説明

車両のバンパ支持構造

【課題】バンパが近接する車両用外装部品の見切り線の形状が、水平方向において比較的大きく変化する場合でも、車両のボデーへのバンパの組付け時に、該バンパと車両用外装部品との間の隙間の偏差を少なくできるようにすることを目的とする。
【解決手段】車両用ランプ16(車両用外装部品)の見切り線16Aに沿って配設されるバンパカバー12(バンパ)と、車両10のボデーのうち見切り線16Aが水平方向に対して大きく傾斜する部位に配置され、該大傾斜部位16Dにおいてバンパカバー12を支持する支持部材14とを有している。バンパカバー12は、ボデー側への組付け時に大傾斜部位16Dにおいて位置決めされるので、水平方向における建付けのばらつきが少なくなる。このため見切り線16Aの形状が、水平方向において比較的大きく変化する場合でも、バンパカバー12と車両用ランプ16との間の隙間の偏差を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバンパ支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ランプとバンパとの接合部の組立て精度を確保し、両者を良好な相対関係位置に保ちながら、軽衝突時にランプを良好に保護することを目的として、バンパ上端部の被支持部を支持する支持部材を、例えば車体左前コーナー部に配置した構造が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−322910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来例の図1(a)及び図2(a)に示されるように、該従来例は、バンパが近接する車両用ランプの見切り線の形状が、水平方向において大きく変化しないような意匠のランプを対象としたものであり、見切り線の形状がより大きく変化するよう意匠のランプには対応していない。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、バンパが近接する車両用外装部品の見切り線の形状が、水平方向において比較的大きく変化する場合でも、車両のボデーへのバンパの組付け時に、該バンパと車両用外装部品との間の隙間の偏差を少なくできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、車両用外装部品の見切り線に沿って配設されるバンパと、車両のボデーのうち前記見切り線が水平方向に対して大きく傾斜する部位に配置され、該部位において前記バンパを支持する支持部材と、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の車両のバンパ支持構造では、バンパを支持する支持部材が、車両のボデーのうち車両用外装部品の見切り線が水平方向に対して大きく傾斜する部位に配置されているので、バンパは、ボデー側への組付け時に、該大傾斜部位において位置決めされ、水平方向におけるバンパの建付けのばらつきが少なくなる。このため、バンパが近接する車両用外装部品の見切り線の形状が、水平方向において比較的大きく変化する場合でも、バンパの組付け時に、該バンパと車両用外装部品との間の隙間の偏差を少なくすることができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両のバンパ支持構造において、前記支持部材は、前記バンパの車両上下方向位置及び車両前後方向位置を規制する規制手段を有していることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の車両のバンパ支持構造では、支持部材が、バンパの車両上下方向位置及び車両前後方向位置を規制する規制手段を有しているので、車両のボデーへのバンパの組付け時に、該バンパは、水平方向位置だけでなく、車両上下方向位置及び車両前後方向位置についてもより正確に配置される。このため、バンパの建付けのばらつきを抑制して、該バンパと車両用外装部品との間の隙間の偏差をより少なくすることが可能である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両のバンパ支持構造において、前記支持部材は、前記バンパと係合する係合手段を有していることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の車両のバンパ支持構造では、支持部材が、バンパと係合する係合手段を有しているので、車両のボデーへのバンパの組付け時に、該バンパをより安定的に支持することができ、これによってバンパの建付けのばらつきを抑制して、該バンパとの車両用外装部品との間の隙間の偏差をより一層少なくすることが可能である。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両のバンパ支持構造によれば、バンパが近接する車両用外装部品の見切り線の形状が、水平方向において比較的大きく変化する場合でも、バンパの組付け時に、該バンパと車両用外装部品との間の隙間の偏差を少なくすることができる、という優れた効果が得られる。
【0012】
請求項2に記載の車両のバンパ支持構造によれば、バンパと車両用外装部品との間の隙間の偏差をより少なくすることができる、という優れた効果が得られる。
【0013】
請求項3に記載の車両のバンパ支持構造によれば、バンパとの車両用外装部品との間の隙間の偏差をより一層少なくすることができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1において、本実施の形態に係る車両のバンパ支持構造Sは、例えば車両10の後端に設けられるバンパの支持構造に係り、該バンパの一例たるバンパカバー12と、支持部材14とを有している。
【0015】
図7(A)に示されるように、バンパカバー12は、車両用外装部品の一例たる車両用ランプ16の見切り線16Aに沿って配設されている。ここで、図3において、該見切り線16Aは、ランプ本体26に組み付けられたレンズ28の下縁を車両後方から見た輪郭線に相当する。図7(A)に示されるように、バンパカバー12の見切り線12Aは、車両用ランプ16の見切り線16Aに沿う形状となっており、見切り線12A,16A間には略一定の隙間Dが形成されている。図1に示されるように、バンパカバー12は、後壁面12Bの上縁から車両前方に延びる上端縁22を有しており、見切り線12Aは該上端縁22を車両後方から見た輪郭線に相当する。上端縁22のうち、車両用ランプ16の大傾斜部位16Dに近接し、該大傾斜部位16Dと同様に車幅方向に対して大きく傾斜する部位、即ち大傾斜部位12D(図7(A)参照)には、支持部材14の係合爪14Eと係合する係合孔12Eが設けられている。
【0016】
図2において、支持部材14は、車両10のボデー18のうち車両用ランプ16の見切り線16Aが水平方向の一例たる車幅方向に対して大きく傾斜する部位、即ち大傾斜部位16Dに配置され、該大傾斜部位16Dにおいてバンパカバー12を支持する、例えば合成樹脂性のリテーナである。
【0017】
具体的には、図2に示されるように、支持部材14においては、ボデー18(図3参照)への固定部となる前壁部14Aから夫々車両後方へ、第1上壁部14B、下壁部14C、左壁部14D及び右壁部14Fが夫々立設されると共に、前壁部14Aのうち第1上壁部14Bから車両上方に離間した位置から車両後方へ第2上壁部14Gが立設されている。
【0018】
第1上壁部14Bと左壁部14D、該左壁部14Dと下壁部14C、該下壁部14Cと右壁部14F、該右壁部14Fと第1上壁部14Bとは夫々連結されており、これにより前壁部14Aが補強されている。
【0019】
図3に示されるように、ボデー18側には、ナット20が例えば固着されており、該ナット20に対してボルト24を締結することで、支持部材14がボデー18に固定されている。図2に示されるように、支持部材14の前壁部14Aには、該ボルト24を通すための貫通孔14Hが形成されている。
【0020】
図1において、バンパカバー12の上端縁22は、支持部材14における第1上壁部14Bと第2上壁部14Gとの間に差し込まれて支持されるようになっており、第1上壁部14Bと第2上壁部14Gは、バンパカバー12の上端縁22のうち、大傾斜部位12Dの形状に沿うように形成されている。支持部材14の第1上壁部14Bには、バンパカバー12の係合孔12Eと係合する係合手段の一例たる係合爪14Eが設けられており、バンパカバー12の組付け時には、係合孔12Eの周辺部と該係合爪14Eとが例えば互いに弾性変形することにより、係合爪14Eが係合孔12E内に入り込んで係合するようになっている。
【0021】
また図1において、支持部材14は、バンパカバー12の車両上下方向位置及び車両前後方向位置を規制する規制手段の一例たる下リブ14J、上リブ14K及び奥リブ14Lを有している。下リブ14Jは、第1上壁部14Bの車幅方向端部から夫々車両上方に突出形成されている。上リブ14Kは、車幅方向における係合爪14Eと下リブ14Jとの間の位置において、第2上壁部14Gから車両下方に例えば2箇所突出形成されている。そして奥リブ14Lは、第2上壁部14Gの両端から左右の下リブ14Jに夫々連なるように、前壁部14Aから夫々車両後方に突出形成されている。
【0022】
バンパカバー12の組付け時には、図5に示されるように、上リブ14Kが上端縁22の上面22Kに当接し、図6に示されるように、下リブ14Jが上端縁22の下面22Jに当接すると共に、奥リブ14Lが該上端縁22の前縁22Lに当接することで、バンパカバー12の車両上下方向位置及び車両前後方向位置が夫々規制されるようになっている。なお各リブの配置は、図示の配置には限られず、バンパカバー12の上端縁22についての車両上下方向位置及び車両前後方向位置を規制できる構成であればよい。
【0023】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図7(A)に示されるように、車両のバンパ支持構造Sでは、バンパカバー12を支持する支持部材14が、車両10のボデー18のうち車両用ランプ16の見切り線16Aが車幅方向に対して大きく傾斜する部位、即ち大傾斜部位16Dに配置されているので、バンパカバー12は、ボデー18側への組付け時に該大傾斜部位16Dにおいて位置決めされ、車幅方向におけるバンパカバー12の建付けのばらつきが少なくなる。
【0024】
バンパカバー12の組付けについて詳しく説明すると、まずバンパカバー12の組付けに先立って、ボデー18側には車両用ランプ16及び支持部材14が組み付けられる。このとき、支持部材14は、車両用ランプ16の見切り線16Aのうち大傾斜部位16Dに配置される。そしてバンパカバー12を組み付ける際には、該バンパカバー12の上端縁22が、支持部材14における第2上壁部14Gと第1上壁部14Bの間に差し込まれて支持される。
【0025】
このとき、図5に示されるように、支持部材14の上リブ14Kが上端縁22の上面22Kに当接し、かつ図6に示されるように、下リブ14Jが上端縁22の下面22Jに当接すると共に奥リブ14Lが該上端縁22の前縁22Lに当接することで、バンパカバー12の車両上下方向位置及び車両前後方向位置が夫々規制される。またこのとき、バンパカバー12の係合孔12Eに支持部材14の係合爪14Eが係合することで、バンパカバー12が安定的に支持される。
【0026】
上記したように、支持部材14は、バンパカバー12の組付けに先立って、車両用ランプ16の見切り線16Aのうち大傾斜部位16Dに配置されているので、バンパカバー12は、該大傾斜部位16Dにおいて位置決めされ、車幅方向の建付けのばらつきが生じ難い。即ち、図7(A)に示されるように、バンパカバー12は、支持部材14により車両用ランプ16の大傾斜部位16Dに沿う形状の大傾斜部位12Dにおいて拘束されるため、図7(B)に示されるように、バンパカバー12は車幅方向には動き難く、第1上壁部14B及び第2上壁部14G(同図(A)参照)が延びる矢印A方向及び矢印Bにわずかに動く余地が残されているに過ぎない。バンパカバー12の建付けのばらつきが、矢印A方向又は矢印B方向にわずかに生じたとしても、大傾斜部位12Dと大傾斜部位16Dとの間の隙間Dにはほとんど変化が生じないため、図7(A)に示されるように、バンパカバー12が近接する車両用ランプ16の見切り線16Aの形状が、車幅方向において比較的大きく変化する場合でも、バンパカバー12と車両用ランプ16との間の隙間Dの偏差を少なくすることができる。即ち部分的に隙間Dが極端に大きくなったり、また小さくなったりすることがないので、車両10の見栄えを向上させることが可能である。
【0027】
またバンパカバー12の組付け時に、支持部材14の下リブ14J、上リブ14K、奥リブ14Lがバンパカバー12の車両上下方向位置及び車両前後方向位置を規制すると共に、支持部材14の係合爪14Eがバンパカバー12の係合孔12Eと係合するので、バンパカバー12の車幅方向位置だけでなく、車両上下方向位置及び車両前後方向位置についてもより正確に配置することができる。
【0028】
なおバンパの一例として、バンパカバー12を挙げたが、バンパを構成する他の部材に適用することも可能である。車両用外装部品の一例として挙げた車両用ランプ16は、尾灯や制動灯、方向指示器等(図示せず)が組み込まれた例えばリヤコンビネーションランプであるが、車両のバンパ支持構造Sを適用可能な部位はリヤコンビネーションランプに限られるものではなく、例えばヘッドランプの見切り線に沿って配設されるフロントバンパの支持構造に適用することも可能である。また車両用外装部品は、ランプ類に限られるものではなく、グリル、ガーニッシュ等の化粧部材、ボデーパネル等であってもよい。
【0029】
車両用ランプ16の見切り線16Aの大傾斜部位16Dを、車幅方向に対して大きく傾斜する部位として説明したが、大傾斜部位16Dの基準は車幅方向に限られるものではなく、車両側面の見切り線に大傾斜部位にある場合には、その基準となるのは例えば車両前後方向である。また支持部材14がバンパカバー12と係合する係合手段として、係合爪14Eを挙げたが、これに限られず、バンパカバー12と係合可能であればどのような構成を用いてもよい。即ち係合爪をバンパカバー12側に設け、支持部材14側に係合孔を設けるようにしてもよい。
【0030】
バンパカバー12の車両上下方向位置及び車両前後方向位置を規制する規制手段として、下リブ14J、上リブ14K及び奥リブ14Lを挙げたが、規制手段はこれらに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】車両右斜め後方から見た車両のバンパ支持構造Sを示す斜視図である。
【図2】支持部材14を示す斜視図である。
【図3】車両のバンパ支持構造を示す、図1における3−3矢視断面図である。
【図4】車両のバンパ支持構造を示す、図1における4−4矢視断面図である。
【図5】車両のバンパ支持構造を示す、図1における5−5矢視断面図である。
【図6】車両のバンパ支持構造を示す、図1における6−6矢視断面図である。
【図7】(A)車両後方から見た車両のバンパ支持構造を示す正面図である。(B)バンパカバーが、車両用ランプの見切り線の大傾斜部付近に位置決めされている状態を示す拡大正面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 車両
12 バンパカバー(バンパ)
14 支持部材
14E 係合爪(係合手段)
14J 下リブ(規制手段)
14K 上リブ(規制手段)
14L 奥リブ(規制手段)
16 車両用ランプ(車両用外装部品)
16A 見切り線
16D 大傾斜部位
18 ボデー
S 車両のバンパ支持構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用外装部品の見切り線に沿って配設されるバンパと、
車両のボデーのうち前記見切り線が水平方向に対して大きく傾斜する部位に配置され、該部位において前記バンパを支持する支持部材と、
を有することを特徴とする車両のバンパ支持構造。
【請求項2】
前記支持部材は、前記バンパの車両上下方向位置及び車両前後方向位置を規制する規制手段を有していることを特徴とする請求項1に記載の車両のバンパ支持構造。
【請求項3】
前記支持部材は、前記バンパと係合する係合手段を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両のバンパ支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−114742(P2008−114742A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300302(P2006−300302)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)