説明

車両のシートベルト装置

【課題】緊急時の状況に応じて、ウェビングによる乗員拘束の継続長さや力を適切に制御することのできる車両のシートベルト装置を提供する。
【解決手段】緊急時に発生ガスによって瞬発的な回転駆動力を発生する第1のアクチュエータユニット13Aと第2のアクチュエータユニット13Bを設ける。各アクチュエータユニット13A,13Bを、遠心クラッチ17,117を介してベルトリール11に接続する。コントローラによって両アクチュエータユニット13A,13Bを選択的に作動制御する。第1のアクチュエータユニット13Aと第2のアクチュエータユニット13Bを並列に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、緊急時に乗員拘束用のウェビングを引き込む機能を備えた車両のシートベルト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のシートベルト装置として、緊急時に、アクチュエータによってウェビングを引き込むことにより、ウェビングによる乗員の拘束を強めるものが知られている。このシートベルト装置は、作動信号の入力を受けて瞬時に高圧ガスを発生するガス発生器と、ガス発生器で発生したガス圧を受けてベルトリールを回転させるアクチュエータを備え、緊急時にガス発生器が高圧ガスを発生すると、アクチュエータがガス圧によってウェビングを瞬時に引き込むようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−271653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来のシートベルト装置は、ガス圧発生器によって得られる駆動力が瞬間的なものであり、作動時に任意に変更し得るものでないことから、ウェビングによる乗員拘束が一様になり、例えば、車両衝突の状況等に応じて乗員拘束の継続長さや力を変えることができない。
【0005】
そこで、この発明は、緊急時の状況に応じて、ウェビングによる乗員拘束の継続長さや力を制御することのできる車両のシートベルト装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、乗員を拘束するウェビング(例えば、後述の実施形態におけるウェビング4)が巻回されるベルトリール(例えば、後述の実施形態におけるベルトリール11)と、緊急時に発生ガスによって瞬発的な回転駆動力を発生するアクチュエータを備え、前記アクチュエータによる回転駆動力によって前記ベルトリールをウェビング引き込み方向に回転させる車両のシートベルト装置であって、前記アクチュエータを、反応ガスによる推力発生部(例えば、後述の実施形態におけるガス発生器20)を個別に備えた複数のアクチュエータ要素(例えば、後述の実施形態における第1のアクチュエータユニット13Aおよび第2のアクチュエータユニット13B)と、この複数のアクチュエータ要素を選択的に作動制御する制御手段を備えた構成とし、前記複数のアクチュエータ要素を並列に配置したことを特徴とする。
例えば、軽微な衝突が予測される状況では、制御手段が一つのアクチュエータ要素のみを作動させることにより、比較的短時間の間ウェビングによる乗員拘束が行われる。また、大きな衝突が予測される状況では、制御手段が一つのアクチュエータ要素を作動させた後に、つづけて他のアクチュエータ要素を作動させることにより、ウェビングによる乗員拘束の継続時間が増加する。また、状況によっては、複数のアクチュエータ要素を同時に作動させることにより、ウェビングによる大きな乗員拘束力を得ることも可能になる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両のシートベルト装置において、前記アクチュエータ要素のうちの少なくとも一つに、当該アクチュエータ要素による駆動力によって作動する慣性質量体(例えば、後述の実施形態におけるフライホイール21)を連結し、この慣性質量体の作動を前記ベルトリールに伝達することを特徴とする。
アクチュエータ要素の瞬発的な回転駆動によって慣性質量体が作動すると、そのアクチュエータ要素の駆動力が低下した後にも、慣性質量体がその慣性作動をベルトリールに継続して伝達する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、制御手段が複数のアクチュエータ要素を選択的に作動制御するため、ウェビングによる乗員拘束の継続長さや力を緊急時の状況に応じて適切に制御することができる。
また、請求項1に記載の発明によれば、複数のアクチュエータ要素を並列に配置したため、装置全体の軸長の短縮化を図ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、少なくとも一つのアクチュエータ要素の瞬発的な回転駆動力を慣性質量体の慣性作動に変換し、ベルトリールを慣性質量体の慣性作動によって継続的に回転させることができるため、ウェビングによる乗員拘束をより長時間継続させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】参考例のシートベルト装置の概略構成図。
【図2】同参考例のシートベルト装置のリトラクタ部分を中心とする概略構成図。
【図3】同参考例のシートベルト装置のリトラクタ部分を中心とする模式的な縦断面図。
【図4】同参考例のアクチュエータ本体部の縦断面図。
【図5】同参考例のシートベルト装置のリトラクタ部分を中心とする概略構成図。
【図6】同参考例のシートベルト装置のリトラクタ部分を中心とする概略構成図。
【図7】この発明の実施形態のシートベルト装置のリトラクタ部分を中心とする模式的な縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、参考例とこの発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
最初に、図1〜図6に示す参考例について説明する。
図1は、参考例のシートベルト装置1の概略構成を車両とともに示した図であり、同図中2は、乗員mの着座するシートである。このシートベルト装置1は、リトラクタ3が図示しないセンターピラーに固定され、リトラクタ3から引き出されたウェビング4にタングプレート5が取り付けられるとともに、そのタングプレート5が車体フロア側のバックル6に対して脱着可能となっている。ウェビング4は、初期状態ではリトラクタ3に巻き取られており、乗員mが手で引き出し、タングプレート5をバックル6に固定することによって乗員mの主に胸部と腹部をシート2に対して拘束するようになる。
【0012】
図2は、シートベルト装置1のリトラクタ3部分を示す側面図であり、図3は、シートベルト装置1のリトラクタ3部分を中心とする概略的な縦断面図である。
シートベルト装置1は、ウェビング4の引き出しと巻き取りを行うリトラクタ3に、ウェビング4の急激な引き出しを規制するロック機構7と、緊急時に、ウェビング4の引き込みを行うプリテンショナ8が設けられている。
【0013】
リトラクタ3は、リトラクタフレーム10に、ウェビング4を巻回するベルトリール11が回転可能に支持され、ベルトリール11の軸方向の一端側に上記ロック機構7と、ベルトリール11をウェビング巻き取り方向に付勢する巻き取りばね12が配置されるとともに、ベルトリール11の軸方向の他端側にプリテンショナ8の主要な構成要素が配置されている。
【0014】
プリテンショナ8は、ガス圧を駆動源として回転力を発生するアクチュエータ13と、ミリ波レーダー等の緊急状態検知手段14と、緊急状態検知手段14から検知信号を受けてアクチュエータ13に作動指令を出力するコントローラ15(制御手段)とを備えている。このシートベルト装置1では、アクチュエータ13は、それぞれ個別にガス発生器20(推力発生部)を備えた2つのアクチュエータユニット13A,13B(アクチュエータ要素)によって構成されている。これらのアクチュエータユニット13A,13B(以下、これらを区別するために、それぞれ「第1のアクチュエータユニット13A」「第2のアクチュエータユニット13B」と呼ぶ。)は、ベルトリール11の軸方向の他端側に直列に配置され、コントローラ15による制御によって各ガス発生器20を作動させるようになっている。
【0015】
この参考例の場合、コントローラ15は、緊急状態検知手段14からの検知信号に応じて、つまり、予測される衝突の大きさ等に応じて、以下の(a)〜(c)のいずれかの作動を選択して実行する。
(a)第1のアクチュエータユニット13Aの単独作動。
(b)第1のアクチュエータユニット13Aと第2のアクチュエータユニット13Bの連続作動(タイムラグを持たせて各ガス発生器20を作動させる)。
(c)第1のアクチュエータユニット13Aと第2のアクチュエータユニット13Bの同時作動。
【0016】
両アクチュエータユニット13A,13Bは同様の構成のアクチュエータ本体部16を備えており、第1のアクチュエータユニット13Aのアクチュエータ本体部16は遠心クラッチ17(断接手段)を介してベルトリール11に接続され、第2のアクチュエータユニット13Bのアクチュエータ本体部16は、ワンウェイクラッチ18を介して増速機構19に接続されている。そして、増速機構19の高速回転側にはフライホイール21が接続され、増速機構19の低速回転側には遠心クラッチ22(断接手段)を介してベルトリール11が接続されている。
【0017】
図4は、各アクチュエータユニット13A,13Bのアクチュエータ本体部16の断面を示すものである。
同図に示すように、各アクチュエータユニット13A,13Bのアクチュエータ本体部16は、コントローラ15からの作動指令を受けて瞬時に反応ガスを発生するガス発生器20と、ハウジング23内に回転可能に設けられ、外周に複数の羽根部24aを有するロータ24と、ガス発生器20からロータ24の羽根部24aに向かう湾曲したガイド通路を形成する誘導パイプ25と、誘導パイプ25に充填された複数のスチールボール26とを備えている。このアクチュエータ本体部16は、誘導パイプ25内の複数のスチールボール26がガス発生器20で発生する反応ガスのガス圧を受けてロータ24の羽根部24aに向かって連続的に打ち出され、このときスチールボール26がロータ24を連続的に回転させる。
また、第2のアクチュエータユニット13Bのアクチュエータ本体部16は、図2,図3に示すように、ガス発生器20に分岐パイプ27を介してアキュムレータ28が接続され、アキュムレータ28の蓄圧機能によってガス圧供給の持続時間の延長が図られている。
【0018】
第2のアクチュエータユニット13Bのフライホイール21は、軸方向の一端側が開口する有底円筒状の中空構造とされている。そして、フライホイール21は、一端側の開口がアクチュエータ本体部16側に向くようにアクチュエータ本体部16に隣接して配置され、アクチュエータ本体部16のハウジング23に図示しない軸受を介して回転可能に支持されている。
【0019】
また、フライホイール21の中空部21a内に臨む軸心位置には小径の外歯歯車30がフライホイール21と一体に設けられ、外歯歯車30の歯面には、フライホイール21の中空部21a内に収容配置された有底円筒状の内歯歯車31が噛合されている。外歯歯車30と内歯歯車31は増速機構19を構成し、内歯歯車31の回転を歯数比に応じた比率に増速し、外歯歯車30(フライホイール21)に伝達するようになっている。
【0020】
内歯歯車31は、第2のアクチュエータユニット13Bのロータ24にワンウェイクラッチ18を介して接続されている。ワンウェイクラッチ18は、第2のアクチュエータユニット13Bのアクチュエータ本体部16(ロータ24)から増速機構19(内歯歯車31)へのウェビング引き込み方向の回転動力の伝達を許容し、増速機構19(内歯歯車31)からアクチュエータ本体部16(ロータ24)への動力の伝達を遮断するようになっている。
【0021】
また、内歯歯車31には連結軸31aが一体に設けられ、この連結軸31aが遠心クラッチ22を介してベルトリール11に対して断接可能にされている。遠心クラッチ22は、連結軸31aの回転が停止している間は内歯歯車31とベルトリール11を切断状態に維持しており、フライホイール21の回転に応じて連結軸31aが回転すると、そのときの遠心力によって内歯歯車31とベルトリール11を接続状態にする。
ところで、内歯歯車31の連結軸31aはベルトリール11の回転軸P2に対して同軸に配置され、内歯歯車31は、フライホイール21の中空部21a内において、外歯歯車30に噛合されている。したがって、フライホイール21の回転軸P1は、ベルトリール11の回転軸P2に対して径方向にオフセットして配置されている。
【0022】
ここで、連結軸31a(内歯歯車31)とベルトリール11を断接する遠心クラッチ22の構造について、図2,図3および図5,図6を参照して説明する。
遠心クラッチ22は、連結軸31aに設定角度の回動を許容した状態で連結され、複数の連結ピン40を進退可能に保持するピン保持ブロック41と、連結軸31aの先端部に取り付けられてピン保持ブロック41の連結ピン40の進退動作を制御する制御プレート42と、ベルトリール11に一体回転可能に連結されるとともに連結ピン40の嵌合孔43(図6参照)を有するピン受容ブロック44と、を備えている。
【0023】
ピン保持ブロック41は、ピン受容ブロック44側に向かって開口する複数のピン収容穴45が円周方向に沿って設けられ、その各ピン収容穴45内に、連結ピン40と、その連結ピン40を突出方向に付勢する付勢ばね46とが収容されている。ピン受容ブロック44側の嵌合孔43はピン保持ブロック41の各連結ピン40に対応するように形成されている。また、制御プレート42には、ピン保持ブロック41の各連結ピン40に対応する貫通孔47(図6参照)が形成されている。
【0024】
制御プレート42は、初期状態では、各貫通孔47が連結ピン40に対して円周方向にずれて配置され、貫通孔47のない領域において各連結ピン40の突出変位を規制している。したがって、この状態ではピン保持ブロック41とピン受容ブロック44が非接触状態とされ、増速機構19とベルトリール11が動力遮断状態とされている。
【0025】
そして、この状態からガス発生器20でのガスの発生によって第2のアクチュエータユニット13Bが急激に作動すると、ピン保持ブロック41と制御プレート42が円周方向で設定角度ずれ、ピン保持ブロック41側の複数の連結ピン40が制御プレート42の貫通孔47を貫通して、ピン受容ブロック44の対応する嵌合孔43に嵌合されるようになる。これにより、ピン保持ブロック41とピン受容ブロック44が連結され、増速機構19とベルトリール11が動力伝達状態とされる。
【0026】
以上の構成において、車両の走行時に緊急状態検知手段14が緊急状態を検知すると、コントローラ15が上記の(a)〜(c)のいずれか一つの作動を選択し、実行するようになる。
上記の(a)の作動が選択された場合には、図5に示すように、コントローラ15から第1のアクチュエータユニット13Aのガス発生器20に作動信号が出力され、そのガス発生器20が瞬時に高圧の反応ガスを発生してロータ24を瞬発的に回転させる。こうしてロータ24が回転すると、その回転は遠心クラッチ17を介してベルトリール11に伝達され、ベルトリール11をウェビング巻き取り方向に回転させる。
したがって、上記の(a)の作動が選択された場合には、比較的軽微な衝突に対応することが可能になる。
【0027】
上記の(b)の作動が選択された場合には、コントローラ15から第1のアクチュエータユニット13Aのガス発生器20に作動信号が出力された後、僅かなタイムラグをもって第2のアクチュエータユニット13Bのガス発生器20に作動信号が出力される(図6参照)。これにより、第1のアクチュエータユニット13Aにつづいて第2のアクチュエータユニット13Bのロータ24が瞬発的に回転し、その回転がワンウェイクラッチ18を介して増速機構19の内歯歯車31に伝達される。このときの内歯歯車31の回転は、遠心クラッチ22を作動させてベルトリール11をウェビング巻き取り方向に回転させるとともに、外歯歯車30を介して増速した回転としてフライホイール21に伝達される。これにより、ガス圧によるアクチュエータ本体部16の駆動力によってウェビング4が引き込まれるとともに、アクチュエータ本体部16の回転エネルギーがフライホイール21に蓄えられる。
そして、この直後にスチールボール26の打ち込みの終了によって第2のアクチュエータユニット13Bのアクチュエータ本体部16が減速すると、ワンウェイクラッチ18の機能によって増速機構19からアクチュエータ本体部16が切り離され、フライホイール21がアクチュエータ本体部16の影響を受けずに回転を継続するようになる。これにより、アクチュエータ本体部16の減速後にも、フライホイール21の慣性エネルギーによってベルトリール11によるウェビング4の引き込みが継続される。
したがって、上記の(b)の作動が選択された場合には、大きな衝突時に乗員mの慣性エネルギーを充分な時間をもって効率良く吸収することが可能になる。
【0028】
また、上記の(c)の作動が選択された場合には、コントローラ15から両アクチュエータユニット13A,13Bのガス発生器20に同時に作動信号が出力され、両アクチュエータユニット13A,13Bの駆動力が遠心クラッチ17,22を介してベルトリールに同時に伝達される。
したがって、上記の(c)の作動が選択された場合には、緊急時に大きな力で急激に乗員mを拘束することが可能になる。
【0029】
このシートベルト装置1は、以上のようにコントローラ15が車両の状況に応じて第1のアクチュエータユニット13Aと第2のアクチュエータユニット13Bを選択的に作動制御するため、ウェビング4による乗員拘束の継続長さや力を状況に応じて適切に制御することができる。
【0030】
また、このシートベルト装置1においては、第2のアクチュエータユニット13Bの回転力をフライホイール21の慣性回転に変換してベルトリール11に伝達するようになっているため、ウェビング4による乗員拘束をより長時間継続させ、乗員の慣性エネルギーをより効率良く吸収することができる。
【0031】
さらに、このシートベルト装置1では、各アクチュエータユニット13A,13Bとベルトリール11の間に遠心クラッチ17,22が介装されているため、一方のアクチュエータユニット13A(または13B)がベルトリール11に単独で駆動力を伝達しているときに、残余のアクチュエータユニット13B(または13A)による回転抵抗の増大を無くすことができる。
【0032】
また、この参考例のシートベルト装置1は、第1のアクチュエータユニット13Aと第2のアクチュエータユニット13Bがベルトリール11の側部に直列に配置されているため、プリテンショナ8の外径の縮小化を図ることができる。
【0033】
図7は、この発明の実施形態を示すものである。以下、この実施形態について説明するが、上記の参考例と同一部分には同一符号を付し、重複する説明を省略するものとする。
この実施形態は、上記の参考例と同様にコントローラによって選択的に作動制御される第1のアクチュエータユニット13Aと第2のアクチュエータユニット13Bを備えたものであるが、両アクチュエータユニット13A,13Bがベルトリール11の側部に並列に配置されている点が上記の参考例と異なっている。
【0034】
第1のアクチュエータユニット13Aは、アクチュエータ本体部16のロータ24が遠心クラッチ17を介して第1のギヤ50に接続され、第2のアクチュエータユニット13Bは、アクチュエータ本体部16のロータ24が遠心クラッチ117を介して第2のギヤ51に接続されている。そして、ベルトリール11には入力ギヤ53が一体に設けられており、この入力ギヤ53に伝達ギヤ54,55を介して第1のギヤ50と第2のギヤ51が動力伝達可能に係合されている。また、各アクチュエータユニット13A,13Bは、上記の参考例と同様に、緊急状態検知手段の検出信号に応じてコントローラによって選択的に作動制御されるようになっている。
この実施形態のシートベルト装置101は、上記の参考例とは両アクチュエータユニット13A,13Bの配置が異なるものの、ほぼ同様の効果を得ることができる。ただし、両アクチュエータユニット13A,13Bが並列に配置されているため、プリテンショナ8の軸長の短縮化を図ることができる。
【0035】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、二つのアクチュエータユニット13A,13Bを備えたシートベルト装置について説明したが、アクチュエータユニットを三つ以上設けることも可能である。
また、第1のアクチュエータユニットと第2のアクチュエータユニットを設ける場合には、両アクチュエータユニットの出力を異ならせるようにしても良い。この場合には、第1のアクチュエータユニットの単独作動と、第2のアクチュエータユニット単独作動と、両アクチュエータの同時作動によって出力の異なる3段階の作動を容易に得ることができる。
【0036】
また、上記の実施形態から把握できる他の発明の形態とその効果を以下に列記する。
(A)請求項1または2に記載の車両のシートベルト装置において、前記複数のアクチュエータ要素のいずれか一つの駆動力を前記ベルトリールに伝達する際に、前記残余のアクチュエータ要素と前記ベルトリールの接続を切断状態に維持する断接手段(例えば、実施形態における遠心クラッチ17,117)を設けたことを特徴とする。
これにより、一つのアクチュエータ要素の駆動力がベルトリールに伝達されるときには、残余のアクチュエータ要素が停止、若しくは、減速状態であっても残余のアクチュエータ要素の影響を受けることがなくなる。
そして、この(A)に記載の発明によれば、複数のアクチュエータ要素のいずれか一つの駆動力をベルトリールに伝達する際に、残余のアクチュエータ要素とベルトリールの接続を断接手段によって切断することにより、残余のアクチュエータによる回転抵抗の増大を無くすことができるため、アクチュエータ要素の駆動力利用の効率化を図ることが可能になる。
【0037】
(B)請求項1,2,(A)のいずれか1項に記載の車両のシートベルト装置において、前記アクチュエータを二つのアクチュエータ要素から構成し、この二つのアクチュエータ要素の出力を異ならせたことを特徴とする。
これにより、各アクチュエータ要素を単独で作動させる場合と、両アクチュエータ要素を同時に作動させる場合で、出力の異なる3段階の作動を得ることが可能になる。
そして、この(B)に記載の発明によれば、二つのアクチュエータ要素の出力を異ならせたため、各アクチュエータ要素の作動の有無を組み合わせることによって出力の異なる3段階の作動を容易に得ることができる。
【符号の説明】
【0038】
101…シートベルト装置
4…ウェビング
11…ベルトリール
13…アクチュエータ
13A…第1のアクチュエータユニット(アクチュエータ要素)
13B…第2のアクチュエータユニット(アクチュエータ要素)
20…ガス発生器(推力発生部)
21…フライホイール(慣性質量体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員を拘束するウェビングが巻回されるベルトリールと、
緊急時に発生ガスによって瞬発的な回転駆動力を発生するアクチュエータを備え、
前記アクチュエータによる回転駆動力によって前記ベルトリールをウェビング引き込み方向に回転させる車両のシートベルト装置であって、
前記アクチュエータを、
反応ガスによる推力発生部を個別に備えた複数のアクチュエータ要素と、
この複数のアクチュエータ要素を選択的に作動制御する制御手段を備えた構成とし、
前記複数のアクチュエータ要素を並列に配置したことを特徴とする車両のシートベルト装置。
【請求項2】
前記アクチュエータ要素のうちの少なくとも一つに、当該アクチュエータ要素による駆動力によって作動する慣性質量体を連結し、この慣性質量体の作動を前記ベルトリールに伝達することを特徴とする請求項1に記載の車両のシートベルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−82455(P2013−82455A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−26062(P2013−26062)
【出願日】平成25年2月13日(2013.2.13)
【分割の表示】特願2008−109013(P2008−109013)の分割
【原出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】