説明

車両の充電リッド構造

【課題】充電時に充電コネクタの操作部を悪戯されないようにする。
【解決手段】車両に設置された充電ポート格納庫4と、充電ポート格納庫4内に設置され充電コネクタ20との接続により外部充電装置から車両のバッテリを充電可能にする充電ポート7と、充電ポート格納庫4を開閉する充電リッド10と、充電リッド10を開閉させる駆動部5と、駆動部5を制御する電子制御装置6と、を備え、充電リッド10は、開成時に充電コネクタ20を少なくとも上側から覆うとともにスイッチ24を覆うことができる形状をなし、充電リッド10を開成して充電コネクタ20のインレット部23を充電ポート7に接続した場合に、充電リッド10がスイッチ24に近接した位置にて、電子制御装置6が充電リッド10を固定するように駆動部5を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気自動車やプラグインハイブリッド車等の充電リッド構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やプラグインハイブリッド車では、充電リッドにより開閉可能な充電ポート格納庫を有し、この充電ポート格納庫に充電ポートが設置されていて、利用者は、充電リッドを開いて充電ポートに充電コネクタを接続し、外部充電装置から車両のバッテリに充電する。
【0003】
ところで、この充電には長時間を要するため、例えば家庭用電源から充電する場合には、一晩中、充電コネクタを充電リッドに接続し続けることもある。この充電中に、降雨や降雪があった場合に、充電ポートと充電コネクタとの接続部およびその周辺が凍結し、充電コネクタを取り外せなくなったり、充電コネクタが汚損する場合がある。
また、充電の間、車両の周囲が無人となる状況もあり、第三者により悪戯されて充電コネクタを外される虞もある。
【0004】
そこで、これらの課題を解決するため、充電コネクタの全体を充電ポート格納庫に収納した状態で充電リッドを閉成することができるようにしたり、充電リッドを閉成すると充電リッドと充電コネクタが係合するようにした充電リッド構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−332024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、充電コネクタの全体を充電ポート格納庫に収納した状態で充電リッドを閉成することができるようにすると、車両側に大きな充電ポート格納庫が必要となり、レイアウト性に乏しいという課題がある。
また、閉成したときに充電リッドと充電コネクタとが係合する構造にすると、充電リッドと充電コネクタが互いに対応する形状でなければならず、充電リッドおよび充電コネクタが特定されるため、汎用性に欠けるという課題がある。
【0007】
そこで、この発明は、簡単な構成で、汎用性に富み、第三者による悪戯を防止でき、充電ポートおよびその周辺の凍結防止も可能な車両の充電リッド構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る車両の充電リッド構造では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、車両(例えば、後述する実施例における車両1)に設置された充電ポート格納庫(例えば、後述する実施例における充電ポート格納庫4)と、前記充電ポート格納庫内に設置され、外部充電装置に接続された充電コネクタ(例えば、後述する実施例における充電コネクタ20)を接続可能で、前記充電コネクタとの接続により車両の蓄電装置(例えば、後述する実施例におけるバッテリ)を充電可能にする充電ポート(例えば、後述する実施例における充電ポート7)と、前記充電ポート格納庫を開閉する充電リッド(例えば、後述する実施例における充電リッド10)と、前記充電リッドを開閉させる開閉機構(例えば、後述する実施例における駆動部5)と、前記開閉機構を制御する制御部(例えば、後述する実施例における電子制御装置6)と、を備え、前記充電コネクタは、前記充電ポート格納庫に挿入して前記充電ポートに接続可能なインレット部(例えば、後述する実施例におけるインレット部23)と、利用者により充電に関与して操作される操作部(例えば、後述する実施例におけるスイッチ24、操作部25)とを有し、前記インレット部を前記充電ポートに接続した状態にて該充電コネクタの一部が前記充電ポート格納庫から車外側に突出するようになっており、前記充電リッドは、開成時に前記充電コネクタを少なくとも上側から覆うとともに前記操作部を覆うことができる形状をなし、前記充電リッドを開成して前記充電コネクタの前記インレット部を前記充電ポートに接続した場合に、前記充電リッドが前記充電コネクタの前記操作部に近接した位置にて、前記制御部は前記充電リッドを固定するように前記開閉機構を制御することを特徴とする車両の充電リッド構造である。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、充電時の状況を検出する状況検出手段(例えば、後述する実施例における充電状態検出手段31、施錠状態検出手段32、存在検出手段)を備え、前記制御部は、前記状況検出手段の検出結果に基づいて前記充電リッドの固定維持および固定解除を判定する判定部(例えば、後述する実施例におけるステップS105、ステップS108、ステップS113、ステップS120、ステップS207)を備え、該判定部の判定結果にしたがって前記開閉機構を制御することを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の発明において、前記状況検出手段は、車両のドアの施錠状態を検出する錠状態検出手段(例えば、後述する実施例における施錠状態検出手段32)であり、前記判定部(例えば、後述する実施例におけるステップS105、ステップS108、ステップS113、ステップS120)は、前記施錠状態検出手段により施錠が検出されているときに前記充電リッドを固定維持すべきと判定し、施錠が検出されないときに前記充電リッドの固定を解除すべきと判定することを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項2に記載の発明において、前記状況検出手段は、充電状態を検出する充電状態検出手段(例えば、後述する実施例における充電状態検出手段31)であり、前記判定部(例えば、後述する実施例におけるステップS207)は、前記充電状態検出手段により充電中であることが検出されているときに前記充電リッドを固定維持すべきと判定し、充電中でないことが検出されているときまたは利用者からの充電終了の指令が検出されたときに前記充電リッドの固定を解除すべきと判定することを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項2に記載の発明において、前記状況検出手段は、利用者情報を記憶した携帯記憶手段が車両の近傍に存在することを検出する存在検出手段であり、前記判定部は、前記存在検出手段により前記携帯記憶手段の存在が検出されていないときに前記充電リッドを固定維持すべきと判定し、前記携帯記憶手段の存在が検出されているときに前記充電リッドの固定を解除すべきと判定することを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発明において、前記充電リッドは、上壁部(例えば、後述する実施例における上壁部11)と、この上壁部に連なる2つの側壁部(例えば、後述する実施例における側壁部12)とを有して断面コ字状をなし、前記充電ポート格納庫における開口部上端を中心に上下方向に回動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、インレット部を充電ポートに接続した状態にて充電コネクタの一部が充電ポート格納庫から車外側に突出するようになっており、充電コネクタ全体を充電ポート格納庫内に収納しないので、充電ポート格納庫の容量を小さくすることができ、充電ポート格納庫のレイアウト性が向上する。
また、充電リッド10は充電コネクタの操作部に近接して位置させた状態で該操作部を覆うように配置され固定されるので、例えば充電中に降雨や降雪があった場合にも、充電リッドが傘代わりとなって充電コネクタへの降雨、降雪を阻止することができ、その結果、充電コネクタおよびその周辺の凍結を防止することができ、操作部の操作や充電後の充電コネクタの取り外し等の操作を可能な状態に維持することができる。
また、充電リッドを充電コネクタの操作部に近接させて固定することにより、充電コネクタの操作部を操作することができなくなるので、利用者が車両から離れた際に第三者による操作部に対する悪戯を防止することができる。
さらに、充電リッドを充電コネクタの操作部に近接させて固定するだけであるので、充電リッドと充電コネクタを互いに関連した形状あるいは専用の形状にする必要がない。よって、使い勝手に優れ、汎用性に富む。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、状況検出手段によって検出される充電時の状況に応じて、充電リッドを固定維持あるいは固定解除することができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、車両のドアが施錠されているときには、充電中も充電終了後も、充電リッドを充電コネクタの操作部に近接した位置で操作部を覆うように固定した状態に維持するので、長時間に亘って利用者が車両から離れた際(例えば夜間の充電の際)に、充電コネクタおよびその周辺の凍結や、第三者による操作部に対する悪戯を防止することができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、充電中は、充電リッドを充電コネクタの操作部に近接した位置で操作部を覆うように固定した状態に維持するので、利用者による無用な操作を防止することができるとともに、充電コネクタおよびその周辺の凍結や、第三者による操作部に対する悪戯を防止することができる。
また、充電が終了したときや利用者から充電終了の入力がされたときに、充電リッドの固定を解除するので、その後は充電リッドを開成して充電コネクタを充電ポートから取り外すことが可能となる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、車両近傍に利用者がいないときには、充電中も充電終了後も、充電リッドを充電コネクタの操作部に近接した位置で操作部を覆うように固定した状態に維持するので、長時間に亘って利用者が車両から離れた際(例えば夜間の充電の際)に、充電コネクタおよびその周辺の凍結や、第三者による操作部に対する悪戯を防止することができる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、充電リッドによって充電ポートを確実に覆うことができるので、充電コネクタおよびその周辺の凍結、第三者による操作部に対する悪戯を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明に係る充電リッド構造を備えた車両の前部の外観斜視図である。
【図2】充電リッドを開き充電コネクタを充電ポートに接続した状態を示す車両前部の外観斜視図である。
【図3】充電中における車両前部の外観斜視図である。
【図4】充電ポート格納庫の断面図である。
【図5】実施例1における充電処理のフローチャートである。
【図6】実施例2における充電処理のフローチャートである。
【図7】上下観音開き型の充電リッドを閉じた状態を示す断面図である。
【図8】充電中における前記上下観音開き型の充電リッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明に係る車両の充電リッド構造の実施例を図1から図8の図面を参照して説明する。
初めに、この発明に係る車両の充電リッド構造の実施例1を図1から図5の図面を参照して説明する。
図1に示される車両1は、例えばプラグインハイブリッド車であり、車両1には蓄電装置としてのバッテリ(図示略)が搭載されている。バッテリは外部充電装置から充電可能となっていて、そのために車両1は充電ポートを備えている。
この実施例における車両1では、図1から図3に示すように、車体の左フロントフェンダ2に、充電リッド10により開閉される略矩形の開口3が設けられ、開口3に連なってその奥側に充電ポート格納庫4が設けられている。つまり、開口3は充電ポート格納庫4の開口でもあり、充電リッド10は充電ポート格納庫4を開閉する。
【0022】
充電リッド10は断面コ字状をなし、上壁部11と、上壁部11の左右両端に連なり互いに平行に配置された2つの側壁部12,12とを備えている。充電リッド10は、開口3の上端を中心にして上下方向に回動可能に設置されており(図4参照)、閉成状態では、図1に示すように、上壁部11が開口3に嵌り込み、上壁部11の表面と左フロントフェンダ2の表面が面一となって開口3を閉ざし、両側壁部12が充電ポート格納庫4内に収容されるようになっている。また、充電リッド10を開成すると、図2に示すように、閉成状態から約90度上方に回転して全開状態となり、充電リッド10のほぼ全体が充電ポート格納庫4から露出するようになっている。
【0023】
充電リッド10は、図4に示すように、充電ポート格納庫4内に設置された駆動部(開閉機構)5によって開閉駆動されるようになっている。駆動部5は、図示しないモータおよびロック装置を備えており、充電リッド10を支持するアーム13が駆動部5の前記モータにより回動せしめられることにより、充電リッド10が開方向および閉方向に動かされる。また、駆動部5の前記ロック装置を作動させることにより充電リッド10は開閉いずれの方向にも動かなくなり、固定することができるようになっている。駆動部5の前記モータおよび前記ロック装置の作動は、車両1に搭載された電子制御装置(制御部)6によって制御される。
【0024】
また、充電ポート格納庫4には、前記バッテリに電気的に接続された充電ポート7が設けられている。充電ポート7は雌型に形成されており、この充電ポート7に、充電コネクタ20が接続可能となっている。
充電コネクタ20は、ケーブル21を介して図示しない外部充電装置に接続されている。外部充電装置は、例えば家庭用電源を電力源としたものであってもよいし、街中の充電専用施設に設置されているものであってもよい。
【0025】
図4に示すように、充電コネクタ20は、略くの字状をなす把持部22と、把持部22の先端から延びるインレット部23と、把持部22の屈曲部22aの上側に設置されたスイッチ(操作部)24とを備え、インレット部23を充電ポート7に嵌合することにより、両者は電気的に接続されるようになっている。充電コネクタ20を充電ポート7に接続した後に、利用者がスイッチ24をオン操作することによって、インレット部23と充電ポート7との嵌合状態がロックされるようになっており、充電準備完了となる。また、スイッチ24をオフ操作することによって、充電を停止することができるとともに、インレット部23と充電ポート7との嵌合状態がアンロックされ、充電コネクタ20を充電ポート7から取り外すことができるようになっている。
また、充電コネクタ20のインレット部23を充電ポート7に接続すると、車両1の電子制御装置6と外部充電装置の制御部とが接続されるようになっていて、充電処理に必要な制御信号を互いに送受信可能となっている。
【0026】
充電コネクタ20のインレット部23を充電ポート7に嵌合して接続した状態では、充電コネクタ20の把持部22における先部が開口3を貫き、操作部24を含む把持部22の殆どが開口3よりも外側に突出する。そして、その状態で充電リッド10を下方に回転し、充電コネクタ20に近接させると、図3および図4に示すように、充電リッド10の上壁部11が操作部24を含む殆どの把持部22を覆うとともに、充電リッド10の2つの側壁部12,12が操作部24を含む把持部22の両側方に位置し、上方および左右から充電コネクタ20を囲むようになっている。また、上壁部11の後端部が把持部22の屈曲部22aの後方に位置して、充電コネクタ20の引き抜き方向への移動を阻止するようになっている。
【0027】
このように上壁部11を充電コネクタ20に近接させて充電リッド10を固定し、充電を行うと、充電中に降雨あるいは降雪があった場合にも、充電コネクタ20が雨に濡れたり、充電コネクタ20に積雪するのを防止することができる。特に、左右の側壁部12の存在により、充電コネクタ20に雨や雪が横から吹きかかるのを防止することができる。また、充電コネクタ20のインレット部23と充電ポート7との嵌合部に雨や雪が付着するのを防止することができる。その結果、凍結により充電コネクタ20が取り外せなくなったり、充電コネクタ20が汚損するのを防止することができる。また、第三者が充電コネクタ20を悪戯しようとしても、操作部24には手が届かないし、充電コネクタ20を引き抜くこともできないので、悪戯を防止することができる。
【0028】
また、車両1は、バッテリの充電状態を検出する充電状態検出手段31と、車両のドアの施錠状態を検出する施錠状態検出手段32と、充電リッドオープンスイッチ33とを備えている。
充電状態検出手段31は、バッテリを充電中であるか否かを判定する。例えば、バッテリが満充電されたときにはその時点で充電が停止されるので、充電状態検出手段31は充電中でないと判定する。また、充電時間をタイマ設定していた場合には、設定時間に達すると充電が停止されるので、充電状態検出手段31は充電中でないと判定する。また、利用者による充電停止操作があり、これに基づく充電停止指令を入力したときに、充電状態検出手段31は充電中でないと判定する。
充電状態検出手段31は、充電中であるか否かの検出結果に応じた電気信号を電子制御装置6に出力する。
【0029】
施錠状態検出手段32は、車両1の総てのドアが施錠されているか否かを検出し、検出結果に応じた電気信号を電子制御装置6に出力する。この実施例1において、施錠状態検出手段32は、充電時の状況を検出する状況検出手段を構成する。
充電リッドオープンスイッチ33は、車両1のインストルメントパネル等に設けられており、充電リッド10を開成するときに利用者によりオン操作される。オン操作されたときに、充電リッドオープンスイッチ33は電子制御装置30に開指令信号を出力する。
電子制御装置6は、充電状態検出手段31、施錠状態検出手段32、充電リッドオープンスイッチ33等から入力される電気信号に基づいて、駆動部5の前記モータおよび前記ロック装置を制御する。
【0030】
次に、この実施例1における充電処理の流れおよび駆動部5の制御について、図5のフローチャートに従って説明する。
ステップS101において、車両1のインストルメントパネル等に設けられた充電リッドオープンスイッチ(図示略)が利用者によってオン操作されると、電子制御装置6は駆動部5の前記モータを駆動し、充電リッド10を図2に示される全開位置まで開成する。
次に、ステップS102において、利用者は、充電コネクタ20のインレット部23を充電ポート7に嵌合し接続する。
次に、ステップS103において、充電コネクタ20のスイッチ24が利用者によりオン操作されると、インレット部23と充電ポート7との嵌合状態がロックされるとともに、このオン信号が車両1の電子制御装置6に送信される。
【0031】
次に、ステップS104において、充電リッド10を閉じ方向に回転し、充電リッド10の上壁部11が充電コネクタ20に近接した位置で停止させる。この充電リッド10の充電コネクタ20への接近動作は、利用者により手動で行われるようにしてもよいし、あるいは、駆動部5の前記モータを用いて自動的に行われるようにしてもよい。
自動的に行う場合には、例えば、スイッチ24のオン信号を入力した電子制御装置6は、駆動部5の前記モータを駆動して、充電リッド10を閉じ方向に回転させる。そして、充電リッド10の上壁部11が充電コネクタ20に近接して位置したときに、前記モータを停止する。なお、充電リッド10の上壁部11が充電コネクタ20に近接して位置したか否かは、例えば、上壁部11が充電コネクタ20に当接するとモータに対する負荷が増大し、電流が大きくなるので、この電流の増大を検知することにより、上壁部11が充電コネクタ20に当接(近接)したと判定することができる。または、リミットスイッチや近似値センサといったセンサを設け、センサからのON/OFF信号に基づいて判定してもよい。
【0032】
次に、ステップS105において、電子制御装置6は、施錠状態検出手段32の検出結果に基づき、車両1の総てのドアが施錠されているか否かを判定する。
ステップS105における判定結果が「YES」(施錠)である場合には、ステップS106に進み、電子制御装置6は、駆動部5の前記ロック装置を作動して、充電リッド10を移動不能に固定する。さらに、ステップS106からステップS107に進み、電子制御装置6は外部充電装置の制御部へ充電開始指令を出力する。これにより、外部充電装置はバッテリへの充電を開始する。
つまり、ステップS105における判定結果が「YES」である場合、すなわち車両1の全ドアが施錠されている場合には、利用者が車両1から離れていると推定されるので、この場合には、充填リッド10を充電コネクタ20に近接させた状態で固定し、第三者に悪戯されないようにして、充電を開始する。
【0033】
一方、ステップS105における判定結果が「NO」(非施錠)である場合、すなわち、車両1に1つでも施錠されていないドアがある場合には、電子制御装置6は、ステップS106を経ずに、ステップS107に進み、外部充電装置の制御部へ充電開始指令を出力する。これにより、外部充電装置はバッテリへの充電を開始する。
つまり、車両1に1つでも施錠されていないドアがある場合には、利用者が車両1の中あるいは車両1の近くにいると推定され、第三者による悪戯はされ難いので、この場合には、充填リッド10を固定せずに充電を開始する。
【0034】
次に、ステップS107からステップS108に進み、電子制御装置6は、施錠状態検出手段32の検出結果に基づき、車両1の総てのドアが施錠されているか否かを判定する。
ステップS108における判定結果が「YES」(施錠)である場合には、ステップS109に進み、電子制御装置6は、駆動部5の前記ロック装置を作動して、充電リッド10を移動不能に固定する。
つまり、充電を開始してからも、車両1のドアの施錠状態を監視し、車両1の全ドアが施錠されている場合には、利用者が車両1から離れていると推定されるので、充填リッド10を充電コネクタ20に近接させた状態で固定し、第三者に悪戯されないようにする。
さらに、ステップS109からステップS110に進み、電子制御装置6は、充電状態検出手段31の検出結果に基づき、充電中か否かを判定する。
ステップS110における判定結果が「NO」(非充電)である場合には、ステップS111に進み、バッテリへの充電は終了となる。
【0035】
ステップS110における判定結果が「YES」(充電中)である場合には、ステップS120に進み、施錠状態検出手段32の検出結果に基づき、車両1の総てのドアが施錠されているか否かを判定する。
ステップS120における判定結果が「YES」(施錠)である場合には、ステップS110に戻り、電子制御装置6は充電リッド10の固定を継続しつつ、充電を継続させる。
ステップS120における判定結果が「NO」(非施錠)である場合には、ステップS121に進み、電子制御装置6は、駆動部5の前記ロック装置を作動して、充電リッド10を移動可能に解除する。そして、ステップS121からステップS112に進み、電子制御装置6は、充電状態検出手段31の検出結果に基づき、充電中か否かを判定する。
つまり、充電を開始してからも、車両1のドアの施錠状態を監視し、車両1に1つでも施錠されていないドアがある場合には、利用者が車両1の中あるいは車両1の近くにいると推定され、第三者による悪戯はされ難いので、この場合には、充填リッド10を固定せずに充電を継続させる。
【0036】
一方、ステップS108における判定結果が「NO」(非施錠)である場合には、ステップS112に進み、電子制御装置6は、充電状態検出手段31の検出結果に基づき、充電中か否かを判定する。
ステップS112における判定結果が「YES」(充電中)である場合には、ステップS108に戻る。
ステップS112における判定結果が「NO」(非充電)である場合には、ステップS111に進み、バッテリへの充電は終了となる。
【0037】
そして、ステップS111からステップS113に進み、電子制御装置6は、施錠状態検出手段32の検出結果に基づき、車両1の総てのドアが施錠されているか否かを判定する。
ステップS113における判定結果が「YES」(施錠)である場合には、ステップS113に戻り、電子制御装置6はステップS113において否定判定されるまで待機する。つまり、ステップS113における判定結果が「YES」である場合、すなわち車両1の全ドアが施錠されている場合には、充電を終了していても、利用者が車両1から離れていると推定されるので、この場合には、第三者に悪戯されないように、充填リッド10の固定状態を維持する。
【0038】
ステップS113における判定結果が「NO」(非施錠)である場合には、ステップS114に進み、電子制御装置6は、駆動部5の前記ロック装置を解除し、充電リッド10の開閉を可能にする。つまり、車両1に1つでも施錠されていないドアがある場合には、利用者が車両1の中あるいは車両1の近くにいると推定されるので、この場合には、充填リッド10の固定を解除する。
次に、ステップS115において、利用者が手動で充電リッド10を開き、充電コネクタ20のスイッチ24をオフ操作することにより、充電コネクタ20のインレット部23と充電ポート7との嵌合状態をアンロック状態にして、充電コネクタ20を充電ポート7から取り外す。
次に、ステップS116において、利用者が手動で充電リッド10を閉じ、充電処理を終了する。
この実施例1においては、電子制御装置6がステップS105,S108,S113,S120の処理を実行することにより、充電リッド10の固定維持および固定解除を判定する判定部が実現される。
【0039】
この実施例1の充電リッド構造によれば、外部充電装置から車両1のバッテリに充電をする際に充電ポート格納庫4内に挿入するのは、充電コネクタ20のインレット部23と把持部22の先部だけであり、充電コネクタ20全体を充電ポート格納庫4内に収納しないので、充電ポート格納庫4の容量を小さくすることができ、充電ポート格納庫4をレイアウトする上で有利となり、レイアウト性が向上する。
【0040】
また、充電リッド10は、その上壁部11を充電コネクタ20のスイッチ24の上に近接して位置させた状態で、スイッチ24を覆うように配置され固定されるので、例えば充電中に降雨や降雪があった場合にも、充電リッドが傘代わりとなって充電コネクタ20への降雨、降雪を阻止することができ、その結果、充電コネクタ20およびその周辺の凍結を防止することができ、スイッチ24の操作や充電後の充電コネクタ20の取り外し等の操作を可能な状態に維持することができる。
【0041】
また、充電リッド10を充電コネクタ20のスイッチ24に近接させて固定することにより、充電コネクタ20のスイッチ24を操作することができなくなるので、利用者が車両1から離れた際に第三者によるスイッチ24に対する悪戯を防止することができる。
【0042】
さらに、充電リッド10を充電コネクタ20のスイッチ24に近接させて固定するだけであるので、この実施例1の充電コネクタ20とは異なる形状の充電コネクタの場合にも、該充電コネクタの操作部に近接させた状態で充電リッド10固定することができ、使い勝手に優れ、汎用性に富む。つまり、充電リッド10と充電コネクタは互いに関連した形状あるいは専用の形状にする必要がない。
【0043】
また、車両1のドアが施錠されているときには、充電中だけでなく、充電が終了した後も、充電リッド10を充電コネクタ20のスイッチ24に近接した位置でスイッチ24を覆うように固定した状態に維持するので、長時間に亘って利用者が車両1から離れた際(例えば夜間の充電の際)に、充電コネクタ20およびその周辺の凍結や、第三者によるスイッチ24に対する悪戯を防止することができる。
【0044】
なお、前述した実施例1では、施錠状態検出手段32の検出結果、すなわち車両1のドアの施錠状態に基づいて、充電リッド10の固定を維持すべきか解除すべきかを判定しているが、施錠状態検出手段32に代えて、例えば、利用者情報を記憶したIDカードのような携帯型の記憶手段が車両1の近傍に存在するか否かを検出する存在検出手段を車両1に備え、この存在検出手段の検出結果に基づいて、充電リッド10の固定を維持すべきか解除すべきかを判定してもよい。この場合、前記記憶手段は利用者に携行されているので、存在検出手段により前記記憶手段の存在が検出されているときには、車両1の近くに利用者がいるので、充電リッド10の固定を維持する必要はなく、解除するようにし、また、存在検出手段により前記記憶手段の存在が検出されていない場合には、利用者は車両1から離れているので、充電リッド10の固定を維持するようにする。
【0045】
このように施錠状態検出手段32に代えて前記存在検出手段を用いる場合には、図5のフローチャートにおけるステップS105,S108,S113,S120を、「記憶手段の存在を検出したか」という判定処理とし、ステップS105における判定結果が「YES」である場合にはステップS106に進み、ステップS105における判定結果が「NO」である場合にはステップS107に進み、ステップS108における判定結果が「YES」である場合にはステップS109に進み、ステップS108における判定結果が「NO」である場合にはステップS112に進み、ステップS113における判定結果が「YES」である場合にはステップS113に戻り、ステップS113における判定結果が「NO」である場合にはステップS114に進み、ステップS120における判定結果が「YES」である場合にはステップS110に戻り、ステップS120における判定結果が「NO」である場合にはステップS121に進むようにすればよい。
このようにしても、前述した実施例1と同じ作用・効果を得ることができる。
この場合には、存在検出手段が、充電時の状況を検出する状況検出手段を構成し、電子制御装置6がステップS105,S108,S113,S120の処理を実行することにより、充電リッド10の固定維持および固定解除を判定する判定部が実現される。
する。
【0046】
前述した実施例1においては、充電リッド10の側壁部12が上壁部11に対して固定されているが、側壁部12を上壁部11に重なる方向に折り畳み可能に取り付けるとともに、上壁部11に対して直角姿勢となるように弾性付勢しておき、充電リッド10を閉じるときに、充電ポート格納庫4側に設けられたガイドに押圧されて側壁部12が内側に折り畳まれて上壁部12に重なるようにし、充電リッド10を開くと、側壁部11が弾性により開いて上壁部11に対して直角姿勢となるように構成してもよい。このようにすると、充電リッド10の上壁部12と2枚の側壁部12とが積層した形態となって開口3を塞ぐので、充電ポート7に対する保護を強化することができる。
【0047】
次に、この発明に係る車両の充電リッド構造における、充電処理の流れおよび駆動部5の制御の実施例2を図6のフローチャートを参照して説明する。
実施例2における制御が実施例1における制御と相違する点は、実施例2における制御では、施錠状態検出手段32の検出結果に基づいて充電リッド10を固定するか否かを判定するのではなく、充電状態検出手段31の検出結果に基づいて充電リッド10を固定するか否かを判定することにある。
以下、図6のフローチャートに従って、実施例2における充電処理の流れおよび駆動部5の制御を説明する。
ステップS201〜ステップS204の処理は、実施例1におけるステップS101〜S104の処理と同じであるので説明を省略する。
【0048】
ステップS204からステップS205に進み、電子制御装置6は外部充電装置の制御部へ充電開始指令を出力する。これにより、外部充電装置は車両1のバッテリへの充電を開始する。
次に、ステップS206に進み、電子制御装置6は、駆動部5の前記ロック装置を作動して、充電リッド10を移動不能に固定する。つまり、充電中は、充填リッド10を充電コネクタ20に近接させた状態で固定し、第三者に悪戯されないようにする。
次に、ステップS207に進み、電子制御装置6は、充電状態検出手段31の検出結果に基づき、充電中か否かを判定する。
ステップS207における判定結果が「YES」(充電中)である場合には、ステップS207に戻り、電子制御装置6は充電リッド10の固定を維持する。
ステップS207における判定結果が「NO」(非充電)である場合には、ステップS208に進み、バッテリへの充電は終了となる。
この後、ステップS208からステップS209に進む。ステップS209〜S211の処理は、実施例1におけるステップS114〜S116の処理と同じであるので説明を省略する。
この実施例2において、充電状態検出手段31は、充電時の状況を検出する状況検出手段を構成し、電子制御装置6がステップS207の処理を実行することにより、充電リッド10の固定維持および固定解除を判定する判定部が実現される。
【0049】
この実施例2によれば、充電中は、充電リッド10の上壁部11を充電コネクタ20のスイッチ24の上に近接して位置させた状態で、充電リッド10を、スイッチ24を覆うように固定した状態に維持しているので、充電コネクタ20およびその周辺の凍結を防止することができ、スイッチ24の操作や充電後の充電コネクタ20の取り外し等の操作を可能な状態に維持することができる。また、充電リッド10が前記状態に固定されることにより、スイッチ24を操作することができないので、利用者による無用な操作や、第三者によるスイッチ24に対する悪戯を防止することができる。
また、充電が終了したときや利用者から充電終了の入力がされたときに、充電リッド10の前記固定を解除するので、その後は充電リッド10を開成して充電コネクタ20を充電ポート7から取り外すことが可能となる。
【0050】
図7,図8を参照して、別の実施例における充電リッド10を説明する。
この実施例における充電リッド10は、上下方向に観音開きする2つのリッド41,42を備えて構成されており、上側リッド41は開口3の上端を中心に上下方向に回動可能に設けられ、下側リッド42は開口3の下端を中心に上下方向に回動可能に設けられていて、両リッド41,42を閉成したときに、図7に示すように、上側リッド41の下端が下側リッド42の上端の外側に重複するように構成されている。
【0051】
図8は、充電リッド10を開成し、充電コネクタ20を充電ポート7に嵌合接続した後、上側リッド41および下側リッド42を充電コネクタ20に近接させて固定した状態を示した図ある。このように、充電リッド10を上下観音開きする構成にした場合には、充電コネクタ20の把持部22の上側にスイッチ24が設けられていても、あるいは、図8において二点鎖線で示すように把持部22の下側に操作部25が設けられていても、あるいは、把持部22の上側と下側の両方にスイッチ24や操作部25が設けられていても、スイッチ24や操作部25に上側リッド41あるいは下側リッド42を近接させ覆うように位置させて充電リッド10を固定することができるので、さらに汎用性に富むものとなる。
【0052】
なお、このように充電リッド10を上下観音開きにして充電リッド10に実施例1における側壁部12と同様の側壁部を設ける場合には、上側リッド41にだけ側壁部を設け、下側リッド42には側壁部を設けないのが好ましい。下側リッド42に側壁部を設けない方が、排水性が良いからである。
【0053】
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、前述した実施例では充電ポート格納庫を車両のフロントフェンダに設けたが、充電ポート格納庫の設置位置は車両のフロントノーズ部など他の位置であってもよい。
また、前述した実施例では、充電リッドをモータにより開閉駆動するようにしているが、充電リッドの開閉を総て利用者が手動で行うように開閉機構を構成し、充電リッドを任意の位置で固定することができるロック装置を前記開閉機構に備え、前記ロック装置を制御部で制御するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 車両
3 開口
4 充電ポート格納庫
5 駆動部(開閉機構)
6 電子制御装置(制御部)
7 充電ポート
10 充電リッド
11 上壁部
12 側壁部
20 充電コネクタ
23 インレット部
24 スイッチ(操作部)
25 操作部
31 充電状態検出手段
32 施錠状態検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置された充電ポート格納庫と、
前記充電ポート格納庫内に設置され、外部充電装置に接続された充電コネクタを接続可能で、前記充電コネクタとの接続により車両の蓄電装置を充電可能にする充電ポートと、
前記充電ポート格納庫を開閉する充電リッドと、
前記充電リッドを開閉させる開閉機構と、
前記開閉機構を制御する制御部と、を備え、
前記充電コネクタは、前記充電ポート格納庫に挿入して前記充電ポートに接続可能なインレット部と、利用者により充電に関与して操作される操作部とを有し、前記インレット部を前記充電ポートに接続した状態にて該充電コネクタの一部が前記充電ポート格納庫から車外側に突出するようになっており、
前記充電リッドは、開成時に前記充電コネクタを少なくとも上側から覆うとともに前記操作部を覆うことができる形状をなし、
前記充電リッドを開成して前記充電コネクタの前記インレット部を前記充電ポートに接続した場合に、前記充電リッドが前記充電コネクタの前記操作部に近接した位置にて、前記制御部は前記充電リッドを固定するように前記開閉機構を制御することを特徴とする車両の充電リッド構造。
【請求項2】
充電時の状況を検出する状況検出手段を備え、
前記制御部は、前記状況検出手段の検出結果に基づいて前記充電リッドの固定維持および固定解除を判定する判定部を備え、該判定部の判定結果にしたがって前記開閉機構を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両の充電リッド構造。
【請求項3】
前記状況検出手段は、車両のドアの施錠状態を検出する錠状態検出手段であり、
前記判定部は、前記施錠状態検出手段により施錠が検出されているときに前記充電リッドを固定維持すべきと判定し、施錠が検出されないときに前記充電リッドの固定を解除すべきと判定することを特徴とする請求項2に記載の車両の充電リッド構造。
【請求項4】
前記状況検出手段は、充電状態を検出する充電状態検出手段であり、
前記判定部は、前記充電状態検出手段により充電中であることが検出されているときに前記充電リッドを固定維持すべきと判定し、充電中でないことが検出されているときまたは利用者からの充電終了の指令が検出されたときに前記充電リッドの固定を解除すべきと判定することを特徴とする請求項2に記載の車両の充電リッド構造。
【請求項5】
前記状況検出手段は、利用者情報を記憶した携帯記憶手段が車両の近傍に存在することを検出する存在検出手段であり、
前記判定部は、前記存在検出手段により前記携帯記憶手段の存在が検出されていないときに前記充電リッドを固定維持すべきと判定し、前記携帯記憶手段の存在が検出されているときに前記充電リッドの固定を解除すべきと判定することを特徴とする請求項2に記載の車両の充電リッド構造。
【請求項6】
前記充電リッドは、上壁部と、この上壁部に連なる2つの側壁部とを有して断面コ字状をなし、前記充電ポート格納庫における開口部上端を中心に上下方向に回動することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両の充電リッド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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