説明

車両ドア制御装置

【課題】本発明は、車両ドア制御装置に関し、車両が走行中に横向きの加速度が加わった場合等においてもドアを自動で施錠し得る車両ドア制御装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】車両ドア制御装置に車両の左右方向の加速度検出手段を内蔵し、当該加速度検出手段からの信号により、車両の各ドアを施錠することによって、車両に横向きの加速度が加わった場合等においてもドアを自動で施錠することが出来るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度検出手段などの車両の走行状態を検出する各種検出手段からの出力信号に基づいてドアの施開錠等を行う車両ドア制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から車両の運転席側のドアに設けられた集中ドアロックスイッチを操作することにより車両の全てのドアロックする車両ドアロック制御装置が一般的なものとして用いられているが、近年、自動車が一定速度以上になると自動的に全てのドアを施錠する車両ドア制御装置が普及している。
【0003】
ここで、このような車両ドア制御装置について、図8を用いて説明する。
【0004】
図8は従来の車両ドア制御装置のブロック図であり、同図において、1は基板上に実装された固定抵抗等の電子部品からなる入力手段で、外部端子P1〜P6に接続された各種機器からの信号が入力され、外部機器信号D1を出力する。
【0005】
また2はマイクロコンピュータ(以下マイコンと記載する)等の半導体素子で構成された制御手段で、入力手段1から外部機器信号D1が入力され、ドアの施開錠を制御する制御信号D2を出力する。
【0006】
そして、3はプリント基板上に固定抵抗等の電子部品で構成された出力手段で、制御手段2から出力された制御信号D2に基づき、外部端子P7〜P10に接続された各ドアのドアロックモータ17〜20を制御するものである。
【0007】
さらに、4はプリント基板上に電子部品等で構成された電源手段で、端子P11で車両のバッテリ21に接続され、入力手段1および制御手段2および出力手段3に電源を供給するものであり、この入力手段1と制御手段2と出力手段3と電源回路4から車両ドア制御装置5が構成される。
【0008】
このように構成された車両ドア制御装置5は車両のインストルメントパネル内等に配置され、車速パルスセンサ等の車速検出手段11から外部端子P1を経由して車速信号が入力され、また運転者が携帯するリモートコントロールキー(以下リモコンと記載する)から車両の施開錠制御信号を受信する無線装置12から外部端子P2を経由して無線施開錠信号が入力され、車両の各ドアのドアロックスイッチ13〜17から外部端子P3〜P6を経由して操作信号が入力され、外部端子P7〜P10に接続された車両の各ドアのドアロックモータ17〜20を制御するものであった。
【0009】
ここで、無線装置12から入力される無線施開錠信号により、車両ドア制御装置5に対して施錠が指示されるとドアロックモータ17〜20を制御して車両の全てのドアのドアロックを行い、開錠が指示されるとドアロックモータ17〜20を制御して車両の全てのドアのドアロックの解除を行っていた。
【0010】
また、各ドアロックスイッチ13〜16から入力される操作信号に対応して、対応するドアロックモータ17〜20を制御して、車両のドアのドアロックあるいはドアロック解除を行うものであった。
【0011】
さらに、車速検出手段11から入力された車速信号が、所定速度以上の信号であると、車両ドア制御装置5において判断した場合には、ドアロックモータ17〜20を制御し、車両の全てのドアのドアロックを行うものであるが、この制御はエンジン駆動後に1回だけ行われるもので、運転者が車両速度によるドアロック後に自ら運転席のドアロックスイッチ13を操作し、ドアロックを解除した場合には、再度ドアロックを行わないことで運転者の操作意思を反映させるものとなっていた。
【0012】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平9−112103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来の車両ドア制御装置においては、運転者が車両のドアを自らの意思で開錠した後には、施錠判定を行わないため、車両がカーブを曲がるとき等横向きの加速度が大きく加わった場合においてドアロックを行うという要望に対応できないという課題があった。
【0014】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、車両ドア制御装置に車両の左右方向の加速度検出手段を内蔵し、当該加速度検出手段からの加速度信号に基づいて車両の各ドアを施錠することで、車両に横向きの加速度が加わった場合等においてもドアを自動で施錠し得る車両ドア制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0016】
本発明の請求項1に記載の発明は、入力手段と制御手段と出力手段と電源手段を備える車両ドア制御装置において、少なくとも車両の左右方向の加速度を検出し加速度信号を出力する加速度検出手段を更に備え、上記制御手段に入力された車両の左右方向の加速度信号に基づき、車両のドアの施開錠を行うことを特徴とする車両ドア制御装置であって、車両ドア制御装置に車両の左右方向の加速度検出手段を内蔵し、当該加速度検出手段からの加速度信号に基づいて車両の各ドアを施錠することで、車両に横向きの加速度が加わった場合等においてもドアを自動で施錠し得る車両ドア制御装置を提供し得るという作用を有する。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1記載の車両ドア制御装置において、制御手段は、加速度信号から車両の左右方向の加速度を検出し、上記加速度が所定の範囲内である時間が所定時間継続した際に、車両のドアの施開錠を行う制御信号を出力するものであり、例えば、車両が横に倒れた場合においても運転者が車両から脱出することを助けることが出来るという作用を有する。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、車両に横向きの加速度が加わった場合等においてもドアを自動で施錠、開錠を切り替えうる車両ドア制御装置を提供し得るという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明による実施の形態について、図1〜図7を用いて説明する。
【0020】
なお、従来の技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明は簡略化する。
【0021】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による車両ドア制御装置のブロック図であり、同図において、30は、加速度を検出する素子をシリコン基板上に形成して実装した半導体素子等で構成された加速度センサ等の加速度検出手段で、例えば車両の進行方向に対応するX軸方向と、これに直交する左右方向に対応するY軸方向との、2軸方向の加速度を検出しうるものである。
【0022】
また、31は基板上に実装された固定抵抗等の電子部品からなる入力手段で、外部端子P32〜P36に接続された無線装置やドアロックスイッチ等の各種機器からの信号が入力され、外部機器信号D11を出力する。
【0023】
さらに、32はマイコン等の半導体素子で構成された制御手段で、入力手段31から外部機器信号D11が入力され、ドアの施開錠を制御する制御信号D12を出力する。
【0024】
そして、33はプリント基板上に電子部品等で構成された出力手段で、制御手段32から出力された制御手段D12に基づき、外部端子P37〜P40に接続された各ドアのドアロックモータ17〜20を制御するものである。
【0025】
そして、34はプリント基板上に固定抵抗等の電子部品で構成された電源部で、端子P41で車両のバッテリ21に接続され、入力手段31および制御手段32および出力手段33に電源を供給するものであり、この加速度検出手段30と入力手段31と制御手段32と出力手段33と電源部34から車両ドア制御装置35が構成される。
【0026】
このように構成された車両ドア制御装置35は車両のインストルメントパネル内等に、例えば加速度検出手段30のX軸が車両の前後となる進行方向に、Y軸が車両の左右となる横方向となるよう配置される。
【0027】
なお、ドアロックスイッチ13、ドアロックモータ17は車両右側前席(運転席)のドアに、ドアロックスイッチ14、ドアロックモータ18は車両右側後席のドアに、またドアロックスイッチ15、ドアロックモータ19は車両左側前席(助手席)のドアに、ドアロックスイッチ16、ドアロックモータ20は車両右側後席のドアに、それぞれ内蔵されるものである。
【0028】
以上の構成において、車両ドア制御装置35は、運転者が携帯するリモコンから車両の施開錠制御信号を受信する無線装置12により外部端子P32を経由して無線施開錠信号が入力され、車両のドアロックスイッチ13〜16から外部端子P33〜P36を経由して操作信号が入力され、車両の各ドアのドアロックモータ17〜20に対し外部端子P37〜P40を経由して制御を行う。
【0029】
ここで、従来と同様に、無線装置12から車両ドア制御装置35に入力される無線施開錠信号により、車両ドア制御装置35に対して施錠が指示されるとドアロックモータ17〜20を制御して車両の全てのドアのドアロックを行い、開錠が指示されるとドアロックモータ17〜20を制御して車両の全てのドアのドアロックを解除する。
【0030】
また、各ドアロックスイッチ13〜16から入力される操作信号に対応して、対応するドアロックモータ17〜20を制御して、車両のドアのドアロックあるいはドアロック解除を行うものである点も従来と同様である。
【0031】
しかしながら、車両ドア制御装置35は加速度検出手段30を備えるものであり、制御手段32は、加速度検出手段30からの加速度信号K11、K12に基づき、図2のフローチャートで示す施開錠制御を行うものである。
【0032】
まず、図2において、運転者がエンジンを駆動した際には、車両が一定速度以上になった際に車両のドアの施錠を行ったことを示す走行フラグF1をOFFとし、車両が横向きの加速度を受けた際にドアの施錠をしたことを示す横加速度フラグF2をOFFとする初期化処理(S11)が行われる。
【0033】
そして、車両の進行方向となるX軸方向の車速が一定の速度以上になった際に、車両のドアの施錠制御を行う走行制御(S12)と、車両の左右方向となるY軸方向の加速度信号K12に基づいて、車両のドアの施錠制御を行う横加速度制御(S13)が繰り返されることとなる。
【0034】
この走行制御(S12)について、図3の車両の進行方向となるX軸方向の加速度信号K11の時間変化を示す図と、図4の走行制御(S12)のフローチャートを用いて説明する。
【0035】
ここで、図3において、車両の進行方向となる加速度信号K11は、時刻TAで車両が走行を開始し時刻TCで一定速度の走行となったとすると、この時、車両が走行を開始した時刻TAにおいて、加速度信号K11の出力電圧はA1で、また一定速度となった時刻TCにおいては、加速度信号K11の出力電圧はA2となる。
【0036】
このA2は加速度がゼロに相当する場合の電圧で、重力加速度の大きさを1G(Gは重力加速度)とすれば、A2は0G相当の電圧であり、任意の時刻TBにおける速度は、一般に速度は加速度の時間積分で求められるので、K11からA2を引いた量を、時刻TAから時刻TBの間で積分した面積となるV1で表されることとなる。
【0037】
この速度V1に基づき図4のフローチャートに示す走行制御が行われるが、同図において、まず、走行開始時には、走行制御フラグはOFFで(S101)、車速V1は予め制御手段32に記憶された所定の閾値B0を下回るので(S102)、制御手段32は制御信号を出力することなく、走行制御は終了する。
【0038】
そして、所定の速度B0以上に車速V1が上がると走行制御フラグはOFFであることを判断し(S101)、車速V1は所定の閾値B0を上回るので(S102)、制御手段32はドアロックモータ17〜20を制御して全てのドアのドアロックを行う制御信号を出力し(S103)、走行制御フラグF1をONにして(S104)、走行制御は終了する。
【0039】
その後は、走行制御フラグF1はONであるので(S101)、制御手段32は進行方向であるX軸方向の加速度信号K11に基づいてはドアロック制御を行うことなく、走行制御が終了する。
【0040】
次に走行制御(S12)の後に行われる横加速度制御(S13)について、図5に示す車両位置と車両の左右方向の加速度信号K12の変化を示す図と、図6に示す横加速度制御のフローチャートを用いて説明する。
【0041】
ここで、図5(a)に示すのは、車両が高速で左曲がりのカーブを走行する際の車両位置を示す図で、ここで、車両が時刻TDにおいてカーブに進入しており、時刻TEで所定の閾値以上の強い加速度を受けているものとする。
【0042】
この時の、車両の左右方向となるY軸方向の加速度信号K12の出力電圧は図5(b)に示すように、時刻TDにおいては、加速度信号K12はゼロ相当(0G相当)のA2の値で、時刻TEにおいては所定の閾値B2を超えた値となる。
【0043】
なお、図5(b)中のB1は、右向きのカーブで強い横向きの加速度を受けた場合の所定の閾値である。
【0044】
ここで、車両が左方向のカーブに進入した時刻TDにおける横加速度制御について説明すると、図6において、まず制御手段32は、横加速度フラグが初期化されたままのOFFであることを判定し(S201)、そして加速度信号K12はB2以下であり(S202)、B1以上であることを判定し(S203)、制御信号を出力せず、横加速度制御は終了する。
【0045】
そして、時刻TEにおける横加速度制御について説明すると、制御手段32は横加速度フラグがOFFであることを確認後(S201)、加速度信号K12がB2を超えていることを確認し(S202)、例えば、ドアロックモータ17、18を制御して、カーブの外側となる車両右側のドアのドアロックを行う制御信号を出力し(S204)、横加速度フラグF2をONにして(S205)横加速度制御を終了する。
【0046】
そして、その後の任意の時刻において、横加速度フラグF2がONであるので(S201)、施錠を維持し、横加速度制御は終了することとなる。
【0047】
一方、車両が右方向のカーブに進入し、強い加速度を受けた場合には、加速度信号K12はB1を下回るため、制御手段32は横加速度フラグがOFFであることを確認後(S201)、加速度信号K12がB2未満で(S202)、さらにB1を下回ることを確認し(S203)、例えば、ドアロックモータ19、20を制御して、カーブの外側となる車両左側のドアのドアロックを行う制御信号を出力して(S206)、横加速度フラグF2をONにして(S207)、横加速度制御を終了する。
【0048】
なお、上述の説明では、S204で車両右側のドアのドアロックを、またS206で車両左側のドアのドアロックを行うものとして説明したが、いずれの場合においても、ドアロックモータ17〜20を制御して、車両の全てのドアのドアロックを行うものとしても良い。
【0049】
また、上述の説明では、車両ドア施開錠装置30は図2のフローチャートに従い制御を行うものとして説明したが、万が一、車両に対し横向きの加速度が非常に大きくなり、その結果車両が横に倒れて停止した場合においても、図7の施開錠制御の他の実施の形態によるフローチャートで示すように、初期化処理(S11)と、走行制御(S12)と、横加速度制御(S13)に加えて、S301〜S307で示す処理を行うことにより、上側のドアの開錠制御を行い、運転者が車両から脱出し易くすることが出来る。
【0050】
ここで、図5(b)の時刻TFから所定時間T1の間、加速度信号K12の出力電圧は、横向きの重力として+1G相当の値で出力されているのは、車両が横に倒れて停止していることを示している。
【0051】
この場合は、図7のフローチャートにおいて、制御手段32は横加速度フラグF2がONであるのを確認し(S301)、加速度信号K12が0.9Gと1.1Gの間にあることが(S302)、所定時間T1継続されていることを確認し(S303)、倒れた車両の上側のドアとなる車両左側のドアを、ドアロックモータ19、20を制御して開錠する制御信号を出力する(S304)。
【0052】
一方、車両が逆方向に倒れて、横向きの重力として−1G相当の値が出力されている場合には、横加速度フラグF2がONであるのを確認し(S301)、加速度信号K12が0.9Gと1.1Gの間になく(S302)、−1.1Gと−0.9Gの間にあるため(S305)所定時間T1継続されていることを確認し(S306)、倒れた車両の上側のドアとなる車両右側のドアを、ドアロックモータ17、18を制御してドアロックを解除する制御信号を出力する(S307)。
【0053】
なお、上述の説明では、S304、S307においてドアロックを解除するものとして説明したが、車両ドアロック制御装置35を車両のドア等に内蔵された、ウインドーの開閉制御用のモータ等と接続して、倒れた車両の上側のドアに対応するウインドーを開ける制御を行っても良い。
【0054】
このように本実施の形態によれば、車両が走行中に横向きの加速度が加わった場合等においてもドアを自動で施錠、開錠を切り替えうる車両ドア制御装置を提供しうるものである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明による車両ドア制御装置は、車両が走行中に横向きの加速度が加わった場合等においてもドアを自動で施錠し得るという効果を有し、主として車両のドアの施開錠制御などに使用される車両ドア制御装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施の形態による車両ドア制御装置のブロック図
【図2】施開錠制御のフローチャート
【図3】加速度信号K11の時間変化図
【図4】走行制御のフローチャート
【図5】車両位置を示す図と加速度信号K12の時間変化図
【図6】横加速度制御のフローチャート
【図7】施開錠制御の他の実施の形態によるフローチャート
【図8】従来の車両ドア制御装置のブロック図
【符号の説明】
【0057】
12 無線装置
13、14、15、16 ドアロックスイッチ
17、18、19、20 ドアロックモータ
21 バッテリ
30 加速度検出手段
31 入力手段
32 制御手段
33 出力手段
34 電源部
35 車両ドア制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力手段と制御手段と出力手段と電源手段を備える車両ドア制御装置において、少なくとも車両の左右方向の加速度を検出し加速度信号を出力する加速度検出手段を更に備え、上記制御手段に入力された車両の左右方向の加速度信号に基づき、車両のドアの施開錠を行うことを特徴とする車両ドア制御装置。
【請求項2】
制御手段は、加速度信号から車両の左右方向の加速度を検出し、上記加速度が所定の範囲内である時間が所定時間継続した際に、車両のドアの施開錠を行う制御信号を出力することを特徴とする請求項1記載の車両ドア制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−256972(P2009−256972A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107658(P2008−107658)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】