説明

車両外装品及びその取り付け方法

【課題】 簡単かつ低コストでありながら、作業を単純化でき、迅速で、かつ品質良く取り付けることができる車両外装品及びその取り付け方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、車両の外装として車両に取り付けられる車両外装品10であって、車両外装品10の長尺方向に沿って配設される板状の先端を有する舌片11であって、車両外装品10の車両1への取り付け面10Aから車両1側に向けて先端11Bが所定に突出可能であると共に、折り曲げることにより先端11Bが車両1側から退避可能に構成された舌片11が、車両外装品10の上縁より下側位置において車両外装品10の長尺方向に沿って所定間隔で複数備えられ、当該舌片11の先端11Bを、対応する車両1側の貫通部1Aに貫通させ、貫通した部分を折り曲げることにより、車両1に取り付けられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両外装品及びその取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に取り付けられる車両外装品として、例えば、自動車等の高速走行時の空気抵抗低減や安定性向上などを目的として或いはドレスアップを目的として装着されるエアロパーツなどがある。なお、エアロパーツとしては、例えば車両前後のバンパー(カバー)本体、或いはこれらに取り付けられるスポイラー、スカート等と称されるエアロパーツ、車両側方において車室下方の車軸間に装着されるサイドステップ等と称されるエアロパーツなどがある。
【0003】
これらの車両外装品は、従来は、ボルトやナットなどの締結要素により、或いは両面テープや接着剤などにより取り付けられていた。
【0004】
例えば、ボルトやナット、クリップなどの締結要素を用いて、バンパーに車両外装品を取り付ける場合、バンパーカバー(例えば、図1の符号1参照)を車両本体から取り外す或いは取り付けた状態で、エアロパーツ(例えば、図1の符号10参照)のボルト取り付け位置等をバンパーカバーの表面にマーキングする。かかるマーキング作業は重要で、複数のボルト取り付け位置を正確にマーキングしなければ、バンパーカバーに対してエアロパーツが左右方向において傾斜して取り付けられたり、エアロパーツのボルト取り付け位置と、バンパーカバー側のボルト取り付け位置と、の間にズレが生じて、バンパーカバーやエアロパーツに撓みなどが生じて奇麗な仕上がりとならなかったり、反りが合わなくなって部分的にバンパーカバーとエアロパーツとの間に比較的大きな隙間が生じ、見栄えは勿論、埃や泥などの異物混入等により汚れが目立ってしまうようになるなどの惧れがある。
【0005】
バンパーカバーとエアロパーツとの間に比較的大きな隙間が生じた場合を考慮して、樹脂製モールや両面テープなどを無理やり隙間に挿入するなどして誤魔化すようにした手法もあるが、樹脂製モールや両面テープをうまく挿入することにも熟練を要し面倒で時間のかかる作業であると共に、隙間などなく奇麗に装着できた場合に比べて見栄えは劣るものであった。
【0006】
なお、マーキング作業は、エアロパーツの裏側にあたる位置(バンパー表面)にマーキングする必要があるため、位置を正確に測ってマーキングするか、型紙などを用いてマーキングすることが行われており、マーキング作業そのものが極めて煩雑で時間のかかる作業であるのが実情である。
【0007】
また、ボルトを貫通させる穴の穴明け作業も慎重に行う必要があるが、既述した傾斜や位置ズレなどを吸収するために比較的大きな径で開口したり長穴などとする場合も多く、かかる場合には、最終的な締結の際に、バンパーカバーとエアロパーツとの散り合わせなども必要であり、面倒で時間のかかる作業となる。特に、長尺なバンパーカバーの裏側にある締結要素に、バンパーカバー下側から裏側にアクセスしてナット等を締結しなければならず、散り合わせしながらこれらを締結するのは、熟練していても一人では作業が難しく、極めて作業性が悪いというのが実情である。
【0008】
ボルトとナットの代わりに、タッピングビスを用いる場合もあるが、作業性が悪いことに変わりはなく、更に、タッピングビスの螺子部と螺合される部位に亀裂が生じ、割れてしまうといった別の問題も生じ得る。
【0009】
このような面倒で時間のかかる車両外装品(エアロパーツ)の装着作業の軽減を図るべく、例えば、特許文献1では、エアロパーツ側の取り付け穴に先端が尖ったエッジピンを取り付けておいて、この状態でエアロパーツとバンパーとを仮組み(位置合わせ)し、エッジピンの先端でバンパー表面にマーキング(ケガキ)を行うようにした手法が記載されている。
【0010】
なお、特許文献1では、エッジピンの先端には軟質シートが装着されており、当該軟質シートを突き破ってケガキが施されるまでは、エッジピン先端で バンパー表面に傷が付かないような工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−264734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の方法でも、ケガキの際に仮組みが必要で作業が煩雑になると共に、ケガキの際にその押圧力でエアロパーツがバンパーカバーに対してズレてしまうような惧れもあり、熟練を要すると共に、一人での作業は難しいといった問題がある。
【0013】
また、バンパーカバーに穴を明ける作業は、位置ズレなどに注意して従来通り極めて慎重に行う必要があるため、特許文献1に記載の方法は、マーキング精度は向上するものの、作業自体は却って煩雑化する傾向にあり、穴明け作業、散り合わせなどの煩雑な作業の軽減には寄与し得ないものである。
【0014】
ところで、両面テープを用いてエアロパーツをバンパーカバーに貼り付ける手法もあるが、かかる場合には、一度貼ってしまうと、はがして再度貼り付けることは貼り付け力の低下が大きく許容されるものではないため、バンパーカバーとエアロパーツとの微妙な散り合わせを行うことができず、良好に装着できるまで何回もトライする必要があり、熟練を要し面倒で時間の要する作業となる。また、車両の場合、比較的過酷な条件の下で使用されるため、両面テープによる貼り付けは、耐久性の面で劣るといった面もある。
【0015】
接着剤を用いてエアロパーツをバンパーに接着する手法もヨーロッパの製品などにおいて採用されるケースもあるが、長尺なエアロパーツとバンパーカバーとを隙間無く接着することは難しく、また硬化するまでの長時間の間エアロパーツを正確に保持することも困難で、更にはエアロパーツの接着に用いられるような強力な接着剤の場合、硬化時間も長く、作業開始から終了までに48時間程度必要になるといった実情がある。
また、一度取り付けてしまうと取り外すのは困難で、無理に引きはがしても、広い範囲でバンパーの塗装がはげてしまうなど、そのままでは使用には堪えないものとなる惧れが高い。
従って、両面テープや接着剤を用いて装着する手法も採用し難いのが実情である。
【0016】
本発明は、上述してきた実情に鑑みなされたもので、簡単かつ低コストでありながら、作業を単純化でき、迅速で、かつ品質良く取り付けることができる車両外装品及びその取り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このため、本発明は、
車両の外装として車両に取り付けられる車両外装品であって、
車両外装品の長尺方向に沿って配設される板状の先端を有する舌片であって、車両外装品の車両への取り付け面から車両側に向けて先端が所定に突出可能であると共に、折り曲げることにより先端が車両側から退避可能に構成された舌片が、車両外装品の上縁より下側位置において車両外装品の長尺方向に所定間隔で複数備えられ、
当該複数の舌片の先端を、対応する車両側の貫通部に貫通させ、貫通した部分を折り曲げることにより、車両に取り付けられることを特徴とする。
【0018】
本発明において、前記舌片は、車両外装品に固定される板状の基端要素と、基端要素に接続されると共に車両側の貫通部に貫通される先端要素と、を含んで構成され、
前記基端要素には少なくとも2つの貫通穴が開口され、当該基端要素の車両外装品への固定が接着剤により行われることを特徴とすることができる。
【0019】
本発明において、前記舌片がステンレス製であることを特徴とすることができる。
【0020】
上述した本発明に係る車両外装品の取り付け方法であって、
舌片を折り曲げて先端を車両側から退避させた状態で、車両外装品を車両に対して位置合わせするステップと、
位置合わせした状態で、車両外装品の上縁位置と、車両外装品の長尺方向における舌片の概略位置と、を車両側にマーキングするステップと、
車両外装品を車両から取り外し、車両側にマーキングされた車両外装品の上縁位置と、車両外装品の長尺方向における舌片の概略位置と、を参照して、車両外装品の舌片の概略位置を車両側にマーキングするステップと、
マーキングされた車両外装品の舌片の概略位置に基づいて車両側に貫通部を形成するステップと、
舌片を折り曲げて車両側に向けて先端を所定に突出させ、当該先端を、形成された車両側の貫通部に貫通させ、貫通した部分を折り曲げることにより、車両外装品を車両に取り付けるステップと、
を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明において、前記貫通した部分の少なくとも1つの折り曲げ方向が、他の折り曲げ方向と異なることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡単かつ低コストでありながら、作業を単純化でき、迅速で、かつ品質良く取り付けることができる車両外装品を提供することができると共に、その取り付け方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両外装品(エアロパーツ:ハーフスポイラー)をバンパーカバーに取り付けた状態を示す概略全体構成図である。
【図2】同上実施の形態に係るハーフスポイラーを上方から見た上面図である。
【図3】(A)は同上実施の形態に係る舌片の正面図であり、(B)は舌片がハーフスポイラーに取り付けられた状態を示す側面図である。
【図4】(A)は舌片がバンパーカバー側に向かって突出している状態を示した図であり、(B)は舌片が折り曲げられてバンパーカバー側と当接しないように退避された状態を示した図である。
【図5】(A)はマスキングテープを用いたマーキング手法の一例を説明するための図であり、(B)はその一部を拡大して示した図である。
【図6】(A)は舌片の概略位置を示すマーキングYを示す部分拡大図であり、(B)はマーキングYに基づいて電動ドリルによりバンパーカバーに貫通部を形成している様子を示す図であり、(C)はマーキングYに基づいて熱ゴテによりバンパーカバーに貫通部を形成している様子を示す図である。
【図7】(A)は舌片の先端要素を貫通部に挿入する様子を示した図であり、(B)は貫通部を貫通してバンパーカバー裏側に舌片の先端要素が突き出した状態を示した図であり、(C)は(B)の状態から舌片の先端要素を折り曲げてハーフスポイラーをバンパカバーに装着した状態を示した図である。
【図8】舌片の他の態様を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る車両外装品及びその取り付け方法の一実施の形態を、添付の図面を参照しつつ説明する。
【0025】
本実施の形態では、車両外装品として、例えば、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)製やCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)製などのハーフスポイラー10を一例として説明するが、材質などは特に限定されるものではない。
【0026】
このハーフスポイラー10は、図1に示すように、自動車のバンパーカバー1の下方略半分の部位に装着されるようにデザインされている。なお、ここでのバンパーカバー1及びハーフスポイラー10は、車両の前方用、後方用の何れでもよいため、特に区別せず説明する。
【0027】
図2に示すように、ハーフスポイラー10の裏面(バンパーカバー1への取り付け面)10A側には、対面するバンパーカバー1の表面に向かって先端が所定に突出される舌片(フック)11が、ハーフスポイラー10の長尺方向に所定間隔で複数配設されている。
【0028】
この舌片11は、図3(A)に示すような平板(基端要素)11Aと先端要素11Bとからなる板状部材(例えば金属製)で、図3(B)に示すように断面略L字状に折曲され、基端側の比較的広範な平板11Aは、ハーフスポイラー10の裏面10A(バンパーカバー1への取り付け面)に接着剤等を用いて取り付けられている一方で、先端要素11Bはやや細長に構成され、その先端部分がハーフスポイラー10の裏面10Aから所定量バンパーカバー1側に突出可能に構成されている。なお、平板11Aは、板状要素とすることができ、例えば波板やメッシュで構成することなどもできる。
【0029】
また、図3(B)に示したように、平板11Aと先端要素11Bとの接続部(折り曲げ部)上面11Cは、ハーフスポイラー10の上縁(上端)から所定量(例えば、数mmから約十数mm程度)下方に位置されている。車種等の仕様に応じて、前記所定量は適宜に設定されるものであり、例えばハーフスポイラー10の上縁から数cm下方に位置される場合もあり得る。
【0030】
なお、この舌片11は、指や掌等により複数回折り曲げても損傷等が生じないような耐折曲性(耐屈曲性)のある材料であることが好ましい。また、錆などが発生しないような材料或いは表面処理が施されることが好ましい。このような要求特性から、例えば、舌片11は、ステンレス製などとすることができる。
【0031】
ここで、本実施の形態に係るハーフスポイラー1の取り付け方法について説明する。本実施の形態に係るハーフスポイラー1によれば、装着作業は熟練を要せず短時間で奇麗に行うことができるため、車両にバンパーカバー1を装着したままの状態で装着することができるものであり、かかる状態を基本として以下で説明するが、これに限定されるものではなく、予めバンパーカバー1が車両から外されている場合でも適用可能であることは勿論である。
【0032】
まず、
ステップ1では、図4に示すように、舌片11の先端要素11Bを折り曲げて、ハーフスポイラー10の裏面からバンパーカバー1側への突出量を小さくする(図4(A)から図4(B)の状態へ)。
つまり、マーキングのためにハーフスポイラー10をバンパーカバー1に当接させた際に、舌片11の先端要素11Bがバンパーカバー1表面に当接して、マーキング作業を阻害したり、バンパーカバー1表面に傷等をつけたりしないように、舌片11の先端要素11Bを退避させる。但し、予めこのような退避させた状態で販売、納品等することも可能である。
【0033】
ステップ2では、舌片11の先端要素11B毎に幅方向位置に対応する位置X(図4参照)を、ハーフスポイラー10の上縁の表面(バンパーカバー1に装着したときに外部から観察される表面)にマーキングをする。当該マーキングは、後で消失させることができるようなマーキングであることが好ましい。例えば、水性マーカー、鉛筆、色鉛筆、ダーマトグラフ(登録商標)等のマーキングペンなどを用いることができる。但し、位置Xのマーキングを施した状態で販売、納品等することも可能である。
【0034】
ステップ3では、舌片11の先端要素11Bが退避された状態のハーフスポイラー10を、バンパーカバー1に当接させて位置合わせする。
例えば、この位置合わせは、ハーフスポイラー10をバンパーカバー1に下方から被せ、その後ハーフスポイラー10の上縁内側とバンパーカバー1表面との隙間を縮小させつつ、上方に突き当たるまでハーフスポイラー10を移動させることでなすことができるようになっており、そのような形状にハーフスポイラー10の内側が形成されることができる。
ハーフスポイラー10を下方からバンパーカバー1に対して所定に押し付けるようにして受台等で支持することで、一人でも十分に本作業を行なうことができる。
【0035】
ステップ4では、図5(A)、図5(B)に示すように、位置合わせした状態で、ハーフスポイラー10の上縁位置をバンパーカバー1にマーキングする。かかるマーキングは、後で消失させることができるようなマーキングであることが好ましく、例えばマスキングテープ20の下端20Aを、ハーフスポイラー10の上縁に沿わせるようにして、バンパーカバー1に貼り付けるような方法とすることができる。
【0036】
ステップ5では、舌片11の先端要素11B毎の幅方向位置に対応する位置Xを、ステップ2で施したハーフスポイラー10のマーキングを参照して、バンパーカバー1にマーキングする。例えば、図5(A)、図5(B)に示すように、前記マスキングテープ20の表面に符号X’のようにマーキングする。
【0037】
ステップ6では、ハーフスポイラー10をバンパーカバー1から一旦取り外す。
【0038】
ステップ7では、バンパーカバー1に対して、マスキングテープ20を用いてマーキングされているハーフスポイラー10の上縁位置及び舌片11の先端要素11Bの幅方向位置に対応する位置(符号X’)を参照して、図6(A)に示すように、ハーフスポイラー10の上縁位置より数mmから十数mm程度下側(舌片11の先端要素11Bの上下方向位置に略対応した位置)で、舌片11の先端要素11Bの幅方向位置に対応する位置にマーキング(Y)を施す。
【0039】
ステップ8では、ステップ7のマーキングに沿って、バンパーカバー1に貫通部1Aを形成する。当該貫通部1Aは、舌片11の先端要素11Bを挿入可能な細長な開口であり、例えば、カッターナイフ、ドリル(図6(B)参照)、熱ゴテ(図6(C)参照)等を用いて形成することができる。
なお、バンパーカバー1が樹脂製である場合には、容易に細長貫通部1Aを形成することができ、ドリルによる場合は、例えば、マーキングに沿って所定間隔で複数の小径孔を穿孔した後、ドリルを回転させながら左右方向に揉むことで、複数の小径孔を連結し、細長な開口部を形成することができる。
【0040】
ステップ9では、貫通部1Aのバリなどを除去し、マスキングテープ20をはがす。
【0041】
ステップ10では、ハーフスポイラー10の舌片11の先端要素11Bが、ハーフスポイラー10の裏面(バンパーカバー1への取り付け面)から所定量バンパーカバー1側に突出するように断面略L字状に折り曲げる(図4(B)から図4(A)の状態へ)。
【0042】
ステップ11では、図7(A)に示すように、ステップ9で開口した貫通部1Aに、舌片11の先端要素11Bを挿入しながらハーフスポイラー10をバンパーカバー1へ装着して行く。
この際、図7(B)に示すように、舌片11の先端要素11Bが所定深さまで貫通部1Aに挿入されたら、図7(C)に示すように、バンパーカバー1を挟み込みながら先端要素11Bを作業者が指で或いはプライヤーやペンチ等を用いて折り返す(折り曲げる)。なお、先端要素11Bに所定張力が生じるように、所定に引っ張りながら折り曲げることで、ハーフスポイラー10とバンパーカバー1とをしっかりと密着させることができ、仕上がり品質(見栄え等)を良好なものとすることができる。
【0043】
最後のステップ12では、既存の取り付け穴(例えば、ナンバープレート取り付け穴、タイヤハウス内カバーの取り付け穴、マッドフラップ取り付け穴など)に対応する穴を開口などし、これを利用してボルト等の締結要素によりハーフスポイラー10を車両に固定して作業を終了する。
【0044】
このように、本実施の形態によれば、複数回折り曲げ可能な舌片11を備えたハーフスポイラー10を採用し、当該舌片11を相手部材に挿入して折り曲げることで装着するようにしたので、従来のようなボルト・ナット等の締結要素、両面テープ或いは接着剤を用いて車両外装品を取り付ける場合に比べて、マーキング作業、取り付けのための貫通部の開口作業、車両外装品と車両との位置合わせ作業などを単純化しながら、仕上がり品質を良好なものとすることができる。
【0045】
ところで、本実施の形態に係る舌片11の先端要素11Bは、指等で折り曲げることができるある程度変形し易い材料であるため、貫通部1Aが多少斜めであったり、複数の貫通部1A間で上下方向幅に多少バラツキがあったり、開口位置が上下方向に多少ズレていても、折り返す(折り曲げる)際に、半ば自動的にそれらが吸収され、熟練を要し面倒で時間のかかるバンパーカバー1とハーフスポイラー10の微妙な散り合わせを事実上不要にできるといった格別の作用効果が奏されることになる。
つまり、マーキングや貫通部1Aの開口作業を、熟練の必要のない簡単かつ短時間の作業としながら、仕上がりを良好なものとすることができることになる。
【0046】
但し、舌片11の先端要素11Bの折り曲げ具合を調整することで、バンパーカバー1とハーフスポイラー10との微妙な散り合わせや密着度合いの調整を行うことも可能である。
【0047】
また、本実施の形態のように舌片11の先端要素11Bを貫通部1Aに挿入し折り返して装着する場合、貫通部1Aを開口する際に、貫通部1Aの幅方向長さを厳密に管理する必要がなく、これに挿入される舌片11の先端要素11Bの幅と、の間に所定にギャップ(図6(A)参照)があった方が却って好ましいといった利点もある。
【0048】
すなわち、貫通部1Aの幅方向長さと、これに挿入される舌片11の先端要素11Bの幅と、の間にギャップがあると、隣接する貫通部1Aの開口間隔と、隣接する舌片11の先端要素11Bの間隔と、の間に位置ズレがあっても、これを当該ギャップにより吸収することができるため、位置ズレがある場合に生じるバンパーカバー1或いはハーフスポイラー10の反りや無理な引張りの発生を抑制することができ、マーキングや貫通部1Aの開口作業を熟練の必要のない簡単かつ短時間の作業としながら、仕上がりを良好なものとすることができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、車両外装品の車両への装着作業を、熟練の必要のない簡単かつ短時間の作業とすることができるため、作業工数、作業コストなどの低減を図ることができる。また、車両外装品の車両への装着を熟練していない作業者が一人でも行うことができるため、大幅な作業コストの低減を図ることができる。
【0050】
特に、近年は、新車ディーラー、中古車販売店などにおいて、各店舗が独自性を示して需要拡大を目指すために、エアロパーツを装着して販売することが多く行われており、このような場合に、本実施の形態は極めて有効なものとなる。つまり、このような場合、複数台の車両に対して取り付けを行うが、熟練した作業者がいない場合には、ナンバーの付いていない車両をトレーラーなどで作業者のいる業者に運び込む必要があったり、熟練した作業者複数人で出張してもらう必要があるなど、コストが非常に掛かるため、コスト的に販売が成り立たなくなるといった問題を解消することができる。
【0051】
ところで、本実施の形態のステップ11では、舌片11の先端要素11Bの折り返す(折り曲げ)方向については限定していないが、例えば、複数の先端要素11Bの幾つかを(例えば複数の先端要素11Bを交互に)異なる方向に折り返す(折り曲げる)ようにすることができ、このようにすることで、車両走行中における振動等が作用しても、或いはハーフスポイラー10に対して不意の方向から外力が作用したような場合でも、舌片11の先端要素11Bが貫通部1Aから抜けて、ハーフスポイラー10がズレてしまったり、脱落してしまうといった惧れを抑制することができる。
【0052】
また、本実施の形態において、舌片11のハーフスポイラー10への取り付け方法は特に限定されるものではなく、例えば、接着剤、両面テープで取り付ける場合の他、例えばハーフスポイラー10の裏面に固定されたブリッジ、ステー等に対して舌片11を締結固定して取り付けるようにすることもできる。
【0053】
なお、強度、ハーフスポイラー10の製造性などの観点から、接着剤を用いて、舌片11をハーフスポイラー10へ取り付けることが想定されるが、かかる場合には、舌片11の平板11Aをハーフスポイラー10に高い強度をもって取り付けることが望まれる。
【0054】
本発明者等は、種々の試行錯誤を行うことで、舌片11をハーフスポイラー10へより高強度でより耐久性高く取り付けることができる構造を知得した。
【0055】
すなわち、図3(A)、図3(B)に示したように、舌片11の平板11Aに2つの穴12を開口し、この穴12を介して、平板11Aの裏面側(ハーフスポイラー10側)に適用される接着剤と、平板11Aの表面側に適用される接着剤と、を連結させることができるようにしたので、極めて高い強度をもって、舌片11をハーフスポイラー10へ接着することができる。
【0056】
なお、例えば、平板11Aに穴12を1つ設ける場合には、穴12を設けない場合に比べて高い強度をもって、舌片11をハーフスポイラー10へ接着することができる。しかしながら、本発明者の実験によると、先端要素11Bに横方向からの力が作用した場合に、穴12を中心とする回転モーメントが作用して、平板11Aとハーフスポイラー10との間にはく離等が生じるケースが確認された。
【0057】
これに対し、2つの穴12を平板11Aに開口する場合には、平板11Aに穴12を1つ設ける場合に比べてより一層高い強度をもって、舌片11をハーフスポイラー10へ接着することができると共に、先端要素11Bに横方向からの力が作用した場合でも強固に平板11Aを接着維持することができる。
【0058】
また、2つ以上の穴12を設けることも可能で、例えば、3つの穴12を設けたり、更に3つの穴12を直線上に配設せず、例えば三角形の頂点上に配置させたりすることも可能である。
【0059】
なお、舌片11の平板11Aをハーフスポイラー10に接着するための接着剤には、ガラス繊維や炭素繊維などのファイバーを所定サイズに調整したものを混合することができ、これにより強度を増すことができ、以って硬化した接着剤に割れなどが発生することを抑制することができる。
【0060】
本実施の形態では、貫通部1Aの開口部が水平方向と略平行な方向に延在するように形成したが、例えば少なくとも1つの貫通部1Aを、その開口部が垂直方向と略平行な方向に延在するように形成し、これに挿入可能なように、対応する舌片11の先端要素11Bの平面が垂直方向と略平行な方向に延在するようにハーフスポイラー10に対して取り付けるように構成することもできる。
【0061】
また、本実施の形態では、図3(B)に示したように、平板11Aと先端要素11Bとの接続部(折り曲げ部)上面11Cを上側にして、ハーフスポイラー10の裏面10Aに舌片11を取り付けたが、これに限らず、図3(B)の接続部(折り曲げ部)上面11Cを下側にして取り付けても良いし、図8(A)に示すように、2つの舌片11を対面させて配設し、これらを一つの貫通部1Aに挿入するような構成とすることも可能である。折り曲げ方向は重なり合うようにしても良いし、相互に逆方向に折り曲げることもできる。
【0062】
更に、図8(B)に示すように、一つの舌片11に、複数、例えば2つの先端要素11Bを備えて構成することも可能である。折り曲げ方向は同一でも良いし、相互に逆方向に折り曲げることもできる。
【0063】
ところで、本実施の形態では、車両外装品としてハーフスポイラー10を例に説明したが、これに限定されるものではなく、他のエアロパーツ、例えば、車両前後のバンパー(カバー)本体、或いはこれらに取り付けられるスポイラー、スカート等と称されるエアロパーツ、車両側方において車室下方の車軸間に装着されるサイドステップ等にも適用可能である。また、車両外装品の材質についても特に限定されるものではない。
【0064】
以上で説明した実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 バンパーカバー(車両に相当)
1A 貫通部
10 ハーフスポイラー(車両外装品の一例)
10A 裏面(バンパーカバー1への取り付け面)
11 舌片
11A 平板(基端要素)
11B 先端要素
12 穴(開口部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外装として車両に取り付けられる車両外装品であって、
車両外装品の長尺方向に沿って配設される板状の先端を有する舌片であって、車両外装品の車両への取り付け面から車両側に向けて先端が所定に突出可能であると共に、折り曲げることにより先端が車両側から退避可能に構成された舌片が、車両外装品の上縁より下側位置において車両外装品の長尺方向に所定間隔で複数備えられ、
当該複数の舌片の先端を、対応する車両側の貫通部に貫通させ、貫通した部分を折り曲げることにより、車両に取り付けられることを特徴とする車両外装品。
【請求項2】
前記舌片は、車両外装品に固定される板状の基端要素と、基端要素に接続されると共に車両側の貫通部に貫通される先端要素と、を含んで構成され、
前記基端要素には少なくとも2つの貫通穴が開口され、当該基端要素の車両外装品への固定が接着剤により行われることを特徴とする請求項1に記載の車両外装品。
【請求項3】
前記舌片がステンレス製であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両外装品。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の車両外装品の取り付け方法であって、
舌片を折り曲げて先端を車両側から退避させた状態で、車両外装品を車両に対して位置合わせするステップと、
位置合わせした状態で、車両外装品の上縁位置と、車両外装品の長尺方向における舌片の概略位置と、を車両側にマーキングするステップと、
車両外装品を車両から取り外し、車両側にマーキングされた車両外装品の上縁位置と、車両外装品の長尺方向における舌片の概略位置と、を参照して、車両外装品の舌片の概略位置を車両側にマーキングするステップと、
マーキングされた車両外装品の舌片の概略位置に基づいて車両側に貫通部を形成するステップと、
舌片を折り曲げて車両側に向けて先端を所定に突出させ、当該先端を、形成された車両側の貫通部に貫通させ、貫通した部分を折り曲げることにより、車両外装品を車両に取り付けるステップと、
を含むことを特徴とする車両外装品の取り付け方法。
【請求項5】
前記貫通した部分の少なくとも1つの折り曲げ方向が、他の折り曲げ方向と異なることを特徴とする請求項4に記載の車両外装品の取り付け方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−11700(P2011−11700A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159612(P2009−159612)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(509189732)株式会社ファイアースポーツ (1)
【Fターム(参考)】