説明

車いすの車輪洗浄装置

【課題】従来、金属ブラシ等を使用し且つ大変多くの労力を掛けて表層の汚れを削り取るしかなかった車輪タイヤ部の洗浄に関して、短時間で洗浄が可能な全自動の車輪洗浄装置を提供すること。
【解決手段】車いすの車輪を、駆動装置により回転する車輪ローラに接触させることにより同時に回転させると共に、車輪タイヤ洗浄位置には、車輪幅と同等もしくはこれより開口幅の広いU字形の溝を持ったボビン形状の回転式ブラシを臨ませ、必要な場合は回転式ブラシを回転軸方向に往復運動させて回転式ブラシのU字形溝の側面が車輪タイヤ部側面をも洗浄できる構成としているので、これまでなし得なかった車輪タイヤ部のほぼ全周を洗浄することができる。また、車いすの形態やサイズにも柔軟に対応できるよう種々の工夫を凝らした構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車いすの車輪タイヤ部に付着した汚れを除去することを目的とし、特に車輪タイヤ部の接地面だけでなく車輪タイヤ部の側面についても洗浄可能な車輪洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
体が不自由な方やお年寄りが広く利用される車いすについては、これまでは洗浄や消毒が疎かにされ、汚れが目立ってきたものだけ洗浄するという状況にあり、車いすは身障者にとっては手放すことができない必需品であるにもかかわらず、いつも汚れが付着した不衛生な状態で利用されている場合が多いのが現状である。
【0003】
一方、介護保険法の施行以降、少額の出費で利用できるレンタル車いすの利用が急拡大しており、福祉関連のレンタル業界では主要な商品になってきている。
そして、ある期間貸し出して戻ってきた福祉関連商品は、衛生状態のレベルの高い状態に戻してから貸し出すことがレンタル業者に義務づけられており、レンタル業者はこれら福祉商品の洗浄・消毒のために多くの労力を注いでいる。
【0004】
また、利用者からの要求と同業他社との差別化の必要性から、洗浄・消毒レベルの向上が求められており、安定的にこれを実現でき、作業の合理化が可能な洗浄・消毒用設備が導入され始めている。
【0005】
車いすの場合には、汚れが特に多い場所としては、食べこぼし、嘔吐或いは失禁による汚れが蓄積しやすい座面付近と肘掛け、そして、屋外で使用される車いすでは車輪タイヤ部が挙げられる。人手による洗浄の場合でも前者の汚れは比較的容易に取り除くことができるものの、車輪タイヤ部の汚れについては、タイヤのゴムや樹脂材の表層の中にまで汚れが入り込んでおり、これを取り除くには大変な労力を要している。
【0006】
レンタル車いすの洗浄現場では、洗剤を吹き付けながら金属ブラシを使って長い時間を掛けて一皮削り取る程度に洗浄する必要があり、車いす全体の洗浄時間の大半を占めているのが現状である。
【0007】
車輪洗浄を目的とする車輪洗浄機は世の中に存在するが、それらは屋外で使用した車いすを施設の中に乗り入れる際に、表面に付着した泥汚れを軽く取り除くためのもので、前述のようなタイヤのゴムや樹脂材の表層の中にまで入り込んだ汚れを取り除くことは目的としていないものである。また、車輪タイヤ部の側面を新品と同程度まで洗浄する洗浄機は見当たらない。
【0008】
また、車輪洗浄技術についても、前述のような車いすの車輪の表面的な汚れを取り除く手段についての先行技術はある程度散見されるが、本課題のような厳しい洗浄要求に応え得るような解決の手段はこれまで提案されてこなかった。
【特許文献1】特開平7−313945号公報
【特許文献2】特開平8−308879号公報
【特許文献3】特開平10−337542号公報
【特許文献4】特開2004−136867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、従来金属ブラシ等を使用し且つ大変多くの労力を掛けて表層の汚れを削り取るしかなかった車輪タイヤ部の洗浄に関して、短時間で洗浄が可能な全自動の車輪洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために請求項1の発明は、車いすの車輪タイヤ部を洗浄する回転式ブラシは、洗浄液を含んだ状態で回転して洗浄動作を行うよう構成され、回転ブラシ自体は車輪タイヤ部の側面部まで及ぶ深さと少なくとも車輪タイヤ部の幅に相当する幅のU字形の溝を持ったボビン形状としたことを特徴とする車いすの車輪洗浄装置についてのものである。
【0011】
請求項2の発明は、車いすの車輪タイヤ部を洗浄する回転ブラシ式洗浄部は、車輪タイヤ幅より開口幅の広いU字形の溝形状とし、該洗浄部を駆動装置により回転ブラシの回転軸の軸方向に、ブラシの側面が車輪タイヤ部両側面に接触する位置まで往復動作させる構成としたことを特徴とする請求項1に記載の車いすの車輪洗浄装置についてのものである。
【0012】
請求項3の発明は、回転部ブラシ式洗浄部を駆動装置により回転ブラシの回転軸の軸方向に、ブラシの側面が車輪タイヤ部両側面に接触する位置まで往復動作させる構成とし、該往復動作方向は、予め車輪の幅に併せて設定した動作設定時間もしくは車輪の位置を検知する手段により切り替えることを特徴とする請求項1〜2の何れかに記載の車いすの車輪洗浄装置についてのものである。
【0013】
請求項4の発明は、車いすの前輪と後輪に同時に接触する位置に駆動装置により回転する車輪ローラを装備し、該車輪ローラを回転させることにより、その接触摩擦により前輪と後輪を同時に回転させるように構成したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車いすの車輪洗浄装置についてのものである。
【0014】
請求項5の発明は、車いすの後輪を支える支柱を車輪ローラとは別に設け、その上端には回転軸に対し回転可能なすべりローラを備えると共に、該すべりローラを後輪の接地面のやや内側面に近い部分に当たるように傾ける構成としたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の車いすの車輪洗浄装置についてのものである。
【0015】
請求項6の発明は、前輪タイヤ部を洗浄する回転ブラシ式洗浄部と後輪タイヤ部を洗浄する回転ブラシ式洗浄部を2部品からなる支持アーム部にそれぞれ載置構成し、これらの支持アーム部は車輪ローラの回転軸部で回転可能となるように連結すると共に、これらの支持アームが該連結部を支点として上方へやや回転しながら持ち上がる位置でスプリングにより連結した構成とすることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の車いすの車輪洗浄装置についてのものである。
【0016】
請求項7の発明は、車輪タイヤ部を洗浄する回転ブラシ式洗浄部と車いすの車輪を回転させる車輪ローラ部は洗浄液を貯留するように設計された洗浄槽において、洗浄液を所定の液位まで投入した場合、回転ブラシ式洗浄部が洗浄液中に浸る位置となるように構成したことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の車いすの車輪洗浄装置についてのものである。
【0017】
請求項8の発明は、回転ブラシに洗浄液を含ませる手段として、洗浄槽内の洗浄液への浸漬を行わず、回転ブラシに直接洗浄液を塗布ないし滴下させることによって洗浄効果を発揮せしめるように構成したことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の車いすの車輪洗浄装置についてのものである。
【0018】
請求項9の発明は、後輪タイヤ部を洗浄する回転部ブラシ式洗浄部を載置構成する支持アームを下方へ押し下げるレバーを装置に一体に構成したことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の車いすの車輪洗浄装置についてのものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上説明したような手段で実施され、以下に記載するような効果を奏する。
すなわち、本発明に係る車いすの車輪洗浄装置では、駆動装置により車輪ローラを回転させることにより、このドラムに接触している車いすの前輪と後輪を同時に比較的ゆっくりとしたスピードで回転させると共に、前輪と後輪それぞれに対し、車輪タイヤ幅と同一ないしやや幅広の開口幅のU字形の溝を持ったボビン形状のブラシを押しつける状態で接触させ、このブラシを駆動装置により回転させることにより、車輪タイヤ部を包み込むようにして接地面だけでなく側面部をも確実に洗浄することができる手段についてのものであるである。
【0020】
また、車輪タイヤ部の幅が異なる場合に柔軟に対応する方法についても、車輪幅より開口幅のやや広いU字形の溝を持ったボビン形状のブラシを押しつける状態で接触させ、このブラシを駆動装置により回転させると共に、ブラシの回転軸方向にブラシのU字形内側の側面部が車輪タイヤの側面部に接触する位置まで駆動装置により自動的に往復動作させることができるので、車輪タイヤ部の接地面だけでなく側面部をも確実に洗浄することができるものである。
【0021】
また、車いす形状の違いに対しても、車いすの前輪と後輪それぞれの左右幅にブラシの位置を回転ブラシ移動用モータを駆動させる方法で合わせてから車いすをセットするだけで、上下方向には自ずと車輪タイヤ部の位置にブラシが接触して来る仕組みとなっているので、調整作業を少なくしており、同一種類の車いすを纏めて連続的に洗浄する場合には、調整作業をほとんど必要としない特長を有する。
【0022】
更に、回転ブラシが車輪タイヤを洗浄する位置は車輪タイヤ部の下方とし、洗浄液の中で洗浄作業が行われるよう構成すれば、洗浄作業の際に問題となっている洗浄剤や汚れの飛沫が飛散することがない等の効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態並びに作用について、図を用いて説明する。
【0024】
上記車輪洗浄装置は、図1、2及び3に示すように、構成するユニット全体を収納すると共に洗浄液を貯める洗浄槽、車いすの車輪を回転させるための車輪ローラ駆動ユニット、前輪洗浄用のブラシを回転及び移動させるための前輪用回転ブラシ駆動及び移動ユニット、後輪洗浄用のブラシを回転及び移動させるための後輪用回転ブラシ駆動及び移動ユニット及び後輪を支持するための滑りローラ部から構成されている。
【0025】
具体的にそれぞれのユニットの構成を図を用いて説明する。
図1、2及び3に示すように洗浄槽1は液の漏らないようシール性を確保した構成とし、この側壁の対面する2面には車輪ローラ回転シャフト4の支持部34,35を設け、この洗浄槽1の底面には前輪及び後輪用ブラシ回転及び移動ユニットを支える4本の支持アーム用柱17と2本の滑りローラ用支柱23が組み込まれている。
【0026】
次に、車輪ローラ駆動ユニットは、洗浄槽1の対面した側壁間に2個の円筒形をした車輪ローラ2の回転軸となるようにこれらを連結固定した車輪ローラ回転シャフト4を支持させると共に、洗浄槽1の側壁外部に取り付けた車輪ローラ駆動用モータ3によりこの車輪ローラ回転シャフト4を回転動作させる構成としている。
【0027】
また、前輪用の回転ブラシ駆動及び移動ユニットは、車輪ローラ回転シャフト4に4箇所で回転可能に連結されている支持アームA19に、ブラシ12を回転させるブラシ回転シャフト11、両端に送りねじ部を設けた送りねじシャフト9及びスライドアーム10支持用のガイドシャフト38を組み込むと共に、送りねじシャフト9の送りねじ部にねじ込まれたねじナット37に固定連結されたスライドアーム10は、ブラシ回転シャフト11上でブラシ12に連結され、更にガイドシャフト38が貫通する部分には貫通穴が設けられ、ガイドシャフト38がスライドアーム10のガイドレールとして機能している。
【0028】
なお、ブラシ回転シャフト11にはブラシ駆動用モータ13の回転動力を受動するスプロケットD16が固定連結されると共に、ブラシ12はブラシ回転シャフト11から回転動力を受けられると共に、ブラシ回転シャフト11に設けられているスリット穴39の範囲内で軸方向に移動可能なように、このスリット穴39に回転止めの固定がされている。
【0029】
次に、送りねじシャフト9には回転ブラシ移動用モータ5の回転動力を受動するスプロケットB8が固定連結されると共に、前述のスライドアーム10がねじナット37を介して送りねじ部にねじ込まれている。
【0030】
以上のように前輪用の回転ブラシ駆動及び移動ユニットは構成されているので、ブラシ駆動用モータ13の回転動力は、スプロケットD16を介してブラシ回転シャフト11とブラシ12が回転する。また一方、回転ブラシ移動用モータ5の回転動力はスプロケットB8を介して送りねじシャフト9を回転させるため、送りねじ部にねじ込まれているねじナット37の移動により、ねじナット37と一体に固定されているスライドアーム10も移動する。この仕組みにより、スライドアーム10に連結されているブラシ12は、ブラシ回転シャフト11上を軸方向にスライドするよう動作する。
【0031】
ここで、回転ブラシ移動用モータ5は、正逆回転可能な仕様のものを選定すれば、この回転ブラシ移動用モータ5の電源を操作することにより、ブラシを必要な方向へ必要な距離だけ移動させることが可能である。
【0032】
同様に、後輪用の回転ブラシ駆動及び移動ユニットの構成と動作の仕組みは前輪用の回転ブラシ駆動及び移動ユニットと全く同一である。
【0033】
以上の通り構成された前輪用の回転ブラシ駆動及び移動ユニットが組み込まれた支持アームA19と後輪用の回転ブラシ駆動及び移動ユニットが組み込まれた支持アームB20は、それぞれ車輪ローラ回転シャフト4に4箇所で回転可能となるように連結すると共に、これら2つの支持アームは連結スプリング21によって連結した構成としている。
【0034】
なお、ブラシ駆動用モータ13は支持アームA19の一角に一体に固定されたブラケット44の上に取り付けられており、前輪用と後輪用をこの1台のモータでまかなっている。
【0035】
最後に、後輪支持用の滑りローラ部は、洗浄槽1の底部に固定された2本の滑りローラ用支柱23の上部に設けたもので、車輪の大きさに合わせて滑りローラ26の位置が上下するように滑りローラ26の支持部に伸縮可能なバネ機構を設けると共に、図3に示すように左右一対の滑りローラ26は車いす32に対してハの字となるように後輪タイヤ部 41に対してある角度を以て当たるように傾ける構成としている。
【0036】
次に本発明の実施例を、各請求項毎に詳細に説明すると以下の通りである。
【0037】
先ず請求項1の発明は図4に示す車いす32の前輪30と後輪31のタイヤ部40、 41を洗浄するブラシ12の形状は、図4に示すように、車輪タイヤ部40、41をほぼ包み込む深さと幅の溝42を持ったボビン形状としているので、前輪30と後輪31をゆっくり回転させながらブラシ12をブラシ回転シャフト11の回りに回転させると、ブラシ12は車輪タイヤ部40、41のほぼ全体を同時に洗浄することができる仕組みとしたものである。
【0038】
請求項2の発明は図1、2及び3において示す車いす32の前輪30と後輪31のタイヤ部40、41を洗浄するブラシ12の形状は、図5に示すように車輪幅より開口幅の広いU字形の溝42を持った形状とし、ブラシを中心軸43の回りに回転させて車輪タイヤ部40、41の接触部を洗浄すると共に、このブラシ12の回転位置を、ブラシ12の中心軸43の方向にブラシ12の側面が車輪タイヤ部40、41の側面に接触する位置まで所定の時間間隔を以て往復動作させる構成とするものである。ブラシ12の位置を移動させる手段としては、図1、2及び3に示すように、回転ブラシ移動用モータ5の回転動作をスプロケットA6により伝動チェーンA7を介して送りねじシャフト9を回転させこの回転動作を送りねじ機構によりスライドアーム10を往復動作させこれに連結したブラシ12を中心軸43の方向に移動させる構成としたものである。
【0039】
このように車輪タイヤ部40、41の洗浄部を構成すれば、他の駆動装置により車いす32の前輪30と後輪31を比較的ゆっくりしたスピードで回転させれば、前輪30及び後輪31が数回転する内には車輪タイヤ部40、41が洗浄される仕組みである。なお、ブラシ12の材質を合成繊維、合成樹脂、軟質の金属、ステンレス鋼等の中から選択して使用することにより、車輪タイヤ部40、41の汚れに応じた洗浄が可能である。
【0040】
請求項3の発明は、図1、2、3及び5の実施例に示すように、上記スライドアーム10の往復運動は、ブラシ12のU字形溝42の側面部の一方が、車輪タイヤ部40、41の側面の一方に接触した後反転し、ブラシのU字形溝42のもう一方の側面部が、車輪タイヤ部40、41の他方の側面に接触した後更に反転する一連の動作を繰り返すが、この反転動作のタイミングを決める手段として、時間設定の手段と、タイヤ部40、41の位置を車輪位置センサ33で検知し制御する手段がある。
【0041】
時間設定の方法では、車輪タイヤ幅によって予め往復動作の時間を設定できる時間調節部を設けておけば良く、一方車輪位置センサ33を利用する方法では、車輪タイヤ幅に相当する位置に車輪位置センサ33を装着しておき、これによってブラシの動作範囲に制約を加えればよく、共に比較的簡便な方法で適切な位置での連続往復移動の動作を実現できる。
【0042】
請求項4の発明は、前輪30と後輪31を比較的ゆっくりとしたスピードで回転させることにより、前記ブラシ12が前輪及び後輪のタイヤ部40、41全体をむらなく洗浄できるようにする手段に関するもので、図1、2及び3の実施例に示すように、洗浄液29の入った洗浄槽1の側壁に車輪ローラ回転シャフト4の支持部A35と支持部B36を設けた円筒形状とした車輪ローラ2を洗浄槽1の外部に設けた車輪ローラ回転シャフト4の車輪ローラ駆動用モータ3により比較的ゆっくりとしたスピードで回転させると共に、車いす32の前輪30及び後輪31の両方がこの車輪ローラ2に接する位置に設けてある。

従って、一つの駆動装置の簡便な構成で前輪30と後輪31を同時に且つ確実に回転させることができる。
【0043】
請求項5の発明は、車いす32の後輪31を車輪ローラ2と共に支持すると共に、車いす32が車輪洗浄装置の中央に位置するよう動きを制御する手段に関するもので、この目的のために、図1、2及び3に示すように、後輪31の垂線に対して車輪ローラ2の反対側に滑りローラ26を設けるもので、後輪31の大きさに合わせて滑りローラ26の位置が上下するように滑りローラの支柱23にスプリングB24を設けると共に、図3に示すように左右一対の滑りローラ26は車いす32に対してハの字となるように後輪タイヤ部41に対してある角度を以て当たるように傾ける構成としている。
【0044】
車いす32を本発明のような車いす32の前輪30及び後輪31を回転動作させた場合、車いす32の形状の不均衡や後輪タイヤ部41の状態によっては、左右どちらかの方向へずれようとする動きが出る場合がある。
【0045】
この時、この左右一対の滑りローラ26は車いす32に対してハの字となるように後輪タイヤ部41に対してある角度を以て当たるように傾ける構成としているので、この滑りローラ26で支えられた後輪31は、回転する時には、左右の後輪31が互いに外側に滑り落ちる方向に移動しようとし、車いす32の後輪31は車輪洗浄装置のほぼ中央に位置するよう制約を受ける効果を発揮するものである。
【0046】
請求項6の発明は、車いす32を装置に載せるだけで車輪タイヤ洗浄部が車いす32のタイヤ部40、41に位置するよう構成したもので、図1、2、6及び7に実施例を示すように、前輪タイヤ部40を洗浄する回転式洗浄部と回転ブラシ移動用モータは支持アームA19に載置、後輪タイヤ部41を洗浄する回転式洗浄部は支持アームB20に載置し、この支持アームA19と支持アームB20は車輪ローラ回転シャフト4で回転可能な状態で連結している。また、支持アームA19と支持アームB20は、洗浄槽1の中に設けた支持柱17にバネ機構であるスプリングA18を介して支えられている。更にこれら2つの支持アーム19、20は、連結スプリング21により連結されている。
【0047】
その動作は、車いす32をこの洗浄装置に載置した時連結プリング21が車いす32の重量により引き伸ばされることによりこれら2つの支持アーム19、20は支持アーム連結部22を中心として回転する動きをしながら、前輪用ブラシ12と後輪用ブラシ12’がそれぞれ前輪30と後輪31に押し下げられるもので、車いす32の後輪31のサイズに合わせてフレキシブルに対応可能な構成としている。
【0048】
請求項7の発明は、図1、2及び3の実施例に示すように、車輪タイヤ部40、41を洗浄する回転式洗浄部と前輪30及び後輪31を回転させる車輪ローラ2及び車いす32の前輪30と後輪31の洗浄される部位が、洗浄液29に浸る位置となるよう構成すれば、タイヤ洗浄の際に問題となる洗浄液29や汚れの飛散を抑えることが可能となる。
【0049】
請求項8の発明は、ブラシ12に洗浄液29を供給する方法としては、図1、2及び3に示した実施例のように、ブラシの一部を貯留した洗浄液29に浸して濡らす方法があるが、本請求項では、洗浄剤供給装置によりブラシ12に洗浄液29を供給する方法或いは洗浄液29を含ませたスポンジローラ部にブラシ12を接触させることによりブラシ12に洗浄液29を供給する方法についてのものである。この方法の特長としては洗浄槽29の小型化が可能で、装置の軽量化や構成部品の価格低減更に洗浄液29使用量の節減に特に効果的であると考えられる。
【0050】
請求項9の発明は、図1、2及び3の実施例に示すように、洗浄槽1に取り付けたレバー45の一例を示したもので、このレバー45を操作することにより、支持アームB20を下方へ押し下げる構成としたもので、車いすを本装置へ載置するために、スロープ34を利用して車いす32の前輪30が洗浄槽1の外枠から中に入り込んできた時、前輪31が洗浄槽1の内部に構成されている部材に干渉しないように一時的にこれらの部材を下方へ押し下げておく効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態の一実施例についての一部断面平面図である。
【図2】同上についての一部断面側面図である。
【図3】同上についての一部断面正面図である。
【図4】同上についてのブラシによる車輪タイヤ洗浄の仕組みの一例を示す概略図である。
【図5】同上についてのブラシによる車輪タイヤ洗浄の仕組みの他の実施例を示す概略図である。
【図6】同上についての支持アーム部の構成と動作を示す概略図である。(車いすを乗せる前)
【図7】同上についての支持アーム部の構成と動作を示す概略図である。(車いすを乗せた状態)
【符号の説明】
【0052】
1 洗浄槽
2 車輪ローラ
3 車輪ローラ駆動用モータ
4 車輪ローラ回転シャフト
5, 5’ 回転ブラシ移動用モータ
6, 6’ スプロケットA
7, 7’ 伝動チェーンA
8, 8’ スプロケットB
9, 9’ 送りねじシャフト
10, 10’ スライドアーム
11, 11’ ブラシ回転シャフト
12, 12’ ブラシ
13, 13’ ブラシ駆動用モータ
14, 14’ スプロケットC
15, 15’ 伝動チェーンB
16, 16’ スプロケットD
17 支持柱
18 スプリングA
19 支持アームA
20 支持アームB
21 連結スプリング
22 支持アーム連結部
23 滑りローラ用支柱
24 スプリングB
25 滑りローラ回転軸
26 滑りローラ
27 滑りローラ連結板
28 支持アームレバー
29 洗浄液
30 前輪
31 後輪
32 車いす
33 車輪位置センサ
34 スロープ
35 支持部A
36 支持部B
37, 37’ ねじナット
38, 38’ ガイドシャフト
39, 39’ スリット穴
40 前輪タイヤ部
41 後輪タイヤ部
42 溝
43 中心軸
44 ブラケット
45 アジャスト脚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車いすの車輪タイヤ部を洗浄する回転式ブラシは、洗浄液を含んだ状態で回転して洗浄動作を行うよう構成され、回転ブラシ自体は車輪タイヤ部の側面部まで及ぶ深さと少なくとも車輪タイヤ部の幅に相当する幅のU字形の溝を持ったボビン形状としたことを特徴とする車いすの車輪洗浄装置。
【請求項2】
車いすの車輪タイヤ部を洗浄する回転ブラシ式洗浄部は、車輪タイヤ幅より開口幅の広いU字形の溝を持ったボビン形状とし、該洗浄部を駆動装置により回転ブラシの回転軸の軸方向に、ブラシの側面が車輪タイヤ部両側面に接触する位置まで往復動作させる構成としたことを特徴とする請求項1に記載の車いすの車輪洗浄装置。
【請求項3】
回転部ブラシ式洗浄部を駆動装置により回転ブラシの回転軸の軸方向に、ブラシの側面が車輪タイヤ部両側面に接触する位置まで往復動作させる構成とし、該往復動作方向は、予め車輪の幅に併せて設定した動作設定時間もしくは車輪の位置を検知する手段により切り替えることを特徴とする請求項1〜2の何れかに記載の車いすの車輪洗浄装置。
【請求項4】
車いすの前輪と後輪に同時に接触する位置に駆動装置により回転する車輪ローラを装備し、該車輪ローラを回転させることにより、その接触摩擦により前輪と後輪を同時に回転させるように構成したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車いすの車輪洗浄装置。
【請求項5】
車いすの後輪を支える支柱を車輪ローラとは別に設け、その上端には回転軸に対し回転可能なすべりローラを備えると共に、該すべりローラを後輪の接地面のやや内側面に近い部分に当たるように傾ける構成としたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の車いすの車輪洗浄装置。
【請求項6】
前輪タイヤ部を洗浄する回転ブラシ式洗浄部と後輪タイヤ部を洗浄する回転ブラシ式洗浄部を2部品からなる支持アーム部にそれぞれ載置構成し、これらの支持アーム部は車輪ローラの回転軸部で回転可能となるように連結すると共に、これらの支持アームが該連結部を支点として上方へやや回転しながら持ち上がる位置でスプリングにより連結した構成とすることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の車いすの車輪洗浄装置。
【請求項7】
車輪タイヤ部を洗浄する回転ブラシ式洗浄部と車いすの車輪を回転させる車輪ローラ部は、洗浄液を貯留するように設計された洗浄槽において、洗浄液を所定の液位まで投入した場合、回転ブラシ式洗浄部が洗浄液中に浸る位置となるように構成したことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の車いすの車輪洗浄装置。
【請求項8】
回転ブラシに洗浄液を含ませる手段として、洗浄槽内の洗浄液への浸漬を行わず、回転ブラシに直接洗浄液を塗布ないし滴下させることによって洗浄効果を発揮せしめるように構成したことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の車いすの車輪洗浄装置。
【請求項9】
後輪タイヤ部を洗浄する回転部ブラシ式洗浄部を載置構成する支持アームを下方へ押し下げるレバーを装置に一体に構成したことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の車いすの車輪洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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