説明

車両用カバー

【課題】車両のフロントバンパにおけるコーナプロテクタとして機能するとともに、少ない費用で極めて容易に交換することのできる車両用カバーを提供する。
【解決手段】車両12のフロントバンパ14のコーナ部前方におけるフォグランプ16を収容するための開口部18に装着される車両用カバー10において、前記車両用カバー10は、少なくとも一部が前記フロントバンパ14よりも車両前方に突出する突出部22を備えることにより、事故の際には、前記突出部が先に損壊される可能性が高く、従って、車両の損壊範囲を必要最小限とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントバンパのコーナ部前方におけるフォグランプを収容するための開口部に装着される車両用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前後部に取り付けられるバンパは、車両を保護するため、前後部に突出するとともに、車両の両側部にも突出するものが増えている。一方、車両の最小回転半径は、バンパの両側部であるコーナ部の位置によって決まる。そのため、バンパが車両の両側部に突出していると、ドライバは、バンパの突出量を把握することが困難となり、例えば、駐車場に対する入出庫時や、曲がりくねった狭い路地を通過するとき、バンパのコーナ部を壁等に擦ってしまうおそれがある。この場合、バンパは、一部だけが損壊しても、全体を交換しなければならないため、その交換のために非常に高い費用がかかってしまう。
【0003】
そこで、バンパのコーナ部に、プロテクタとしての弾性部材を介して標識灯を突出させて配設することにより、標識灯に基づいてドライバが車幅感覚を掴み易くして、事故を未然に防ぐように構成した先行技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−72572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この先行技術の場合、支持部材である弾性部材を介して標識灯を配設しており、事故の際には、標識灯自体が損壊されてしまうため、その交換に相当な費用を要してしまう。
【0006】
本発明は、前記の不具合を解消するためになされたものであって、車両のフロントバンパにおけるコーナプロテクタとして機能するとともに、少ない費用で極めて容易に交換することのできる車両用カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用カバーは、車両のフロントバンパのコーナ部前方におけるフォグランプを収容するための開口部に装着される車両用カバーにおいて、前記車両用カバーは、少なくとも一部が前記フロントバンパよりも車両前方に突出する突出部を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る車両用カバーにおいて、前記車両用カバーは、前記フロントバンパと、前記開口部に収容される前記フォグランプとの間に配設されるフォグランプ用カバーであり、前記突出部は、前記フォグランプ用カバーの上部に形成されることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る車両用カバーにおいて、前記車両用カバーは、前記開口部を閉塞する蓋部材であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る車両用カバーにおいて、前記車両用カバーは、爪部によって前記フロントバンパに係止され、前記車両用カバーと前記フロントバンパとの間には、工具を挿入して前記爪部の前記フロントバンパに対する係止を解除するための解除用溝部が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両用カバーでは、フォグランプが収容される開口部に装着される車両用カバーの一部に、車両前方に突出する突出部を形成することにより、事故の際には、前記突出部が先に損壊される可能性が高く、従って、車両の損壊範囲を必要最小限とすることができる。そして、損壊した車両用カバーのみを交換すればよいため、修理にかかる費用を抑えることができる。また、前記突出部を車両用カバーであるフォグランプカバーの上部に形成することにより、フォグランプから車両前方に射出された照明光の上方向の照射範囲を規制して、良好なフォグ機能を得ることができる。さらに、車両用カバーの交換の際、フロントバンパに対する爪部の係止を解除するだけで、車両用カバーを極めて容易に取り外して交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る車両用カバーが適用される車両の外観斜視図である。
【図2】本発明に係る車両用カバーが適用される車両のフロントバンパのコーナ部におけるフォグランプ近傍の正面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】図2のV−V線断面図である。
【図6】図2のVI−VI線断面図である。
【図7】本発明に係る車両用カバーが適用される車両の最小回転半径の説明図である。
【図8】本発明に係る車両用カバーを取り外す作業の説明図である。
【図9】本発明に係る車両用カバーの他の実施形態の斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る車両用カバーが適用される車両12の外観斜視図である。この車両用カバーは、フォグランプ用カバー10であり、車両12のフロントバンパ14のコーナ部前方におけるフォグランプ16を収容するための開口部18に装着される。なお、フォグランプ16は、フロントバンパ14の両側のコーナ部前方に配設される。
【0015】
図2は、フロントバンパ14の一方のコーナ部におけるフォグランプ16近傍の正面図である。なお、他方のコーナ部の構成も同様であるため、その説明は省略する。
【0016】
フォグランプ用カバー10は、後述するように、開口部18に対して着脱自在に装着される。フォグランプ用カバー10は、正面から見た外周形状が略平行四辺形状であり、中央の中空部20には、フォグランプ16が臨む。また、フォグランプ用カバー10の上部外縁部には、車両12の前方に突出する突出部22が形成される。さらに、フォグランプ用カバー10の下部外縁部の一部には、フォグランプ用カバー10を開口部18から取り外すために工具を挿入する解除用溝部24が形成される。
【0017】
図3は、図2のIII−III線断面図、図4は、図2のIV−IV線断面図、図5は、図2のV−V線断面図、図6は、図2のVI−VI線断面図である。
【0018】
図3及び図5において、フォグランプ用カバー10の外縁部には、フロントバンパ14の溝部26に挿入される挿入端部28が形成される。また、図4及び図6において、フォグランプ用カバー10の外縁部には、フロントバンパ14の係合端部30に係止される爪部32が形成される。なお、爪部32は、フォグランプ用カバー10の外縁部に沿って所定間隔で複数形成される。
【0019】
図4の断面図の位置には、爪部32の1つが形成されているフォグランプ用カバー10とフロントバンパ14との間に工具を挿入することにより、係合端部30に対する爪部32の係合を解除するための解除用溝部24が形成される。また、図3〜図5において、フォグランプ用カバー10の上部外縁部に形成される突出部22は、フロントバンパ14よりも車両12の前方に突出する。この場合、図5の断面図におけるフォグランプ用カバー10の下部外縁部に対する突出部22の突出量x2は、突出部22が最小回転半径の最外側に近いため、図4の断面図における突出量x1よりも大きく設定される。
【0020】
本実施形態のフォグランプ用カバー10が装着された車両12は、基本的には以上のように構成される。次に、その作用効果について説明する。
【0021】
図7は、フォグランプ用カバー10が装着された車両12の最小回転半径rの説明図である。最小回転半径rは、フォグランプ16を収容するための開口部18に装着されるフォグランプ用カバー10の突出部22の位置によって決まる。従って、例えば、車両12がコーナリング等の際に事故に遭遇すると、最初にフォグランプ用カバー10の突出部22が擦れることになる。この場合、フォグランプ16自体は、開口部18の内部に収容されているため、損壊するおそれはなく、また、フロントバンパ14も損壊することがないため、車両12の損壊をフォグランプ用カバー10のみとして、必要最小限に抑えることが可能となる。
【0022】
また、フォグランプ用カバー10に形成された突出部22は、上述したように、車両12のコーナプロテクタとして機能するとともに、フォグランプ16から射出された照明光の上方向に対する照射範囲を規制するものとしても機能する。すなわち、図5の一点鎖線で示すように、フォグランプ16から車両前方に射出された照明光は、上部に配設された突出部22によって、上方向の照射範囲が規制されるため、前方上部の霧に強い照明光が照射されてドライバの目に入射することがない。従って、フォグランプ16として、例えば、発散性の強いハロゲンフォグランプを使用する場合であっても、良好なフォグ機能を得ることができる。これにより、フォグランプ16に適用可能な光源の選択範囲が広がる利点が得られる。
【0023】
一方、事故によって突出部22が損壊した場合、フロントバンパ14の交換は必要なく、フォグランプ用カバー10のみを容易に交換することができる。図8は、フォグランプ用カバー10の下部外縁部の突出部22が損壊した場合において、フォグランプ用カバー10を取り外す作業の説明図である。
【0024】
作業者は、フロントバンパ14の開口部18と、フォグランプ用カバー10の外縁部との間に形成された解除用溝部24(図2、図4参照)に、工具であるマイナスドライバ34の先端部を差し込み、矢印A方向にマイナスドライバ34を回動させる。このとき、フォグランプ用カバー10の爪部32がフロントバンパ14の係合端部30から外れる。フォグランプ用カバー10の係合端部30は、一個所の爪部32の係止状態が解除されると、他の爪部32における係止状態も、マイナスドライバ34を使用することなく、容易に解除される。
【0025】
そこで、図8の状態から、フォグランプ用カバー10を車両12の前方に引き抜くことにより、フォグランプ用カバー10をフロントバンパ14から容易に取り外すことができる。一方、新たなフォグランプ用カバー10をフロントバンパ14に装着する場合には、フォグランプ用カバー10をフロントバンパ14に押し付け、爪部32を係合端部30に係止させることにより、フォグランプ用カバー10を極めて容易にフロントバンパ14に装着することができる。
【0026】
図9は、他の実際形態に係る車両用カバー36をフロントバンパ14の開口部18に装着した状態の斜視説明図である。なお、車両用カバー36とフロントバンパ14との係止構造は、図4に示すフォグランプ用カバー10における係合端部30及び爪部32の関係と同じである。
【0027】
この車両用カバー36は、開口部18の内部にフォグランプ16が収容されていない場合において、フロントバンパ14の開口部18を閉塞する蓋部材であり、フォグランプ用カバー10の場合と同様に、外縁部の上部には、フロントバンパ14よりも車両前方に突出する突出部38が形成される。
【0028】
車両用カバー36が装着された車両12がコーナリング等を行った場合、フォグランプ用カバー10の場合と同様に、車両用カバー36の突出部38が障害物に最初に当たることになるため、車両12の損壊を必要最小限とすることが可能となる。
【0029】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更することが可能である。
【0030】
フォグランプ用カバー10に形成される突出部22の位置は、フォグランプ16として指向性の強い光源を用いる場合には、必ずしもフォグランプ用カバー10の上部に形成する必要はなく、少なくとも一部がフロントバンパ14よりも車両前方に突出していればよく、フォグランプ用カバー10の外縁部のいずれの場所であってもよい。なお、蓋部材である車両用カバー36に形成される突出部38の位置は、光源の種類に依存するものではないため、少なくとも一部がフロントバンパ14よりも車両前方に突出していればよい。
【0031】
フォグランプ16に使用する光源の種類としては、ハロゲンフォグランプ、キセノンフォグランプ、LEDフォグランプ等、いずれのものであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
10…フォグランプ用カバー
12…車両
14…フロントバンパ
16…フォグランプ
18…開口部
20…中空部
22、38…突出部
24…解除用溝部
26…溝部
28…挿入端部
30…係合端部
32…爪部
34…マイナスドライバ
36…車両用カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントバンパのコーナ部前方におけるフォグランプを収容するための開口部に装着される車両用カバーにおいて、
前記車両用カバーは、少なくとも一部が前記フロントバンパよりも車両前方に突出する突出部を備えることを特徴とする車両用カバー。
【請求項2】
請求項1記載の車両用カバーにおいて、
前記車両用カバーは、前記フロントバンパと、前記開口部に収容される前記フォグランプとの間に配設されるフォグランプ用カバーであり、前記突出部は、前記フォグランプ用カバーの上部に形成されることを特徴とする車両用カバー。
【請求項3】
請求項1記載の車両用カバーにおいて、
前記車両用カバーは、前記開口部を閉塞する蓋部材であることを特徴とする車両用カバー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用カバーにおいて、
前記車両用カバーは、爪部によって前記フロントバンパに係止され、前記車両用カバーと前記フロントバンパとの間には、工具を挿入して前記爪部の前記フロントバンパに対する係止を解除するための解除用溝部が形成されることを特徴とする車両用カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−206540(P2012−206540A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71759(P2011−71759)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)