説明

車両のタイヤ洗浄装置および洗浄方法

【課題】土木工事現場を出入りするトラックやダンプカー等のタイヤに付着した泥や土を効率的かつ確実に落すことのできる車両のタイヤ洗浄装置および洗浄方法を提供する。
【解決手段】車両Aの進行方向に湿式洗浄機1、ロードマット2およびエアーブロー式洗浄機3を順に設置する。湿式洗浄機1は、スプレー水を噴き付けてタイヤに付着した泥や土を落すスプレー水噴射ノズル4を備えて構成する。ロードマット2は、タイヤに付着した泥や土を落す複数のリブを備えて構成する。エアーブロー式洗浄機3は、タイヤに付着した泥や土を落し、さらにタイヤを乾燥させる高圧エアー噴射ノズルを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のタイヤ洗浄装置および洗浄方法に関し、主として土木工事現場を出入りするトラックやダンプカー等のタイヤの洗浄に利用され、タイヤに付着した泥や土を効率的かつ確実に落して、一般道の汚れを防止することができる。
【背景技術】
【0002】
土木工事現場を出入りする大型トラックやダンプカー等のタイヤは、一般に泥や土などが付着して汚れがひどく、道路上に泥や土を撒き散らしたり白いタイヤの跡を残したり、さらには乾燥した泥や土の粉塵を振り撒いて他の車両や市街地を汚すため、一般道を走行する際は事前に洗浄することが求められる。
【0003】
従来、泥や土で汚れた車両のタイヤを洗浄する方法として、高圧水によってタイヤに付着した泥や土を洗い落とす湿式洗浄(特許文献1)、タイヤが回転する際の遠心力や振動、摩擦などを利用してタイヤに付着した泥や土を落す乾式洗浄(特許文献2)、さらに水を満たしたプール内でタイヤに付着した泥や土を落とすプール洗浄(特許文献3)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−329737号公報
【特許文献2】実用新案登録第3017820号
【特許文献3】特開2004−237913号公報
【特許文献4】特開2009−101791号公報
【特許文献5】特開平7−52757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、タイヤを湿式洗浄しても、泥や土の細粒分を含む水が依然タイヤに付着していることが多く、このため、道路上にタイヤの跡が白い汚れとなって表れ、また乾燥して泥や土の細粒分が粉塵となって舞い、他の車両や市街地を汚す等の課題があった。
【0006】
また、タイヤを乾式洗浄しても、タイヤの遠心力や振動を利用する程度では、タイヤの溝に詰まった泥や土まで完全に取り除くことはきわめて困難であり、特にスタッドレスタイヤ等の溝の深いタイヤの洗浄は確実に行うことができなかった。また、湿式洗浄と同様に、道路上にタイヤの跡が白い汚れとなって表れたり、乾燥して泥や土の細粒分が粉塵となって舞い、他の車両や市街地を汚す等の課題があった。さらに、洗浄時の騒音が大きいのも課題になっていた。
【0007】
そして、プール洗浄しても、湿式洗浄や乾式洗浄と同様の課題がある他に、泥や土の細粒分を含む水のはね返りによって他の車両を汚す等の課題もあった。
【0008】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、主として土木工事現場を出入りする工事用トラックのタイヤの洗浄を効率的かつ確実に行うことができ、一般道の汚れを防止することのできる車両のタイヤ洗浄装置および洗浄方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の車両のタイヤ洗浄装置は、車両の進行方向に順に設置された湿式洗浄機、ロードマットおよびエアーブロー式洗浄機を備え、前記湿式洗浄機は、スプレー水を噴き付けてタイヤに付着した泥や土を落すスプレー水噴射ノズルを備え、前記ロードマットは、タイヤに付着した泥や土を落す複数のリブを備え、かつ前記エアーブロー式洗浄機は、タイヤに付着した泥や土を落し、さらにタイヤを乾燥させる高圧エアー噴射ノズルを備えてそれぞれ構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明は、スプレー水とロードマットと高圧エアーの三つの洗浄手段によってタイヤの洗浄を順に行うことにより、タイヤに付着した泥や土を効率的かつ確実に落すことを可能にしたものであり、特に、溝内の洗い残しの泥や土は、車両がロードマットの上を自走する際にロードマットのリブによって確実に落すことができ、特にスタッドレスタイヤ等のような溝の深いタイヤの洗浄を確実かつ容易に行うことができる。
【0011】
また、車両がロードマットの上を自走する際、溝内の泥や土がリブによって直接除去され、さらにタイヤがリブに加圧されて変形することにより溝内の泥や土が除去される。
【0012】
また、タイヤの回転による水切りがなされ、さらに高圧エアーを噴き付けてタイヤに付着した泥や土を落す際に、同時にタイヤの乾燥がなされることにより、洗浄後の車両がそのまま一般道を走行しても道路上に白いタイヤの跡を残したり、水はねによって他の車両や市街地を汚す等の事態を防止することができる。
【0013】
請求項2記載の車両のタイヤ洗浄装置は、請求項1記載の車両のタイヤ洗浄装置において、湿式洗浄機のスプレー水噴射ノズルは、スプレー水と同時に高圧エアーを噴き付けるように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明によれば、スプレー水と同時に高圧エアーを噴き付けることにより、タイヤに付着した泥や土をより確実かつ容易に落すことができる。
【0015】
請求項3記載の車両のタイヤ洗浄方法は、スプレー水を噴き付けてタイヤに付着した泥や土を落す第一工程と、車両にロードマットの上を走行させてロードマットのリブによってタイヤに付着した泥や土を落し、かつタイヤの遠心力によってタイヤに付着した水を除去する第二工程と、高圧エアーを噴き付けてタイヤに付着した泥や土を落し、さらにタイヤを乾燥させる第三工程とからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、スプレー水とロードマットと高圧エアーの三つの洗浄手段によってタイヤの洗浄を順に行うことにより、タイヤに付着した泥や土を効率的かつ確実に落すことができ、特に、タイヤの溝内に詰まっている洗い残しの泥や土は、車両がロードマットの上を自走する際にロードマットのリブによって確実に落すことができる。
【0017】
また、車両がロードマットの上を自走する際に、タイヤの回転による水切りがなされ、さらに高圧エアーを噴き付けてタイヤに付着した泥や土を落す際に、同時にタイヤの乾燥がなされることにより、洗浄後の車両がそのまま一般道を走行しても道路上に白いタイヤの跡を残したり、水はねによって他の車両を汚す等の事態を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】湿式洗浄機、ロードマットおよびエアーブロー式洗浄機の配置状態を示す平面図である。
【図2】湿式洗浄機を示し、(a)は図1におけるイ−イ線端面図、(b)は図1におけるロ−ロ線端面図である。
【図3】エアーブロー式洗浄機を示し、(a)は図1におけるハ−ハ線端面図、(b)は図1における二−二線端面図である。
【図4】湿式洗浄機を示し、(a)は平面図、(b)は図(a)におけるホ−ホ線端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜図4は、本発明の一実施形態を示し、図において、車両Aの進行方向に湿式洗浄機1、ロードマット2、エアーブロー式洗浄機3がこの順で配置されている。
【0020】
湿式洗浄機1は、スプレー方式によってタイヤBに水を噴き付けることによりタイヤBに付着した泥や土を洗い落すタイヤ洗浄機であり、タイヤBを車体に取り付けたまま載せる一組のロール4,4、ロール駆動モーター(図省略)、ロールの4,4の上で回転するタイヤBにその両サイドおよび下から高圧水を吹き付ける複数のスプレー水噴射ノズル5、および洗い落とされた泥や土を排出する排泥コンベヤー6等を備えて構成されている。
【0021】
ロール4,4は所定間隔をおいて並列に設置され、車両Aの車体後部に取り付けられたタイヤBの前輪を載せる前輪用と後輪を載せる後輪用の二組を備えている。
【0022】
なお、スプレー水噴射ノズル5として、スプレー水と共に高圧エアーを噴き付けるように構成されたタイプの噴射ノズルを使用することにより、タイヤの洗浄効果を高めることができる。
【0023】
ロードマット2は、本来軟弱地などに敷設することにより沈み込みを防止して安定した仮設道路を提供するマットであり、ロードマット2の上を車両Aが走行する際、縦リブと横リブによってタイヤBの特に溝などに付着している洗い残しの泥や土を落し、さらにタイヤBの回転による遠心力によってタイヤBに付着した水を切ることができる。なお、ロードマット2は、タイヤBの汚れ具合などにより数メートルから数十メートルの長さに敷設されている。
【0024】
そして、エアーブロー式洗浄機3は、車両のタイヤBに付着した水と泥や土の細粒分を、高圧エアーを噴き付けることにより除去し、さらにタイヤBの乾燥を行うタイヤ洗浄機であり、タイヤBを車体に取り付けたまま載せる二組のロール7,7、ロール駆動モーター(図省略)、ロール7,7の上で回転するタイヤBにその両サイドおよび下から高圧エアーを噴き付ける複数のエアー噴射ノズル8、噴き落とされた泥や土を排出する排泥コンベヤー9等を備えて構成されており、特にエアー噴射ノズル8には周囲の空気を吸い込んでエアーを増幅させ、かつ騒音を発生させないように静音設計されたノズルが用いられている。
【0025】
また、ロール7,7は所定間隔をおいて並列に設置され、車両Aの車体後部に取り付けられたタイヤBの前輪を載せる前輪用と後輪を載せる後輪用の二組を備えている。
【0026】
なお、エアーブロー式洗浄機3は、湿式洗浄機1の配管にエアーコンプレッサー(75KW程度)を接続して、スプレー水の代わりに高圧エアーを噴射するように湿式洗浄機1を改良して利用することができる。
【0027】
その際、エアー噴射ノズル8の取付け位置は湿式洗浄機1に取り付けられているスプレー水噴射ノズルの設置数より多くすることにより、タイヤBに付着した水分と細粒分を効率的に除去することができる。
【0028】
このような構成において、次に本装置によるトラック等の車両AのタイヤBの洗浄方法について説明する。
【0029】
(1) 湿式洗浄機による洗浄
湿式洗浄機1のロール4,4の上にタイヤBを車体ごと載せる。その際、前輪用の一組のロール4,4の上に車体後部に取り付けられたタイヤBの前輪を、後輪用の一組のロール4,4の上に後輪をそれぞれ載せる。
【0030】
そして、タイヤBにスプレー水を高圧で噴き付ける。また、ロール駆動モーターを始動してロール4,4を回転することによりタイヤBを回転させる。また、排泥コンベヤー6を始動する。
【0031】
こうして、前輪と後輪のタイヤBとホイールを数十秒で効率良く洗浄することができる。なお、高圧スプレー水と共に高圧エアーを噴き付けることにより泥や土をより確実に落すことができる。
【0032】
(2) ロードマット2による洗浄
湿式洗浄機1によって主な泥や土が落せたら、次に車両Aをロードマット2の上まで前進させ、ロードマット2の上を自走させる。そうすることにより、タイヤBの特に溝などに残っている泥や土がロードマット2の縦リブと横リブによって落すことができる。また、タイヤBの回転による遠心力によってタイヤBに付着している水を切って落すことができる。
【0033】
(3) エアーブロー式洗浄機3による洗浄
湿式洗浄機1によって主な泥や土が落ち、ロードマット2によって泥や土がほぼ完全に落ち、さらに水切りが完了したら、エアーブロー式洗浄機3のロール7,7の上にタイヤBを車体ごと載せる。
【0034】
その際、前輪用の一組のロール7,7の上に車体後部に取り付けられたタイヤBの前輪を、後輪用の一組のロール7,7の上に後輪をそれぞれ載せる。
【0035】
そして、タイヤBにエアーを高圧で噴き付ける。また、ロール駆動モーターを始動してロール7,7を回転することによりタイヤBを回転さ、排泥コンベヤー9を始動する。こうして、高圧エアーの噴き付けによって前輪の洗浄を行い、続いて後輪の乾燥を行うことができる。
【0036】
乾燥は概ね1分毎行うことで水切りを行うことができる。また、効率的なエアー消費量(0.4MPa、600/min)があり、特にスタッドレスタイヤ等の溝の深い部分の水や微粒分を除去するのに有効である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、工事現場を出入りするトラックやダンプカー等のタイヤに付着した泥や土を効率的にかつ確実に除去することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 湿式洗浄機
2 ロードマット
3 エアーブロー式洗浄機
4 ロール
5 スプレー水噴射ノズル
6 排泥コンベヤー
7 ロール
8 高圧エアー噴射ノズル
9 排泥コンベヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向に順に設置された湿式洗浄機、ロードマットおよびエアーブロー式洗浄機を備え、前記湿式洗浄機は、スプレー水を噴き付けてタイヤに付着した泥や土を落すスプレー水噴射ノズルを備え、前記ロードマットは、タイヤに付着した泥や土を落す複数のリブを備え、かつ前記エアーブロー式洗浄機は、タイヤに付着した泥や土を落し、さらにタイヤを乾燥させる高圧エアー噴射ノズルを備えてそれぞれ構成されていることを特徴とする車両のタイヤ洗浄装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両のタイヤ洗浄装置において、スプレー水噴射ノズルは、スプレー水と同時に高圧エアーを噴き付けるように構成されていることを特徴とする車両のタイヤ洗浄装置。
【請求項3】
スプレー水を噴き付けてタイヤに付着した泥や土を落す第一工程と、車両にロードマットの上を走行させてロードマットのリブによってタイヤに付着した泥や土を落し、かつタイヤの遠心力によってタイヤに付着した水を除去する第二工程と、高圧エアーを噴き付けてタイヤに付着した泥や土を落し、かつタイヤを乾燥させる第三工程とからなることを特徴とする車両のタイヤ洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−235773(P2011−235773A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109304(P2010−109304)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000149594)株式会社大本組 (40)
【Fターム(参考)】