説明

車両の補機配設構造

【課題】車体を効果的にコンパクト化してコストダウンを図りつつ、空調ユニットを適正に設置できるようにする。
【解決手段】車室の底面を形成するフロアパネル2の上方に少なくとも運転席シートと助手席シート4とが車幅方向に並設された車両において、上記運転席シートがシートレールに沿って前後移動可能に支持されるとともに、この運転席シートの最前方位置よりも後方側部位に上記助手席シート4が配設され、これらの運転席シートおよび助手席シート4の前方側には、車室1とエンジンルームとを区画するダッシュパネル35が車幅方向に延びるように設置されるとともに、このダッシュパネル35の上方には、フロントウインド36の下端部を支持するカウル部材37が車幅方向に延びように設置され、上記助手席シート4の前方に位置するカウル部材37の下方に空調ユニット38が配設された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の底面を形成するフロアパネルの上方に少なくとも運転席シートと助手席シートとが車幅方向に並設された車両の補機配設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、フロアパネル上に運転席および助手席が設置された所謂ツーシータタイプのスポーツカーにおいて、ダッシュパネルの凹部内に駆動装置を配設し、該駆動装置の側方のダッシュパネルの前方にバッテリを配設し、バッテリ前端位置を駆動装置よりも前方に位置させることで、駆動装置とバッテリとの両者を後方配置し、これによりヨー慣性モーメントの低減を図って、操縦安定性および車両の運動性能の向上を図り、しかも衝突荷重をバッテリで受け止めて、衝突時に駆動装置の後退量を減少させて、安全性を向上させることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−28911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車体をコンパクト化することが特に望まれる上記ツーシータタイプのスポーツカー等においては、空調ユニットや車載バッテリ等からなる車両用補機の設置スペースを確保することが重要な課題であった。また、上記特許文献1に開示された車両では、ダッシュパネルに駆動装置の後部が配設される凹部が形成されているため、上記空調ユニット等の設置スペースを確保することが極めて困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、車体を効果的にコンパクト化してコストダウンを図りつつ、空調ユニットを適正に設置できる車両の補機配設構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車室の底面を形成するフロアパネルの上方に少なくとも運転席シートと助手席シートとが車幅方向に並設された車両において、上記運転席シートがシートレールに沿って前後移動可能に支持されるとともに、この運転席シートの最前方位置よりも後方側部位に上記助手席シートが配設され、これらの運転席シートおよび助手席シートの前方側には、車室とエンジンルームとを区画するダッシュパネルが車幅方向に延びるように設置されるとともに、このダッシュパネルの上方には、フロントウインドの下端部を支持するカウル部材が車幅方向に延びように設置され、上記助手席シートの前方に位置するカウル部材の下方に空調ユニットが配設されたものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の補機配設構造において、上記空調ユニットの側方部に形成された空間部に車両用操作部材が設置されたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記請求項2に記載の車両の補機配設構造において、上記空間部にシフトレバーからなる車両用操作部材が設置されたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の補機配設構造において、上記運転席シートおよび助手席シートの前方には、上記カウル部材の車室内側面を覆うインストルメントパネルが車幅方向に延びるように設置され、このインストルメントパネルには、その一部を前方側に凹入させた凹入部が上記車両用操作部材の設置部に対向した位置に形成されたものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の補機配設構造において、助手席シートが、上記シートレールにより前後移動可能に支持された運転席シートの最後方部位に対応した位置に固定されたものである。
【0011】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の補機配設構造において、上記空調ユニットから供給された空調用エアを、上記運転席シートおよび助手席シートに着座した乗員の少なくとも一方に吹き付ける空調ダクトを備えたものである。
【0012】
請求項7に係る発明は、上記請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の補機配設構造において、上記助手席シートに着座した乗員の膝部を保護するニープロテクタが、上記空調ユニットの後面に沿って設置されたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、シートレールにより前後移動可能に支持された運転席シートの後方側部位に助手席シートを配設することにより、助手席シートの前方部に広いスペースを確保することができるため、この部分にブロアおよび熱交換器等を有する空調ユニットを配設することにより、車体を効果的にコンパクト化してコストダウンを図りつつ、上記空調ユニットを適正に設置できるという利点がある。
【0014】
請求項2に係る発明では、空調ユニットの側方部に形成された空間部に車両用操作部材を配設したため、この車両用操作部材の前後位置を車室前部のステアリングホイールに近接した位置に設置することができ、このステアリングホイールを保持して車両を運転している運転者が、その手を必要に応じて上記車両用操作部材に迅速に持ち替えることができるという利点がある。
【0015】
請求項3に係る発明では、空調ユニットの側方部に形成された空間部に、操作頻度が高いシフトレバーを配設したため、これをステアリングホイールに近接した位置に設置することにより、上記シフトレバーを必要に応じて迅速に操作できるという利点がある。
【0016】
請求項4に係る発明では、運転席シートおよび助手席シートの前方にカウル部材の車室内側面を覆うインストルメントパネルが車幅方向に延びるように設置された車両において、上記インストルメントパネルの一部を前方側に凹入させて凹入部を形成したため、上記シフトレバー等からなる車両用操作部材を、インストルメントパネルの後端面に近接したステアリングホイールの近傍位置に配設することにより、上記ステアリングホイールを把持した運転者が、シフトレバー等からなる車両用操作部材を迅速かつ適正に操作できるという利点がある。
【0017】
請求項5に係る発明では、シートレールにより前後移動可能に支持された運転席シートの最後方部位に対応した位置に助手席シートを固定するように構成したため、この助手席シートおよびその乗員からなる重量物を車両の中心寄りの位置に配設することにより、車両の運転性能を効果的に向上させることができるとともに、助手席シートの前方側に設けられるスペースを最大限に広くすることができ、小柄な体格の乗員が助手席シートに着座した場合は勿論のこと、大柄な体格の乗員が助手席シートに着座した場合においても、その前方側に広いスペースを確保して良好な居住性が得られるという利点がある。
【0018】
請求項6に係る発明では、上記空調ユニットから供給された空調用エアを、上記運転席シートおよび助手席シートに着座した乗員の少なくとも一方に吹き付ける空調ダクトを設けたため、ルーフパネルおよびこれを支持するピラーのないオープンカーにおいても、上記運転席シートまたは助手席シートに着座した乗員に対する空調性能を効果的に確保できるという利点がある。
【0019】
請求項7に係る発明では、上記助手席シートに着座した乗員の膝部を保護するニープロテクタを上記空調ユニットの後面に沿って設置したため、車両の衝突時に上記助手席シートに着座した乗員の膝部等が前方に移動して上記ニープロテクタに当接した場合に、その当接荷重を適度に分散させて吸収することができるため、上記乗員の膝部等が空調ユニットの後方突部等に圧接されて、大きな反力を受けること等を効果的に防止できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る車両の補機配設構造を備えた車両の概略構成を示す平面図である。
【図2】運転席シートおよび助手席シートの設置状態を示す正面断面図である。
【図3】運転席シートの設置状態を示す側面断面図である。
【図4】助手席シートの設置状態を示す側面断面図である。
【図5】運転席シートを前方に移動させた状態を示す平面図である。
【図6】本発明に係る車両の補機配設構造の別の実施形態を示す側面断面図である。
【図7】上記補機配設構造の具体的構成を示す平面図である。
【図8】本発明に係る車両の補機配設構造のさらに別の実施形態を示す側面断面図である。
【図9】上記補機配設構造の具体的構成を示す正面断面図である。
【図10】本発明に係る車両の補機配設構造のさらに別の実施形態を示す平面図である。
【図11】棒状部材の内部構造を示す断面斜視図である。
【図12】本発明に係る車両の補機配設構造のさらに別の実施形態を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜図5は、本発明に係る車両の補機配設構造の実施形態を示している。本実施形態に係る車両は、その車室1内のフロアパネル2上に運転席シート3および助手席シート4が左右に並設されるとともに、車室上方にルーフ部材(図示せず)が開閉可能に設置された所謂ツーシータタイプのオープンカーである。上記フロアパネル2の左右両側方部には、車両の前後方向に延びる左右一対のサイドシル5が配設されるとともに、上記フロアパネル2の車幅方向中央部には、車室内側(上方)に向けて突出するトンネル部6が車両の前後方向に延びるように設置されている。
【0022】
上記車室1内の左側部位には、運転席シート3を移動可能に支持する左右一対のシートレール8が車両の前後方向に延びるように設置されている。また、車室1内の左側部位には、フロアパネル2を上方に膨出させたフロア膨出部9が形成され、その上に助手席シート4が取り付けられている。そして、上記運転席シート3および助手席シート4の設置部の後方側には、斜め上方に向けてキックアップしたキックアップ部10と、その上端部から車両の後方側に延びるリヤフロアパネル11とが連設されている。また、上記リヤフロアパネル11の前部下面には、車幅方向に延びる閉断面を形成するリヤクロスメンバ12が配設されている。
【0023】
上記運転席シート3は、図1に示すように、車室1内のフロアパネル2上に設置された上記シートレール8に沿って車両の前後方向にスライド可能に支持されたシートクッション13と、その後端部に立設されたシートバック14と、上記シートクッション13の後端部側面に取り付けられてシートバック14を傾動可能に支持するリクライニング機構15とを備えている。そして、上記シートレール8に沿って運転席シート3のシートクッション13をスライド変位させることにより、図5に示すように、運転席シート3を、ステアリングホイール16およびインストルメントパネル17に近接させた最前方位置から、図1および図3に示すように、上記フロアパネル2のキックアップ部10に近接させた最後方位置まで前後移動させることにより、運転席シート3に着座した運転者の着座位置を、その体格等に応じて調整できるように構成されている。
【0024】
一方、助手席シート4は、図4に示すように、上記フロア膨出部9上に載置されたシートクッション18と、このシートクッション18の後方部から上方に立設されたシートバック19と有している。そして、上記助手席シート4の設置位置は、上記運転席シート3の最前方位置よりも後方側、具体的には、上記シートレール8により前後移動可能に支持された運転席シート3の最後方位置に対応した車室1の後方部位に設定されている。このように助手席シート4のシートクッション18およびシートバック19が、上記フロアパネル2の後端部に設けられたキックアップ部10に近接した位置に支持されることにより、上記シートクッション18の前後移動が規制されるとともに、上記シートバック19の傾動変位が規制された状態で、上記シートレール8により前後移動可能に支持された運転席シート3の最前方位置よりも後方側において、上記助手席シート4が車体に固定的に設置されている。
【0025】
また、上記助手席シート4のシートバック19には、丸パイプ材等からなるシートバックフレーム24が配設されている。このシートバックフレーム24は、シートバック19の上辺部に沿って車幅方向に延びる上方部材25と、その車幅方向の外側端部から下方に延びる側方部材26と、上記上方部材25を支持する棒状部材27とを有している。上記シートバックフレーム24の側方部材26は、その下端部に設けられた取付ブラケット28を介して上記フロア膨出部9の後部上面にボルト止めされる等の手段で固定されている。
【0026】
上記シートバックフレーム24の棒状部材27は、図2に示すように、正面視で運転席シート3と助手席シート4との間において上下方向に延びるように設置された縦部材29と、その上端部から斜めシートバック19の中央部に向けて斜め下方に延びる斜め部材30とを有している。上記縦部材29は、その下端部に設けられた取付ブラケット31が、上記リヤクロスメンバ12により補強されたリヤフロアパネル11の前端部上面にボルト止めされる等の手段で固定されている。さらに、上記取付ブラケット31が設けられた縦部材29の下端部前方に位置するキックアップ部10の中央部には、上記トンネル部6の上面に沿って車両の前後方向に延びるように設置された左右一対のトンネルメンバ32,32の後端部が接続されている。
【0027】
上記斜め部材30の下部は、助手席シート4のシートバック19内に導入されてシートバックフレーム24の上方部材25に溶接されている。一方、上記上方部材25は、その車幅方向の内側方部がシートバック19外に導出されるとともに、その先端部が上記棒状部材27の縦部材29の上下方向中間部に溶接されている。そして、上記縦部材29の上方部分および斜め部材30からなる棒状部材27の上部が、助手席シート4の上方に延びるように設置されることにより、助手席シート4に着座した乗員を保護するロールバー部材が構成されている。
【0028】
図4に示すように、上記助手席シート4の下方に位置するフロア膨出部9には、その一部、具体的には周縁部を除く中央部分を下方に凹入させることにより物品の収納部33が形成されている。そして、助手席シート4のシートクッション18が上記収納部33の上面を覆うように設置されている。また、上記助手席シート4のシートクッション18は、その前端部に設けられたヒンジ部34を支点にして揺動可能に支持され、必要に応じて図4の仮想線で示すように、上記収納部33の上面を開放し得るように構成されている。
【0029】
上記運転席シート3および助手席シート4の前方には、車室1と、その前方に位置するエンジンルームとを区画するダッシュパネル35が車幅方向に延びるように設置されるとともに、このダッシュパネル35の上方には、フロントウインド36の下端部を支持するカウル部材37が車幅方向に延びように設置されている。そして、上記助手席シート4の前方に位置するカウル部材37の下方であって上記ダッシュパネル35とインストルメントパネル17との間には、ブロアおよび熱交換器等を有する空調ユニット38が配設されている(図4参照)。
【0030】
すなわち、上記のように助手席シート4の設置位置を、運転席シート3の最前方位置よりも後方側、例えば上記シートレール8により前後移動可能に支持された運転席シート3の最後方位置に対応した車室1の後方部位に設定した場合には、助手席シート4の前方側に広いスペースを確保することができる。したがって、上記助手席シート4に着座した乗員の居住性を悪化させることなく、その前方側に位置するインストルメントパネル17を車室1内側(車両の後方側)へ突出させることにより、上記ダッシュパネル35とインストルメントパネル17との間に上記空調ユニット38をまとめて設置できるように構成されている。
【0031】
なお、図4において、符号39は、カウル部材37および空調ユニット38の車内側面(後面)を覆うように設置された上記インストルメントパネル17等を支持するインパネメンバであり、符号40は、空調ユニット38から供給された空調用エアを必要個所に供給する空調用ダクトである。また、符号41は、車両の衝突時に展開して助手席シート4に着座した乗員を保護する助手席用エアバッグである。
【0032】
上記空調ユニット38の設置部側方に形成された空間部、つまり運転席シート3と助手席シート4との間において車両の前後方向に延びるトンネル部6の前部上方であって、ステアリングホイール16の側方位置には、図3に示すように、シフトレバー42からなる車両用操作部材が設置されている。また、上記シフトレバー42の前方側に位置するインストルメントパネル17の車幅方向中央部には、その下方部分を前方側に凹入させた凹入部43が形成され、これによってシフトレバー42の操作時にインストルメントパネル17が邪魔にならないように構成されている。
【0033】
上記のように車室の底面を形成するフロアパネル2の上方に運転席シート3と助手席シート4とが車幅方向に並設された車両において、上記運転席シート3をシートレール8に沿って前後移動可能に支持するとともに、この運転席シート3の最前方位置よりも後方側部位に上記助手席シート4を配設し、これらの運転席シート3および助手席シート4の前方側には、車室1とエンジンルームとを区画するダッシュパネル35を車幅方向に延びるように設置するとともに、このダッシュパネル35の上方には、フロントウインド36の下端部を支持するカウル部材37を車幅方向に延びように設置し、上記助手席シート4の前方に位置するカウル部材37の下方に空調ユニット38を配設したため、車体を効果的にコンパクト化してコストダウンを図りつつ、空調ユニット38を適正に設置できるという利点がある。
【0034】
すなわち、上記実施形態では、助手席シート4を車室1の後方部において固定したため、この助手席シート4用のシートレールを省略してその分だけ車体を軽量化することができるとともに、材料費を節約して製造コストを安価に抑制することができる。また、上記助手席シート4をシートレールにより前後移動可能に支持した場合のように、助手席シート4を前後移動させる際に車体との干渉を回避するために助手席シート4のレイアウトを工夫する必要がないという利点がある。さらに、上記助手席シート4の前方側に設けられるスペースを最大限に広くすることができるため、小柄な体格の乗員が助手席シート4に着座した場合は勿論のこと、大柄な体格の乗員が助手席シート4に着座した場合においても、その前方側に広いスペースを確保して良好な居住性が得られるという利点がある。
【0035】
そして、上記のように助手席シート4を、運転席シート3の最前方位置よりも後方側、例えば上記シートレール8により前後移動可能に支持された運転席シート3の後方側部位に対応した車室1の後方部位に設定することにより、助手席シート4の前方部に広いスペースを確保することができる。したがって、この部分にブロアおよび熱交換器等を有する空調ユニット38を配設することにより、車体を効果的にコンパクト化してコストダウンを図りつつ、空調ユニット38を適正に設置することができる。
【0036】
また、上記実施形態に示すように、空調ユニット38を助手席シート4の前方部位に設置することによりスペース的に余裕が生じた空調ユニット38の側方部(車幅方向中央部)にシフトレバー42からなる車両用操作部材を設置するように構成した場合には、このシフトレバー42の前後位置を、車室前部のステアリングホイール16に近接した位置、つまり車幅方向中央部に配設されたトンネル部6の前部上面に設置することができる。このため、上記ステアリングホイール16を保持して車両を運転している運転者が、その手を必要に応じて上記シフトレバー42に迅速に持ち替えることが可能であり、このシフトレバー42を適正に操作できるという利点がある。
【0037】
なお、上記空調ユニット38の側方部に設置される車両用操作部材としては、シフトレバー42以外に、空調ユニット38等の車両用補機を操作する操作レバーまたはサイドブレーキレバー等が考えられる。しかし、上記シフトレバー42は、その操作頻度が高いため、これをステアリングホイール16に近接した位置に設置することにより、必要に応じて迅速に操作できるようにすることが望ましい。
【0038】
また、上記実施形態では、運転席シート3および助手席シート4の前方に上記カウル部材37の車室内側面を覆うインストルメントパネル17が車幅方向に延びるように設置された車両において、上記インストルメントパネル17の車幅方向中央下方部分を前方側に凹入させて凹入部43を形成したため、上記トンネル部6の上面であってステアリングホイール16の近傍位置、つまりインストルメントパネル17の後端面に近接した位置にシフトレバー42等を設置することができる。したがって、上記シフトレバー42等からなる車両用操作部材をインストルメントパネル17の後端面に近接した車室の前方位置に配設することにより、上記ステアリングホイール16を把持した運転者が、シフトレバー42等からなる車両用操作部材を迅速かつ適正に操作できるという利点がある。
【0039】
なお、上記インストルメントパネル17の車幅方向中央下方部分を前方側に凹入した凹入部43を形成した実施形態に代え、図6および図7に示すように、インストルメントパネル17の車幅方向中央部をその上限方向全域に亘り上記前方側に凹入させた凹入部43aを設けた構造としてもよい。しかし、図3に示すように、インストルメントパネル17の車幅方向中央下方部分のみを前方側に凹入させてなる上記凹入部43を形成した場合には、平面視における上記インストルメントパネル17の外観を悪化させることなく、上記ステアリングホイール16の近傍に上記シフトレバー42等からなる車両用操作部材を配設して、その操作性を適正に確保できるという利点がある。
【0040】
また、上記実施形態では、助手席シート4の設置部となるフロア膨出部9の一部を下方に凹入させることにより物品の収納部33を形成したため、車体をコンパクト化することが特に望まれるツーシータタイプのスポーツカー等においても、上記助手席シート4の下方部に形成された空間部を有効に利用して物品の収納ペースを充分に確保することができる。さらに、上記実施形態に示すように、前端部等を支点として揺動可能に支持された助手席シート4のシートクッション18により、上記収納部33の上面を開閉可能に覆うように構成した場合には、この収納部33内に収納された物品等を上記シートクッション18で隠蔽することができるため、優れた盗難予防機能が得られるという利点がある。
【0041】
上記実施形態に示すように、シートレール8により前後移動可能に支持された運転席シート3の最後方部位に対応した位置において上記助手席シート4を固定するように構成した場合には、乗員が着座した助手席シート4からなる重量物を車両の中心寄りの位置に配設することにより、車両の運転性能を効果的に向上させることができる。さらに、図8に示すように、フロントウインド36の上部を支持するフロントヘッダ44と、助手席シート4に着座した乗員の頭部との間隔を充分に確保することができるため、車両の衝突時に上記乗員の頭部が前方に移動した場合においても、この頭部が上記フロントヘッダ44に干渉するのを効果的に防止することが可能である。したがって、上記のように助手席シート4を車室の後方部に配設することにより、この助手席シート4に着座した乗員の安全性を損なうことなく、図8の破線で示す一般的な車両と比較して、上記フロントヘッダ44を下方に配設することにより、フロントウインド36の傾斜角度θを大きくして車両の空力特性を効果的に向上させることができる。
【0042】
また、図8に示すように、上記空調ユニット38の後面を覆うように設置された鋼板45とその表面を被覆するクッション材46とを有するニープロテクタ47により、助手席シート4に着座した乗員の膝部を保護するように構成してもよい。このように構成した場合には、車両の衝突時に上記助手席シート4に着座した乗員の膝部等が前方に移動して上記ニープロテクタ47に当接した場合に、その当接荷重を適度に分散させて吸収することができるため、上記乗員の膝部等が空調ユニット38の後方突部38aに圧接されて大きな反力を受けるのを防止することができる。したがって、ステアリングホイール16を保持しているために車両の衝突時にその安全性を容易に確保可能な運転者に比べ、その前方移動を抑制することが困難な助手席シート4上の乗員を効果的に保護しつつ、上記フロントヘッダ44を通常の車両に比べて下方に配設することにより、フロントウインド36の傾斜角度θを大きくして車両の空力特性を、より向上できるという利点がある。
【0043】
さらに、図9および図10に示すように、上記空調ユニット38から供給された空調用エアを車両の後方側に案内する空調ダクト48を、助手席シート4の車幅方向内側面に沿わせるように配設し、この空調ダクト48の後端部を、正面視で運転席シート3と助手席シート4との間に設置された上記丸パイプ材からなるシートバックフレーム24の棒状部材27に接続した構造としてもよい。そして、上記棒状部材27の車幅方向の中央部側壁面に形成されたエア吹出口49から、運転席シート3に着座した乗員に向けて、空調用エアを吹き出すように構成してもよい。このように構成した場合には、ルーフパネルおよびこれを支持するピラーのないオープンカーにおいても、上記運転席シート3に着座した乗員に対する空調性能を効果的に確保できるという利点がある。
【0044】
上記のように空調ダクト48の後端部をシートバックフレーム24の棒状部材27に接続することにより、この丸パイプ材からなる棒状部材27を空調ダクトとして利用するように構成した場合には、上記棒状部材27の内部を通過する空調用エアの温度と車室内温度との温度差に起因した結露が上記棒状部材27の表面に形成されるのを防止するため、図11に示すように、棒状部材27の内周面に沿って樹脂コーティング層50を形成することが望ましい。
【0045】
また、図12に示すように、上記空調ユニット38から供給された空調用エアを車両の後方側に案内する空調ダクト51を上記棒状部材27に沿わせるように設置し、この棒状部材27を上記空調ダクト51の支持部材として利用するように構成してもよい。このように構成した場合には、上記空調ダクト51を容易かつ適正に配設して運転席シート3に着座した乗員に対する空調性能を効果的に確保できるという利点がある。
【0046】
なお、上記空調ユニット38から供給された空調用エアを助手席シート4に着座した乗員に向けて供給するように構成してもよく、あるいは運転席シート3に着座した乗員および助手席シート4に着座した乗員の両方に向けて上記空調用エアを供給するように構成してもよい。また、上記実施形態では、車室1内のフロアパネル2上に運転席シート3および助手席シート4だけが設置されたツーシータタイプで、ルーフパネルおよびこれを支持するピラーのないオープンカーに本発明を適用した例について説明したが、これに限られず、後列シートを備えた車両についても本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 車室
2 フロアパネル
3 運転席シート
4 助手席シート
8 シートレール
17 インストルメントパネル
35 ダッシュパネル
36 フロントウインド
37 カウル部材
38 空調ユニット
42 シフトレバー(車両用操作部材)
43 凹入部
47 ニープロテクタ
48,51 空調用ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の底面を形成するフロアパネルの上方に少なくとも運転席シートと助手席シートとが車幅方向に並設された車両において、上記運転席シートがシートレールに沿って前後移動可能に支持されるとともに、この運転席シートの最前方位置よりも後方側部位に上記助手席シートが配設され、これらの運転席シートおよび助手席シートの前方側には、車室とエンジンルームとを区画するダッシュパネルが車幅方向に延びるように設置されるとともに、このダッシュパネルの上方には、フロントウインドの下端部を支持するカウル部材が車幅方向に延びように設置され、上記助手席シートの前方に位置するカウル部材の下方に空調ユニットが配設されたことを特徴とする車両の補機配設構造。
【請求項2】
上記空調ユニットの側方部に形成された空間部に車両用操作部材が設置されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の補機配設構造。
【請求項3】
上記空間部にシフトレバーからなる車両用操作部材が設置されたことを特徴とする請求項2に記載の車両の補機配設構造。
【請求項4】
上記運転席シートおよび助手席シートの前方には、上記カウル部材の車室内側面を覆うインストルメントパネルが車幅方向に延びるように設置され、このインストルメントパネルには、その一部を前方側に凹入させた凹入部が上記車両用操作部材の設置部に対向した位置に形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の補機配設構造。
【請求項5】
助手席シートが、上記シートレールにより前後移動可能に支持された運転席シートの最後方部位に対応した位置に固定されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の補機配設構造。
【請求項6】
上記空調ユニットから供給された空調用エアを、上記運転席シートおよび助手席シートに着座した乗員の少なくとも一方に吹き付ける空調ダクトを備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の補機配設構造。
【請求項7】
上記助手席シートに着座した乗員の膝部を保護するニープロテクタが、上記空調ユニットの後面に沿って設置されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の補機配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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