車両のトノカバー装置
【課題】バックドアの開放操作時に、簡単な構成で後部荷室の後方部を広範囲に亘って開放することにより、荷物の出し入れを容易化できるようにする。
【解決手段】車体の後方に形成された後方開口部1と、該後方開口部1を開閉可能に覆うバックドア3と、上記後方開口部1の前方側に形成された後部荷室5を備えるとともに、該後部荷室5の上方部にトノボード7が略水平な展開状態で設置された車両のトノカバー装置であって、上記トノボード7は、車両の前後方向に位置する前部ボード10および後部ボード11を有するとともに、該前部ボード10の後端部と後部ボード11の前端部とがヒンジ部13により屈曲可能に連結され、上記バックドア3の開放動作に伴って後部ボード11を略水平な初期状態から後端部を上昇させるように駆動する上昇駆動手段と、上記前部ボード10の後端部を初期位置よりも前方に移動させるように駆動する前動駆動手段とを備えた。
【解決手段】車体の後方に形成された後方開口部1と、該後方開口部1を開閉可能に覆うバックドア3と、上記後方開口部1の前方側に形成された後部荷室5を備えるとともに、該後部荷室5の上方部にトノボード7が略水平な展開状態で設置された車両のトノカバー装置であって、上記トノボード7は、車両の前後方向に位置する前部ボード10および後部ボード11を有するとともに、該前部ボード10の後端部と後部ボード11の前端部とがヒンジ部13により屈曲可能に連結され、上記バックドア3の開放動作に伴って後部ボード11を略水平な初期状態から後端部を上昇させるように駆動する上昇駆動手段と、上記前部ボード10の後端部を初期位置よりも前方に移動させるように駆動する前動駆動手段とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の後方に形成された後方開口部と、該後方開口部を開閉可能に覆うバックドアと、この後方開口部の前方側に形成された後部荷室と、該後部荷室の上方部に略水平な展開状態で設置されるトノボードを備えた車両のトノカバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、バックドア(尾部ゲート)を備えた自動車において、後部座席のシートバックに固定された前方側パネルと、該前方側パネルの後方に配設された後方側パネルとで、後部荷室を上下二つの荷物入れ空間に区画するとともに、上記バッグドアの開放操作時に上記後方側パネルの後端部を引き上げるように駆動する一対の腕を備えた自動支持装置を設け、後部荷室の下方空間に対する荷物の出し入れを容易に行い得るように該空間の後部上面を開放することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭39−16961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されているように、後部荷室の後方上部を覆うように設置された所定幅の後方側パネルをバッグドアの開放操作に連動させて引き上げるように構成した場合には、該後方側パネルの後端部が後部荷室の側面または上端部に接触しないように設計する必要がある。このため、上記後方側パネルの大きさまたはその可動範囲が制限されたり、上記構造を適用できる車種が限定されたりする等の問題があった。
【0005】
すなわち、通常の乗用車では、背面視で車体上部が上窄まりに形成されるとともに、平面視で後部車体が後窄まりの流線形に形成されているため、上記後方側パネルの幅寸法を後部荷室の幅寸法に対応した値に設定すると、バッグドアの開放操作に連動させて上記後方側パネルの後端部を引き上げるように駆動する際に、その側端部が、幅寸法が狭くなった後部荷室の側面上部に干渉し易いという問題がある。これを防止するためには、後方側パネルの車幅方向寸法または可動範囲を小さく設定したり、あるいは車体後部が箱形に形成された所謂ステーションワゴンタイプ等のみに適用可能な車両が限定されたりする等の問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、バックドアの開放操作時に、簡単な構成で後部荷室の後方部を広範囲に亘って開放することにより、荷物の出し入れを容易に行うことができる車両のトノカバー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体の後方に形成された後方開口部と、該後方開口部を開閉可能に覆うバックドアと、上記後方開口部の前方側に形成された後部荷室を備えるとともに、該後部荷室の上方部にトノボードが略水平な展開状態で設置された車両のトノカバー装置であって、上記トノボードは、車両の前後方向に位置する前部ボードおよび後部ボードを有するとともに、前部ボードの後端部と後部ボードの前端部とがヒンジ部により屈曲可能に連結され、上記バックドアの開放動作に伴って後部ボードを略水平な初期状態から後端部を上昇させるように駆動する上昇駆動手段と、上記前部ボードの後端部を初期位置よりも前方に移動させるように駆動する前動駆動手段とを備えたものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両のトノカバー装置において、上記前動駆動手段が、バックドアの開放動作に伴って上記前部ボードと後部ボードとの連結部を略水平に前方へ移動させるように構成されたものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両のトノカバー装置において、上記バックドアの閉止動作に伴って前部ボードおよび後部ボードを略水平な初期状態に復帰させるように付勢する付勢手段を備えたものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、上記請求項3に記載の車両のトノカバー装置において、上記付勢手段が、前部ボードと後部ボードとの連結部に配設されて後部ボードの後端部を下方に付勢する捩りコイルばねからなるものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両のトノカバー装置において、上記前部ボードの前方には補助ボードが配設されるとともに、該補助ボードと前部ボードとが山折れ可能に連結され、上記バックドアの開放操作時に、該補助ボードと前部ボードとの連結部が上方に駆動されて該補助ボードと前部ボードとが山折り状態となることにより、該前部ボードの後端部が前方に移動するように構成されたものである。
【0012】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両のトノカバー装置において、上記前部ボードおよび後部ボードが、その前後幅が略等しく設定されるとともに、車体から取外し可能に構成されたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、トノボードを構成する前部ボードの後端部と後部ボードの前端部とをヒンジ部により屈曲可能に連結するとともに、上記バックドアの開放動作に伴って後部ボードを略水平な初期状態から後端部を上昇させるように駆動する上昇駆動手段と、上記前部ボードの後端部を初期位置よりも前方に移動させるように駆動する前動駆動手段とを設けたため、後部パネルの大きさまたはその可動範囲が制限される等の問題を生じることなく、バックドアの開放操作時に、簡単な構成で後部荷室の後方部を広範囲に亘って開放することにより、後部荷室に対する荷物の出し入れを容易に行うことができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、バックドアの開放動作に伴って上記前部ボードと後部ボードとの連結部を略水平に前方へ移動させるように構成したため、上記トノボードの下方に物品を収納した状態で上記バックドアを開放操作して上記前部ボードと後部ボードとの連結部を前方に移動させる際等に、該連結部が上記物品の上面に接触するのを防止して該物品が傷つくのを効果的に防止できるという利点がある。
【0015】
請求項3に係る発明では、上記バックドアの閉止動作に伴って前部ボードおよび後部ボードを略水平な初期状態に復帰させるように付勢する付勢手段を設けたため、上記バックドアを閉止する際に、トノボードを手作業で引き伸ばす等の煩雑な操作を要することなく、該トノボードを略水平な展開状態として後部荷室の上方部に設置できるという利点がある。
【0016】
請求項4に係る発明に示すように、前部ボードと後部ボードとの連結部に配設されて後部ボードの後端部を下方に付勢する捩りコイルばねにより上記付勢手段を構成した場合には、上記ヒンジ部とともに付勢手段を同時に取り付けることができるため、その取付作業を容易化できるとともに、後部荷室に対する荷物の出し入れ作業時に上記付勢手段が邪魔になるのを効果的に防止できる等の利点がある。
【0017】
請求項5に係る発明では、上記前部ボードと前方の補助ボードとを山折れ可能に連結し、上記バックドアの開放操作時に該補助ボードと前部ボードとの連結部を上方に駆動して、上記補助ボードと前部ボードとを山折り状態とすることにより、前部ボードを初期位置よりも車両の前方側へ自動的に移動させるように構成したため、別体のアクチュエータ等を設けることなく、上記バックドアの開放動作に伴って後部荷室の開放面積を効果的に拡大することができ、簡単な構成で後部荷室に対する荷物の出し入れ作業を容易に行うことができる。
【0018】
請求項6に係る発明では、上記前部ボードおよび後部ボードの前後幅を略等しく設定するとともに、該前部ボードおよび後部ボードを車体から取外し可能に構成したため、これらを折り畳むことによりトノボードをコンパクト化して容易に格納できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る車体のトノカバー装置の第1実施形態を示す説明図である。
【図2】バックドアを開放した状態を示す背面図である。
【図3】トノボードの具体的構成を示す斜視図である。
【図4】トノボードの具体的構成を示す側面断面図である。
【図5】固定ボードの支持構造を示す斜視図である。
【図6】固定ボードの設置状態を示す説明図である。
【図7】バックドアの開放開始状態を示す説明図である。
【図8】バックドアの開放過程を示す説明図である。
【図9】バックドアの開放過程を示す説明図である。
【図10】バックドアの開放状態を示す説明図である。
【図11】トノボードの格納状態を示す説明図である。
【図12】本発明に係る車体のトノカバー装置の第2実施形態を示す説明図である。
【図13】バックドアを開放した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜図4は、本発明に係る車体のトノカバー装置の第1実施形態を示している。この車両は、車体後部に形成された後方開口部1と、上端枢支部2を支点として揺動変位することにより上記後方開口部1を開閉可能に覆うバックドア3と、上記後方開口部1と後列シート4との間に形成された後部荷室5とを備え、該後部荷室5の底面部を構成するフロアパネル6の上方部には、トノボード7が略水平な展開状態で設置されている。
【0021】
上記トノボード7は、車両の前後方向に位置する前部ボード10および後部ボード11と、前部ボード10の前方側に配設された補助ボード9と、該補助ボード9の前方側に配設された固定ボード8とからなる4枚の分割ボード8〜11により構成され、各分割ボード8〜11は、その前後寸法が略等しい値に設定されている。上記前部ボード10の後端部と後部ボード11の前端部とは、図3および図4に示すように、蝶番等からなるヒンジ部13により屈曲可能に連結されている。該ヒンジ部13には、後述するようにバックドア3の閉止操作時に上記前部ボード10および後部ボード11を略水平な初期状態に復帰させるように付勢する捩りコイルばねからなる付勢手段14が設けられている。
【0022】
また、上記固定ボード8、補助ボード9および前部ボード10も、上記付勢手段14が設けられた蝶番等からなるヒンジ部13により相隣接するボードと屈曲可能に連結されている。そして、バックドア3の閉止時には、上記付勢手段14の付勢力に応じて各分割ボード8〜11の端面同士が当接した状態に保持されることにより、該各分割ボード8〜11が一直線状に伸張した状態となって、上記後部荷室5の上方部を覆うように構成されている。
【0023】
上記固定ボード8には、その左右両側端面から車幅方向の外方側に向けて突出する前後一対の係止ピン15,16が設けられている。また、上記補助ボード9には、その左右両側端面の後部から車幅方向の外方側に向けて突出する係止ピン17が設けられている。また、上記後列シート4のシートバック12の後方側に位置する後部荷室5の側壁部には、図5および図6に示すように、上下方向に延びるI型の第1係止溝18と、上下方向および後方側に延びるL型の第2係止溝19と、上下方向に延びるI型の第3係止溝20とが、上記係止ピン15〜17の設置間隔に対応した間隔で設けられている。
【0024】
そして、上記第2係止溝19に固定ボード8の後方側の係止ピン16が挿入されて係止されるとともに、上記第1係止溝18に固定ボード8の前方側の係止ピン15が挿入されて係止されることにより、上記固定ボード8が前後移動および上下移動が拘束された状態で、略水平に延びるように設置されている。なお、上記固定ボード8の係止ピン15,16を第1,第2係止溝18,19から抜き出すことにより、固定ボード8を車体から取り外し得るように構成されている。
【0025】
また、上記後部荷室5の側壁部に設けられた第3係止溝20に補助ボード9の係止ピン17が挿入されることにより、該補助ボード9の上方移動が許容された状態で車体に支持されている。さらに、上記後部荷室5の側壁部には、前部ボード10および後部ボード11が載置される支持部(図示せず)が突設され、該支持部上に上記前部ボード10および後部ボード11が載置された状態で支持されるようになっている。
【0026】
上記バックドア3の左右両側辺部には係止ピン24が突設され、該係止ピン24に、ワイヤー等の可撓性を有する線条体からなる第1,第2連結部材22,23の上端部が係脱可能に係止されるとともに、該第1連結部材22の先端部が上記補助ボード9の後部左右に係止されている。これにより上記バックドア3の開放操作時に、その駆動力が上記第1連結部材22を介して補助ボード9に伝達され、その後端部が斜め後方に引き上げられるようになっている。また、上記第2連結部材23は、その下端部が上記後部ボード11の後部左右に係止され、上記バックドア3の開放操作時に、その駆動力を上記後部ボード11に伝達することにより、該後部ボード11を略水平な初期状態から後端部を斜め前方に引き上げるように駆動する上昇駆動手段としての機能を有している。
【0027】
上記第1連結部材22は、バックドア3に設けられた係止ピン24の設置位置と後部ボード11の左右後部との間隔と略等しいか、あるいは該間隔よりもよりもやや長い全長を有している。一方、上記第2連結部材23は、バックドア3に設けられた係止ピン24の設置位置と補助ボード9の左右後部との間隔より所定距離だけ長い全長を有している。これにより、上記バックドア3の開放操作を開始した初期段階では、第2連結部材23が弛んだ状態となって、車両の後方側に位置する後部ボード11が、その前方側に位置する補助ボード9に先立って上方に引っ張られるように構成されている。
【0028】
また、上記後部荷室5の側壁部には、ワイヤー等の可撓性を有する線条体からなる第3連結部材25の下端部が係脱可能に係止される係止ピン26が突設されるとともに、該第3連結部材25の上端部が上記前部ボード10の側方部においてその前部に係止されている。上記第3連結部材25は、その全長が上記後部荷室5の側壁部に設けられた係止ピン26から前部ボード10の側方部までの間隔と略等しいか、あるいは該間隔よりもよりもやや長い値に設定されている。
【0029】
そして、後述するように上記バックドア3の開放操作時に、上記第3連結部材25により前部ボード10の側方部を斜め前部下方に引っ張ってその後端部が引き上げられるのを規制した状態で、上記第1連結部材22を介して補助ボード9の後端部を上方に駆動することにより、該補助ボード9と上記前部ボード10とを山折り状態として上記前部ボード10の後端部を初期位置よりも車両の前方側に移動させるように駆動する前動駆動手段が上記第1,第3連結部材22,25により構成されている。
【0030】
上記構成において、バックドア3の閉止時には、上記付勢手段14の付勢力に応じて略水平に展開した分割ボード8〜11からなる所定長さのトノボード7により後部荷室5の上方部が覆われている。この状態から、バックドア3の開放操作を開始すると、上記第3連結部材25によりトノボード7の前部ボード10の左右側方部が下方に引っ張られた状態で、上記第2連結部材23により後部ボード11の後部左右が上方に引っ張られる。この結果、上記付勢手段14の付勢力に抗して、図7に示すように後部ボード11が前方のヒンジ部13を支点に屈曲変位することにより、後部ボード11の後端部が上昇するように駆動される。
【0031】
上記バックドア3の開放操作に応じてその開度が増大すると、図8に示すように、上記第3連結部材25により前部ボード10の左右両側方部が斜め前部下方に引っ張られた状態で、上記第2連結部材23により後部ボード11の後部がさらに上方に引っ張られることにより、該後部ボード11と上記前部ボード10とが谷折り状態となる。また、上記第1連結部材22の弛みがなくなった時点で、該第1連結部材22により補助ボード9の後部が上方に引っ張られて該補助ボード9と上記前部ボード10とが山折り状態に屈曲し始める。
【0032】
また、上記バックドア3の開度がより大きくなると、図9に示すように、上記第3連結部材25により前部ボード10の左右両右側方部が支持された状態で、上記第1,第2連結部材22,23により補助ボード9および後部ボード11の後部がさらに上方に引っ張られて、該ボート9,11の屈曲角度が増大する。このようにして上記補助ボード9と前部ボード10とが急角度の山折り状態となることにより、該前部ボード10が前方へスライド変位するともに、上記前部ボード10と後部ボード11との谷折り角度が急角度となることにより、両ボード10,11の連結部が略水平に前方へスライド変位する。
【0033】
そして、図10に示すバックドア3の最大開放状態では、上記補助ボード9および前部ボード10の下面同士が互いに接近するとともに、該前部ボード10および後部ボード11の上面同士が互い接近して、上記補助ボード9、前部ボード10および後部ボード11からなる各可動ボードが蛇腹状に折り畳まれる。これにより、後部荷室5の後方部上面が大きく開放された状態となる。
【0034】
上記のように車体の後方に形成された後方開口部1と、該後方開口部1を開閉可能に覆うバックドア3と、上記後方開口部1の前方側に形成された後部荷室5と、該後部荷室5の上方部に略水平な展開状態で設置されるトノボード7とを備えた車両のトノカバー装置において、上記トノボード7に、車両の前後方向に位置する前部ボード10および後部ボード11を設けるとともに、前部ボード10の後端部と後部ボード11の前端部とをヒンジ部13により屈曲可能に連結し、上記バックドア3の開放動作に伴って後部ボード11を略水平な初期状態から後端部を上昇させるように駆動する上昇駆動手段と、上記前部ボード10の後端部を初期位置よりも前方に移動させるように駆動する前動駆動手段とを設けたため、バックドア3の開放操作時に、簡単な構成で後部荷室5の後方部を広範囲に亘って開放することにより、後部荷室5に対する荷物の出し入れを容易化できるという利点がある。
【0035】
すなわち、上記第1実施形態では、バックドア3の左右両側辺部と後部ボード11の左右後部とを連結するワイヤー等の可撓性を有する線条体からなる第2連結部材23を設け、該第2連結部材23からなる上昇駆動手段により、バックドア3の開放操作に応じて上記後部ボード11の後端部を上方に引っ張って上昇させるように構成したため、該後部ボード11による後部荷室5の閉止状態を容易かつ自動的に解除することができる。
【0036】
また、上記バックドア3の開放操作に応じて上記第1,第3連結部材22,25からなる前動駆動手段により上記補助ボード9と前部ボード10とを山折り状態として該前部ボード10の後端部を初期位置よりも車両の前方側に移動させるように構成したため、これに連動して上記後部ボード11を車両の前方側に移動させることにより、後部荷室5の後方部を大きく開放することができる。したがって、上記後部ボート11等の車幅方向寸法または可動範囲を小さく設定したり、車体後部が箱形に形成された所謂ステーションワゴンタイプ等からなる車両に適用車種が限定されたりする等の問題を生じることなく、簡単な構成で、バックドア3の開放操作に応じて後部荷室5の後方部を大きく開放し、該開放部から後部荷室5に対する荷物等の出し入れを容易に行うことができる。
【0037】
特に、上記第1実施形態では、第1,第3連結部材22,25からなる前動駆動手段により、バックドア3の開放動作に伴って上記前部ボード10と後部ボード11との連結部を略水平に前方へ移動させるように構成したため、上記トノボード7の下方に物品を収納した状態で上記バックドア3を開放操作して上記前部ボード10と後部ボード11との連結部を前方に移動させる際等に、該連結部が上記物品の上面に接触するのを防止して該物品が傷つくのを効果的に防止できるという利点がある。
【0038】
また、上記第1実施形態に示すように、前部ボード10と後部ボード11とを屈曲可能に連結するヒンジ部13に設けられた捩りコイルばねからなる付勢手段14により上記前部ボード10および後部ボード11を付勢して略水平な初期状態に復帰させるように構成した場合には、バックドア3を開放状態から閉止状態に移行させる際に、上記付勢手段14の付勢力に応じて前部ボード10および後部ボード11を自動的に一直線状に伸張させることができる。したがって、上記バックドア3を閉止する際に、上記分割ボード8〜11を手作業で引き伸ばす等の煩雑な操作を要することなく、上記トノボード7を略水平な展開状態として該トノボード7により後部荷室5の上方部に適正に覆うことができるという利点がある。
【0039】
なお、上記ヒンジ部13に設けられた捩りコイルばねからなる付勢手段14に代え、上記前部ボード10と後部ボード11との連結部を下部に向けて引っ張るように付勢する引張ばね等からなる付勢手段を後部荷室5の側壁部等に設け、該付勢手段によりバックドア3の閉止動作に伴って前部ボード10および後部ボード11を略水平な初期状態に復帰させるように付勢することも可能である。しかし、このように構成した場合には、上記各分割ボート8〜11をヒンジ部13により連結する作業と、上記引張ばね等からなる付勢手段を設置する作業とを別々に行う必要があり、かつ後部荷室5の側壁部に設置された上記付勢手段が出し入れ作業時に邪魔になる可能性がある。
【0040】
これに対して上記第1実施形態に示すように、上記ヒンジ部13に設けられた捩りコイルばねからなる付勢手段14により上記前部ボード10および後部ボード11を付勢して略水平な初期状態に復帰させるように構成した場合には、上記ヒンジ部13とともに付勢手段14を同時に取り付けることができるため、その取付作業を容易化できるとともに、後部荷室5に対する荷物の出し入れ作業時に上記付勢手段14が邪魔になるのを効果的に防止できるという利点がある。
【0041】
さらに、上記第1実施形態に示すように、各分割ボード8〜11の前後幅を略等しく設定するとともに、上記係止ピン24,26による第1〜第3連結部材22,23,25の係止状態を解除するとともに、後部荷室5の側壁部に設けられた第1〜第3係止溝18〜20から上記固定ボード8および補助ボード9に設けられた係止ピン15〜17を抜き出すことにより、上記分割ボード8〜11を車体から取外し可能に構成した場合には、図11に示すように、上記分割ボード8〜11を折畳んでコンパクト化して格納することができるという利点がある。また、図11の仮想線で示すように、各分割ボード8〜11を伸長状態として後部荷室5のフロアパネル6上に設置することも可能である。
【0042】
なお、上記のようにバックドア3の開放操作に応じて上記第1,第3連結部材22,25からなる前動駆動手段により上記補助ボード9と前部ボード10とを山折り状態として上記前部ボード10を初期位置よりも車両の前方側に移動させるように構成した上記第1実施形態に代え、図12および図13に示す第2実施形態のように、例えば固定ボード8aの下面に沿って前部ボード10aを前後移動可能に支持するとともに、該前部ボード10aを前方へ移動させるように駆動する電動シリンダー等からなる別体のアクチュエータ27を設けた構造としてもよい。
【0043】
そして、上記第2実施形態に係る車両のトノカバー装置によれば、バックドア3の開放操作時に、第2連結部材23に後部ボード11aの後端部を上昇させるように駆動するとともに、上記アクチュエータ27を作動させることにより、前部ボード10を初期位置よりも車両の前方側へ移動させることができるが、上記アクチュエータ27を設ける必要があるため、構造が複雑化してコストアップすることが避けられない。
【0044】
これに対して上記第1実施形態に示すように、前部ボード10とその前方の補助ボード9を山折れ可能に連結するとともに、該補助ボード9と前部ボード10との連結部を上記バックドア3の開放動作に伴って上方に駆動することにより、上記補助ボード9と前部ボード10とを山折り状態とするように構成した場合には、別体のアクチュエータ27等を設けることなく、上記バックドア3の開放動作に伴って該前部ボード10を初期位置よりも車両の前方側へ自動的に移動させることにより、後部荷室5の開放面積を簡単な構成で効果的に拡大して、後部荷室5に対する荷物の出し入れ作業を容易に行うことができる。
【0045】
さらに、上記実施形態では、トノボード7を構成する上記補助ボード9、前部ボード10および後部ボート11の前方側に、略水平状態で車体に固定される固定ボード8を設けたため、後部荷室5の略全体を上記トノボード7で覆うことができるようにその全長を充分に確保しつつ、上記折畳み機構により屈曲変位させる上記補助ボード9、前部ボード10および後部ボート11からなる可動ボードの総重量が増大するのを抑制して上記折畳み操作を容易化できるという利点がある。
【符号の説明】
【0046】
1 後方開口部
3 バックドア
5 後部荷室
6 フロアパネル
7 トノボード
8 固定ボード
9 補助ボード
10 前部ボード
11 後部ボード
22 第1連結部材(前動駆動手段)
23 第2連結部材(上昇駆動手段)
25 第3連結部材(前動駆動手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の後方に形成された後方開口部と、該後方開口部を開閉可能に覆うバックドアと、この後方開口部の前方側に形成された後部荷室と、該後部荷室の上方部に略水平な展開状態で設置されるトノボードを備えた車両のトノカバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、バックドア(尾部ゲート)を備えた自動車において、後部座席のシートバックに固定された前方側パネルと、該前方側パネルの後方に配設された後方側パネルとで、後部荷室を上下二つの荷物入れ空間に区画するとともに、上記バッグドアの開放操作時に上記後方側パネルの後端部を引き上げるように駆動する一対の腕を備えた自動支持装置を設け、後部荷室の下方空間に対する荷物の出し入れを容易に行い得るように該空間の後部上面を開放することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭39−16961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されているように、後部荷室の後方上部を覆うように設置された所定幅の後方側パネルをバッグドアの開放操作に連動させて引き上げるように構成した場合には、該後方側パネルの後端部が後部荷室の側面または上端部に接触しないように設計する必要がある。このため、上記後方側パネルの大きさまたはその可動範囲が制限されたり、上記構造を適用できる車種が限定されたりする等の問題があった。
【0005】
すなわち、通常の乗用車では、背面視で車体上部が上窄まりに形成されるとともに、平面視で後部車体が後窄まりの流線形に形成されているため、上記後方側パネルの幅寸法を後部荷室の幅寸法に対応した値に設定すると、バッグドアの開放操作に連動させて上記後方側パネルの後端部を引き上げるように駆動する際に、その側端部が、幅寸法が狭くなった後部荷室の側面上部に干渉し易いという問題がある。これを防止するためには、後方側パネルの車幅方向寸法または可動範囲を小さく設定したり、あるいは車体後部が箱形に形成された所謂ステーションワゴンタイプ等のみに適用可能な車両が限定されたりする等の問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、バックドアの開放操作時に、簡単な構成で後部荷室の後方部を広範囲に亘って開放することにより、荷物の出し入れを容易に行うことができる車両のトノカバー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体の後方に形成された後方開口部と、該後方開口部を開閉可能に覆うバックドアと、上記後方開口部の前方側に形成された後部荷室を備えるとともに、該後部荷室の上方部にトノボードが略水平な展開状態で設置された車両のトノカバー装置であって、上記トノボードは、車両の前後方向に位置する前部ボードおよび後部ボードを有するとともに、前部ボードの後端部と後部ボードの前端部とがヒンジ部により屈曲可能に連結され、上記バックドアの開放動作に伴って後部ボードを略水平な初期状態から後端部を上昇させるように駆動する上昇駆動手段と、上記前部ボードの後端部を初期位置よりも前方に移動させるように駆動する前動駆動手段とを備えたものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両のトノカバー装置において、上記前動駆動手段が、バックドアの開放動作に伴って上記前部ボードと後部ボードとの連結部を略水平に前方へ移動させるように構成されたものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両のトノカバー装置において、上記バックドアの閉止動作に伴って前部ボードおよび後部ボードを略水平な初期状態に復帰させるように付勢する付勢手段を備えたものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、上記請求項3に記載の車両のトノカバー装置において、上記付勢手段が、前部ボードと後部ボードとの連結部に配設されて後部ボードの後端部を下方に付勢する捩りコイルばねからなるものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両のトノカバー装置において、上記前部ボードの前方には補助ボードが配設されるとともに、該補助ボードと前部ボードとが山折れ可能に連結され、上記バックドアの開放操作時に、該補助ボードと前部ボードとの連結部が上方に駆動されて該補助ボードと前部ボードとが山折り状態となることにより、該前部ボードの後端部が前方に移動するように構成されたものである。
【0012】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両のトノカバー装置において、上記前部ボードおよび後部ボードが、その前後幅が略等しく設定されるとともに、車体から取外し可能に構成されたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、トノボードを構成する前部ボードの後端部と後部ボードの前端部とをヒンジ部により屈曲可能に連結するとともに、上記バックドアの開放動作に伴って後部ボードを略水平な初期状態から後端部を上昇させるように駆動する上昇駆動手段と、上記前部ボードの後端部を初期位置よりも前方に移動させるように駆動する前動駆動手段とを設けたため、後部パネルの大きさまたはその可動範囲が制限される等の問題を生じることなく、バックドアの開放操作時に、簡単な構成で後部荷室の後方部を広範囲に亘って開放することにより、後部荷室に対する荷物の出し入れを容易に行うことができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、バックドアの開放動作に伴って上記前部ボードと後部ボードとの連結部を略水平に前方へ移動させるように構成したため、上記トノボードの下方に物品を収納した状態で上記バックドアを開放操作して上記前部ボードと後部ボードとの連結部を前方に移動させる際等に、該連結部が上記物品の上面に接触するのを防止して該物品が傷つくのを効果的に防止できるという利点がある。
【0015】
請求項3に係る発明では、上記バックドアの閉止動作に伴って前部ボードおよび後部ボードを略水平な初期状態に復帰させるように付勢する付勢手段を設けたため、上記バックドアを閉止する際に、トノボードを手作業で引き伸ばす等の煩雑な操作を要することなく、該トノボードを略水平な展開状態として後部荷室の上方部に設置できるという利点がある。
【0016】
請求項4に係る発明に示すように、前部ボードと後部ボードとの連結部に配設されて後部ボードの後端部を下方に付勢する捩りコイルばねにより上記付勢手段を構成した場合には、上記ヒンジ部とともに付勢手段を同時に取り付けることができるため、その取付作業を容易化できるとともに、後部荷室に対する荷物の出し入れ作業時に上記付勢手段が邪魔になるのを効果的に防止できる等の利点がある。
【0017】
請求項5に係る発明では、上記前部ボードと前方の補助ボードとを山折れ可能に連結し、上記バックドアの開放操作時に該補助ボードと前部ボードとの連結部を上方に駆動して、上記補助ボードと前部ボードとを山折り状態とすることにより、前部ボードを初期位置よりも車両の前方側へ自動的に移動させるように構成したため、別体のアクチュエータ等を設けることなく、上記バックドアの開放動作に伴って後部荷室の開放面積を効果的に拡大することができ、簡単な構成で後部荷室に対する荷物の出し入れ作業を容易に行うことができる。
【0018】
請求項6に係る発明では、上記前部ボードおよび後部ボードの前後幅を略等しく設定するとともに、該前部ボードおよび後部ボードを車体から取外し可能に構成したため、これらを折り畳むことによりトノボードをコンパクト化して容易に格納できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る車体のトノカバー装置の第1実施形態を示す説明図である。
【図2】バックドアを開放した状態を示す背面図である。
【図3】トノボードの具体的構成を示す斜視図である。
【図4】トノボードの具体的構成を示す側面断面図である。
【図5】固定ボードの支持構造を示す斜視図である。
【図6】固定ボードの設置状態を示す説明図である。
【図7】バックドアの開放開始状態を示す説明図である。
【図8】バックドアの開放過程を示す説明図である。
【図9】バックドアの開放過程を示す説明図である。
【図10】バックドアの開放状態を示す説明図である。
【図11】トノボードの格納状態を示す説明図である。
【図12】本発明に係る車体のトノカバー装置の第2実施形態を示す説明図である。
【図13】バックドアを開放した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜図4は、本発明に係る車体のトノカバー装置の第1実施形態を示している。この車両は、車体後部に形成された後方開口部1と、上端枢支部2を支点として揺動変位することにより上記後方開口部1を開閉可能に覆うバックドア3と、上記後方開口部1と後列シート4との間に形成された後部荷室5とを備え、該後部荷室5の底面部を構成するフロアパネル6の上方部には、トノボード7が略水平な展開状態で設置されている。
【0021】
上記トノボード7は、車両の前後方向に位置する前部ボード10および後部ボード11と、前部ボード10の前方側に配設された補助ボード9と、該補助ボード9の前方側に配設された固定ボード8とからなる4枚の分割ボード8〜11により構成され、各分割ボード8〜11は、その前後寸法が略等しい値に設定されている。上記前部ボード10の後端部と後部ボード11の前端部とは、図3および図4に示すように、蝶番等からなるヒンジ部13により屈曲可能に連結されている。該ヒンジ部13には、後述するようにバックドア3の閉止操作時に上記前部ボード10および後部ボード11を略水平な初期状態に復帰させるように付勢する捩りコイルばねからなる付勢手段14が設けられている。
【0022】
また、上記固定ボード8、補助ボード9および前部ボード10も、上記付勢手段14が設けられた蝶番等からなるヒンジ部13により相隣接するボードと屈曲可能に連結されている。そして、バックドア3の閉止時には、上記付勢手段14の付勢力に応じて各分割ボード8〜11の端面同士が当接した状態に保持されることにより、該各分割ボード8〜11が一直線状に伸張した状態となって、上記後部荷室5の上方部を覆うように構成されている。
【0023】
上記固定ボード8には、その左右両側端面から車幅方向の外方側に向けて突出する前後一対の係止ピン15,16が設けられている。また、上記補助ボード9には、その左右両側端面の後部から車幅方向の外方側に向けて突出する係止ピン17が設けられている。また、上記後列シート4のシートバック12の後方側に位置する後部荷室5の側壁部には、図5および図6に示すように、上下方向に延びるI型の第1係止溝18と、上下方向および後方側に延びるL型の第2係止溝19と、上下方向に延びるI型の第3係止溝20とが、上記係止ピン15〜17の設置間隔に対応した間隔で設けられている。
【0024】
そして、上記第2係止溝19に固定ボード8の後方側の係止ピン16が挿入されて係止されるとともに、上記第1係止溝18に固定ボード8の前方側の係止ピン15が挿入されて係止されることにより、上記固定ボード8が前後移動および上下移動が拘束された状態で、略水平に延びるように設置されている。なお、上記固定ボード8の係止ピン15,16を第1,第2係止溝18,19から抜き出すことにより、固定ボード8を車体から取り外し得るように構成されている。
【0025】
また、上記後部荷室5の側壁部に設けられた第3係止溝20に補助ボード9の係止ピン17が挿入されることにより、該補助ボード9の上方移動が許容された状態で車体に支持されている。さらに、上記後部荷室5の側壁部には、前部ボード10および後部ボード11が載置される支持部(図示せず)が突設され、該支持部上に上記前部ボード10および後部ボード11が載置された状態で支持されるようになっている。
【0026】
上記バックドア3の左右両側辺部には係止ピン24が突設され、該係止ピン24に、ワイヤー等の可撓性を有する線条体からなる第1,第2連結部材22,23の上端部が係脱可能に係止されるとともに、該第1連結部材22の先端部が上記補助ボード9の後部左右に係止されている。これにより上記バックドア3の開放操作時に、その駆動力が上記第1連結部材22を介して補助ボード9に伝達され、その後端部が斜め後方に引き上げられるようになっている。また、上記第2連結部材23は、その下端部が上記後部ボード11の後部左右に係止され、上記バックドア3の開放操作時に、その駆動力を上記後部ボード11に伝達することにより、該後部ボード11を略水平な初期状態から後端部を斜め前方に引き上げるように駆動する上昇駆動手段としての機能を有している。
【0027】
上記第1連結部材22は、バックドア3に設けられた係止ピン24の設置位置と後部ボード11の左右後部との間隔と略等しいか、あるいは該間隔よりもよりもやや長い全長を有している。一方、上記第2連結部材23は、バックドア3に設けられた係止ピン24の設置位置と補助ボード9の左右後部との間隔より所定距離だけ長い全長を有している。これにより、上記バックドア3の開放操作を開始した初期段階では、第2連結部材23が弛んだ状態となって、車両の後方側に位置する後部ボード11が、その前方側に位置する補助ボード9に先立って上方に引っ張られるように構成されている。
【0028】
また、上記後部荷室5の側壁部には、ワイヤー等の可撓性を有する線条体からなる第3連結部材25の下端部が係脱可能に係止される係止ピン26が突設されるとともに、該第3連結部材25の上端部が上記前部ボード10の側方部においてその前部に係止されている。上記第3連結部材25は、その全長が上記後部荷室5の側壁部に設けられた係止ピン26から前部ボード10の側方部までの間隔と略等しいか、あるいは該間隔よりもよりもやや長い値に設定されている。
【0029】
そして、後述するように上記バックドア3の開放操作時に、上記第3連結部材25により前部ボード10の側方部を斜め前部下方に引っ張ってその後端部が引き上げられるのを規制した状態で、上記第1連結部材22を介して補助ボード9の後端部を上方に駆動することにより、該補助ボード9と上記前部ボード10とを山折り状態として上記前部ボード10の後端部を初期位置よりも車両の前方側に移動させるように駆動する前動駆動手段が上記第1,第3連結部材22,25により構成されている。
【0030】
上記構成において、バックドア3の閉止時には、上記付勢手段14の付勢力に応じて略水平に展開した分割ボード8〜11からなる所定長さのトノボード7により後部荷室5の上方部が覆われている。この状態から、バックドア3の開放操作を開始すると、上記第3連結部材25によりトノボード7の前部ボード10の左右側方部が下方に引っ張られた状態で、上記第2連結部材23により後部ボード11の後部左右が上方に引っ張られる。この結果、上記付勢手段14の付勢力に抗して、図7に示すように後部ボード11が前方のヒンジ部13を支点に屈曲変位することにより、後部ボード11の後端部が上昇するように駆動される。
【0031】
上記バックドア3の開放操作に応じてその開度が増大すると、図8に示すように、上記第3連結部材25により前部ボード10の左右両側方部が斜め前部下方に引っ張られた状態で、上記第2連結部材23により後部ボード11の後部がさらに上方に引っ張られることにより、該後部ボード11と上記前部ボード10とが谷折り状態となる。また、上記第1連結部材22の弛みがなくなった時点で、該第1連結部材22により補助ボード9の後部が上方に引っ張られて該補助ボード9と上記前部ボード10とが山折り状態に屈曲し始める。
【0032】
また、上記バックドア3の開度がより大きくなると、図9に示すように、上記第3連結部材25により前部ボード10の左右両右側方部が支持された状態で、上記第1,第2連結部材22,23により補助ボード9および後部ボード11の後部がさらに上方に引っ張られて、該ボート9,11の屈曲角度が増大する。このようにして上記補助ボード9と前部ボード10とが急角度の山折り状態となることにより、該前部ボード10が前方へスライド変位するともに、上記前部ボード10と後部ボード11との谷折り角度が急角度となることにより、両ボード10,11の連結部が略水平に前方へスライド変位する。
【0033】
そして、図10に示すバックドア3の最大開放状態では、上記補助ボード9および前部ボード10の下面同士が互いに接近するとともに、該前部ボード10および後部ボード11の上面同士が互い接近して、上記補助ボード9、前部ボード10および後部ボード11からなる各可動ボードが蛇腹状に折り畳まれる。これにより、後部荷室5の後方部上面が大きく開放された状態となる。
【0034】
上記のように車体の後方に形成された後方開口部1と、該後方開口部1を開閉可能に覆うバックドア3と、上記後方開口部1の前方側に形成された後部荷室5と、該後部荷室5の上方部に略水平な展開状態で設置されるトノボード7とを備えた車両のトノカバー装置において、上記トノボード7に、車両の前後方向に位置する前部ボード10および後部ボード11を設けるとともに、前部ボード10の後端部と後部ボード11の前端部とをヒンジ部13により屈曲可能に連結し、上記バックドア3の開放動作に伴って後部ボード11を略水平な初期状態から後端部を上昇させるように駆動する上昇駆動手段と、上記前部ボード10の後端部を初期位置よりも前方に移動させるように駆動する前動駆動手段とを設けたため、バックドア3の開放操作時に、簡単な構成で後部荷室5の後方部を広範囲に亘って開放することにより、後部荷室5に対する荷物の出し入れを容易化できるという利点がある。
【0035】
すなわち、上記第1実施形態では、バックドア3の左右両側辺部と後部ボード11の左右後部とを連結するワイヤー等の可撓性を有する線条体からなる第2連結部材23を設け、該第2連結部材23からなる上昇駆動手段により、バックドア3の開放操作に応じて上記後部ボード11の後端部を上方に引っ張って上昇させるように構成したため、該後部ボード11による後部荷室5の閉止状態を容易かつ自動的に解除することができる。
【0036】
また、上記バックドア3の開放操作に応じて上記第1,第3連結部材22,25からなる前動駆動手段により上記補助ボード9と前部ボード10とを山折り状態として該前部ボード10の後端部を初期位置よりも車両の前方側に移動させるように構成したため、これに連動して上記後部ボード11を車両の前方側に移動させることにより、後部荷室5の後方部を大きく開放することができる。したがって、上記後部ボート11等の車幅方向寸法または可動範囲を小さく設定したり、車体後部が箱形に形成された所謂ステーションワゴンタイプ等からなる車両に適用車種が限定されたりする等の問題を生じることなく、簡単な構成で、バックドア3の開放操作に応じて後部荷室5の後方部を大きく開放し、該開放部から後部荷室5に対する荷物等の出し入れを容易に行うことができる。
【0037】
特に、上記第1実施形態では、第1,第3連結部材22,25からなる前動駆動手段により、バックドア3の開放動作に伴って上記前部ボード10と後部ボード11との連結部を略水平に前方へ移動させるように構成したため、上記トノボード7の下方に物品を収納した状態で上記バックドア3を開放操作して上記前部ボード10と後部ボード11との連結部を前方に移動させる際等に、該連結部が上記物品の上面に接触するのを防止して該物品が傷つくのを効果的に防止できるという利点がある。
【0038】
また、上記第1実施形態に示すように、前部ボード10と後部ボード11とを屈曲可能に連結するヒンジ部13に設けられた捩りコイルばねからなる付勢手段14により上記前部ボード10および後部ボード11を付勢して略水平な初期状態に復帰させるように構成した場合には、バックドア3を開放状態から閉止状態に移行させる際に、上記付勢手段14の付勢力に応じて前部ボード10および後部ボード11を自動的に一直線状に伸張させることができる。したがって、上記バックドア3を閉止する際に、上記分割ボード8〜11を手作業で引き伸ばす等の煩雑な操作を要することなく、上記トノボード7を略水平な展開状態として該トノボード7により後部荷室5の上方部に適正に覆うことができるという利点がある。
【0039】
なお、上記ヒンジ部13に設けられた捩りコイルばねからなる付勢手段14に代え、上記前部ボード10と後部ボード11との連結部を下部に向けて引っ張るように付勢する引張ばね等からなる付勢手段を後部荷室5の側壁部等に設け、該付勢手段によりバックドア3の閉止動作に伴って前部ボード10および後部ボード11を略水平な初期状態に復帰させるように付勢することも可能である。しかし、このように構成した場合には、上記各分割ボート8〜11をヒンジ部13により連結する作業と、上記引張ばね等からなる付勢手段を設置する作業とを別々に行う必要があり、かつ後部荷室5の側壁部に設置された上記付勢手段が出し入れ作業時に邪魔になる可能性がある。
【0040】
これに対して上記第1実施形態に示すように、上記ヒンジ部13に設けられた捩りコイルばねからなる付勢手段14により上記前部ボード10および後部ボード11を付勢して略水平な初期状態に復帰させるように構成した場合には、上記ヒンジ部13とともに付勢手段14を同時に取り付けることができるため、その取付作業を容易化できるとともに、後部荷室5に対する荷物の出し入れ作業時に上記付勢手段14が邪魔になるのを効果的に防止できるという利点がある。
【0041】
さらに、上記第1実施形態に示すように、各分割ボード8〜11の前後幅を略等しく設定するとともに、上記係止ピン24,26による第1〜第3連結部材22,23,25の係止状態を解除するとともに、後部荷室5の側壁部に設けられた第1〜第3係止溝18〜20から上記固定ボード8および補助ボード9に設けられた係止ピン15〜17を抜き出すことにより、上記分割ボード8〜11を車体から取外し可能に構成した場合には、図11に示すように、上記分割ボード8〜11を折畳んでコンパクト化して格納することができるという利点がある。また、図11の仮想線で示すように、各分割ボード8〜11を伸長状態として後部荷室5のフロアパネル6上に設置することも可能である。
【0042】
なお、上記のようにバックドア3の開放操作に応じて上記第1,第3連結部材22,25からなる前動駆動手段により上記補助ボード9と前部ボード10とを山折り状態として上記前部ボード10を初期位置よりも車両の前方側に移動させるように構成した上記第1実施形態に代え、図12および図13に示す第2実施形態のように、例えば固定ボード8aの下面に沿って前部ボード10aを前後移動可能に支持するとともに、該前部ボード10aを前方へ移動させるように駆動する電動シリンダー等からなる別体のアクチュエータ27を設けた構造としてもよい。
【0043】
そして、上記第2実施形態に係る車両のトノカバー装置によれば、バックドア3の開放操作時に、第2連結部材23に後部ボード11aの後端部を上昇させるように駆動するとともに、上記アクチュエータ27を作動させることにより、前部ボード10を初期位置よりも車両の前方側へ移動させることができるが、上記アクチュエータ27を設ける必要があるため、構造が複雑化してコストアップすることが避けられない。
【0044】
これに対して上記第1実施形態に示すように、前部ボード10とその前方の補助ボード9を山折れ可能に連結するとともに、該補助ボード9と前部ボード10との連結部を上記バックドア3の開放動作に伴って上方に駆動することにより、上記補助ボード9と前部ボード10とを山折り状態とするように構成した場合には、別体のアクチュエータ27等を設けることなく、上記バックドア3の開放動作に伴って該前部ボード10を初期位置よりも車両の前方側へ自動的に移動させることにより、後部荷室5の開放面積を簡単な構成で効果的に拡大して、後部荷室5に対する荷物の出し入れ作業を容易に行うことができる。
【0045】
さらに、上記実施形態では、トノボード7を構成する上記補助ボード9、前部ボード10および後部ボート11の前方側に、略水平状態で車体に固定される固定ボード8を設けたため、後部荷室5の略全体を上記トノボード7で覆うことができるようにその全長を充分に確保しつつ、上記折畳み機構により屈曲変位させる上記補助ボード9、前部ボード10および後部ボート11からなる可動ボードの総重量が増大するのを抑制して上記折畳み操作を容易化できるという利点がある。
【符号の説明】
【0046】
1 後方開口部
3 バックドア
5 後部荷室
6 フロアパネル
7 トノボード
8 固定ボード
9 補助ボード
10 前部ボード
11 後部ボード
22 第1連結部材(前動駆動手段)
23 第2連結部材(上昇駆動手段)
25 第3連結部材(前動駆動手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の後方に形成された後方開口部と、該後方開口部を開閉可能に覆うバックドアと、上記後方開口部の前方側に形成された後部荷室を備えるとともに、該後部荷室の上方部にトノボードが略水平な展開状態で設置された車両のトノカバー装置であって、上記トノボードは、車両の前後方向に位置する前部ボードおよび後部ボードを有するとともに、前部ボードの後端部と後部ボードの前端部とがヒンジ部により屈曲可能に連結され、上記バックドアの開放動作に伴って後部ボードを略水平な初期状態から後端部を上昇させるように駆動する上昇駆動手段と、上記前部ボードの後端部を初期位置よりも前方に移動させるように駆動する前動駆動手段とを備えたことを特徴とする車両のトノカバー装置。
【請求項2】
上記前動駆動手段は、バックドアの開放動作に伴って上記前部ボードと後部ボードとの連結部を略水平に前方へ移動させるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両のトノカバー装置。
【請求項3】
上記バックドアの閉止動作に伴って前部ボードおよび後部ボードを略水平な初期状態に復帰させるように付勢する付勢手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両のトノカバー装置。
【請求項4】
上記付勢手段は、前部ボードと後部ボードとの連結部に配設されて後部ボードの後端部を下方に付勢する捩りコイルばねからなることを特徴とする請求項3に記載の車両のトノカバー装置。
【請求項5】
上記前部ボードの前方には補助ボードが配設されるとともに、該補助ボードと前部ボードとが山折れ可能に連結され、上記バックドアの開放操作時に、該補助ボードと前部ボードとの連結部が上方に駆動されて該補助ボードと前部ボードとが山折り状態となることにより、該前部ボードの後端部が前方に移動するように構成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両のトノカバー装置。
【請求項6】
上記前部ボードおよび後部ボードは、その前後幅が略等しく設定されるとともに、車体から取外し可能に構成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両のトノカバー装置。
【請求項1】
車体の後方に形成された後方開口部と、該後方開口部を開閉可能に覆うバックドアと、上記後方開口部の前方側に形成された後部荷室を備えるとともに、該後部荷室の上方部にトノボードが略水平な展開状態で設置された車両のトノカバー装置であって、上記トノボードは、車両の前後方向に位置する前部ボードおよび後部ボードを有するとともに、前部ボードの後端部と後部ボードの前端部とがヒンジ部により屈曲可能に連結され、上記バックドアの開放動作に伴って後部ボードを略水平な初期状態から後端部を上昇させるように駆動する上昇駆動手段と、上記前部ボードの後端部を初期位置よりも前方に移動させるように駆動する前動駆動手段とを備えたことを特徴とする車両のトノカバー装置。
【請求項2】
上記前動駆動手段は、バックドアの開放動作に伴って上記前部ボードと後部ボードとの連結部を略水平に前方へ移動させるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両のトノカバー装置。
【請求項3】
上記バックドアの閉止動作に伴って前部ボードおよび後部ボードを略水平な初期状態に復帰させるように付勢する付勢手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両のトノカバー装置。
【請求項4】
上記付勢手段は、前部ボードと後部ボードとの連結部に配設されて後部ボードの後端部を下方に付勢する捩りコイルばねからなることを特徴とする請求項3に記載の車両のトノカバー装置。
【請求項5】
上記前部ボードの前方には補助ボードが配設されるとともに、該補助ボードと前部ボードとが山折れ可能に連結され、上記バックドアの開放操作時に、該補助ボードと前部ボードとの連結部が上方に駆動されて該補助ボードと前部ボードとが山折り状態となることにより、該前部ボードの後端部が前方に移動するように構成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両のトノカバー装置。
【請求項6】
上記前部ボードおよび後部ボードは、その前後幅が略等しく設定されるとともに、車体から取外し可能に構成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両のトノカバー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−207369(P2011−207369A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77867(P2010−77867)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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