説明

車両の電池ユニット搭載構造

【課題】ドア内部に配置されたドアビームの中空空間を有効利用して電池ユニットを搭載することができる車両の電池ユニット搭載構造を提供する。
【解決手段】アウタパネルとインナパネルの各周縁同士を接合して構成されるドアの内部空間にドアビーム5を車両前後方向に配置して成る車両の電池ユニット搭載構造として、前記ドアビーム5を中空部材で構成し、該ドアビーム5内に電池ユニット8を格納する構成を採用する。又、前記電池ユニット8を前記ドアビーム5の長手方向に分割可能に構成する。更に、前記ドアビーム5の長手方向両端開口部を着脱可能なキャップ9によって閉塞するとともに、該キャップ9の少なくとも一方に、前記ドアビーム5内に格納された前記電池ユニット8からドアビーム5外に電力を取り出すための電気配線10を通す。又、前記ドアビーム5を車両後方に向かって下がるよう斜めに配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアの内部空間にドアビームを車両前後方向に配置して成る車両の電池ユニット搭載構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動モータを駆動源として走行するハイブリッド車や電気自動車等の車両においては、電動モータに電力を供給するための電池ユニットが搭載されるが、該電池ユニットは車両の床下、シートバックの裏、シート下等に設置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
又、特許文献2には、アウタパネルとインナパネルによって構成されるドア本体の内部空間に電池ユニットを配置する構成、具体的には、ドアガラスの上下方向(移動方向)の中心線及び該中心線を延長したガラスセンターとインナパネルとの間の領域において電池ユニットを固定部材を介してインナパネルに対して固定する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−063776号公報
【特許文献2】特開2008−284946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両の航続距離を延ばすためには更に電池ユニットを搭載する必要があり、特許文献1,2において提案された箇所に電池ユニットを配置するだけでは不十分である。このため、車両の他の場所に更に電池ユニットを配置する必要がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ドア内部に配置されたドアビームの内部の中空空間を有効利用して電池ユニットを搭載することができる車両の電池ユニット搭載構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、アウタパネルとインナパネルの各周縁同士を接合して構成されるドアの内部空間にドアビームを車両前後方向に配置して成る車両の電池ユニット搭載構造であって、前記ドアビームを中空部材で構成し、該ドアビーム内に電池ユニットを格納したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記電池ユニットを前記ドアビームの長手方向に分割可能に構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記ドアビームの長手方向両端開口部を着脱可能なキャップによって閉塞するとともに、該キャップの少なくとも一方に、前記ドアビーム内に格納された前記電池ユニットからドアビーム外に電力を取り出すための電気配線を通したことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記ドアビームを車両後方に向かって下がるよう斜めに配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、ドアビームを中空部材で構成し、該ドアビーム内に電池ユニットを格納したため、ドアビームの中空空間を有効利用して電池ユニットを搭載することができ、電気自動車等の車両の航続距離を延ばすことができる。又、剛性の高いドアビーム内に電池ユニットを格納することによって、該電池ユニットを効果的に保護することができる。更に、電池ユニットの重量によってドアの重量が増すため、該ドアの閉じ性が向上して操作フィーリングが高められる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、電池ユニットをドアビームの長手方向に分割可能に構成したため、車両の側面衝突等によってドアビームが変形しても、その変形に追従して複数の電池ユニットが変位することとなり、該電池ユニットの損傷が防がれる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、ドアビームの長手方向両端開口部を着脱可能なキャップによって閉塞したため、ドアビームを従来の単なる中空構造から電池ユニットを格納可能な密閉中空構造とすることができるとともに、キャップを取り外すことによって電池ユニットを容易に交換することができる。又、ドアビーム内に格納された電池ユニットから延びてキャップを通過する電気配線によって電池ユニットから電力をドアビーム外に取り出して電動モータ等に供給することができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、ドアビームを車両後方に向かって下がるよう斜めに配置したため、該ドアビーム内に格納された電池ユニットのガタツキが特別な付勢手段を用いることなく抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る車両の電池ユニット搭載構造を示すフロントドアの側面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】図3のC部(ドアビーム端部)のキャップによる閉塞構造を示す図であって、(a)はキャップ組付前の状態を示す断面図、(b)はキャップ組付後の状態を示す断面図である。
【図5】図3のC部(ドアビーム端部)のキャップによる閉塞構造の別形態を示す図であって、(a)はキャップ組付前の状態を示す断面図、(b)はキャップ組付後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明に係る車両の電池ユニット搭載構造を示すフロントドアの側面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図1のB−B線断面図、図4は図3のC部(ドアビーム端部)のキャップによる閉塞構造を示す図であって、(a)はキャップ組付前の状態を示す断面図、(b)はキャップ組付後の状態を示す断面図である。
【0018】
図1において、1はハイブリッド車や電気自動車等の電動モータを駆動源として走行する車両の前部左側に設けられた開閉可能なフロントドアであって、該フロントドア1は、図2に示すように鋼板のプレス成形品であるアウタパネル2とインナパネル3の各周縁同士をヘミング加工によって接合して中空状に構成されている。このフロントドア1においては、下半部のドア本体1Aの上部に矩形枠状のドアサッシュ1Bが形成されており、このドアサッシュ1Bで囲まれた窓部は、昇降動するドアガラス4によって開閉される。尚、図1には左側のフロントドア1のみを図示しているが、左右のフロントドア1の基本構成は同じであるため、以下、左側のフロントドア1についてのみ説明する。
【0019】
ところで、図2に示すように、フロントドア1のドア本体1Aの内部空間Sには、中空部材である丸パイプによって構成された直線状のドアビーム5が車両前後方向に配置されている。このドアビーム5は、車両側方からの大きな外力に対してサイドドア1の変形を抑制するための補強部材であって、図1に示すように車両後方に向かって下がるよう斜め配置され、その前後両端は板金製のブラケット6,7によってインナパネル3の内面に取り付けられている。詳細には、フロントドア1は、その前側に設けた上下一対のヒンジを介して開閉可能に車体に取り付けられており、その後側に設けたラッチを車体に取り付けられたストライカに係合させて車体に閉じ状態となる。ここで、ドアビーム5の前端は車両の上下方向でフロントドア1の前側に設けた上下一対のヒンジの間に位置し、ドアビーム5の後端はラッチよりも下方に配置されている。
【0020】
而して、本実施の形態においては、中空部材であるドアビーム5内の空間を利用して電池ユニット8を格納したことを特徴としている。ここで、電池ユニット8は、図3に示すようにドアビーム5の長手方向に複数(図示例では、7つ)に分割された円柱状の電池8aによって構成されており、ドアビーム5の前後両端の開口部は図4に示す着脱可能なキャップ9(図4には後端側のみを示す)によって閉塞されている。
【0021】
図4(a)に示すように、ドアビーム5の後端開口部の内周には雌ネジ5aが刻設されており、キャップ9の嵌合部9Aの外周には雄ネジ9aが刻設されている。従って、図4(b)に示すようにキャップ9の嵌合部9Aをドアビーム5の後端開口部に嵌め込んで該キャップ9を回せば、該キャップ9の嵌合部9Aに形成された雄ネジ9aがドアビーム5の後端開口部内周に形成された雌ネジ5aにねじ込まれ、キャップ9がドアビーム5の後端に螺着されてドアビーム5の後端開口部が該キャップ9によって閉塞される。尚、図3に示すように、ドアビーム5の前端開口部もキャップ9によって同様に閉塞されている。
【0022】
ところで、キャップ9のドアビーム5への固定構造は図4に示したネジ方式のものに限定されず、例えば図5に示す係合方式を採用することもできる。即ち、この係合方式においては、図5(a)に示すようにドアビーム5の開口端の周囲に複数の係合孔5bを形成する一方、キャップ9の嵌合部9Aが外周の複数箇所に係合爪9bを形成し、キャップ9の嵌合部9Aをドアビーム5の開口端内周に嵌め込み、そのままキャップ9を押し込むことによって図5(b)に示すようにキャップ9側の係合爪9bをドアブーム5側の係合孔5bに係合させる。すると、キャップ9がドアピーム5の開口端に固定され、このキャップ9によってドアビーム5の端部開口部が閉塞される。
【0023】
而して、例えばドアビーム5の後端開口部をキャップ9によって閉塞した状態で、ドアビーム5の前端開口部を閉塞するキャップ9を取り外し、ドアビーム5の開放された前端開口部から複数の電池8aをドアビーム5内に順次挿入し、最後にドアビーム5の前端開口部をキャップ9によって閉塞すれば、図3に示すように複数の電池8aによって構成される電池ユニット8がドアビーム5内に格納される。尚、電池ユニット8を交換する場合には、例えばドアビーム5の後端開口部を閉塞するキャップ9を取り外せば、ドアビーム5内に収容された複数の電池8aがドアビーム5の傾斜に沿って自重でドアビーム5外へと取り出される。その後、ドアビーム5の後端開口部をキャップ9によって閉塞する一方、ドアビーム5の前端開口部を閉塞するキャップ9を取り外し、開放されたドアビーム5の上端開口部から新しい電池8aをドアビーム5内に挿入し、最後にドアビーム5の上端開口部をキャップ9によって閉塞すれば、電池8aの交換を容易に行うことができる。
【0024】
又、本実施の形態では、キャップ9の少なくとも一方、例えば図1に示すように前側のキャップ9には、ドアビーム5内に格納された電池ユニット8からドアビーム5外に電力を取り出すための電気配線10が通されており、この電気配線10の端部にはコネクタ11が接続されている。このとき、前側のキャップ9は、車両の上下方向でフロントドア1の前側に設けた上下一対のヒンジの間に位置し、ドアハーネスを車体へ導くグロメットの近傍に配置されるため、電気配線10を不要に長くすることを防ぐことができる。
【0025】
以上のように、本実施に形態では、ドアビーム5を中空部材である丸パイプで構成し、該ドアビーム5内に電池ユニット8を格納したため、ドアビーム5の中空空間を有効利用して電池ユニット8を車両に搭載することができ、電気自動車等の車両の航続距離を延ばすことができる。又、剛性の高いドアビーム5内に電池ユニット8を格納することによって、該電池ユニット8を効果的に保護することができる。更に、電池ユニット8の重量によってフロントドア1の重量が増すため、該フロントドア1の閉じ性が向上して操作フィーリングが高められる。
【0026】
又、本実施の形態では、電池ユニット8をドアビーム5の長手方向に分割して複数の電池8aの集合体として構成したため、車両の側面衝突等によってドアビーム5が変形しても、その変形に追従して複数の電池8aが変位することとなり、該電池ユニット8の損傷が防がれる。
【0027】
更に、本実施の形態では、ドアビーム5の長手方向両端開口部を着脱可能なキャップ9によって閉塞したため、ドアビーム5を従来の単なる中空構造から電池ユニット8を格納可能な密閉中空構造とすることができるとともに、キャップ9を取り外すことによって電池ユニット8を容易に交換することができる。そして、ドアビーム5内に格納された電池ユニット8から延びてキャップ9を通過する電気配線10によって電池ユニット8の電力をドアビーム5外に取り出して不図示の電動モータ等に供給することができる。
【0028】
又、本実施の形態では、ドアビーム5を車両後方に向かって下がるよう斜めに配置したため、該ドアビーム5内に格納された電池ユニット8の各電池8aのガタツキが特別な付勢手段を用いることなく抑制されるという効果が得られる。更に、ドアビーム5に掛かる水が容易に下方に流れ、電池ユニット8の耐水性を向上させることができる。
【0029】
尚、以上は電池ユニットを車両の左右のフロントドアに設けられたドアビーム内に格納した形態について説明したが、電池ユニットを左右のリヤドアに設けられたドアビーム内に格納しても良いことは勿論であり、このようにすることによって車両の航続距離を更に延ばすことができる。
【符号の説明】
【0030】
1 フロントドア
2 アウタパネル
3 インナパネル
4 ドアガラス
5 ドアビーム
6,7 ブラケット
8 電池ユニット
8a 電池
9 キャップ
10 電気配線
11 コネクタ
S フロントドアの内部空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタパネルとインナパネルの各周縁同士を接合して構成されるドアの内部空間にドアビームを車両前後方向に配置して成る車両の電池ユニット搭載構造であって、
前記ドアビームを中空部材で構成し、該ドアビーム内に電池ユニットを格納したことを特徴とする車両の電池ユニット搭載構造。
【請求項2】
前記電池ユニットを前記ドアビームの長手方向に分割可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の車両の電池ユニット搭載構造。
【請求項3】
前記ドアビームの長手方向両端開口部を着脱可能なキャップによって閉塞するとともに、該キャップの少なくとも一方に、前記ドアビーム内に格納された前記電池ユニットからドアビーム外に電力を取り出すための電気配線を通したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両の電池ユニット搭載構造。
【請求項4】
前記ドアビームを車両後方に向かって下がるよう斜めに配置したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車両の電池ユニット搭載構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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