工学的な形状に作られたハンドル部分18と、を含んでいる。
【0008】
モーター19は、固定子部分20と、電機子アッセンブリ部分22を含んでいる。モーターは、取替可能又は再充電可能なバッテリ26が電力を供給する、全体を24で示す駆動回路によって駆動される。固定子20は、水平方向に向き、水平な積層スタック28を備えており、積層スタック上に巻線30が取り付けられている。図示の実施形態では、積層スタック28は基本的にU字型をしており、26の積層を備えていて、2つの端部32と34を有している。
【0009】
電機子22は、高強度捻りワイヤばね38を含んでいる。図示の実施形態では、ワイヤばね38は、モーター19の戻しばねとして働く。図示の実施形態では、ワイヤばね38は、その長さの大部分は直径が約1.8mm(0.07インチ)であり、(上下の)端部37−37aは直径が約3.2mm(0.125インチ)である。端部の直径が大きくなっているので、ばねを都合良く且つ信頼性を保ってクランプすることができる。図示の実施形態では、ワイヤばね38は、大きな直径(直径約3.2mm(0.125インチ))のワイヤから作り始めて中央部分を所望の直径約1.8mm(0.07インチ)まで「しごき落とす」。図示の実施形態では、ワイヤばねは、熱処理されたピアノ線又は同様のワイヤである。ステンレス鋼、炭素鋼、又はチタンの全てを使用することができる。ワイヤばねの長さは約26mm(1.02インチ)で、構造に作用する応力に耐えるのに必要なだけの長さである。
【0010】
電機子アッセンブリ22は、U字型の磁石取り付けブラケット40、ワイヤばね38、アンカー部材、及び二対の磁石を含んでいる。U字型の磁石取り付けブラケット40は、ワイヤばね38の上端部37に取り付けられている。図示の実施形態では、取り付けブラケット40は、鋼製で、厚さが約1.9mm(0.074インチ)、幅が約5.1mm(0.200インチ)、全長が約76mm(3.0インチ)である。取り付けブラケットは、中央部39、及び2つの相対する脚部41と43を有しており、各脚部は、ワイヤばね38から約11.7mm(0.46インチ)離れている。各脚部の先端には、一対の磁石がある。二対の磁石42と44は、各脚部の端部に接着されており、互いに対して傾斜していて、各磁石の面がワイヤばね軸に対して半径方向に垂直に向いており、固定子の積層スタックの端部と最適整列を成すようになっている。
【0011】
電機子アッセンブリの磁石は、固定子の面内を半径方向に運動し、積層スタックの相対する端部32と34の内側を振動する。この様に配置することによって、磁石を積層スタックの両端部の間の適正な位置に配置することができ、同時に、電機子の中央部を水平な積層スタックの面から或る距離だけ離して取り付け、ばね長を長くすることができる。更に、積層スタックを、用具の幅広部分近くに水平方向に取り付けられるようになる。この配置によって、用具内の垂直方向の空間を効率的に使用できるようになり、ばねに掛かる応力を低く抑えながら所望の低い外形を実現することができる。
【0012】
積層スタック28は、モーター取付板46に直接固定され、モーター取付板は、用具のカバー基部部分12に取り付けられ、更に、モーター軸ブラケット62に固定されているが、これについて以下に説明する。モーター取付板46は、概ね矩形の形状をしており、電機子アッセンブリのアンカー部材50を受け入れるように作られた中央部分48を有しており、このアンカー部材は、ワイヤばね38の下側端部37aに取り付けられている。アンカー50は、図示のように、モーター取付板46の中央部分48上の側方保持要素52の中に嵌め込まれ、保持されている。この配置によって、ワイヤばね38の下側端部37aは、捻りに抗してしっかりと固定される。アンカー50の中心側には、取り付けブラケット40の突き出た先端部に外挿される長さを有する下側の軸受けブラケット54が設けられている。軸受けブラケット54には、中央開口56が設けられ、その中に分割型軸受け58が取り付けられている。分割型軸受け58は、ワイヤばね38の小さな方の直径部分を外挿クランプして、取り付けブラケット40の(磁石の付いた)先端を固定子に対して半径方向に整列した状態に維持し、電機子が正しく運動するように設計されている。
【0013】
従って、図示の実施形態では、モーター取付板46、アンカー要素50、分割型軸受け58付の軸受けブラケット54が順に取り付けられる。電機子は、回転軸周りに対称性を保っており、電機子をワイヤばね38の基部付近で芯出しする。
【0014】
ワイヤばね38の上端部37は、モータ軸整列ブラケット62へと伸張している。モーター軸ブラケット62は、円形板64と、円形板64から下向きに伸張する2つの相対する脚部66と68を有している。脚部66、68は、水平な端部70と72を有しており、この端部には貫通する開口が設けられ、この開口を通してネジ61〜61が差し込まれ、ブラケット62をカバー基部部分12に固定して、ブラケットと電機子アッセンブリとの全体的安定性を増している。モーター軸ブラケット62の中心には開口が設けられ、その中に上側の軸受け部材80が配置され、それを通って捻りワイヤばね38の上端37が伸張している。上側軸受け80は、ワイヤばね38の自由端(及び、従って磁石42、44)が、確実に、所望の軸回りに一様に振動するようにしている。
【0015】
モーター軸ブラケット62と、積層スタック28と、モーター取付板46は、ネジ/ナットの組み合わせ63−63で一体にしっかりと取り付けられており、ブラケット62は、ネジ61でカバー基部部分に取り付けられている。ワイヤばね38の回転は、軸受け58と80によって嵌合部品と同心に維持されている。
【0016】
モーターが正しく機能するためには、磁石取り付けブラケット40の中心(長手)軸が、アンカー50の長軸に対して正しく位置決めされていなければならない。オフセット角が約35°であれば、モーターが磁石42、44を積層スタックの端部32、34と整列する方向に引き付けるのに必要な初期位置となる。
【0017】
作動時、モーター10は、駆動装置アッセンブリ(電子機器)24で固定子の巻線30に交流バイポーラ方形波信号を印加することによって、4−13°の範囲内の角度(ばねの合計回転は8°−26°)に亘って駆動される。信号の最初の半分が印加されると、磁石の対42、44は積層スタックの端部32、34と整列する方向に動かされ、磁石取り付けブラケット40が回転してワイヤばね38がその固定端50回りに捻られ、その上端37が回転する。次いで駆動信号がオフになって、電機子アッセンブリは、ワイヤばね38の作用によって、その初期位置に戻る。次いで、交流駆動信号の残りの半分が巻線30に印加され、電機子アッセンブリは反対方向に動く。振動動作の周波数は、120−220Hzの範囲内で、好適な周波数は約160Hzであり、運動の合計範囲は8°−26°であり、望ましい値は10°である。
【0018】
取り付けブラケット62の円形板64の上面には溝が設けられており、その中に波形座金ばね82が配置されている。その次は、円形板64の形状に沿う円形のモーター軸シール84であり、中央に開口が設けられていて、その開口を通してワイヤばね38の上端39が伸張している。シール84は、通常、低硬度材料で作られている。シールの動的部分は、ワイヤばね38の上端部37より直径が僅かに大きい。この部分はほぼ円錐形で、厚さが約0.010インチであり、使用時には伸びるのではなく挫屈するように設計されている。シール84の上面に対して、環状のシールリング86が配置されており、装着時に用具のブラシアッセンブリ部分に働く摺動摩擦を低減している。図示の実施形態では、リング86は、通常、比較的摩擦係数の低い材料で作られている。
【0019】
捻りワイヤばね38の上端37には、ブラシハブ部材88が取り付けられ、これにブラシアッセンブリ89が取り付けられている。ブラシハブ88とブラシアッセンブリ89は、本発明の対象ではなく、本発明は用具のモーター構成に着眼しているが、図示し説明しているモーターの実施形態によって効果的に駆動することのできる身体ケア用具の例として図示している。他のブラシアッセンブリ又は工作物を本発明の用いても何ら問題はない。
【0020】
使用時、用具の作動はオン/オフスイッチ90の操作によって開始され、その結果、上記のように電機子アッセンブリが捻り運動を始め、より具体的には、図示のブラシアッセンブリ89の様な工作物が上に取り付けられている電機子アッセンブリの上端部が振動する。ブラシアッセンブリの可動部分は、用途次第で、選択された角度に亘って振動する。図示のモーターアッセンブリは、製造が比較的容易で、コスト効率に優れ、同時に、使用し易く便利な比較的低い外形を実現し、しっかりした頼りになるデザインを提供する。
【0021】
以上、本発明の好適な実施形態を、説明を目的にして開示してきたが、実施形態には、特許請求の範囲に定義する本発明の精神から逸脱すること無く、様々な変更、修正、置換を組み込めるものと理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のモーター構造を含んでいる身体ケア用具の分解図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体ケア用具に周期的な振動動作を起こさせるためのモーターにおいて、
固定子部分と、
電機子部分であって、一端が固定された中央捻りばね軸と、前記ばね軸の他端付近に取り付けられており、前記ばね軸の長さの相当部分に沿って伸張し、前記ばね軸から間隔を置いて配置されている2つの相対する取付部分を含んでいる、磁石取付部材と、前記2つの取付部材の端部付近に配置され、作動的モーター相互作用のために前記固定子部分と整列している、磁石アッセンブリと、を含んでいる電機子部分と、
前記電機子が8−26°の範囲内の角度に亘って振動するようにモーターを駆動するための駆動装置アッセンブリと、を備えているモーター。
【請求項2】
前記ばね軸が長手軸回りに回転するのを支持するため、前記ばね軸の両端付近に配置されている軸受け手段を含んでいる、請求項1に記載のモーター。
【請求項3】
前記固定子部分は、水平方向に配置されていて、両端部を有する概ねU字型の積層スタックを含んでおり、この両端部分と前記磁石取付部材の前記取付部分上の磁石が整列し、前記モーターの作動時には、前記磁石が、前記両端部分に対し、交互に反発及び誘引される、請求項1に記載のモーター。
【請求項4】
モーター取り付け板と、前記ばね軸の前記一端に固定されたアンカー部材とを含んでおり、前記アンカー部材は、前記取り付け板の嵌合形状部の中に差し込まれていて、前記アンカー部材と、従って前記ばね軸の前記一端とが回転運動しないようにしている、請求項3に記載のモーター。
【請求項5】
各磁石アッセンブリは、2つの横並びの磁石を含んでおり、前記磁石は、各磁石の面が前記ワイヤばねの長手軸に対して半径方向に垂直に向くように、傾斜している、請求項1に記載のモーター。
【請求項6】
下側の軸受けブラケットと、その中に配置されている下側の軸受けとを含んでおり、前記軸受けを通して前記捻りばね軸が伸張している、請求項4に記載のモーター。
【請求項7】
前記磁石取付部材は、U字型をしていて、前記ばね軸と固定的に接続された中央部分を有しており、前記取付部分は、2つの相対する脚部材であり、前記磁石アッセンブリは、それぞれ、前記脚部材の自由端先端付近に配置されている、請求項1に記載のモーター。
【請求項8】
開口が設けられている上側のモーターブラケットを含んでおり、前記ばね軸の前記他端は、前記開口を通って、前記上側のモーターブラケットの前記開口内に配置されている軸受けの中を伸張しており、前記上側のモーターブラケットと、前記積層スタックと、前記モーター取り付け板は、一体に固定的に接続されている、請求項4に記載のモーター。
【請求項9】
前記上側のモーターブラケットは、前記用具のカバー部分に接続されている、請求項8に記載のモーター。

【図1】
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【公表番号】特表2008−503999(P2008−503999A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518206(P2007−518206)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/021957
【国際公開番号】WO2006/002182
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(505359481)パシフィック・バイオサイエンス・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド (10)
【Fターム(参考)】